JP2008115404A - 低保磁力かつ高透磁率を有する扁平金属混合粉末およびその扁平金属混合粉末を含む電磁干渉抑制体 - Google Patents

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Abstract

【課題】低保磁力かつ高透磁率を有する扁平金属混合粉末およびその扁平金属混合粉末を使用して作製した電磁干渉抑制体を提供する。
【解決手段】原子%で、Si:14.3〜19.9%、Al:5.5〜13.8%を含有し、残部:Feおよび不可避不純物からなる成分組成、並びに平均粒径:10〜100μmおよびアスペクト比:5〜500の扁平度を有する扁平金属軟磁性粉末Aと、Si:4〜21%、B:4〜21%、Cr:5%以下(0%は含まず)、C:5%以下(0%は含まず)、Mn:1%以下(0%は含まず)、S:0.1%以下(0%は含まず)を含有し、残部がFeおよび不可避不純物からなる成分組成、並びに平均粒径:20〜100μmおよびアスペクト比:5〜100の扁平度を有するアモルファス扁平金属軟磁性粉末Bを混合する。
【選択図】なし

Description

この発明は、低保磁力かつ高透磁率を有する扁平金属混合粉末およびその扁平金属混合粉末を使用して作製した電磁干渉抑制体に関するものであり、この電磁干渉抑制体は熱可塑性樹脂、ゴムなどの樹脂中に前記この発明の低保磁力かつ高透磁率を有する扁平金属混合粉末を分散させた複合材からなるものである。
一般に、電磁干渉抑制体は扁平金属軟磁性粉末の扁平面を樹脂中に配向して分散させた複合材からなることは知られており、この電磁干渉抑制体に含まれる扁平金属軟磁性粉末の一つとして偏平化されたセンダスト合金粉末が知られており、この偏平化されたセンダスト合金粉末は、原子%で(以下、%は原子%を示す)、Si:14.3〜19.9%、Al:5.5〜13.8%を含有し、残部:Feおよび不可避不純物からなる成分組成、並びに平均粒径:10〜100μmおよびアスペクト比(平均粒径/平均厚さ):5〜500の扁平度を有することが知られている(この偏平化されたセンダスト合金粉末を、以下、扁平金属軟磁性粉末Aという)(特許文献1参照)。
さらに、アモルファス扁平金属軟磁性粉末を樹脂中に分散させたシートなどの電磁干渉抑制体についても知られている(特許文献2参照)。
特開平10−102316号公報 特開平7−30279号公報
しかし、先の特許文献1記載の成分組成を有する扁平金属軟磁性粉末Aは、透磁率が十分大きくなく、さらに保磁力が高いので、この特許文献1記載の成分組成を有する扁平金属軟磁性粉末Aを用いて低保磁力かつ高透磁率を有するシートなどの電磁干渉抑制体を作製することができない。一方、先の特許文献記載のアモルファス扁平金属軟磁性粉末は、樹脂との濡れ性が悪く、樹脂中に分散させて作製した電磁干渉抑制体における充填率が低く、さらに均一分散させることが困難であって、先の特許文献2記載のアモルファス扁平金属軟磁性粉末を用いて作製した電磁干渉抑制体は低保磁力かつ高透磁率を有するシートなどの電磁干渉抑制体を作製することが困難である。
そこで、本発明者らは、一層保磁力が低くかつ透磁率の高いシートなどの電磁干渉抑制体を得るべく研究を行った。その結果、
(イ)先の特許文献1記載の成分組成を有する扁平金属軟磁性粉末Aにアモルファス扁平金属軟磁性粉末を混合して得られた扁平金属混合粉末は、先の特許文献1記載の扁平金属軟磁性粉末に比べて保磁力を下げかつ透磁率を上げることができ、この扁平金属混合粉末を用いて作製したシートなどの電磁干渉抑制体は、低保磁力かつ高透磁率を有するようになる、
(ロ)前記特許文献1記載の扁平金属軟磁性粉末Aに添加するアモルファス扁平金属軟磁性粉末は、原子%で(以下、%は原子%を示す)、Si:4〜21%、B:4〜21%、Cr:5%以下(0%は含まず)、C:5%以下(0%は含まず)、Mn:1%以下(0%は含まず)、S:0.1%以下(0%は含まず)を含有し、残部がFeおよび不可避不純物からなる成分組成、並びに平均粒径:20〜100μmおよびアスペクト比(平均粒径/平均厚さ):5〜100の扁平度を有するアモルファス扁平金属軟磁性粉末(以下、アモルファス扁平金属軟磁性粉末Bという)が好ましい、
(ハ)前記アモルファス扁平金属軟磁性粉末Bと扁平金属軟磁性粉末Aの混合比が1:9〜9:1(一層好ましくは、2:8〜8:2)の範囲内にあるように混合して扁平金属混合粉末を作ることが好ましい、などの研究結果が得られたのである。
この発明は、かかる研究結果に基づいて成されたものであって、
(1)原子%で(以下、%は原子%を示す)、Si:14.3〜19.9%、Al:5.5〜13.8%を含有し、残部:Feおよび不可避不純物からなる成分組成、並びに平均粒径:10〜100μmおよびアスペクト比(平均粒径/平均厚さ):5〜500の寸法および形状を有する扁平金属軟磁性粉末Aと、
Si:4〜21%、B:4〜21%、Cr:5%以下(0%は含まず)、C:5%以下(0%は含まず)、Mn:1%以下(0%は含まず)、S:0.1%以下(0%は含まず)を含有し、残部がFeおよび不可避不純物からなる成分組成、並びに平均粒径:20〜100μmおよびアスペクト比(平均粒径/平均厚さ):5〜100の扁平度を有するアモルファス扁平金属軟磁性粉末Bとを、
前記扁平金属軟磁性粉末Aとアモルファス扁平金属軟磁性粉末Bとの混合比が1:9〜9:1の範囲内にあるように混合してなる低保磁力かつ高透磁率を有する扁平金属混合粉末、に特徴を有するものである。
この発明の低保磁力かつ高透磁率を有する扁平金属混合粉末は、主に樹脂中に扁平面が配向するように分散させてシートなどの電磁干渉抑制体を作製する。シートからなる電磁干渉抑制体の場合は、前記低保磁力かつ高透磁率を有する扁平金属混合粉末の扁平面はシートの厚さ方向に対して直角方向に配向させる。したがって、この発明は、
(2)前記(1)記載の低保磁力かつ高透磁率を有する扁平金属混合粉末の扁平面が樹脂中に配向して分散している低保磁力かつ高透磁率を有する複合材からなる電磁干渉抑制体、
(3)前記電磁干渉抑制体は複合材からなるシートであって、前記低保磁力かつ高透磁率を有する扁平金属混合粉末の扁平面がシートの厚さ方向に対して直角方向に配向して分散している前記(2)記載の電磁干渉抑制体シート、に特徴を有するものである。
この発明の低保磁力かつ高透磁率を有する扁平金属混合粉末を製造するには、まず、特許文献1に記載された扁平金属軟磁性粉末Aを用意する。次に前記アモルファス扁平金属軟磁性粉末Bを用意する。前記アモルファス扁平金属軟磁性粉末Bは、出湯直前にS:0.1%以下(0%は含まず)をSまたはフェロ硫黄の形で添加してSi:4〜21%、B:4〜21%、Cr:5%以下(0%は含まず)、C:5%以下(0%は含まず)、Mn:1%以下(0%は含まず)、S:0.1%以下(0%は含まず)を含有し、残部がFeおよび不可避不純物からなる成分組成の溶湯を作製し、出湯した溶湯にジェットノイズにより噴出ガスを吹き付け、この吹き付けられた溶湯を分断して冷却水層へ送り、急冷凝固してアモルファス化されアモルファス金属軟磁性粉末を作製する。このアモルファス金属軟磁性粉末を原料粉末とし、このアモルファス金属軟磁性粉末をアトライターミルにて粉砕・扁平化し、ついで、これを熱処理炉に入れ、不活性ガス雰囲気中、温度:380〜460℃で加熱した後、分級して所望の粒径・アスペクト比を有するアモルファス扁平金属軟磁性粉末Bを作製することができる。
次に、前記用意した扁平金属軟磁性粉末Aとアモルファス扁平金属軟磁性粉末Bを1:9〜9:1の範囲内で混合することによりこの発明の低保磁力かつ高透磁率を有する扁平金属混合粉末を製造することができる。
また、この発明の電磁干渉抑制体の製造に際に使用する樹脂は、塩素化ポリエチレン、シリコーン、ウレタン、酢酸ビニル、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ABS樹脂、塩化ビニル、ポリビニルブチラル、熱可塑性エラストマー、EM−PM−BD共重合ゴム、スチレン‐ブタジエン系ゴム、アクリロニトリル−ブタジエン系ゴムなどであり、さらにこれらをブレンドしたものまたはブレンドし変成したものであってもよい。
次に、この発明の低保磁力かつ高透磁率を有する扁平金属混合粉末を構成するアモルファス扁平金属軟磁性粉末Bの成分組成、平均粒径およびアスペクト比の限定理由を説明する。なお、扁平金属軟磁性粉末Aは特許文献1にも記載されている扁平金属軟磁性粉末であり、一般によく知られた扁平金属軟磁性粉末であるのでその限定理由は説明は省略する。
(a)成分組成の限定理由:
Si:
Siは、アモルファス形成作用を有するので添加するが、その含有量が4%未満では十分な効果が得られないので好ましくなく、一方、21%を越えて含有すると、飽和磁束密度が低下するので好ましくない。したがって、アモルファス扁平金属軟磁性粉末Bに含まれるSiは4〜21%に定めた。
B:
Bは、アモルファス形成作用を有するので添加するが、その含有量が4%未満では十分な効果が得られないので好ましくなく、一方、21%を越えて含有すると、飽和磁束密度が低下するので好ましくない。したがって、アモルファス扁平金属軟磁性粉末Bに含まれるSiは4〜21%に定めた。
Cr:
Crは、耐食性改善の作用を有するので添加するが、その含有量を5%を越えて含有すると、透磁率が低下するので好ましくない。したがって、アモルファス扁平金属軟磁性粉末Bに含まれるCrを5%以下(0%は含まず)に定めた。Cr含有量の一層好ましい範囲は0.5〜3%である。
C:
Cは、飽和磁束密度を大きくする作用を有するので添加するが、その含有量を5%を越えて含有すると、保磁力を増大させ、さらに熱安定性も劣化するようになるので好ましくない。したがって、アモルファス扁平金属軟磁性粉末Bに含まれるCを5%以下(0%は含まず)に定めた。C含有量の一層好ましい範囲は1〜3%である。
Mn:
Mnは、アモルファス金属軟磁性粉末を微細化するときに必要なS成分の磁気特性低下を抑制する作用を有するので添加するが、その含有量を1%を越えて含有すると、飽和磁束密度が低下するので好ましくない。したがって、アモルファス扁平金属軟磁性粉末Bに含まれるMnを1%以下(0%は含まず)に定めた。Mn含有量の一層好ましい範囲は0.3〜0.8%である。
S:
Sは、アモルファス金属軟磁性粉末を作製するときに得られる粉末を微細化する作用を有するので微量添加するが、その含有量を0.1%を越えて含有すると、磁気特性が悪化するので好ましくない。したがって、アモルファス扁平金属軟磁性粉末Bに含まれるSを0.1%以下(0%は含まず)に定めた。S含有量の一層好ましい範囲は0.001〜0.05%である。
(b)平均粒径:
アモルファス扁平金属軟磁性粉末Bの平均粒径が20μm未満では強加工による残留歪が著しく増大して透磁率が低下するので好ましくなく、一方、100μmを越えると薄いシート状の電磁干渉抑制体の作製が困難になるので好ましくない。したがって、アモルファス扁平金属軟磁性粉末Bの平均粒径を20〜100μmに定めた。
(c)アスペクト比(平均粒径/平均厚さ):
アスペクト比が5未満では扁平粉末の透磁率が小さくなるので好ましくなく、一方、アスペクト比が100を越えると樹脂に扁平粉末を分散させる際に扁平粉末が変形して扁平粉末の保磁力が増大するので好ましくない。したがって、アモルファス扁平金属軟磁性粉末Bのアスペクト比を20〜100に定めた。
(d)扁平金属軟磁性粉末Aとアモルファス扁平金属軟磁性粉末Bの混合比:
扁平金属軟磁性粉末Aとアモルファス扁平金属軟磁性粉末Bの混合比を1:9〜9:1の範囲内に定めたのは、アモルファス扁平金属軟磁性粉末Bの混合比率が1:9を越えて多くなると樹脂中に高充填かつ均一に分散できなくなるので好ましくないためであり、一方、アモルファス扁平金属軟磁性粉末Bの混合比率が9:1よりも少なくなると低保磁力を有さなくなるので好ましくないためである。
この発明の低保磁力かつ高透磁率を有する扁平金属混合粉末は、低保磁力かつ高透磁率を有する電磁干渉抑制体を作製することができ、電気および電子産業において優れた効果をもたらすものである。
センダスト合金原料を高周波溶解して表1に示される成分組成のセンダスト合金からなる溶湯を作製し、これら溶湯を水アトマイズしてアトマイズ粉末を作製し、そのアトマイズ粉末を分級処理して粒径:40μm以下のアトマイズ原料粉末を作製し、このアトマイズ原料粉末をさらにアトライターにて粉砕・扁平化し、次いでこれの一部を熱処理炉に入れ、Arガス雰囲気中、温度:500℃で2時間保持の熱処理を行なった。この熱処理した粉末を風力分級機により分級し、表1に示される平均粒径およびアスペクト比を有する扁平金属軟磁性粉末A−1〜A−3を作製した。
Figure 2008115404
次に、合金原料を高周波溶解して表2に示される成分組成の溶湯を作製し、これら溶湯を高速回転水流アトマイズ法によりアモルファス金属軟磁性粉末を作製し、このアモルファス金属軟磁性粉末をアトライターミルにて粉砕・扁平化し、ついで、これを熱処理炉に入れ、不活性ガス雰囲気中、温度:500℃で加熱した後、分級して表2に示される平均粒径およびアスペクト比を有するアモルファス扁平金属軟磁性粉末B−1〜B−12を作製した。
Figure 2008115404
表1に示される扁平金属軟磁性粉末A−1〜A−3に、表2に示されるアモルファス扁平金属軟磁性粉末B−1〜B−12を表3〜4に示される割合となるように配合し混合して本発明扁平金属混合粉末1〜30および比較扁平金属混合粉末1〜4を作製した。
さらに、表1に示される扁平金属軟磁性粉末A−3を従来扁平金属軟磁性粉末として使用した。
これら本発明扁平金属混合粉末1〜30、比較扁平金属混合粉末1〜4および従来扁平金属軟磁性粉末をそれぞれ50体積%と塩素化ポリエチレン樹脂:50体積%を混合し混練したのち、カレンダーロール成形し、本発明扁平金属混合粉末1〜30、比較扁平金属混合粉末1〜4および従来扁平金属軟磁性粉末がシート面に平行に配列した厚み:0.2mmを有するシート状電磁干渉抑制体を作製し、これらシート状電磁干渉抑制体の保磁力および透磁率を測定し、その結果を表3〜4に示した。
Figure 2008115404

Figure 2008115404
表3〜4に示される結果から、本発明扁平金属混合粉末1〜30を用いて作製したシート状電磁干渉抑制体は、センダスト合金からなる従来扁平金属軟磁性粉末を用いて作製したシート状電磁干渉抑制体よりも保磁力が低くなり、さらに透磁率が高くなることが分かる。しかし、この発明の条件から外れた比較扁平金属混合粉末1〜4を用いて作製したシート状電磁干渉抑制体は保磁力が高くなったり、透磁率が低くなったりして好ましくないことがわかる。

Claims (3)

  1. 原子%で(以下、%は原子%を示す)、Si:14.3〜19.9%、Al:5.5〜13.8%を含有し、残部:Feおよび不可避不純物からなる成分組成、並びに平均粒径:10〜100μmおよびアスペクト比(平均粒径/平均厚さ):5〜500の扁平度を有する扁平金属軟磁性粉末Aと、
    Si:4〜21%、B:4〜21%、Cr:5%以下(0%は含まず)、C:5%以下(0%は含まず)、Mn:1%以下(0%は含まず)、S:0.1%以下(0%は含まず)を含有し、残部がFeおよび不可避不純物からなる成分組成、並びに平均粒径:20〜100μmおよびアスペクト比(平均粒径/平均厚さ):5〜100の扁平度を有するアモルファス扁平金属軟磁性粉末Bを、
    前記扁平金属軟磁性粉末Aとアモルファス扁平金属軟磁性粉末Bとの混合比が1:9〜9:1の範囲内にあるように混合してなることを特徴とする低保磁力かつ高透磁率を有する扁平金属混合粉末。
  2. 請求項1記載の低保磁力かつ高透磁率を有する扁平金属混合粉末の扁平面が樹脂中に配向して分散している低保磁力かつ高透磁率を有する複合材からなることを特徴とする電磁干渉抑制体。
  3. 前記電磁干渉抑制体は複合材からなるシートであって、前記低保磁力かつ高透磁率を有する扁平金属混合粉末の扁平面がシートの厚さ方向に対して直角方向に配向して分散していることを特徴とする請求項2記載の電磁干渉抑制体シート。
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