<第1実施形態>
以下、タイヤにおける第1の実施形態について、図1〜図10を参酌して説明する。なお、各図(図11〜図13も同様)において、図面の寸法比と実際の寸法比とは、必ずしも一致しておらず、また、各図面の間での寸法比も、必ずしも一致していない。
図1に示すように、本実施形態に係るタイヤ1は、ビードを有する一対のビード部11と、各ビード部11からタイヤ径方向D2の外側に延びるサイドウォール部12と、一対のサイドウォール部12のタイヤ径方向D2の外端部に連接され、地面と接するトレッド面を構成するトレッド部13とを備えている。本実施形態においては、タイヤ1は、内部に空気が入れられる空気入りタイヤであって、リム100に装着される。
また、タイヤ1は、一対のビードの間に架け渡されるカーカス層14と、カーカス層14の内側に配置され、空気圧を保持するために、気体の透過を阻止する機能に優れるインナーライナー15とを備えている。カーカス層14及びインナーライナー15は、ビード部11、サイドウォール部12、及びトレッド部13に亘って、タイヤ内周に沿って配置されている。
図1(以下の図も同様)において、第1の方向D1は、タイヤ幅方向D1であり、第2の方向D2は、タイヤ1の直径方向であるタイヤ径方向D2であり、図示していないが、第3の方向D3は、タイヤ回転軸周りの方向であるタイヤ周方向D3である。また、タイヤ赤道面S1は、タイヤ回転軸に直交する面で且つタイヤ幅方向D1の中心に位置する面であり、タイヤ子午面は、タイヤ回転軸を含む面で且つタイヤ赤道面S1と直交する面である。
トレッド部13は、タイヤ径方向D2の外側表面であるトレッド面を有するトレッドゴム2と、トレッドゴム2とカーカス層14との間に配置されるベルト層16とを備えている。また、トレッドゴム2は、タイヤ径方向D2の外側に配置されるキャップゴム3と、キャップゴム3とベルト層16との間に配置されるベースゴム17とを備えている。
図2に示すように、トレッドゴム2は、タイヤ周方向D3に沿って延びる複数(図2においては、4つ)の周溝21を備えており、周溝21は、タイヤ1の摩耗度を判別するために、溝底からタイヤ径方向D2の外側に突出するトレッドウエアインジケータ(以下、「TWインジケータ」という)21aを備えている。また、トレッドゴム2は、タイヤ幅方向D1の最外側に配置される周溝21,21間に配置される複数のセンター溝22を備えている。
そして、トレッドゴム2は、タイヤ幅方向D1の最外側に配置される周溝21よりもタイヤ幅方向D1の外側に、複数のショルダー溝23及び複数のショルダーサイプ24を備えている。なお、ショルダー溝23は、タイヤ幅方向D1の最外側に配置される周溝21よりもタイヤ幅方向D1の外側に配置される凹部のうち、最も幅が広い凹部を指し、ショルダーサイプ24は、当該凹部のうち、ショルダー溝23を除く残りの凹部を指す。
ショルダー溝23は、一部がタイヤ周方向D3に対して傾斜して交差するように、配置されている。図2においては、ショルダー溝23のタイヤ幅方向D1の内側の部分は、タイヤ周方向D3に対して、右上がり(左下がり)で傾斜して交差している。したがって、ショルダー溝23により発生するPRCFは、右向きの力となる。なお、図2(以下の図も同様)において、第4の方向D4は、タイヤ1が回転するタイヤ回転方向D4であり、タイヤ回転方向D4側が踏み込み側であり、タイヤ回転方向D4と反対方向側が蹴り出し側となる。
図3〜図6に示すように、キャップゴム3は、第1及び第2リボンゴム4,5がタイヤ周方向D3に沿って螺旋状に巻かれて、形成されている。また、キャップゴム3は、第1及び第2リボンゴム4,5がタイヤ径方向D2で2層となるように巻かれて、形成されている。
これにより、キャップゴム3は、タイヤ径方向D2で複数(本実施形態においては、2層)のゴム層31,32を備えている。具体的には、キャップゴム3は、タイヤ径方向D2の外側表面であるトレッド面を有する外ゴム層31と、外ゴム層31とベースゴム17との間に配置される内ゴム層32とを備えている。
なお、図3は、外ゴム層31及び内ゴム層32の同じ位置における第1及び第2リボンゴム4,5の配置を示している。そして、図2及び図3(以下の図も同様)において、第1リボンゴム4は、網掛け領域で図示され、第2リボンゴム5は、無地領域で図示されている。また、図2及び図3において、平面S2は、所定のタイヤ子午面S2である。
また、第1及び第2リボンゴム4,5において、断面形状は、略同じである。即ち、第1及び第2リボンゴム4,5において、各方向D1〜D3の寸法は、略同じである。本実施形態においては、第1及び第2リボンゴム4,5の断面形状は、幅方向中央部が最大の厚みで、該中央部から両側端に向かって厚みが次第に薄くなる略三角形状としている。
なお、第1及び第2リボンゴム4,5の断面形状は、成形対象となるトレッドゴム2(キャップゴム3)の形態に応じた種々の断面形状とすることができる。例えば、第1及び第2リボンゴム4,5の断面形状は、略台形状としてもよく、また、平板形状としてもよい。なお、第1及び第2リボンゴム4,5において、断面形状及び各方向D1〜D3の寸法は、異なっていてもよい。
また、第1リボンゴム4を構成するゴム(以下、「第1ゴム」ともいう)4aと、第2リボンゴム5を構成するゴム(以下、「第2ゴム」ともいう)5aとは、異なるゴムである。具体的には、第1ゴム4aの弾性率と第2ゴム5aの弾性率とは、異なっている。本実施形態においては、弾性率は、引張弾性率であって、JIS K7127に規定されている方法に準じて室温(25℃)で測定した値である。
例えば、第2ゴム5aの弾性率は、第1ゴム4aの弾性率の85%〜97%であることが好ましい。そして、例えば、第1ゴム4aの100%引張弾性率は、0.5MPa〜3.5MPaであることが好ましく、また、第2ゴム5aの100%引張弾性率は、0.4MPa〜3.4MPaであることが好ましい。
そして、第1ゴム4a及び第2ゴム5aの弾性率は、ベースゴム17の弾性率よりも、大きくなっている。なお、ベースゴム17は、第1及び第2ゴム4a,5aと異なる1つのゴムから形成されている。
また、本実施形態においては、第1ゴム4a及び第2ゴム5aは、非導電性ゴムである。例えば、非導電性ゴムは、体積抵抗率が108Ω・cm以上であるゴムを指す。なお、第1ゴム4a及び第2ゴム5aの少なくとも一方は、体積抵抗率が108Ω・cm未満である導電性ゴムであってもよい。
外ゴム層31において、各リボンゴム4,5は、タイヤ周方向D3に亘って、タイヤ周方向D3に対して傾斜して配置される傾斜部41,51を備えている。そして、第1及び第2リボンゴム4,5は、タイヤ幅方向D1で交互に配置されている。
これにより、外ゴム層31は、異なる弾性率を有する第1及び第2ゴム4a,5aがタイヤ幅方向D1で接合される接合部(以下、「外層接合部」ともいう)31aを備えている。そして、外層接合部31aは、それぞれタイヤ周方向D3に対して傾斜して交差するように、配置されている。
内ゴム層32において、各リボンゴム4,5は、タイヤ周方向D3と平行に配置される平行部42,52と、タイヤ幅方向D1にピッチ送りするために、タイヤ周方向D3に対して傾斜して配置されるピッチ送り傾斜部43,53とを備えている。そして、各リボンゴム4,5は、平行部42,52とピッチ送り傾斜部43,53とが繰り返すように連接して、配置されている。また、第1及び第2リボンゴム4,5は、タイヤ幅方向D1で交互に配置されている。
これにより、内ゴム層32は、異なる弾性率を有する第1及び第2ゴム4a,5aがタイヤ幅方向D1で接合される接合部(「以下、「内層接合部」ともいう)32aを備えている。そして、内層接合部32aは、それぞれタイヤ周方向D3に対して平行となるように、配置されている。
なお、内ゴム層32において、ピッチ送り傾斜部43,53は、タイヤ周方向D3に沿って螺旋状に巻かれる各リボンゴム4,5をタイヤ幅方向D1にピッチ送りするためのものであって、PRCFに影響しない。具体的には、ピッチ送り傾斜部43,53のタイヤ周方向D3の寸法は、平行部42,52のタイヤ周方向D3の寸法の3%以下であり、PRCFが発生する観点において、実質的に無視できる。
そして、図4においては、外層接合部31aは、タイヤ周方向D3に対して、左上がり(右下がり)で傾斜して交差している。これにより、外層接合部31aにより発生するPRCFは、左向きの力となる。また、内層接合部32aは、タイヤ周方向D3に対して、平行である。これにより、内層接合部32aによるPRCFは、発生しない。
なお、接合部32aがタイヤ周方向D3に対して平行であることは、接合部32aが、タイヤ周方向D3に対して、両側(図4において、左上がり及び右上がり)で傾斜して交差していることに含めることができる。したがって、外層接合部31a及び内層接合部32aは、それぞれタイヤ周方向D3に対して交差する方向が同じ(図3において、左上がり)となるように、配置されている。
また、外層接合部31aがタイヤ周方向D3に対して交差する角度θ1は、内層接合部32aがタイヤ周方向D3に対して交差する角度θ2(0°のため、図4で図示していない)よりも、大きい。即ち、各接合部31a,32aは、タイヤ周方向D3に対して交差する角度θ1,θ2がタイヤ径方向D2の内側のゴム層31,32ほど小さくなるように、配置されている。
ところで、本実施形態においては、図2及び図7に示すように、ショルダー溝23のタイヤ幅方向D1の内側の部分は、タイヤ周方向D3に対して、右上がりで傾斜して交差している。一方、図3及び図4に示すように、外層接合部31a及び内層接合部32aは、それぞれタイヤ周方向D3に対して、左上がりとなるように、配置されている。
したがって、ショルダー溝23の一部がタイヤ周方向D3に対して傾斜して交差する方向と、各接合部31a,32aがタイヤ周方向D3に対して傾斜して交差する方向とは、反対方向である。これにより、ショルダー溝23により発生するPRCFと、各接合部31a,32aにより発生するPRCFとは、反対方向の力となるため、打ち消し合うことになる。
例えば、本実施形態に係るトレッドゴム2は、各接合部31a,32aにより発生するPRCFを除いたタイヤ(即ち、仮に、キャップゴム3が1種類のゴムで形成された場合のタイヤ)に作用するPRCFの絶対値が、大きいタイヤに採用される。具体的には、本実施形態に係るトレッドゴム2(キャップゴム3)は、当該PRCFの絶対値が、50N以上であるタイヤ、好ましくは、70N以上であるタイヤ、さらに好ましくは、90N以上であるタイヤに採用される。
このように、タイヤ摩耗初期において、ショルダー溝23により発生するPRCFが大き過ぎるため、外層接合部31aにより発生するPRCFが、当該PRCFを打ち消している。これにより、タイヤ摩耗初期において、タイヤ1に作用するPRCFが適正になる。
また、各接合部31a,32aがタイヤ周方向D3に対して交差する角度θ1,θ2が、タイヤ径方向D2の内側に向け小さくなっている。したがって、タイヤ1が摩耗することで、ショルダー溝23により発生するPRCFが小さくなるに伴って、内層接合部32aにより発生するPRCFも小さくなる。これにより、例えば、タイヤ摩耗末期まで、タイヤ1に作用するPRCFを適正にすることができる。
なお、接合部31aがタイヤ周方向D3に対して傾斜する場合には、以下の関係であることが好ましい。
0≦ θ1/(90°−θ3) ≦200%
さらには、以下の関係であることがより好ましい。
50%≦ θ1/(90°−θ3) ≦150%
ここで、角度θ1は、当該接合部31aがタイヤ周方向D3に対して傾斜して交差する角度θ1(図3参照)であり、角度θ3は、ショルダー溝23の少なくとも一部がタイヤ周方向D3に対して傾斜して交差する角度θ3(図7参照)である。
また、図8に示すように、内ゴム層32において、タイヤ径方向D2の外側面32bは、TWインジケータ21aのタイヤ径方向D2の外側端21bよりも、タイヤ径方向D2の外側となるように配置されている。換言すれば、内ゴム層32と外ゴム層31との接合面は、TWインジケータ21aのタイヤ径方向D2の外側端21bよりも、タイヤ径方向D2の外側となるように配置されている。
そして、内ゴム層32において、タイヤ径方向D2の内側面32cは、TWインジケータ21aのタイヤ径方向D2の外側端21bよりも、タイヤ径方向D2の内側となるように配置されている。換言すれば、内ゴム層32とベースゴム17との接合面は、TWインジケータ21aのタイヤ径方向D2の外側端21bよりも、タイヤ径方向D2の内側となるように配置されている。
したがって、TWインジケータ21aのタイヤ径方向D2の外側端21bは、タイヤ径方向D2において、内ゴム層32における、タイヤ径方向D2の外側面32bと内側面32cとの間に配置されている。このように、タイヤ摩耗初期からタイヤ摩耗中期においては、外ゴム層31が、タイヤ径方向D2の外側表面に現れており、タイヤ摩耗後期からタイヤ摩耗末期においては、内ゴム層32が、タイヤ径方向D2の外側表面に現れている。
本実施形態に係るタイヤ1の構成については以上の通りであり、次に、本実施形態に係るタイヤ1の製造方法について、図9及び図10を参酌して説明する。
図9に示すように、成形装置70は、第1リボンゴム4となる第1ゴム4aを押し出す第1押出部71と、第2リボンゴム5となる第2ゴム5aを押し出す第2押出部72とを備えている。また、成形装置70は、各押出部71,72から押し出されて形成される紐状のリボンゴム4,5が巻き付けられる巻付部73を備えている。
押出部71,72は、リボンゴム4,5の断面形状が一定の形状となるように、ゴム4a,5aを押し出している。そして、押出部71,72は、単位時間当たりのゴム4a,5aの押し出し量が一定となるように、ゴム4a,5aを押し出している。また、第1押出部71と第2押出部72とは、巻付部73を介在させて、巻付部73の直径方向で対向するように配置されている。
巻付部73は、円柱状に形成されており、軸周り(巻付回転方向D5)に回転可能である。これにより、巻付部73は、回転することで、押し出されて成形されたリボンゴム4,5が外周部に巻き付けられる。また、巻付部73は、押出部71,72に対して、軸方向に相対変位可能である。本実施形態においては、巻付部73が、軸方向に移動可能である。
そして、巻付部73が押出部71,72に対して不動である際には、リボンゴム4,5の平行部42,52が形成され、巻付部73が押出部71,72に対して軸方向に移動している際には、リボンゴム4,5の傾斜部41,51及びピッチ送り傾斜部43,53が形成される。これにより、図10に示すように、第1及び第2リボンゴム4,5は、タイヤ幅方向D1で交互に配置される。
その後、図示していないが、第1及び第2リボンゴム4,5がタイヤ径方向D2で2層となるように巻かれることで、外ゴム層31及び内ゴム層32からなるキャップゴム3が形成される。なお、キャップゴム3の製造方法は、斯かる方法に限られない。例えば、キャップゴム3は、紐状のリボンゴム4,5ではなく、シート状のゴム部材を貼り合せることで形成されてもよい。
そして、例えば、拡径変形される工程を経ることで、未加硫のタイヤが成形される。なお、図10においては、キャップゴム3以外の構成11,12,14〜17を構成するための部材は、図示されていない。そして、未加硫のタイヤが加硫装置で加硫されることで、加硫されたタイヤ1が製造される。
以上より、本実施形態に係るタイヤ1は、タイヤ径方向D2の外側表面を有するトレッドゴム2を備え、前記トレッドゴム2は、タイヤ径方向D2で複数のゴム層31,32を備え、各前記ゴム層31,32は、異なる弾性率を有するゴム4a,5aがタイヤ幅方向D1で接合される接合部31a,32aを備え、各前記ゴム層31,32の前記接合部31a,32aは、それぞれタイヤ周方向D3に対して交差する方向が同じとなるように、配置され、さらに、各前記ゴム層31,32の前記接合部31a,32aは、タイヤ周方向D3に対して交差する角度θ1,θ2がタイヤ径方向D2の内側のゴム層31,32ほど大きく又は小さくなる(本実施形態では、小さくなる)ように、配置される。
斯かる構成によれば、接合部31a,32aは、異なる弾性率を有するゴム4a,5aがタイヤ幅方向D1で接合されて、成る。そして、各ゴム層31,32の接合部31a,32aは、それぞれタイヤ周方向D3に対して交差する方向が同じとなるように、配置されている。これにより、ゴム層31,32のゴム配置によるPRCFは、接合部31a,32aがタイヤ周方向D3に対して交差する方向に対応して、発生する。
そして、各ゴム層31,32の接合部31a,32aは、タイヤ周方向D3に対して交差する角度θ1,θ2がタイヤ径方向D2の内側のゴム層31,32ほど大きく又は小さくなる(本実施形態では、小さくなる)ように、配置されている。これにより、タイヤ1が摩耗することで、ショルダー溝23により発生するPRCFが小さくなることに対応して、ゴム層31,32のゴム配置により発生するPRCFは、大きく又は小さくなる(本実施形態では、小さくなる)。したがって、タイヤ1の摩耗に対して、PRCFが変化することを抑制することができる。
また、本実施形態に係るタイヤ1においては、前記トレッドゴム2は、タイヤ周方向D3に沿って延びる複数の周溝21と、タイヤ幅方向D1の最外側に配置される前記周溝21よりもタイヤ幅方向D1の外側に配置されるショルダー溝23と、を備え、前記ショルダー溝23は、少なくとも一部がタイヤ周方向D3に対して傾斜して交差するように、配置され、各前記ゴム層31,32の前記接合部31a,32aは、前記ショルダー溝23の少なくとも一部がタイヤ周方向D3に対して傾斜して交差する方向と反対方向で、それぞれタイヤ周方向D3に対して傾斜して交差するように、配置され、さらに、各前記ゴム層31,32の前記接合部31a,32aは、タイヤ周方向D3に対して交差する角度θ1,θ2がタイヤ径方向D2の内側のゴム層31,32ほど小さくなるように、配置される、という構成である。
斯かる構成によれば、ショルダー溝23の少なくとも一部がタイヤ周方向D3に対して傾斜して交差する方向と、各ゴム層31,32の接合部31a,32aがそれぞれタイヤ周方向D3に対して傾斜して交差する方向とは、反対方向である。これにより、ショルダー溝23により発生するPRCFの方向と、ゴム層31,32のゴム配置による発生するPRCFの方向とは、反対方向である。即ち、ゴム層31,32のゴム配置による発生するPRCFは、ショルダー溝23により発生するPRCFを打ち消す作用となる。
そして、各ゴム層31,32の接合部31a,32aは、タイヤ周方向D3に対して交差する角度θ1,θ2がタイヤ径方向D2の内側のゴム層31,32ほど小さくなるように、配置されている。これにより、タイヤ1が摩耗することに伴って、ショルダー溝23により発生するPRCFが小さくなることに対応して、ゴム層31,32のゴム配置により発生するPRCFは、小さくなる。したがって、タイヤ1の摩耗に対して、PRCFが変化することを抑制することができる。
また、本実施形態に係るタイヤ1においては、タイヤ径方向D2の最内側に配置される前記ゴム層32の前記接合部32aは、タイヤ周方向D3に対して平行となるように、配置される、という構成である。
斯かる構成によれば、タイヤ径方向D2の最内側に配置されるゴム層32の接合部32aが、タイヤ周方向D3に対して平行となるように、配置されている。これにより、当該ゴム層32がタイヤ径方向D2の外側表面に現れた際には、発生していた偏摩耗を均一摩耗に近づけることができる。
また、本実施形態に係るタイヤ1においては、前記トレッドゴム2は、タイヤ周方向D3に沿って延びる周溝21を備え、前記周溝21は、タイヤ1の摩耗度を判別するために、溝底からタイヤ径方向D2の外側に突出するトレッドウエアインジケータ21aを備え、前記トレッドウエアインジケータ21aのタイヤ径方向D2の外側端21bは、タイヤ径方向D2において、タイヤ径方向D2の最内側に配置される前記ゴム層32における、タイヤ径方向D2の外側面32bと内側面32cとの間に配置される、という構成である。
斯かる構成によれば、周溝21は、タイヤ1の摩耗度を判別するために、溝底からタイヤ径方向D2の外側に突出するトレッドウエアインジケータ21aを備えている。一般的に、トレッドウエアインジケータ21aのタイヤ径方向D2の外側端21bが、タイヤ径方向D2の外側表面に現れることで、タイヤ1は、使用限界と判別され、交換される。
そして、タイヤ径方向D2の最内側に配置されるゴム層32において、タイヤ径方向D2の外側面32bは、トレッドウエアインジケータ21aのタイヤ径方向D2の外側端21bよりも、タイヤ径方向D2の外側となるように配置されている。これにより、タイヤ1が使用限界まで使用される迄に、タイヤ径方向D2の最内側に配置されるゴム層32が、タイヤ1のタイヤ径方向D2の外側表面として現れる。
また、当該ゴム層32において、タイヤ径方向D2の内側面32cは、トレッドウエアインジケータ21aのタイヤ径方向D2の外側端21bよりも、タイヤ径方向D2の内側となるように配置されている。これにより、タイヤ1が使用限界まで使用された場合でも、当該ゴム層32が、タイヤ1のタイヤ径方向D2の外側表面に残っている。このように、異なる弾性率を有するゴム4a,5aで形成されるゴム層31,32を、無駄なく適切な位置に配置することができる。
なお、タイヤ1は、上記した第1実施形態に係るタイヤ1の構成及び作用に限定されるものではない。例えば、上記した第1実施形態に係るタイヤ1に対して、以下のような変更が行われてもよい。
上記第1実施形態に係るタイヤ1においては、タイヤ径方向D2の最内側に配置されるゴム層32の接合部32aは、タイヤ周方向D3に対して平行となるように、配置される、という構成である。しかしながら、タイヤは、斯かる構成に限られない。例えば、図11に示すように、タイヤ径方向D2の最内側に配置されるゴム層32の接合部32aは、タイヤ周方向D3に対して傾斜して交差するように、配置される、という構成でもよい。
図11に係るキャップゴム3においては、内層接合部32aがタイヤ周方向D3に対して交差する方向は、外層接合部31aがタイヤ周方向D3に対して交差する方向と、同じ(図11において、左上がり)である。なお、各接合部31a,32aがタイヤ周方向D3に対して傾斜して交差する方向は、ショルダー溝23の一部がタイヤ周方向D3に対して傾斜して交差する方向と、反対方向である。
また、内層接合部32aがタイヤ周方向D3に対して交差する角度θ2は、外層接合部31aがタイヤ周方向D3に対して交差する角度θ1よりも、小さくなっている。即ち、各接合部31a,32aは、タイヤ周方向D3に対して交差する角度θ1,θ2がタイヤ径方向D2の内側のゴム層31,32ほど小さくなるように、配置されている。
<第2実施形態>
次に、タイヤ1における第2の実施形態について、図12及び図13を参酌して説明する。なお、図12及び図13において、図1〜図10の符号と同一の符号を付した部分は、第1実施形態と略同様の構成又は略同様の機能(作用)を有する要素を表し、その説明は、繰り返さない。
本実施形態に係るタイヤ1は、第1実施形態に係るタイヤ1に対して、キャップゴム3の構成で相違している。したがって、以下、本実施形態に係るキャップゴム3の構成について、図12及び図13を参酌して説明する。
外ゴム層31において、各リボンゴム4,5は、タイヤ周方向D3と平行に配置される平行部42,52と、タイヤ幅方向D1にピッチ送りするために、タイヤ周方向D3に対して傾斜して配置されるピッチ送り傾斜部43,53とを備えている。そして、各リボンゴム4,5は、平行部42,52とピッチ送り傾斜部43,53とが繰り返すように連接して、配置されている。また、第1及び第2リボンゴム4,5は、タイヤ幅方向D1で交互に配置されている。
これにより、外ゴム層31は、異なる弾性率を有する第1及び第2ゴム4a,5aがタイヤ幅方向D1で接合される接合部(「以下、「外層接合部」ともいう)31aを備えている。そして、外層接合部31aは、それぞれタイヤ周方向D3に対して平行となるように、配置されている。
なお、外ゴム層31において、ピッチ送り傾斜部43,53は、タイヤ周方向D3に沿って螺旋状に巻かれる各リボンゴム4,5をタイヤ幅方向D1にピッチ送りするためのものであって、PRCFに影響しない。具体的には、ピッチ送り傾斜部43,53のタイヤ周方向D3の寸法は、平行部42,52のタイヤ周方向D3の寸法の3%以下であり、PRCFが発生する観点において、実質的に無視できる。
内ゴム層32において、各リボンゴム4,5は、タイヤ周方向D3に亘って、タイヤ周方向D3に対して傾斜して配置される傾斜部41,51を備えている。そして、第1及び第2リボンゴム4,5は、タイヤ幅方向D1で交互に配置されている。
これにより、内ゴム層32は、異なる弾性率を有する第1及び第2ゴム4a,5aがタイヤ幅方向D1で接合される接合部(以下、「内層接合部」ともいう)32aを備えている。そして、内層接合部32aは、それぞれタイヤ周方向D3に対して傾斜して交差するように、配置されている。
そして、外層接合部31aは、タイヤ周方向D3に対して、平行である。これにより、外層接合部31aによるPRCFは、発生しない。また、図13においては、内層接合部32aは、タイヤ周方向D3に対して、右上がり(左下がり)で傾斜して交差している。これにより、内層接合部32aにより発生するPRCFは、右向きの力となる。
なお、接合部31aがタイヤ周方向D3に対して平行であることは、接合部31aが、タイヤ周方向D3に対して、両側(図13において、左上がり及び右上がり)で傾斜して交差していることに含めることができる。したがって、外層接合部31a及び内層接合部32aは、それぞれタイヤ周方向D3に対して交差する方向が同じ(図13において、右上がり)となるように、配置されている。
また、内層接合部32aがタイヤ周方向D3に対して交差する角度θ2は、外層接合部31aがタイヤ周方向D3に対して交差する角度θ1(0°のため、図13で図示していない)よりも、大きい。即ち、各接合部31a,32aは、タイヤ周方向D3に対して交差する角度θ1,θ2がタイヤ径方向D2の内側のゴム層31,32ほど大きくなるように、配置されている。
ところで、本実施形態においては、図2及び図7に示すように、ショルダー溝23のタイヤ幅方向D1の内側の部分は、タイヤ周方向D3に対して、右上がりで傾斜して交差している。一方、図13に示すように、外層接合部31a及び内層接合部32aは、それぞれタイヤ周方向D3に対して、右上がりとなるように、配置されている。
したがって、ショルダー溝23の一部がタイヤ周方向D3に対して傾斜して交差する方向と、各接合部31a,32aがタイヤ周方向D3に対して傾斜して交差する方向とは、同じ方向である。これにより、ショルダー溝23により発生するPRCFと、各接合部31a,32aにより発生するPRCFとは、同じ方向の力となるため、助長することになる。
例えば、本実施形態に係るトレッドゴム2は、各接合部31a,32aにより発生するPRCFを除いたタイヤ(即ち、仮に、キャップゴム3が1種類のゴムで形成された場合のタイヤ)に作用するPRCFの絶対値が、適正な(又は小さい)タイヤに採用される。具体的には、本実施形態に係るトレッドゴム2(キャップゴム3)は、当該PRCFの絶対値が、50N未満であるタイヤ、好ましくは、30N以下であるタイヤ、さらに好ましくは、10N以下であるタイヤに採用される。
このように、タイヤ摩耗初期において、ショルダー溝23により発生するPRCFが適正であるため、外層接合部31aによりPRCFは、発生しない。これにより、タイヤ摩耗初期において、タイヤ1に作用するPRCFが適正になる。
また、各接合部31a,32aがタイヤ周方向D3に対して交差する角度θ1,θ2が、タイヤ径方向D2の内側に向け大きくなっている。したがって、タイヤ1が摩耗することで、ショルダー溝23により発生するPRCFが小さくなるに伴って、内層接合部32aにより発生するPRCFが大きくなる。これにより、例えば、タイヤ摩耗末期まで、タイヤ1に作用するPRCFを適正にすることができる。
以上より、本実施形態係るタイヤ1は、タイヤ径方向D2の外側表面を有するトレッドゴム2を備え、前記トレッドゴム2は、タイヤ径方向D2で複数のゴム層31,32を備え、各前記ゴム層31,32は、異なる弾性率を有するゴム4a,5aがタイヤ幅方向D1で接合される接合部31a,32aを備え、各前記ゴム層31,32の前記接合部31a,32aは、それぞれタイヤ周方向D3に対して交差する方向が同じとなるように、配置され、さらに、各前記ゴム層31,32の前記接合部31a,32aは、タイヤ周方向D3に対して交差する角度θ1,θ2がタイヤ径方向D2の内側のゴム層31,32ほど大きく又は小さくなる(本実施形態では、大きくなる)ように、配置される。
斯かる構成によれば、接合部31a,32aは、異なる弾性率を有するゴム4a,5aがタイヤ幅方向D1で接合されて、成る。そして、各ゴム層31,32の接合部31a,32aは、それぞれタイヤ周方向D3に対して交差する方向が同じとなるように、配置されている。これにより、ゴム層31,32のゴム配置によるPRCFは、接合部31a,32aがタイヤ周方向D3に対して交差する方向に対応して、発生する。
そして、各ゴム層31,32の接合部31a,32aは、タイヤ周方向D3に対して交差する角度θ1,θ2がタイヤ径方向D2の内側のゴム層31,32ほど大きく又は小さくなる(本実施形態では、大きくなる)ように、配置されている。これにより、タイヤ1が摩耗することで、ショルダー溝23により発生するPRCFが小さくなることに対応して、ゴム層31,32のゴム配置により発生するPRCFは、大きく又は小さくなる(本実施形態では、大きくなる)。したがって、タイヤ1の摩耗に対して、PRCFが変化することを抑制することができる。
また、本実施形態係るタイヤ1においては、前記トレッドゴム2は、タイヤ周方向D3に沿って延びる複数の周溝21と、タイヤ幅方向D1の最外側に配置される前記周溝21よりもタイヤ幅方向D1の外側に配置されるショルダー溝23と、を備え、前記ショルダー溝23は、少なくとも一部がタイヤ周方向D3に対して傾斜して交差するように、配置され、各前記ゴム層31,32の前記接合部31a,32aは、前記ショルダー溝23の少なくとも一部がタイヤ周方向D3に対して傾斜して交差する方向と同じ方向で、それぞれタイヤ周方向D3に対して傾斜して交差するように、配置され、さらに、各前記ゴム層31,32の前記接合部31a,32aは、タイヤ周方向D3に対して交差する角度θ1,θ2がタイヤ径方向D2の内側のゴム層31,32ほど大きくなるように、配置される、という構成である。
斯かる構成によれば、ショルダー溝23の少なくとも一部がタイヤ周方向D3に対して傾斜して交差する方向と、各ゴム層31,32の接合部31a,32aがそれぞれタイヤ周方向D3に対して傾斜して交差する方向とは、同じ方向である。これにより、ショルダー溝23により発生するPRCFの方向と、ゴム層31,32のゴム配置による発生するPRCFの方向とは、同じ方向である。即ち、ゴム層31,32のゴム配置による発生するPRCFは、ショルダー溝23により発生するPRCFを助長する作用となる。
そして、各ゴム層31,32の接合部31a,32aは、タイヤ周方向D3に対して交差する角度θ1,θ2がタイヤ径方向D2の内側のゴム層31,32ほど大きくなるように、配置されている。これにより、タイヤ1が摩耗することに伴って、ショルダー溝23により発生するPRCFが小さくなることに対応して、ゴム層31,32のゴム配置により発生するPRCFは、大きくなる。したがって、タイヤ1の摩耗に対して、PRCFが変化することを抑制することができる。
また、本実施形態係るタイヤ1においては、タイヤ径方向D2の最外側に配置される前記ゴム層31の前記接合部31aは、タイヤ周方向D3に対して平行となるように、配置される、という構成である。
斯かる構成によれば、タイヤ径方向D2の最外側に配置されるゴム層31の接合部31aが、タイヤ周方向D3に対して平行となるように、配置されている。これにより、当該ゴム層31がタイヤ径方向D2の外側表面に現れている際においては、偏摩耗が発生することを抑制することができる。
なお、タイヤ1は、上記した第2実施形態に係るタイヤ1の構成及び作用に限定されるものではない。例えば、上記した第2実施形態に係るタイヤ1に対して、以下のような変更が行われてもよい。
上記第2実施形態に係るタイヤ1においては、タイヤ径方向D2の最外側に配置されるゴム層31の接合部31aは、タイヤ周方向D3に対して平行となるように、配置される、という構成である。しかしながら、タイヤは、斯かる構成に限られない。例えば、タイヤ径方向D2の最外側に配置されるゴム層31の接合部31aは、タイヤ周方向D3に対して傾斜して交差するように、配置される、という構成でもよい。
斯かる構成においては、各接合部31a,32aがタイヤ周方向D3に対して傾斜して交差する方向は、ショルダー溝23の一部がタイヤ周方向D3に対して傾斜して交差する方向と、同じ方向である。また、各接合部31a,32aは、タイヤ周方向D3に対して交差する角度θ1,θ2がタイヤ径方向D2の内側のゴム層31,32ほど大きくなっている。
なお、タイヤは、上記した実施形態の構成に限定されるものではなく、また、上記した作用効果に限定されるものではない。また、タイヤは、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、上記した複数の実施形態の各構成や各方法等を任意に採用して組み合わせてもよく(1つの実施形態に係る各構成や各方法等を他の実施形態に係る構成や方法等に適用してもよく)、さらに、下記する各種の変更例に係る構成や方法等を任意に一つ又は複数選択して、上記した実施形態に係る構成や方法等に採用してもよいことは勿論である。
上記実施形態に係るタイヤ1においては、TWインジケータ21aのタイヤ径方向D2の外側端21bは、タイヤ径方向D2において、タイヤ径方向D2の最内側に配置されるゴム層32における、タイヤ径方向D2の外側面32bと内側面32cとの間に配置される、という構成である。しかしながら、タイヤは、斯かる構成に限られない。
例えば、TWインジケータ21aのタイヤ径方向D2の外側端21bは、タイヤ径方向D2の最内側に配置されるゴム層32における、タイヤ径方向D2の外側面32bよりも、タイヤ径方向D2の外側に配置されている、という構成でもよい。また、例えば、TWインジケータ21aのタイヤ径方向D2の外側端21bは、タイヤ径方向D2の最内側に配置されるゴム層32における、タイヤ径方向D2の内側面32cよりも、タイヤ径方向D2の内側に配置されている、という構成でもよい。
また、上記実施形態に係るタイヤ1においては、接合部31a,32aは、トレッドゴム2の一部、即ち、キャップゴム3の外ゴム層31及び内ゴム層32に備えられている、という構成である。しかしながら、タイヤは、斯かる構成に限られない。例えば、接合部31a,32aは、トレッドゴム2の全体(キャップゴム3及びベースゴム17)に備えられている、という構成でもよい。
また、上記実施形態に係るタイヤ1においては、キャップゴム3は、弾性率の異なる二つのゴム4a,5aから形成されている、という構成である。しかしながら、タイヤは、斯かる構成に限られない。例えば、キャップゴム3(トレッドゴム2)は、弾性率の異なる三つ以上のゴムから形成されている、という構成でもよい。
また、タイヤ1は、加硫前のタイヤ(未加硫タイヤ)も、加硫後のタイヤ(加硫タイヤ)も含まれる。なお、加硫後のタイヤにおいては、タイヤ1を鋭利な刃物で切断し、その断面により、ゴム4a,5a(リボンゴム4,5)の境界面を観察することができる。これにより、ゴム4a,5a(リボンゴム4,5)の配置状態の特定は、可能である