以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて、本発明が詳細に説明される。
本発明においては、タイヤを正規リムに組み込み、タイヤの内圧が正規内圧に調整され、このタイヤに荷重がかけられていない状態は、正規状態と称される。本発明では、特に言及がない限り、タイヤ各部の寸法及び角度は、正規状態で測定される。
本明細書において正規リムとは、タイヤが依拠する規格において定められたリムを意味する。JATMA規格における「標準リム」、TRA規格における「Design Rim」、及びETRTO規格における「Measuring Rim」は、正規リムである。
本明細書において正規内圧とは、タイヤが依拠する規格において定められた内圧を意味する。JATMA規格における「最高空気圧」、TRA規格における「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に掲載された「最大値」、及びETRTO規格における「INFLATION PRESSURE」は、正規内圧である。
本明細書において正規荷重とは、タイヤが依拠する規格において定められた荷重を意味する。JATMA規格における「最大負荷能力」、TRA規格における「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に掲載された「最大値」、及びETRTO規格における「LOAD CAPACITY」は、正規荷重である。
図1は、本発明の一実施形態に係る重荷重用空気入りタイヤ2(以下、単に「タイヤ2」と称することがある。)の一部を示す。このタイヤ2は、例えば、トラック、バス等の重荷重車両に装着される。
図1は、タイヤ2の回転軸を含む平面に沿った、このタイヤ2の断面の一部を示す。この図1において、左右方向はタイヤ2の軸方向であり、上下方向はタイヤ2の径方向である。この図1の紙面に対して垂直な方向は、タイヤ2の周方向である。図1において、一点鎖線CLはタイヤ2の赤道面を表す。この図1においてタイヤ2は、リムR(正規リム)に組み込まれている。
図1において、軸方向に延びる実線BBLはビードベースラインである。このビードベースラインは、リムRのリム径(JATMA等参照)を規定する線である。
このタイヤ2は、トレッド4、一対のサイドウォール6、一対のビード8、一対のチェーファー10、カーカス12、ベルト14、一対のクッション層16、インナーライナー18及び一対のスチール補強層20を備える。
トレッド4は、その外面22、すなわちトレッド面22において路面と接触する。符号PCは、トレッド面22と赤道面との交点である。この交点PCは、タイヤ2の赤道である。
このトレッド4は、ベース部24と、このベース部24の径方向外側に位置するキャップ部26とを備える。ベース部24は、接着性が考慮された低発熱性の架橋ゴムからなる。キャップ部26は、耐摩耗性及びグリップ性能が考慮された架橋ゴムからなる。キャップ部26は、ベース部24全体を覆う。
このタイヤ2では、少なくとも3本の周方向溝28がトレッド4に刻まれる。これにより、このトレッド4には少なくとも4本の陸部30が構成される。このタイヤ2では、少なくとも4本の周方向溝28がトレッド4に刻まれ、これによりこのトレッド4に少なくとも5本の陸部30が構成されてもよい。図1に示されたタイヤ2では、4本の周方向溝28がトレッド4に刻まれ、このトレッド4に5本の陸部30が構成されている。
それぞれのサイドウォール6は、トレッド4の端に連なる。サイドウォール6は、トレッド4の端から径方向内向きに延びる。サイドウォール6は、架橋ゴムからなる。
それぞれのビード8は、サイドウォール6よりも径方向内側に位置する。ビード8は、コア32と、エイペックス34とを備える。
コア32は、周方向に延びる。コア32は、巻き回されたスチール製のワイヤを含む。
エイペックス34は、コア32の径方向外側に位置する。エイペックス34は、コア32から径方向外向きに延びる。エイペックス34は、内側エイペックス34uと外側エイペックス34sとを備える。内側エイペックス34u及び外側エイペックス34sは架橋ゴムからなる。外側エイペックス34sは内側エイペックス34uに比して軟質である。
それぞれのチェーファー10は、ビード8の軸方向外側に位置する。このチェーファー10は、サイドウォール6よりも径方向内側に位置する。チェーファー10は、リムRと接触する。チェーファー10は、架橋ゴムからなる。
カーカス12は、トレッド4、サイドウォール6及びチェーファー10の内側に位置する。カーカス12は、一方のビード8と他方のビード8とを架け渡す。カーカス12は、少なくとも1枚のカーカスプライ36を備える。このタイヤ2のカーカス12は、1枚のカーカスプライ36からなる。
このタイヤ2では、カーカスプライ36はそれぞれのビード8の周りにて軸方向内側から外側に向かって折り返される。このカーカスプライ36は、一方のビード8から他方のビード8に向かって延びるプライ本体36aと、このプライ本体36aに連なりそれぞれのコア32の周りにて軸方向内側から外側に向かって折り返される一対の折り返し部36bとを有する。
図示されないが、カーカスプライ36は並列された多数のカーカスコードを含む。これらカーカスコードは、トッピングゴムで覆われる。それぞれのカーカスコードは、赤道面と交差する。このタイヤ2では、カーカスコードが赤道面に対してなす角度は70°以上90°以下である。このカーカス12は、ラジアル構造を有する。このタイヤ2では、カーカスコードの材質はスチールである。有機繊維からなるコードが、カーカスコードとして用いられてもよい。
ベルト14は、トレッド4の径方向内側に位置する。このベルト14は、カーカス12の径方向外側に位置する。
ベルト14は、径方向に積層された複数の層38で構成される。このタイヤ2のベルト14は、4枚の層38で構成される。このタイヤ2では、ベルト14を構成する層38の数に特に制限はない。ベルト14の構成は、タイヤ2の仕様が考慮され適宜決められる。
図示されないが、それぞれの層38は並列された多数のベルトコードを含む。これらベルトコードはトッピングゴムで覆われる。ベルトコードの材質はスチールである。このタイヤ2のベルトコードはスチールコードである。
図示されないが、ベルトコードは赤道面に対して傾斜する。このタイヤ2では、一の層38のベルトコードが、この一の層38に積層される他の層38のベルトコードと交差するように、ベルト14は構成される。
このタイヤ2では、4枚の層38のうち、第一層38Aと第三層38Cとの間に位置する第二層38Bが最大の軸方向幅を有する。径方向において最も外側に位置する第四層38Dが、最小の軸方向幅を有する。
それぞれのクッション層16は、ベルト14の端の部分、すなわち、ベルト14の端部において、このベルト14とカーカス12との間に位置する。クッション層16は、架橋ゴムからなる。
インナーライナー18は、カーカス12の内側に位置する。インナーライナー18は、タイヤ2の内面を構成する。このインナーライナー18は、空気遮蔽性に優れた架橋ゴムからなる。インナーライナー18は、タイヤ2の内圧を保持する。
それぞれのスチール補強層20は、ビード8の部分に位置する。軸方向において、スチール補強層20はビード8の外側に位置する。スチール補強層20は、カーカスプライ36とチェーファー10との間に位置する。スチール補強層20の内端は、コア32の径方向内側に位置する。スチール補強層20の外端は、径方向において、折り返し部36bの端とコア32との間に位置する。
図示されないが、スチール補強層20は並列した多数のフィラーコードを含む。スチール補強層20においてフィラーコードはトッピングゴムで覆われる。フィラーコードの材質はスチールである。
図2は、トレッド面22の展開図を示す。この図2において、左右方向はこのタイヤ2の軸方向であり、上下方向はこのタイヤ2の周方向である。この図2の紙面に対して垂直な方向は、このタイヤ2の径方向である。
図2において、符号PEはトレッド面22の端である。なお、タイヤ2において、外観上、トレッド面22の端PEの識別が不能な場合には、正規状態のタイヤ2に正規荷重を負荷して、キャンバー角を0゜としトレッド4を平面に接触させて得られる接地面の軸方向外側端がトレッド面22の端PEとして定められる。
前述したように、このタイヤ2では、4本の周方向溝28がトレッド4に刻まれる。これら周方向溝28は、軸方向に並列され、周方向に連続して延びる。
4本の周方向溝28のうち、軸方向において内側に位置する周方向溝28c、すなわち赤道PCに近い周方向溝28cがセンター周方向溝である。軸方向において最も外側に位置する周方向溝28s、すなわち、トレッド面22の端PEに近い周方向溝28sがショルダー周方向溝である。なお、トレッド4に刻まれた周方向溝28に、赤道PC上に位置する周方向溝28が含まれる場合には、赤道PC上に位置する周方向溝28がセンター周方向溝である。さらにセンター周方向溝28cとショルダー周方向溝28sとの間に周方向溝28が存在する場合には、この周方向溝28はミドル周方向溝である。
それぞれのセンター周方向溝28cは、周方向にジグザグ状に連続して延在する。センター周方向溝28cは、軸方向において、一方側に凸なジグザグ頂点40aと、他方側に凸なジグザグ頂点40bとを有する。このセンター周方向溝28cでは、ジグザグ頂点40aとジグザグ頂点40bとは、周方向に交互に配置される。このタイヤ2では、このセンター周方向溝28cが周方向にストレートに延びる溝で構成されてもよい。
それぞれのショルダー周方向溝28sは、周方向にジグザグ状に連続して延在する。ショルダー周方向溝28sは、軸方向において、一方側に凸なジグザグ頂点40cと、他方側に凸なジグザグ頂点40dとを有する。このショルダー周方向溝28sでは、ジグザグ頂点40cとジグザグ頂点40dとは、周方向に交互に配置される。このタイヤ2では、このショルダー周方向溝28sが周方向にストレートに延びる溝で構成されてもよい。
図2に示されるように、このタイヤ2では、紙面の左側に位置するセンター周方向溝28c(以下、第一センター周方向溝28c1とも称される。)のジグザグ頂点40bと、紙面の右側に位置するセンター周方向溝28c(以下、第二センター周方向溝28c2とも称される。)のジグザグ頂点40aとは、軸方向溝42c(以下、センター軸方向溝42cとも称される。)により架け渡される。
図2に示されるように、このタイヤ2では、紙面の左側に位置するショルダー周方向溝28s(以下、第一ショルダー周方向溝28s1とも称される。)のジグザグ頂点40dと、第一センター周方向溝28c1のジグザグ頂点40aとは、軸方向溝42m(以下、第一ミドル軸方向溝42m1とも称される。)により架け渡される。第一ショルダー周方向溝28s1は、そのジグザグ頂点40cにおいて、トレッド面22の端PEから内向きに延びる軸方向溝42s(以下、第一ショルダー軸方向溝42s1とも称される。)と連通する。
図2に示されるように、このタイヤ2では、紙面の右側に位置するショルダー周方向溝28s(以下、第二ショルダー周方向溝28s2とも称される。)のジグザグ頂点40cと、第二センター周方向溝28c2のジグザグ頂点40bとは、軸方向溝42m(以下、第二ミドル軸方向溝42m2とも称される。)により架け渡される。第二ショルダー周方向溝28s2は、そのジグザグ頂点40dにおいて、トレッド面22の端PEから内向きに延びる軸方向溝42s(以下、第二ショルダー軸方向溝42s2とも称される。)と連通する。
図2において、両矢印RTはトレッド面22の実幅である。この実幅RTは、一方のトレッド面22の端PEから他方のトレッド面22の端PEまでの距離で表される。この実幅RTは、トレッド面22に沿って計測される。
この図2において、両矢印GCはセンター周方向溝28cの実幅である。両矢印GSは、ショルダー周方向溝28sの実幅である。実幅GCは、センター周方向溝28cの一方の縁から他方の縁までの最短距離により表される。実幅GSは、ショルダー周方向溝28sの一方の縁から他方の縁までの最短距離により表される。
このタイヤ2では、排水性及びトラクション性能への貢献の観点から、センター周方向溝28cの実幅GCはトレッド面22の実幅RTの1〜10%が好ましい。このセンター周方向溝28cの深さは、13〜25mmが好ましい。
このタイヤ2では、排水性及びトラクション性能への貢献の観点から、ショルダー周方向溝28sの実幅GSはトレッド面22の実幅RTの1〜10%が好ましい。ショルダー周方向溝28sの深さは、13〜25mmが好ましい。
このタイヤ2では、ショルダー周方向溝28sの実幅GSはセンター周方向溝28cの実幅GCよりも広い。このショルダー周方向溝28sの実幅GSがセンター周方向溝28cの実幅GCよりも狭くてもよいし、このショルダー周方向溝28sの実幅GSがセンター周方向溝28cの実幅GCと同等であってもよい。この周方向溝28の実幅は、タイヤ2の仕様に応じて適宜決められる。
このタイヤ2では、ショルダー周方向溝28sの深さはセンター周方向溝28cの深さと同等である。このショルダー周方向溝28sがセンター周方向溝28cよりも深くてもよいし、このショルダー周方向溝28sがセンター周方向溝28cよりも浅くてもよい。この周方向溝28の深さは、タイヤ2の仕様に応じて適宜決められる。
このタイヤ2では、軸方向溝42の実幅は、トレッド面22の実幅RTの1〜10%の範囲で適宜設定される。この軸方向溝42の深さは、13〜25mmの範囲で適宜設定される。
このタイヤ2では、軸方向溝42の実幅は周方向溝28の実幅と同等であってもよく、この軸方向溝42の実幅が周方向溝28の実幅よりも狭くてもよく、この軸方向溝42の実幅が周方向溝28の実幅よりも広くてもよい。この軸方向溝42の実幅は、タイヤ2の仕様に応じて適宜決められる。
このタイヤ2では、軸方向溝42の深さは周方向溝28の深さと同等であってもよく、この軸方向溝42の深さが周方向溝28よりも深くてもよいし、この軸方向溝42の深さが周方向溝28よりも浅くてもよい。この軸方向溝42の深さは、タイヤ2の仕様に応じて適宜決められる。
前述したように、このタイヤ2では、4本の周方向溝28がトレッド4に刻まれることにより、このトレッド4には5本の陸部30が構成される。これら陸部30は、軸方向に並列され、周方向に延びる。
5本の陸部30のうち、軸方向において内側に位置する陸部30c、すなわち赤道PC上に位置する陸部30cがセンター陸部である。軸方向において最も外側に位置する陸部30s、すなわち、トレッド面22の端PEを含む陸部30sがショルダー陸部である。さらにセンター陸部30cとショルダー陸部30sとの間に位置する陸部30mが、ミドル陸部である。なお、トレッド4に構成された陸部30のうち、軸方向において内側に位置する陸部30が赤道PC上でなく、赤道PCの近くに位置する場合には、この赤道PCの近くに位置する陸部30、すなわち赤道PC側に位置する陸部30がセンター陸部である。
センター陸部30cには、前述のセンター軸方向溝42cが多数刻まれる。これにより、周方向に所定のピッチで配置された多数のセンターブロック44cが構成される。このタイヤ2のセンター陸部30cは、周方向に所定のピッチで配置された多数のセンターブロック44cを含む。なお、このセンター陸部30cが周方向に連続する凸部で構成されてもよい。この場合、このセンター陸部30cには、前述のセンター軸方向溝42cは刻まれない。
それぞれのミドル陸部30mには、前述のミドル軸方向溝42mが多数刻まれる。これにより、周方向に所定のピッチで配置された多数のミドルブロック44mが構成される。このタイヤ2のミドル陸部30mは、周方向に所定のピッチで配置された多数のミドルブロック44mを含む。なお、このミドル陸部30mが周方向に連続する凸部で構成されてもよい。この場合、このミドル陸部30mには、前述のミドル軸方向溝42mは刻まれない。
それぞれのショルダー陸部30sには、前述のショルダー軸方向溝42sが多数刻まれる。これにより、周方向に所定のピッチで配置された多数のショルダーブロック44sが構成される。このタイヤ2のショルダー陸部30sは、周方向に所定のピッチで配置された多数のショルダーブロック44sを含む。なお、このショルダー陸部30sが周方向に連続する凸部で構成されてもよい。この場合、このショルダー陸部30sには、前述のショルダー軸方向溝42sは刻まれない。
図3は、図2のIII−III線に沿った、このタイヤ2の断面を示す。この図3に示されたタイヤ2の断面は、図1に示されたこのタイヤ2の断面の一部である。この図3において、左右方向はタイヤ2の軸方向であり、上下方向はタイヤ2の径方向である。この図3の紙面に対して垂直な方向は、タイヤ2の周方向である。
本発明において、タイヤ2の厚さは、図1又は3に示されたタイヤ2の断面において、カーカス12(詳細には、プライ本体36a)の外面の法線に沿って計測される。
図3において、実線ELは、トレッド面22の端PEを通るカーカス12(詳細には、プライ本体36a)の外面の法線である。両矢印TEは、このカーカス12の法線ELに沿って計測される、このタイヤ2の厚さである。
このタイヤ2は、法線ELの位置において、最大の厚さTEを有する。言い換えれば、カーカス12の法線に沿って計測されるタイヤ2の厚さは、トレッド面22の端PEを通るカーカス12の法線ELにおいて、最大を示す。図3に示されるように、この法線ELはタイヤ2のショルダー陸部30sの部分を横切る。このタイヤ2では、このショルダー陸部30sの部分が最大の厚さTEを有する。
このタイヤ2では、ショルダー陸部30sに穴46が設けられる。図1又は3に示されるように、この穴46は、トレッド面22の一部をなす、ショルダー陸部30sの外面、具体的には、ショルダーブロック44sの外面からベルト14に向かって延びる。径方向において、穴46はベルト14と重複する。この穴46の底48は、ベルト14の径方向外側に位置する。図2において、符号HCはショルダー陸部30sに設けられた穴46の口50の中心である。この図2において、III−III線は穴46の中心HCを通り軸方向に延びる直線である。
前述したように、このタイヤ2のトレッド4はベース部24とキャップ部26とを備える。このトレッド4には、ベース部24とキャップ部26との境界52が含まれる。図3に示されるように、このタイヤ2では、ショルダー陸部30sにおいて、穴46の底48は境界52よりも径方向外側に位置し、この境界52は、この穴46の底48の部分において、内向きに窪んでいる。
図3において、両矢印Eは穴46の底48からベルト14までの距離である。この距離Eは、穴46の底48から、径方向においてこの穴46の底48と重複するベルト14の外面までの最短距離で表される。このタイヤ2では、この距離Eは1mm以上6mm以下の範囲で設定される。
このタイヤ2は、次のようにして製造される。このタイヤ2の製造では、まず、成形機(図示されず)において、トレッド4、サイドウォール6等の部材を組み合わせて、未架橋状態のタイヤ、すなわち、生タイヤが準備される。
このタイヤ2の製造では、図4に示された加硫機54において生タイヤ2rは加硫成形される。この加硫機54は、モールド56とブラダー58とを備える。
モールド56は、その内面にキャビティ面60を備える。このキャビティ面60は、生タイヤ2rの外面に当接し、タイヤ2の外面を形づける。
図4に示されたモールド56は、割モールドである。このモールド56は、構成部材として、トレッドリング62と、一対のサイドプレート64と、一対のビードリング66とを備える。このモールド56では、これら構成部材を組み合わせることにより、前述のキャビティ面60が構成される。図4のモールド56は、これら構成部材が組み合わされた状態、言い換えれば、閉じられた状態にある。
このモールド56では、トレッドリング62はタイヤ2のトレッド4の部分を形作る。このトレッドリング62は、多数のセグメント68で構成される。なお、サイドプレート64はタイヤ2のサイドウォール6の部分を形作り、ビードリング66はタイヤ2のビード8の部分を形作る。
ブラダー58は、モールド56の内側に位置する。ブラダー58は、架橋ゴムからなる。このブラダー58の内部には、スチーム等の加熱媒体が充填される。これにより、ブラダー58は膨張する。図4に示されたブラダー58は、加熱媒体が充填され膨張した状態にある。このブラダー58は、生タイヤ2rの内面に当接し、タイヤ2の内面を形づける。なお、このタイヤ2の製造では、ブラダー58に代えて金属製の剛性中子が用いられてもよい。剛性中子は、トロイダル状の外面を備える。この外面は、空気が充填されその内圧が正規内圧の5%に保持された状態にあるタイヤ2の内面の形状に近似される。
このタイヤ2の製造では、所定の温度に設定されたモールド56に生タイヤ2rは投入される。投入後、モールド56は閉じられる。加熱媒体の充填により膨張したブラダー58が、キャビティ面60に生タイヤ2rを内側から押し付ける。生タイヤ2rは、モールド56内で所定時間加圧及び加熱される。これにより、生タイヤ2rのゴム組成物が架橋し、タイヤ2が得られる。
図1から明らかなように、タイヤ2のトレッド4の部分はサイドウォール6の部分のボリュームよりも大きなボリュームを有する。前述したように、このタイヤ2では、トレッド4の部分のうち、ショルダー陸部30sの部分が最大の厚さTEを有する。すなわち、このタイヤ2では、ショルダー陸部30sの部分が特に大きなボリュームを有する。
このタイヤ2の製造では、生タイヤ2rには、モールド56及びブラダー58によって熱が伝えられる。生タイヤ2rには、小さなボリュームを有する部分と、大きなボリュームを有する部分とが混在する。小さなボリュームを有する部分には熱は伝わりやすいが、大きなボリュームを有する部分には熱は伝わりにくい。
熱が伝わりやすい部分を基準に、生タイヤ2rを加圧及び加熱する時間、すなわち加硫時間を設定すると、熱が伝わりにくい部分における、加硫の進行が不十分になることが懸念される。一方、熱が伝わりにくい部分を基準に加硫時間を設定すると、熱が伝わりやすい部分において加硫が過剰に進むことが懸念される。
ところで、環境への配慮から、車両に対しては燃費に関する規制が導入されている。この規制をクリアするために、タイヤにおいては転がり抵抗の低減が強く求められている。
加硫温度を通常よりも低い温度に設定すると、過剰な加硫の進行を抑えることができ、転がり抵抗の低減を図ることができる。しかしこの場合、長い加硫時間が設定されるため、タイヤの生産性が低下することが懸念される。
低発熱性のゴムを採用すれば、生産性を維持しながら、転がり抵抗の低減を図ることができる。しかしこの場合、低発熱性が考慮されていないゴムが採用されたタイヤに比べて、タイヤの耐摩耗性が低下することが懸念される。
前述したように、このタイヤ2では、ショルダー陸部30sに穴46が設けられる。このため、図4に示されるように、このタイヤ2のモールド56には、この穴46の形成のために、突起70が設けられる。モールド56の構成部材のうち、セグメント68がタイヤ2のトレッド4の部分を形作る。このため、突起70は、セグメント68の、ショルダー陸部30sを形作る部分に設けられる。
このタイヤ2の製造では、生タイヤ2rをモールド56内で加圧及び加熱するとき、生タイヤ2rの、ショルダー陸部30sに対応する部分(以下、ショルダー陸部対応部分72)に、前述の突起70が差し込まれる。
前述したように、このタイヤ2では、突起70により形成される穴46の底48からベルト14までの距離Eは6mm以下である。
このタイヤ2の製造では、ショルダー陸部対応部分72の深い位置まで、突起70が差し込まれる。これにより、このショルダー陸部対応部分72はその内部からも加熱される。このため、このショルダー陸部対応部分72が最適な加硫状態になるまでの時間が短縮される。特に、このタイヤ2の製造においては、突起70の先端はベルト14に近接させられる。ベルト14はスチールコードを含んでいるので、この近接により生タイヤ2rはより効果的に加熱される。このタイヤ2の製造は、加硫時間の短縮を図ることができる。このタイヤ2は、生産性の向上に寄与する。
このタイヤ2では、生産性の向上が図れる。この観点から、穴46の底48からベルト14までの距離Eは5mm以下が好ましく、4mm以下がより好ましく、3mm以下がより好ましい。
前述したように、このタイヤ2では、突起70により形成される穴46の底48からベルト14までの距離Eは1mm以上である。
このタイヤ2では、穴46の底48とベルト14との間に位置するゴムの厚さが十分に確保される。このタイヤ2では、穴46の底48をベルト14に近接させたことによる耐久性への影響が考慮される。このタイヤ2では、良好な耐久性が維持される。
このタイヤ2では、ショルダー陸部30sの部分の形成に要する時間が短縮される。この時間の短縮は、熱が伝わりやすい、小さなボリュームを有する部分での、過剰な加硫の進行を抑える。過加硫による損失正接(tanδ)の増大が抑制されるので、このタイヤ2は、耐摩耗性に劣る低発熱性のゴムに依存せずとも、転がり抵抗の低減を図ることができる。
このタイヤ2では、耐摩耗性への影響が抑えられながら、生産性の向上と、転がり抵抗の低減とが達成される。
前述したように、このタイヤ2では、ベルト14は径方向に積層された、第一層38A、第二層38B、第三層38C及び第四層38Dで構成される。
本発明においては、ベルト14を構成する複数の層38のうち、最も広い軸方向幅を有する層38が第一基準層74であり、第一基準層74の外側に積層される層38が第二基準層76である。このタイヤ2では、第一層38A、第二層38B、第三層38C及び第四層38Dのうち、最も広い軸方向幅を有する第二層38Bが第一基準層74であり、径方向において、この第二層38Bの外側に積層される第三層38Cが第二基準層76である。
このタイヤ2では、軸方向において、第一基準層74の端は第二基準層76の端よりも外側に位置する。したがって、第一基準層74の一部は、第二基準層76から突出する。
このタイヤ2では、第一基準層74のうち、第二基準層76から突出する部分78(以下、第一基準層74の突出部分と称することがある。)は、ショルダー陸部30sの深い位置に配置される。図3に示されるように、このタイヤ2では、穴46の底48は、径方向において、この第一基準層74の突出部分78の外側に位置する。
このタイヤ2の製造では、ショルダー陸部対応部分72の深い位置まで、突起70が差し込まれる。これにより、このショルダー陸部対応部分72はその内部からも加熱される。このため、このショルダー陸部対応部分72が最適な加硫状態になるまでの時間が効果的に短縮される。この観点から、ベルト14が径方向に積層された複数の層38で構成され、これら層38のうち、最も広い軸方向幅を有する層38が第一基準層74とされ、この第一基準層74の外側に積層される層38が第二基準層76とされたとき、穴46の底48は、第一基準層74のうち、第二基準層76から突出する部分78の径方向外側に位置するのが好ましい。
図3に示されるように、第一基準層74の突出部分78は前述の法線ELと交差する。このタイヤ2では、穴46の底48は、径方向において、この法線ELと交差する突出部分78の外側に位置し、前述の距離Eが6mm以下に設定される。このタイヤ2の製造では、ショルダー陸部対応部分72がその内部から効果的に加熱されるので、このショルダー陸部対応部分72が最適な加硫状態になるまでの時間が効果的に短縮される。この観点から、このタイヤ2では、穴46の底48が径方向外側に配置される第一基準層74の突出部分78がトレッド面22の端PEを通るカーカス12の外面の法線ELと交差するように、この第一基準層74は構成されるのが好ましい。
この図3に示されるように、このタイヤ2では、穴46は、法線ELと交差又は接触する。これにより、このタイヤ2の製造において、ショルダー陸部対応部分72の深い位置に突起70の先端が効果的に配置される。ショルダー陸部対応部分72がその内部から効果的に加熱されるので、このショルダー陸部対応部分72が最適な加硫状態になるまでの時間が効果的に短縮される。この観点から、このタイヤ2では、ショルダー陸部30sに設けられる穴46は、トレッド面22の端PEを通るカーカス12の外面の法線ELと交差又は接触するのが好ましい。図3においては、この穴46は、その底48の部分において、法線ELと交差している。
図3において、両矢印TBは、第二基準層76の端における境界52から第一基準層74までの距離である。
前述したように、このタイヤ2では、ショルダー陸部30sにおいて、穴46の底48は、ベース部24とキャップ部26との境界52よりも径方向外側に位置し、この境界52は、この穴46の底48の部分において、内向きに窪んでいる。言い換えれば、前述の、穴46の底48からベルト14までの距離E、すなわち、穴46の底48から第一基準層74までの距離Eは、第二基準層76の端における境界52から第一基準層74までの距離TBよりも短い。
このタイヤ2では、穴46の底48は、ショルダー陸部30sの深い位置に配置される。このため、このタイヤ2の製造においては、ショルダー陸部対応部分72の深い位置に突起70の先端が効果的に配置される。ショルダー陸部対応部分72がその内部から効果的に加熱されるので、このショルダー陸部対応部分72が最適な加硫状態になるまでの時間が効果的に短縮される。この観点から、このタイヤ2では、穴46の底48からベルト14までの距離Eは、第二基準層76の端における、ベース部24とキャップ部26との境界52から第一基準層74までの距離TBよりも短いのが好ましい。
図3において、矢印WTはトレッド4の軸方向幅である。この軸方向WTは、トレッド面22の一方の端PEから他方の端PEまでの軸方向距離で表される。矢印W1は、第一基準層74としての第二層38Bの軸方向幅である。この軸方向幅W1は、第二層38Bの一方の端から他方の端までの軸方向距離により表される。矢印W2は、第二基準層76としての第三層38Cの軸方向幅である。この軸方向幅W2は、第三層38Cの一方の端から他方の端までの軸方向距離により表される。この図3において、両矢印HWTはトレッド4の軸方向幅WTの半分の長さを表す。
このタイヤ2では、トレッド4の軸方向幅WTに対する第一基準層74の軸方向幅W1の比は0.85以上0.95以下が好ましい。
トレッド4の軸方向幅WTに対する第一基準層74の軸方向幅W1の比が0.85以上に設定されることにより、ベルト14がトレッド4全体を十分に拘束する。このタイヤ2では、トレッド面22の端PEの部分における特異な寸法成長が抑えられるので、このショルダー陸部30sに肩落ち摩耗が発生することが抑えられる。このタイヤ2では、偏摩耗の発生が抑制される。この比が0.95以下に設定されることにより、ベルト14の端による耐久性への影響が抑えられる。
このタイヤ2では、トレッド4の軸方向幅WTに対する第二基準層76の軸方向幅W2の比は0.80以上が好ましい。この第二基準層76はトレッド4の拘束に貢献する。このタイヤ2では、ベルト14がトレッド4全体を十分に拘束するので、トレッド面22の端PEの部分における特異な寸法成長が抑えられる。このタイヤ2では、肩落ち摩耗のような偏摩耗の発生が抑制される。
このタイヤ2では、軸方向において、第二基準層76の端は第一基準層74の端よりも内側に位置する。軸方向において、第二基準層76の端と第一基準層74の端とが一致しないので、ベルト14の端部に歪が集中することが防止される。このタイヤ2では、ベルト14の端部においてルースのような損傷が生じにくい。しかも、ショルダー陸部30sに対するベルト14の拘束力が適切に維持される上に、タイヤ2の周長に関し、赤道部分の周長とトレッド面22の端PEの部分の周長との周長差が適切に維持される。ショルダー陸部30sの路面に対する滑りが抑えられるので、このタイヤ2では、段差摩耗のような偏摩耗の発生が抑えられる。
図3において、両矢印DPは、第一基準層74としての第二層38Bの端から第二基準層76としての第三層38Cの端までの軸方向距離である。
このタイヤ2では、第一基準層74の端から第二基準層76の端までの軸方向距離DPは3mm以上が好ましく、8mm以下が好ましい。この距離DPが3mm以上に設定されることにより、軸方向において、第二基準層76の端と第一基準層74の端とが適度な間隔をあけて配置される。ベルト14の端部への歪の集中が抑えられるので、このタイヤ2では、ベルト14の端部においてルースのような損傷が発生することが防止される。この観点から、この距離DPは4mm以上がより好ましい。この距離DPが8mm以下に設定されることにより、ベルト14がトレッド面22全体を十分に拘束する。トレッド面22の端PEにおける特異な寸法成長が抑えられるので、このタイヤ2では、ショルダー陸部30sに肩落ち摩耗が発生することが抑えられる。この観点から、この距離DPは7mm以下がより好ましい。
図3において、両矢印Dは穴46の深さである。この穴46の深さDは、トレッド面22から穴46の底48までの距離により表される。両矢印Gは、ショルダー周方向溝28sの深さである。このショルダー周方向溝28sの深さは、トレッド面22からこのショルダー周方向溝28sの底80までの距離により表される。
このタイヤ2では、穴46の深さDとショルダー周方向溝28sの深さGとの差(D−G)は、−2mm以上が好ましく、6mm以下が好ましい。
穴46の深さDとショルダー周方向溝28sの深さGとの差(D−G)が−2mm以上に設定されることにより、タイヤ2の製造において、ショルダー陸部対応部分72の深い位置に突起70の先端が効果的に配置される。ショルダー陸部対応部分72がその内部から効果的に加熱されるので、このショルダー陸部対応部分72が最適な加硫状態になるまでの時間が効果的に短縮される。この観点から、この差は0mm以上がより好ましい。ショルダー陸部対応部分72がその内部からより効果的に加熱される観点から、径方向において、穴46の底48がショルダー周方向溝28sの底80よりも内側に位置する、言い換えれば、差(D−G)は0mmよりも大きいのがより好ましく、この差は1mm以上がさらに好ましく、3mm以上が特に好ましい。この差が6mm以下に設定されることにより、穴46の底48とベルト14との間に位置するゴムの厚さが十分に確保される。このタイヤ2では、穴46の底48をベルト14に近接させたことによる耐久性への影響が考慮されるので、良好な耐久性が維持される。この観点から、この差は5mm以下がより好ましい。
図5は、図3に示されたタイヤ2の断面の一部を示す。この図5には、ショルダー陸部30sに設けられる穴46が示される。この図5において、両矢印Aは穴46の口50の幅である。両矢印Bは、この穴46の底48の幅である。この穴46の口幅Aと底幅Bとは、この図5に示された断面、すなわち、タイヤ2の回転軸と、この穴46の口50の中心HCとを含む平面に沿った、このタイヤ2の断面において特定される。
タイヤ2の製造においては、穴46の形成のためにこのモールド56に設けられる突起70は、モールド56からタイヤ2を取り出す際に、タイヤ2から引き抜かれる。この引き抜き容易の観点から、このタイヤ2では、穴46の口幅Aは底幅Bよりも広いのが好ましい。
このタイヤ2では、ショルダー陸部30cの剛性確保の観点から、口幅Aは8mm以下が好ましく、7mm以下がより好ましい。この穴46の形成のためにモールド56に設けられる突起70の剛性確保の観点から、この口幅Aは1.5mm以上が好ましく、3mm以上がより好ましく、4mm以上がさらに好ましい。
このタイヤ2では、ショルダー陸部30cの剛性確保の観点から、底幅Bは6mm以下が好ましく、5mm以下がより好ましい。この穴46の形成のためにモールド56に設けられる突起70の剛性確保の観点から、この底幅Bは1mm以上が好ましく、2mm以上がより好ましい。
このタイヤ2では、穴46の断面形状は円である。このタイヤ2の製造において、突起70をタイヤ2から引き抜くことができるのであれば、この穴46の断面形状は、楕円、矩形等、様々な形状をとることができる。タイヤ2の製造において、タイヤ2からの突起70の引き抜きが容易の観点から、この穴46の断面形状は円又は楕円が好ましい。なお、穴46の口50の形状が楕円である場合は、この楕円の長軸と短軸との交点が、この穴46の口50の中心HCとして特定される。
このタイヤ2では、穴46は円筒状である。このタイヤ2の製造において、突起70をタイヤ2から引き抜くことができるのであれば、この穴46は、深さ方向中央部分が膨らんだ形状、深さ方向中央部分がくびれた形状、口から底に向かってテーパー状に構成された形状等、様々な形状をとることができる。タイヤ2の製造において、タイヤ2からの突起70の引き抜きが容易の観点から、この穴46は円筒状又はテーパー状に構成されるのが好ましい。
図5に示されるように、このタイヤ2の穴46は、口50の部分がテーパー状を呈するように構成される。この穴46は、テーパー状の口部82と、この口部82の内側に位置し、円筒状を呈するように構成された本体84とを有する。
このタイヤ2では、テーパー状の口50の部分は、この口50の周囲を囲むトレッド面22の動きを抑制する。このテーパー状の口50の部分、すなわち口部82は、偏摩耗の発生を抑制する。
図5において、角度θは、穴46の口50において、この穴46がないと仮定して得られる仮想トレッド面に対して、この穴46の壁86がなす角度(以下、穴46の口50における壁86の傾斜角度と称することがある。)である。
このタイヤ2では、穴46の口50における壁86の傾斜角度θは80°以下が好ましい。これにより、口50の周囲を囲むトレッド面22の動きが効果的に抑えられる、このタイヤ2では、偏摩耗の発生が効果的に抑制される。この観点から、この角度θは70°以下がより好ましく、60°以下がさらに好ましい。同様の観点から、この角度θは20°以上が好ましく、30°以上がより好ましく、40°以上がさらに好ましい。
図2に示されるように、ショルダー陸部30sには複数の穴46が設けられる。これら穴46は、周方向に間隔をあけて配置される。図2において、両矢印DSは一の穴46と、周方向においてこの一の穴46の隣に位置する他の穴46との間隔である。この間隔DSは、トレッド面22に沿って計測される。
このタイヤ2では、周方向に設けられる穴46の間隔DSは20mm以上が好ましく、80mm以下が好ましい。この間隔DSが20mm以上に設定されることにより、ショルダー陸部30sの剛性が適切に維持される。この観点から、この間隔DSは30mm以上がより好ましい。この間隔DSが80mm以下に設定されることにより、このタイヤ2の製造において、穴46を形成するためにモールド56に設けられる突起70によって、ショルダー陸部対応部分72がその内部から効果的に加熱される。このタイヤ2の製造では、このショルダー陸部対応部分72が最適な加硫状態になるまでの時間が効果的に短縮される。この観点から、この間隔DSは70mm以下がより好ましい。
図2に示されるように、ショルダー陸部30sを構成するショルダーブロック44sには。2個の穴46が設けられる。ショルダーブロック44sに設けられる穴46の数は、このショルダーブロック44sの剛性と、タイヤ2の加硫時間とが考慮されて適宜決められる。このショルダーブロック44sに設けられる穴46の数は通常、2個から7個までの範囲で設定される。この穴46の数は2個以上が好ましく、4個以下が好ましい。この穴46の数は2個以上が好ましく、3個以下がより好ましい。
図3において、両矢印WSはショルダー陸部30sの軸方向幅である。この軸方向幅WSは、このショルダー陸部30sの外面の内端から外端(すなわち、トレッド面22の端PE)までの軸方向距離により表される。符号PSは、この軸方向幅WSの中心に対応する、ショルダー陸部30sの外面上の位置である。両矢印WHは、穴46の口50の中心HCからトレッド面22の端PEまでの軸方向距離である。
このタイヤ2では、トレッド4の軸方向幅WTの半分に対する、ショルダー陸部30sの軸方向幅WSの比は0.30以上が好ましく、0.55以下が好ましい。この比が0.30以上に設定されることにより、ショルダー陸部30sが適度な剛性を有する。路面に接触してからこの路面から離れるまでのショルダー陸部30sの動きが抑えられるので、このタイヤ2では、ショルダー陸部30sに摩耗は生じにくい。このタイヤ2では、偏摩耗(例えば、ショルダー陸部30s全体が摩耗する片減り)の発生が抑制される。この比が0.55以下に設定されることにより、ショルダー陸部30s内での周長差が適切に維持される。ショルダー陸部30sの各部における路面に対する滑りに違いが生じにくいので、このタイヤ2では、このショルダー陸部30sに肩落ち摩耗が発生することが抑えられる。この場合においても、このタイヤ2では、偏摩耗の発生が抑制される。
図3に示されるように、このタイヤ2では、軸方向において、穴46の口50の中心HCはショルダー陸部30sの中心PSよりも外側に位置する。これにより、ショルダー周方向溝28sから穴46までの距離が十分に確保される。このタイヤ2では、穴46によるショルダー陸部30sの剛性への影響が抑えられる。そして、タイヤ2の製造においては、穴46を形成するためにモールド56に設けられる突起70によって、穴46が設けられていない従来のタイヤでは加熱されにくい、タイヤ2のトレッド面22の端PEを通るカーカスの外面の法線ELに沿った部分、すなわち、ショルダー陸部対応部分72がその内部から効果的に加熱される。このタイヤ2の製造では、このショルダー陸部対応部分72が最適な加硫状態になるまでの時間が効果的に短縮される。この観点から、このタイヤ2では、軸方向において、穴46の口50の中心HCはショルダー陸部30sの中心PSよりも外側に位置するのが好ましい。
このタイヤ2では、穴46によるショルダー陸部30sの剛性への影響が抑えられるとともに、タイヤ2の製造において、穴46が設けられていない従来のタイヤでは加熱されにくい、タイヤ2のショルダー陸部対応部分72がこの穴46を形成するためにモールド56に設けられる突起70によって効果的に加熱される観点から、ショルダー陸部30sの軸方向幅WSに対するトレッド面22の端PEから穴46の中心HCまでの軸方向距離WHの比は0.30以上が好ましく、0.45以下が好ましい。
前述したように、このタイヤ2では、ショルダー陸部30sに複数の穴46が設けられる。このため、このタイヤ2のためのモールド56、詳細には、トレッドリング62に、これら穴46の形成のために、複数の突起70が設けられる。
タイヤ2において、穴46の底48はショルダー陸部30sの深い位置に配置される。この穴46の形成のためにトレッドリング62に設けられる突起70は、ある程度の長さを有する。このため、タイヤ2の製造において、タイヤ2をモールド56から取り出す際に、タイヤ2から突起70を容易に引き抜くことができる観点から、トレッドリング62は多数のセグメント68で構成されるのが好ましい。具体的には、トレッドリング62を構成するセグメント68の数は13以上が好ましい。
以上の説明から明らかなように、このタイヤ2では、耐摩耗性への影響が抑えられながら、生産性の向上と、転がり抵抗の低減とが達成される。本発明は、特に、トレッド面22の端PEを通るカーカスの法線ELに沿って計測される、ショルダー陸部30sの部分の厚さTEが35mm以上に設定されたタイヤ2において、より顕著な効果を奏する。
今回開示した実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の技術的範囲は前述の実施形態に限定されるものではなく、この技術的範囲には特許請求の範囲に記載された構成と均等の範囲内でのすべての変更が含まれる。
以下、実施例などにより、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、かかる実施例のみに限定されるものではない。
[実施例1]
図1に示された基本構成を備え、下記の表1に示された仕様を備えた重荷重用空気入りタイヤ(タイヤサイズ=295/75R22.5)を得た。
この実施例1では、ショルダーブロックに設けられた穴の数(以下、穴数)は2個であった。穴の口幅Aは6mm、穴の底幅Bは4mmであった。穴の口における壁の傾斜角度θは50°であった。穴の深さDは、22mmであった。ショルダー周方向溝の深さGは、18mmであった。穴の深さDとショルダー周方向溝の深さGとの差(D−G)は、4mmであった。穴の底からベルトまでの距離Eは2mmであった。この実施例1のタイヤの製造に用いたモールドのトレッドリングを構成するセグメントの数(以下、分割数)は、19であった。
この実施例1では、トレッド面の端を通るカーカスの法線に沿って計測されるタイヤの厚さTEは53mmであった。トレッドの軸方向幅WTに対する第一基準層の軸方向幅W1の比(W1/WT)は0.88であった。トレッドの軸方向幅WTに対する第二基準層の軸方向幅W2の比(W2/WT)は0.81であった。
この実施例1では、トレッドの軸方向幅の半分HWTに対する、ショルダー陸部の軸方向幅WSの比(WS/HWT)は、0.31であった。ショルダー陸部の軸方向幅WSに対する、トレッド面の端から穴の中心までの軸方向距離WHの比(WH/WS)は、0.39であった。
[比較例1]
比較例1は従来のタイヤである。この比較例1のショルダー陸部には、穴は設けられていない。ショルダー周方向溝の深さGは、18mmであった。この比較例1のタイヤの製造に用いたモールドのトレッドリングの分割数は、8であった。
[実施例2]
深さDを変えて差(D−G)及び距離Eを下記の表1に示される通りにするとともに、底幅B、傾斜角度θ及び分割数をこの表1に示される通りとした他は実施例1と同様にして、実施例2のタイヤを得た。
[実施例3−5及び比較例2]
深さDを変えて差(D−G)及び距離Eを下記の表1及び2に示される通りとした他は実施例1と同様にして、実施例3−5及び比較例2のタイヤを得た。
[実施例6及び比較例3]
深さDを変えて差(D−G)及び距離Eを下記の表2に示される通りにするとともに、穴数及び分割数をこの表2に示される通りとした他は実施例1と同様にして、実施例6及び比較例3のタイヤを得た。
[実施例7]
深さDを変えて差(D−G)及び距離Eを下記の表2に示される通りにするとともに、穴数をこの表2に示される通りとした他は実施例1と同様にして、実施例7のタイヤを得た。
[偏摩耗性]
試作タイヤをリム(サイズ=8.25×22.5)に組み込み空気を充填しタイヤの内圧を750kPaに調整した。このタイヤを、トレーラーヘッドの駆動軸の1軸目に装着した。タイヤへの荷重は、ロードインデックスの60%(軽荷重状態)である。一般道路を50,000km実車走行し、走行後の穴における段差量を摩耗量として測定した。この結果が、指数で下記の表1及び2に示されている。数値が大きいほど、偏摩耗が生じにくく耐摩耗性に優れる。
[転がり抵抗]
転がり抵抗試験機を用い、各試作タイヤが下記の条件でドラム上を速度80km/hで走行するときの転がり抵抗係数(RRC)を測定した。この結果が、指数で下記の表1及び2に示されている。数値が大きいほど、転がり抵抗が小さく優れる。
リム:8.25×22.5
内圧:900kPa
縦荷重:28.76kN
[生産性]
各試作タイヤについて、生タイヤの加硫に要した時間(すなわち、加硫時間)を測定した。この結果が、指数で下記の表1及び2に示されている。数値が大きいほど、加硫時間は短く生産性に優れる。
表1及び2に示されるように、実施例では、耐摩耗性への影響が抑えられながら、生産性の向上と、転がり抵抗の低減とが達成されていることが確認される。実施例は、比較例に比して評価が高い。この評価結果から、本発明の優位性は明らかである。