以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて、本発明が詳細に説明される。
本開示においては、タイヤを正規リムに組み、タイヤの内圧を正規内圧に調整し、このタイヤに荷重をかけない状態は、正規状態と称される。本開示では、特に言及がない限り、タイヤ各部の寸法及び角度は、正規状態で測定される。
正規リムとは、タイヤが依拠する規格において定められたリムを意味する。JATMA規格における「標準リム」、TRA規格における「Design Rim」、及びETRTO規格における「Measuring Rim」は、正規リムである。
正規内圧とは、タイヤが依拠する規格において定められた内圧を意味する。JATMA規格における「最高空気圧」、TRA規格における「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に掲載された「最大値」、及びETRTO規格における「INFLATION PRESSURE」は、正規内圧である。乗用車用タイヤの場合、特に言及がない限り、正規内圧は180kPaである。
正規荷重とは、タイヤが依拠する規格において定められた荷重を意味する。JATMA規格における「最大負荷能力」、TRA規格における「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に掲載された「最大値」、及びETRTO規格における「LOAD CAPACITY」は、正規荷重である。乗用車用タイヤの場合、特に言及がない限り、正規荷重は前記荷重の88%に相当する荷重である。
本開示において、タイヤのサイド部とは、路面と接触するトレッド部と、リムに嵌め合わされるビード部との間を架け渡す、タイヤの部位を意味する。タイヤは、部位として、トレッド部、一対のビード部及び一対のサイド部を備える。
本開示において、生タイヤとは、タイヤを得るために準備される、未加硫状態のタイヤを意味する。生タイヤは、未加硫タイヤ又はローカバーとも称される。
図1は、本開示の一実施形態に係る空気入りタイヤ2(以下、単に「タイヤ2」と称することがある。)の一部を示す。このタイヤ2は、トラック、バス等の重荷重車両に装着される。このタイヤ2は、重荷重用空気入リタイヤである。
図1は、タイヤ2の回転軸を含む平面に沿った、このタイヤ2の断面の一部を示す。この図1において、左右方向はタイヤ2の軸方向であり、上下方向はタイヤ2の径方向である。この図1の紙面に対して垂直な方向は、タイヤ2の周方向である。図1において、一点鎖線CLはタイヤ2の赤道面を表す。この図1においてタイヤ2は、リムR(正規リム)に組まれている。
このタイヤ2は、トレッド4、一対のサイドウォール6、一対のビード8、一対のチェーファー10、カーカス12、ベルト14、一対のクッション層16、インナーライナー18及び一対の補強層20を備える。
トレッド4は、その外面22、すなわちトレッド面22において路面と接触する。符号PCはトレッド面22と赤道面との交点である。交点PCはタイヤ2の赤道である。
図示されないが、このトレッド4は、ベース部と、このベース部の径方向外側に位置するキャップ部とを備える。ベース部は低発熱性の架橋ゴムからなる。キャップ部は、耐摩耗性及びグリップ性能が考慮された架橋ゴムからなる。
このタイヤ2のトレッド4には、周方向に連続して延びる溝24、すなわち、周方向溝24が刻まれる。これにより、トレッド4に複数の陸部26が構成される。このトレッド4は、周方向溝24によって区画された複数の陸部26を有する。
それぞれのサイドウォール6は、トレッド4の端に連なる。サイドウォール6は、トレッド4の端から径方向内向きに延びる。サイドウォール6は、架橋ゴムからなる。
それぞれのビード8は、サイドウォール6よりも径方向内側に位置する。ビード8は、コア28と、エイペックス30とを備える。
コア28は、周方向に延びる。コア28は、巻き回されたスチール製のワイヤを含む。エイペックス30は、コア28の径方向外側に位置する。エイペックス30は、コア28から径方向外向きに延びる。
エイペックス30は、内側エイペックス30uと外側エイペックス30sとを備える。外側エイペックス30sは径方向において内側エイペックス30uの外側に位置する。内側エイペックス30u及び外側エイペックス30sは架橋ゴムからなる。内側エイペックス30uは硬質である。外側エイペックス30sは内側エイペックス30uに比して軟質である。
それぞれのチェーファー10は、ビード8の軸方向外側に位置する。このチェーファー10は、サイドウォール6よりも径方向内側に位置する。チェーファー10は、リムRと接触する。チェーファー10は、架橋ゴムからなる。
カーカス12は、トレッド4、サイドウォール6及びチェーファー10の内側に位置する。カーカス12は、一方のビード8と他方のビード8との間を架け渡す。このカーカス12は、ラジアル構造を有する。カーカス12は、少なくとも1枚のカーカスプライ32を備える。
このタイヤ2のカーカス12は、1枚のカーカスプライ32からなる。カーカスプライ32は、一方のコア28から他方のコア28に向かって延びるプライ本体32aと、このプライ本体32aに連なりそれぞれのコア28の周りにて軸方向内側から外側に向かって折り返される一対の折り返し部32bとを有する。
図示されないが、カーカスプライ32は並列された多数のカーカスコードを含む。このタイヤ2では、カーカスコードの材質はスチールである。有機繊維からなるコードが、カーカスコードとして用いられてもよい。
ベルト14は、トレッド4の径方向内側に位置する。このベルト14は、カーカス12の径方向外側に位置する。
ベルト14は、径方向に積層された複数の層34で構成される。このタイヤ2では、ベルト14を構成する層34の数に特に制限はない。ベルト14の構成は、タイヤ2の仕様が考慮され適宜決められる。
図示されないが、それぞれの層34は並列された多数のベルトコードを含む。それぞれのベルトコードは赤道面に対して傾斜する。ベルトコードの材質はスチールである。
このタイヤ2のベルト14は、4枚の層34で構成される。4枚の層34のうち、第一層34Aと第三層34Cとの間に位置する第二層34Bが最大の軸方向幅を有する。径方向において最も外側に位置する第四層34Dが、最小の軸方向幅を有する。
それぞれのクッション層16は、ベルト14の端の部分において、このベルト14とカーカス12との間に位置する。クッション層16は、架橋ゴムからなる。
インナーライナー18は、カーカス12の内側に位置する。インナーライナー18は、タイヤ2の内面を構成する。このインナーライナー18は、空気等の気体の透過係数が低い架橋ゴムからなる。
それぞれの補強層20は、ビード8の部分に位置する。軸方向において、補強層20はビード8の外側に位置する。補強層20は、カーカスプライ32とチェーファー10との間に位置する。補強層20の内端は、コア28の径方向内側に位置する。補強層20の外端は、径方向において、折り返し部32bの端とコア28との間に位置する。
図示されないが、補強層20は並列した多数のフィラーコードを含む。フィラーコードの材質はスチールである。
図2は、トレッド面22の展開図を示す。この図2において、左右方向はこのタイヤ2の軸方向であり、上下方向はこのタイヤ2の周方向である。この図2の紙面に対して垂直な方向は、このタイヤ2の径方向である。
図2において、符号PEはトレッド面22の端である。外観上、トレッド面22の端PEを特定できない場合は、正規状態のタイヤ2に正規荷重を負荷して、キャンバー角を0゜としトレッド4を平面に接触させて得られる接地面の軸方向外端がトレッド面22の端PEとして定められる。
前述したように、このタイヤ2のトレッド4は周方向溝24によって区画された複数の陸部26を有する。このタイヤ2では、軸方向に並列した、少なくとも3本の周方向溝24がトレッド4に刻まれる。これにより、トレッド4には少なくとも4本の陸部26が構成される。図1に示されたタイヤ2では、4本の周方向溝24がトレッド4に刻まれ、5本の陸部26がトレッド4に構成される。
4本の周方向溝24のうち、軸方向において内側に位置する周方向溝24c、すなわち赤道PCに近い周方向溝24cがセンター周方向溝である。軸方向において外側に位置する周方向溝24s、すなわち、トレッド面22の端PEに近い周方向溝24sがショルダー周方向溝である。なお、トレッド4に刻まれた周方向溝24に、赤道PC上に位置する周方向溝24が含まれる場合には、赤道PC上に位置する周方向溝24がセンター周方向溝である。さらにセンター周方向溝24cとショルダー周方向溝24sとの間に周方向溝24が存在する場合には、この周方向溝24はミドル周方向溝とも称される。
それぞれのセンター周方向溝24cは、周方向にジグザグ状に連続して延在する。このタイヤ2では、このセンター周方向溝24cが、周方向にストレートに延びる溝で構成されてもよい。
それぞれのショルダー周方向溝24sは、周方向にジグザグ状に連続して延在する。このタイヤ2では、このショルダー周方向溝24sが、周方向にストレートに延びる溝で構成されてもよい。
図2において、両矢印RTはトレッド面22の幅である。この幅RTは、一方のトレッド面22の端PEから他方のトレッド面22の端PEまでの最短距離で表される。この幅RTは、トレッド面22に沿って計測される。
この図2において、両矢印GCはセンター周方向溝24cの幅である。幅GCは、センター周方向溝24cの一方の縁から他方の縁までの最短距離により表される。両矢印GSは、ショルダー周方向溝24sの幅である。幅GSは、ショルダー周方向溝24sの一方の縁から他方の縁までの最短距離により表される。
このタイヤ2では、排水性及びトラクション性能への貢献の観点から、センター周方向溝24cの幅GCはトレッド面22の幅RTの1〜10%が好ましい。このセンター周方向溝24cの深さは、13〜25mmが好ましい。
このタイヤ2では、排水性及びトラクション性能への貢献の観点から、ショルダー周方向溝24sの幅GSはトレッド面22の幅RTの1〜10%が好ましい。ショルダー周方向溝24sの深さは、13〜25mmが好ましい。
このタイヤ2では、ショルダー周方向溝24sの幅GSはセンター周方向溝24cの幅GCよりも広い。このショルダー周方向溝24sの幅GSがセンター周方向溝24cの幅GCよりも狭くてもよいし、このショルダー周方向溝24sの幅GSがセンター周方向溝24cの幅GCと同等であってもよい。この周方向溝24の幅は、タイヤ2の仕様に応じて適宜決められる。
このタイヤ2では、ショルダー周方向溝24sの深さはセンター周方向溝24cの深さと同等である。このショルダー周方向溝24sがセンター周方向溝24cよりも深くてもよいし、このショルダー周方向溝24sがセンター周方向溝24cよりも浅くてもよい。この周方向溝24の深さは、タイヤ2の仕様に応じて適宜決められる。
前述したように、このタイヤ2では、4本の周方向溝24がトレッド4に刻まれることにより、5本の陸部26がトレッド4に構成される。これら陸部26は、軸方向に並列され、周方向に延びる。このタイヤ2の陸部26には、陸部26を横切る軸方向溝36が刻まれる。
5本の陸部26のうち、軸方向において内側に位置する陸部26c、すなわち赤道PC上に位置する陸部26cがセンター陸部である。軸方向において外側に位置する陸部26s、すなわち、トレッド面22の端PEを含む陸部26sがショルダー陸部である。さらにセンター陸部26cとショルダー陸部26sとの間に位置する陸部26mが、ミドル陸部である。なお、トレッド4に構成された陸部26のうち、軸方向において内側に位置する陸部26が赤道PC上でなく、赤道PCの近くに位置する場合には、この赤道PCの近くに位置する陸部26、すなわち赤道PC側に位置する陸部26がセンター陸部である。
このタイヤ2では、5本の陸部26は、センター陸部26cと、一対のミドル陸部26mと、一対のショルダー陸部26sとで構成される。センター陸部26cとミドル陸部26mとの間はセンター周方向溝24cである。ミドル陸部26mとショルダー陸部26sとの間は、ショルダー周方向溝24sである。
図1に示されるように、このタイヤ2では、前述のベルト14の一部をなす、第一層34A、第二層34B及び第三層34Cの端は、軸方向において、ショルダー周方向溝24sの外側に位置する。第一層34A、第二層34B及び第三層34Cの端は、径方向において、ショルダー陸部26sの内側に位置する。
図2に示されるように、センター陸部26cには、このセンター陸部26cを横切る軸方向溝36cが刻まれる。この軸方向溝36c(以下、センター軸方向溝とも称される。)は、一方のセンター周方向溝24cと他方のセンター周方向溝24cとを架け渡す。
それぞれのミドル陸部26mには、このミドル陸部26mを横切る軸方向溝36mが刻まれる。この軸方向溝36m(以下、ミドル軸方向溝とも称される。)は、センター周方向溝24cとショルダー周方向溝24sとを架け渡す。
それぞれのショルダー陸部26sには、このショルダー陸部26sを横切る軸方向溝36sが刻まれる。この軸方向溝36s(以下、ショルダー軸方向溝とも称される。)は、ショルダー周方向溝24sとトレッド面22の端PEとを架け渡す。
このタイヤ2では、軸方向溝36の幅は、排水性及びトラクション性能が考慮され、トレッド面22の幅RTの1〜10%の範囲で設定される。軸方向溝36の深さは、排水性及びトラクション性能が考慮され、13〜25mmの範囲で設定される。
このタイヤ2では、軸方向溝36の幅は周方向溝24の幅と同等であってもよく、この軸方向溝36の幅が周方向溝24の幅よりも狭くてもよく、この軸方向溝36の幅が周方向溝24の幅よりも広くてもよい。この軸方向溝36の幅は、タイヤ2の仕様に応じて適宜決められる。
このタイヤ2では、軸方向溝36の深さは周方向溝24の深さと同等であってもよく、この軸方向溝36の深さが周方向溝24よりも深くてもよいし、この軸方向溝36の深さが周方向溝24よりも浅くてもよい。この軸方向溝36の深さは、タイヤ2の仕様に応じて適宜決められる。
センター陸部26cには、複数のセンター軸方向溝36cが刻まれる。これにより、周方向に間隔をあけて配置される、複数のセンターブロック38cがセンター陸部26cに構成される。なお、このタイヤ2では、センター陸部26cが周方向に連続する凸条で構成されてもよい。この場合、このセンター陸部26cには、前述のセンター軸方向溝36cは刻まれない。
ミドル陸部26mには、複数のミドル軸方向溝36mが刻まれる。これにより、周方向に間隔をあけて配置される、複数のミドルブロック38mが構成される。なお、このタイヤ2では、ミドル陸部26mが周方向に連続する凸条で構成されてもよい。この場合、このミドル陸部26mには、前述のミドル軸方向溝36mは刻まれない。
ショルダー陸部26sには、複数のショルダー軸方向溝36sが刻まれる。これにより、周方向に間隔をあけて配置される、複数のショルダーブロック38sが構成される。なお、このショルダー陸部26sが周方向に連続する凸条で構成されてもよい。この場合、このショルダー陸部26sには、前述のショルダー軸方向溝36sは刻まれない。
このタイヤ2の厚さは、図1に示されたタイヤ2の断面において、カーカス12(詳細には、プライ本体32a)の外面の法線に沿って計測される。このタイヤ2は、トレッド面22の端PEにおいて最大の厚さを有する。このタイヤ2では、ショルダー陸部26sの部分が最も大きなボリュームを有する。
このタイヤ2では、周方向溝24によって区画された複数の陸部26のうち、少なくとも1つの陸部26にサイプ40が刻まれる。サイプ40は、前述の周方向溝24及び軸方向溝36と同じ、溝である。特に、溝の壁間の距離で表される幅が1.5mm以下である溝が、サイプ40と称される。図2においては、サイプ40の幅が狭いため壁間の隙間は示されていない。
このタイヤ2では、陸部26にサイプ40が刻まれることにより、サイプ40で囲まれたロッド42が構成される。このタイヤ2では、このロッド42を囲うサイプ40は管状サイプ40tとも称される。このタイヤ2の陸部26には、複数の管状サイプ40tが刻まれ、複数のロッド42が構成される。これらロッド42は周方向に所定の間隔をあけて配置されてもよい。複数のロッド42からなる複数のロッド群が構成され、これらロッド群が周方向に所定の間隔をあけてこの陸部26に配置されてもよい。
図2に示されるように、このタイヤ2では、ショルダー陸部26sの一部をなすショルダーブロック38sに管状サイプ40tが刻まれる。この管状サイプ40tが、センター陸部26cの一部をなすセンターブロック38cに刻まれてもよく、ミドル陸部26mの一部をなすミドルブロック38mに刻まれてもよい。
このタイヤ2では、陸部26の一部をなすブロック38に管状サイプ40tが刻まれる。陸部26に含まれる複数のブロック38のうち、少なくとも1つのブロック38に、管状サイプ40tが刻まれロッド42が構成される。図2に示されたトレッド4では、ショルダー陸部26sに含まれる全てのショルダーブロック38sに、管状サイプ40tが刻まれロッド42が構成される。
このタイヤ2では、ブロック38に構成されるロッド42の数に特に制限はない。ブロック38に構成されるロッド42の数は1であってもよく、2以上であってもよい。図2に示されたトレッド4では、1つのショルダーブロック38sに対して6のロッド42が構成されている。このトレッド4では、これらロッド42は軸方向及び周方向に並列する。周方向に並列したロッド42の数は、軸方向に並列したロッド42の数よりも多い。
図2に示されるように、このタイヤ2では、ブロック38に構成された複数のロッド42は、隣接する2つのロッド42が、一のロッド42を囲う管状サイプ40tと、他のロッド42を囲う管状サイプ40tとが互いの一部を共有するように配置される。一のロッド42と、この一のロッド42に近接する他のロッド42との間は、サイプ40である。このサイプ40は、複数の管状サイプ40tを組み合わせて構成された、ハチの巣状の形態を有する。
このタイヤ2では、一のロッド42を囲う管状サイプ40tと、他のロッド42を囲う管状サイプ40tとが互いの一部を共有するように、複数の管状サイプ40tが刻まれる。この場合、管状サイプ40tの一部はブロック38を2つのロッド42に区画し、この管状サイプ40tの他の一部はブロック38をロッド42とロッド42以外の部分(以下、ランド44とも称される。)と、に区画する。
図示されないが、複数の管状サイプ40tが一部を共有することなく、間隔をあけて刻まれてもよい。この場合、管状サイプ40tは、ブロック38を、ロッド42と、ランド44とに区画する。
図2に示されるように、このタイヤ2では、ロッド42を囲うサイプ40、すなわち管状サイプ40tは、ブロック38の外縁46の内側に位置する。管状サイプ40tは、周方向溝24とも、軸方向溝36とも、交わらない。この管状サイプ40tは、周方向溝24及び軸方向溝36から独立する。
図2において、両矢印AWはブロック38の軸方向幅である。この軸方向幅AWは最大幅で表される。両矢印ASは、サイプ40から周方向溝24までの軸方向距離である。この軸方向距離ASは最短距離で表される。両矢印PLは、ブロック38の周方向長さである。この周方向長さPLは最長の長さで表される。両矢印PSは、サイプ40から軸方向溝36までの周方向距離である。この周方向距離PSは最短長さで表される。
このタイヤ2では、サイプ40は周方向溝24から離して配置される。具体的には、サイプ40から周方向溝24までの軸方向距離ASの、ブロック38の軸方向幅AWに対する比(AS/AW)は、0.1以上が好ましく、0.3以下が好ましい。
このタイヤ2では、サイプ40は軸方向溝36から離して配置される。具体的には、サイプ40から軸方向溝36までの周方向距離PSの、ブロック38の周方向長さPLに対する比(PS/PL)は、0.1以上が好ましく、0.3以下が好ましい。
ロッド42の断面形状は、ロッド42の外面42gの形状により表される。このタイヤ2では、ロッド42の断面形状は、少なくとも3つの線分で囲まれた多角形である。図2に示されたロッド42の断面形状は、6つの線分で囲まれた多角形、すなわち、六角形(詳細には、正六角形)である。
図2において、両矢印Aはロッド42の断面形状が有する線分の長さを表す。このタイヤ2では、線分の長さAは、3mm以上8mm以下の範囲で設定される。
図3は、陸部26に設けられたロッド42を示す。図3において紙面の上側が、タイヤ2のトレッド面22側である。
図3に示されるように、このタイヤ2のロッド42は、その外面42gと根元42rとの間で曲がる。言い換えれば、ロッド42は、その外面42gと根元42rとの間に曲部48を有する。
このタイヤ2では、ロッド42の外面42gと根元42rとの間に曲部48が設けられているのであれば、曲部48の位置及び数に特に制限はない。このタイヤ2では、ロッド42に1の曲部48が設けられる。ロッド42の長さ方向において、曲部48の頂48tが中心に位置するように、曲部48がロッド42に構成される。
このタイヤ2では、曲部48の頂48tの部分は、ロッド42の外面42gからずれて配置される。曲部48の頂48tの部分は、ロッド42の外面42gに対して周方向にずれて配置されてもよく、軸方向にずれて配置されてもよく、周方向(又は軸方向)に対して斜めの方向にずれて配置されてもよい。ロッド42の外面42gに対する曲部48の頂48tの部分の位置は、タイヤの仕様に応じて適宜決められる。
このタイヤ2では、ロッド42の根元42rの部分は、曲部48の頂48tの部分からずれて配置される。ロッド42の根元42rの部分は、曲部48の頂48tの部分に対して周方向にずれて配置されてもよく、軸方向にずれて配置されてもよく、周方向(又は軸方向)に対して斜めの方向にずれて配置されてもよい。曲部48の頂48tの部分に対するロッド42の根元42rの部分の位置は、タイヤの仕様に応じて適宜決められる。このタイヤ2では、ロッド42の根元42rの部分はロッド42の外面42gの直下に位置する。ロッド42の根元42rの部分が、ロッド42の外面42gからずれて配置されてもよい。
ロッド42は、外面42gと根元42rとを架け渡す、少なくとも3つの側面50を有する。このタイヤ2では、ロッド42の断面形状は六角形であるので、このロッド42は6つの側面50を有する。これら側面50はそれぞれ、前述の多角形の線分を含む。この側面50は、管状サイプ40tの壁54でもある。
このタイヤ2では、ロッド42は、少なくとも1つの側面50に、この側面50から突出する少なくとも1つの凸部52を備える。図3に示されるように、このロッド42は全ての側面50に1つの凸部52を備える。
図4は、管状サイプ40tの開口部分を示す。この図4には、ロッド42の断面形状を表す線分に対して直交する平面に沿った、開口部分の断面が示される。図4において、上側がロッド42の外面42g側であり、下側がこのロッド42の根元42r側である。
凸部52は、ロッド42の外面42g側に設けられる。このタイヤ2では、管状サイプ40tの、一方の壁54に凸部52が設けられていれば、この壁54に対向する他方の壁54にも凸部52が設けられる。一方の壁54に設けられる凸部52と、他方の壁54に設けられる凸部52とは、互いに向き合うように配置される。
前述したように、このタイヤ2では、管状サイプ40tの一部はブロック38を2つのロッド42に区画し、この管状サイプ40tの他の一部はブロック38をロッド42と、ランド44とに区画する。管状サイプ40tのうち、ブロック38を2つのロッド42に区画している部分では、一方のロッド42の側面50と、この側面50に対向する他方のロッド42の側面50とのそれぞれに凸部52が設けられる。図示されないが、この管状サイプ40tのうち、ブロック38をロッド42とランド44とに区画している部分では、ロッド42の側面50と、この側面50に対向するランド44の側面50とのそれぞれに凸部52が設けられる。
図5は、図3のV−V線に沿った、ロッド42の断面を示す。なお、図3において、V−V線は、ロッド42の断面形状に含まれる1の頂点と、この断面形状の重心PGとを通る直線である。
前述したように、ロッド42は、その外面42gと根元42rとの間に曲部48を有する。したがって、このロッド42を囲うサイプ40、すなわち管状サイプ40tも、このロッド42の曲部48において曲がる。
図5において、両矢印tsはロッド42の外面42gにおける管状サイプの幅を表す。両矢印trは、ロッド42の曲部48(詳細には、曲部48の頂48t)における管状サイプの幅を表す。
後述するが、このタイヤ2の管状サイプ40tは、ロッド42の根元42rから曲部48までの部分が一様な幅を有するように構成されるが、曲部48から外面42gに向かって、この管状サイプ40tの幅は漸増する。すなわち、管状サイプの幅tsは幅trよりも広い。
次に、このタイヤ2の製造方法について説明する。このタイヤ2の製造では、まず、成形機(図示されず)において、未加硫状態のトレッド4、サイドウォール6等の部材を組み合わせて、タイヤ2のための生タイヤ2rが準備される。後述する加硫機のモールド内において、生タイヤ2rを加圧及び加熱することで、タイヤ2が得られる。このタイヤ2の製造方法は、タイヤ2のための生タイヤ2rを準備する工程、及び、この生タイヤ2rをモールド内で加圧及び加熱する工程を含む。
このタイヤ2の製造では、図6に示された加硫機58が用いられる。この加硫機58において、生タイヤ2rは加圧及び加熱、すなわち、加硫される。この加硫機58は、モールド60とブラダー62とを備える。
モールド60は、その内面にキャビティ面64を備える。このキャビティ面64は、生タイヤ2rの外面に当接し、タイヤ2の外面を形作る。
モールド60は、割モールドである。このモールド60は、構成部材として、トレッドリング66と、一対のサイドプレート68と、一対のビードリング70とを備える。このモールド60では、これら構成部材を組み合わせることにより、前述のキャビティ面64が構成される。図6のモールド60は、これら構成部材が組み合わされた状態、言い換えれば、閉じられた状態にある。
このモールド60では、トレッドリング66はタイヤ2のトレッド部を形作る。このトレッドリング66は、多数のセグメント72で構成される。なお、サイドプレート68はタイヤ2のサイド部を形作り、ビードリング70はタイヤ2のビード部を形作る。
前述したように、このタイヤ2では、陸部26にサイプ40が刻まれる。このため、このタイヤ2のモールド60には、サイプ40形成用のブレード74が設けられる。モールド60の構成部材のうち、トレッドリング66の一部をなすセグメント72がタイヤ2のトレッド4の部分を形作る。このモールド60では、セグメント72の、陸部26を形作る部分に、ブレード74は設けられる。
前述したように、陸部26に設けられるサイプ40は管状サイプ40tを含む。このモールド60では、トレッド4に管状サイプ40tを刻み、ロッド42を構成するために、ブレード74は管状ブレード76を含む。このモールド60では、セグメント72は、本体78と、この本体78から内向きに延び、ロッド42を形作る管状ブレード76とを備える。
図7は、セグメント72に設けられた管状ブレード76を示す。この図7では、説明の便宜のために、1の管状ブレード76のみを示し、セグメント72の本体78は示していない。図7において紙面の上側が、このセグメント72の本体78側である。
図7に示されるように、管状ブレード76は、その根元76rと先端76eとの間で曲がる。言い換えれば、管状ブレード76は、その根元76rと先端76eとの間に曲部80を有する。
管状ブレード76の断面形状はその内周面の形状により表される。このモールド60では、管状ブレード76の断面形状は、少なくとも3つの線分で囲まれた多角形である。図7に示された管状ブレード76の断面形状は、6つの線分で囲まれた多角形、すなわち、六角形(詳細には、正六角形)である。
管状ブレード76は、根元76rと先端76eとを架け渡す、少なくとも3つのプレート部分82を有する。このモールド60では、管状ブレード76の断面形状は六角形であるので、この管状ブレード76は6つのプレート部分82を有する。これらプレート部分82はそれぞれ、前述の多角形の線分を含む。このプレート部分82は、ロッド42の側面50を形作る。
前述したように、このタイヤ2では、ショルダーブロック38sに、複数のロッド42が構成され、隣接する2つのロッド42においては、一のロッド42を囲う管状サイプ40tと、他のロッド42を囲う管状サイプ40tとが互いの一部を共有する。したがって、このモールド60に設けられるブレード74は、隣接する2つの管状ブレード76において、一の管状ブレード76と、他の管状ブレード76とが互いの一部を共有するように、複数の管状ブレード76を組み合わせて構成される。このブレード74は、ハチの巣状の形態を有する。
このモールド60のブレード74は、一枚のプレートではなく、三次元の構造体で構成される。詳述しないが、このブレード74は、付加製造技術としての三次元積層造形装置を用いて形成される。このブレード74の材質としては、ブレード74の剛性確保の観点から、ステンレス鋼が好ましい。
このモールド60では、管状ブレード76は、少なくとも1つのプレート部分82に、このプレート部分82を貫通する、少なくとも1つの孔84を備える。図7に示されるように、この管状ブレード76は全てのプレート部分82に1つの孔84を備える。このモールド60では、孔84は円形である。この孔84が楕円形であってもよい。
図8は、図7のVIII−VIII線に沿った断面を示す。この図8には、前述の管状ブレード76の断面形状を表す線分に対して直交し、プレート部分82に設けられた孔84の中心軸を含む平面に沿った、管状ブレード76のプレート部分82の断面が、セグメント72の本体78の断面とともに示される。図8において、上側が管状ブレード76の根元76r側であり、下側がこの管状ブレード76の先端76e側である。
このモールド60では、プレート部分82に設けられる孔84は、管状ブレード76の根元76r側に配置される。孔84の大きさは、この孔84が設けられる位置での管状ブレード76の厚さが考慮される。この孔84が円形である場合、孔84の直径は管状ブレード76の厚さの1.0倍以上3.0倍以下の範囲で設定される。この孔84が円形以外で構成された場合は、孔84の断面積に基づいて得られる仮想円の直径が、管状ブレード76の厚さの1.0倍以上3.0倍以下の範囲で設定される。
ブラダー62は、モールド60の内側に位置する。ブラダー62は、架橋ゴムからなる。このブラダー62の内部には、スチーム等の加熱媒体が充填される。これにより、ブラダー62は膨張する。図6に示されたブラダー62は、加熱媒体が充填され膨張した状態にある。このブラダー62は、生タイヤ2rの内面に当接し、タイヤ2の内面を形づける。なお、このタイヤ2の製造では、ブラダー62に代えて金属製の剛性中子が用いられてもよい。
このタイヤ2の製造では、所定の温度に設定されたモールド60に生タイヤ2rは投入される。投入後、モールド60は閉じられる。加熱媒体の充填により膨張したブラダー62が、キャビティ面64に生タイヤ2rを内側から押し付ける。生タイヤ2rは、モールド60内で所定時間加圧及び加熱される。これにより、生タイヤ2rのゴム組成物が架橋し、タイヤ2が得られる。なお、このタイヤ2の製造方法では、温度、圧力、時間等の加硫条件に特に制限はなく、一般的な加硫条件が採用される。
このタイヤ2の製造では、生タイヤ2rには、モールド60及びブラダー62によって熱が伝えられる。生タイヤ2rには、サイド部のように小さなボリュームを有する部分と、トレッド部のように大きなボリュームを有する部分とが混在する。小さなボリュームを有する部分には熱は伝わりやすいが、大きなボリュームを有する部分には熱は伝わりにくい。
熱が伝わりやすい部分を基準に、生タイヤ2rを加圧及び加熱する時間、すなわち加硫時間を設定すると、熱が伝わりにくい部分における、加硫の進行が不十分になることが懸念される。一方、熱が伝わりにくい部分を基準に加硫時間を設定すると、熱が伝わりやすい部分において加硫が過剰に進むことが懸念される。
ところで、環境への配慮から、車両に対しては燃費に関する規制が導入されている。この規制をクリアするために、タイヤ2においては転がり抵抗の低減が求められている。
加硫温度を通常よりも低い温度に設定すると、過剰な加硫の進行を抑えることができ、転がり抵抗の低減を図ることができる。しかしこの場合、長い加硫時間が設定されるため、タイヤ2の生産性が低下することが懸念される。
低発熱性のゴムを採用すれば、生産性を維持しながら、転がり抵抗の低減を図ることができる。しかしこの場合、低発熱性が考慮されていないゴムが採用されたタイヤに比べて、タイヤの耐摩耗性が低下することが懸念される。
このタイヤ2の製造では、生タイヤ2rをモールド60内で加圧及び加熱するとき、生タイヤ2rの、熱が伝わりにくい、陸部26に対応する部分(以下、陸部対応部分86)に、前述のブレード74が差し込まれる。
このタイヤ2の製造では、陸部対応部分86の深い位置まで、ブレード74が差し込まれる。これにより、この陸部対応部分86はその内部からも加熱される。このため、この陸部対応部分86が最適な加硫状態になるまでの時間が短縮される。このタイヤ2は、生産性の向上に貢献する。
このタイヤ2では、トレッド4の形成に要する時間が短縮される。この時間の短縮は、熱が伝わりやすい、小さなボリュームを有する部分での、過剰な加硫の進行を抑える。過加硫による損失正接(tanδ)の増大が抑制されるので、このタイヤ2は、耐摩耗性に劣る低発熱性のゴムに依存せずとも、転がり抵抗の低減を図ることができる。
タイヤにおいては、ウェット性能や氷上性能の向上を図るために、例えば、波形構造又はミウラ折り構造を有するサイプが陸部に刻まれる。このサイプは陸部を略軸方向に横切るタイプであり、陸部に荷重が作用することでサイプが開き、サイプが十分に機能できない恐れがある。陸部の剛性が低下するため、十分な耐摩耗性が得られない恐れもある。
このタイヤ2では、前述したように、陸部26にサイプ40が刻まれることにより、サイプ40で囲まれた複数のロッド42が構成される。サイプ40は管状に形成されるので、軸方向に延びる従来のサイプに比べて、サイプ40の開きが抑えられる。しかも、サイプ40に囲まれたロッド42はその外面42gと根元42rとの間に曲部48を有するので、荷重が作用し陸部が動いても、サイプ40は開きにくい。このタイヤ2では、サイプ40が十分に機能するとともに、このサイプ40を設けたことによる剛性の低下が効果的に抑えられる。このタイヤ2では、良好なウェット性能及び氷上性能が得られるとともに、耐摩耗性の向上が達成される。
このタイヤ2では、トレッド4が効果的に加熱されるので、加硫時間を短縮することができ、過剰な加硫の進行が抑えられる。このタイヤ2では、転がり抵抗が低減される。さらにこのタイヤ2では、サイプ40が十分に機能するので、良好な氷上性能及びウェット性能が得られる。サイプ40を刻んでいるにもかかわらず、陸部26の剛性が確保されるので、良好な耐摩耗性も得られる。このタイヤ2は、転がり抵抗の低減と、ウェット性能、氷上性能及び耐摩耗性の向上とを図ることができる。
前述したように、このタイヤ2の陸部26に管状サイプ40tを刻むために、モールド60のトレッドリング66に管状ブレード76が設けられる。このタイヤ2の製造では、管状サイプ40tの形成のために、管状ブレード76が生タイヤ2rに差し込まれる。管状ブレード76内にはエアが残留しやすいため、ロッド42の外面42gにベア(以下、ベアトレッドとも称される。)が発生することが懸念される。
前述したように、このモールド60では、管状ブレード76の根元76r側に孔84が設けられる。管状ブレード76が生タイヤ2rに差し込まれると、生タイヤ2rのゴム組成物が管状ブレード76内に押し込まれ、管状ブレード76内に巻き込まれたエアが孔84に流れ込む。このタイヤ2の製造では、生タイヤ2rのゴム組成物が孔84を塞ぎ、その一部が孔84に流れ込むため、ロッド42の側面50に、ゴム組成物が孔84を塞いだ痕跡として、凸部52が形成される。
このモールド60では、孔84は、管状ブレード76内に巻き込まれたエアの抜け道として機能する。この孔84を通じて管状ブレード76内からエアが排出されるので、ベアトレッドの発生が抑えられる。前述したように、このタイヤ2は、転がり抵抗の低減と、ウェット性能、氷上性能及び耐摩耗性の向上とを図ることができる。このタイヤ2は、転がり抵抗の低減と、ウェット性能及び耐摩耗性の向上とを図ることができるとともに、ベアトレッドの発生を抑え、良好な外観品質を得ることができる。
図8において、両矢印Dmは管状ブレード76の根元76r(又は、本体78)から孔84までの距離を表す。孔84の存在は管状ブレード76の剛性に影響する。この孔84を起点とする管状ブレード76の欠けや折れが防止される観点から、この距離Dmは1.0mm以上が好ましい。孔84が管状ブレード76内からのエアの排出に貢献でき、ベアトレッドの発生が抑えられる観点から、この距離Dmは5.0mm以下が好ましく、3.0mm以下がより好ましく、2.0mm以下がさらに好ましい。
図4において、両矢印Dはロッド42の外面42g(又は、トレッド面22)から凸部52までの距離を表す。前述したように、凸部52は、生タイヤ2rのゴム組成物が孔84を塞いだ結果生じた痕跡である。したがって、凸部52の位置は、管状ブレード76に設けられる孔84の位置に対応する。
このタイヤ2では、孔84を起点とする管状ブレード76の欠けや折れが防止される観点から、この距離Dは1.0mm以上が好ましい。孔84が管状ブレード76内からのエアの排出に貢献でき、ベアトレッドの発生が抑えられる観点から、この距離Dは5.0mm以下が好ましく、3.0mm以下がより好ましく、2.0mm以下がさらに好ましい。
このモールド60では、ベアトレッドの発生防止の観点から、管状ブレード76のプレート部分82に設けられる孔84の数は1以上が好ましい。孔84の存在は管状ブレード76の剛性に影響する。この孔84を起点とする管状ブレード76の欠けや折れが防止される観点から、プレート部分82に設けられる孔84の数は2以下が好ましい。同様の観点から、ロッド42の側面50に設けられる凸部52の数も1以上2以下が好ましい。
このタイヤ2の製造では、生タイヤ2rの加圧及び加熱工程が完了すると、タイヤ2がモールド60から取り出される。このタイヤ2をモールド60から取り出す工程においては、セグメント72が径方向外向きに移動させられる。前述したように、管状ブレード76はその根元76rと先端76eとの間に曲部80を有する。このため、管状ブレード76をトレッド4から引き抜くとき、この管状ブレード76によって、トレッド4に形成されたサイプ40が過剰に開き、亀裂(以下、ダメージトレッドとも称される。)が生じる恐れがある。
図9には、図7のIX−IX線に沿った、管状ブレード76の断面がセグメント72の本体78の断面とともに示される。なお、図7において、IX−IX線は、管状ブレード76の断面形状に含まれる1の頂点と、この断面形状の重心PGmとを通る直線である。
図9において、両矢印tsmは根元76rにおける管状ブレード76の厚さを表す。両矢印trmは、曲部80(詳細には、曲部80の頂80t)における管状ブレード76の厚さを表す。
このモールド60では、管状ブレード76は、その先端76eから曲部80までの部分が一様な厚さを有するように構成されるが、曲部80から根元76rに向かって、この管状ブレード76の厚さは漸増する。このため、この管状ブレード76によって形成されるサイプ40、詳細には、管状サイプ40tも、ロッド42の根元42rから曲部48までの部分が一様な幅を有するように構成されるが、曲部48からロッド42の外面42gに向かって、この管状サイプ40tの幅は漸増する。
このタイヤ2の製造では、タイヤ2を取り出す工程においてセグメントを径方向外側に移動させると、管状ブレード76はその根元76rから順にトレッド4から引き出されていく。管状ブレード76の厚さはその根元76rから曲部80に向かって漸減するので、管状ブレード76と、この管状ブレード76によって形成された管状サイプ40tとの間には隙間が形成される。このため、管状ブレード76をトレッド4から引き抜くとき、この管状ブレード76による、トレッド4に形成された管状サイプ40tの過剰な開きが防止される。管状ブレード76を引き抜く際に管状サイプ40tの壁54に作用する応力の低減が図れるので、ダメージトレッドの発生が抑えられる。この観点から、曲部80における管状ブレード76の厚さtrmに対する、根元76rにおける管状ブレード76の厚さtsmの比(tsm/trm)は1.1以上が好ましく、1.2以上がより好ましく、1.3以上がさらに好ましい。この管状ブレード76によって形成される管状サイプ40tの幅が適正に維持され、この管状サイプ40tによるウェット性能、氷上性能及び耐摩耗性への影響が抑えられる観点から、この比(tsm/trm)は2.0以下が好ましく、1.9以下がより好ましく、1.8以下がさらに好ましい。
このモールド50では、管状ブレード76、すなわちブレード74の剛性確保と、このブレード74によって形成されるサイプ40の機能確保との観点から、曲部80の頂80tにおける管状ブレード76の厚さtrmは、0.2mm以上が好ましく、1.0mm以下が好ましい。
管状サイプ40tは管状ブレード76によって形成されるので、タイヤ2においても、ダメージトレッドの発生が抑えられる観点から、管状サイプ40tの幅はロッド42の曲部48から外面42gに向かって漸増し、曲部48における管状サイプ40tの幅trに対する、外面42gにおける管状サイプ40tの幅tsの比(ts/tr)は1.1以上が好ましく、1.2以上がより好ましく、1.3以上がさらに好ましい。管状サイプ40tによるウェット性能、氷上性能及び耐摩耗性への影響が抑えられる観点から、この比(ts/tr)は2.0以下が好ましく、1.9以下がより好ましく、1.8以下がさらに好ましい。
このタイヤ2では、管状ブレード76、すなわちブレード74の剛性確保と、このブレード74によって形成されるサイプ40の機能確保との観点から、曲部48の頂48tにおける管状サイプ40tの幅trは、0.2mm以上が好ましく、1.0mm以下が好ましい。
このモールド60では、管状ブレード76は、曲部80において、弓形に曲がる。曲部80が丸みを帯びているので、モールド60からタイヤ2を取り出すとき、管状ブレード76はトレッド4から滑らかに引き抜かれる。このモールド60では、ダメージトレッドの発生が抑えられる。この観点から、曲部80において管状ブレード76は弓形に曲がり、この曲部80の輪郭が円弧で表されるのが好ましい。
図9において、矢印Rmは管状ブレード76の曲部80の輪郭を表す円弧の半径である。このモールド60では、ダメージトレッドの発生が抑えられる観点から、半径Rmは0.5mm以上が好ましく、0.7mm以上がより好ましく、0.9mm以上がさらに好ましい。管状ブレード76によって形成される管状サイプ40tの曲部48によるウェット性能、氷上性能及び耐摩耗性への影響が抑えられる観点から、半径Rmは3.0mm以下が好ましく、2.6mm以下がより好ましく、2.3mm以下がさらに好ましい。
ロッド42は管状ブレード76によって形成されるので、タイヤ2においても、ダメージトレッドの発生が抑えられる観点から、曲部48においてロッドは弓形に曲がり、この曲部48の輪郭が円弧で表されるのが好ましい。
図5において、矢印Rはロッド42の曲部48の輪郭を表す円弧の半径である。このタイヤ2では、ダメージトレッドの発生が抑えられる観点から、この半径Rは0.5mm以上が好ましく、0.7mm以上がより好ましく、0.9mm以上がさらに好ましい。ロッド42の曲部48によるウェット性能、氷上性能及び耐摩耗性への影響が抑えられる観点から、この半径Rは3.0mm以下が好ましく、2.6mm以下がより好ましく、2.3mm以下がさらに好ましい。
図9において、角度θmは管状ブレード76の曲げ角度を表す。この曲げ角度θmは、この管状ブレード76が、曲部80において、角を形成するように曲がっていると仮定して得られる角度により表される。
このモールド60では、ダメージトレッドの発生防止の観点から、管状ブレード76の曲げ角度θmは100°以上が好ましく、110°以上がより好ましく、120°以上がさらに好ましい。陸部26の剛性向上に貢献できるロッド42が得られるとの観点から、曲げ角度θmは160°以下が好ましく、150°以下が好ましく、140°以下がさらに好ましい。
図5において、角度θは管状サイプ40tの曲げ角度を表す。この曲げ角度θは、この管状サイプ40tが、曲部48において、角を形成するように曲がっていると仮定して得られる角度により表される。この曲げ角度θはロッド42の曲げ角度でもある。
管状サイプ40t(又はロッド42)は管状ブレード76によって形成されるので、タイヤ2においても、ダメージトレッドの発生防止の観点から、管状サイプ40tの曲げ角度θは100°以上が好ましく、110°以上がより好ましく、120°以上がさらに好ましい。陸部26の剛性向上に貢献できるロッド42が得られるとの観点から、この管状サイプ40tの曲げ角度θは160°以下が好ましく、150°以下が好ましく、140°以下がさらに好ましい。
図1において、両矢印Gは周方向溝24sの深さである。両矢印Bは、陸部26に設けられたサイプ40の深さ(又は、ロッド42の長さ)である。
このタイヤ2では、トレッド4が効果的に加熱される観点から、サイプ40の深さBは3mm以上が好ましい。陸部26の剛性が確保される観点から、このサイプ40の深さBは20mm以下が好ましい。
このタイヤ2では、トレッド4が効果的に加熱される観点から、サイプ40の深さBは周方向溝24の深さGの50%以上が好ましい。陸部26の剛性が確保される観点から、このサイプ40の深さBは周方向溝の深さGの100%以下が好ましい。
前述したように、このタイヤ2では、ロッド42の断面形状は、少なくとも3つの線分で囲まれた多角形である。このロッド42の断面形状としては、例えば、三角形、四角形、五角形及び六角形が挙げられる。耐摩耗性の向上が図れるとの観点から、図2に示されるように、このロッド42の断面形状は六角形であるのがより好ましい。この場合、このロッド42の断面形状は、全ての線分が同じ長さを有する正六角形であるのがさらに好ましい。
このタイヤ2では、ロッド42の断面形状は少なくとも3つの線分を含む。ロッド42が陸部26の剛性確保に効果的に貢献できるとの観点から、少なくとも1つの線分は、軸方向に延びるのが好ましい。前述したように、図2に示されたタイヤ2では、ロッド42の断面形状は正六角形である。このロッド42においては、この断面形状に含まれる二つの線分が軸方向に延びる。このロッド42は、陸部26の剛性確保に効果的に貢献できる。この観点から、断面形状が正六角形であり、この断面形状に含まれる二つの線分が軸方向に延びるように、ロッド42が構成されるのがより好ましい。
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、転がり抵抗の低減と、ウェット性能及び耐摩耗性の向上とを図ることができるとともに、ベアトレッドの発生を抑え、良好な外観品質を得ることができる、空気入りタイヤ及びタイヤの製造方法が得られる。
以下、実施例などにより、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、かかる実施例のみに限定されるものではない。
[実施例1]
図1−5に示された構成を備え、下記の表1に示された仕様を備えた重荷重用空気入りタイヤ(タイヤサイズ=315/70R22.5)を得た。
この実施例1では、ショルダーブロックにサイプを刻み、このサイプで囲まれた6つのロッドが構成された。ロッドの断面形状は正六角形であり、このことが表1の構造の欄に「H」で表されている。この正六角形の辺の長さAは5mmであった。一のロッドに設けられる曲部の数は1であり、曲げ角度θは160°であった。曲部は、その頂がロッドの長さ方向において中心に位置するように構成された。
この実施例1では、ロッドの側面全てに凸部が形成された。1つの側面に設けられた凸部の数Nは1であった。ロッドの外面から凸部までの距離Dは1.0mmであった。
この実施例1では、ロッドの曲部から外面に向かって、サイプの幅は漸増し、曲部におけるサイプの幅trに対する、外面におけるサイプの幅tsの比(ts/tr)は1.5であった。曲部におけるサイプの幅trは0.6mmであった。曲部の輪郭は円弧で表され、この円弧の半径Rは1.5mmであった。
[比較例1]
ショルダーブロックに波形構造のサイプを刻み、サイプで囲まれた6つのロッドを構成しなかった他は実施例1と同様にして、比較例1のタイヤを得た。比較例1は従来タイヤである。サイプが波形構造を有することが、表1の構造の欄に「W」で表されている。
[比較例2]
ショルダーブロックにミウラ折り構造のサイプを刻み、サイプで囲まれた6つのロッドを構成しなかった他は実施例1と同様にして、比較例2のタイヤを得た。比較例2は従来のタイヤである。サイプがミウラ折り構造を有することが、表1の構造の欄に「M」で表されている。
[比較例3]
ロッドの側面に凸部を設けず、ロッドの曲部から外面までのサイプを一様な幅で構成するとともに、曲部を、丸みを帯びた曲部でなく、角張った曲部で構成した他は実施例1と同様にして、比較例3のタイヤを得た。
[実施例2]
1つの側面に設ける凸部の数Nを2とし、側面を幅方向に3等分する位置に2つの凸部を配置した他は実施例1と同様にして、実施例2のタイヤを得た。
[実施例3−4]
距離Dを下記の表2に示される通りとした他は実施例1と同様にして、実施例3−4のタイヤを得た。
[実施例5−6]
外面におけるサイプの幅tsを変えて比(ts/tr)を下記の表2に示される通りとした他は実施例1と同様にして、実施例5−6のタイヤを得た。
[実施例7−8]
半径Rを下記の表2に示される通りとした他は実施例1と同様にして、実施例7−8のタイヤを得た。
[ベアトレッド(B/T)]
各試作タイヤの外面を観察し、ベアトレッド(B/T)の発生状況を確認し、発生率を得た。その結果が、指数で、下記の表1及び2に示されている。数値が大きいほどベアトレッドは発生しにくい。
[ダメージトレッド(DM/T)]
各試作タイヤの外面を観察し、ダメージトレッド(DM/T)の発生状況を確認し、発生率を得た。その結果が、指数で、下記の表1及び2に示されている。数値が大きいほどダメージトレッドは発生しにくい。
[ブレード欠け(欠け)]
タイヤを製造する毎にモールドを観察し、ブレード欠け(欠け)の発生状況を確認し、欠けが発生するまでのプレス回数を計数した。その結果が、指数で、下記の表1及び2に示されている。数値が大きいほどブレード欠けは発生しにくい。
[ウェット性能(WET性能)]
試作タイヤを正規リムに組み込み空気を充填しタイヤの内圧を850kPaに調整した。このタイヤを、試験車両(10t積みトラック)の全輪に装着した。この試験車両を、荷台前方に標準積載量の50%の荷物を積載した状態で、ウェット路面(5mmの水膜を有するウェットアスファルト路)において、2速−1500rpm固定で走行させ、クラッチを繋いだ瞬間から10m通過するまでの通過タイムが測定された。この結果が、指数で、下記の表1及び2に示されている。数値が大きいほど、通過タイムが短く、ウェット性能に優れる。
[氷上性能]
試作タイヤを正規リムに組み込み空気を充填しタイヤの内圧を850kPaに調整した。このタイヤを、試験車両(10t積みトラック)の全輪に装着した。この試験車両を、荷台前方に標準積載量の50%の荷物を積載した状態で、氷板路において、速度40km/hから全輪ロックで急制動をかけ、停止するまでの制動距離を測定した。この結果が、指数で、下記の表1及び2に示されている。数値が大きいほど制動距離が短く、氷上性能に優れる。
[耐摩耗性]
試作タイヤを正規リムに組み込み空気を充填しタイヤの内圧を850kPaに調整した。このタイヤを、試験車両(10t積みトラック)のフロント軸に装着した。荷台前方に標準積載量の50%の荷物を積載した状態で、一般道路を走行し、偏摩耗が発生する走行距離を測定した。この結果が、指数で下記の表1及び2に示されている。数値が大きいほど、偏摩耗が生じにくく耐摩耗性に優れる。
[転がり抵抗(RRC)]
転がり抵抗試験機を用い、各試作タイヤが下記の条件でドラム上を速度80km/hで走行するときの転がり抵抗係数(RRC)を測定した。この結果が、指数で下記の表1及び2に示されている。数値が大きいほど、転がり抵抗が小さく優れる。
リム:正規リム
内圧:900kPa
縦荷重:33.35kN
表1及び2に示されるように、実施例では、転がり抵抗の低減と、ウェット性能及び耐摩耗性の向上とが図られているとともに、ベアトレッドをはじめとする損傷の発生が抑えられ、良好な外観品質が得られることが確認されている。この評価結果から、本発明の優位性は明らかである。