以下、本発明に係る実施形態のエキスパンションジョイントについて、図面を参照して具体的に説明する。ここで、互いに同一または類似の部分には共通の符号を付して、重複説明は省略する。ここで説明する下記の実施形態はいずれも、免震構造の建物周囲に設けられるエキスパンションジョイントの場合の一例をとりあげて説明する。
[実施形態]
以下、本発明に係るエキスパンションジョイントの実施形態の構成について、図1乃至図7を用いて説明する。ここで、図1は、本発明に係るエキスパンションジョイント1A及び1A1の実施形態の構成例を示す平面図およびI−I矢視線の断面図である。また、図2は、図1(a)に示すI−I矢視線のパネル前端部付近の断面図と、II−II矢視線のパネル前端部付近の側面図である。その他の図については、以降において、適宜説明する。
例えば、図1(b)に示すように、免震構造の建物全周(免震構造側)に対して、設計考慮された規模の地震発生の場合における免震による最大の変位量を考慮した平常時のクリアランススペースCS#1が確保される。また、後述するような、図5(a)に示すクリアランススペースCS#2(CS#1に比べてスペース間が狭くなった場合の変位)、図5(b)に示すCS#3(CS#1に比べてスペース間が拡がった場合の変位)等の変形にも追従するように、土台構造の免震構造側の躯体91と非免震構造側の躯体92との間、免震構造側の建物への人または車両の出入口部を含む全周にわたってクリアランススペースCS#1を跨ぐエキスパンションジョイント1A、1A1等が設けられる。
図1(a)に示すエキスパンションジョイント1A及び1A1は、コーナ部側の区画等を除く主な区画に敷設される一のパネル2a及び複数のパネル2aaを含む構成の一例である。なお、図1等において、相対的な方向性を示すために、クリアランススペースCS#1の長手方向をX方向とし、同じく短手方向をY方向として、また、地面に対する垂直方向をZ方向として示している。また、区画とは、変位のない状態のクリアランススペースCS#1を基準としたエキスパンションジョイント1A及び1A1において、敷設されるパネルの配置・並び等を示すものとする。
図1等に示すエキスパンションジョイント1A及び1A1は、例えば以下のようなパネル2a、2aaを含む構成である。なお、本実施形態の例では、以下の一のパネル2a及び複数のパネル2aa等を含む構成例で説明する。
(1)第1パネル(一のパネル2a)
第1パネルは、例えばクリアランススペースCS#1に敷設される区画の図1(a)に示すエキスパンションジョイント1Aを構成する一のパネル2aであり、この第1パネルと共にエキスパンションジョイント1Aを構成するパネル支持材3a、パネル支持受材4a等により他の区画にスライド可能にさせる。
(2)第2パネル(複数のパネル2aa)
第2パネルは、例えばクリアランススペースCS#1に敷設される区画の図1(a)に示すエキスパンションジョイント1A1を構成する複数のパネル2aaであり、この第2パネルと共にエキスパンションジョイント1A1を構成する連設支持可能なパネル支持材3aa、パネル支持受材4aa等により他の区画にスライド可能にさせる。
以降では、実施形態のエキスパンションジョイント1A及び1A1における第1パネル及び第2パネルの構造例および機能等について説明する。
実施形態のエキスパンションジョイント1A及び1A1には、図1(a)に示すように、免震構造側の躯体91と非免震構造側の躯体92との間のクリアランススペースCS#1に、一のパネル2a及び複数のパネル2aa等が連設して設けられる。
エキスパンションジョイント1A及び1A1には、例えば図1(b)等に示すように、平常時のクリアランススペースCS#1の短手方向(Y方向)に沿ってクリアランススペースCS#1を跨るように、パネル2a、2aa等が設けられる。パネル2a、パネル2aaは、以下のような構成である。
以降では、主に図1乃至図4に示す一のパネル2aの構造について説明する。ここで、図2(a)は、図1(a)に示すI−I矢視線のパネル2aのパネル前端部付近の断面図であり、図2(b)は同じくII−II矢視線のパネル2aのパネル前端部付近の側面図である。図3は、図1(a)に示すエキスパンションジョイント1Aの敷設例を示す斜視図である。図4は、図2(b)に示すパネル前端部の傾き動作状態の例を示す側面図である。
<第1パネルについて>
はじめに、エキスパンションジョイント1Aの構成について説明する。
エキスパンションジョイント1Aには、免震構造側の躯体91と非免震構造側の躯体92との間のクリアランススペースCS#1の区画に応じて、一のパネル2aがクリアランススペースCS#1の長手方向(X方向)に沿って他の区画にスライド可能なように連通可能に設けられる。
一のパネル2aは、図1(b)等に示すように、クリアランススペースCS#1の短手方向(Y方向)に沿って、パネル前端部側を免震構造側の躯体91へ向けて、かつ、パネル後端部側を非免振構造側の躯体92へ向けてクリアランススペースCS#1を跨るように設けられる。
パネル支持材3aは、例えば図3に示すように、クリアランススペースCS#1の長手方向に沿って躯体91に敷設可能な棒状に伸びた部材に形成され、一のパネル2aのパネル前端部側を支持する。例えば、パネル支持材3aの脚部において、図2(a)等に示すように、パネル2aの垂直方向に沿った断面は略半円形状を含む構造である。
パネル支持材3aは、図3に示すように、免震構造側の一のパネル2aのパネル前端部における複数の箇所にパネル支持ボルト23aがボルト挿通孔31aへ締結され、一のパネル2aを支持する。
パネル支持受材4aは、クリアランススペースCS#1の短手方向(Y方向)へのパネル支持材3a及び3aaの移動を規制し、かつ、クリアランススペースCS#1の長手方向(X方向)へのパネル支持材3a及び3aaの移動をスライド可能に支持しながらパネル支持材3a及び3aaの略半円形状の脚部を上側方向に抜脱しないように揺動自在に載置させる。
パネル支持受材4aは、パネル支持材3a及び3aaの略半円形状の脚部を嵌合するために、クリアランススペースCS#1の長手方向に沿って凹形状(図2に示す凹部41a)が形成される長手部材である。例えば、パネル支持受材4aの凹形状は、パネル支持材3a及び3aaの脚部の断面における略半円形状(R曲面)に対する支持面がR曲面(図2に示す凹部41aに対応)を形成している。
パネル支持受材4aは、図2(a)等に示すように、長手部材の長手方向に沿った側面側で複数の係止材固定ボルト64aによるボルト留めにより係止材6aに固定されて、クリアランススペースCS#1の長手方向に沿って免震構造側の躯体91に設置される。
床材21aは、略長方形状に加工される鋼板などの部材を用いたフレーム板である。また、床材21aを、床上面側で開閉可能な構造とし、さらに、パネル2a内に中材シートを収納可能な構造としてもよい。例えば、中材シートとして、撥水性シート、耐火性シート、不燃性シートなどを収納してもよい。なお、図2(b)に示すパネル2aの側面側の板材部分を、パネル側面部24aとする。
各々のパネル2a及び2aaには、仕上材20a等が施される。仕上材20aは、床材21a等を覆う床仕上げ材である。床仕上げ材は、例えば歩行・通行可能に適した材料のタイル、石材、金属材料等が用いられる。
(躯体91への設置方法について)
係止材6aは、パネル支持受材4a及び4aaを免震構造側の躯体91へ固定するための組合せ部材からなる。例えば、係止材6aは、図2(a)及び(b)等に示すように、躯体係止材61a、中間係止材62a、躯体固定材63a、係止材固定ボルト64aおよび係止材固定ナット65aを含む構成である。
パネル支持受材4aは、図2(a)等に示すように、躯体係止材61aに載置されて、躯体係止材61aと躯体固定材63aとの間に中間係止材62aを介在させ、躯体係止材61aに設けられた貫通孔610a、中間係止材62aに設けられた貫通孔620aおよび躯体固定材63aに設けられた貫通孔630aに係止材固定ボルト64aを貫通させて係止材固定ナット65aに螺合されて、躯体係止材61aに係止される。
躯体係止材61aにおける部材の長手方向に沿った断面は、略L字形状である。免震構造側の躯体91に設置された躯体係止材61aでは、図2(a)及び(b)に示すように、略L字形状の上端部611aと、敷設された平常時のパネル2aの上面とが水平を保つ。
中間係止材62aにおける部材の長手方向に沿った断面は、略L字形状である。中間係止材62aは、免震構造側の躯体91と躯体係止材61aとの間に介在し、かつ、躯体係止材61aと躯体固定材63aとの間に介在する部材である。
躯体固定材63aにおける部材の長手方向に沿った断面は、略L字形状である。躯体固定材63aは、相対的には中間係止材62aのL字形状の配置と逆L字形状の配置で免震構造側の躯体91に設置される。
躯体固定材63aのボルト挿通孔51aに固定ボルト5aが挿通され、固定ボルト5aにより躯体固定材63aが躯体91に固定される。固定ボルト5aは、例えばアンカーボルトおよび当該ボルトを固定するナット等である。これにより、パネル支持受材4aを係止材6aにより躯体91に固定することができる。
以上のような躯体91への係止材6aを設置後、例えば、躯体固定材63a、固定ボルト5a等の周辺区間には、無収縮モルタル102が充填されて覆われる。
以上のような躯体91へのパネル2aの設置後、例えば、躯体固定材63a、固定ボルト5aの上部のパネル2aの周辺区間には、パネル周辺モルタル93が充填されて覆われる。このパネル周辺モルタル93と中間係止材62a等との間には、補強材として、例えばシール材101を用いてもよい。
クリアランススペースCS#1の平常時におけるパネル2aの上面視において、パネル前端部の端面側と当該端面側に対向する躯体係止材61aの上端部611aとの空隙の間隔STには、当該空隙の間隔STを埋める隙間埋部材29aがパネル前端部の端面側に沿ってパネル2aに接合されている。ここで、隙間埋部材29aの板厚を、図2(b)に示すΔWとする。
パネル前端部の端面側に接合された隙間埋部材29aの最も高い部分の高さが、パネル前端部と対向する躯体係止材61aの上端部611aの底面側の高さよりも低い位置に設置される。ここで、上端部611aの板厚を、図2(b)に示すΔhとする。
図4(b)に示すように、クリアランススペースCS#1の変位時において、パネル2aに接合された隙間埋部材29aと対向する躯体係止材61aとの間に設けられる傾斜許容空間SP側にパネル前端部が傾斜した場合にも、パネル2aに接合された隙間埋部材29aと対向する躯体係止材61aとの間に設けられる傾斜許容空間SP側にパネル前端部が傾斜可能である。
すなわち、パネル前端部と対向する躯体係止材61aの上端部611aの底面側からパネル支持受材4aの第1片係止部42a上側に到る傾斜許容空間SP側にパネル前端部が傾いた場合には、当該傾斜許容空間SPにパネル前端部の一部および隙間埋部材29aを収容可能な構造である。その場合に、さらに、パネル前端部が傾斜許容空間SP側のパネル支持受材4aの一方の第1片係止部42a上側、又は、傾斜許容空間SP側から離れたパネル支持受材4aの他方の第2片係止部43aに係止可能な構造である。
ここで、パネル前端部が傾斜許容空間SP側に傾く場合に、パネル前端部と対向する躯体係止材61aの上端部611aに、パネル前端部の上端部分が衝突しないようにするためには、すなわち、図4(b)に示すような傾斜を可能とするためには、図2(b)に示した隙間埋部材29aの板厚ΔWと、躯体係止材61aの上端部611aの板厚Δhとの関係は、少なくとも以下のような関係である。
Δh<ΔW
また、隙間埋部材29aの板厚ΔWと、パネル前端部の端面側と当該端面側に対向する躯体係止材61aの上端部611aとの空隙の間隔STとの関係は、
ΔW≦ST
の関係を満たす。
例えば、図2(b)に示す躯体係止材61aにSUS304(SUSは、Steel Use Stainless:ステンレンス材質記号)で板厚Δh=3(mm)鋼材を用いて、一方の端部側を上端部611aとして、両端部側の折曲げ長を15(mm)とする。また、例えば図2(b)に示す凹部41aの支持面におけるR曲面の曲率半径=20mm、パネル2aのZ方向のパネル厚さ=22(mm)、空隙の間隔ST=6(mm)とした場合に、隙間埋部材29aにSUS304を用いて、隙間埋部材29aのZ方向の高さ=18(mm)として、隙間埋部材29aの板厚ΔW=4〜6(mm)程度にする。
なお、例えば、図2(b)に示すパネル2aのZ方向のパネル厚さ=22(mm)に対する、傾斜許容空間SPのZ方向の高さΔdh=28(mm)程度とし、傾斜許容空間SPのY方向の幅Δdwとする。このとき、傾斜許容空間SPのY方向の幅Δdwは、躯体係止材61aの折曲げ長15(mm)から躯体係止材61aの板厚Δh=3(mm)を引いた長さ12(mm)=Δdwに相当する。
以上のような図2(b)等に示すパネル2aを備えるエキスパンションジョイント1Aでは、パネル2aのパネル前端部と対向する躯体係止材61aの上端部611aとの空隙の間隔STにおいて、隙間埋部材29aの板厚ΔWで傾斜許容空間SPへの進入経路がほぼ塞がれるため、例えば平常時に通行する女性の細いヒールのかかと(例えばピンヒール幅3mm程度)等が、傾斜許容空間SPに入り込むことを防ぐことができる。一方、パネル2aの最大傾斜角度αについては、図4(a)及び(b)に示すように、傾斜許容空間SPを十分に確保することができる。
例えば、図4(b)に示すようなパネル2aのパネル前端部において、地震が発生した際のクリアランススペースCS#1の変位時において、パネル2aの最大傾斜角度αとする。クリアランススペースなどを一定の設計条件に仮定した場合に、例えば、図8に示す従来例のエキスパンションジョイントのパネル2nでは最大傾斜角度βは9〜10°程度である。
一方、本実施形態のエキスパンションジョイント1Aでは、図4(b)に示すパネル2aの最大傾斜角度αは、例えば17〜18°程度にすることができる。すなわち、図4(a)及び(b)に示すように、パネル支持材3aの揺動範囲を大きく拡げることができる。これにより、より大きな揺れに耐えうることができ、耐震性に優れたエキスパンションジョイント1Aを提供することができる。
また、図4(a)に示すように、パネル支持材3aを挟んで傾斜許容空間SP側と反対の空間側にパネル前端部が傾いた場合には、パネル前端部が傾斜許容空間SP側から離れたパネル支持受材4aの他方の第2片係止部43a上側、又は、傾斜許容空間SP側のパネル支持受材4aの一方の第1片係止部42aに係止可能である。
以上のようなパネル支持受材4aは、例えばアルミニウムの押し出し成型等により製作される。クリアランススペースCS#1の長手方向に沿って長状になり、かつ、短手方向の断面が凹形状となるように、凹形状の上側の枠型と、凹形状の下側の枠型に側面側又は下面側でボルト孔44aを形成させる型枠を製作し、アルミニウムの押し出し成型により、パネル支持受材4aを製作することができる。
以上説明したように、図4等に示すエキスパンションジョイント1Aの躯体91への設置方法において、パネル前端部が傾いた場合には、当該傾斜許容空間SPにパネル前端部の一部および隙間埋部材29aを収容可能な構造である。さらに、以上のような傾斜許容空間SPを確保しつつ、かつ、パネル前端部の端面側と当該端面側に対向する躯体係止材61aの上端部611aとの空隙の間隔STにおいて、傾斜許容空間SPへの進入経路をほぼ塞ぐことができる。
(躯体92への設置方法について)
一のパネル2a又は複数のパネル2aaのパネル後端部側は、図1(b)、後述する図5(a)及び図5(b)等に示すように、非免震構造側の躯体92に設けられる台座8aに摺動可能に設置される。
台座8aの下方側には、台座下部モルタル95を充填する前に、非免震構造側の躯体92にアンカーボルト84が複数個所に設けられる。その施工後、その台座8aの下方側に、例えば無収縮モルタル等である台座下部モルタル95が充填される。充填される台座下部モルタル95内には、タップ固定金具83が据え付けられる。
充填後の台座下部モルタル95上に、台座8aが敷設され、その台座8aが複数個所のタップ固定金具83を介して、セルフタップにより固定される。また、パネル2a、パネル2aa等の周辺には、パネル周辺モルタル94が施工される。
一のパネル2a又は複数のパネル2aaは、非免震構造側の端部(パネル後端部)方向に屈曲可能な傾斜構造部7aを有する。傾斜構造部7aは、例えばパネル後端部側に、X方向に沿って蝶番を介した構造で設けられる。傾斜構造部7aは、変位なし状態の平常時のクリアランススペースCS#1において、台座8aの傾斜係止部81に係止される。
傾斜係止部81は、平常時のクリアランススペースCS#1の状態においては、傾斜構造部7aの蝶番の付勢力を抗して、傾斜構造部7aの平板部分を床材21aと水平面上に保持させるように係止する。なお、後述する図5(a)及び(b)に示すように、クリアランススペースCS#2又は#3の変位状態においては、傾斜構造部7aの相対的な移動等により、傾斜構造部7aが傾斜係止部81の係止から解除される。
次に、図5(a)及び(b)に示すエキスパンションジョイント1Aにおけるクリアランススペース変位時の動作例について説明する。
例えば、地震発生の際のクリアランススペースCS#1の変位時において、図5(a)に示すクリアランススペースCS#2は、図2(b)に示す平常時のクリアランススペースCS#1に比べてスペース間が狭くなった場合の変位の状態を示すI−I矢視線の断面図である。また、図5(b)に示すクリアランススペースCS#3は、図2(b)に示す平常時のクリアランススペースCS#1に比べてスペース間が拡がった場合の変位の状態を示すI−I矢視線の断面図である。
本実施形態のエキスパンションジョイント1Aでは、クリアランススペースCS#1の変位に追従して、例えば図5(a)に示すクリアランススペースCS#2の例では、パネル2a等が台座8aにおける型スペース(傾斜係止部81に係止された状態)からせり上がり、パネル2a等の片方の端部(パネル後端部)側がパネル周辺モルタル94に載置する。
また、エキスパンションジョイント1Aでは、クリアランススペースCS#1の変位に追従して、例えば図5(b)に示すクリアランススペースCS#3の例では、パネル2a等が台座8aにおける型スペース(傾斜係止部81に係止された状態)からクリアランススペースCS#3側に引き寄せられて、パネル2aの後端部側が台座下部モルタル95上の台座8aに載置する。
傾斜係止部81は、図1(b)に示すような平常時のクリアランススペースCS#1の状態においては、傾斜構造部7aの蝶番の付勢力を抗して、傾斜構造部7aの平板部分を床材21aと水平面上に保持させるように係止する。一方、地震発生時のクリアランススペースCS#2又は#3の状態においては、傾斜構造部7aの相対的な移動等により、傾斜構造部7aが傾斜係止部81の係止から解除される。これにより、傾斜構造部7aの蝶番の付勢力により平板部分が接地面側に屈曲されると共に、パネル2aは非免震構造側の躯体92に設けられる台座8aに摺動可能となる。
以上のような構造により、傾斜構造部7aが台座8aの傾斜係止部81に係止されている場合には、図2(b)に示すように、パネル2aの上面とクリアランススペースCS#1の長手方向に沿った平板部分の面とが平に揃う。一方、傾斜構造部7aが傾斜係止部81に係止されない場合には、傾斜構造部7aは、図5(a)又は図5(b)に示すように、クリアランススペースCS#2又はCS#3の長手方向に沿った平板部分が蝶番により屈曲されて、例えば台座8aに当該平板部分が傾斜して接する。
これにより、パネル2aの片方の端部(パネル後端部)側において、例えば図5(a)及び(b)に示すように、傾斜係止部81の係止から解除された傾斜構造部7aが接地傾斜できるため、車椅子、担架、台車等でパネル2aに乗り上げてエキスパンションジョイント1Aを通過する際に、これらの車輪の移動操作が容易となる。
<第2パネルについて>
次に、図1(a)に示すエキスパンションジョイント1A1の構造の一例について、図6及び図7を参照しながら説明する。ここで、図6に、図1(a)に示すエキスパンションジョイント1A1の敷設例を示す。図7では、免震構造側の躯体91に複数のパネル2aaを設置する場合の施工方法の概要を示すものである。
エキスパンションジョイント1A1には、図6に示すように、免震構造側の躯体91と非免震構造側の躯体92との間のクリアランススペースCSの区画に応じて、複数のパネル2aaがクリアランススペースCSの長手方向(X方向)に沿ってスライド可能なように連設して設けられる。
複数のパネル2aaは、図6等に示すように、クリアランススペースCSの短手方向(Y方向)に沿って、クリアランススペースCSを跨るように設けられる。
パネル支持材3aaは、例えば図6に示すように、クリアランススペースCSの長手方向に沿って躯体91に敷設可能な棒状に伸びた部材に形成され、複数のパネル2aaのパネル前端部側を支持する。例えば、パネル支持材3aaは、図1(b)等に示すパネル支持材3aの構造と同様に、パネル2aaの垂直方向に沿った断面は略半円形状の脚部を含む構造である。
パネル支持材3aaは、図6に示すように、免震構造側の複数のパネル2aaのパネル前端部における複数の箇所にパネル支持ボルト23aがボルト挿通孔31aへ締結されて、複数のパネル2aaを連設させて支持する。
パネル支持受材4aaは、クリアランススペースCSの長手方向(X方向)に沿って、免震構造側の躯体91に設けられる。パネル支持受材4aaは、クリアランススペースCSの短手方向(Y方向)へのパネル支持材3aa及び3aの移動を規制し、かつ、クリアランススペースCSの長手方向(X方向)へのパネル支持材3aa及び3aの移動をスライド可能に支持しながらパネル支持材3aa及び3aの略半円形状の脚部を上側方向に抜脱しないように揺動自在に載置させる。
パネル支持受材4aaは、パネル支持材3aa及び3aの略半円形状の脚部を嵌合するために、クリアランススペースCSの長手方向に沿って凹形状(図2に示す凹部41a)が形成される長手部材である。例えば、パネル支持受材4aaの凹形状は、パネル支持材3aa及び3aの脚部の断面における略半円形状(R曲面)に対する支持面がR曲面(図2に示す凹部41aに対応)を形成している。パネル支持受材4aaは、凹形状の側面側で係止材固定ボルト64aによるボルト留めにより係止材6aに固定され、クリアランススペースCSの長手方向に沿って免震構造側の躯体91に設置される。
第2パネル(複数のパネル2aa)において、パネル支持材3aaにより複数のパネル2aaを連設支持可能である。また、そのパネル支持材3aaは、クリアランススペースCSの長手方向(X方向)に連設されるパネル支持受材4aaでスライド可能に、連通される。
さらに、例えば第2パネルの区画と第1パネルが隣接する区画においては、第2パネルの区画のパネル支持材3aaは、クリアランススペースCSの長手方向に沿って第1パネルのパネル支持受材4aの区画にもスライド可能である。これにより、連設可能に敷設された場合に、第1パネル及び第2パネルは、クリアランススペースCSの長手方向に、相互にスライド可能となる。
免震構造側の躯体91と非免震構造側の躯体92との間のクリアランススペースCSに複数のパネル2aaが連設して設けられる。例えば、エキスパンションジョイント1A1には、図6に示すように、クリアランススペースCSの短手方向(Y方向とする)に沿ってクリアランススペースCSを跨るように、複数のパネル2aa等が以下に説明するように連設されて設置される。なお、図6では、複数のパネル2aaとして3つのパネル2aaを連設して敷設する場合の一例を示すものである。
図6に示すように、躯体91のX方向に沿ってパネル2aaの3つ分の幅に相当する長さのパネル支持材3aaが、少なくとも同じ長さのパネル支持受材4aaに挿通された後に、複数のパネル2aaをパネル支持材3aaに載せる。パネル支持材3aaに載せた複数のパネル2aaにおいて、複数のパネルボルト挿通部22aにパネル支持ボルト23aを挿通させて、パネル支持ボルト23aをパネル支持材3aaに設けられたボルト挿通孔31aに締結させる。パネル支持ボルト23aは、例えば六角穴付き皿ボルトである。
さらに、免震構造側の躯体91に応じて設けられる係止材6aにパネル支持受材4aaが載置されて固定される。具体的には、パネル支持受材4aaは、図2(a)に示すパネル支持受材4aの構造と同様に、係止材6aに載置されてパネル支持受材4aaに設けられた複数のボルト孔44aに、係止材固定ボルト64aを貫通させて係止材固定ナット65aに螺合されて係止材6aに係止され、固定される。
係止材6aの固定方法として、躯体固定材63aに固定ボルト5aが挿通され、固定ボルト5aにより躯体91に固定される。固定ボルト5aは、例えばアンカーボルトおよび当該ボルトを固定するナット等である。以上のように、パネル支持受材4aaは免震構造側の躯体91に固定される。これにより、図6に示すように、複数のパネル2aaは、免震構造側の躯体91に連設して敷設することができる。
一方、複数のパネル2aaのパネル後端部側は、非免震構造側の躯体92に設けられる台座8aに摺動可能に設置される。
次に、図7等を参照しながら、複数のパネル2aaのパネル間の連結構造により、躯体間に生じる相対的な3次元の変位に対して追従性、および、パネル間の連結構造によりパネルでの大きな振幅を抑える又は緩和する機能等について説明する。ここで、図7は、図1(a)に示すエキスパンションジョイント1A1の複数のパネル2aaの振動動作の例を示す斜視図である。
地震により、主に非免震構造側に揺れが生じるため、例えば図7に示すようなX方向の振動WVx、Y方向の振動WVy、Z方向の振動WVz1、振動WVz2、振動WVz3が生じる。これらの振動により、クリアランススペースCSに3次元的な変位が発生する。
図7に示すように、非免震構造側の躯体92のX方向の振動WVxによって、連設された複数のパネル2aaがX方向に変位した場合、その変位に応じて、パネル支持材3aaが載置されているパネル支持受材4aa上を揺動又はスライド可能である。
また、図7に示すように、非免震構造側の躯体92のY方向の振動WVyによって、連設された複数のパネル2aaがY方向に変位した場合、その変位に応じて、パネル2aaは非免震構造側の台座8a上を、図5(a)又は図5(b)に示すパネル2aの動作と同様に、摺動可能である。
また、図7に示すように、非免震構造側の躯体92のZ方向の振動WVz1等によって、複数のパネル2aaがZ方向に変位した場合、例えば一つのパネル2aaが振動WVz1、他のパネル2aaが振動WVz2、さらに他の振動WVz3と振動した場合、免震構造側の躯体91では、複数のパネル2aaは共通のパネル支持材3aaに連設支持されているため、このようなZ方向の振動に対しては、エキスパンションジョイント1A1全体としては振動を重ね合わせて、緩和することが可能である。
パネル支持材3aaは、図4(a)及び(b)に示すパネル支持材3aの動作と同様に、Y方向およびZ方向に摺動可能又は揺動可能であり、かつ、過渡の変位に対してはパネル支持受材4aaの上側係止構造によりパネル支持材3aaの揺動や抜脱等が規制される。また、パネル支持材3aaの脚部の断面が略半円形状(R曲面)を形成し、パネル支持受材4aaにおけるパネル支持材3aaの脚部の支持面がR曲面(図2に示す凹部41aに対応)をなしているため、当該振動を無理なく減衰させることができる。
図7に示すような振動・変位等によって、免震構造側の躯体91と非免震構造側の躯体92に跨り、免震構造側の躯体91で主に支持される複数のパネル2aa等には、震度の大きさによっては非常に大きな力が作用する恐れがあるものの、上記構造により複数のパネル2aaにはパネル等に作用する力を緩和させたり、パネルを破損するような事態を回避させたりすることができる。
なお、図6及び図7等の例では、3つのパネル2aaを連設した場合の一例を示したが、設置サイズにおいて複数のパネル2aaのX方向の長さによっては、一つのパネル2aでも、所定の長さで区切られた複数のパネル2aaと等価的な大きさのパネルであってもよく、設置する区画位置等に応じて、一又は複数のパネル数を定めてもよい。
以上説明したように、本実施形態のエキスパンションジョイント1A及び1A1によれば、パネル2a及び2aaにおけるパネル前端部での最大傾斜角度を大きくとることができる。
さらに、本実施形態のエキスパンションジョイント1A及び1A1によれば、パネル支持材3a及び3aaがY方向およびZ方向に摺動可能又は揺動可能であり、かつ、過渡の変位に対してはパネル支持受材4a及び4aaの係止構造によりパネル支持材3a及び3aaの揺動や抜脱等を規制することができる。また、パネル支持材3a及び3aaの脚部の断面が略半円形状(R曲面)を形成し、パネル支持受材4a及び4aaにおけるパネル支持材3a及び3aaの脚部の支持面がR曲面をなしているため、当該振動を無理なく減衰させることができる。
以上説明したように、本発明に係るエキスパンションジョイントによれば、大きな揺れに耐えうることができ、耐震性に優れる。
[その他の実施形態]
以上、本発明の実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。また、例えば各実施形態の特徴を組み合わせてもよい。さらに、これらの実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形には、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。