JP6543469B2 - 連結機構 - Google Patents
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また、下部構造体に対する上部構造体の相対水平変位量が閾値以上となった場合にせん断材が切断されることにより、ボルトがルーズ孔の内部を移動可能となるので、極めて簡素な構成により、構造体側連結部とマスト側連結部とを異なる方向又は異なる量で水平変位させる事が可能となる。
また、ルーズ孔の径は、免震層から離れた位置の連結手段である程小さいので、下部構造体と上部構造体との相対的な変位の量に対して過大な径のルーズ孔を設ける必要がないため、過大な径のルーズ孔を設けるための手間や費用を削減可能となると共に、径の大きさに応じた過大な大きさの第1板状体を使用せずに済み、部材費用等を削減可能となる。
まずは、実施の形態の基本的概念について説明する。実施の形態は、概略的に、中間免震構造が適用された免震構造体と、エレベーター支持用のマストとを相互に連結するための連結機構に関する。なお、このような免震構造体では、免震構造体を構成する下部構造体と上部構造体とが、免震層を介して相互に異なる方向又は異なる量で水平変位可能となっている。このように水平変位する場合としては、強風時や地震動発生時等といった様々な場合が考えられ得るが、本実施の形態においては、地震動発生時を想定して説明を行う。
次に、実施の形態の具体的内容について説明する。
図1は、本実施の形態に係る連結機構4が適用された免震構造体1の右側面図である。図2は、連結機構4が適用された免震構造体1の平面図である。この図1及び図2に示すように、本実施の形態においては、免震構造体1と、エレベーター2を支持するマスト3が設けられており、連結機構4がこれらの免震構造体1とマスト3とを連結している。以下では、この図1及び図2を参照して、免震構造体1、エレベーター2、マスト3、及び連結機構4の構成について説明する。ここで、以下では、必要に応じて、これら図1及び図2におけるX−X’方向を「幅方向」と称し、特にX方向を「右方向」、X’方向を「左方向」と称する。また、Y−Y’方向を「奥行き方向」と称し、特にY方向を「前方向」、Y’方向を「後方向」と称する。また、Z−Z’方向を「高さ方向」と称し、特にZ方向を「上方向」、Z’方向を「下方向」と称する。
免震構造体1は、下部構造体1aと上部構造体1bとの相互間の免震層に免震装置1cが介装されることにより、前記下部構造体1aに対して前記上部構造体1bを、異なる方向又は異なる量で水平変位可能となるように構成された構造体である。この免震構造体1の用途は任意であり、下部構造体1aと上部構造体1bを同一の用途としても構わないが、本実施の形態では、下部構造体1aを商業施設として利用し、上部構造体1bを住宅として利用するものとして説明する。また、この免震構造体1の大きさ、形状、及び階数についても任意であるが、本実施の形態では図示の便宜上、下部構造体1a及び上部構造体1bのいずれも略同一の大きさの略直方体形状であるものとして説明する。具体的には、図2に示すように、免震構造体1の躯体は、平面視においてエレベーター2やマスト3や連結機構4(以下、エレベーター2等)の全体を覆うように前後左右の四方に形成されており、この躯体の中央に位置する上下の吹き抜け部分にエレベーター2等が配置されている。なお、図1において、1階から3階までの低層階、及び12階以上の高層階については、図示の便宜上省略している。
エレベーター2は、人や物を搬送する、上下に昇降可能なエレベーター室を有する公知の揚重機である。このエレベーター2は、後述する2本のマスト3の間に配置されており、マスト3に対して連結されている。なお、このエレベーター2は、本設エレベーターも含む概念であるが、本実施の形態では、施工時等に一時的に建造される仮設エレベーターであるものとして説明する。また、エレベーター2の具体的な構成については公知であるため、詳細な説明を省略する。
マスト3は、免震構造体1から離れた位置に設けられたエレベーター支持用の公知のマストである。具体的には、このマスト3は、免震構造体1のエレベーター2の左右両側方の位置に1本ずつ配置されており、各マスト3はいずれも鉛直方向に沿って延設されている。ここで、マスト3はエレベーター2を支持可能な強度を有する限り任意の構成とする事が可能であるが、本実施の形態においては、複数の鉄骨を組み合わせたトラス構造部3aと、トラス構造部3aの周囲(右前方、右後方、左前方、及び左後方の計4箇所)に形成されて、それぞれがトラス構造部3aに対して溶接された4つの中実円筒体である支柱部3bと、を備えて形成されている。なお、左右のマスト3はいずれも相互に左右線対称に構成されているため、以下では、右方のマスト3を単にマスト3と称して説明し、左方のマスト3については説明を省略する。また、マスト3の具体的な構成については公知であるため、詳細な説明を省略する。
連結機構4は、下部構造体1aと上部構造体1bとの相互間の免震層に免震装置1cが介装されることにより、下部構造体1aに対して上部構造体1bを、異なる方向又は異なる量で水平変位可能となるように構成された免震構造体1と、免震構造体1から離れた位置に設けられたエレベーター支持用のマスト3と、を相互に連結するための機構である。この連結機構4は、図1に示すように、鉛直方向に沿って所定の間隔で並設されており、各連結機構4は、各階の床面と略同一レベルの位置に配置されている。より具体的には、図2に示すように、エレベーター2の左右両側方の位置に、各マスト3に対して連結されている。なお、左右両側方の連結機構4はいずれも相互に略同一に構成されており、また、各階の連結機構4についてもいずれも相互に略同一に構成されているため、以下では、右方の一つの連結機構4を単に連結機構4と称して説明し、他の連結機構4については説明を省略する。なお、左側の連結機構4は、右側の連結機構4と完全に線対称にはなっておらず、具体的には、右側の連結機構4は免震構造体1における後方の躯体に取り付けられているのに対し、左側の連結機構4は免震構造体1における左方の躯体に取り付けられている。このように連結機構4は躯体のどの面に対して取り付けた場合も、同様の機構を備える事で同様の機能を有する構成とする事が可能である。また、免震構造体1における、この連結機構4によって接続される部分を「構造体側連結部」と称し、マスト3における、この連結機構4によって接続される部分を「マスト側連結部」と称する。
構造体固定金具10は、連結機構4を免震構造体1側に固定するための部材であって、免震構造体1の壁面に当接するように配置されており、免震構造体1に対してアンカーボルト11で留められている。この構造体固定金具10は、連結機構4を安定的に固定する事が可能である限り任意の構成を採用する事ができるが、本実施の形態では金属製の長板をL型に折り曲げて形成されたアングルとして構成されている。そして、折り曲げられた一方の部分(以下、構造体固定金具鉛直部10a)が鉛直方向に沿うように、他方の部分(以下、構造体固定金具水平部10b)が水平方向に沿うように配置されている。
摺動金具20は、下部構造体1a又は上部構造体1bのいずれかの部分である構造体側連結部と、マスト3のいずれかの部分であるマスト側連結部とを相互に連結する連結手段である。この摺動金具20は、第1摺動金具21、第2摺動金具22、ボルト23、及びシャーピン24を備えて構成されている。
補強金具30は、構造体固定金具10と摺動金具20とをより強固に接続するための補強手段である。この補強金具30は、構造体固定金具10の上面の右端部から、第2摺動金具22の上面における2つのボルト孔の相互間の位置に至るように配置されており、構造体固定金具10と第2摺動金具22とを相互に接続するように形成されている。この補強金具30は、接続を補強することが可能である限り任意の構成を採用する事ができるが、本実施の形態では金属製の長板をL型に折り曲げて形成されたアングルとして構成されている。そして、折り曲げられた一方の部分(以下、補強金具鉛直部30a)が鉛直方向に沿うように、他方の部分(以下、補強金具水平部30b)が水平方向に沿うように配置されている。そして、補強金具水平部30bの一方の端部は、構造体固定金具10の上面に対してボルト13によりボルト締結されて接続されており、補強金具水平部30bの他方の端部は、第2摺動金具水平部22bの上面に対して溶接接合されている。
壁繋ぎ金具40は、摺動金具20をマスト3に接続するための接続手段であって、摺動金具20とマスト3の相互間に介在されている。具体的には、壁繋ぎ金具40は、金属製の長板をコ字状に折り曲げて形成された2つのチャンネル41を前後に間隔を隔てて、かつ各々が鉛直方向に沿うように配置し、これらのチャンネル41同士を鉄骨等で相互に溶接接続して構成されている。ここで、チャンネル41の右側の側面には、鉛直方向に沿って複数の位置調節用孔42が設けられており、ユーザがこの中から選択した位置調節用孔42から、第1摺動金具鉛直部21aに設けられた長孔21dに至るようにボルト43を挿通して締結することにより、第1摺動金具21を任意の位置に接続する事ができる。
マスト固定金具50は、壁繋ぎ金具40をマスト3に固定するためのマスト固定手段である。このマスト固定金具50は、壁繋ぎ金具40の2つのチャンネル41の左側面の上端及び下端の計4箇所に取り付けられており、各マスト固定金具50はそれぞれ同一に構成されている。具体的には、マスト固定金具50は、マスト3の上述した支柱部3bの径と同一の内径を有する中空の略円筒形状に構成されており、その内径を自在に変更可能とするネジ機構が設けられている。そして、このマスト固定金具50をマスト3の支柱部3bに取り付けた状態で、ネジ機構を締めて内径を小さくする事により、マスト固定金具50によって支柱部3bが締め付けられ、マスト固定金具50が支柱部3bに固定される。
続いて、上記のように構成された連結機構4の作用について説明する。図6は、本実施の形態に係る連結機構4が適用された免震構造体1の右側面図であって、図6(a)は、地震動非発生時、図6(b)は、地震動発生時を示す図である。この図6に示すように、以下では地震動非発生時と地震動発生時とを相互に比較して説明する。
120[mm]/7,570[mm]=1/63・・・(1)
120[mm]/21,110[mm]=1/176・・・(2)
このように、本実施の形態の連結機構4によれば、摺動金具20は、相対水平変位量が閾値未満である場合には、前記構造体側連結部に対して前記マスト側連結部を、同一方向及び同一量での水平変位のみが可能となるように連結し、閾値以上となった場合には、前記構造体側連結部に対して前記マスト側連結部を、異なる方向又は異なる量での水平変位が可能となるように連結するので、通常時にはマスト3を構造的に支持する事ができると共に、地震動発生時のように上部構造体1bと下部構造体1aとが相対変位した場合にはマスト3に過度な力が作用してマスト3が変形してしまったり折れてしまったりする事態を防止する事が可能となる。
以上、本発明に係る実施の形態について説明したが、本発明の具体的な構成及び手段は、特許請求の範囲に記載した各発明の技術的思想の範囲内において、任意に改変及び改良することができる。以下、このような変形例について説明する。
まず、発明が解決しようとする課題や発明の効果は、上述の内容に限定されるものではなく、発明の実施環境や構成の細部に応じて異なる可能性があり、上述した課題の一部のみを解決したり、上述した効果の一部のみを奏することがある。例えば、実施の形態に係る連結機構4によって、マスト3が変形してしまう事態を防止できない場合であっても、従来と異なる技術により連結機構4を施工できている場合には、本願発明の課題が解決されている。
発明の詳細な説明や図面で説明した連結機構4の各部の寸法、形状、比率、材料等は、あくまで例示であり、その他の任意の寸法、形状、比率、材料等とすることができる。
本実施の形態においては、連結機構4は、免震階を除く各階のスラブと同一レベルに一つずつ配置されているものとして説明したが、これに限られない。例えば、免震階にも同様の連結機構4を設けても構わないし、各階のスラブの間の位置等に連結機構4を設けても構わない。また、免震層からの距離が大きく、シャーピン24がせん断破壊される可能性の低い連結機構4については、ルーズ孔21cを設けなくても良い。
付記1の連結機構は、下部構造体と上部構造体との相互間の免震層に免震装置が介装されることにより、前記下部構造体に対して前記上部構造体を、異なる方向又は異なる量で水平変位可能となるように構成された免震構造体と、前記免震構造体から離れた位置に設けられたエレベーター支持用のマストと、を相互に連結するための連結機構であり、前記下部構造体又は前記上部構造体のいずれかの部分である構造体側連結部と、前記マストのいずれかの部分であるマスト側連結部とを相互に連結する連結手段であって、前記下部構造体に対する前記上部構造体の相対水平変位量が閾値未満である場合には、前記構造体側連結部に対して前記マスト側連結部を、同一方向及び同一量での水平変位のみが可能となるように連結し、前記下部構造体に対する前記上部構造体の相対水平変位量が閾値以上となった場合には、前記構造体側連結部に対して前記マスト側連結部を、異なる方向又は異なる量での水平変位が可能となるように連結する連結手段を備える。
付記1に記載の連結機構によれば、連結手段は、相対水平変位量が閾値未満である場合には、前記構造体側連結部に対して前記マスト側連結部を、同一方向及び同一量での水平変位のみが可能となるように連結し、閾値以上となった場合には、前記構造体側連結部に対して前記マスト側連結部を、異なる方向又は異なる量での水平変位が可能となるように連結するので、通常時にはマストを構造的に支持する事ができると共に、地震動発生時のように上部構造体と下部構造体とが相対変位した場合にはマストに過度な力が作用してマストが変形してしまったり折れてしまったりする事態を防止する事が可能となる。
1a 下部構造体
1b 上部構造体
1c 免震装置
2 エレベーター
3 マスト
3a トラス構造部
3b 支柱部
4 連結機構
10 構造体固定金具
10a 構造体固定金具鉛直部
10b 構造体固定金具水平部
11 アンカーボルト
12 ボルト
13 ボルト
20 摺動金具
21 第1摺動金具
21a 第1摺動金具鉛直部
21b 第1摺動金具水平部
21c ルーズ孔
21d 長孔
22 第2摺動金具
22a 第2摺動金具鉛直部
22b 第2摺動金具水平部
23 ボルト
24 シャーピン
25 座金
26 ナット
30 補強金具
30a 補強金具鉛直部
30b 補強金具水平部
40 壁繋ぎ金具
41 チャンネル
42 位置調節用孔
43 ボルト
50 マスト固定金具
Claims (2)
- 下部構造体と上部構造体との相互間の免震層に免震装置が介装されることにより、前記下部構造体に対して前記上部構造体を、異なる方向又は異なる量で水平変位可能となるように構成された免震構造体と、前記免震構造体から離れた位置に設けられたエレベーター支持用のマストと、を相互に連結するための連結機構であり、
前記下部構造体又は前記上部構造体のいずれかの部分である構造体側連結部と、前記マストのいずれかの部分であるマスト側連結部とを相互に連結する連結手段であって、前記下部構造体に対する前記上部構造体の相対水平変位量が閾値未満である場合には、前記構造体側連結部に対して前記マスト側連結部を、同一方向及び同一量での水平変位のみが可能となるように連結し、前記下部構造体に対する前記上部構造体の相対水平変位量が閾値以上となった場合には、前記構造体側連結部に対して前記マスト側連結部を、異なる方向又は異なる量での水平変位が可能となるように連結する連結手段を備えており、
前記連結手段は、
前記構造体側連結部又は前記マスト側連結部のいずれか一方に設けられ、ルーズ孔を有する第1板状体と、
前記構造体側連結部又は前記マスト側連結部のいずれか他方に設けられ、ボルト孔を有する第2板状体と、
前記第1板状体のルーズ孔から前記第2板状体のボルト孔に挿通されるボルトであって、前記ルーズ孔に対して当該ルーズ孔の内部を移動可能に挿通されたボルトと、
前記第1板状体から前記第2板状体にかけて挿通されたせん断材と、を備え、
前記下部構造体に対する前記上部構造体の相対水平変位量が閾値未満である場合には、前記せん断材によって前記第1板状体と前記第2板状体とが一体化されていることにより、前記構造体側連結部と前記マスト側連結部とを、同一方向及び同一量での水平変位のみを可能とし、
前記下部構造体に対する前記上部構造体の相対水平変位量が閾値以上となった場合には、前記第1板状体及び前記第2板状体からの力により前記せん断材が切断されて、前記ボルトが前記ルーズ孔の内部を移動可能となることにより、前記構造体側連結部と前記マスト側連結部とを、異なる方向又は異なる量での水平変位を可能とし、
前記連結手段を、前記マストの延設方向に沿って複数設け、
前記ルーズ孔の径を、当該ルーズ孔が設けられた前記連結手段の位置が前記免震層から離れる程、小さくした、
連結機構。 - 前記ルーズ孔の径よりも大きい辺を有する座金であって、前記第1板状体における前記第2板状体とは反対側に設けられている前記座金、を備え、
前記ボルトは、前記座金の孔、前記ルーズ孔、及び前記ボルト孔に挿通される、
請求項1に記載の連結機構。
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