以下、本発明に係るパネル干渉緩和装置およびエキスパンションジョイントの実施形態について、図面を参照して具体的に説明する。ここで、互いに同一または類似の部分には共通の符号を付して、重複説明は省略する。ここで説明する下記の実施形態はいずれも、免震構造の建物周囲に設けられるパネル干渉緩和装置およびエキスパンションジョイントの場合の一例をとりあげて説明する。
[実施形態]
以下、本発明に係るパネル干渉緩和装置およびエキスパンションジョイントの実施形態の構成について、図1乃至図9を用いて説明する。ここで、図1は、(a)本発明に係るパネル干渉緩和装置10Aおよびエキスパンションジョイント1Aの実施形態の構成例を示す平面図、(b)I−I矢視線の断面図および(c)II−II矢視線図である。図2は、実施形態の(a)エキスパンションジョイント1Aの構成例を示すIII−III矢視線の断面図および(b)パネル干渉緩和装置10Aの構成例を示すIV−IV矢視線の透視図である。図3(a)乃至(c)は、実施形態のパネル干渉緩和装置10Aの干渉緩和動作を説明する説明図である。その他の図については、以降において、適宜説明する。
図1等に示すパネル干渉緩和装置10Aは、免震構造側の躯体91と非免震構造側の躯体92との間のクリアランススペースCSに設置される、当該免震構造側の躯体91にクリアランススペースCSの長手方向(X方向)に沿ってスライド可能な構造を有するエキスパンションジョイント1Aと共に用いられる。
本実施形態のエキスパンションジョイント1Aでは、クリアランススペースCSの大きな変位に対応でき、パネル2aにかかる力を解放又は緩和するために、特定の区間にパネル干渉緩和装置10Aが設置される。パネル干渉緩和装置10Aは、クリアランススペースCSの長手方向に沿って複数のパネル2aが敷設される区間と共に特定の区間にスライド可能に設置される。
パネル干渉緩和装置10Aは、例えば図1等に示すように、クリアランススペースCSの建物・基礎等の構造物に隣接し、免震構造側の躯体91に設けられる支持受材4aによりスライド可能な一又は複数のパネル2aと隣接する等の特定の区間に設けられる。パネル干渉緩和装置10Aは、地震等によるエキスパンションジョイント1Aにおけるパネル2a間の干渉・衝撃等を緩和するための特定の区間に設置される。特定の区間は、例えばクリアランススペースCSのコーナと隣接する区間、エレベータホール等の壁寄り、建物の壁面等に隣接する区間、クリアランススペースCSの長手方向について所定の距離や、所定のパネル数ごとに設置するための区間などである。
ここで、図2(a)にエキスパンションジョイント1Aに用いられるパネル2aの構造の一例をIII−III矢視線の断面図で示し、図2(b)にパネル干渉緩和装置10Aの構造の一例をIV−IV矢視線の透視図で示す。
パネル干渉緩和装置10Aは、図1(a)乃至(c)、図2(b)等に示すように、例えばクリアランススペースCSの短手方向に沿って非免震構造側の躯体92に設けられた台座8aに摺動可能なボックス110aと、ボックス110a内にクリアランススペースCSの短手方向に沿って並列に配置される複数の弾性支持体16aと、免震構造側の躯体91において特定の区間のスライド可能な支持受材14aに緩挿されてボックス110aをスライド可能に支持する複数のボックス支持部13aとを備えている。
パネル干渉緩和装置10Aにおいて、さらに、ボックス110aは、クリアランススペースCSの長手方向(X方向)に沿った外力に抗して伸縮可能な構造であり、伸縮可能な構造におけるボックス110aの可動部分11aを支持する少なくとも一つのボックス支持部13aと、伸縮可能な構造におけるボックス110aの固定部分12aを支持する少なくとも他の一つのボックス支持部13aとにより特定の区間にスライド可能に支持される。また、複数の弾性支持体16aは、ボックス110aの伸縮可能な構造と連動するようにボックス110a内に設けられている。
具体的な例として、ボックス110aは、クリアランススペースCSの長手方向(X方向)に沿って、図1(c)に示す支持受材14aをスライド可能であり、かつ、クリアランススペースCSの短手方向(Y方向)に沿って、図2(b)に示すように、非免震構造側の躯体92に設けられた台座8aを摺動可能な構造であり、通常時(クリアランススペースCS#1)に短手方向に沿って傾斜係止部81に一方の端部側が載置可能な形状に形成されている。
ボックス110aは、伸縮構造に形成される下部側を構成する可動部分11aおよび固定部分12aと、所定の弾性体により伸縮構造を形成する複数の弾性支持体16aと、これらの下部側の構成部分と複数の弾性支持体16aとを上面から覆う上面カバー15aとから構成されている。
図1(b)及び(c)に示す可動部分11aの形状において、Z方向に沿った断面はL字形状であり、Z方向の垂直方向に沿った断面はU字形状の箱型形状である。また、可動部分11aのその箱型形状において、上部及びX方向側の固定部分12aの対向側の壁面は開放され、下部側のボックス支持部13aとの接続側の底面は板状に形成される。下部側の底面板状には、ボックス支持部13aを固定するためのボックス支持ボルト131aのネジ貫通孔が設けられ、2本のボックス支持ボルト131aがボックス支持部13aに螺合して、可動部分11aの下部側にボックス支持部13aを固定する。
図1(b)及び(c)に示す固定部分12aの形状において、Z方向に沿った断面はL字形状であり、Z方向の垂直方向に沿った断面はU字形状の箱型形状である。また、固定部分12aのその箱型形状において、上部及びX方向側の可動部分11aの対向側の壁面は開放され、下部側のボックス支持部13aとの接続側の底面は板状に形成される。下部側の底面板状には、ボックス支持部13aを固定するためのボックス支持ボルト131aのネジ貫通孔が設けられ、2本のボックス支持ボルト131aがボックス支持部13aに螺合して、固定部分12aの下部側にボックス支持部13aを固定する。
なお、図2(b)に示すボックスストッパー44aは、支持受材14aのスライド方向の終端側に設けられる板状の鋼材である。ボックスストッパー44aは、ボックス110aを支持受材14aのスライド方向の終端側で、ボックス110aの移動を制限することができる。例えば、ボックスストッパー44aは、躯体91に係止される係止材6aとする鋼材に、予めボックスストッパー44aの高さ分を長手方向の端部側に余分に確保しておき、長手方向の進路に抗するように立直させるための切り込みを鋼材に入れ、ボックスストッパー44aの高さ分をZ方向に折り曲げることにより製作可能である。
また、図2(b)に示すボックスストッパー85は、クリアランススペースCSの長手方向(X方向)に沿って上記のスライド方向の終端側と同じ位置(終端箇所)に合わせて、短手方向に沿って移動を制限する箇所(制限ライン)が定められ、台座8aに固定される。これにより、ボックスストッパー85は、ボックス110aが載置された台座8a上において、摺動するボックス110aの移動を制限することができる。例えば、ボックスストッパー85は、躯体92に設けられる台座8aとする鋼材に、予めボックスストッパー85の高さ分を長手方向の端部側に余分に確保しておき、長手方向の進路に抗するように立直させるための切り込みを鋼材に入れ、ボックスストッパー85の高さ分をZ方向に折り曲げることにより製作可能である。
<弾性支持体の構造>
図1(b)及び(c)に示すように、固定部分12aの箱型形状において可動部分11aへ対向する壁面開放側(Z方向の垂直方向に沿った断面U字状)と、可動部分11aの箱型形状において固定部分12aへ対向する壁面開放側(Z方向の垂直方向に沿った断面逆U字状)とを対向させた状態で、複数の弾性支持体16aは、ボックス110aの可動部分11aとボックス110aの固定部分12aとの間に取り付けられる。
すなわち、複数の弾性支持体16aは、図1(a)及び図2(b)に示すように、ボックス110a内にクリアランススペースCSの短手方向(Y方向)に沿って間隔をおいて並列に配置されて、弾性支持体16aの長手方向の端部側の一方を可動部分11aと、その他方を固定部分12aとにそれぞれ接続される。
複数の弾性支持体16aが、クリアランススペースCSの長手方向への複数の弾性支持体16aの伸縮の変位に応じて、ボックス110aの伸縮可能な構造と連動するようにボックス110aの可動部分11aとボックスの固定部分12aとの間に、以下のようなスライド筒構造が設けられる。
弾性支持体16aにおけるスライド筒構造は、図1(b)に示すように、例えばスライド内筒161aとスライド外筒162aとから構成されるスライド筒内に圧縮バネ163aが自由状態で配置される構造である。
ボックス110aの可動部分11aにはスライド内筒161aの端部が接続され、固定部分12aにはスライド外筒162aの端部側が接続される。これにより、スライド筒内の圧縮バネ163aの伸縮に応じて、スライド筒が伸縮する構造である。
ボックス110a内に配置された複数の弾性支持体16aの各々の変位量が、同程度とは限らない。例えば、免震構造側の躯体91に近くに配置されている弾性支持体16aの変位量が大きく、免震構造側の躯体91からより距離を置く躯体92側に配置されている弾性支持体16aの変位量が小さい等の場合などである。
この他にも、弾性支持体16aに、オイルダンパー、空気バネ等も適用可能であるが、コスト的には圧縮バネが好ましい。また、ボックス110aの可動部分11aとボックスの固定部分12a、上面カバー15a、スライド内筒161a、スライド外筒162a等は、例えばSUS304鋼材、その他の鋼材等を用いて製作される。
<スライド構造の説明>
以下、図1乃至図3を参照しながら、図1(a)に示すエキスパンションジョイント1Aに用いられるスライド構造の一例を説明する。
図1乃至図3に示す支持受材4aおよび支持受材14aは、免震構造側の躯体91においてパネル支持材3aおよびボックス支持部13aをクリアランススペースCSの長手方向へスライド可能に支持するために、当該長手方向に沿った断面形状は凹状に設けられる。なお、支持受材14aは、特定の区間に設けられる支持受材4aであり、隣接する区間の支持受材4aの長さを延長して敷設してもよいし、後の施工等による増設または追加等により、特定の区間長に応じた支持受材4aを敷設してもよい。
台座8aは、図2(a)及び(b)に示すように、非免震構造側の躯体92に設けられ、パネル2aおよびボックス110aが摺動可能に載置される土台部分となる板材である。
パネル干渉緩和装置10Aにおいて、ボックス110aが特定の区間の支持受材14a又は台座8aを介してスライド又は摺動した特定の区間に隣接する区間に配置されたパネル2aによる外力を受けた場合には、複数の弾性支持体16aは、クリアランススペースCSの長手方向への複数の弾性支持体16aの伸縮の変位に応じて、複数のボックス支持部13aと連動する構造に設けられる。
ボックス支持部13aは、免震構造側の躯体91において特定の区間のスライド可能な支持受材14aに緩挿されて、ボックス110aをスライド可能に支持する。
支持受材14aは、例えばクリアランススペースCSの短手方向へのボックス支持部13aの移動を規制し、かつ、クリアランススペースCSの長手方向へのボックス支持部13aの移動をスライド可能に支持しながらボックス支持部13aを上側方向に抜脱しないように載置させる形状である。
ボックス110aは、クリアランススペースCSの長手方向(X方向)に沿った外力に抗して伸縮可能な構造である。ボックス110aは、例えば図1及び図3等に示すように、伸縮可能な構造におけるボックス110aの可動部分11aを支持する少なくとも一つのボックス支持部13aと、伸縮可能な構造におけるボックス110aの可動部分11aと反対側に位置するボックス110aの固定部分12aを支持する少なくとも他の一つのボックス支持部13aとにより特定の区間にスライド可能に支持される。
図1乃至図3等に示すボックスストッパー44aは、特定の区間でボックス110aの移動を制限するための固定具である。ボックスストッパー44aには金属板などが用いられ、免震構造側の躯体91側に設置される支持受材14aのスライド方向の終端側に位置する箇所(終端箇所)でボックスストッパー44aがボルト留め等で固定される。これにより、ボックスストッパー44aは、特定の区間の終端箇所でスライド移動するボックス110aの固定部分12aおよびボックス支持部13aの移動を制限することができる。なお、前述したように、ボックスストッパー44aの設置として、係止材6aに用いる鋼材に、ボックスストッパー44aの高さ分を長手方向の端部側に確保し、ボックスストッパー44aの高さ分をZ方向に折り曲げることにより製作し、係止材6aと共に設置してもよい。
<パネル構造の一例>
エキスパンションジョイント1Aは、免震構造側の躯体91と非免震構造側の躯体92との間のクリアランススペースCSの区画に応じて一又は複数のパネルが連設可能に設けられる。エキスパンションジョイント1Aは、一又は複数のパネル2aを含む構成であり、免震構造側の躯体91には、クリアランススペースCSの長手方向に沿って、支持受材4aが設けられる。
パネル2aは、床材21a、パネル支持材3a等を備えている。
床材21aは、クリアランススペースCSの短手方向に沿ってクリアランススペースCSを跨るように設けられる。床材21aは、非免震構造側の躯体92に設けられる台座に摺動可能に設置される。
パネル支持材3aは、図2(a)に示すように、一又は複数の床材を支持し、床材21aの垂直方向に沿った断面は略半円形状であり、免震構造側の一又は複数の床材21aの端部に複数の箇所にパネル支持ボルト23aにより締結されて一又は複数の床材21aを支持する。なお、本実施形態のエキスパンションジョイント1Aにおいて、図2等に示すパネル支持材3aの上記断面は、一例であり、パネル支持材3aと支持受材4aとの関係によって適合形状は複数存在する。例えば、床材21aの垂直方向に沿った断面が球形状、レール形状などである。少なくとも、支持受材4aに載置されたパネル支持材3aがスライド可能であればよい。
パネル支持材3aは、免震構造側の躯体91の床材21a等の端部に複数の箇所にパネル支持ボルト23aにより締結されて、一又は複数の床材21a等を支持する。パネル支持ボルト23aは、例えば六角穴付き皿ボルトである。
<スライド可能な支持受材について>
図1等に示すエキスパンションジョイント1Aに用いられる支持受材4aは、クリアランススペースCS#1の長手方向(X方向)に沿って、免震構造側の躯体91に設けられる。支持受材4aは、クリアランススペースCS#1の短手方向(Y方向)へのパネル支持材3aの移動を規制し、かつ、クリアランススペースCS#1の長手方向へのパネル支持材3aの移動を摺動可能に支持しながらパネル支持材3aを上側方向に抜脱しないように載置させる形状である。
支持受材4aは、図2等に示すように、例えば開口を有する四角枠形状である。支持受材4aは、免震構造側の躯体91に応じて設けられる係止材6aにより免震構造側の躯体91に係止される。支持受材14aは、パネル干渉緩和装置10Aが設置される特定の区間に設けられる支持受材4aである。
例えば、エキスパンションジョイント1Aと共に、予めパネル干渉緩和装置10Aを設置することを計画していれば、支持受材4aのX方向の長さを、特定の区間を含めて設置してもよい。また、既に設置済みのエキスパンションジョイント1Aに、パネル干渉緩和装置10Aを追加設置する場合には、特定の区間のX方向の区間幅に応じた支持受材14aを追加して設置してもよい。
図1等に示すエキスパンションジョイント1Aでは、パネル干渉緩和装置10Aが、クリアランススペースCSの特定の区間において一又は複数のパネル2aと隣接し、クリアランススペースCSの長手方向に沿って、特定の区間にスライド可能に設置される。ここで、クリアランススペースCSの長手方向に沿って敷設される、図1乃至図3等に示すスライド可能なパネル支持構造の一例について説明する。
(躯体91への設置方法について)
支持受材4aは、例えば図2(a)に示すように、上側係止支持材41aと、内側L字鋼材42aと、外側L字鋼材43aとから構成される。また、特定の区間に設置される支持受材14aは、例えば図2(b)に示すように、上側係止支持材141aと、内側L字鋼材42aと、外側L字鋼材143aとから構成される。
上側係止支持材141aおよび外側L字鋼材143aは、上側係止支持材41aおよび外側L字鋼材43aと同形状であり、クリアランススペースCSの長手方向の長さが特定の区間に応じた長さである。なお、上側係止支持材141aおよび外側L字鋼材143aについては、以降で説明する上側係止支持材41aおよび外側L字鋼材43aと同様の構造であり、ここでは説明を省くものとする。
上側係止支持材41aは、X方向に沿って延びる箱型の形状であり、かつ、Z方向に沿った断面において、同じくパネル支持材3aの断面における略半円形状を囲い、上方側で略半円形状の突起部分を係止可能な開口部が設けられる形状である。例えば、上側係止支持材41aは、図2等に示すように、内側L字鋼材42aと外側L字鋼材43aとの間により挟持されて、躯体91に係止された係止材6aに載置される。
この係止材6aに載置された上側係止支持材41aは、内側L字鋼材42aと外側L字鋼材43aとが重ねられた状態で、複数の箇所の各々の長孔51a等に固定ボルト5aが挿通され、固定ボルト5aにより躯体91に固定される。固定ボルト5aは、例えばアンカーボルトおよび当該ボルトを固定するナット等である。
内側L字鋼材42aおよび外側L字鋼材43aは、X方向に沿って上側係止支持材41aとほぼ同じ長さで形成されている。上側係止支持材41aは、内側L字鋼材42aと外側L字鋼材43aとの間により挟持されて、躯体91に係止された係止材6aに載置される。なお、内側L字鋼材42aおよび外側L字鋼材43aは、X方向に沿って、所定の長さごとに複数に分割されたものであってもよく、上側係止支持材41aを所定の間隔ごとに挟持して設置してもよい。
以上のような躯体91への固定設置後、例えば、内側L字鋼材42a、固定ボルト5aの上部のパネル2aの周辺区間には、図2(a)及び(b)に示すように、パネル周辺モルタル93が充填されて覆われる。このパネル周辺モルタル93と内側L字鋼材42aとの間には、補強材として、例えばシール材101等を用いる。
例えば図2等に示すパネル支持材3aの構造では、Y方向およびZ方向に摺動可能であり、かつ、過渡の変位に対しては支持受材4aの上側係止構造によりパネル支持材3aが規制される。また、パネル支持材3aの支持受材4aの設置面がR曲面をなしているため、当該振動を無理なく減衰させることができる。なお、パネル干渉緩和装置10Aに用いられるボックス支持部13aの構造についても、同様である。
以上説明したように、パネル干渉緩和装置10Aのボックス110aについて、エキスパンションジョイント1Aのパネル2aと同様に、免震構造側の躯体91にスライド可能な支持構造とする。
(躯体92への設置方法について)
複数のパネル2aは、図2(a)に示すように、非免震構造側の躯体92に設けられる台座8aに摺動可能に敷設される。パネル2aは、非免震構造側の端部方向に屈曲可能な傾斜構造部7aを有する。傾斜構造部7aは、例えばパネル2aの非免震構造側の端部に、X方向に沿って蝶番を介した構造で設けられる。傾斜構造部7aは、変位なし状態のクリアランススペースCS#1において、台座8aの傾斜係止部81に係止される。
傾斜係止部81は、クリアランススペースCS#1の状態においては、傾斜構造部7aの蝶番の付勢力を抗して、傾斜構造部7aの平板部分を床材21aと水平面上に保持させるように係止する。一方、後述するクリアランススペースCS#2又は#3の状態においては、傾斜構造部7aの移動により、傾斜構造部7aが傾斜係止部81の係止から解除される。これにより、傾斜構造部7aの蝶番の付勢力により平板部分が接地面側に屈曲される。
以上のようなパネル2aの構造により、傾斜構造部7aが台座8aの傾斜係止部81に係止されている場合には、図2(a)に示すように、パネル2aの上面とクリアランススペースCS#1の長手方向に沿った平板部分の面とが平に揃う。一方、傾斜構造部7aが傾斜係止部81に係止されない場合には、傾斜構造部7aは、後述する図8(a)又は図9(a)に示すように、クリアランススペースCS#2又はCS#3の長手方向に沿った平板部分が蝶番により屈曲されて、例えば台座8aに当該平板部分が傾斜して接する。
これにより、パネル2aの片方の端部側において、傾斜構造部7aが接地傾斜できるため、車椅子、担架、台車等でパネル2aに乗り上げてエキスパンションジョイント1Aを通過する際に、これらの車輪の移動操作が容易となる。
一方、パネル干渉緩和装置10Aのボックス110aの構造については、クリアランススペースCS#1(通常の状態)において、図2(b)に示すように、ボックス110aの底面側が接触する台座8aのY方向側の平らな部分の長さと、傾斜係止部81の傾斜構造とに、ボックス110aの可動部分11a及び固定部分12aの形状が適合するように形成される。
台座8aの下方側には、台座下部モルタル95を充填する前に、図2(a)及び(b)に示すように、非免震構造側の躯体92にアンカーボルト84が複数個所に設けられる。その施工後、その台座8aの下方側に、例えば無収縮モルタル等である台座下部モルタル95が充填される。充填される台座下部モルタル95内には、タップ固定金具83が据え付けられる。
充填後の台座下部モルタル95上に、台座8aが敷設され、その台座8aが複数個所のタップ固定金具83を介して、セルフタップ82により固定される。また、パネル2aの周辺には、パネル周辺モルタル94が施工される。
各々のパネル2a等には、例えば図2(a)に示す仕上材20a等が施される。仕上材20a等は、床材21a等を覆う床仕上げ材である。床仕上げ材は、例えば歩行・通行可能に適した材料のタイル、石材、金属材料等が用いられる。なお、後述する他の図の一部では、仕上材20a等は図示省略している。
次に、図3に示すエキスパンションジョイント1Aおよびパネル干渉緩和装置10Aにおける支持受材4a及び14aを介したスライド動作と、台座8aを介した摺動動作について説明する。ここで、図3(a)乃至(c)に示す動作例では、例えば隣接区間の一つのパネル2aがクリアランススペースCSの長手方向の特定の区間にスライド動作した状態となったとする。
図3(a)乃至(c)に示す動作状態は、例えば隣接区間のパネル2aにおいて、パネル支持材3aが支持受材4aをスライドして、さらに特定の区間の支持受材14aを跨って、パネル干渉緩和装置10Aに衝突した状態等を示すものである。
通常の状態(地震等の前)では、図1(a)および図3(a)に示すように、エキスパンションジョイント1Aのパネル2aの各々が、所定の区間に敷設された状態を維持している。図3(a)の敷設状態から、地震等による躯体92の振動により、クリアランススペースCSを跨るエキスパンションジョイント1Aにおいて、躯体91と躯体92との側に相対的な変位が生じる。
躯体91と躯体92との側に相対的な変位が生じた場合に、このような変位により振動するパネル2aにおいて、例えば図3(b)に示すように、免震構造側の躯体91側では、パネル支持材3aが支持受材4aをスライドし、さらに特定の区間の支持受材14aを跨って、パネル干渉緩和装置10Aに衝突する。
パネル2aが特定の区間にスライドする際に、図3(b)に示すように、ボックス110aの上面カバー15aの下側に突入し、ボックス110aの可動部分11aの側面側に衝突する。一方、ボックス110aの固定部分12aは、ボックスストッパー44aにより特定の区間の所定位置までに制限される。
図3(b)では、特定の区間に配置されたパネル干渉緩和装置10Aが隣接する区間に敷設されていたパネル2aのスライド動作により、クリアランススペースCSの長手方向から外力を加えられた(衝突された)場合に、ボックス110aの縮む方向、すなわち、可動部分11aが固定部分12aの方へ移動する。この際に、パネル2aが特定の区間にスライドして衝突する力に抗して、ボックス110aの内部では、可動部分11aと固定部分12aとの間に配置された複数の弾性支持体16aが弾性エネルギーを蓄える。
例えば、弾性支持体16aにおけるスライド筒構造は、図3(a)乃至(c)に示すように、スライド内筒161aとスライド外筒162aとから構成されるスライド筒内に圧縮バネ163aが配置される構造であるため、スライド外筒162a内にスライド内筒161aがスライド挿入されると共に、スライド筒内に配置された圧縮バネ163aが圧縮される。
図3(c)では、ボックス110aの弾性支持体16aにおいて圧縮バネ163aの圧縮限界、又は、スライド筒内の最小長までに達した状態になり、弾性支持体16aに蓄積された弾性エネルギーにより付勢力を得たボックス110aが、クリアランススペースCSの長手方向へパネル2aを押し戻す方向に力を作用させる。
地震の際の振動・変位等によって、免震構造側の躯体91と非免震構造側の躯体92に跨り、免震構造側の躯体91で主に支持されるパネル2a等には、震度の大きさによっては非常に大きな力が作用する恐れがあるものの、本実施形態のパネル干渉緩和装置10Aの動作によって、パネル2a等へ作用する力を緩和させたり、パネル2a等を破壊するような衝撃力を和らげることが可能である。
<連設パネル構造の一例>
図4乃至図6に、エキスパンションジョイント1A1の連設パネルにおけるスライド構造の他の一例と、エキスパンションジョイント1A1の特定の区間に設置されたパネル干渉緩和装置10Aの動作の一例について説明する。
図4は、エキスパンションジョイント1A1の複数のパネル2aの敷設例を示す斜視図である。図4に示すエキスパンションジョイント1A1は、パネル支持材3aaに複数のパネル2aを連設して取り付ける敷設の一例を示すものである。図5は、図4に示すエキスパンションジョイント1A1の複数のパネル2aの振動動作の例を示す斜視図である。図6は、図4に示すエキスパンションジョイント1A1の複数のパネル2aと共にパネル干渉緩和装置10Aの振動動作の例を示す斜視図である。なお、図6の例では、パネル干渉緩和装置10Aの構造を示すために、ボックスストッパー44a及びボックスストッパー85の図示を省略する。
はじめに、図4に示すエキスパンションジョイント1A1のうちの複数のパネル2aが連接された敷設例を説明する。図4では、免震構造側の躯体91に複数のパネル2aを敷設する場合の施工方法の概要を示すものである。
免震構造側の躯体91と非免震構造側の躯体92との間のクリアランススペースCS#1に複数のパネル2a等が連設可能に設けられる。例えば、複数のパネル2aには、図4に示すように、クリアランススペースCS#1の短手方向(Y方向とする)に沿ってクリアランススペースCS#1を跨り、かつ、クリアランススペースCS#1の長手方向(X方向とする)に沿ってスライド可能なように、複数のパネル2a等が以下に説明するように連設されて設置される。
<連設パネルのスライド構造>
図4乃至図6に示す支持受材4aaは、例えば図8及び図9に示すように、上側係止支持材41aaと、内側L字鋼材42aaと、外側L字鋼材43aaとから構成される。
上側係止支持材41aaは、図8及び図9に示すように、X方向に沿って延びる箱型の形状であり、かつ、Z方向に沿った断面において、同じくパネル支持材3aaの断面における略半円形状を囲い、上方側で略半円形状の突起部分を係止可能な開口部が設けられる形状である。
内側L字鋼材42aaおよび外側L字鋼材43aaは、図8及び図9に示すように、X方向に沿って上側係止支持材41aaとほぼ同じ長さで形成されている。上側係止支持材41aaは、内側L字鋼材42aaと外側L字鋼材43aaとの間により挟持されて、躯体91に係止された係止材6aに載置される。
係止材6aに載置された支持受材4aaは、内側L字鋼材42aaと外側L字鋼材43aaとが重ねられた状態で、複数の箇所の各々の長孔51a、係止材6aと同じ厚さの座板に固定ボルト5aが挿通され、固定ボルト5aにより躯体91に固定される。なお、内側L字鋼材42aaおよび外側L字鋼材43aaは、X方向に沿って、所定の長さごとに複数に分割されたものであってもよく、上側係止支持材41aaを所定の間隔ごとに挟持して設置してもよい。
連設パネルの施工方法として、図4に示すように、躯体91のX方向に沿ってパネル2aの3つ分の幅に相当する長さのパネル支持材3aaが、少なくとも同じ長さの支持受材4aa又はそれ以上の長さの支持受材4aaに挿通された後に、床材21aをパネル支持材3aaに載せる。パネル支持材3aaに載せた床材21aにおいて、複数のパネルボルト挿通部22aにパネル支持ボルト23aを挿通させて、パネル支持ボルト23aをボルト挿通孔31aに締結させる。パネル支持ボルト23aは、例えば六角穴付き皿ボルトである。
さらに、免震構造側の躯体91に応じて設けられる係止材6aに支持受材4aaが載置されて、支持受材4aaに設けられた複数の長孔51a等に固定ボルト5aが挿通され、固定ボルト5aにより躯体91に固定される。固定ボルト5aは、例えばアンカーボルトおよび当該ボルトを固定するナット等である。以上のように、支持受材4aaは免震構造側の躯体91に係止される。これにより、図4等に示すように、複数のパネル2aを免震構造側の躯体91に連設して敷設することができる。
次に、図5を参照しながら、エキスパンションジョイント1A1のパネル間の連結構造により、躯体間に生じる相対的な3次元の変位に対して追従性、および、パネル間の連結構造によりパネルでの大きな振幅を抑える又は緩和する機能等について説明する。ここで、図5は、エキスパンションジョイント1A1のうちの複数のパネル2aの振動動作の例を示す斜視図である。
地震により、主に非免震構造側に揺れが生じるため、例えば図5に示すようなX方向の振動WVx、Y方向の振動WVy、Z方向の振動WVz1、振動WVz2、振動WVz3が生じる。これらの振動により、クリアランススペースCS#1に3次元的な変位が発生する。
図5に示すように、非免震構造側の躯体92のX方向の振動WVxによって、連設された複数のパネル2aがX方向に変位した場合、その変位に応じて、パネル支持材3aaが載置されている支持受材4aa上を揺動又はスライド可能である。
また、図5に示すように、非免震構造側の躯体92のY方向の振動WVyによって、連設された複数のパネル2aがY方向に変位した場合、その変位に応じて、エキスパンションジョイント1A1は非免震構造側の台座8a上を、図8(a)または図9(a)に示すように、摺動可能である。
また、図5に示すように、非免震構造側の躯体92のZ方向の振動WVz1等によって、複数のパネル2aがZ方向に変位した場合、例えば一のパネル2aが振動WVz1、他のパネル2aが振動WVz2、さらに他の振動WVz3と振動した場合、免震構造側の躯体91では、複数のパネル2aは共通のパネル支持材3aaに連設支持されているため、このようなZ方向の振動に対しては、エキスパンションジョイント1A1全体としては振動を重ね合わせて、緩和することが可能である。
一方、図5に示すような振動・変位等によって、免震構造側の躯体91と非免震構造側の躯体92に跨り、免震構造側の躯体91で主にパネル支持材3aa及び支持受材4aaに支持されるパネル2a等には、震度の大きさによっては、X方向の振動WVxにより非常に大きな力が作用する恐れがある。
そこで、そのようなX方向の振動WVxによる振動・変位等によってパネル2aに作用し、パネル2aからの揺れによる干渉・衝撃を緩和するため、図6に示すような特定の区間に設置したパネル干渉緩和装置10Aの動作によって、パネル2a等へ作用する力を緩和させたり、パネル2a等を破壊するような衝撃力を緩和させることが可能である。
例えば、図6に示すエキスパンションジョイント1A1では、図5に示すパネル2aの隣接する特定の区間において、パネル干渉緩和装置10Aを設置した場合のパネル干渉緩和装置10Aによるエキスパンションジョイント1A1の干渉緩和・衝撃緩和の動作例を示すものである。
また、図7(a)〜(c)は、パネル干渉緩和装置10Aおよびエキスパンションジョイント1A1の動作例を説明する説明図である。図7(a)乃至(c)に示すように、例えば隣接区間の一つのパネル2aがクリアランススペースの長手方向(X方向)にスライド動作した状態となったとする。例えば、図7(a)乃至(c)に示す動作状態は、隣接区間のパネル2aにおいて、パネル支持材3aaが支持受材4aaをスライドして、さらに特定の区間の支持受材14aを跨って、パネル干渉緩和装置10Aに衝突した状態を示すものである。
通常の状態では、図7(a)に示すように、エキスパンションジョイント1A1のパネル2aの各々が、所定の区間に敷設された状態を維持している。この図7(a)の敷設状態から、地震等による躯体92の振動により、クリアランススペースCSを跨るエキスパンションジョイント1A1において、躯体91と躯体92との側に相対的な変位が生じる。
躯体91と躯体92との側に相対的な変位が生じた場合、このような変位により振動するパネル2aにおいて、例えば図7(b)及び(c)に示すように、隣接する区間のパネル2aのパネル支持材3aaが支持受材4aaをスライドし、さらに特定の区間の支持受材14aを跨って、パネル2aと共にパネル干渉緩和装置10Aに衝突する。
図7(b)では、特定の区間に配置されたパネル干渉緩和装置10Aが隣接する区間に敷設されているパネル2a及びパネル支持材3aa等により、ボックス110aの可動部分11a及びボックス支持部13a等へクリアランススペースCSの長手方向から外力を加えられた(衝突された)場合に、ボックス110aの固定部分12aがボックスストッパー44a及びボックスストッパー85により移動が制限されるため、ボックス110aが縮む方向に作用する。
この外力によって、ボックス110aの可動部分11aとボックス110aの固定部分12aとの間に取り付けられた弾性支持体16aには、例えば圧縮バネ163aに弾性エネルギーが蓄積される。すなわち、隣接された区間のパネル2a等からの衝突エネルギー等を圧縮バネ163aで吸収することができる。
図7(c)では、圧縮バネ163aの圧縮限界まで達すると、バネの復元力によって、特定の区間にスライドしてきたパネル2a及びパネル支持材3aa等を、可動部分11a及びボックス支持部13a等により押し戻す。
次に、図8および図9に示すエキスパンションジョイント1A1におけるクリアランススペース変位時の状態例について説明する。
図8(a)及び図8(b)に示すクリアランススペースCS#2は、図2(a)に示すクリアランススペースCS#1に比べてスペース間が狭くなった場合の変位の状態を示すIII−III矢視線の断面図、及び、IV−IV矢視線の側面図である。また、図9(a)及び(b)に示すクリアランススペースCS#3は、図2(b)に示すクリアランススペースCS#1に比べてスペース間が拡がった場合の変位の状態を示すIII−III矢視線の断面図、及び、IV−IV矢視線の側面図である。
本実施形態のエキスパンションジョイント1A1では、クリアランススペースCS#1の変位(Y方向の変位)に追従して、例えば図8(a)に示すクリアランススペースCS#2の例では、パネル2a等が台座8aにおける型スペースからせり上がり、パネル2a等の片方の端部側がパネル周辺モルタル94に載置する。
パネル干渉緩和装置10Aでは、クリアランススペースCS#1の変位(Y方向の変位)に追従して、例えば図8(b)に示すクリアランススペースCS#2の例では、ボックス110a等が台座8aにおける型スペースからせり上がり、ボックス110a等の片方の端部側がパネル周辺モルタル94に載置する。
また、エキスパンションジョイント1A1では、クリアランススペースCS#1の変位(Y方向の変位)に追従して、例えば図9(a)に示すクリアランススペースCS#3の例では、パネル2a等が台座8aにおける型スペースからクリアランススペースCS#3側に引き寄せられて、パネル2a等の片方の端部側が台座下部モルタル95上の台座8aに載置する。
パネル干渉緩和装置10Aでは、クリアランススペースCS#1の変位(Y方向の変位)に追従して、例えば図9(b)に示すクリアランススペースCS#3の例では、ボックス110a等が台座8aにおける型スペースからクリアランススペースCS#3側に引き寄せられて、ボックス110a等の片方の端部側が台座下部モルタル95上の台座8aに載置する。
パネル2aのパネル支持材3aaは、図8(a)および図9(a)に示すように、Y方向およびZ方向に摺動可能であり、かつ、過渡の変位に対しては支持受材4aaの上側係止構造によりパネル支持材3aaが規制される。また、パネル支持材3aaの支持受材4aaの設置面がR曲面をなしているため、当該振動を無理なく減衰させることができる。
同じく、パネル干渉緩和装置10Aのボックス支持部13aは、図8(b)および図9(b)に示すように、Y方向およびZ方向に摺動可能であり、かつ、過渡の変位に対しては支持受材14aの上側係止構造によりボックス支持部13aが規制される。また、ボックス支持部13aの支持受材14aの設置面がR曲面をなしているため、当該振動を無理なく減衰させることができる。
一方、前述したように、図6に示すようなX方向の振動WVxによる振動・変位等によって大きな力がパネル2aに作用するため、パネル2aからの干渉・衝撃を緩和するため、図6に示すような特定の区間に設置したパネル干渉緩和装置10Aの動作によって、図7に示すようにパネル2a等へ作用する力を緩和させたり、パネル2a等を破壊するような衝撃力を和らげることができる。
傾斜係止部81は、クリアランススペースCS#1の状態においては、パネル2aの傾斜構造部7aの蝶番の付勢力を抗して、傾斜構造部7aの平板部分を床材21aと水平面上に保持させるように係止する。一方、クリアランススペースCS#2又は#3の状態においては、傾斜構造部7aの移動により、傾斜構造部7aが傾斜係止部81の係止から解除される。これにより、傾斜構造部7aの蝶番の付勢力により平板部分が接地面側に屈曲される。
以上のような構造により、傾斜構造部7aが台座8aの傾斜係止部81に係止されている場合には、図2(a)に示すように、パネル2aの上面とクリアランススペースCS#1の長手方向に沿った平板部分の面とが平に揃う。一方、傾斜構造部7aが傾斜係止部81に係止されない場合には、傾斜構造部7aは、図8(a)又は図9(a)に示すように、クリアランススペースCS#2又はCS#3の長手方向に沿った平板部分が蝶番により屈曲されて、例えば台座8aに当該平板部分が傾斜して接する。
これにより、パネル2aの片方の端部側において、傾斜構造部7aが接地傾斜できるため、車椅子、担架、台車等でパネル2aに乗り上げてエキスパンションジョイント1A1を通過する際に、これらの車輪の移動操作が容易となる。
なお、図4乃至図9等の例では、3つのパネル2aを連設した場合の一例を示したが、敷設サイズにおいてパネル2aのX方向の長さによっては、一つのパネル2aでも、所定の長さで区切られた複数のパネル2aと等価的な大きさのパネルであってもよく、敷設する区画位置等に応じて、一又は複数のパネル数を定めてもよい。
従来の技術において、クリアランスの全周に、エキスパンションジョイントとしてパネル等が敷設およびそれらに関する設置工事が行われたとしても、クリアランススペースCSの長手方向に大きな変位・揺れが発生した場合に、所定の区画に敷き詰められた多数のパネル等には、大きな力が作用する。大きな地震の際の大きな力に耐えるような構造は、コスト面・材料面の制約も考慮すると困難であった。
また、単に個々のパネルを固定し、単体のパネルでの変位を許容する構造では限界もある。さらに、このような従来の固定方法において、東日本大震災のような規模の地震の際に、数百kg程度の重量もあるパネルが数メートル以上吹き飛ぶような事例も報告されている。
実施形態の干渉緩和装置およびエキスパンションジョイントによれば、クリアランススペースの長手方向に大きな変位・揺れが発生した場合に、所定の区画に敷き詰められた多数のパネル等には、大きな力がパネル等に作用するが、大きな力の干渉・衝撃を緩和することができる。また、実施形態の干渉緩和装置は、簡易な構造と簡易な施工方法で設置することができ、コスト面・材料面においても低コストで設置可能である。
また、実施形態の干渉緩和装置によれば、既設のスライド可能なエキスパンションジョイントの対策のための保護設備を追加・改修工事等する場合に、容易に設置できる構造であり、パネルの改造・変更、大規模な施工・工事等を必要としないため、設置工事を容易に行うことができる。
以上説明したように、本発明に係るパネル干渉緩和装置およびエキスパンションジョイントによれば、設置工事を容易に行うことができ、安全性および保守性に優れる。
[他の実施形態]
以上、本発明の実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。また、例えば実施形態のいくつかの特徴を組み合わせてもよい。さらに、この実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。この実施形態やその変形した実施形態等には、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。