以下、本発明に係る実施形態のエキスパンションジョイントについて、図面を参照して具体的に説明する。ここで、互いに同一または類似の部分には共通の符号を付して、重複説明は省略する。ここで説明する下記の実施形態はいずれも、免震構造の建物周囲に設けられるエキスパンションジョイントの場合の一例をとりあげて説明する。
[第1の実施形態]
以下、本発明に係るエキスパンションジョイントの第1の実施形態の構成について、図1乃至図8を用いて説明する。ここで、図1は、本発明に係るエキスパンションジョイント1A1の第1の実施形態の構成例を示す全体平面図である。図2は、図1に示すエキスパンションジョイント1A1のI−I矢視線の断面図である。その他の図については、以降において、適宜説明する。
エキスパンションジョイント1A1は、図1及び図2に示すように、免震構造側の躯体91と非免震構造側の躯体92との間のクリアランススペースCS#1に設けられる。エキスパンションジョイント1A1は、パネル2aaと、パネル支持材3aaと、支持受材4aaとを備えている。さらに、エキスパンションジョイント1A1において、係止材6aが免震構造側の躯体91に、台座8aが非免震構造側の躯体92に設置される。
パネル2aaは、クリアランススペースCS#1の短手方向(Y方向)に沿って、クリアランススペースCS#1を跨るように設けられる。パネル2aaは、使用条件・用途等に応じて、例えば歩行者の通行、車椅子、通行可能な車両などの荷重・移動に耐えうる構造に製作される。
パネル2aaは、例えば図2乃至図4に示すように、以下のような構成・構造で製作することができる。なお、図3(a)は図1に示すパネル2aaの平面(上面)図であり、図3(b)は図3(a)に示すII−II矢視線の断面図である。また、図4は、図1に示すパネル2aaの底面図である。
パネル2aaは、床材21a、中材シート26aおよび受枠24aを有する。床材21aは、免震構造側(躯体91側)又は非免震構造側(躯体92側)の少なくとも一方の側に向けて回動可能に開閉する床開閉部212aと、当該床開閉部212aと反対側に床固定部211aとからなる床材21aを有する。床固定部211aと床開閉部212aとの間には、床開閉部212aを上側方向に開くことができる回動可能な接続具である蝶番部213aが設けられる。
受枠24aは、床材21aの下方に中材シート26aを収容可能な収容スペースが設けられ、収容された当該中材シート26aを支持する。図2乃至図4に示すように、中材シート26aが床材21aの床開閉部212aからパネル2aaの収容スペースに収容、又は、取り出しできるように、受枠24aの内枠は形成される。また、受枠24aは、その底面に配置された中材シート26aによりクリアランススペースCS#1の上面を覆うことが可能なように、その底面側が開口された形状に形成される。
パネル2aaは、非免震構造側の躯体92に設けられる台座8aに受枠24aのいずれかの部分が当接した状態で摺動可能となるように設置される。なお、パネル2aaには、エキスパンションジョイント1A1の設置後に、床材21a上を仕上げ材20aで覆ってもよい。仕上げ材20aは、例えば金属製、石材タイルなどの化粧パネルである。
ここで、図5に、図1に示すエキスパンションジョイント1A1のパネル敷設例を示す。なお、図5の例では、主に免震構造側の躯体91にパネル2aaを設置する場合の施工方法の概要を示すものである。
パネル支持材3aaは、図2及び図5等に示すように、免震構造側のパネル2aaの端部に複数の箇所にパネル支持ボルト23aにより締結されて、パネル2aaを支持する。
支持受材4aaは、パネル2aaを支持するパネル支持材3aaを躯体91に保持するための支持受けである。このために、支持受材4aaは、クリアランススペースCS#1の長手方向に沿って、免震構造側の躯体91に設けられる。支持受材4aaは、免震構造側の躯体91に応じて設けられる係止材6aにより免震構造側の躯体91に係止される。
なお、パネル支持材3aaおよび支持受材4aaの詳細な構造については、詳しくは後述する。ここでは、パネル2aaの詳細な構造等について、以下に説明する。
<床材>
ここで、図6は、図2に示すエキスパンションジョイント1A1における中材シート26aの収納方法を示す斜視図である。
床材21aは、図6等に示すように、上部に配置された床材21aにおいて開閉できない部分の床固定部211aと、一部を免震構造側の躯体91に向けて上側方向に回動可能な床開閉部212aとを有する。
床固定部211aは、クリアランススペースCS#1の長手方向に沿った免震側の一方の床材端部を基準として配設される。免震側の一方の床材端部側において、床固定部211aがパネル支持材3aaにより固定されて支持される。
また、床開閉部212aは、非免震側である他方の床材端部側に配設される。床開閉部212aは、上側方向に開閉可能であり、開口が設けられる。床材21aは、蓋開閉可能な回動部を有する。回動部として、例えば床固定部211aと床開閉部212aとの接続部分に、床開閉部212aを回動する蝶番部213aが設けられる。
床開閉部212aは、床材21aの平状である閉状態から上側方向に回動し、開口可能である。これにより、施工者・保守者等は、図6に示すように、床開閉部212aを開閉し、中材シート26aを設置・交換可能である。
好ましくは、床開閉部212aには、開閉係止具により開口を係止・解除するロック機構が設けられる。ロック有のときには、床開閉部212aは開口できない。ロック解除のときには、床開閉部212aは開口可能である。
ロック機構は、例えば図2及び図6に示すように、床開閉部212aと第2補強材25a−2とを貫通して締結する係止ボルト214aであってもよい。すなわち、床開閉部212aを開ける場合には、第2補強材25a−2に螺合している係止ボルト214aをドライバー等により緩めて、床開閉部212aのロックを解除する。また、床開閉部212aを閉じた場合には、係止ボルト214aを第2補強材25a−2に螺合するようにドライバー等により締めて床開閉部212aをロックする。
<受枠>
受枠24aは、収容スペースに収容される中材シート26aを支持する。このために、受枠24aは、図2乃至図4に示すように、中材シート26aをパネル2aaに収容し、収容された中材シート26aを保護するための枠構造を有する。例えば、受枠24aは、底面部が四角枠形状で、かつ、底面部が開口している。受枠24aの底面部には、図4に示すように、パネル支持ボルト23aが貫通するボルト貫通孔241が複数設けられている。
また、受枠24aにより支持された中材シート26aは、受枠24aの底面部の開口を介して、クリアランススペース上部を覆うことができる。このために、受枠24aは、台座8a上を摺動する際の台座8aに対する当接面を有する。図2乃至図4に示すような受枠24aの構造により、パネル2aaが台座上を摺動する際に、中材シート26aを保護することができる。
さらに、パネル2aaに重量物が置かれ又は通行する場合でも、中材シート26aは、受枠24a及び補強材25aにより当該重量物から大きな力を受けない構造である。中材シート26aは、床材21aと受枠24aとの間に設けられる収容スペースに収容される。
<補強材>
パネル2aaの略四角枠の端部には、図3及び図4に示すように、収容スペースを囲うように、受枠24aの補強材25a(第1補強材25a−1〜第5補強材25a−5)として角鋼材が設けられる。床材21aの端部と受枠24aとの間に、補強材25aが据え付けられる。補強材25aは、受枠24aの所定の位置に配設され、例えばスポット溶接等で固定される。
パネル2aa内の第1補強材25a−1は、免震側のパネル端部で、パネル2aaと共にパネル支持ボルト23aにより締結される。第1補強材25a−1は、床材21aの一方の端部側に配設される。非免震側のパネル端部には、第2補強材25a−2が設けられる。第2補強材25a−2は、床材21aの他方の端部側に配設される。さらに、パネル2aa内の短手方向に沿った端部には、第3補強材25a−3および第4補強材25a−4が配設される、第3補強材25a−3と第4補強材25a−4との間には、第5補強材25a−5が配設される。なお、例えば第5補強材25a−5は、パネル2aaのX方向の幅、受枠24aにおける底面の四角形状の開口数・開口面積などに応じて必要の有無、部材幅・部材数が決定される。
パネル2aa内において、図3に示す第5補強材25a−5を境にして、図6に示すような2組の中材シート26aが収納可能であり、収納された中材シート26aは受枠24aで支持される。収容スペースにおいて、床材端部の下方に位置する端部側の補強材25aとの間に中材シート26aが挿入されて、中材シート26aが受枠24aに支持される。好ましくは、補強材25aの厚みは、中材シート26aが上側の床材21a等に過渡に圧迫されないように、1又は複数の中材シート26aを積み重ねた高さよりと同程度又は高くされる。
パネル2aaは、使用条件・用途等にもよるが、例えば歩行者の通行、車椅子、通行可能な車両などの荷重・移動に耐えうる構造に製作される。パネル2aaを通行する対象範囲(人、車両、トラック等)により、床材21aの厚さおよび受枠24aの高さ等は決定される。
例えば、一例として挙げると、1m2当たり600kgの荷重では、床材21aの鋼材(スチールなど)厚さを9mm、20tの荷重では床材21aの鋼材厚さ(床の高さ)を36mmなどにする。これに合わせて、受枠24aの高さを、適宜、設計・製作する。また、床材21aの材料は、スチール材の他、石材などであってもよい。他にも、床材21aの鋼材は、例えば亜鉛メッキ鋼板で、500g/m2のメッキ付着量で耐用年数45年程度などを条件から選定可能である。
なお、本出願人は、第1の実施形態のエキスパンションジョイント1A1などに関して、このような条件において、構造設計の計算上、問題のないことも確認している。
以上説明したように、簡易かつ強固な支持方法で、中材シート26aをパネル2aaの収容スペースに収容し、かつ、受枠24aで保持することができる。受枠24aは、パネル2aaと共に、変位可能である。
収容スペースに収容される中材シート26aの強度は鋼材に比べて高くないため、パネル2aa内では、床材21a、受枠24a、第1補強材25a−1〜第4補強材25a−4によりパネル2aa内で重量物から作用する力から中材シート26aを保護する。
以上のような構造のエキスパンションジョイント1A1を設置することで、パネル2aa、パネル支持材3aa、支持受材4aa、係止材6aおよび台座8aにより、クリアランススペースCS#1の上部を覆うことができる。クリアランススペースCS#1の上部周辺は、主に中材シート26aで覆うことができる。
<中材シート>
次に、中材シート26aに用いる部材の一例について説明する。
中材シート26aは、床材21aと受枠24aとの間の収容スペースに収容される。中材シート26aは、複数のシートで構成される。好ましくは、複数のシートのうちの少なくとも一つのシートは、断熱性を有し、かつ、吸湿性及び蒸発性(撥水性)を有する第1のシート(撥水性シート261aとする)である。また、少なくとも他の一つのシートは、耐火性を有する第2のシート(耐火性シート262aとする)、又は/および、不燃材である第3のシート(不燃性シート263aとする)である。
例えば、中材シート26aとして、下段に耐火性シート262a又は/および不燃性シート263a、耐火性シート262aよりも上段に断熱性を有しかつ撥水性を有する不織布などの撥水性シート261aが収納される。また、例えば耐火性シート262a及び不燃性シート263aを用いる場合には、以降に説明するような不燃性シート263aをさらに下段に用いる。
床材21a下に撥水性シート261aを用いるのは、パネル2aa内へ進入する水・溜り水等を除去するためと、最下段に位置する不燃性シート263aを水分から保護する目的として、不燃性シート263aを水分による劣化から防ぐためである。
以下に、中材シート26aとして、適用可能な具体的製品の例を挙げる。
(a)第1のシート(上段 261a):パイロジェルXT(ニチアス株式会社販売 「パイロジェル」はaspen aerogels,Inc.の商標) 撥水性(外側へ水分を排出する)
(b)第2のシート(中段 262a):ファインフレックスB10ペーパー(ニチアス株式会社販売 「ファインフレックス」はニチアス株式会社の登録商標)) 耐火温度1300℃
(c)第3のシート(下段 263a):エコラックス(ニチアス株式会社販売 「エコラックス」はニチアス株式会社の登録商標) 不燃材料 水濡れに強い
例えば、床材21aの下に、前述したような(a)の撥水性シート261aを用いるのは、パネル2aa内へ進入する水・溜り水等を除去するためである。また、最下段に位置する不燃材料として、前述したような(c)の不燃性シート263aを用いるのは、耐火性シート262aを水分から保護する目的として、水濡れに強い不燃材料により水分による劣化から防ぐためである。
なお、ここでいう、不燃材料とは、建築基準法第68条の26第1項(同法第88条第1項において準用する場合を含む)の規定に基づき、同法第2条第九号及び同法施工令第108条の2第一号から第三号までの規定などに適合するものである。
また、前述した中材シート26aの他にも、支持受材4aa、係止材6aおよび台座8aに耐熱性を有する鋼材を用いる。パネル2aaの直下に従来の耐火帯を使用しない場合、鋼材として、例えば以下に説明する鋼材などを用いる。
好ましくは、鋼材としては、1時間耐火温度として、945℃以上の鋼材を用いる。床材として、例えばSUS(Steel Use Stainless:ステンレンス材質記号)309Sを用いる。SUS309Sはステンレス鋼材であり、耐熱鋼として優れた鋼種の一つである。また、耐食性、機械的性質が良好である。鋼材として、SUS309S、SUS310S等のCr、Niを多く含有する耐熱鋼等を用いる。
なお、耐熱性は、例えば、SUS304<SUS316<SUS309S<SUS310Sの順で高くなる。SUS310Sは、例えばCr25%・Ni20%程度の合金である。
本実施形態のエキスパンションジョイント1A1において、図2及び図7等に示すように、パネル2aa、パネル支持材3aa、支持受材4aa、係止材6aおよび台座8aにより、クリアランススペースCS#1、CS#2、CS#3等の上部を覆うことができる構造である。そのため、これらのクリアランススペース上部を覆う所定の部材に、耐熱性の高いSUS309S、SUS310S等を用いることにより、従来のエキスパンションジョイント等の下部に設けるような耐火帯を用いなくとも、耐火性を高めることができる。
次に、図5等を参照しながら、図2に示すエキスパンションジョイント1A1の構成と共に、設置・施工方法などについて説明する。
パネル支持材3aaは、図2に示すように、パネル2aaを支持する。パネル支持材3aaは、図5に示すように、クリアランススペースCS#1の長手方向(図5のX方向)に沿って棒状に延びており、図2に示すように、当該棒状におけるパネル2aaの垂直(支持)方向に沿った断面は略半円形状である。
パネル支持材3aaは、免震構造側の躯体91のパネル2aaの端部に複数の箇所にパネル支持ボルト23aにより締結されて、パネル2aaを支持する。パネル支持ボルト23aは、例えば六角穴付き皿ボルトである。
支持受材4aaは、クリアランススペースCS#1の長手方向(X方向)に沿って、免震構造側の躯体91に設けられる。支持受材4aaは、クリアランススペースCS#1の短手方向(Y方向)へのパネル支持材3aaの移動を規制し、かつ、クリアランススペースCS#1の長手方向へのパネル支持材3aaの移動を摺動可能に支持しながらパネル支持材3aaを上側方向に抜脱しないように載置させる形状である。
支持受材4aaは、図2及び図5等に示すように、Z方向に沿った断面において、例えば開口を有する四角枠形状である。支持受材4aaは、免震構造側の躯体91に応じて設けられる係止材6aにより免震構造側の躯体91に係止される。
図2等に示すように、免震構造側の躯体91と非免震構造側の躯体92との間のクリアランススペースCS#1に、エキスパンションジョイント1A1を敷設することができる。例えば、エキスパンションジョイント1A1の一つのパネル2aaは、図5に示すように、クリアランススペースCS#1の短手方向(Y方向とする)に沿ってクリアランススペースCS#1を跨るように、以下に説明するような施工方法で設置される。なお、図5では、一つのパネル2aaを敷設する場合の一例を示す。
(躯体91への設置方法について)
図5に示すように、躯体91のX方向に沿って、一つのパネル2aaの幅に相当する長さのパネル支持材3aaが、一つのパネル2aaの幅と少なくとも同じ長さの支持受材4aaに挿通された後に、パネル2aaをパネル支持材3aaに載せる。パネル支持材3aaに載せたパネル2aaにおいて、複数のパネルボルト挿通部22aにパネル支持ボルト23aを挿通させて、パネル支持ボルト23aをボルト挿通孔31aに締結させる。パネル支持ボルト23aは、例えば六角穴付き皿ボルトである。なお、複数のパネル2aaごとに、複数のパネル2aaの幅に対応する長さの支持受材4aaを用いてもよい。
さらに、免震構造側の躯体91に応じて設けられる係止材6aに支持受材4aaが載置されて、支持受材4aaに設けられた複数の長孔51a等に固定ボルト5aが挿通され、固定ボルト5aにより躯体91に固定される。固定ボルト5aは、例えばアンカーボルトおよび当該ボルトを固定するナット等である。以上のように、支持受材4aaは免震構造側の躯体91に係止される。これにより、図5に示すように、パネル2aaを免震構造側の躯体91に敷設することができる。
以下、支持受材4aaの詳細な構造例について説明する。
支持受材4aaは、例えば図2及び図5等に示すように、上側係止支持材41aaと、内側L字鋼材42aaと、外側L字鋼材43aaとから構成される。なお、躯体91に応じて(固定・設置方法等に応じて)、後述する第4の実施形態に示す支持受材4ca等の構成としてもよい。
上側係止支持材41aaは、図2及び図5等に示すように、内側L字鋼材42aaと外側L字鋼材43aaとの間により挟持されて、躯体91に係止された係止材6aに載置される。
上側係止支持材41aaは、X方向に沿って延びる箱型の形状であり、かつ、Z方向に沿った断面において、同じくパネル支持材3aaの断面における略半円形状を囲い、上方側で略半円形状の突起部分を係止可能な開口部が設けられる形状である。
内側L字鋼材42aaおよび外側L字鋼材43aaは、図2及び図5等に示すように、X方向に沿って上側係止支持材41aaとほぼ同じ長さで形成されている。上側係止支持材41aaは、内側L字鋼材42aaと外側L字鋼材43aaとの間により挟持されて、躯体91に係止された係止材6aに載置される。
この係止材6aに載置された上側係止支持材41aaは、内側L字鋼材42aaと外側L字鋼材43aaとが重ねられた状態で、複数の箇所の各々の長孔51aおよび長孔52a、係止材6aと同じ厚さの座板53aに固定ボルト5aが挿通され、固定ボルト5aにより躯体91に固定される。なお、内側L字鋼材42aaおよび外側L字鋼材43aaは、X方向に沿って、所定の長さごとに複数に分割されたものであってもよく、上側係止支持材41aaを所定の間隔ごとに挟持して設置してもよい。
例えば、現場での設置工事において、図5に示すような形態で、上側係止支持材41aa、内側L字鋼材42aa、外側L字鋼材43aaおよび係止材6aを予めアーク溶接等で固定しておいて、設置場所へ搬入されてもよい。これにより、効率的に、設置工事を行うことができる。
以上のような躯体91への固定設置後、例えば、内側L字鋼材42aa、固定ボルト5aの上部のパネル2aaの周辺区間には、パネル周辺モルタル93が充填されて覆われる。このパネル周辺モルタル93と内側L字鋼材42aaとの間には、補強材として、例えばシール材101、角鋼材102等を用いる。
以上のようなエキスパンションジョイント1A1の構造により、パネル支持材3aaは、図5及び図8等に示すように、支持受材4aaによりY方向の移動は規制されながら、X方向およびZ方向に摺動可能であり、かつ、過渡の変位に対しては支持受材4aaの上側係止構造によりパネル支持材3aaが規制される。また、パネル支持材3aaの支持受材4aaの設置面がR曲面)をなしているため、当該振動を無理なく減衰させることができる。
(躯体92への設置方法について)
パネル2aaは、非免震構造側の躯体92に設けられる台座8aに摺動(スライド)可能に設置される。
台座8aは、図2等に示すように、主にパネル2aaに当接する部分においては略平板状の鋼材である。また、台座8aは、躯体92の淵側に沿って90度程度に折り曲げられ、パネル周辺モルタル94側の地面にせり上がる側においては、クリアランススペースCS#1の状態で傾斜板7aを係止可能な屈曲形状(傾斜係止部81)に形成される。
台座8aの下方側には、台座下部モルタル95を充填する前に、非免震構造側の躯体92にアンカーボルト84が複数個所に設けられる。その施工後、その台座8aの下方側に、例えば無収縮モルタル等である台座下部モルタル95が充填される。充填される台座下部モルタル95内には、タップ固定金具83が据え付けられる。
充填後の台座下部モルタル95上に、台座8aが敷設され、その台座8aが複数個所のタップ固定金具83を介して、セルフタップ82により固定される。また、パネル2aaの周辺には、パネル周辺モルタル94が施工される。
パネル2aaは、非免震構造側の端部方向に屈曲可能な傾斜板7aを有する。傾斜板7aは、例えばパネル2aaにおいて、受枠24aの非免震構造側の外端部に、X方向に沿って蝶番71aを介した構造で設けられる。傾斜板7aは、変位なし状態のクリアランススペースCS#1において、台座8aの傾斜係止部81に係止される。
エキスパンションジョイント1A1の設置後、パネル2aaには、例えば仕上げ材20aが施される。仕上げ材20aは、床材21aを覆う床仕上げ材である。床仕上げ材は、例えば歩行・通行性能、美観性などに適した材料のタイル、石材、金属材料等が用いられる。
次に、図7及び図8等を参照しながら、躯体間に生じる相対的な3次元の変位に対して、エキスパンションジョイント1A1の追従性、および、パネルでの大きな振幅を抑える又は緩和する機能等について説明する。
ここでは、図7(a)及び(b)に示すエキスパンションジョイント1A1におけるクリアランススペース変位時の状態例について説明する。また、図8に示すパネル2aaの傾き動作状態の例について説明する。
図7(a)に示すクリアランススペースCS#2は、図2(a)に示すクリアランススペースCS#1に比べてスペース間が狭くなった場合の変位の状態を示すI−I矢視線の断面図である。また、図7(b)に示すクリアランススペースCS#3は、図2(a)に示すクリアランススペースCS#1に比べてスペース間が拡がった場合の変位の状態を示すI−I矢視線の断面図である。また、図8は、図2に示すパネル2aaの傾き動作状態の例を示す側面図である。
地震により、主に非免震構造側に揺れが生じるため、クリアランススペースCS#1に3次元的な変位が発生する。非免震構造側の躯体92の振動によって、例えば図8等に示すように、複数のパネル2aaがX方向、Z方向に変位した場合、その変位に応じて、免震構造側に設置されているパネル支持材3aaが、載置されている支持受材4aa上を揺動又は摺動可能である。
また、エキスパンションジョイント1A1では、支持受材4aaによりパネル支持材3aaのY方向の移動は規制しながら、例えばクリアランススペースCS#1のY方向の変位に追従して、例えば図7(a)に示すクリアランススペースCS#2の例では、パネル2aaが台座8aにおける型スペースからせり上がり、パネル2aaの片方の端部側がパネル周辺モルタル94に載置する。
一方、エキスパンションジョイント1A1では、支持受材4aaによりパネル支持材3aaのY方向の移動は規制しながら、クリアランススペースCS#1のY方向の変位に追従して、例えば図7(b)に示すクリアランススペースCS#3の例では、パネル2aaが台座8aにおける型スペースからクリアランススペースCS#3側に引き寄せられて、パネル2aaの片方の端部側が台座下部モルタル95上に載置する。
台座8aにおいて、傾斜係止部81は、クリアランススペースCS#1の状態においては、傾斜板7aの蝶番71aの付勢力に抗して、傾斜板7aの平板部分を床材21aと水平面上に保持させるように係止する。一方、クリアランススペースCS#2又は#3の状態においては、傾斜板7aの移動により、傾斜板7aが傾斜係止部81の係止から解除される。これにより、傾斜板7aの蝶番71aの付勢力により平板部分が接地面側に屈曲される。
以上のような構造により、傾斜板7aが台座8aの傾斜係止部81に係止されている場合には、図2(a)に示すように、パネル2aaの上面とクリアランススペースCS#1の長手方向に沿った平板部分の面とが平に揃う。一方、傾斜板7aが傾斜係止部81に係止されない場合には、傾斜板7aは、図7(a)又は図7(b)に示すように、クリアランススペースCS#2又はCS#3の長手方向に沿った平板部分が蝶番71aにより屈曲されて、例えば台座8aに当該平板部分が傾斜して接する。
図7(a)及び図7(b)のような場合において、パネル2aaの片方の端部側の傾斜板7aが接地傾斜できるため、車椅子、担架、台車等でパネル2aaに乗り上げてエキスパンションジョイント1A1を通過する際に、これらの車輪の移動操作が容易となる。
また、振動・変位等によって、免震構造側の躯体91で主に支持されるパネル2aa等には、震度の大きさによっては非常に大きな力が作用する恐れがあるものの、前述した構造によりエキスパンションジョイント1A1にはパネル等に作用する力を緩和させたり、パネルを破損するような事態を回避させたりすることができる。
以上説明したようなエキスパンションジョイント1A1の構成により、パネル2aaは、中材シート26aが収容された状態で、パネル2aa、パネル支持材3aaおよび支持受材4aa、台座8aにより当該配設された区画におけるクリアランススペースCS#1の上部を覆い、かつ、クリアランススペースCS#1の変位に追従して、受枠24aの一部を当接させながら台座8aを摺動する。
さらに、エキスパンションジョイント1A1において、パネル2aaが当該摺動した状態においても、パネル2aa、パネル支持材3aaおよび支持受材4aa、台座8aによりクリアランススペースCS#1の上部を覆うことができる。
なお、本実施形態では、パネル2aa、パネル支持材3aaおよび支持受材4aa、台座8aによりクリアランススペースCS#1の上部を覆う構造であるとしているが、パネル支持材3aaおよび支持受材4aaをパネル支持材として捉えてもよい。
これにより、本実施形態のエキスパンションジョイント1A1では、エキスパンションジョイント本来の機能だけでなく、耐火帯の機能を併せ持つことができる。
[本発明に係るエキスパンションジョイントの特徴]
本発明に係るエキスパンションジョイントは、以下の特徴を有する。
(1)安全性に優れる
例えば、東日本大震災では、数百kg程度のパネルが数十メートル吹き飛んだ例もある。すなわち、免震側と非免震側との間ではその振動・変位などがさらに大きくなるため、クリアランススペースを跨るエキスパンションジョイントに大きな振動・変位が生じる。
本発明に係るエキスパンションジョイントでは、パネル支持構造において、棒状かつ断面が半円状であるため、接地面が滑らかであり、がたつきが少ない。地震により大きな揺れの際に、躯体に設置したパネルが上下、左右、前後の振動を抑えることができる。また、地震の大きな揺れによるパネルの飛び出しを防ぐことができる。
(2)屈曲可能な傾斜構造
地震後の非免震側のパネル端部に接地傾斜ができる構造により、車椅子、担架、台車等の車輪の移動が容易となる。
(3)工期短縮・コスト低減
従来のグリッド構造の梯子状の格子間にモルタルを充填する工法(コンクリートを流し込む工法)に比べて、その必要がない。現場では、本パネルを据付配置する設置工事だけでよい。そのため、現場の設置工事が短縮され、また、モルタルを充填する必要がないため、現場が汚れない。また、従来は、現場でステンレンスにグレーチングを溶接する。さらに、それにコンクリートを充填するので、設置工数がかかる。本発明では、それらの工程を必要としないため、設置施工コストも低減できる。
また、本発明では、エキスパンションジョイントを軽量化可能であり、単位面積当たりのパネル重量は、例えば鋼材による長孔フレーム枠(グレーチング)にコンクリートを充填する方法に比べて、軽量化を実現可能である。
(4)耐火帯の課題について
防火区域を確保するためにエキスパンションジョイントの内側に耐火帯を設置する必要がある。エキスパンションジョイント内には、クリアランスがあるため、防火上、エキスパンションジョイントには耐火性が必要となる。そのため、耐火帯をエキスパンションジョイントのパネルユニット下に設ける必要があった。この場合には、耐火帯もクリアランススペースの短手方向にスライド可能であることが必要であった。
従来、クリアランススペースに耐火帯を設ける場合に、耐火帯の設置コストがかかる問題もあった。また、クリアランススペースに設けた耐火帯について、クリアランススペースの大きな変位に対しての追従性に課題があった。また、耐火帯の設置構造上、点検・保守・補修等が困難であるという課題があった。
本発明では、エキスパンションジョイントの構造によりクリアランススペース上部を耐火性の高い部材で隙間なく覆うことができるため、エキスパンションジョイント単独で耐火性を確保でき、パネル下等に従来の耐火帯を設ける必要がない。
(5)保守性に優れる
従来の技術では、鋼材による長孔フレーム枠(グレーチング)を現場で据付、その鋼材の格子状の中にコンクリートを現場で流して固める。その際に、生コンクリートを流し込むため、その回りの汚れを清掃する時間、コンクリートが固まるまでの時間等により工数を増加させる要因となり、余計な時間がかかる。
従来の技術では、グレーチングをコンクリート等で固めるため、パネル下の状況(雨水などの流入による影響、耐熱性などの劣化等)を検査することが困難である。また、グレーチングのモルタル充填した部分を交換することが困難である。また、点検・保守の困難性があった。
一方、本発明によるエキスパンションジョイントでは、対振動特性・設置方法が簡易であるパネル構造であり、また、耐火帯を用いない構造が可能である。このため、点検・保守性が優れた構造である。
以上説明したように、本実施形態のエキスパンションジョイントによれば、設置工事を容易に行うことでき、安全性および保守性に優れる。
また、本実施形態のエキスパンションジョイントによれば、地震による変位等でのパネルの飛び出しを抑えることができる。
[第2の実施形態]
図9は、本発明に係るエキスパンションジョイント1A2の第2の実施形態の構成例を示す図である。なお、以降では、第1の実施形態のエキスパンションジョイント1A1と相違する点に関し、第2の実施形態のエキスパンションジョイント1A2の構成について主に説明するものとする。また、図1において、図1に示すパネル2aaに代えて、本実施形態のエキスパンションジョイント1A2のパネル2ab等を敷設した場合を例として説明する。
図9(a)は、第2の実施形態のエキスパンションジョイント1A2の正面図であり、図9(b)は図1に示すI−I矢視線方向に対応するエキスパンションジョイント1A2の断面図である。なお、図9(a)の正面とは、図9(b)III−III矢視線方向を示すものとする。
エキスパンションジョイント1A2は、図1及び図2に示す第1の実施形態のエキスパンションジョイント1A1と同様に、免震構造側の躯体91と非免震構造側の躯体92との間のクリアランススペースCS#1に設けられる。
エキスパンションジョイント1A2は、図9に示すように、パネル2abと、複数のパネル支持材3abと、支持受材4abとを備えている。さらに、エキスパンションジョイント1A2において、係止材6aが免震構造側の躯体91に、台座8a(図示省略)が非免震構造側の躯体92に設置される。なお、非免震構造側の第2の実施形態のエキスパンションジョイント1A2の構造は、図2等に示すエキスパンションジョイント1A1の構造と同様であるため、第2の実施形態の図9においては省略する。
ここで、図9に示すエキスパンションジョイント1A2は、図2等に示す第1の実施形態のエキスパンションジョイント1A1の構成と比較すると、パネル2ab(パネル2aaと同一の構成)、係止材6aおよび台座8aは同じ構成である。一方、パネル支持材3abおよび支持受材4abの構成が異なっている。
パネル支持材3abは、図9(a)に示すように、クリアランススペースCS#1の長手方向(X方向)に沿って小幅の棒状に延びており、図9(b)に示すように、当該棒状におけるパネル2abの垂直(支持)方向に沿った断面は略半円形状である。
複数のパネル支持材3abは、免震構造側の躯体91のパネル2abの端部に複数の箇所にパネル支持ボルト23aにより締結されて、パネル2abを支持する。パネル支持ボルト23aは、例えば六角穴付き皿ボルトである。なお、図9(a)に示す一つのパネル2abには、3つのパネル支持材3abに3つのパネル支持ボルト23aが締結されている。
支持受材4abは、クリアランススペースCS#1の長手方向(X方向)に沿って、免震構造側の躯体91に設けられる。支持受材4abは、クリアランススペースCS#1の短手方向(Y方向)へのパネル支持材3abの移動を規制し、かつ、クリアランススペースCS#1の長手方向へのパネル支持材3abの移動を摺動可能に支持しながらパネル支持材3abを上側方向に抜脱しないように載置させる形状である。
躯体91のX方向に沿って、一つのパネル2abの幅に均等の間隔で配置された複数のパネル支持材3abが、一つのパネル2abの幅と少なくとも同じ長さの支持受材4abに挿通された後に、パネル2abをパネル支持材3abに載せる。パネル支持材3abに載せられたパネル2abにおいて、複数のパネルボルト挿通部22aにパネル支持ボルト23aを挿通させて、パネル支持ボルト23aをボルト挿通孔31aに締結させる。パネル支持ボルト23aは、例えば六角穴付き皿ボルトである。
支持受材4abは、例えば図9(b)に示すように、上側係止支持材41aaと、内側L字鋼材42aaと、外側遮蔽鋼材43abとから構成される。
上側係止支持材41aaは、X方向に沿って延びる箱型の形状であり、かつ、Z方向に沿った断面において、同じくパネル支持材3abの断面における略半円形状を囲い、上方側で略半円形状の突起部分を係止可能な開口部が設けられる形状である。
内側L字鋼材42aaは、X方向に沿ってL字形状に形成された鋼材である。外側遮蔽鋼材43abは、クリアランススペースCS#1の上方から躯体91側に向かう気体の流れを遮蔽可能なように、例えばL字形状の鋼材の一部をさらに屈曲させた形状に形成される。
内側L字鋼材42aaおよび外側遮蔽鋼材43abは、X方向に沿って上側係止支持材41aaとほぼ同じ長さで形成されている。上側係止支持材41aaは、内側L字鋼材42aaと外側遮蔽鋼材43abとの間により挟持されて、躯体91に係止された係止材6aに載置される。
本実施形態のエキスパンションジョイント1A2では、複数のパネル支持材3abにおける支持受材4abへの載置において、パネル2abとの隙間が生じるため、外側遮蔽鋼材43abによって、当該隙間方向への気流の流れを防ぐ遮蔽効果を目的としている。
以上説明したようなエキスパンションジョイント1A2の構成により、パネル2abは、中材シート26aが収容された状態で、パネル2ab、支持受材4abおよび台座8aにより当該配設された区画におけるクリアランススペースCS#1の上部を覆い、かつ、クリアランススペースCS#1の変位に追従して、受枠24aの一部を当接させながら台座8aを摺動する。
さらに、エキスパンションジョイント1A2において、パネル2abが当該摺動した状態においても、パネル2ab、支持受材4abおよび台座8aによりクリアランススペースCS#1の上部を覆うことができる。
これにより、本実施形態のエキスパンションジョイント1A2では、エキスパンションジョイント本来の機能だけでなく、耐火帯の機能を併せ持つことができる。
以上説明したように、本実施形態のエキスパンションジョイントによれば、設置工事を容易に行うことでき、安全性および保守性に優れる。
[第3の実施形態]
本発明に係るエキスパンションジョイントの第3の実施形態の構成について、図10乃至図21を用いて説明する。図10は、第3の実施形態のエキスパンションジョイント10Bの構成例を示す全体平面図である。その他の図については、以降において、適宜説明する。
第3の実施形態のエキスパンションジョイント10Bは、第1の実施形態のエキスパンションジョイント1A1に関する構成に、さらに、後述するような連設パネル・連設パネル支持材の構造、干渉緩和構造を設けて、より大きな揺れの地震に対しても安全性・耐久性に優れたものとなる点に特徴を有している。なお、以降では、第1の実施形態のエキスパンションジョイント1A1に関する構成と共通な要素・内容などの説明は省き、主に連設パネル・連設パネル支持材の構造、干渉緩和構造等について説明する。
図10及び図11等に示すエキスパンションジョイント10Bは、コーナ部側の区画等を除く主な区画に敷設される一又は複数の連設パネル1B0と、コーナ部側の隣接区画の敷設される一又は複数のパネル1B2と、パネル1B2と他方の隣接する区画に敷設される一又は複数の連設パネル1B1とを含む構成である。
なお、図10及び図11等において、相対的な方向性を示すために、クリアランススペースCS#1の長手方向をX方向とし、同じく短手方向をY方向として、また、地面に対する垂直方向をZ方向として示している。また、区画とは、変位のない状態のクリアランススペースCS#1を基準としたエキスパンションジョイント10Bにおいて、敷設されるパネルの配置・並び等を示すものとする。
図10及び図11等に示すエキスパンションジョイント10Bは、例えば以下のようなパネルを含む構成である。なお、本実施形態の例では、以下の一又は複数の連設パネル1B0、1B1、パネル1B2等を含む構成例で説明する。
(1)第1パネル(一又は複数の連設パネル1B0)
第1パネルは、クリアランススペースCS#1に敷設される主な区画のパネルであり、パネル間を連設支持可能なパネル支持材3ba、支持受材4ba等で連通させて、一又は複数の連設パネル1B0を構成する。
(2)第2パネル(一又は複数の連設パネル1B1)
第2パネルは、例えば第1パネルと第3パネルとの間の区画に敷設されるパネルであり、パネル間を連設支持可能なパネル支持材3ba、支持受材4ba等で連通させ、また、第3パネルを接続する機能を有する、一又は複数の連設パネル1B1を構成する。第1パネルと、第2パネルとの相違は、第3パネルを接続するためのジョイント部27bおよび28bの有無である。
(3)第3パネル(一又は複数のパネル1B2)
第3パネルは、第2パネルに隣接される区画に敷設されるパネルであり、第2パネルと接続するパネルで、また、クリアランススペースの長手方向に沿って、上側方向に抜脱可能な干渉緩和パネル2bcを含む一又は複数のパネル1B2を構成する。
以降では、第3の実施形態のエキスパンションジョイント10Bにおける第1パネル、第2パネルおよび第3パネルの構造例および機能等について説明する。なお、図10に示すコーナパネル2beは、クリアランススペースのコーナの区画に設けられるパネルであり、以降の説明の構造とは異なるものとする。
<第1パネル(一又は複数の連設パネル1B0)及び第2パネル(一又は複数の連設パネル1B1)について>
第1の実施形態のエキスパンションジョイント10Bには、免震構造側の躯体91と非免震構造側の躯体92との間のクリアランススペースCS#1に、一又は複数の連設パネル1B0、1B1等が連設可能に設けられる。
例えば、一又は複数の連設パネル1B0、1B1には、図10及び図11等に示すように、クリアランススペースCS#1の短手方向(Y方向)に沿ってクリアランススペースCS#1を跨るように、パネル2ba、2bb等が設けられる。パネル2ba、パネル2bbは、以下のような構成である。
第1パネル(一又は複数の連設パネル1B0)、第2パネル(一又は複数の連設パネル1B1)において、パネル支持材3baで複数のパネル2ba、2bb等を連設支持可能である。また、そのパネル支持材3baは、クリアランススペースCS#1の長手方向(X方向)に連設される支持受材4baで連通可能となる。これにより、連設可能に敷設された場合に、第1パネルおよび第2パネルは、クリアランススペースCS#1の長手方向に摺動可能となる。
<第3パネル(一又は複数のパネル1B2)について>
さらに、本実施形態のエキスパンションジョイント10Bでは、図10に示す敷設するパネル2bb、2bc、2bd等において、以降のような緩和パネル構造を設けて、上述したような大きな力をエキスパンションジョイント10Bとしてさらに緩和することが可能である。
図10及び図11等に示すエキスパンションジョイント10Bは、さらに、以下で説明する第3パネル(一又は複数のパネル1B2)を含む構成である。第2パネル、第3パネルにおいて、隣接するパネル同士でジョイント接続可能である。第3パネルは、第2パネルとジョイントさせるパネルであり、また、干渉緩和するパネルを含む。以降では、図12乃至図21を参照しながら、第1パネル、第2パネルおよび第3パネル(干渉緩和パネル2bcと区画端パネル2bd等の組み合せパネル)における構造について説明する。
ここで、図12に、図10に示すエキスパンションジョイント10Bのうちの連設パネル1B0又は1B1の敷設例を示す。図12では、免震構造側の躯体91に連設パネル1B0(1B1)を設置する場合の施工方法の概要を示すものである。
免震構造側の躯体91と非免震構造側の躯体92との間のクリアランススペースCS#1に複数の連設パネル1B0、1B1等が連設可能に設けられる。例えば、連設パネル1B0(1B1)には、図12に示すように、クリアランススペースCS#1の短手方向(Y方向とする)に沿ってクリアランススペースCS#1を跨るように、複数のパネル2ba等が以下に説明するように連設されて設置される。なお、図12では、3つのパネル2baを連設して連設パネル1B0として敷設する場合、又は、2つのパネル2baと一つのパネル2bbを連設して連設パネル1B1として敷設する場合の一例である。
図12に示すように、躯体91のX方向に沿ってパネル2baの3つ分の幅に相当する長さのパネル支持材3baが、同じ長さの支持受材4baに挿通された後に、床材21ba(床材21bb)をパネル支持材3baに載せる。パネル支持材3baに載せた床材21baにおいて、複数のパネルボルト挿通部22bにパネル支持ボルト23bを挿通させて、パネル支持ボルト23bをボルト挿通孔31bに締結させる。パネル支持ボルト23bは、例えば六角穴付き皿ボルトである。
さらに、免震構造側の躯体91に応じて設けられる係止材6bに支持受材4baが載置されて、支持受材4baに設けられた複数の長孔51b等に固定ボルト5bが挿通され、固定ボルト5bにより躯体91に固定される。固定ボルト5bは、例えばアンカーボルトおよび当該ボルトを固定するナット等である。以上のように、支持受材4baは免震構造側の躯体91に係止される。これにより、図12等に示すように、連設パネル1B0(1B1)を免震構造側の躯体91に連設して敷設することができる。
次に、図13等を参照しながら、パネル間の連結構造により、躯体間に生じる相対的な3次元の変位に対して追従性、および、パネル間の連結構造によりパネルでの大きな振幅を抑える又は緩和する機能等について説明する。ここで、図13は、図10に示すエキスパンションジョイント10Bのうちの連設パネル1B0の振動動作の例を示す斜視図である。
地震により、主に非免震構造側に揺れが生じるため、例えば図13に示すようなX方向の振動WVx、Y方向の振動WVy、Z方向の振動WVz1、振動WVz2、振動WVz3が生じる。これらの振動により、クリアランススペースCS#1に3次元的な変位が発生する。
図13に示すように、非免震構造側の躯体92のX方向の振動WVxによって、連設された複数のパネル2baがX方向に変位した場合、その変位に応じて、パネル支持材3baが載置されている支持受材4ba上を揺動又は摺動可能である。
また、図13に示すように、非免震構造側の躯体92のY方向の振動WVyによって、連設された複数のパネル2baがY方向に変位した場合、その変位に応じて、連設パネル1B0は非免震構造側の台座8b上を、前述した図7(a)または図7(b)に示すように、スライド移動可能である。
また、図13に示すように、非免震構造側の躯体92のZ方向の振動WVz1等によって、複数のパネル2baがZ方向に変位した場合、例えば一のパネル2baが振動WVz1、他のパネル2baが振動WVz2、さらに他の振動WVz3と振動した場合、免震構造側の躯体91では、複数のパネル2baは共通のパネル支持材3baに連設支持されているため、このようなZ方向の振動に対しては、連設パネル1B0全体としては振動を重ね合わせて、緩和することが可能である。
支持受材4baは、例えば図11(b)及び図12に示すように、上側係止支持材41baと、内側L字鋼材42baと、外側L字鋼材43baとから構成される。なお、躯体91に応じて(固定・設置方法等に応じて)、後述する第4の実施形態に示す支持受材4ca等の構成としてもよい。
上側係止支持材41baは、図12に示すように、X方向に沿って延びる箱型の形状であり、かつ、Z方向に沿った断面において、同じくパネル支持材3baの断面における略半円形状を囲い、上方側で略半円形状の突起部分を係止可能な開口部が設けられる形状である。
内側L字鋼材42baおよび外側L字鋼材43baは、図12に示すように、X方向に沿って上側係止支持材41baとほぼ同じ長さで形成されている。上側係止支持材41baは、内側L字鋼材42baと外側L字鋼材43baとの間により挟持されて、躯体91に係止された係止材6bに載置される。
この係止材6bに載置された支持受材4baは、内側L字鋼材42baと外側L字鋼材43baとが重ねられた状態で、複数の箇所の各々の長孔51bおよび長孔52b、係止材6bと同じ厚さの座板53bに固定ボルト5bが挿通され、固定ボルト5bにより躯体91に固定される。
パネル支持材3baは、X方向およびZ方向に摺動可能であり、かつ、過渡の変位に対しては支持受材4baの上側係止構造によりパネル支持材3baが規制される。また、パネル支持材3baの支持受材4baの設置面がR曲面をなしているため、当該振動を無理なく減衰させることができる。
図13に示すような振動・変位等によって、免震構造側の躯体91と非免震構造側の躯体92に跨り、免震構造側の躯体91で主に支持されるパネル2ba等には、震度の大きさによっては非常に大きな力が作用する恐れがあるものの、上記構造により一又は複数の連設パネル1B0にはパネル等に作用する力を緩和させたり、パネルを破損するような事態を回避させたりすることができる。
ここで、図14は、図11(a)に示す複数のパネルのV−V矢視線の断面図等である。図15(a)及び(b)は、図11(a)に示すジョイント部27bのVI線周辺図等であり、図15(c)及び(d)は、図11(a)に示すジョイント部28bのVII線周辺図である。
また、図16(a)は図11(a)に示す複数のパネルのVI線周辺の正面図であり、図16(b)は図16(a)に示すXI−XI矢視線の断面図であり、詳しくは図11(a)に示す干渉緩和パネル支持材3bcおよび干渉緩和支持受材4bcの構造を示す図である。図17は、図16に示す干渉緩和パネル支持材3bcおよび干渉緩和支持受材4bcの構造を示す斜視図である。図18は、図16(a)に示すXII−XII矢視線およびXIII−XIII矢視線の断面図である。なお、その他の図も、適宜参照しながら説明する。
従来の技術において、クリアランスの全周に、エキスパンションジョイントとしてパネル等が敷設およびそれらに関する設置工事が行われたとしても、クリアランススペースCS#1の長手方向に大きな変位・揺れが発生した場合に、所定の区画に敷き詰められた多数のパネル等には、大きな力が作用する。大きな地震の際の大きな力に耐えるような構造は、コスト面・材料面の制約も考慮すると困難である。
また、単に個々のパネルを固定し、単体のパネルでの変位を許容する構造では限界もある。さらに、このような従来の固定方法において、東日本大震災のような規模の地震の際に、数百kg程度の重量もあるパネルが数メートル以上吹き飛ぶような事例も報告されている。
そこで、本実施形態のエキスパンションジョイント10Bでは、大きな力が作用した場合でも、クリアランススペースCS#1の大きな変位に対応でき、パネルに係る力を解放又は緩和するためのパネルを特定の区画に設けて、多くのパネルを保護することができるパネル構造等を示す。例えば、後述する干渉緩和パネル2bc、区画端パネル2bd等が、パネルに係る力を解放又は緩和するための区画に設けられるパネルである。
干渉緩和パネル2bcは、図10及び図11等に示すように、クリアランススペースCS#1の特定の区画における連設パネル1B1と隣接する位置に設けられ、パネル間の干渉緩和する区間のパネルとして敷設される。特定の区画とは、例えばクリアランススペースCS#1のコーナ(図10に示すコーナパネル2beが敷設される区画)と隣接する区画(パネルの敷き詰められる区画)、エレベータホール等の壁寄りの区画である。
干渉緩和パネル2bcは、さらに、図11(a)に示すように、特定の区画に敷設される連設パネル1B1と干渉緩和パネル2bcとにおいて、クリアランススペースCS#1の長手方向に沿って隣接するパネル2bbとの一部と連結され、当該連結された状態で干渉緩和パネル2bcが水平方向から略垂直方向に至る回動を可能とするジョイント部27bを有する。また、干渉緩和パネル2bcと隣接するパネル2bbにおいても、ジョイント部28bの他方の一部を有する。
図15に示すように、干渉緩和パネル2bcと隣接するパネル2bbとのパネル間において、互いのパネルを接続するために、回動可能となるようにジョイント部27bおよび28bが設けられる。ここで、図15(a)及び(b)は、VI線周辺における干渉緩和パネル2bcの側面図、および、ジョイント部27bの正面図である。また、図15(c)及び(d)は、VII線周辺における干渉緩和パネル2bcの側面図、および、ジョイント部28bの断面図である。
ジョイント部27bおよび28bは、図15等に示すように、例えば干渉緩和パネル2bcと隣接するパネル2bbとの間において設けられる。
ジョイント部27bは、図15(a)及び(b)に示すように、パネル支持材3bbに設けられる第1係止部271bと、干渉緩和パネル支持材3bcに設けられる第2係止部272bと、第1係止部271bおよび第2係止部272bを接続する接続フック273bとから構成される。
第1係止部271bは、例えば2つの長い平板に長楕円孔が設けられ、干渉緩和パネル支持材3bcと対向するパネル支持材3bbの側面側(X方向に沿った側)に接続される。第2係止部272bは、例えば2つの長い平板に長楕円孔が設けられ、パネル支持材3bbと対向する干渉緩和パネル支持材3bcの側面側(X方向に沿った側)に接続される。
接続フック273bは、例えば楕円形状の平板で、平板に長楕円孔を有する。接続フック273bの長楕円孔には、第1係止部271bの長楕円孔を貫通するボルトと、第2係止部272bの長楕円孔を貫通するボルトとが貫通する。これにより、接続フック273bは、第1係止部271bと第2係止部272bとを回動可能に係止する。ジョイント部27bにおいて、接続フック273bにより係止状態を保持しながら回動可能であり、例えば図19及び図20に示すように、第1係止部271bと第2係止部272bとが上下方向に回動された状態となる。
ジョイント部28bは、図15(c)及び(d)に示すように、パネル2bbの傾斜板7bbに設けられる第1係止部281bと、干渉緩和パネル2bcの傾斜板7bcに設けられる第2係止部282bと、第1係止部281bおよび第2係止部282bを接続する接続フック283bとから構成される。
第1係止部281bは、傾斜板7bbにおいて、傾斜板7bcと対向して隣接する側に、例えば棒状の係止材として設けられる。また、第2係止部282bは、傾斜板7bcにおいて、傾斜板7bbと対向して隣接する側に、例えば棒状の係止材として設けられる。なお、傾斜板7bbは、パネル2bbにおいて、受枠24bbの非免震構造側の外端部にX方向に沿って蝶番71bbを介した構造で設けられる。また、傾斜板7bcは、受枠24bcの非免震構造側の外端部にX方向に沿って蝶番71bcを介した構造で設けられる。
接続フック283bは、例えば略楕円形状の平板で、2つの孔を有する。2つの孔は、第1係止部281bが貫通される孔と、第2係止部282bが貫通される孔である。これにより、接続フック283bは、第1係止部281bと第2係止部282bとを回動可能に係止する。
ジョイント部27bおよび28bは、好ましくは、干渉緩和パネル2bcと隣接するパネル2bbとにおいて、複数設けられる。例えば、図11(a)に示す例では、一組の干渉緩和パネル2bcと隣接するパネル2bbとにおいて、2箇所設けられている。
複数のパネル1B2には、さらに、干渉緩和パネル2bcのジョイント部27bおよび28bを設けていない側の他の隣接する区画に配設される区画端パネル2bdを含む。
干渉緩和パネル2bcは、図16等に示すように、少なくとも一つの干渉緩和床材21bcと、干渉緩和パネル支持材3bcと、干渉緩和支持受材4bcとを備えている。
干渉緩和パネル支持材3bcは、図18等に示すように、免震構造側の躯体91の干渉緩和床材21bcの端部において、複数の箇所にパネル支持ボルト23bにより干渉緩和床材21bcを挿通して、当該パネル支持ボルト23bと締結される。これにより、干渉緩和パネル支持材3bcは、少なくとも一つの干渉緩和床材21bcを支持する。干渉緩和パネル支持材3bcは、干渉緩和床材21bcの垂直(支持)方向に沿った接地面を有する部分の断面は略半円形状であり、干渉緩和床材21bcの下方側に摺動可能に設けられる。
例えば、干渉緩和支持受材4bcは、以下のような構成とされる混合支持受材である。干渉緩和支持受材4bcは、図16乃至図19に示すように、例えば区画端パネル2bdのパネル支持材3bdを上側方向に抜脱しないように載置させる形状とし、かつ、干渉緩和パネル2bcの干渉緩和パネル支持材3bcを上側方向に抜脱可能に載置させる形状とする混合支持受材である。
すなわち、干渉緩和支持受材4bcは、クリアランススペースCS#1の短手方向への干渉緩和パネル支持材3bcおよびパネル支持材3bdの移動を規制し、かつ、長手方向への干渉緩和パネル支持材3bcの移動を摺動可能に支持する。また、干渉緩和支持受材4bcは、クリアランススペースCS#1の短手方向へのパネル支持材3bdの移動を規制し、かつ、長手方向へのパネル支持材3bdの移動を摺動可能に支持する。
干渉緩和支持受材4bcは、少なくとも干渉緩和パネル支持材3bcを上側方向に抜脱可能として載置させる形状であり、クリアランススペースCS#1の長手方向に沿って、免震構造側の躯体91に設けられる。干渉緩和支持受材4bcは、免震構造側の躯体91に応じて設けられる係止材6bにより免震構造側の躯体91に係止される。
また、干渉緩和床材21bcおよび床材21bdは、非免震構造側の躯体92に各々の位置の台座8bに摺動可能に設置される。
例えば、傾斜板7bcは、図15(c)及び(d)に示すように、干渉緩和パネル2bcにおいて受枠24bcの非免震構造側の外端部にX方向に沿って蝶番71bcを介した構造で設けられる。傾斜板7bcは、変位なし状態のクリアランススペースCS#1において、台座8bの傾斜係止部81に係止される。
免震側と非免震側との間のクリアランス幅が変位した場合に、非免震構造の躯体92に載置された干渉緩和パネル2bcおよび区画端パネル2bdは、非免震構造の躯体92に設けられた台座8b上でスライドする。
以上のような干渉緩和パネル2bcおよび区画端パネル2bdの構成により、免震側と非免震側との間のクリアランススペースの短手方向(Y方向)におけるクリアランス幅が変位した場合に、クリアランス幅の変位において干渉緩和パネル2bcおよび区画端パネル2bdは非免震側の動きに追従することができる。
クリアランススペースCS#1の長手方向(X方向)に沿って隣接する干渉緩和パネル2bcの一方の端部側と区画端パネル2bdの他方の端部側とは、図14乃至図16に示すように、上面および底面とが高さ方向で一致するように上下方向に対して互いに対となる傾斜構造(互いの傾斜部分が向き合った場合に重なる構造)で形成される。
具体的には、図14(b)及び(c)に示すように、干渉緩和パネル2bcの一方の端部側の受枠24bcと、区画端パネル2bdの他方の端部側の受枠24bdとは、上下方向に対して互いに対となる傾斜構造で形成される。
さらに、図14(b)及び(c)に示す干渉緩和パネル2bcと区画端パネル2bdとの構造では、各々の傾斜構造を形成する空間部分に、補強が行われる。干渉緩和パネル2bcにおいて、例えば補強材25bc−3の隣接する空間には傾斜補強材251bcが用いられ、区画端パネル2bdにおいて、補強材25bd−4の隣接する空間には傾斜補強材251bdが用いられる。
図14(b)及び(c)に示すように、以上のような構造の干渉緩和パネル2bcには、例えば1組の中材シート26bcが収納され、区画端パネル2bdには、2組の中材シート26bdが収納される。
また、干渉緩和パネル支持材3bcの一方の端部側とパネル支持材3bdの他方の端部側とは、図14乃至図16に示すように、上部および底部とが高さ方向で一致するように上下方向に対して互いに対となる傾斜構造で形成される。
干渉緩和パネル支持材3bcを上側方向に抜脱可能として載置させる形状とは、上側開放支持材41bcのX方向に沿った断面が、図16乃至図18(a)に示すように、例えば上側に開口の四角形状であり、かつ、上側係止部分がない形状である。
また、上側係止支持材41bdは、X方向に沿った断面が、図16乃至図18(b)に示すように、例えば上側に開口の四角形状であり、かつ、上側係止部分がある形状である。これにより、上側係止支持材41bdは、上側方向にパネル支持材3bdを抜脱させずに載置させる形状である。
さらに、図16乃至図18に示すように、上側開放支持材41bcにおける上側係止部分なしの区間幅として、干渉緩和パネル支持材3bcのX方向の長さ(上部側を基準として)以上で、かつ、パネル支持材3bdのX方向の長さ(上部側を基準として)未満であれば、上側方向へ干渉緩和パネル支持材3bcは抜脱可能であるが、パネル支持材3bdを抜脱させることはない。なお、パネル支持材3baのX方向の長さについても同様である。
例えば、干渉緩和パネル2bcのみを抜脱させる構造とは、例えば干渉緩和パネル2bcおよび干渉緩和パネル支持材3bcのX方向の長さを30cm前後程度として、区画端パネル2bdおよびパネル支持材3bdのX方向の長さを60cm前後程度で製作する。また、パネル2ba、2bbおよびパネル支持材3baを同じく60cm前後程度で製作するなどである。そして、上側開放支持材41bcにおける上側係止部分なしの区間幅として、干渉緩和パネル支持材3bcを抜脱可能な30cm前後程度を設けるように製作する。
以上のような上側開放支持材41bcと上側係止支持材41bdとは、図17に示すように、連設された混合支持材(干渉緩和支持受材4bc)として製作してもよい。当該連接された混合支持材は、図18に示すように、内側L字鋼材42bcと外側L字鋼材43bcとの間により挟持されて、この内側L字鋼材42bcと外側L字鋼材43bcとが重ねられた状態で複数の固定ボルト5bにより躯体91に固定される。以上説明したような構成が、干渉緩和支持受材4bcの構成の一例である。
図19(a)〜(c)は、図16に示す干渉緩和パネル2bcの干渉緩和動作を示す図である。また、図20は、図19(c)に示すXIV−XIV矢視線の透視図である。
干渉緩和パネル2bcおよび区画端パネル2bdにおける前述したような傾斜構造において、図19(a)〜(c)に示すように、X方向に向けて、干渉緩和パネル2bcが区画端パネル2bdへの摺り上がり(スライド上昇とも称す)、または、干渉緩和パネル2bcが区画端パネル2bdからの摺り下がり(スライド下降とも称す)可能である。
パネルの当初設置状態においては、図19(a)に示すように、干渉緩和パネル2bcの一方の端部(図示の左側端部)側と区画端パネル2bdの他方の端部(図示の右側端部)側とは、上面および底面とが高さ方向で一致するように上下方向に対して互いに対となる傾斜構造で形成されている。
図19(a)の干渉緩和パネル2bcにX方向からの力が作用し、又は、区画端パネル2bdにX方向からの力が作用した場合に、図19(b)に示す干渉緩和支持受材4bcにおける上側係止部分がないことにより、干渉緩和パネル2bcをスライド上昇させることができる。これは、例えば、以下の動作による結果である。
パネル支持材3bdが、干渉緩和支持受材4bcのX方向沿って、図19(a)の図示右側へ摺動した場合に、区画端パネル2bdおよびパネル支持材3bdの右端部側(図示基準)と、干渉緩和パネル2bcおよび干渉緩和パネル支持材3bcの左端部側(図示基準)が互いに緩やかな傾斜構造をなしているため、図19(b)に示すように、区画端パネル2bdおよびパネル支持材3bdが、干渉緩和パネル2bcおよび干渉緩和パネル支持材3bcの下方側に潜り込む。
図19(b)に示すように、干渉緩和パネル支持材3bcがパネル支持材3bdを摺り上がることができるのは、上側開放支持材41bcにおいて上側係止部分なしの区間が設けられており、また、パネル2bbにより干渉緩和パネル2bcがジョイント部27bにより回動可能なように接続されているためである。
図19(c)に示す干渉緩和パネル2bcの状態は、さらに、X方向からの力がいずれかのパネルに作用して、この干渉緩和パネル2bcおよび干渉緩和パネル支持材3bcがスライド上昇して、区画端パネル2bdおよびパネル支持材3bdに載置した状態を示すものである。
図20は、図19(c)に示すXIV−XIV矢視線からみた透視図であり、干渉緩和パネル2bcが区画端パネル2bdに載置した状態を示すものである。
本実施形態のエキスパンションジョイント10Bによれば、地震による変位等でのパネルの飛び出しを抑えることができる。
干渉を緩和するパネル間の傾斜重ね構造およびパネル間でのジョイント構造により、地震の大きな揺れによる、特にクリアランスのコーナや、エレベータホール等の壁付近の区画に敷設されたパネルの飛び出し・激突等を防ぐことができる。
図21は、図11(a)に示すエキスパンションジョイント10Bの振動緩和動作例を示す説明図である。
干渉緩和パネル2bcを含む複数のパネル1B2が、図19(c)及び図20に示す状態で、図10、図11(a)に示すエキスパンションジョイント10BがどのようにクリアランススペースCS#1の長手方向(X方向)に沿っての振動に対して動作可能かを図21に示すパネル並びの模擬的な図で説明する。
ここで、図21(a)乃至(c)に示すパネル並びは、コーナ側の区画から中央よりの区画に到るまでのパネルを、免震構造側の正面から見た場合とする並びである。
図21(a)に示すように、複数のパネル1B2のうちの干渉緩和パネル2bcが区画端パネル2bdに載り上がり、その干渉緩和パネル2bc分のスペースsp#1が空くため、これにより、X方向に移動可能である。
例えば、図21(b)及び(c)に示すパネルの模擬的表示の並びで説明すると、複数のパネル1B2や、連設パネル1B1が、X方向に空いたスペースsp#1分に移動した状態となったり、また、スペースsp#2およびスペースsp#3のようなスペースが空くような状態等となったりする。
本実施形態のエキスパンションジョイント10Bにおいて、同じX方向に連設された複数のパネル1B2や連設パネル1B1、連設パネル1B0等のパネル支持材3ba、3bb等は、隣接する支持受材4ba、4bb等に、スライド可能に移動できる。
したがって、上述したようなスペースsp#1、sp#2、sp#3等ができることにより、非免震側の地震の揺れによる特定方向への力の作用に対しては複数のパネル1B2や連設パネル1B1、また、連設パネル1B0等をX方向に対して移動させることができるため、パネル等に係る力を緩和させたり、エネルギーを解放・減衰させたりすることができる。これにより、これらのパネル2ba、2bb等が破損したり、飛び出したりすることを防止することができる。
従来では、免震側においてパネルをある程度固定しているために、大きな地震の揺れに対して、非免震側との変位が大きい場合に、免震側におけるパネルの固定部分に大きな力が作用していた。このため、免震側におけるパネルの固定部分を破損させて、パネルが吹き飛ぶようなことが起きていた。
一方、本実施形態のエキスパンションジョイント10Bにおいて、連設パネル1B0、連設パネル1B1、複数のパネル1B2等の複数のパネル間の前述したようなパネル自体の動作やパネル間の連携動作により、パネルに作用する力が過渡にならないようにX方向、Y方向、Z方向に対しての変位を許容する。
以上説明したような連設パネル1B0、連設パネル1B1、複数のパネル1B2などのパネルは、例えばクリアランススペースCS#1のいずれかの区画におけるパネルに適用されてもよい。
このような区画におけるパネルは、少なくとも、クリアランススペースの長手方向に沿って棒状に延びて、床材の垂直方向に沿った断面は略半円形状であり、一又は複数の前記区画におけるパネルを支持するパネル支持材(3aa、3bb等)を備える。
また、クリアランススペースの短手方向へのパネル支持材の移動を規制し、かつ、クリアランススペースの長手方向へのパネル支持材の移動を摺動可能に支持しながらパネル支持材を上側方向に抜脱しないように載置させる形状である支持受材(4aa、4ab等)を備える。
そして、上記区画におけるパネルに隣接する区画の隣接するパネルにおいて、以下のようなパネルが適用されてもよい。
隣接する区画の隣接するパネルは、少なくとも、クリアランススペースの長手方向に沿って棒状に延びて、床材の垂直方向に沿った断面は略半円形状であり、隣接する区画における一又は複数のパネルを支持するパネル支持材(例えば干渉緩和パネル支持材3bc等)を備える。
また、クリアランススペースの短手方向へのパネル支持材の移動を規制し、かつ、クリアランススペースの長手方向へのパネル支持材の移動を摺動可能に支持しながらパネル支持材を上側方向に抜脱可能に載置させる形状である支持受材(例えば干渉緩和支持受材4bc)を備える。
好ましくは、以上のような区画におけるパネルと隣接する区画の隣接するパネルとの間には、隣接するパネルが上側方向に回動可能なジョイント構造を有するものがよい。ジョイント構造は、例えばジョイント部27bおよび28bのような構造だけでなく、パネルの床材や受枠間等にジョイント部を有するような構造であってもよい。
本実施形態のエキスパンションジョイント10Bによれば、地震による変位等でのパネルの飛び出しを抑えることができる。
また、大きな地震の際に、特にクリアランスのコーナや、エレベータホール等の壁付近の区画に敷設されたパネルの飛び出し・激突等を防ぐことができる。
好ましくは、鋼材としては、1時間耐火温度として、945℃以上の鋼材を用いる。床材として、例えばSUS(Steel Use Stainless:ステンレンス材質記号)309Sを用いる。SUS309Sはステンレス鋼材であり、耐熱鋼として優れた鋼種の一つである。また、耐食性、機械的性質が良好である。鋼材として、SUS309S、SUS310S等のCr、Niを多く含有する耐熱鋼等を用いる。
なお、耐熱性は、例えば、SUS304<SUS316<SUS309S<SUS310Sの順で高くなる。SUS310Sは、例えばCr25%・Ni20%程度の合金である。
本実施形態のエキスパンションジョイント10Bにおいて、パネル2ba、2bb等、パネル支持材3ba、3bb等、支持受材4ba、4bb等、係止材6bおよび台座8bにより、クリアランススペースCS#1等の上部を覆うことができる構造である。そのため、これらのクリアランススペース上部を覆う所定の部材に、耐熱性の高いSUS309S、SUS310S等を用いることにより、従来のエキスパンションジョイント等の下部に設けるような耐火帯を用いなくとも、耐火性を高めることができる。
以上説明したように、本発明のエキスパンションジョイントは、個々のパネルを単一のパネルとするのではなく、対振動性能、安全性等をパネル間の連設等の手段により、性能を向上させることができる。
<第3の実施形態のエキスパンションジョイントの特徴>
第3の実施形態のエキスパンションジョイントは、さらに、以下の特徴を有する。
(1)連設可能なパネル支持構造
・パネル支持構造において、棒状かつ断面が半円状であるため、接地面が滑らかであり、がたつきが少ない。従来のパネル支持構造では、接地面が少ない、例えば1枚のパネルに2箇所だけの場合には、車、人等が通過するたびに、躯体と接地点とのガタつきが起こり、騒音・振動等でうるさい。
・地震により大きな揺れの際に、躯体に設置したパネルが上下、左右、前後の振動を抑えることができる。
・地震の大きな揺れによるパネルの飛び出しを防ぐことができる。
(2)パネルの干渉緩和構造
クリアランススペースのコーナ部分や、例えばエレベータホール前周辺の壁に設置するパネルの飛び出しを防ぐことができる。クリアランススペースのコーナ部分等は、クリアランススペースの長手方向における開放端であり、振動が大きい。
・干渉緩和パネルおよびパネル間でのジョイント構造により、地震の大きな揺れによる、パネルの飛び出しを防ぐことができる。
・壁よりのパネルの壁への衝突、通路等の破損回避、特に、壁付近のパネルの壁面への激突等を防止することができる。
(3)安全性に優れる
例えば、東日本大震災では、数百kg程度のパネルが数十メートル吹き飛んだ例もある。すなわち、免震側と非免震側との間ではその振動・変位などがさらに大きくなるため、クリアランススペースを跨るエキスパンションジョイントに大きな振動・変位が生じる。
また、特に、免震構造周辺のクリアランススペースのコーナ部近辺に据付けられたパネル、クリアランススペースの長手方向端部側の建物の壁寄りの位置に据付けられたパネル等には、クリアランススペースの長手方向の端部であるため、より大きな振動・変位が生じる。
・上記のような課題に対して、本発明では、免震構造周辺のクリアランススペースのコーナ部近辺に据付けられたパネル、クリアランススペースの長手方向端部側の建物の壁寄りの位置に据付けられたパネル等が大きな地震の際に大きく飛び出すことを防ぐ構造である。
以上(1)〜(3)で説明したように、本発明のエキスパンションジョイントは、個々のパネルを単一のパネルとするのではなく、対振動性能、安全性等をパネル間の連設等の手段により、性能を向上させることができる。
以上説明したように、本実施形態のエキスパンションジョイントによれば、設置工事を容易に行うことでき、安全性および保守性に優れる。
[第4の実施形態]
本発明に係るエキスパンションジョイントの第4の実施形態の構成について、図22を用いて説明する。図22は、第4の実施形態のエキスパンションジョイント1C1の構成例を示す断面図(図5(a)のI−I矢視線の断面図に対応)である。
以下、図22を参照しながら、本実施形態のエキスパンションジョイント1C1の構成について、説明する。なお、第1の実施形態のエキスパンションジョイント1A1と同一の符号の構成要素については、重複説明を省略し、主に相違する点(支持受材4caおよび係止材6c)について説明する。
エキスパンションジョイント1C1は、図22に示すように、免震構造側の躯体91と非免震構造側の躯体92との間のクリアランススペースCS#1に設けられる。エキスパンションジョイント1C1は、パネル2caと、パネル支持材3caと、支持受材4caとを備えている。さらに、エキスパンションジョイント1C1において、係止材6cが免震構造側の躯体91に、台座8cが非免震構造側の躯体92に設置される。
(躯体91への設置方法について)
上側係止支持材41caは、内側L字鋼材42caと外側L字鋼材43caとの間により挟持されて、躯体91に係止された係止材6cに載置される。
係止材6cは、固定ボルト5cにより躯体91の側壁面側に固定される。係止材6cは、パネル2caの床材21cに締結されるパネル支持ボルト23cごとに対応して個々に用いられる。係止材6cは、躯体91の側面側の壁面に固定されるため、断面L型の板形状で、斜め状の補強材により補強される。固定ボルト5cは、例えばアンカーボルトおよび当該ボルトを固定するナット等である。
この係止材6cに載置された上側係止支持材41caは、図22に示すように、内側L字鋼材42acと外側L字鋼材43caとに重ねられた状態で、それらを貫通し、かつ係止材6cを貫通して固定する固定ボルト・ナット61cにより締結される。また、ボルト締結周辺の箇所等には、スポット溶接62c等を施して強度を高める。
以上のような躯体91への固定設置後、例えばパネル2caの周辺区間には、パネル周辺モルタル93が充填されて覆われる。このパネル周辺モルタル93と内側L字鋼材42caとの間には、補強材として、例えばシール材101等を用いる。
本実施形態のエキスパンションジョイント1C1では、パネル2caは、第1の実施形態のエキスパンションジョイント1A1のパネル2aaと同一の構成としたが、この他にも、第2の実施形態におけるパネル2ab、第3の実施形態におけるパネル2ba、2bb、2bc、2bd等の構成であってもよい。
以上説明したように、本実施形態のエキスパンションジョイントによれば、設置工事を容易に行うことができ、安全性および保守性に優れる。
[他の実施形態]
以上、本発明の実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。また、例えば各実施形態の特徴を組み合わせてもよい。さらに、これらの実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形には、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。