―第1の実施の形態―
図面を参照して、本発明によるホイール式油圧ショベルの一実施の形態を説明する。図1は、ホイール式油圧ショベルの外観を示す図である。図1に示すようにホイール式油圧ショベルは、走行体1と、走行体1の上部に旋回可能に搭載された旋回体2を有する。旋回体2には運転室3と、ブーム4a、アーム4b、およびバケット4cを有する作業用フロントアタッチメント4が設けられている。ブーム4aはブームシリンダ4dの駆動により起伏し、アーム4bはアームシリンダ4eの駆動により起伏し、バケット4cはバケットシリンダ4fの駆動によりクラウドまたはダンプする。走行体1には油圧駆動による走行モータ5(図2参照)が設けられ、走行モータ5の回転はプロペラシャフト、アクスルを介して車輪6(タイヤ)に伝達される。
ホイール式油圧ショベルは、走行体1の前後部にアウトリガ装置やブレード装置などの作業装置をオプションとして装着することができる。ユーザは、以下の4つのオプションを選択することができ、メーカは、選択されたオプションにしたがった付属アタッチメントを装着して出荷する。
オプション1:走行体の前部に左右一対のアウトリガ装置を装着する
オプション2:走行体の前部および後部のそれぞれに左右一対のアウトリガ装置を装着する
オプション3:走行体の前部に左右一対のアウトリガ装置を装着し、後部にブレード装置を装着する
オプション4:走行体の後部にブレード装置を装着する
以下の実施形態では、アウトリガ装置とブレード装置を装着したオプション3によるホイール式油圧ショベルについて説明する。図2は、ホイール式油圧ショベルに装着されたアウトリガ装置10およびブレード装置20を示す側面図である。なお、図2では、フロントアタッチメント4の図示を省略している。
アウトリガ装置10は、車両を支持する装置であり、走行体1の前部左右の車輪6の近傍に設けられている。図3は、アウトリガ装置10を示す正面拡大図である。図3に示すように、アウトリガ装置10は、油圧シリンダ(以下、アウトリガシリンダ11と記す)と、回動部10bと、接地部10cと、を備えている。回動部10bは、走行体1のフレームに設けられた支持部に、回動軸10aによって、回動可能に支持されている。アウトリガシリンダ11は、一端が走行体1のフレームに設けられた支持部に上下方向に揺動可能に挿着されている。アウトリガ装置10の先端部には、接地部10cが回動部10bに揺動可能に取り付けられている。
アウトリガシリンダ11は、一端が走行体1のフレームの支持部に回動可能に取り付けられ、他端が回動部10bに回動可能に取り付けられている。回動部10bは、アウトリガシリンダ11の伸縮により、回動軸10aを支点に回動する。アウトリガシリンダ11が伸長すると、接地部10cが接地して車両を地面から持ち上げる(ジャッキアップ)。なお、接地部10cは、回動部10bに揺動可能に取り付けられているので、地面の傾斜に追従しつつ接地する。アウトリガシリンダ11が収縮すると、車両を地面に降下させ(ジャッキダウン)、アウトリガ装置10が走行体1に格納される。
図2に示すように、走行体1の後部には、ブレード装置20が設けられている。ブレード装置20は、一対の油圧シリンダ(以下、ブレードシリンダ21(図4参照)と記す)とブレード本体20aと、を備えている。図示しないが、ブレードシリンダ21の一端は、走行体1のフレームに取り付けられ、ブレードシリンダ21の他端は、ブレード本体20aに取り付けられる。このため、ブレード本体20aは、ブレードシリンダ21の伸縮に伴って上下方向に移動する(昇降する)。
図4は、アウトリガ装置10およびブレード装置20の駆動システムの構成を示す油圧回路図である。図4に示すように、アウトリガシリンダ11(11L,11R)は、前部2輪に対応して2本設けられている。左側アウトリガシリンダ11Lは、前部左側の車輪6に対応して設けられ、右側アウトリガシリンダ11Rは、前部右側の車輪6に対応して設けられている。アウトリガシリンダ11L,11Rは、電磁切換弁17L,17Rによって、それぞれ制御される。ブレードシリンダ21は、電磁切換弁27によって制御される。なお、ブレード装置20は、ブレードシリンダ21を2本備えているが、2本同時に伸縮が制御されるため、図4では代表して一のブレードシリンダ21についてのみ図示している。
アウトリガシリンダ11L,11Rのロッド室12L,12Rには、オペレートチェック弁152L,152Rが接続され、アウトリガシリンダ11L,11Rのボトム室13L,13Rには、オペレートチェック弁153L,153Rが接続されている。ブレードシリンダ21のロッド室22には、オペレートチェック弁252が接続され、ブレードシリンダ21のボトム室23には、オペレートチェック弁253が接続されている。
オペレートチェック弁152L,153Lは、電磁切換弁17Lによって制御され、オペレートチェック弁152R,153Rは、電磁切換弁17Rによって制御される。オペレートチェック弁252,253は、電磁切換弁27によって制御される。
各オペレートチェック弁152L,152R,252は、パイロット圧が作用していない通常時には、対応するロッド室12L,12R,22からの油の流出を阻止する逆止弁としての機能を有している。各オペレートチェック弁152L,152R,252は、電磁切換弁17L,17R,27からのパイロット圧が作用することによって開放状態となり、対応するロッド室12L,12R,22からの油の流出を許容する。
各オペレートチェック弁153L,153R,253は、パイロット圧が作用していない通常時には、対応するボトム室13L,13R,23からの油の流出を阻止する逆止弁としての機能を有している。各オペレートチェック弁153L,153R,253は、電磁切換弁17L,17R,27からのパイロット圧が作用することによって開放状態となり、対応するボトム室13L,13R,23からの油の流出を許容する。
各オペレートチェック弁152L,152R,252は、共通の管路32に接続されるとともに、管路32を介して制御弁50の一方の出口ポート52に接続されている。各オペレートチェック弁153L,153R,253は、共通の管路33に接続されるとともに、管路33を介して制御弁50の他方の出口ポート53に接続されている。
制御弁50には、エンジン91により駆動される油圧ポンプ60から吐出される圧油が導入され、導入された圧油の流れを制御する。制御弁50が位置(B)に切り換えられると、油圧ポンプ60と各油圧シリンダ11L,11R,21のボトム室13L,13R,23とが各オペレートチェック弁153L,153R,253を介して接続され、各油圧シリンダ11L,11R,21のロッド室12L,12R,22とタンク90とが各オペレートチェック弁152L,152R,252を介して接続される。これにより、各オペレートチェック弁152L,153L,152R,153R,252,253が開放状態にあれば、油圧ポンプ60から吐出される圧油が各油圧シリンダ11L,11R,21のボトム室13L,13R,23に導入され、油圧シリンダ11L,11R,21が伸長動作する。
制御弁50が位置(R)に切り換えられると、油圧ポンプ60と各油圧シリンダ11L,11R,21のロッド室12L,12R,22とが各オペレートチェック弁152L,152R,252を介して接続され、各油圧シリンダ11L,11R,21のボトム室13L,13R,23とタンク90とが各オペレートチェック弁153L,153R,253を介して接続される。これにより、各オペレートチェック弁152L,153L,152R,153R,252,253が開放状態にあれば、油圧ポンプ60から吐出される圧油が各油圧シリンダ11L,11R,21のロッド室12L,12R,22に導入され、油圧シリンダ11L,11R,21が収縮動作する。
油圧ポンプ60から吐出される圧油は、管路34を介して、電磁切換弁17L,17R,27に送給され、適宜、電磁切換弁17L,17R,27からパイロット圧油として、オペレートチェック弁152L,153L,152R,153R,252,253に送給される。
上述したように、電磁切換弁17L,17R,27が開位置(k)に切り換えられ、パイロット圧がオペレートチェック弁152L,153L,152R,153R,252,253に作用すると、オペレートチェック弁152L,153L,152R,153R,252,253が開放され、各油圧シリンダ11L,11R,21は圧油による伸縮動作が可能となる。一方、電磁切換弁17L,17R,27が閉位置(j)に切り換えられると、オペレートチェック弁152L,153L,152R,153R,252,253は逆止弁として機能する。このとき、各油圧シリンダ11L,11R,21に圧油が導かれたとしても、ボトム室13L,13R,23またはロッド室12L,12R,22から圧油が流出できないため、各油圧シリンダ11L,11R,21の伸縮が阻止(禁止)される。
電磁切換弁17L,17R,27および制御弁50のソレノイドはコントローラ200に接続されており、コントローラ200からの制御電流(励磁電流)によって電磁切換弁17L,17R,27および制御弁50が制御される。
コントローラ200は、CPUや記憶装置であるROMおよびRAM、その他の周辺回路などを有する演算処理装置を含んで構成され、油圧ショベルの各部の制御を行っている。コントローラ200には、表示装置141と、ブレーキスイッチ142と、キー入力装置143と、車速センサ144と、操作装置145と、キースイッチ146と、カーソルスイッチ147と、が接続されている。
操作装置145は、アウトリガ装置10およびブレード装置20の昇降操作のための操作レバー145aと、操作レバー145aの操作量に応じた操作信号を出力する信号出力部145bと、を有している。操作装置145の操作レバー145aが一の方向に操作されると、信号出力部145bが操作量に応じた速度でアウトリガシリンダ11および/またはブレードシリンダ21を伸長させる操作信号をコントローラ200に出力する。操作装置145の操作レバー145aが上記一の方向とは逆の他の方向に操作されると、信号出力部145bが操作量に応じた速度でアウトリガシリンダ11および/またはブレードシリンダ21を収縮させる操作信号をコントローラ200に出力する。
車速センサ144は、油圧ショベルの走行速度を表す情報(たとえば、走行モータの回転速度)に関する信号をコントローラ200に出力する。コントローラ200は、車速センサ144で検出された情報に基づき、車両の走行速度(車速)を演算する。
図5は、運転室3の内部を示す平面図である。図5に示すように、運転室3の内部には、オペレータが着座する運転席131が設けられている。運転席131の前方には、アクセルペダルやブレーキペダル134が配設されている。ブレーキペダル134が踏み込み操作されると、踏み込み量に応じて、周知の油圧フットブレーキ(サービスブレーキ)が作動する。サービスブレーキは、後述するブレーキスイッチ142が作業位置(S)に操作された場合、コントローラ200から出力される制御信号により、作業ブレーキとして作動する。
運転席131の左側には、アーム4bおよび旋回体2の操作を行うための左操作レバーが配設され、運転席131の右側には、ブーム4aおよびバケット4cの操作を行うための右操作レバーが配設されている。
運転室内におけるオペレータの右前方には液晶ディスプレイ等の表示装置141が配設されている。表示装置141は、コントローラ200から出力される表示制御信号に基づいて、表示画像を表示画面141dに表示させる。
図6は、表示装置141の表示画面141dに表示される、走行状態を表す表示画像40の一例を示す図である。表示画面141dには、車両の状態を示す画像が表示される。図6では、後述する走行モードが設定されているときに、表示画面141dに表示される表示画像40を示している。図6に示すように、走行モードが設定されているとき、表示画面141dには、走行する油圧ショベルの車速を表す速度計41と、エンジン冷却水の温度を表す冷却水温計42と、燃料の残量を表す燃料残量計43と、を含む走行状態を表す表示画像40が表示されている。表示画像40は、表示画面141dにおける矩形状の表示領域40Aの内側に表示される。
図7は、ブレーキスイッチ142を説明する図である。図7(a)に示すように、運転室3に着座するオペレータの正面(前方)には、油圧ショベルを操舵するためのステアリングホイール133が設けられている。ステアリングホイール133の下方に配置されるステアリングコラムの側部には、ブレーキスイッチ142が設けられている。
図7(b)に示すように、ブレーキスイッチ142は、ダイヤル式の切換スイッチであり、ブレーキオフ位置(OFF)と、アクスルロック位置(A)と、パーキング位置(P)と、作業位置(S)のいずれかを選択できるように構成されている。ブレーキスイッチ142は、操作位置を表す操作信号をコントローラ200に出力する。
図8は、ブレーキスイッチ142の操作位置と、作業ブレーキ、パーキングブレーキ、アクスルロックの作動/解除状態の対応関係を示す図である。コントローラ200は、ブレーキスイッチ142の操作位置に基づいて、油圧ショベルが走行状態にあるのか、あるいは作業状態にあるのかを判定し、モードを設定するモード設定部201(図4参照)を機能的に有している。
図8に示すように、ブレーキスイッチ142がオフ位置(OFF)に操作されると、モード設定部201は、油圧ショベルが走行状態にあると判定し、走行モードを設定する。走行モードに設定されると、作業ブレーキが解除され、パーキングブレーキが解除され、アクスルロックが解除される。なお、ブレーキペダル134が踏み込み操作されたときには、作業ブレーキをサービスブレーキとして作動させることができる。
ブレーキスイッチ142がアクスルロック位置(A)に操作されると、モード設定部201は、油圧ショベルが第1の作業状態にあると判定し、アクスルロックモードに設定する。アクスルロックモードに設定されると、作業ブレーキが解除され、パーキングブレーキが解除され、アクスルロックが作動される。なお、ブレーキペダル134が踏み込み操作されたときには、作業ブレーキをサービスブレーキとして作動させることができる。
ブレーキスイッチ142がパーキング位置(P)に操作されると、モード設定部201は、油圧ショベルが第2の作業状態にあると判定し、パーキングモードに設定する。パーキングモードが設定されると、作業ブレーキが解除され、パーキングブレーキが作動され、アクスルロックが作動される。
ブレーキスイッチ142が作業位置(S)に操作されると、モード設定部201は、油圧ショベルが第3の作業状態にあると判定し、作業モードに設定する。作業モードが設定されると、作業ブレーキが作動され、パーキングブレーキが解除され、アクスルロックが作動される。
作業ブレーキは、上述したように、ブレーキペダル134の操作量に応じた減速力を及ぼす周知のサービスブレーキである。図9は、サービスブレーキ(作業ブレーキ)について説明する油圧回路図である。図9に示すように、サービスブレーキ駆動用の油圧回路は、エンジン(不図示)によって駆動されて圧油を生成するパイロットポンプ82と、ブレーキペダル134の踏み込みに応じてパイロット2次圧力(ブレーキ作動圧)を発生するブレーキバルブ64を有する。ブレーキペダル134の操作により、ブレーキバルブ64からのブレーキ作動圧がそれぞれ前輪用の油圧ブレーキ装置65および後輪用の油圧ブレーキ装置66に作用する。これにより、ブレーキペダル134の操作に応じて油圧ブレーキ装置65,66が作動し、油圧ブレーキ装置65,66を走行時にサービスブレーキとして用いることができる。
ブレーキバルブ64には、電磁切換弁67を介して油圧源62が接続されている。電磁切換弁67はコントローラ200から出力される制御信号により切り換わる。電磁切換弁67が位置(e)に切り換わると、油圧源62からのパイロット圧がブレーキバルブ64に作用する。これによりブレーキバルブ64が駆動され、パイロットポンプ82から吐出される圧油が油圧ブレーキ装置65,66に作用する。
このため、ブレーキペダル134を操作しなくても油圧ブレーキ装置65,66を作動でき、油圧ブレーキ装置65,66を作業時に作業ブレーキとして用いることができる。すなわち、本実施の形態の油圧ショベルでは、パイロットポンプ82から吐出される圧油によって油圧ブレーキ装置65,66を油圧ロックして油圧ブレーキ装置65,66を継続して動作させることで、油圧ブレーキ装置65,66を作業ブレーキとして用いる。一方、電磁切換弁67が位置(f)に切り換わると、油圧源62からブレーキバルブ64へのパイロット圧の作用が停止する。この状態では、作業ブレーキが解除され、ブレーキペダル134の操作によって、油圧ブレーキ装置65,66により制動力を発生させることができる。
コントローラ200は、作業モードが設定されると、電磁切換弁67にオン信号を出力し、ソレノイドを励磁させて位置(e)に切り換え、作業ブレーキを作動させる。コントローラ200は、走行モード、アクスルロックモードおよびパーキングブレーキモードのいずれかが設定されると、電磁切換弁67にオフ信号を出力し、ソレノイドを消磁させて位置(f)に切り換え、作業ブレーキを解除させる。
アクスルロックについて説明する。図10は、アクスルロックについて説明する図である。なお、前輪側のアクスルロックおよび後輪側のアクスルロックの構成は同様であるので、一方を代表して説明する。アクスルロックは、アクスルの揺動を制限する装置である。ホイール式油圧ショベルはラフロードを走行する場合が多いので、アクスルロックの制限を解除することで、振動を吸収、緩衝して、乗り心地を向上できる。なお、掘削作業などの作業時にはアクスルロックを作動させ、アクスルが揺動しないように規制する。図10に示すように、走行体1の一部を構成するアクスルハウジング72は、左右の車輪6間に設けられた筒状体として形成されている。アクスルハウジング72の軸方向中間部には、差動機構77が収容される大径のボックス部72Aが設けられている。
アクスルハウジング72は、ボックス部72Aの上部側が車両の前後に延在する支持軸73等を介して走行体1のフレーム1fの下面側に揺動可能に連結されている。これにより、アクスルハウジング72は、左右の車輪6と一体的に支持軸73を中心にして上下方向(図10中の矢示A方向)に揺動する。なお、揺動に合わせて、後述するラムシリンダ78が伸縮動作する。
アクスルハウジング72の内部には、左右の車軸74が軸受(不図示)等を介して回転可能に配設されている。各車軸74の先端側(軸方向外側の部位)には、左右の車輪6が一体回転するように取り付けられている。車軸74の基端側(軸方向内側の部位)は、差動機構77に連結され、これにより左右の車軸74は、互いに異なる回転数で回転駆動可能とされている。
差動機構77は、所謂デファレンシャルギヤを用いて構成され、走行モータ5からの回転駆動力を車輪6に伝える。フレーム1fとアクスルハウジング72との間には、左右一対のラムシリンダ78が設けられている。各ラムシリンダ78は、油圧シリンダにより構成され、一側(チューブ側)がフレーム1fの左右両側に固定して取り付けられ、他側(ロッド78A側)がアクスルハウジング72を押し付けるように、アクスルハウジング72に当接されている。
左右のラムシリンダ78は、ロッド78Aが伸縮動作することにより、アクスルハウジング72が左右の車輪6とともに支持軸73を中心にして図10中の矢示A方向に揺動することを許容する。ラムシリンダ78は、このときに発生する油液の流動抵抗等を利用してフレーム1f側の振動を吸収、緩衝する。
各ラムシリンダ78をタンク90に接続する管路81の途中には、パイロット式のチェック弁79が設けられている。各チェック弁79は、通常は閉弁状態を保持することにより、ラムシリンダ78を油圧ロックしてロッド78Aの伸縮を規制する。一方、パイロットポンプ82からパイロット圧が供給されると、各チェック弁79は開弁される。各チェック弁79が開弁された状態では、各ラムシリンダ78がタンク90に連通して伸縮可能な状態となり、アクスルハウジング72が図10中の矢示A方向に揺動することが許容される。
タンク90、パイロットポンプ82と各チェック弁79との間には、電磁切換弁83が設けられている。電磁切換弁83は、コントローラ200から制御信号が出力されることにより、ロック位置(a)とロック解除位置(b)のいずれかに選択的に切り換えられる。電磁切換弁83がロック位置(a)に切り換えられているときには、パイロットポンプ82が各チェック弁79に対して遮断され、ラムシリンダ78からの油の流出が逆止弁として機能するチェック弁79によって阻止される。これにより、ラムシリンダ78は、伸縮動作が規制(禁止)されたロック状態に保持される。
一方、電磁切換弁83がロック解除位置(b)に切り換えられているときには、パイロットポンプ82からのパイロット圧が各チェック弁79に供給され、これらのチェック弁79は開弁状態に保持される。これにより左右のラムシリンダ78は、管路81を介して互いに連通するとともに、タンク90に対しても連通される。このため、それぞれのラムシリンダ78はロッド78Aの伸縮動作を許すロック解除状態となる。このロック解除状態では、アクスルハウジング72が支持軸73を中心として上下に揺動できる。
コントローラ200は、アクスルロックモード、パーキングモードおよび作業モードのいずれかが設定されると、電磁切換弁83にオフ信号を出力し、ソレノイドを消磁させて位置(a)に切り換え、アクスルロックを作動させる。コントローラ200は、走行モードが設定されると、電磁切換弁83にオン信号を出力し、ソレノイドを励磁させて位置(b)に切り換え、アクスルロックを解除させる。
図9に示すように、走行モータ5の回転はトランスミッション58によって変速され、プロペラシャフト55、アクスル51を介して車輪6に伝達され、ホイール式油圧ショベルが走行する。トランスミッション58はサンギア、プラネタリギア、リングギアからなる遊星減速機構と、そのサンギア側およびリングギア側にそれぞれ設けられたクラッチ58a,58bとを有する周知のものである。すなわち図示は省略するが、クラッチ58a,58bは、それぞればねを内蔵したクラッチ用シリンダを有し、ばねの付勢力によりクラッチ用シリンダがディスクに押圧されることで、クラッチ58a,58bは係合状態とされる。また、ばね力に抗して作用する油圧源62からの油圧力によりクラッチ用シリンダの押圧力が除去されることで、クラッチ58a,58bは解放状態とされる。クラッチ58a,58bに作用する油圧力は、電磁切換弁54の駆動によって制御される。なお、ばねの付勢力によって係合状態とされ、油圧力によって解放状態とされるようなクラッチをネガティブ型のクラッチと呼ぶ。
電磁切換弁54はコントローラ200からの制御信号によって切り換わる。電磁切換弁54が位置(g)に切り換わると、油圧源62から吐出される圧油が管路24を介してクラッチ58aに作用する。このとき、クラッチ58bはタンク90に連通される。これによりクラッチ58aが解放、クラッチ58bが係合状態とされ、トランスミッション58は所定の変速比R1(ローギア)となり、低速高トルクの1速走行が可能となる。電磁切換弁54が位置(h)に切り換わると、油圧源62から吐出される圧油が管路25を介してクラッチ58bに作用する。このとき、クラッチ58aはタンク90に連通される。これによりクラッチ58bが解放、クラッチ58aが係合状態とされ、トランスミッション58は所定の変速比R2(ハイギア)となり、高速低トルクの2速走行が可能となる。なお、変速比R1は変速比R2よりも大きい。
一方、電磁切換弁54が位置(i)に切り換わると、クラッチ58a,58bは管路24,25を介してタンク90に連通される。この場合、クラッチ58a,58bはばね力によって係合状態とされるため、トランスミッション58がロックされてプロペラシャフト55の回転が阻止される。本実施の形態では、このプロペラシャフト55の回転を阻止させるクラッチ58a,58bをパーキングブレーキ(駐車ブレーキ)として用いる。パーキングブレーキを解除する場合は、一方のクラッチ58aまたはクラッチ58bに圧油(ブレーキ解除圧)を作用させ、クラッチ58aまたはクラッチ58bを解放状態とする。なお、ばねの付勢力によって作動し、油圧力によって解除されるようなブレーキをネガティブ型のパーキングブレーキ(駐車ブレーキ)と呼ぶ。
コントローラ200は、パーキングモードが設定されると、電磁切換弁54に制御信号(励磁電流)を出力し、ソレノイドを励磁させて位置(i)に切り換え、パーキングブレーキを作動させる。コントローラ200は、走行モード、アクスルロックモードおよび作業モードのいずれかが設定されると、図示しない変速スイッチからの操作信号に基づいて、電磁切換弁54に制御信号を出力し、電磁切換弁54を位置(h)または位置(g)に切り換え、パーキングブレーキを解除させる。
本実施の形態に係る油圧ショベルは、盗難防止装置を備えている。図4に示すように、盗難防止装置は、キー入力装置143と、コントローラ200と、スタータ制御リレー148bと、を含んで構成される。図11は、コンソールパネル140を示す図である。図11に示すように、運転室内に配設されるコンソールパネル140には、キー入力装置143、キースイッチ146、およびカーソルスイッチ147などが配置されている。
カーソルスイッチ147は、ドーナツ状の外側操作部147aと、円形状の内側操作部147bと、を有している。外側操作部147aは、たとえば、表示装置141に表示される複数の項目のいずれかを選択するためのカーソル画像の位置を移動させる操作部であり、内側操作部147bは、選択状態にある項目を確定させる操作部である。
キースイッチ146は、オペレータが所持する操作キーがキーシリンダに挿入された状態で回転操作されることで、操作位置が切り換えられる操作部材である。キースイッチ146は、操作位置として、OFF位置と、ACC位置と、ON位置と、起動位置(START位置)を有している。キースイッチ146がOFF位置に操作されると、電気系統がOFF状態となり、エンジン91が停止される。キースイッチ146がON位置に操作されると、電気系統がON状態となる。
図4に示すように、キースイッチ146が、起動位置(START位置)に操作されると、操作信号がキースイッチスタートリレー148aに出力され、キースイッチスタートリレー148aの接点が閉じ状態となる。このとき、スタータ制御リレー148bの接点が閉じ状態となっていれば、配線L1,L2,L3等を介し、バッテリ149からスタータ92に電力が供給され、エンジン91が起動される。
図11に示すように、キー入力装置143は、ケース内に配設された基板に、暗証番号を入力する0〜9までの数値入力用のテンキー143aが実装されている。なお、図示しないが、キー入力装置143に、暗証番号の設定および変更を指示する設定キーや入力した暗証番号の取消等を指示する取消キーや、油圧ショベルのロック状態および解除状態をそれぞれ表示する施錠表示灯や開錠表示灯を基板に実装してもよい。
図4に示すように、コントローラ200は、ロック解除制御部204を機能的に有している。ロック解除制御部204は、走行モードが設定されている場合、すなわち油圧ショベルが走行状態にある場合、キー入力装置143のテンキー143aによって入力される番号(たとえば複数桁の番号)と、予めコントローラ200の記憶装置に記憶されている暗証番号(たとえば複数桁の番号)とが一致しているか否かを判定する。暗証番号が一致していると判定された場合、ロック解除制御部204は、スタータ制御リレー148bの接点を閉じ状態とするための制御信号をスタータ制御リレー148bに出力してエンジン91の始動を許可する状態とする(始動ロック解除)。
暗証番号が一致していないと判定された場合、ロック解除制御部204は、スタータ制御リレー148bの接点を開き状態とするための制御信号をスタータ制御リレー148bに出力してエンジン91の始動を禁止する状態とする(始動ロック作動)。始動ロックが作動されている場合、すなわちスタータ制御リレー148bの接点が開き状態の場合、キースイッチ146を起動位置(START位置)に操作したとしてもエンジン91は始動されない。
コントローラ200は、有効/無効設定部203を機能的に有している。有効/無効設定部203は、走行モード以外のモード(アスクルロックモード、パーキングモードおよび作業モードのいずれか)が設定されている場合、すなわち油圧ショベルが作業状態にある場合、キー入力装置143のテンキー143aに対する操作に基づいて、操作装置145から出力される操作信号を有効にするか、あるいは無効にするかを、作業装置(左前のアウトリガ装置10、右前のアウトリガ装置10およびブレード装置20)ごとに設定する。
たとえば、キー入力装置143が操作され、左右のアウトリガ装置10に対する操作が有効とされ、ブレード装置20に対する操作が無効とされた状態で操作装置145が一の方向に操作されると、左右のアウトリガシリンダ11L,11Rは伸長駆動されるが、ブレードシリンダ21は駆動されない。キー入力装置143が操作され、左右のアウトリガ装置10およびブレード装置20に対する操作が有効とされた状態で操作装置145が一の方向に操作されると、左右のアウトリガシリンダ11L,11Rおよびブレードシリンダ21が、伸長駆動される。
有効/無効設定部203は、キー入力装置143の「1」のテンキー143aが押されると、キー入力装置143から「1」が押されたことを表す入力信号が、車両の左前のアウトリガ装置10に対する操作の有効と無効とを切り換える切換信号としてコントローラ200に出力される。以下、操作装置145の作業装置に対する操作が有効とされる状態を「有効状態」と記し、操作装置145の作業装置に対する操作が無効とされる状態を「無効状態」と記す。
有効/無効設定部203は、左前のアウトリガ装置10が有効状態であるときに、「1」のテンキー143aから切換信号が入力されると、左前のアウトリガ装置10を無効状態に切り換える制御を実行する。この制御では、コントローラ200から電磁切換弁17Lにオフ信号が出力され、ソレノイドが消磁され、電磁切換弁17Lが閉位置(j)に切り換えられる。有効/無効設定部203は、左前のアウトリガ装置10が無効状態であるときに、「1」のテンキー143aから切換信号が入力されると、左前のアウトリガ装置10を有効状態に切り換える制御を実行する。この制御では、コントローラ200から電磁切換弁17Lにオン信号が出力され、ソレノイドが励磁され、電磁切換弁17Lが開位置(k)に切り換えられる。
有効/無効設定部203は、キー入力装置143の「2」のテンキー143aが押されると、キー入力装置143から「2」が押されたことを表す入力信号が、車両の右前のアウトリガ装置10に対する操作の有効と無効とを切り換える切換信号としてコントローラ200に出力される。有効/無効設定部203は、右前のアウトリガ装置10が有効状態であるときに、「2」のテンキー143aから切換信号が入力されると、右前のアウトリガ装置10を無効状態に切り換える制御を実行する。この制御では、コントローラ200から電磁切換弁17Rにオフ信号が出力され、ソレノイドが消磁され、電磁切換弁17Rが閉位置(j)に切り換えられる。有効/無効設定部203は、右前のアウトリガ装置10が無効状態であるときに、「2」のテンキー143aから切換信号が入力されると、右前のアウトリガ装置10を有効状態に切り換える制御を実行する。この制御では、コントローラ200から電磁切換弁17Rにオン信号が出力され、ソレノイドが励磁され、電磁切換弁17Rが開位置(k)に切り換えられる。
有効/無効設定部203は、キー入力装置143の「3」のテンキー143aが押されると、キー入力装置143から「3」が押されたことを表す入力信号が、車両の後部のブレード装置20に対する操作の有効と無効とを切り換える切換信号としてコントローラ200に出力される。有効/無効設定部203は、ブレード装置20が有効状態であるときに、「3」のテンキー143aから切換信号が入力されると、ブレード装置20を無効状態に切り換える制御を実行する。この制御では、コントローラ200から電磁切換弁27にオフ信号が出力され、ソレノイドが消磁され、電磁切換弁27が閉位置(j)に切り換えられる。有効/無効設定部203は、ブレード装置20が無効状態であるときに、「3」のテンキー143aから切換信号が入力されると、ブレード装置20を有効状態に切り換える制御を実行する。この制御では、コントローラ200から電磁切換弁27にオン信号が出力され、ソレノイドが励磁され、電磁切換弁27が開位置(k)に切り換えられる。
コントローラ200は、表示装置141の表示画面141dに表示される表示画像を制御する表示制御部202を機能的に有している。図12(a)は、表示装置141の表示画面141dに表示される、作業装置(アウトリガ装置10およびブレード装置20)に対する操作の有効/無効の状態を表す表示画像の一例を示す図である。
図6に示したように、表示制御部202は、走行モードが設定されている走行状態では、表示装置141に表示制御信号を出力し、走行状態を表す表示画像40(41,42,43)を表示装置141の表示画面141dの表示領域40Aに表示させる。
これに対して、図12(a)に示すように、表示制御部202は、走行モード以外のモード(アスクルロックモード、パーキングモードおよび作業モードのいずれか)が設定されている作業状態では、表示装置141に表示制御信号を出力し、操作装置145の作業装置(10,20)に対する操作が有効にされる有効状態であるのか、または、操作装置145の作業装置(10,20)に対する操作が無効にされる無効状態であるのかを表す表示画像210を表示装置141の表示画面141dに表示させる。
なお、表示制御部202は、上述したように、油圧ショベルが走行状態にある場合、表示装置141の表示画面141dにおいて予め定められた表示領域40A(図6参照)内に表示画像40を表示させる。一方、表示制御部202は、油圧ショベルが作業状態にある場合、図12(a)に示すように、表示画像210の少なくとも一部が表示領域40Aに含まれるように、表示画像210を表示させる。表示画像40と、表示画像210の表示領域を重複させることで、表示画面141dを有効利用できる。
表示制御部202は、左前(または右前)のアウトリガ装置10が有効状態にあるときには、左前(または右前)のアウトリガ装置10を表す表示画像211a(または表示画像211b)を緑色で表示させる制御信号を表示装置141に出力する。コントローラ200は、左前(または右前)のアウトリガ装置10が無効状態にあるときには、左前(または右前)のアウトリガ装置10を表す表示画像211a(または表示画像211b)を白色で表示させる制御信号を表示装置141に出力する。
表示制御部202は、ブレード装置20が有効状態にあるときには、ブレード装置20を表す表示画像215を緑色で表示させる制御信号を表示装置141に出力する。表示制御部202は、ブレード装置20が無効状態にあるときには、ブレード装置20を表す表示画像215を白色で表示させる制御信号を表示装置141に出力する。
図13(a)は、表示装置141の画面切換制御の処理内容を示すフローチャートである。このフローチャートに示す処理は、たとえば、キースイッチ146がON位置に操作されることにより開始され、図示しない初期設定が行われた後、繰り返し実行される。
ステップS110において、コントローラ200は、走行モードが設定されているか否かを判定する。ステップS110で肯定判定されるとステップS120へ進み、ステップS110で否定判定されるとステップS130へ進む。
ステップS120において、コントローラ200は、表示装置141に走行状態を表す表示画像40(図6参照)を表示させ、ステップS140へ進む。ステップS140において、コントローラ200は、キー入力装置143からの信号に基づいてロック解除制御処理を実行し、図13(a)のフローチャートに示す処理を終了する。
ステップS130において、コントローラ200は、表示装置141に作業装置(10,20)の有効/無効状態を表す表示画像210を表示させ、ステップS150へ進む。ステップS150において、コントローラ200は、キー入力装置143からの信号に基づいて作業装置(10,20)の有効/無効状態を設定する処理を実行し、図13(a)のフローチャートに示す処理を終了する。
図13(b)は、ロック解除制御処理(ステップS140)の内容を示すフローチャートである。ロック解除制御処理では、ステップS141において、コントローラ200は、キー入力装置143のテンキー143aにより入力された暗証番号が、コントローラ200の記憶装置に予め記憶された暗証番号と一致しているか否かを判定する。ステップS141で肯定判定されるとステップS145へ進み、ステップS141で否定判定されるとステップS147へ進む。
ステップS145において、コントローラ200は、スタータ制御リレー148bに制御信号(閉)を出力し(始動ロック解除)、図13(b)のフローチャートに示す処理を終了する。ステップS147において、コントローラ200は、スタータ制御リレー148bに制御信号(開)を出力し(始動ロック作動)、図13(b)のフローチャートに示す処理を終了する。
上述した実施の形態によれば、次の作用効果が得られる。
(1)ホイール式油圧ショベルは、暗証番号を入力するキー入力装置143、作業装置であるアウトリガ装置10およびブレード装置20を操作する操作装置145、および表示画像を表示画面141dに表示する表示装置141を備えている。コントローラ200は、油圧ショベルが走行状態および作業状態のいずれの状態にあるかを判定する。コントローラ200は、ブレーキスイッチ142がブレーキオフ位置(OFF)に操作されている場合には、油圧ショベルが走行状態にあると判定し、走行モードを設定する。コントローラ200は、ブレーキスイッチ142がブレーキオフ位置以外の操作位置(A,P,S)に操作されている場合には、油圧ショベルが作業状態にあると判定し、操作位置に応じた走行モード以外のモード(アクスルロックモード、パーキングモード、作業モード)に設定する。
コントローラ200は、油圧ショベルが作業状態にある場合に、キー入力装置143からの信号が入力されたとき、キー入力装置143からの信号に基づいて、操作装置145の作業装置(10,20)に対する操作を有効にする有効状態、および操作装置145の作業装置(10,20)に対する操作を無効にする無効状態のいずれかに切り換える第1制御(図13(a)のステップS150)を実行する。換言すれば、キー入力装置143は、走行モード以外のモードのときに操作されると、操作装置145の作業装置(10,20)に対する操作を有効にするか、あるいは無効にする切換指示信号をコントローラ200に出力する。
コントローラ200は、油圧ショベルが走行状態にある場合に、キー入力装置143からの信号が入力されたとき、上記第1制御とは異なる第2制御(図13(a)のステップS140)を実行する。換言すれば、キー入力装置143は、走行モードのときに操作されると、上記切換指示信号とは異なる指示信号をコントローラ200に出力する。
これにより、操作装置145の作業装置(10,20)に対する操作を有効にする有効状態または無効にする無効状態にする指示を行う専用の入力装置を設ける必要がない。その結果、運転室3内のレイアウトの自由度を向上できる。
(2)本実施の形態では、キー入力装置143は、暗証番号を入力するための数値入力用のテンキー143aを有し、コントローラ200は、油圧ショベルが作業状態にある場合、テンキー143aに対する操作に基づいて、操作装置145の作業装置(10,20)に対する操作を有効にする有効状態、および操作装置145の作業装置(10,20)に対する操作を無効にする無効状態のいずれかに切り換える。さらに、コントローラ200は、油圧ショベルが走行状態にある場合、テンキー143aによって入力された番号と、予め定められた暗証番号とが一致しているか否かを判定し、一致していると判定された場合にエンジン91の始動を許可する状態とし、一致していないと判定された場合にエンジン91の始動を禁止する状態とする。つまり、キー入力装置143は、走行モードのときに操作されると、上記有効または無効にする切換指示信号とは異なる暗証番号入力指示信号をコントローラ200に出力する。コントローラ200は、暗証番号入力指示信号に基づいて、エンジン91の始動を制御する。
このように、本実施の形態では、盗難防止を目的として、暗証番号を入力するキー入力装置143を利用して、操作装置145の作業装置(10,20)に対する操作の有効状態と無効状態とを切り換えることができる。
(3)コントローラ200は、油圧ショベルが走行状態にある場合には、走行状態を表す表示画像40を表示装置141に表示させ、油圧ショベルが作業状態にある場合には、操作装置145の作業装置(10,20)に対する操作が有効にされる有効状態であるのか、または、操作装置145の作業装置(10,20)に対する操作が無効にされる無効状態であるのかを表す表示画像210を表示装置141に表示させる。
単一の表示装置141に表示画像40および表示画像210を表示させるようにしたので、それぞれに対して専用の表示装置を設ける必要がない。その結果、運転室3内のレイアウトの自由度を向上できる。
(4)走行状態を表す表示画像40は、速度計41を含んでいる。コントローラ200は、油圧ショベルが走行状態にある場合、表示装置141の表示画面141dにおいて予め定められた表示領域40A内に表示画像40を表示させ、油圧ショベルが作業状態にある場合、表示画像210の少なくとも一部が表示領域40Aに含まれるように、表示画像210を表示させる。これにより、表示画像210を表示させるために、表示画面141dの大きさが大きくなることを抑制できる。表示装置141の小型化を図ることができるので、運転室3内のレイアウトの自由度を向上できる。
次のような変形も本発明の範囲内であり、変形例の一つ、もしくは複数を上述の実施形態と組み合わせることも可能である。
(変形例1)
上述した実施の形態では、走行体1の前部に左右一対のアウトリガ装置10を装着し、後部にブレード装置20を装着した油圧ショベルを例に説明したが、本発明はこれに限定されない。オプション1、2および4のいずれの油圧ショベルに対しても本発明を適用できる。
(変形例1−1)
たとえば、走行体1の後部に設けられたブレード装置20に代えて、左右一対のアウトリガ装置10を設けてもよい。この場合、図12(b)に示すように、表示装置141の表示画面141dには、車両の左後に配置されるアウトリガ装置10を表す表示画像211cと、車両の右後に配置されるアウトリガ装置10を表す表示画像211dが表示される。
(変形例1−2)
走行体1の後部に設けられるブレード装置20を備え、走行体1の前部にアウトリガ装置10が設けられていない、オプション4の油圧ショベルに本発明を適用してもよい。この場合、表示画像210は、走行体1の後部に設けられるブレード装置20の操作に対する有効/無効を表す表示画像215が表示装置141の表示画面141dに表示される。
(変形例2)
上述した実施の形態では、盗難防止装置を構成するキー入力装置143によって、アウトリガ装置10やブレード装置20に対する操作の有効/無効を切り換える例について説明したが、本発明はこれに限定されない。キー入力装置143以外の入力装置によって、アウトリガ装置10やブレード装置20に対する操作の有効/無効を切り換えてもよい。
たとえば、カーソルスイッチ147により、アウトリガ装置10やブレード装置20に対する操作の有効/無効を切り換えるようにしてもよい。この場合、表示装置141の表示画面141dに、左前のアウトリガ装置10、右前のアウトリガ装置10およびブレード装置20のいずれが選択されているかを表すカーソルなどの選択画像を表示させる。カーソルスイッチ147の外側操作部147aが操作され、カーソルが移動されることで、複数の作業装置のいずれかが選択される。カーソルスイッチ147の内側操作部147bが操作されることで、選択された作業装置に対する有効/無効を切り換える切換信号がコントローラ200に出力される。
(変形例3)
上述した実施の形態では、走行状態を表す表示画像である速度計41、冷却水温計42および燃料残量計43が表示される表示領域40Aにおいて、これらの表示画像に代えて、作業装置に対する操作の有効/無効を表す表示画像210を表示する例について説明したが、本発明はこれに限定されない。たとえば、走行状態を表す表示画像である以下の画像が表示される画像領域において、これらの表示画像40に代えて、作業装置に対する操作の有効/無効を表す表示画像210を表示させてもよい。
・エンジン91の回転速度を表すタコメータ
・前後進切換操作部材が前進位置、後進位置および中立位置のいずれの操作位置に切り換えられているかを表す表示画像(F/N/R)
・前照灯がハイビームおよびロービームのいずれの照射角度に設定されているかを表す表示画像(H/L)
(変形例4)
上述した実施の形態では、作業装置の一例として、アウトリガ装置10やブレード装置20について説明したが、本発明はこれに限定されない。油圧シリンダなどのアクチュエータを備える種々の作業装置に本発明を適用できる。
(変形例5)
上述した実施の形態では、油圧ショベルが作業状態にある場合、表示領域40Aに、表示画像210の少なくとも一部が含まれるように、表示画像210を表示装置141の表示画面141dに表示させる例について説明したが、本発明はこれに限定されない。表示領域40Aの内側に、表示画像210の全部が含まれるように、表示画像210を表示装置141の表示画面141dに表示させてもよい。
(変形例6)
上述した実施の形態では、ブレーキスイッチ142の操作位置に基づいて、油圧ショベルが走行状態にあるのか、あるいは作業状態にあるのかをコントローラ200が判定する例について説明したが、本発明はこれに限定されない。たとえば、作業ブレーキやパーキングブレーキ、アクスルロックが作動しているか否かを、各装置を駆動させる油圧回路の管路内の圧力の大きさに基づいて判定してもよい。この場合、コントローラ200は、作業ブレーキ、パーキングブレーキおよびアクスルロックの少なくともいずれかが作動しているときには作業状態と判定し、いずれも解除されているときには走行状態と判定する。
(変形例7)
上述した実施の形態では、クラッチ58a,58bがパーキングブレーキとして機能する例について説明したが、本発明はこれに限定されない。専用のディスクブレーキ装置をパーキングブレーキとして設けてもよい。
(変形例8)
上述した実施の形態では、エンジン91を原動機の一例として説明したが、本発明はこれに限定されない。電動モータを原動機として搭載するホイール式油圧ショベルにも本発明を適用できる。
上記では、種々の実施の形態および変形例を説明したが、本発明はこれらの内容に限定されるものではない。本発明の技術的思想の範囲内で考えられるその他の態様も本発明の範囲内に含まれる。