図1、図2及び図3は、屋根の下地構造の一例である。本形態の屋根の下地構造は、垂木1と、垂木1の上に配置された下側の野地2と、下側の野地2の上面に敷かれた防湿シート3aからなる防湿部3と、防湿部3の上に配置された断熱体4aからなる断熱層4と、断熱層4の上に配置された上側の野地5とを備える。上側の野地5は、断熱層4に接するように配置されている。
本形態の屋根の下地構造は、上側の野地5が断熱層4の上に直接配置される。すなわち、上側の野地5は、断熱層4に接触し、上側の野地5と断熱層4との間には通気のための一体となった層がない。そのため、通気層を設けるための構成(たとえば垂木)を不要にすることができ、施工が簡単になる。ところで、このように通気層を設けない構造とすると、屋内からの湿気が屋根下地に入り結露が生じるおそれがある。そこで、本形態の屋根の下地構造では、上記のように下側の野地2の上に防湿シート3aを配置することにより、屋内からの湿気の浸入を抑制することができる。その結果、防湿性を高め、結露を防止することができる。また、下側の野地2と上側の野地5との間には断熱層4が配置される。そのため、屋内と屋外との熱の伝導を抑制することができる。以上により、本実施形態によれば、簡単に施工でき、結露の防止が可能で、断熱性の高い屋根の下地構造を得ることができる。
図4は断熱材40の例、図5は固定金具10の例であり、これらは、図1乃至図3の屋根の下地構造を形成するために用いられる。
以下、図1乃至図5に示す形態を代表例として屋根の下地構造を説明する。しかしながら、屋根の下地構造は、本形態に限定されるものではない。以下、便宜上、下側の野地2を下野地2ともいい、上側の野地5を上野地5ともいう。
図1乃至図3に示すように、本形態の屋根の下地構造は、複数の垂木1を備える。垂木1は、たとえば木材で形成される。垂木1は、長手方向が軒棟方向に沿うようにして設けられる。複数の垂木1は、軒棟方向と垂直な方向(棟と平行な方向)に沿って間隔をあけて配置される。複数の垂木1は、等間隔に配置されてもよい。
下側の野地2(下野地2)は、垂木1の上に配置される。下野地2は、複数の野地板2aから形成され得る。複数の野地板2aは、面状に敷き詰められる。野地板2aは、矩形状(正方形を含む)であってよい。野地板2aは、たとえば木製の板で形成される。
防湿部3は、下野地2の上に配置される。防湿部3は、層状である。防湿部3は、下野地2と断熱層4との間にある。防湿部3は、複数の防湿シート3aから形成されている。防湿シート3aは、下野地2の表面に敷き詰められる。防湿シート3aは、隙間なく下野地2を覆う。防湿シート3aによって、屋根の防湿性が高まる。
断熱層4は、防湿部3の上に配置される。断熱層4は、上側の野地5と下側の野地2との間にある。断熱層4は、断熱体4aによって形成される。断熱体4aは、繊維、発泡樹脂などで形成される。断熱層4により、屋根の断熱性が高まる。
断熱層4は、断熱体4aを含む複数の断熱材40から形成される。断熱材40は、下野地2に載っている。断熱材40は、パネル状であってよい。下野地2は、断熱材40を支持している。複数の断熱材40は面状に敷き詰められる。断熱材40の平面形状は、矩形状(正方形を含む)であってよい。
図4は、断熱材40の一例を示す。屋根の下地構造では、防湿シート3aが断熱体4aと一体となった断熱材40が用いられてもよい。図4の断熱材40は、断熱体4aと、防湿シート3aとを備える。防湿シート3aは、断熱体4aの裏面(下面)に接着されている。断熱材40は、断熱体4aと防湿シート3aとが一体化しているため、断熱材40の設置により防湿部3と断熱層4とを同時に形成することが可能になり、施工が容易になる。図4の断熱材40では、断熱体4aが断熱層4を与え、防湿シート3aが防湿部3を与える。
図4の断熱材40では、防湿シート3aの一部が断熱体4aからはみ出している。防湿シート3aのはみ出し部3pは、断熱材40の端部に設けられている。屋根の下地構造においては、はみ出し部3pは、隣の断熱材40の防湿シート3aと重なる。そのため、隣り合う防湿シート3aの重なりによって、防湿シート3aの間に隙間が生じにくくなるので、防湿性が高まる。はみ出し部3pは、矩形状の断熱材40の隣り合う2辺(縦の一辺と横の一辺)に少なくとも設けられることが好ましい。それにより、縦横で防湿シート3aが重なるため、防湿シート3aの隙間がより生じにくくなる。
図4の断熱材40は、凹部41を備えている。凹部41は複数設けられている。凹部41は、軒棟方向にわたって設けられている。凹部41は、断熱体4aに設けられている。凹部41は、断熱体4aの上野地5に向かう面にある。凹部41は、溝状である。ただし、断熱材40の端部に位置する凹部41は、溝の一側面が開放され、切り欠き状となっている。断熱材40の端部の凹部41は、切り欠き部41aと定義される。図1に示すように、屋根の下地構造では、隣り合う断熱材40の切り欠き部41aが合わさって一つの凹部41が形成される。
もちろん、図4は、断熱材の一例であり、断熱材は、少なくとも断熱体を備えていればよく、防湿シートを備えていなくてもよい。屋根の下地構造では、防湿シートと断熱材とが別体で、防湿シートから防湿部が、断熱材から断熱層が、それぞれ別々に形成されてもよい。
図1乃至図3に示すように、上側の野地5(上野地5)は、断熱層4の上に配置される。上野地5と断熱層4とは接している。上野地5は、断熱層4に載っている。上野地5と断熱層4との間には、一体的な空気の層がない。そのため、上野地5を断熱層4と間隔をあけて施工することを要さなくなり、施工が容易になる。
上野地5は、複数の野地板5aから形成され得る。複数の野地板5aは、面状に敷き詰められる。野地板5aは、矩形状(正方形を含む)であってよい。野地板5aは、たとえば木製の板で形成される。
本形態では、複数の野地板5aが面状に配置され、複数の断熱材40が面状に配置されている。そして、野地板5aの継ぎ目と、断熱材40の継ぎ目とは揃っている。継ぎ目が揃うことで、より簡単な施工を行うことが可能になる。なお、下野地2を構成する複数の野地板2aも面状に配置されるものであってよく、このとき、野地板2aの継ぎ目と野地板5aの継ぎ目とは揃っていてもよいし、揃っていなくてもよい。
本形態の屋根の下地構造は、上側の野地板5a、断熱材40及び下側の野地板2aを固着する固着具6を備えている。野地板5a、断熱材40及び野地板2aは、固着具6によって垂木1に固着されている。固着具6は、たとえば、釘、ビスである。固着具6は、材料を貫通することで、その材料を留め付けることができる。固着具6は、固着したい材料に打ち込まれる。
図1乃至図3では、固着具6として、固着具6aと固着具6bとが図示されている。固着具6bは、上野地5を貫通する固着具6である。固着具6aは、上野地5を貫通しない固着具6である。固着具6aは固着具6bよりも短くてよい。それにより、施工が容易になる。
固着具6は、固着具6a及び固着具6b以外の固着具6を含んでいてもよい。たとえば、下野地2を構成する野地板2aの上から打ち込まれて、野地板2aを垂木1に固着する固着具6がさらに設けられてもよい。この場合の固着具6は、断熱材40よりも下にあり、断熱材40を貫通しない。この場合、野地板2aを強く固着することができ、断熱材40を取り付ける前に野地板2aが固定されるので、施工が容易になる。
固着具6bは、野地板5aの継ぎ目から離れた位置に打ち込まれている。固着具6bは、断熱材40の端部以外の部分(中央部)に打ち込まれるといってもよい。固着具6bは、上側の野地板5aと断熱材40(断熱体4aを含む)と下側の野地板2aとを貫通し、垂木1に刺さっている。つまり、固着具6bは、上野地5と断熱層4と防湿部3と下野地2とを貫き、その先端が垂木1の中にある。固着具6bにより、上野地5及び断熱材40が強く垂木1に固着される。
固着具6aは、野地板5a及び断熱材40の継ぎ目の位置に打ち込まれている。固着具6aは、断熱材40の端部に打ち込まれるといってもよい。固着具6aは、断熱材40(断熱体4aを含む)と下側の野地板2aとを貫通し、垂木1に刺さっている。つまり、固着具6aは、断熱層4と防湿部3と下野地2とを貫き、その先端が垂木1の中にある。固着具6aにより、断熱材40が強く垂木1に固着される。
ここで、固着具6aは、断熱材40の直上から断熱材40に打ち込まれており、固着具6aは上野地5を貫通していない。そして、固着具6aは、隣り合う断熱材40のうちの一方の断熱材40の端部のみに打ち込まれ、もう一方の断熱材40の端部には打ち込まれていない。図1乃至図3では、断熱材40の左側の端部に固着具6aが打ち込まれ、断熱材40の右側の端部には固着具6aが打ち込まれていない。
本形態の屋根の下地構造は、さらに、固着具6aによって断熱材40(断熱体4aともいえる)の上で固着される固定金具10を備えている。固定金具10は、上側の野地5(上野地5)を断熱材40上に固定している。
図5により固定金具10を説明する。図5の固定金具10は、固定金具の一例であり、屋根の下地構造では、他の構造の固定金具が用いられてももちろんよい。図5は、図5A〜図5Dから構成される。
固定金具10は、台座部11と、台座部11から上方に伸びる胴部12と、胴部12の上端から横に伸びる押え部13とを備えている。固定金具10は、金属板を曲げ加工して得られる。一枚の金属板から固定金具10が形成されると、溶接等が不要となり、簡単に固定金具10を得ることができる。金属板の厚みは、たとえば0.1〜1mmの範囲内である。
台座部11は、固定金具10の最下部に位置する。台座部11は、矩形板状をなしてる。屋根の下地構造においては、台座部11は、断熱材40の上に配置される。台座部11の下面は断熱材40の上面に接する。台座部11は、隣り合う断熱材40に跨る。台座部11には、固着穴14が設けられている。固着具6aは、断熱材40を固着する際、固着穴14を通る。固着穴14の径は、固着具6aの頭部の径よりも小さい。固着穴14は、固着具6aが断熱材40の端部を貫けるように、隣り合う断熱材40の継ぎ目からずれた位置に設けられる。
胴部12は、台座部11の長手方向一端から他端側に台座部11と鋭角をなすように斜め上方に伸びる胴下部12aと、胴下部12aの上端から台座部11に対して垂直な方向に上方に伸びる胴上部12bとを備えている。胴下部12a及び胴上部12bは、それぞれ矩形板状をなしている。
押え部13は、胴部12の上端に配置される。押え部13は、平板状である。押え部13は、横方向に伸びている。押え部13は、台座部11と平行である。押え部13は、胴部12の上端から左右に伸びる片を有している。押え部13の左右に伸びる片は、第1押え片13aと、第2押え片13bとに区分される。図5の固定金具10では、第1押え片13aは1つ設けられ、第2押え片13bは2つ設けられている。固定金具10を上方からみたとき、第1押え片13aは押え部13の中央に配置され、第2押え片13bは押え部13の両端部に配置される。押え部13は、金属板の胴部12よりも先の部分が分岐され、分岐部分が2方向に折り曲げられることで形成されている。第2押え片13bは、台座部11と対向している。第1押え片13aは、第2押え片13bが伸びる方向と反対方向に伸びている。なお、第2押え片13bは1つであってもよい。
図5Dに示すように、固定金具10を上から見たとき、固着穴14と押え部13とが重ならないことが好ましい。それにより、固着穴14を通して固着具6aを容易に通すことができ、部材の固着が容易になる。本形態では、第1押え片13aが固着穴14と重ならない方向に伸びている。また、同様に、胴部12が固着穴14と重ならないことが好ましく、本形態では、胴下部12aが固着穴14に重ならないように伸びている。
第1押え片13aと胴上部12bとの境目、及び第2押え片13bと胴上部12bとの境目には、リブ12cが設けられていることが好ましい。リブ12cにより、胴上部12bと第1押え片13a及び第2押え片13bとの接続部分の強度が向上する。リブ12cは、凹みにより形成される。
図1及び図2で示すように、上記で述べた固定金具10が、断熱材40及び野地板5aを固定する。固定金具10は、固着具6aによって断熱材40に固着される。固着具6aは、隣り合う断熱材40のうちの一方を突き抜ける。このとき台座部11は、断熱材40の上に跨るように配置される。そのため、台座部11は、固着具6aが貫通する断熱材40(図2の右側の断熱材40R)だけではなく、固着具6aが通らない断熱材40(図2の左側の断熱材40L)を上から押さえつける。それにより、2つの断熱材40の端部を固定することができ、1つの固着具6aによって効率よく簡単に断熱材40を固定することができる。また、2本留めしなくてよいため、固着具の効きがなくなったり、垂木が割れたりする不具合が抑制される。
本形態では、断熱材40には凹部41が設けられている。凹部41は、断熱体4aの上面に設けられている。そして、固定金具10は、凹部41の位置に配置されている。固定金具10の位置にある凹部41は、断熱材40の端部の切り欠き部41aによって形成されている。固定金具10の台座部11は、この凹部41に収容されている。このように、台座部11が凹部41に収容されると、固着具6aの頭部が凹部41に収まる。すなわち、固着具6aの頭部が飛び出して上野地5に当たることが抑制される。さらに本形態では、胴下部12aも凹部41に収容されている。このように、台座部11と胴下部12aとが凹部41に収容されると、固定金具10が効率よく配置される。
固定金具10の胴上部12bは、隣り合う野地板5aの間に配置されている。隣り合う野地板5aは、互いに突き合わせられている。胴上部12bは、突き合せられた野地板5aの隙間を通る。胴上部12bの上下方向の長さは、野地板5aの厚みと同じかそれよりも長いことが好ましい。それにより、胴部12が邪魔にならずに、隣り合う野地板5aを突き合わせることができる。胴部12全体の上下方向の長さは、凹部41の底部から上野地5の上面までの上下方向の長さと略等しいことが好ましい。それにより、野地板5aの固定強度が向上する。ここで、固定金具10を構成する金属板の厚みは小さいので、胴上部12b以外のところでは、隣り合う野地板5aは接触していてよい。胴上部12bの厚みは、野地板5aによって吸収されてよい。すなわち、胴上部12bは、野地板5aの間で野地板5aの側部に埋められるように配置されてもよい。
固定金具10の押え部13は、上野地5の上に配置されている。押え部13は、隣り合う野地板5aを固定している。押え部13は野地板5aと接している。押え部13は、上から上野地5を押し付ける。第1押え片13aが、隣り合う野地板5aのうちの一方の野地板5a(図2の左側の野地板5aL)の上に配置され、第2押え片13bが、他方の野地板5a(図2の右側の野地板5aR)の上に配置されている。そのため、各野地板5aは、押え部13によって端部が下方に押し付けられることにより断熱層4上に固定される。このように、本形態では、固定金具10の押え部13によって野地板5aを強く固定することができる。このとき、押え部13は、分岐によって互いに反対方向に伸びる2種類の押え片を備えているため、隣り合う野地板5aの両方を効率よく固定することができる。そして、固着具6aは押え部13よりも下方に配置されるので、固着具6aの頭部が上野地5の上で飛び出すことがない。そのため、固着具6aの頭部が飛び出すことによる屋根材の不陸や割れを抑制することができる。
上述のように、本形態では、断熱体4aに設けられた凹部41は、溝状である。この凹部41は、断熱層4表面の溝42を構成している。複数の溝42が、断熱層4の表面に設けられる。本形態では、溝42は、軒棟方向に伸びている。つまり、断熱体4aは、軒棟方向に伸びる溝42を有している。断熱層4においては、複数の断熱体4aに設けられた凹部41(溝42)が軒棟方向で連結し、軒棟方向にわたって延びる長い溝42が形成されている(図3参照)。複数の溝42は、軒棟方向と垂直な方向(棟方向)に間隔をあけて配置されている。溝42は、通気路として機能する。本形態では、防湿部3により下野地2と上野地5との間に湿気や水分が浸入することが抑制されるが、もし湿気や水分が浸入した場合には、通気路である溝42を通して湿気や水分を逃がすことができる。そのため、結露を高く抑制することができる。
図6は、溝42による通気を模式的に示している。上下の野地の間にわずかに浸入した水分は、野地板5a及び断熱材40から溝42に移動する。溝42に到達した水分は気体とともに、溝42を通って棟に向かう。棟は換気棟の構造を有しており、換気棟によって湿気を排出することができる。このようにして、屋根内部での結露を防止することができる。
本形態では、固定金具10と固着具6aとを用いることによって、継ぎ目近傍での断熱材40及び上野地5の固着をより強固にするとともに、簡単に施工を行うことができる。その理由を参考例を用いながら以下に説明する。
図9は、屋根の下地構造の参考例である。上記と同様の構成には同じ符号を付している。図9では、野地板5aの継ぎ目の位置において、隣り合う野地板5aの端部の両方に、固着具6xが設けられている。図9では、固着具6xは、野地板5aと断熱材40と野地板2aとを貫通して垂木1に刺さっている。固着具6xは、野地板5a、断熱材40及び野地板2aを突き抜けることを要するため、比較的寸法が長い。このように固着具6xの寸法が長くなると、固着具6xの打ち込みが難しくなる。特に、図9のように、隣り合う断熱材40の端部の近い位置に2本の固着具6xを打ち込む場合(いわゆる2本留めの場合)、野地板5aや野地板2aや垂木1が割れたり、固着具6xによる固着が効かなかったりするといった不具合が生じやすい。そして、不具合が生じないようにしようとすると、今度は施工が難しくなる。そこで、隣り合う野地板5aの端部に跨る金属板を当て板6yとして配置し、当て板6yの上から固着具6xを通すことが考えられる。図9では、当て板6yが仮想線で示されている。この場合、当て板6yの金属板によって、上記の不具合が抑制されやすくなり、施工も容易になる。しかしながら、金属板を用いる場合、固着具6xの頭部が上野地5の表面で飛び出るため、上野地5の上に配置される屋根材(いわゆる瓦)が不陸になって不安定になったり、割れたりするおそれがある。このように、参考例の屋根の下地構造では、屋根の下地構造自体に不具合が生じたり、施工が難しくなったり、屋根材(瓦)に悪影響を及ぼしたりする。
一方、本形態の屋根の下地構造は、図2で示すように、継ぎ目の位置には、一つの固着具6aが設けられており、2本留めがされていない。そのため、本形態の屋根の下地構造は、不具合が生じにくく、施工が容易である。また、固着具6aは断熱材40の上から打ち込まれ、この固着具6aによって固定された固定金具10が上野地5を固定しており、上野地5の表面に固着具6aの頭部が飛び出ていない。そのため、上野地5の表面で固着具6aの頭部が飛び出して屋根材が不陸になったり、割れたりすることが抑制され、屋根材(瓦)への悪影響が低減される。
なお、図9の屋根の下地構造は、防湿シートを有していない。さらに、図9の屋根の下地構造は、通気のための溝を有していない。そのため、図9の屋根の下地構造は、屋根内部に水分が浸入しやすく、浸入した水分が留まりやすいため、結露を防止できない。
本形態の屋根の下地構造は、ステップバイステップ方式で形成することができる。図1及び図2を参照しながら、屋根の下地構造の施工の一例を説明する。
屋根の下地構造の形成にあたっては、まず、垂木1の上に野地板2aを取り付ける。野地板2aは面状に敷き詰めることができる。野地板2aは、固着具で固着されてもよい。これにより、下野地2が形成される。
次に、下野地2の上に、防湿シート3aと断熱体4aとを有する1つの断熱材40を置き、その断熱材40の隣に他の断熱材40を置く。このとき、はみ出し部3pによって、防湿シート3aが重なるように断熱材40を配置する。なお、防湿シート3aと断熱材40とが別体の場合は、防湿シート3aを下野地2の上一面に敷いた後、防湿シート3aの上に断熱材40を置くことができる。
次いで、隣り合う断熱材40のうちの一方の上に野地板5aを置く。このとき、野地板5aは、固着具6aが打ち込まれない方の断熱材40の上に配置される(図2の野地板5aL参照)。ここで、野地板5aに固着具6bを打ち込んでもよい。そして、断熱材40の継ぎ目部分に固定金具10を配置し、固着穴14から固着具6aを打ち込み、断熱材40及び野地板2aを貫通させて固着具6aを垂木1に突き刺す。これにより、固定金具10が固着し、隣り合う断熱材40は固定金具10の台座部11の下面によって押し付けられて固定される。また、野地板5a(野地板5aL)は、その上面が押え部13の下面によって押し付けられて、固定される。
次いで、固着具6aが打ち込まれた方の断熱材40の上に野地板5aを配置し、野地板5aの端部を押え部13と断熱材40の間に差し入れる(図2の野地板5aR参照)。これにより、隣り合う野地板5aが突き合わされる。また、野地板5a(野地板5aR)は、その上面が押え部13の下面によって押し付けられて、固定される。隣り合う野地板5a(野地板5aLと野地板5aR)の間には、固定金具10の胴部12が配置される。野地板5aは固着具6bが打ち込まれて、さらに固定される(図1参照)。
以上のような断熱材40及び野地板5aの取付けの動作を繰り返し行うことにより、屋根全体にわたって断熱層4と上野地5とを形成することができる。これにより、本形態の屋根の下地構造が形成される。もちろん、上記の屋根の下地構造の形成方法は、一例であり、他の方法により屋根の下地構造が形成されてもよい。
屋根の施工においては、屋根の下地構造の上に、ルーフィングが施され、その上に屋根材(すなわち瓦)が配置される。屋根材としては、たとえば、スレート瓦、和瓦、金属瓦が挙げられる。本形態の屋根の下地構造は、さまざまな瓦の種類に適応可能である。屋根材の敷設により、屋根が完成する。
図7は、屋根の下地構造の他の実施形態である。図7では、断熱体4aに設けられる溝42は、棟と平行な方向(横方向)に伸びている。溝42は、凹部41によって形成されている。固定金具10は、凹部41に配置されている。固着具6bは、凹部41からずれて設けられている。その他の構成は、図1乃至図3の形態と同様である。本形態でも、防湿シート3aが防湿部3となり、溝42が通気路として機能する。水分の浸入は防湿シート3aにより抑制され、屋根内部に水分が浸入したとしても、水分は、溝42によって棟と平行な方向に流れて排出される。そのため、屋根内部の結露を防止することができる。また、本形態でも、固定金具10により断熱材40と上側の野地板5aとを効率よく固定することができる。
図8は、屋根の下地構造の他の実施形態である。上記実施形態では、断熱材40に軒棟方向全体又は棟と平行な方向全体に亘って延びる溝42が形成されているが、このような溝が形成されていなくてもよい。また、固定金具10以外の構造の固定金具が用いられていてもよい。例えば、図8は、断熱材40の表面に溝がなく、固定金具70で野地板5aを固着する例を示している。この例では、図8に示すように、断熱材40の表面に比較的小面積かつ比較的浅い(例えば、金属板の厚み程度の浅さの)凹部41を形成し、この凹部41に固定金具70を固着させている。この場合、固定金具70は、凹部41の底面に載置固定される矩形板状の台座部71と、該台座部71の一辺から上方に延びる胴部72と、該胴部72の上端から棟と平行に両側に延びる押え部73と、を備えている。凹部41は、断熱材40の一方の端部に局所的に設けられている。凹部41の寸法は、上から見たときに台座部71の寸法と同じ程度である。上記胴部72は、棟と平行な方向で隣接する一対の野地板5a間を通過してこれら野地板5aのわずかに上方まで延びており、上記押え部73は、胴部72の上端から棟と平行な方向に両側に延びて一対の野地板5aの端部を下方に押さえつけている。これにより、両野地板5aが押え部73と断熱材40とによって挟持固定されている。押え部73は、上記の形態と同様に、第1押え片73a及び第2押え片73bを有するものであってよい。なお、上記固定金具70は、長尺に構成されていてもよい。本形態でも、防湿シート3aにより結露を防止でき、固定金具70により断熱材40と上側の野地板5aとを効率よく固定することができる。
本開示の屋根の下地構造は、さらなる変形例が含まれる。たとえば、断熱体4aは、端部に溝を有さずに、中央部のみに溝42を有していてもよい。また、固定金具の台座部が、胴部の下端から分岐して棟と平行な2方向に伸びていてもよい。また、断熱体4aの表面に、縦横の溝42が設けられ、凹部41が格子状になっていてもよい。また、断熱体4aの表面がシボ状になり、凹部41がシボの凹みで設けられてもよい。これらは変形例の一例である。
以上で述べたように、本開示の屋根の下地構造は、垂木1と、垂木1の上に配置された下側の野地2と、下側の野地2の上面に敷かれた防湿シート3aからなる防湿部3と、防湿部3の上に配置された断熱体4aからなる断熱層4と、断熱層4の上に該断熱層4に接するように配置された上側の野地5とを備える。そのため、本開示の屋根の下地構造は、簡単に施工でき、結露の防止が可能で、断熱性が高い。
本開示の屋根の下地構造は、好ましくは、断熱体4a及び下側の野地2を貫通して垂木1に達し、断熱体4a及び下側の野地2を垂木1に固着させる固着具6aと、固着具6aによって断熱体4a上に固着され、上側の野地5を断熱層4上に固定する固定金具10とを備える。固定金具10は、断熱体4aの上に配置される台座部11と、台座部11から上方に伸びる胴部12と、胴部12の上端で横に伸びる押え部13とを備える。固定金具10の台座部11は、断熱体4aに設けられた凹部41に収容される。上側の野地5は、2以上の野地板5aで形成される。2以上の野地板5aのうちの隣り合う野地板5aの間に、固定金具10の胴部12が配置される。隣り合う野地板5aの各野地板5aは、押え部13によって端部が下方に押し付けられることにより断熱層4上に固定されている。そのため、屋根の下地構造は、簡単に施工でき、固定強度が高い。
本開示の屋根の下地構造においては、断熱体4aの表面には、軒棟方向に伸びる溝42が形成されていることが好ましい。この場合、結露防止効果が高まる。
本開示の屋根の下地構造においては、断熱体4aの表面には、棟と平行な溝42が形成されていることが好ましい。この場合、結露防止効果が高まる。