以下、本発明に係る実施の形態について図面を参照しながら具体的に説明する。便宜上、実質的に同一の要素には同一の符号を付し、その説明を省略する場合がある。なお、本発明は、建物における屋根、ベランダ、バルコニー等の外装として配置される防水ユニットに広く適用可能であるが、ここでは、防水ユニットによって陸屋根を構築した場合の一例について説明する。
(第1の実施形態)
まず、第1の実施形態について説明する。図1は本実施形態に係るパラペット防水ユニットを備えて構成された陸屋根の平面図(伏図)である。鉄骨造の建物100は、陸屋根を形成する屋根構造101Aを備えている。屋根構造101Aは、外縁B同士が互いに接合されて組み合わされた複数の屋根ユニット1Aと、組み合わされた屋根ユニット1Aの周囲を囲むパラペット防水ユニット30とによって形成されている。なお、屋根ユニット1A及びパラペット防水ユニット30は予め工場等で製作されたものであり、トラック等によって工場等から現場へ搬送され、クレーン等により吊り上げられて建物に取付けられる。また、屋根ユニット1Aとして、同じ大きさのものを図示しているが、屋根ユニット1Aの大きさは屋根の形状や大きさによって適宜変更されるものである。また、パラペット防水ユニット30は、配置される場所によって異なる平面形状を有しているが、基本的な構成は共通している。また、本実施形態における建物100は、所定の平面モジュールを有している。この平面モジュールとは、建築において設計上の基準となる基本寸法を意味し、建物100は、平面的寸法(隣り合う柱の中心間の距離など)が平面モジュールの整数倍となるように構成される。
図2に示されるように、屋根ユニット1Aは、デッキプレート2と、勾配材3と、断熱材5と、押さえボード6と、防水シート(防水部)7とを備えている。デッキプレート2は、建物100の平面モジュールに対応した平面サイズを備えた鋼板部材である。デッキプレート2には、一方向(図1の溝方向D参照)に延びる複数の溝2aが一定の間隔で連続して形成されている。溝2aは、例えば75mm程度の深さであり、底部に向かって幅が狭くなっている。これにより、デッキプレート2は、側面視台形状の山部2bと、側面視逆台形状の谷部2cとが繰り返し形成される略波形状を呈する。デッキプレート2において、溝方向D(図1参照)に平行な端部B1,B2は、谷部2cで終わっている。
勾配材3は、屋根ユニット1Aの上面に所定の勾配をつけるためのものである。勾配材3は、例えば、1/50〜1/100程度の水勾配が形成された板状部材である。本実施形態では、勾配材3は断熱機能を有するポリスチレンフォームによって形成されている。勾配材3は、デッキプレート2よりも上に配置されている。
断熱材5は、屋根ユニット1Aに要求される断熱性能を付与するためのものである。断熱材5は、厚さが均一な板状部材であり、例えばフェノールフォームである。本実施形態では、断熱材5が2層重ねて設けられている。なお、断熱材5は、屋根ユニット1Aに要求される断熱性能に応じて、1層であってもよいし、3層以上であってもよい。断熱材5は、デッキプレート2よりも上に配置されるものであり、本実施形態では、勾配材3の上に配置されている。なお、勾配材3が所望の断熱性を有し断熱材としても機能する場合は、断熱材5を省略してもよい。
押さえボード6は、断熱材5よりも上に配置される板状部材である。押さえボード6は、少なくとも断熱材5よりも高い剛性を備えるものであり、例えば、セメント系ボード(ケイカル板、パルプ混入セメント板、スラグ石膏ボード、硬質木片セメント板、繊維混入スレート板等)、木材、木質ボード(合板、パーティクルボード、MDF、OSB、ハードボード、CLT、集成材、樹脂木材等)等によって形成される。
防水シート7は、屋根ユニット1Aに防水性を付与するためのものであり、屋根ユニット1Aの最上層に配置される。防水シート7は、例えばポリ塩化ビニルによって形成されるシート材である。また、防水シート7の材料としては、ポリ塩化ビニル以外に、アスファルト系シート、ゴムアスファルト系シート、ゴム系シート、ブチルゴム系シート、アクリルゴム系シート等の種々のシートを用いてもよい。なお、以下の説明では、防水シート7の固定態様として、主に全面接着工法による接着を例示するが、例えば、機械固定工法(例えば、絶縁工法、浮かし張り工法)、接着と機械固定の混合工法等による固定であってもよい。さらに、防水シート7に代えて、押さえボード6の上面にウレタン系塗膜防水を施した防水部を形成してもよい。
また、本実施形態では、デッキプレート2の周縁において、デッキプレート2と勾配材3との間に、適宜に補強プレート11,12が配置されている。補強プレート11(図1参照)は、デッキプレート2の溝方向Dに直交する帯状のプレートであり、例えば、補強プレート11は、デッキプレート2の溝方向Dの両端に配置される。補強プレート11は、少なくとも複数の山部2bに架け渡され、当該複数の山部2bのうち少なくとも二つ以上の山部2bに対して固定されることで、デッキプレートが撓むことを抑制する。補強プレート11は、例えば鋼製であるが、鋼製以外にも、他の金属類(鉄、ステンレス、アルミニウム、銅等)であってもよい。
また、図1〜図3に示されるように、補強プレート12は、溝方向Dに延びる帯状のプレートであり、デッキプレート2の溝方向Dに平行な外縁Bにおいて、他の屋根ユニット1Aと接合される端部B1に設けられている。補強プレート12は、少なくとも、端部B1の谷部2cに隣接した山部2bに固定されるものであり、その山部2bに沿って延在している。特に図3に示されるように、補強プレート12における、端部B1側の端縁12aは、外縁の谷部2cの上方に向かって持ち出されている。
屋根ユニット1Aは、デッキプレート2の上面に補強プレート11,12が配置され、その上に勾配材3、断熱材5、押さえボード6、防水シート7が順次積層されて形成される。屋根ユニット1Aには、押さえボード6からデッキプレート2までが密着した状態で、押さえボード6側からビス(固定具)14が打ち込まれている。ビス14は、頭抜け防止のために断面がL形のワッシャー15を介して打ち込まれている。これにより、押さえボード6、断熱材5、勾配材3、補強プレート11,12及びデッキプレート2は一体的に固定される。この際、断熱材5及び勾配材3は、押さえボード6とデッキプレート2とによって挟持される。このように一体的に固定された押さえボード6の上面には、粘着剤7aによって防水シート7が接着される。粘着剤7aは、防水シート7を押さえボード6に密着させるために、ゴム系粘着剤が望ましい。例えば、ネオプレーン系、クロロプレーン系、ニトリルゴム系、天然ゴム系の粘着剤が使用される。なお、ビス14の頭抜け防止のために使用されるワッシャーは、上述のような断面がL形のワッシャーに限定されるものではなく、平面視で円形状の平ワッシャー(後述するワッシャー32と同形状)でもよい。
図3に示されるように、本実施形態における屋根ユニット1Aでは、他の屋根ユニット1Aと接合される側の端部B1において、防水シート7、押さえボード6、断熱材5、勾配材3及びデッキプレート2の端縁が揃っている。この端部B1では、図4に示されるように、デッキプレート2の谷部2cに支持材16が配置される。支持材16は、谷部2cの形状に対応して設けられる上面16a、斜面16b及び底面16cと、上面16a、斜面16b及び底面16cに直交する側面16dとを備える。支持材16は、例えば鋼製からなり、断熱材5及び押さえボード6を下方から支持するものである。支持材16は、谷部2cの溝方向に沿って、所定の間隔(例えば300mm程度)で配置される。
図2及び図3に示されるように、隣接する屋根ユニット1A間では、デッキプレート2同士がジョイントプレート17によって接合される。屋根ユニット1Aのデッキプレート2は、その端縁が谷部2cとなっている。この谷部2cには、溝方向Dにそって所定のピッチで接合部18aが形成されている(図4(b)参照)。接合部18aは、例えば予めデッキプレート2に溶接されたナットからなる。ジョイントプレート17は、デッキプレート2の溝方向Dの長さと略同じ長さに形成された板状の鋼材である。ジョイントプレート17には、長さ方向に沿ってボルト貫通用の孔部17a,17bが、接合部18aと同じピッチで形成されている。孔部17a,17bは、接続対象となる2つのデッキプレート2にそれぞれ対応したものである。隣接した屋根ユニット1Aにおけるデッキプレート2に、ジョイントプレート17がボルト17c,17dによって固定されることで、屋根ユニット1A同士が接合される。
また、隣接する屋根ユニット1Aの上面側では、防水シート7間に生じる間隙が防水シート7と同一材料からなる防水テープ20によって塞がれる。図3に示されるように、まず、ビス14や、ワッシャー15によって防水シート7が損傷しないように、屋根ユニット1Aの押さえボード6に目地テープ21が接着される。そして、目地テープ21の上に防水シート7の端部を両側から被せた後、防水シート7と防水テープ20が溶着される。なお、押さえボード6に目地テープ21が接着されるためには、図3に示されるように、防水シート7の端部の目地テープ21と重なる領域が、工場等での製作時点で押さえボード6に接着されていない必要がある。
図2、図5に示されるように、屋根ユニット1Aでは、他の屋根ユニット1Aと接合されない側の端部(パラペット防水ユニット30と接合される側の端部)B2において、デッキプレート2の端縁が防水シート7、押さえボード6、断熱材5及び勾配材3の各端縁よりも飛び出している。換言すると、デッキプレート2よりも防水シート7、押さえボード6、断熱材5及び勾配材3が後退している。図示例では、防水シート7、押さえボード6、断熱材5及び勾配材3の端縁がデッキプレート2の外縁寄りの山部2bの中央で揃っている。これにより、デッキプレート2における外縁の谷部2cと、外縁寄りの山部2bの一部とが露出している。
デッキプレート2の端部B2は、谷部2cとなっている。この谷部2cには、溝方向に沿って所定のピッチで接合部18bが形成されている。接合部18bは、例えばボルト貫通用の孔部である。この接合部18bと、建物100の梁105に予め設けられた孔部105aとがボルト19a及びナット19bによって接合されることで、屋根ユニット1Aが建物100に接合される。本実施形態では、谷部2cが露出しているため、デッキプレート2の上面側からボルト19aを挿通してナット19bと締結し、屋根ユニット1Aを建物100の梁105に接合することができる。なお、梁105の上フランジの下面側からボルト19aを挿通してナット19bと締結し、屋根ユニット1Aを建物100の梁105に接合してもよい。屋根ユニット1Aが接合された梁105は、外壁取付部材(図示省略)を介して建物100の外壁110を支持している。屋根ユニット1Aの端部B2と外壁110との間には、パラペット防水ユニット30が配置される。
図5に示されるように、パラペット防水ユニット30は、プレート31と、勾配材3と、断熱材5と、押さえボード6と、防水シート7とを備えている。勾配材3、断熱材5、押さえボード6及び防水シート7は、屋根ユニット1Aと同様の構成である。プレート31は、側面視略Z形状の板状部材であり、略平板状の底面部31bと、底面部31bの外縁から垂直に立ち上がる側面部31cと、側面部の上端から直角に曲がって外方に延びる上面部31aとを有する。プレート31は、例えば鋼製であるが、鋼製以外にも、他の金属類(鉄、ステンレス、アルミ、銅等)、木材、木質ボード(合板、パーティクルボード、MDF、OSB、ハードボード、CLT、集成材、樹脂木材等)、セメント系ボード(ケイカル板、パルプ混入セメント板、スラグ石膏ボード、硬質木片セメント板、繊維混入スレート板等)であってもよい。
パラペット防水ユニット30は、プレート31における底面部31bの上面に勾配材3、断熱材5、押さえボード6、防水シート7が順次積層されて形成される。図示例では、底面部31bは、側面部31cから勾配材3の中央付近まで延在しているが、後述する変形例のように底面部31bによって勾配材3の下面の全体が覆われていてもよい。プレート31の側面部31cの上側、及び、プレート31の上面部31aは、押さえボード6よりも上方に突出するように立ち上がっている。押さえボード6からプレート31までは、密着した状態で、押さえボード6側からワッシャー32を介してビス14が打ち込まれている。本実施形態では、その先端がプレート31から突出するように、ビス14が押さえボード6からプレート31までを貫通することで、押さえボード6、断熱材5、勾配材3及びプレート31が一体的に固定される。プレート31の下面側に突出したビス14の先端は、例えば樹脂製のキャップ(被覆部材)14aによって被覆されている。押さえボード6の上面には、粘着剤7aによって防水シート7が接着される。防水シート7は、プレート31の側面部31c及び上面部31aにも接着される。プレート31の上面部31aと防水シート7との間には、笠木35が設けられる。
パラペット防水ユニット30は、一方の側縁側(一端側)が梁105に設けられたZ型の金属プレートであるパラペット下地115に支持され、他方の側縁側(他端側)が屋根ユニット1Aのデッキプレート2に支持される。パラペット防水ユニット30の一端側には、プレート31の上面部31aに重なるように、防水シート7、及び笠木35が配置され、更に、上面部31a、防水シート7、及び笠木35を貫通するように孔部36が形成されている。この孔部36には、パラペット下地115の上面に予め固定されているボルト115aが通され、更にナット115bで締結されて、パラペット防水ユニット30がパラペット下地115に接合される。また、パラペット防水ユニット30のプレート31の側面部31cはパラペット下地115の内側壁面に当接しており、底面部31bは、パラペット下地115に固定された断面L字状のアングル116に支持されている。
パラペット防水ユニット30の他端側は、屋根ユニット1Aのデッキプレート2における露出した山部2bに支持される。この状態で、ビス14は、パラペット防水ユニット30における押さえボード6側から、屋根ユニット1Aにおけるデッキプレート2までを貫通して接合するように打ち込まれる。なお、パラペット防水ユニット30と屋根ユニット1Aとの隙間は、上面側から貼り付ける目地テープ21及び防水テープ20によって塞がれる。
屋根構造101Aは、上述の通り、屋根ユニット1Aとパラペット防水ユニット30とが接合されることで形成される。屋根構造101Aは、勾配材3によって所定の勾配が形成されている。本実施形態では、例えば図6に示されるように、屋根ユニット1Aごとに寄棟状の勾配が形成されている。この例では、隣接する屋根ユニット1A間が勾配の谷部Eとなる。各屋根ユニット1Aに振った雨水は、屋根ユニット1Aの勾配によって谷部Eまで流れ、さらに谷部Eを流れることでパラペット防水ユニット30まで流れる。パラペット防水ユニット30では、図示しない排水口に向かって傾斜するように勾配が形成されており、パラペット防水ユニット30まで流れた雨水は、この勾配によって排水口に流入する。この流れによる排水と、谷部Eに水溜りとして残存する雨水の蒸発により、屋根ユニット1Aに降った雨水が速やかに処理される。なお、陸屋根の屋根構造101A全体で一つの寄棟状の勾配が形成されてもよい。
(第2の実施形態)
次に図7を参照して第2の実施形態に係る屋根構造101Bについて説明する。本実施形態に係る屋根構造101Bは、屋根ユニット1Aとは異なる屋根ユニット1Bを用いる点と、パラペット防水ユニット30ではなくパラペット部分を備えた屋根防水ユニット1Pを用いる点で、第1の実施形態に係る屋根構造101Aと相違する。以下、主として第1の実施形態と相違する点について説明し、同一の要素や部材については同一の参照番号を付して詳しい説明は省略する。
屋根ユニット1Bは、第1の実施形態における屋根ユニット1Aと基本的な構成は同じである。すなわち、屋根ユニット1Bは、デッキプレート2の上面に補強プレート11,12が配置され、その上に勾配材3、断熱材5、押さえボード6、防水シート7が順次積層されて形成される。押さえボード6からデッキプレート2までは、密着した状態で、押さえボード6側からワッシャー32を介してビス14が打ち込まれている。
この屋根ユニット1Bでは、デッキプレート2の溝方向D(図1参照)に平行な両側の端部B1において、防水シート7、押さえボード6、断熱材5、勾配材3及びデッキプレート2の端縁が揃っている。そのため、第1の実施形態における屋根ユニット1Aでは、一方の外縁における谷部2cのみに支持材16が設けられていたが、本実施形態の屋根ユニット1Bでは、いずれの外縁においても谷部2cに支持材16が設けられている。また、デッキプレート2における溝方向Dに平行な外縁の谷部2cには、隣接する屋根防水ユニット1Pと接合するための接合部18aが設けられている。
また、上述のように、本実施形態では、パラペット部分を備えた屋根防水ユニット1Pが用いられる。屋根防水ユニット1Pは、デッキプレート2の上面にプレート41、勾配材3、断熱材5、押さえボード6、防水シート7が順次積層されて形成される。この屋根防水ユニット1Pは、屋根ユニット1Aと異なり、補強プレート11,12を備えておらず、代わりにパラペット部分を形成するためのプレート41を備えている。
プレート41は、第1の実施形態に係るパラペット防水ユニット30におけるプレート31の底面部31bが屋根防水ユニット1Pの端部まで延在した形状となっている。そのため、プレート41は、補強プレート11とプレート31の2つの機能を兼ね備えている。押さえボード6からデッキプレート2までは、密着した状態で、押さえボード6側からワッシャー32を介してビス14が打ち込まれている。また、屋根防水ユニット1Pでは、デッキプレート2の溝方向に平行な両側の端部において、ビス14が押さえボード6からプレート41までを貫通している。なお、プレート41の底面部が屋根防水ユニット1Pの端部まで延在した形状ではなく、屋根防水ユニット1Pにおける最もパラペットに近い山部2bまで延在した形状であってもよい。
屋根防水ユニット1Pにおいて、デッキプレート2における梁105に接合される側の端部の谷部2cには、溝方向Dにそって所定のピッチで接合部18bが形成されている。また、屋根防水ユニット1Pにおける屋根ユニット1Bに接合される側の端部では、防水シート7、押さえボード6、断熱材5、勾配材3及びデッキプレート2の端縁が揃っている。一方で、反対側の端部は、防水シート7、押さえボード6、断熱材5及び勾配材3が、デッキプレート2よりも突出し、パラペット部分を形成している。プレート41は、側面視略Z形状に屈曲しており、上面部41aと防水シート7との間には、パラペット防水ユニット30と同様に、笠木35が設けられる。
屋根ユニット1Bと屋根防水ユニット1Pとの接合は、第1の実施形態における屋根ユニット1A同士の接合と同様であり、ジョイントプレート17が用いられる(図3参照)。屋根ユニット1B及び屋根防水ユニット1Pの上面側では、防水シート7間に生じる間隙が目地テープ21及び防水テープ20によって塞がれる。また、屋根防水ユニット1Pとパラペット下地115との接合は、第1の実施形態におけるパラペット防水ユニット30とパラペット下地115との接合と同様である(図5参照)。屋根防水ユニット1Pにおけるデッキプレート2の接合部18bと梁105との接合は、ボルト19aを梁105側から締結する点において、第1の実施形態と相違する。
(第3の実施形態)
次に図8〜図10を参照して第3の実施形態に係る屋根構造101Cについて説明する。屋根構造101Cでは、屋根ユニット1Aとは異なる屋根ユニット1Cを用いる点で、第1の実施形態に係る屋根構造101Aと相違しており、つまり、隣接する屋根ユニット1C間の納まりのみが第1の実施形態と相違している。以下、主として第1の実施形態と相違する点について説明し、同一の要素や部材については同一の参照番号を付して詳しい説明は省略する。
屋根ユニット1Cは、第1の実施形態における屋根ユニット1Aと基本的な構成は同じである。すなわち、屋根ユニット1Cは、デッキプレート2の上面に補強プレート11,12が配置され、その上に勾配材3、断熱材5、押さえボード6、防水シート7が順次積層されて形成される。押さえボード6からデッキプレート2までは、密着した状態で、押さえボード6側からビス14が打ち込まれている。
屋根ユニット1Cでは、隣接する他の屋根ユニット1Cと接合されない側の端部B2は、第1の実施形態と同様のパラペット防水ユニット30と接合される。屋根ユニット1Cとパラペット防水ユニット30の接合及びパラペット防水ユニット30と梁105との接合は、第1の実施形態と同様である。
一方、他の屋根ユニット1Cと接合される側の端部B2では、防水シート7、押さえボード6、断熱材5及び勾配材3の各端縁よりもデッキプレート2の端縁が飛び出している。この構成は、パラペット防水ユニット30に接合される側の端部B2と同様である。なお、屋根ユニット1C同士の接合は、ジョイントプレート17によってなされるため、他の屋根ユニット1Cと接合される側の端部B2には、ジョイントプレート17と接合するための接合部18aが形成されている。図示例における屋根ユニット1C同士の接合では、ボルトが上側から挿通されるため、接合部18aは例えばデッキプレート2の下面に設けられる。
隣接する屋根ユニット1C同士は、第1の実施形態と同様に、デッキプレート2の谷部2c同士がジョイントプレート17によって接合される。そして、当該接合部分の上方にジョイント部防水ユニット50が配置される。図9に示されるように、ジョイント部防水ユニット50は、プレート51と、勾配材3と、断熱材5と、押さえボード6と、防水シート7とを備えている。勾配材3、断熱材5、押さえボード6及び防水シート7は、屋根ユニット1Aと同様の構成である。プレート51は、板状部材であり、例えば鋼製であるが、鋼製以外にも、他の金属類、木材、木質ボード、セメント系ボード等であってもよい。
ジョイント部防水ユニット50は、プレート51の上面に勾配材3、断熱材5、押さえボード6、防水シート7が順次積層されて形成される。図示例では、プレート51は、勾配材3の下面の全面を被覆しているが、勾配材3の下面を部分的に被覆していてもよい。押さえボード6からプレート51までは、密着した状態で、押さえボード6側からワッシャー32を介してボルト54が貫通している。本実施形態では、ボルト54の先端がプレート51から突出しており、ボルト54の先端にナット55が螺合されることで、押さえボード6、断熱材5、勾配材3及びプレート51が一体的に固定される。また、プレート51におけるボルト54が貫通する位置に、勾配材3側に凹んだ凹部51aが形成されている。ボルト54の先端とナット55は、ボルト54の貫通方向に直交する方向から見たときに、凹部51aの内側に収まっている。すなわち、ボルト54の先端とナット55は、プレート51の下面よりも上側に位置している。押さえボード6の上面には、粘着剤7aによって防水シート7が接着される。なお、図示例では、防水シート7は、押さえボード6の両端部に接着されていない形態となっているが、接着されていてもよい。
図10に示されるように、ジョイント部防水ユニット50は、隣接する屋根ユニット1C間における露出した山部2bに載置された状態で、ワッシャー15を介してビス14によって隣接する屋根ユニット1Cのデッキプレート2に固定される。屋根ユニット1C及びジョイント部防水ユニット50の上面側では、防水シート7間に生じる間隙が目地テープ21及び防水テープ20によって塞がれる。
以上、各実施形態に示されたパラペット防水ユニット30、ジョイント部防水ユニット50及び屋根防水ユニット1Pでは、押さえボード6、断熱材5及びプレート31,41,51が、押さえボード6からプレート31,41,51までを貫通するビス14又はボルト54によって一体化されている。これにより、従来必要であったと考えられる、断熱材を接着する際の接着剤の塗布範囲、塗布量、養生時間等の管理が不要となる。また、接着剤のみによって断熱材を固定する場合に比べて、断熱材をより確実に固定することができるため、施工時や搬入時における断熱材の剥離や脱落を抑制することができる。したがって、施工性や搬入性が向上した防水ユニットを提供することができる。なお、各実施形態では、押さえボード6、断熱材5及びプレート31,41,51が、ビス14、ボルト54等の固定具のみによって一体化されているが、接着剤、両面テープ等の他の固定手段を併用してもよい。
また、パラペット防水ユニット30において、固定具として用いられるビス14は、その先端がプレート31から突出するように押さえボード6からプレート31までを貫通し、プレート31から突出したビス14の先端は、キャップ14aによって被覆されている。このように、ビス14の先端を被覆することによって、ビス14の先端が他の建築部材を傷つけることを防止できる。また、防水ユニットを取り扱う作業者がビス14の先端に触れることを防止することができる。
また、ジョイント部防水ユニット50において、プレート51から突出したボルト54の先端にはナット55が螺合されている。このように、ボルト54及びナット55を用いることで、押さえボード6からプレート51までをより確実に固定することができる。
また、プレート51は、ボルト54が貫通する位置に対応した凹部51aを有し、ボルト54の先端は、凹部51aの内側に収まっている。このように、ボルト54の先端が凹部51a内に収まっているため、先端によって他の建築部材が傷付けられることが抑制される。また、上記各実施形態では、例えば屋根ユニット1Aがデッキプレート2を屋根下地としているが、デッキプレート2に代えてALCパネルのような平坦な屋根下地が使用されることも考えられる。このような場合であっても、ジョイント部防水ユニット50が平坦な屋根下地の上に載置された際に、ボルト54の先端が屋根下地を傷つけることがない。
また、パラペット防水ユニット30においては、底面部31bの外縁から押さえボード6の上方まで立ち上がる側面部31c及び上面部31aを備えており、これによってパラペット部分が形成される。このように、施工手間がかかるパラペット部を含めて予めユニット化されているので現場での施工性を向上させることができる。
以上、本発明の実施の形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではない。
例えば、パラペット防水ユニットとして図11、図12、または図13に例示するような態様を採用してもよい。第1の変形例に係るパラペット防水ユニット130(図11参照)、第2の変形例に係るパラペット防水ユニット230(図12参照)、及び第3の変形例に係るパラペット防水ユニット330(図13参照)は、例えば第1の実施形態及び第3の実施形態におけるパラペット防水ユニット30に代えて使用されるものである。
第1の変形例に係るパラペット防水ユニット130は、プレート131と、勾配材3と、断熱材5と、押さえボード6と、防水シート7とを備えている。勾配材3、断熱材5、押さえボード6及び防水シート7は、屋根ユニット1Aと同様の構成である。プレート131は、板状部材であり、例えば鋼製であるが、鋼製以外にも、他の金属類、木材、木質ボード、セメント系ボード等であってもよい。
パラペット防水ユニット130は、プレート131の上面に勾配材3、断熱材5、押さえボード6、防水シート7が順次積層されて形成される。図示例では、プレート131は、勾配材3の下面の全面を被覆しているが、勾配材3の下面を部分的に被覆する態様でもよい。押さえボード6からプレート131までは、密着した状態で、押さえボード6側からワッシャー32を介してボルト54が貫通している。本実施形態では、ボルト54の先端がプレート131から突出しており、ボルト54の先端にナット55が螺合されることで、押さえボード6、断熱材5、勾配材3及びプレート131が一体的に固定される。また、プレート131におけるボルト54が貫通する位置に、勾配材3側に凹んだ凹部132が形成されている。ボルト54の先端とナット55とは、ボルト54の貫通方向に直交する方向から見たときに、凹部132の内側に収まっている。すなわち、ボルト54の先端とナット55とは、プレート131の下面よりも上側に位置している。
押さえボード6の一方側の外縁には、パラペットを形成するための立ち上がり部が設けられている。立ち上がり部は、側面部材6aと上面部材6bとを備えており、押さえボード6に対して一体的に固定されることで、側面視略Z形状となる。側面部材6a及び上面部材6bは、例えば、押さえボード6と同様の材料によって形成される板状部材である。本実施形態では、押さえボード6のパラペット側の端部が、側面部材6aの厚さの分だけ断熱材5から後退している。そして、この押さえボード6が後退した部分に、側面部材6aが上側に立ち上がるように配置される。押さえボード6と側面部材6aとは、側面部材6a側からビスが打ち込まれることによって固定されている。上面部材6bは、押さえボード6と反対側(パラペット側)に幅方向の一端が突出するように、側面部材6aの上端に配置される。上面部材6bと側面部材6aとは、上面部材6b側からビスが打ち込まれることによって固定されている。押さえボード6の上面には、粘着剤7aによって防水シート7が接着される。防水シート7は、側面部材6a及び上面部材6bまで延在しており、粘着剤7aによって側面部材6a及び上面部材6bにも接着されている。さらに、上面部材6bと防水シート7との間には、笠木35が固定される。上面部材6b、防水シート7、及び笠木35には、パラペット防水ユニット30と同様に、パラペット防水ユニット130をパラペット下地115に固定するための孔部が形成されている。
第2の変形例に係るパラペット防水ユニット230(図12参照)は、図11に示されるパラペット防水ユニット130のプレート131に代えてプレート231を備えるものである。プレート231は、側面視略Z形状の板状部材であり、略平板状の底面部231bと、底面部231bの外縁から垂直に立ち上がる側面部231cと、側面部の上端から直角に曲がって外方に延びる上面部231aとを有する。プレート231は、例えば鋼製であるが、鋼製以外にも、他の金属類、木材、木質ボード、セメント系ボードであってもよい。パラペット防水ユニット230では、底面部231bの上面に勾配材3、断熱材5、押さえボード6、防水シート7が順次積層されて形成されており、側面部材6a及び上面部材6bによって立ち上がり部が形成されている。図示例において、底面部231bは、勾配材3の下面の全面を被覆しているが、勾配材3の下面を部分的に被覆する態様でもよい。押さえボード6からプレート231までは、密着した状態で、押さえボード6側からワッシャー32を介してボルト54が貫通している。本実施形態では、ボルト54の先端がプレート231から突出しており、ボルト54の先端にナット55が螺合されることで、押さえボード6、断熱材5、勾配材3及びプレート231が一体的に固定される。また、プレート231におけるボルト54が貫通する位置に、勾配材3側に凹んだ凹部232が形成されている。ボルト54の先端とナット55とは、ボルト54の貫通方向に直交する方向から見たときに、凹部232の内側に収まっている。
プレート231の側面部231cの上側、及び、プレート231の上面部231aは、押さえボード6よりも上方に突出するように立ち上がっている。また、側面部231cは勾配材3、断熱材5及び側面部材6aに接しており、上面部231aは上面部材6bに接している。笠木35、上面部材6b及び上面部231aは、笠木35側から上面部231aまでビスが打ち込まれることによって固定されている。
第3の変形例に係るパラペット防水ユニット330(図13参照)は、図11に示されるパラペット防水ユニット130のプレート131と断熱材5との間、より詳しくは、プレート131と勾配材3との間に不燃材331が配置されている。不燃材331は、例えば、通常の火災時における火熱により燃焼しない性能を有する材料であり、建築基準法第2条第9号に定められる不燃材料のほか、建築基準法施行令第1条第5号に基いて認定された準不燃材料が含まれる。不燃材331は、ALC板、石膏ボード、ケイカル板、木毛セメント板、木片セメント板、硬質木片セメント板等であってもよい。不燃材331を用いることで、耐火性を向上できる。また、不燃材331として、断熱材5や勾配材3よりも剛性の高い板材を用いることで、強度の向上にも有利である。
以上のような、パラペット防水ユニット130,230,330によれば、上述したパラペット防水ユニット30と同様の作用効果を得ることができる。また、パラペット防水ユニット130,230,330では、側面部材6a及び上面部材6bによって立ち上がり部(パラペット部分の下地)が形成されている。上述のとおり、側面部材6a及び上面部材6bは、硬質木片セメント板、パルプ混入セメント板、木材、木質ボード、セメント系ボード等によって形成されるものであり、金属に比べて熱伝導率が低い(断熱性が高い)。そのため、パラペット防水ユニット30のようにプレート31のみによって立ち上がり部が形成された場合に比べて、冷橋を抑制することができる。
また、勾配材3がデッキプレート2と断熱材5との間に配置されている例を示したが、これに限定されない。例えば、勾配材3を断熱材5と押さえボード6との間に配置してもよい。この態様の場合、第3の変形例に係るパラペット防水ユニット330の不燃材331は、勾配材3を介在させることなく、プレート131と断熱材5との間に配置することができる。
また、パラペット防水ユニット30及び屋根防水ユニット1Pでは、固定具としてビス14が使用される例を示し、ジョイント部防水ユニット50及びパラペット防水ユニット130,230,330では、固定具としてボルト54が使用される例を示したが、これに限定されない。例えば、パラペット防水ユニット30及び屋根防水ユニット1Pの固定具としてボルト54が使用され、ジョイント部防水ユニット50及びパラペット防水ユニット130,230,330の固定具としてビス14が使用されてもよい。また、固定具は、ビス14及びボルト54に限定されるものではなく、押さえボードからプレートまでを貫通する部材であればよい。
また、パラペット防水ユニット30、屋根防水ユニット1P、及びジョイント部防水ユニット50では、プレート31,41,51と断熱材5との間、またはプレート31,41,51と勾配材3との間に不燃材は配置されていない。しかしながら、プレート31,41,51と断熱材5との間、特に、プレート31,41,51と勾配材3との間に、上記の第3の変形例に係るパラペット防水ユニット330と同様の不燃材331を配置してもよい。不燃材331を配置することにより、耐火性を向上できる。また、不燃材331として、断熱材5や勾配材3よりも剛性の高い板材を用いることで、強度の向上にも有利である。