しかし、上記した特許文献1記載の構造では、躯体が相互に離反する方向へ変位したときに、入り込み防止ばねが伸びてジョイントカバーが空隙に入り込むのを防止した後、躯体が接近し、さらに間隙の内外方向(Y方向)に変位すると、ジョイントカバーの先端が伸びた入り込み防止ばねの隙間へ入り込む可能性がある。このときにジョイントカバーが入り込み防止ばねに引っ掛かると、初期位置へ戻ろうとするジョイントカバーの動きが妨げられ、装置が破損するおそれがある。
そこで、本発明は、ジョイントカバーが空隙内へ回動することを阻止することができ、かつ、ジョイントカバーが阻止部材に引っ掛かることもないエキスパンションジョイントカバー装置を提供することを課題とする。
本発明は、上記した課題を解決するためになされたものであり、以下を特徴とする。
請求項1記載の発明は、2つの躯体間の間隙を覆うエキスパンションジョイントカバー装置であって、前記間隙を覆うジョイントカバーと、一方の躯体側に取り付けられて前記ジョイントカバーを回動可能に支持する回動支持部と、前記ジョイントカバーを前記間隙の内方へと付勢する回動付勢手段と、他方の躯体側に取り付けられて前記ジョイントカバーの先端を摺動可能に支持する見切材と、前記一方の躯体と前記他方の躯体との間に架設される侵入阻止手段と、を備え、前記見切材は、前記2つの躯体が接近したときに前記ジョイントカバーの先端を前記間隙の外方に摺動案内する傾斜面を備え、前記侵入阻止手段は、前記2つの躯体が互いに変位したときに前記ジョイントカバーが前記間隙の内方に侵入しないように阻止する面を備え、前記ジョイントカバーは、前記間隙の長手方向に所定間隔で配置された複数のブラケットと、前記複数のブラケットに固定されたカバー材と、前記ブラケットに取り付けられる固定金具と、を備え、前記固定金具は、前記ブラケットの長手方向に直交するように両側へ突出した付勢部材取付部を備え、この両側の付勢部材取付部に前記回動付勢手段を取り付けたことを特徴とする。
請求項2に記載の発明は、上記した請求項1に記載の発明の特徴点に加え、前記一方の躯体側に固定されて、躯体静止時において前記ジョイントカバーの裏側面に当接し、前記ジョイントカバーが前記間隙の内方へと回動することを規制する回動規制手段を備えていることを特徴とする。
請求項3に記載の発明は、上記した請求項1または2記載の発明の特徴点に加え、前記見切材は、躯体静止時において前記ジョイントカバーの先端が臨む第1傾斜面と、前記第1傾斜面よりも前記間隙側に設けられた第2傾斜面と、を備えることを特徴とする。
請求項4に記載の発明は、上記した請求項1〜3のいずれかに記載の発明の特徴点に加え、前記侵入阻止手段は、回動可能に連結された複数のガイド材を備えていることを特徴とする。
請求項5に記載の発明は、上記した請求項4記載の発明の特徴点に加え、前記複数のガイド材の連結部に取り付けられて前記複数のガイド材の回動を規制するガイド材規制手段を備え、前記ガイド材規制手段は、前記連結部と前記ジョイントカバーとが接近する方向に前記複数のガイド材が回動しないように規制することを特徴とする。
請求項6に記載の発明は、上記した請求項1〜5のいずれかに記載の発明の特徴点に加え、前記侵入阻止手段と前記2つの躯体の少なくともいずれかとは、引張バネを介して連結されていることを特徴とする。
請求項1に記載の発明は上記の通りであり、ジョイントカバーが回動可能に支持されているので、地震などで躯体が変位したときにジョイントカバーが回動し、ジョイントカバーが躯体に衝突しないようになっている。
また、ジョイントカバーを間隙の内方へと付勢する回動付勢手段を備えているので、躯体静止時においてジョイントカバーが外方へ浮いてしまうことがない。また、躯体変位時においては、付勢手段の付勢力に抗してジョイントカバーが移動できるので、地震等で躯体が変位したときには、ジョイントカバーが変位に追従することを妨げられない。
なお、2つの躯体が接近したときには、ジョイントカバーの先端が見切材の傾斜面によって間隙の外方へと摺動案内される。また、2つの躯体が離反したときには、ジョイントカバーが間隙の内方に侵入しないように侵入阻止手段によって阻止される。
このような構成によれば、躯体が相互に変位し、その変位が円運動を描いたときでも、ジョイントカバーが追従して変位することができる。
しかも、侵入阻止手段は、ジョイントカバーが間隙の内方に侵入しないように阻止する面を備えるので、ジョイントカバーの先端が侵入阻止手段に入り込む問題も生じない。
また、請求項2に記載の発明は上記の通りであり、前記一方の躯体側に固定されて、躯体静止時において前記ジョイントカバーの裏側面に当接し、前記ジョイントカバーが前記間隙の内方へと回動することを規制する回動規制手段を備えている。このような構成によれば、地震などで躯体が変位したときにジョイントカバーの先端が見切材から離れた場合でも、回動規制手段によってジョイントカバーの水平が維持され、ジョイントカバーが間隙の内方に回動することがない。
また、請求項1に記載の発明は上記の通りであり、固定金具は、前記ブラケットの長手方向に直交するように両側へ突出した付勢部材取付部を備え、この両側の付勢部材取付部に前記回動付勢手段を取り付けた。このような構成によれば、ブラケットの両側に取り付けた少なくとも2以上の回動付勢手段によってブラケットを安定して付勢することができる。
また、請求項3に記載の発明は上記の通りであり、前記見切材は、躯体静止時において前記ジョイントカバーの先端が臨む第1傾斜面と、前記第1傾斜面よりも前記間隙側に設けられた第2傾斜面と、を備える。このような構成によれば、躯体が相互に接近する方向へ変位したときには、第1傾斜面によってジョイントカバーを間隙の外方にガイドすることができ、また、躯体が相互に離反し、次に躯体が相互に接近する方向へ変位したときには、第2傾斜面によってジョイントカバーを間隙の外方にガイドすることができる。よって、躯体がどちらに変位した場合でも見切材の上面に沿ってスムーズにジョイントカバーを摺動させることができる。
また、請求項4に記載の発明は上記の通りであり、前記侵入阻止手段は、回動可能に連結された複数のガイド材を備えている。このような構成によれば、複数のガイド材が回動することで、ガイド材を変形させることなく侵入阻止手段を変形させることができる。よって、地震などで躯体が変位したときでも、この変位に対応して侵入阻止手段が変形し、ジョイントカバーが間隙の内方に侵入することを確実に阻止することができる。
また、請求項5に記載の発明は上記の通りであり、前記複数のガイド材の連結部に取り付けられて前記複数のガイド材の回動を規制するガイド材規制手段を備え、前記ガイド材規制手段は、前記連結部と前記ジョイントカバーとが接近する方向に前記複数のガイド材が回動しないように規制する。このような構成によれば、地震などで躯体が離反し、次に接近する方向に変位したときでも、連結部がジョイントカバーへ接近する方向に回動しないので、回動した侵入阻止手段によるジョイントカバーとの接触や接触によるジョイントカバーの破損等を防止することができる。
なお、このようなガイド材規制手段を設けない場合、連結部がジョイントカバーへ接近する方向に回動することを防止するには、躯体静止時において複数のガイド材がなるべく鋭角を形成するように連結し、躯体が相互に離反する方向へ変位したとしても、複数のガイド材がまっすぐに伸びきらないようにすればよい。しかしながら、複数のガイド材がまっすぐに伸びきらないようにするためには、複数のガイド材を長めに形成しなければならず、部材が大型化したり、設置スペースが限定されたりといった問題が生じる。この点、本発明によれば、複数のガイド材を長めに形成する必要がないので、部材が大型化したり、設置スペースが限定されたりといった問題が発生しない。
また、請求項6に記載の発明は上記の通りであり、前記侵入阻止手段と前記2つの躯体の少なくともいずれかとは、引張バネを介して連結されている。このような構成によれば、金物等で構成された侵入阻止手段だけでは網羅し難い大きな変位や角度でも、引張バネの伸縮により変位に追従することができる。
また、躯体静止時において侵入阻止手段の長さが最長となるようにした場合(侵入阻止手段が躯体静止時から伸びないようにした場合)でも、躯体が相互に離反する方向へ変位したときには、引張バネによって変位に追従することができる。よって、侵入阻止手段(を構成するガイド材)の長さを可能な限り短くすることができるので、部材が大型化したり、設置スペースが限定されたりといった問題が発生しない。
本発明の実施形態について、図を参照しながら説明する。
本実施形態に係るエキスパンションジョイントカバー装置10は、図1に示すような2つの躯体(一方の躯体51及び他方の躯体52)間に設けられる。一方の躯体51と他方の躯体52とは、互いに相対する対向壁面51a,52aを備えており、この対向壁面51a,52aの間に間隙53が形成されている。エキスパンションジョイントカバー装置10は、この間隙53を覆うように設置される。本実施形態においては、図1に示すように、一方の躯体51の対向壁面51aに直交する平行壁面51bと、他方の躯体52の対向壁面52aに直交する平行壁面52bと、が略面一となっており、この2つの平行壁面51b,52bの間にエキスパンションジョイントカバー装置10が設けられている。
このエキスパンションジョイントカバー装置10は、躯体が相互に離反する方向へ変位し、その変位が円運動を描いた場合でも、その変位に追従することができるようになっている。
本実施形態に係るエキスパンションジョイントカバー装置10は、図1及び図2に示すように、間隙53を覆うジョイントカバー11と、一方の躯体51側に取り付けられてジョイントカバー11を回動可能に支持する回動支持部20と、ジョイントカバー11を間隙53の内方へと付勢する回動付勢手段25と、ジョイントカバー11が間隙53の内方へと回動することを規制する回動規制手段26と、他方の躯体52に取り付けられる跳上側フレーム材30と、跳上側フレーム材30の先端に取り付けられた先端蝶番31と、他方の躯体52側に取り付けられてジョイントカバー11の先端を摺動可能に支持する見切材33と、他方の躯体52と見切材33との間に配置されるシール材34と、一方の躯体51と他方の躯体52との間に架設される侵入阻止手段40と、侵入阻止手段40に取り付けられた基端引張バネ47と、を備える。
ジョイントカバー11は、図1に示すような板状部材であり、2つの躯体間に架設される。このジョイントカバー11の表面は、躯体静止時において平行壁面51b,52bに対して略面一となっている。このジョイントカバー11は、ブラケット12と、カバー材13と、塞ぎ材14と、摺動部材15と、固定金具16と、を備える。
ブラケット12は、間隙53の幅方向(図1のX方向)に延びるように配置される金属製の長尺材であり、図1及び図4に示すように、間隙53の長手方向に所定間隔で複数配置されている。このブラケット12は、カバー材13の裏面に取り付けられ、カバー材13の裏側方向に向けてリブ状に突出するようになっている。このブラケット12の一端部は、図1に示すように、一方の躯体51に回動可能に連結される。また、このブラケット12の他端部は、図1に示すように、見切材33(後述)の表面に当接して支持されている。
カバー材13は、ジョイントカバー11の表面を覆う金属製の板材であり、複数のブラケット12に固定されて裏面から支持されている。ジョイントカバー11の大きさによっては、カバー材13を間隙53の長手方向に複数連設して使用してもよい。このカバー材13のX方向の両端部は、図1に示すように、裏面側に折り曲げられている。特に、他方の躯体52側においては、図2(b)に示すように、後述する第1傾斜面33aに対向するように傾斜した面を形成するように折り曲げられている。
塞ぎ材14は、カバー材13の一方の躯体51側の端部に取り付けられる樹脂製の弾性部材である。この塞ぎ材14は、ジョイントカバー11が回動したときに追従して変形し、ホコリ等の侵入を防ぐ。
摺動部材15は、カバー材13の他方の躯体52側の端部付近に取り付けられる樹脂製の弾性部材である。この摺動部材15は、見切材33に当接するようにカバー材13の裏面側に取り付けられる。この摺動部材15を設けることで、ジョイントカバー11が見切材33の表面を摺動する際にカバー材13が見切材33に直接接触しないようになっている。このように摩擦係数が大きい金属同士が接触しないようにすることで、部材の破損を防止している。また、この摺動部材15は、ジョイントカバー11と見切材33との隙間を塞ぐことでホコリ等の侵入を防ぐ。また、この摺動部材15は、躯体が変位してジョイントカバー11が見切材33にぶつかったときの衝撃を吸収する緩衝材としても機能する。
固定金具16は、図4に示すように、ブラケット12に取り付けられる平板状の金具である。この固定金具16は、ブラケット12の長手方向に直交するように両側へ突出した付勢部材取付部16aを備える。この両側の付勢部材取付部16aには、後述する回動付勢手段25が取り付けられる。このように、固定金具16の両側へ突出した付勢部材取付部16aに回動付勢手段25を取り付けることで、ブラケット12の幅方向の外側に付勢部材取付部16aが取り付けられ、両側からブラケット12が付勢されている。よって、地震などにより躯体が変位したときも安定してブラケット12を付勢することができる。
なお、この固定金具16には複数の孔が貫通形成されており、この孔を使用して複数の回動付勢手段25を取り付けることができる。本実施形態においては4つの孔が設けられているので、最大左右2個ずつの4個の回動付勢手段25を取り付けることができる。このため、強度等の条件によって回動付勢手段25の数を増減させることができる。
回動支持部20は、ジョイントカバー11を回動可能に支持するためのものであり、図2(a)に示すように、フレーム材21と、ブラケット用蝶番23と、を備える。
フレーム材21は、図2(a)および図4に示すように、一方の躯体51の対向壁面51aに取り付けられる金属製の長尺材である。このフレーム材21には、別部材を取り付けるための取付部が複数設けられている。すなわち、間隙53の最も外側に蝶番取付部21aが設けられ、蝶番取付部21aよりも内側に規制手段取付部21bが設けられ、規制手段取付部21bよりも内側に付勢手段取付部21cが設けられ、付勢手段取付部21cよりも内側にバネ取付部22aが設けられている。蝶番取付部21aは、ブラケット用蝶番23を取り付けるための部位である。規制手段取付部21bは、回動規制手段26を取り付けるための部位である。付勢手段取付部21cは、回動付勢手段25を取り付けるための部位である。バネ取付部22aは、基端引張バネ47を取り付けるための部位である。本実施形態においては、バネ取付部22aは、フレーム材21に固定された別部材の延長部22に設けられている。このため、長さの異なる延長部22を使用することで、間隙53の外側(または内側)にバネ取付部22aの位置を自由に設定可能となっている。
ブラケット用蝶番23は、一対の可動片を回動可能に連結した蝶番である。一方の可動片はフレーム材21の蝶番取付部21aに固定され、他方の可動片はブラケット12に固定される。このようにブラケット用蝶番23を取り付けることで、ジョイントカバー11が一方の躯体51に対して間隙53の内外方向(図1のY方向)へ回動可能となっている。
回動付勢手段25は、図2(a)に示すようなバネであり、一端がフレーム材21の付勢手段取付部21cに取り付けられ、他端がブラケット12の裏側に取り付けられる。この回動付勢手段25は、ジョイントカバー11を間隙53の内方へと引っ張って付勢している。
回動規制手段26は、図2(a)に示すようなL字形の金具であり、一端がフレーム材21の規制手段取付部21bに固定されて、他端が躯体静止時においてブラケット12の裏側に当接している。この回動規制手段26がブラケット12の裏側に当接した状態では、ジョイントカバー11が対向壁面51a,52aに対して垂直となっている。そして、この回動規制手段26によって、これ以上ジョイントカバー11が間隙53の内方へと回動しないように規制されている。
跳上側フレーム材30は、図4に示すように、他方の躯体52の対向壁面52aに取り付けられる金属製の長尺材である。この跳上側フレーム材30は、一方の躯体51の方向へ突出して設けられており、その先端には、図2(b)に示すように、先端蝶番31が取り付けられている。
先端蝶番31は、一対の可動片を回動可能に連結した蝶番である。一方の可動片は跳上側フレーム材30に固定され、他方の可動片は侵入阻止手段40(第2ガイド材42)に固定される。このように先端蝶番31を取り付けることで、侵入阻止手段40が他方の躯体52に対して間隙53の内外方向(図1のY方向)へ回動可能となる。
見切材33は、跳上側フレーム材30の表面(間隙53の外側に臨む面)を覆うように取り付けられている。この見切材33は、躯体静止時においてジョイントカバー11の先端が臨む第1傾斜面33aと、第1傾斜面33aよりも間隙53側に設けられた第2傾斜面33cと、第1傾斜面33aと第2傾斜面33cとを連係する平坦面33bと、第2傾斜面33cよりも間隙53側に設けられた平坦面33dと、平坦面33dから間隙53の内方へ屈折した屈折片33eと、を備える。第1傾斜面33aは、2つの躯体が接近したとき(図1から図6(a)に変位したとき)にジョイントカバー11の先端を間隙53の外方に摺動案内する傾斜面である。第2傾斜面33c、平坦面33d、および屈折片33eは、2つの躯体が離反し(図6(b))、また、静止状態に復旧するとき(図1参照)にジョイントカバー11の先端を間隙53の外方に摺動案内する面である。躯体静止時には、ジョイントカバー11の先端は平坦面33bに当接している。
シール材34は、図2(b)に示すように、他方の躯体52と見切材33との間の隙間34aを埋めるように取り付けられ、ホコリ等の侵入を防ぐためのものである。また、2つの躯体が接近し(図6(a)参照)、また、静止状態に復旧するとき(図1参照)にジョイントカバー11の先端がシール材34の上面をスムーズに摺動し、隙間34aへの入り込みを防止する。
侵入阻止手段40は、2つの躯体が離反したときにジョイントカバー11が間隙53の内方に侵入しないように阻止するためのものであり、第1ガイド材41と、第2ガイド材42と、第1ガイド材41と第2ガイド材42とを回動可能に連結して連結部40bを形成する連結蝶番43と、第1ガイド材41及び第2ガイド材42の回動を規制するガイド材規制手段44と、を備える。
第1ガイド材41及び第2ガイド材42は、図1に示すように、X方向に連結されて一方の躯体51と他方の躯体52との間に架設される金属製の柱状部材であり、互いにほぼ同じ長さで形成されている。また、連結された第1ガイド材41及び第2ガイド材42の上面は、ジョイントカバー11を摺動可能に案内する平坦面40aを形成している。なお、後述する連結蝶番43は、この平坦面40aが連結部40bにおいても連続するように第1ガイド材41と第2ガイド材42とを連結している。
本実施形態においては、図1に示すように、躯体静止時において、第1ガイド材41がジョイントカバー11とほぼ平行であり、第2ガイド材42がジョイントカバー11に対して傾斜するように設定されている。このように第1ガイド材41と第2ガイド材42とが鈍角を形成して連結されることで、第2ガイド材42の上面が傾斜し、見切材33に対してなだらかに連続するようになっている。これにより、ジョイントカバー11が、見切材33の上面と平坦面40aとの間をスムーズに摺動できるようになっている。
連結蝶番43は、一対の可動片を回動可能に連結した蝶番である。一方の可動片は第1ガイド材41の端部に固定され、他方の可動片は第2ガイド材42の端部に固定される。このように連結蝶番43を取り付けることで、第1ガイド材41及び第2ガイド材42が間隙53の内外方向(図1のY方向)へ回動可能となる。
ガイド材規制手段44は、図3に示すように、第1ガイド材41及び第2ガイド材42の連結部40bに取り付けられる金具である。本実施形態においては、ガイド材規制手段44は、連結蝶番43の裏側に固定されており、第1ガイド材41及び第2ガイド材42が所定の角度を超えて回動しないように規制している。このガイド材規制手段44は、連結部40bとジョイントカバー11とが接近する方向に第1ガイド材41及び第2ガイド材42が回動しないように規制している。すわなち、本実施形態においては、躯体静止時において第1ガイド材41及び第2ガイド材42が鈍角を形成しており、第1ガイド材41及び第2ガイド材42がこれ以上広角とならないように規制している。
基端引張バネ47は、侵入阻止手段40(第1ガイド材41)と一方の躯体51とを連結するバネである。本実施形態においては、図4に示すように、第1ガイド材41の端部の両側に2つの基端引張バネ47を取り付けている。この基端引張バネ47が伸縮することにより、侵入阻止手段40は一方の躯体51に対して変位可能となっている。
上記したようなエキスパンションジョイントカバー装置10によれば、地震等による大きな変位が発生し、その変位が円運動を描いてもジョイントカバー11が躯体の変位に追従することができる。
すなわち、Y方向への変位が発生した場合には、図5に示すように、ジョイントカバー11が回動したり、基端引張バネ47が伸縮したりして、躯体の変位に追従する。なお、図5(a)に示すようにジョイントカバー11の裏側には侵入阻止手段40が設けられているため、ジョイントカバー11が間隙53の内側に入り込まないようになっている。また、図5(b)に示すようにジョイントカバー11の先端が他方の躯体52から離れた場合でも、回動規制手段26によって、ジョイントカバー11が対向壁面51aに対して直角に保たれるようになっている。よって、ジョイントカバー11が間隙53の内側に入り込むことがない。
また、躯体が接近および離反するように変位した場合には、図6に示すように、ジョイントカバー11が回動したり、基端引張バネ47が伸縮したりして、躯体の変位に追従する。なお、図6(a)に示すように躯体が接近した場合でも、ジョイントカバー11の先端が見切材33によって間隙53の外側へ誘導されてジョイントカバー11が跳ね上げられ、ジョイントカバー11が間隙53の内側に入り込まないようになっている。さらに、図6(b)に示すように躯体が離反した場合でも、回動規制手段26によって、ジョイントカバー11が対向壁面51aに対して直角に保たれるようになっている。よってジョイントカバー11が間隙53の内側に入り込むことがない。
なお、図7は変形例1に係るエキスパンションジョイントカバー装置10の図である。この図が示すように、侵入阻止手段40の間隔が近い場合には、基端引張バネ47が交差する場合がある。この場合には、延長部22の長さを調整することで、基端引張バネ47の取り付け位置を変更すればよい。例えば、図7に示す侵入阻止手段A及び侵入阻止手段Cには、侵入阻止手段Bよりも、間隙53の外側(または内側)に基端引張バネ47を取り付けるようにしてもよい。
また、図8及び図9は変形例2に係るエキスパンションジョイントカバー装置10の図である。この図が示すように、侵入阻止手段40(第2ガイド材42)と他方の躯体52とを先端引張バネ48で連結してもよい。例えば、第2ガイド材42にバネ用金具45を取り付け、このバネ用金具45に先端引張バネ48を取り付けてもよい。図9に示す例では、バネ用金具45は、第2ガイド材42の長手方向に直交するように両側へ突出したバネ取付部45aを備える。この両側のバネ取付部45aには、先端引張バネ48が取り付けられる。
また、上記した実施形態においては、2つの平行壁面51b,52bの間にエキスパンションジョイントカバー装置10を設ける例について説明したが、これに限らず、直交する面の間にエキスパンションジョイントカバー装置10を設けてもよい。例えば、一方の躯体51の対向壁面51aと他方の躯体52の平行壁面52bとが垂直に交わるような構造において、この対向壁面51aと平行壁面52bとの間にエキスパンションジョイントカバー装置10を設けてもよい。
以上説明したように、本実施形態によれば、ジョイントカバー11が回動可能に支持されているので、地震などで躯体が変位したときにジョイントカバー11が変位に追従し、ジョイントカバー11が躯体に衝突しないようになっている。
また、ジョイントカバー11を間隙53の内方へと付勢する回動付勢手段25を備えているので、躯体静止時においてジョイントカバー11が外方へ浮いてしまうことがなく、さらに、回動付勢手段25が引張バネによって構成されているため、地震等で躯体が変位したときには、ジョイントカバー11が変位に追従することを妨げない。
なお、2つの躯体が接近したときには、ジョイントカバー11の先端が見切材33の第1傾斜面33aによって間隙53の外方へと摺動案内される。また、2つの躯体が離反したときには、ジョイントカバー11が間隙53の内方に侵入しないように回動規制手段26や侵入阻止手段40によって阻止される。
このような構成によれば、躯体が相互に離反する方向へ変位し、その変位が円運動を描いたときでも、ジョイントカバー11が追従して変位することができる。
しかも、侵入阻止手段40は、ジョイントカバー11が間隙53の内方に侵入しないように阻止する平坦面40aに隙間がないので、ジョイントカバー11の先端が侵入阻止手段40に入り込む問題も生じない。
また、一方の躯体51側に固定されて、躯体静止時においてジョイントカバー11の裏側面に当接し、ジョイントカバー11が間隙53の内方へと回動することを規制する回動規制手段26を備えている。このような構成によれば、地震などで躯体が変位したときにジョイントカバー11の先端が見切材33から離れた場合でも、回動規制手段26によってジョイントカバー11の水平が維持され、ジョイントカバー11が間隙53の内方に回動することがない。
また、固定金具16は、ブラケット12の長手方向に直交するように両側へ突出した付勢部材取付部16aを備え、この両側の付勢部材取付部16aに回動付勢手段25を取り付けた。このような構成によれば、ブラケット12の両側に取り付けた少なくとも2以上の回動付勢手段25によってブラケット12を安定して付勢することができる。
また、見切材33は、躯体静止時においてジョイントカバー11の先端が臨む第1傾斜面33aと、第1傾斜面33aよりも間隙53側に設けられた第2傾斜面33cと、を備える。このような構成によれば、躯体が相互に接近する方向へ変位したときには、第1傾斜面33aによってジョイントカバー11を間隙53の外方にガイドすることができ、また、躯体が相互に離反し、次に躯体が相互に接近する方向へ変位したときには、第2傾斜面33cおよび平坦面33d、屈折片33eによってジョイントカバー11を間隙53の外方にガイドすることができる。よって、躯体がどちらに変位した場合でも見切材33の上面に沿ってスムーズにジョイントカバー11を摺動させることができる。
また、侵入阻止手段40は、回動可能に連結された複数のガイド材を備えている。このような構成によれば、複数のガイド材が回動することで、ガイド材を変形させることなく侵入阻止手段40を変形させることができる。よって、地震などで躯体が変位したときでも、この変位に対応して侵入阻止手段40が変形し、ジョイントカバー11が間隙53の内方に侵入することを確実に阻止することができる。
また、複数のガイド材の連結部40bに取り付けられて複数のガイド材の回動を規制するガイド材規制手段44を備え、ガイド材規制手段44は、連結部40bとジョイントカバー11とが接近する方向に複数のガイド材が回動しないように規制する。このような構成によれば、地震などで躯体が離反し、次に接近する方向に変位したときでも、連結部40bがジョイントカバー11へ接近する方向に回動しないので、侵入阻止手段40によるジョイントカバー11との接触や接触によるジョイントカバー11の破損等を防止することができる。
なお、このようなガイド材規制手段44を設けない場合、連結部40bがジョイントカバー11へ接近する方向に回動することを防止するには、躯体静止時において複数のガイド材がなるべく鋭角を形成するように連結し、躯体が相互に離反する方向へ変位したとしても、複数のガイド材がまっすぐに伸びきらないようにすればよい。しかしながら、複数のガイド材がまっすぐに伸びきらないようにするためには、複数のガイド材を長めに形成しなければならず、部材が大型化したり、設置スペースが限定されたりといった問題が生じる。この点、本発明によれば、複数のガイド材を長めに形成する必要がないので、部材が大型化したり、設置スペースが限定されたりといった問題が発生しない。
また、侵入阻止手段40と2つの躯体の少なくともいずれかとは、引張バネを介して連結されている。このような構成によれば、金物等で構成された侵入阻止手段40だけでは網羅し難い大きな変位や角度でも、引張バネの伸縮により変位に追従することができる。
また、躯体静止時において侵入阻止手段40の長さが最長となるようにした場合(侵入阻止手段40が躯体静止時から伸びないようにした場合)でも、躯体が相互に離反する方向へ変位したときには、引張バネによって変位に追従することができる。よって、侵入阻止手段40(を構成するガイド材)の長さを可能な限り短くすることができるので、部材が大型化したり、設置スペースが限定されたりといった問題が発生しない。