以下、本発明の実施の形態に係る耐震ラッチ付き開閉体閉塞装置10について、図面を用いて詳細に説明する。なお、開閉体とは、引き戸や引き出しを含む総称をいうものとし、本実施の形態では、開閉体の一例として2つの引き戸4A、4Bを用いたものについて説明する。また、本明細書で使用する上下、左右、前後の方向は、図1(B)を基準に見たときの方向をいうものとする。なお、図1(B)では、戸開側とは紙面左方向を示し、戸閉側とは紙面右方向を示す。
図1は、本発明に係る耐震ラッチ付き開閉体閉塞装置10が取り付けられた収納庫1を示す正面図であって、(A)は左側の引き戸4Aが閉じた状態の上部拡大図、(B)は右側の引き戸4Bが閉じた状態の上部拡大図である。また、図2は、図1(B)で示すA−A線による断面図である。この収納庫1は、例えば、システムキッチンであり、その内部には食器類や調理器具などが収納される。
収納庫1には、図1(A)および図1(B)に示すように、上側に位置し、左右に亘って一体に構成された天井部2と、左右両側に位置する戸当たり部3A、3Bとが設けられている。2つの引き戸4A、4Bは、収納庫1の手前側の開口を塞ぐように、前後方向(前側に引き戸4A、奥側に引き戸4B)に並べて配置されている。図1(A)で示す引き戸4Aは、収納庫1の左側部分の開口を開閉し、図1(B)で示す引き戸4Bは収納庫1の右側部分の開口を開閉する。
また、天井部2の前側であって引き戸4A、4Bの上側には、引き戸4A、4Bを左右方向に案内するガイドレール5が取り付けられている。このガイドレール5は、収納庫1の左右方向の全長に亘って設けられている。引き戸4A、4Bは、このガイドレール5の左右方向(長手方向)に沿って左右の戸当たり部3A、3Bの間をスライド移動できるようになっている。
ガイドレール5の左側部分には、図1(A)に示すように、左側の引き戸4Aに対応する耐震ラッチ付き開閉体閉塞装置10が設けられている。また、ガイドレール5の右側部分には、図1(B)および図2に示すように、右側の引き戸4Bに対応する耐震ラッチ付き開閉体閉塞装置10が設けられている。
これらの耐震ラッチ付き開閉体閉塞装置10は左右で同じものが使用されている。より具体的には、右側の耐震ラッチ付き開閉体閉塞装置10は、左側に位置する耐震ラッチ付き開閉体閉塞装置10の上下をそのままにした状態で左右を反転させる態様で取り付けられたものである。
以下、右側の耐震ラッチ付き開閉体閉塞装置10(図1(B)参照)について説明を行い、同じ構造を有する左側の耐震ラッチ付き開閉体閉塞装置10(図1(A)参照)についての説明は省略する。
この耐震ラッチ付き開閉体閉塞装置10は、引き戸4Bを引き込むための引込部本体20と、引き戸4Bの上部に取り付けられて引き戸4Bと一緒に開閉方向へ移動する引き戸側係合体30とで構成されている。
引込部本体20は、ガイドレール5内部の所定の位置に取り付けられる。一方、引き戸側係合体30は、引き戸4Bが所定の位置まで閉じられたときに、引込部本体20内部の開閉体閉塞機構50(図4参照。詳細は後述する)によって捕捉され、引き戸4Bが完全に閉じた位置まで誘導される。また、引込部本体20の内部には、耐震ラッチ機構40(図4参照。詳細は後述する)も設けられており、引き戸側係合体30によってラッチが解除されるようになっている。
ガイドレール5の断面形状は、図2に示すように、下側が開口する略コ字形状に形成されている。ガイドレール5の上下方向の中央部分には、内側面から内側中央に向かって突出する2つの上側レール部5A、5Aがそれぞれ設けられている。また、ガイドレール5の下側部には、同様に、2つの下側レール部5B、5Bがそれぞれ設けられている。この前側のレール部5A、5Bは、前側の引き戸4Aを左右に案内するためのものであり、奥側のレール部5A、5Bは、奥側の引き戸4Bを左右に案内するためのものである。
また、ガイドレール5の内部の上側であって、2つの上側レール部5Aのさらに上側には、引込部本体20を取り付けるための取付スペースが形成されている。この引込部本体20は、ガイドレール5の端部から挿入されて、ねじなどの締結部材(図示せず)によってガイドレール5に固定される。
図3は、引き戸4B側に取り付けられた引き戸側係合体30を単体で示す斜視図である。
引き戸側係合体30は、平板を略L字状に折り曲げて形成されており、上下方向に起立する本体部31と、この本体部31の下端部から奥側に向けて略水平に突出する折り曲げ部32とを備えている。
本体部31の奥側には、左右方向へ転動可能な2つのガイドローラ34、34が回転軸34A、34Aを介して取り付けられている。この2つのガイドロ−ラ34、34は、図2に示すように、上述した上側レール部5Aおよび下側レール部5Bの間に挿入され、下側レール部5B上を自由に転動する。
また、折り曲げ部32には、下方向へ延在する引き戸取付ピン33が取り付けられている。この引き戸取付ピン33は、図2に示すように、引き戸4Bを吊り下げる態様で引き戸4Bの上面部に埋め込まれる。
この引き戸側係合体30は、図2に示すように、引き戸4Bの上側部分であって、引き戸4Bの前後方向における厚みの範囲内で収まるように形成されている。そのため、引き戸4Aと引き戸4Bが前後方向に並列に並んだとしても、それぞれの引き戸側係合体30同士が干渉することがない。そのため、引き戸を前後方向に複数枚並べて設置したとしても(例えば、3枚戸など)、この引き戸側係合体30を各引き戸に取り付けることができる。
また、本体部31の上側には、本体部31の上端から上方へ突出する3つの突出片(以下、左側から、第1突出片35、第2突出片36、第3突出片37)が設けられている。これらの第1〜第3突出片35、36、37は、開閉方向に対してほぼ直線上に揃えて配置されている(図2および図9〜図13参照)。また、これらの第1〜第3突出片35、36、37は、本体部31から少し前側へ折り曲げられながら上方へ折り曲げられている。このように本体部31の位置と前後方向にずらすことで、図2に示すように、前側および奥側の引き戸4A、4Bにそれぞれ取り付けられたときに、引き戸側係合体30の第1〜第3突出片35、36、37が、引込部本体20の中央部の係合体入出穴23B(図2参照。詳細は後述する)に入り込むようにしている。これにより、引き戸側係合体30を左右で共通に使用できるようにしている。
また、第2突出片36および第3突出片37には、その上側部を覆うように緩衝部材39がそれぞれ取り付けられている。この緩衝部材39は、例えば、緩衝ゴムで形成されている。この緩衝部材39によって、詳細は後述するが、開閉体閉塞機構50が第3突出片37を捕捉する動作、および、耐震ラッチ機構40が第2突出片36(或いは、第3突出片37)と突き当たる動作の際の衝撃(振動)や係合音を低減させている。
図4は、引込部本体20を上側から見た平面図であって、蓋部80を省略して示したものであり、図5は、引込部本体20を右斜め上側から見た分解斜視図である。また、図6は、収容体21の左側部分を拡大して示す平面図、図7は耐震ラッチ機構40の拡大平面図である。さらに、図8(A)は、耐震ラッチ機構40が取り付けられる部分の収容体21の拡大平面図、図8(B)は、図8(A)のB−B断面図であって、感震体42を二点鎖線で示したものである。
引込部本体20は、図4に示すように、略直方体形状に形成されており、引き戸4Bの開閉方向に長尺な形状に形成されている。この引込部本体20は、図4および図5に示すように、引込部本体20の外郭部分を構成し、上側に開口部21Bを有する収容体21と、この収容体21の内部に収容される耐震ラッチ機構40および開閉体閉塞機構50とを備えている。
収容体21の左側端部には、この端部からさらに左側へ突出する取付部21Aが形成されている。この取付部21Aには、上下方向に貫通する取付穴22Aが設けられており、この取付穴22Aに下側からねじ等の締結部材を挿通させることで、引込部本体20をガイドレール5に取り付けている。また、収容体21の右側端部には、同様に、ガイドレール5に取り付けるための取付穴22Bが上下方向に貫通する態様で設けられている。
また、収容体21の上側の開口部21Bには、図5に示すように、その上側から蓋部80が取り付けられ、この開口部21Bの全体を閉塞する。
収容体21の底部21Cには、図6、図7、図8(A)に示すように、係合体移動長穴23Aが形成されている。この係合体移動長穴23Aは、収容体21の前後方向の中央に位置しており、かつ、収容体21の左側部21Dから引き戸4Bの開閉方向(左右方向)に延在している。また、収容体21の左側部21Dには、図2に示すように、収容体底部21Cの係合体移動長穴23Aの端部から上側に延びる係合体入出穴23Bが形成されている。この係合体入出穴23Bの高さ寸法および前後方向の寸法は、引き戸側係合体30の第1〜第3突出片35、36、37が通過可能な寸法に形成されている。
これにより、引き戸側係合体30の第1〜第3突出片35、36、37は、引き戸4Bを開側から閉方向に移動させると、係合体入出穴23Bから引込部本体20の内部に入り込み、係合体移動長穴23Aに沿って引込部本体20の内部を移動するようになる。
また、収容体底部21Cには、図6、図7、図8(A)、図8(B)に示すように、係合体移動長穴23Aよりも奥側であって収容体21の左側の位置に、耐震ラッチ機構40を取り付けるためのラッチ体回動軸24、左右傾斜部25、中央傾斜部26、および貫通長穴27が形成されている。耐震ラッチ機構40は、図4、図5、特に図7に示すように、この部分に構成されている。
耐震ラッチ機構40は、ラッチ体41と、2つの感震体42とで構成されている。ラッチ体41には、図7に示すように、その左側部分にラッチ体回動軸24に挿通される取付穴41Aと、この取付穴41Aの右側に配置され、奥側に向かって突出する2つの山状部41Bとが形成されている。この山状部41Bには、左右方向に対して傾斜する傾斜面41Cがそれぞれ設けられている。
ラッチ体回動軸24は、収容体底部21Cから上側に向かって延在している。これにより、ラッチ体41は、ラッチ体回動軸24を中心に図7のR1方向へ水平に回動することができるようになる。また、ラッチ体41がR1方向へ回動すると、ラッチ体41の左上側に位置する角部41Eが収納体21の内側面と当接すると共に、ラッチ体41の左下側に位置する当接部41Fが収納体21の位置決部21Fと当接する。これらが当接することにより、ラッチ体41の回動範囲が規制される(回動した状態は図12参照)。
一方、感震体42は、図5、図7および図8(B)に示すように、円筒形状の押圧突部42Bと、この押圧突部42Bの奥側端部に円周状に形成されたフランジ部42Aとで構成されている。
また、2つの左右傾斜部25、25および中央傾斜部26は、図8(A)および図8(B)に示すように、2つの底部Eを中心に、左右の上側に向かってそれぞれ斜めに傾斜している。また、貫通長穴27は、これらの左右傾斜部25および中央傾斜部26の奥側に形成されており、この収容体底部21Cを貫通する態様で形成されている。この貫通長穴27の前後方向の幅寸法は、感震体42のフランジ部42Aの厚み寸法よりも若干大きく形成されている。
この感震体42は、図8(B)に示すように、2つの底部Eに押圧突部42Bがくるように組み付けられる。このとき、感震体42のフランジ部42Aの下部は貫通長穴27に入り込むように取り付けられる。これにより、感震体42は、貫通長穴27の長手方向(開閉方向T1(図7参照))へは移動できるようになる一方、収容体21の前後方向には移動できないように規制される。
感震体42の押圧突部42Bは、開閉方向への振動が生じた場合、この開閉方向と同一方向であるT1方向(図7参照)へと移動する。そして、所定以上の振動が生じた場合には、感震体42は、左右傾斜部25および中央傾斜部26の傾斜に抗して左右へ大きく移動し、ラッチ体41の山状部41Bの傾斜面41Cと当接する。これにより、感震体42は、ラッチ体41を図7のR1方向へと回動させるようになる。
なお、感震体42は、開閉方向と異なる方向(例えば、T1方向と直交する方向)の振動を検出しないようにしている。すなわち、引き戸4Bが開閉する方向への振動以外では、引き戸4Bを開こうとする力が生じ難いためである。これにより、T1方向と直交する方向に検知する構造(例えば、特許文献1の技術では、全方向の振動を検出するようにしている)を省き、耐震ラッチ機構40をより小さいスペースで構成できるようにしている。
他方、収容体底部21Cには、図6に示すように、耐震ラッチ機構40が取り付けられる部分の右側であって係合体移動長穴23Aよりも奥側の位置に、略L字形状のガイド溝28が形成されている。このガイド溝28は、詳細は後述する開閉体閉塞機構50の係止体52に設けられた案内突起54をガイドするためのものである。このガイド溝28は、左右方向に延びる左右方向ガイド部28Aと、この左右方向ガイド部28Aの左端部から奥側に湾曲する態様で延びる前後方向ガイド部28Bとで構成されている。
開閉体閉塞機構50は、図4および図5に示すように、収容体21の内部に収容され、この収容体21の内部で開閉方向へ移動可能な移動収容体70と、この移動収容体70内に組み付けられるダンパーユニット51および引張ばねユニット60と、ダンパーユニット51の左側に設けられた係止体52とで構成されている。
移動収容体70は、図4に示すように、開閉方向に長尺に形成されており、収容体21の内側に収容され、収容体21に対してスライド可能に取り付けられる。この移動収容体70の内部には、奥側収納部70Aと前側収納部70Bとが設けられている。これらの奥側収納部70Aおよび前側収納部70Bの右側端部の位置は、左右方向において同じ位置に揃えてある。一方、奥側収納部70Aの左右方向の長さは、前側収納部70Bの左右方向の長さよりも短く形成されている。すなわち、移動収容体70の全体形状は、矩形状の左側奥部が切り欠かれたような形状になっている。この切り欠かれた部分は、収容体21の内側でスライド移動したときに、上述した耐震ラッチ機構40のラッチ体41と干渉しないようにするために設けられている。
図4および図5に示すように、奥側収納部70Aには、ダンパーユニット51が組み付けられ、前側収納部70Bには、引張ばねユニット60が組み付けられる。
ダンパーユニット51は、出力軸51Bと、この出力軸51Bを軸方向に進退自在に保持している略円柱状のユニット本体51Aとを有している。ユニット本体51A内には、出力軸51Bの縮長方向(前後方向)への移動に制動力を作用させるオイルなどの抵抗流体(図示省略)が収容されている。
ユニット本体51Aは、移動収容体70の奥側収納部70Aに前後左右の位置が規制された状態で固定される。また、収容体21の右側部には取付溝21Eが設けられており、出力軸51Bの先端部51Cは、この取付溝21Eに嵌合する態様で取り付けられる。これにより、ダンパーユニット51は、収容体21に対して移動収容体70がスライド移動する力を緩衝する。
一方、引張ばねユニット60は、図4に示すように、引張ばね61と、この引張ばね61の両端部に設けられた2つのばね受け62とで構成されている。この2つのばね受け62は略棒状に形成されており、その一端の先端部分に、径方向に溝状に形成された、くびれ部62Aを有している。
左側に位置するばね受け62のくびれ部62Aは、移動収容体70の左端部に形成されたくびれ部収容溝71に挿入され、前後方向および左右方向の位置が規制される。また、右側に位置するばね受け62は、収容体21の右側に形成されたくびれ部収容溝29に挿入され、前後方向および左右方向の位置が規制される。
これらの左右のばね受け62は、引張ばね61によって左右方向に連結されている。この引張ばね61はコイルばねであり、この引張ばねユニット60では、2つのばね受け62をそれぞれ中央側に付勢する引っ張りばねとして使用されている。また、この引張ばね61は、使用状態において常に引張状態で使用されており、圧縮状態(押し出す付勢力を作用させる状態)になることはない。これにより、引張ばねユニット60は、収容体21に対して、移動収容体70を常に閉方向へ引き込むように機能する。
係止体52は、図4および図5に示すように、捕捉溝53と、移動収容体70を開閉方向へスムーズに移動させるための案内突起54と、移動収容体70に対して係止体52を回動させるための回動突起55(図9〜図13参照)とを備えている。
回動突起55は、係止体52の下面から下側に向かって突出する円柱状の突起である。この回動突起55は、移動収容体70に設けられた図示しない回動穴に嵌合している。これにより、係止体52は、移動収容体70に対してこの回動突起55を中心に自由に回動できるようになっている。
案内突起54は、係止体52の左側先端の下面から下側に突出している。この案内突起54は、収容体底部21Cに形成された左右方向ガイド部28Aおよび前後方向ガイド部28Bに沿って自由に移動できるようになっている。より詳細には、移動収容体70は、案内突起54が左右方向ガイド部28Aに沿って移動することにより、収容体21内を開閉方向へスムーズに移動できるようになる一方、係止体52は、案内突起54が前後方向ガイド部28Bに沿って湾曲した軌跡を辿ることで、係止体52がスムーズに回動できるようにしている。また、案内突起54は、前後方向ガイド部28Bを移動している間、移動収容体70が開閉方向へスライド移動しないようにする機能も果たしている。
捕捉溝53は、図9〜図13に示すように、前側から奥側に向かって逆U字形状に凹んだ溝であり、第3突出片37を捕捉或いは捕捉解除するためのものである。より詳細には、係止体52が奥側に回動している状態では、第3突出片37を捕捉解除しており、第3突出片37が係止体52を閉方向に押圧したときに係止体52が前側に回動し、第3突出片37を捕捉する。
次に、本発明の実施の形態に係る耐震ラッチ付き開閉体閉塞装置の作用について、図9〜図13を用いて説明する。
最初に、開閉体閉塞機構50の作用・動作について説明する。図9〜図11は、開閉体閉塞機構50の動作を説明する図であって、図9は、耐震ラッチ付き開閉体閉塞装置10の動作を示す図であって、開閉体閉塞機構50の係止体52が第3突出片37を捕捉していない状態を示す平面図である。図10は、開閉体閉塞機構50の係止体52が第3突出片37を捕捉した状態を示す平面図である。図11は、開閉体閉塞機構50が引き戸4Bを閉状態まで引き込んだ状態を示す平面図である。また、図11は、耐震ラッチ機構40のラッチ体41が解除された状態でもある。
利用者が引き戸4Bを閉じようとして引き戸4Bを戸閉側に移動させたとき、引き戸4Bの上部に取り付けられた引き戸側係合体30も一緒に戸閉側へと移動する。そして、引き戸側係合体30の第3突出片37、第2突出片36および第1突出片35は、図9(或いは図10、図11)に示すように、収容体21の係合体入出穴23Bから引込部本体20内に順次入り込み、係合体移動長穴23Aに沿って引込部本体20内を戸閉側に移動する。
一番右側に位置する第3突出片37が係止体52の位置まで到達していない状態(図9の状態)では、開閉体閉塞機構50はまだ動作しておらず、引き戸4Bは戸閉側へ閉じられることはない。このとき、係止体52の案内突起54は、ガイド溝28の前後方向ガイド部28Bの奥側の位置で保持されている。また、引張ばねユニット60の引張ばね61は、伸びた状態で保持されている。
この図9の状態から、第3突出片37が係止体52の位置まで到達すると、係止体52は、第3突出片37によって戸閉側に押圧され、回動突起55を中心に反時計回りに回動する。このとき、係止体52の案内突起54は、前後方向ガイド部28Bに沿って前側に移動する。そして、係止体52の捕捉溝53が奥側から前側へと回動しながら移動し、第3突出片37を捕捉するようになる。
係止体52の捕捉溝53が第3突出片37を捕捉すると、引張ばねユニット60の引張ばね61が解放され、ばねが収縮する方向(閉方向)へと移動収容体70を移動させる。このとき、係止体52の案内突起54は、収容体底部21Cの左右方向ガイド部28Aによって閉方向に案内されるので、移動収容体70はスムーズに閉方向へ移動する。これにより、係止体52の捕捉溝53に捕捉された第3突出片37は、移動収容体70と共に閉方向へと移動し、図10に示すように、引き戸4Bは開閉体閉塞機構50によって完全に閉じた状態まで引き込まれるようになる。
また、引張ばねユニット60が引き戸4Bを引き込むときには、ダンパーユニット51が引張ばね61の付勢力を緩衝するように作用する。これにより、引き戸4Bは、緩やかに閉状態まで引き込まれるようになり、戸当たり3B(図1(B)参照)に強く当たって再び開方向へ跳ね返ることがない。
他方、図11の閉状態から利用者が引き戸4Bを開く場合には、上述とは逆の動作が行われる。詳細には、利用者が引き戸4Bを開方向に移動させると、引張ばねユニット60の引張ばね61が伸張し、移動収容体70が開方向へと移動する。このとき、係止体52の案内突起54は、収容体底部21Cの左右方向ガイド部28Aによって開方向に案内されるので、移動収容体70はスムーズに開方向へ移動する。そして、案内突起54が左右方向ガイド部28Aの左端部に到達すると(図10の状態)、係止体52は、前後方向ガイド部28Bに沿って回動突起55を中心に時計回りに回動する。これにより、係止体52の捕捉溝53が第3突出片37の捕捉を解除する。これにより、引き戸側係合体30はさらに開方向へと移動して、収容体21の外側へと引き出されるようになる。
次に、耐震ラッチ機構40の作用・動作について説明する。図12および図13は、耐震ラッチ機構40の動作を説明する図であって、図12は、耐震ラッチ機構40のラッチ体41が動作して、ラッチ体41に第2突出片36が当接している状態を示す平面図である。図13は、耐震ラッチ機構40のラッチ体41が動作して、ラッチ体41に第3突出片37が当接している状態を示す平面図である。
引き戸4Bが完全に閉じた状態(図11の状態)で、地震等により開閉方向に揺れが生じると、引き戸4Bは、開方向へと移動しようとする。このとき、引き戸4Bは、開閉体閉塞機構50の引張ばね61によって、常時、閉側へ付勢されているので、比較的小さな揺れに対して引き戸4Bが開くことはない。
一方、開閉方向へ強い振動が生じた場合、引き戸4Bは、引張ばね61の付勢力に抗して開方向へと移動してしまう。このとき、耐震ラッチ機構40の2つの感震体42も開閉方向(図7のT1方向)へ大きく振動する。そして、感震体42は、振動によって収容体21の底部Eから左右傾斜部25および中央傾斜部26の傾斜を登り、ラッチ体41の傾斜面41Cを押圧する。これにより、ラッチ体41は、ラッチ体回動軸24を中心に前側(図12の紙面下側)へと時計回りに回動し、図12に示すように、ラッチ体41の先端部41Dが係合体移動長穴23Aを塞ぐ位置(第1〜第3突出片35、36、37の開閉方向への移動軌跡上の位置)まで移動する。
このとき、感震体42は、振動が収まると、左右傾斜部25および中央傾斜部26の傾斜を自重によって下って、再び底部Eの位置に復帰する。しかし、ラッチ体41は、感震体42が復帰しても、ラッチ体41の先端部41Dが係合体移動長穴23Aを塞ぐ位置に残り、ラッチ体41が動作した状態のまま維持されるようになる。
図12の状態では、ラッチ体41の先端部41Dが係合体移動長穴23Aを塞ぐので、引き戸4Bが開方向へ移動しようとすると、引き戸側係合体30の第2突出片36がラッチ体41の先端部41Dに突き当たり、引き戸4Bがこれ以上開方向へ移動できないようになる。また、図12の状態では、係止体52が第3突出片37を捕捉したままの状態であるため、上述した強い振動が収まると引き戸4Bは再び閉方向へと引き込まれ、完全に閉じた状態(図11の状態)に戻るようになる。
また、完全に閉じた状態に戻ると、引き戸側係合体30の一番左側に位置する第1突出片35は、図11に示すように、ラッチ体41の先端部41Dの前側位置に移動する。これにより、第1突出片35がラッチ体41の先端部41Dを押圧し、ラッチ体41を反時計回りに強制的に回動させ、ラッチ体41が動作する前の位置(図9〜図11参照)へと復帰する。これにより、耐震ラッチ機構40の動作が解除されることになる。
一方、振動が予想以上に激しい場合、或いは、誤動作した場合には、ラッチ体41が回動して先端部41Dが係合体移動長穴23Aを塞いだとしても、図12で示すように第2突出片36がラッチ体41と突き当たらずに、第2突出片36を開方向へと逃がしてしまうことも想定される。そのような場合であっても、図13に示すように、係合体移動長穴23Aを塞ぐラッチ体41の先端部41Dが、係止体52から捕捉解除された第3突出片37と突き当たるようになる。そのため、強い振動のときでも、より確実に引き戸4Bが開方向へ開くのを防止することができる。
また、図13の状態になったとしても、引き戸4Bが自動的に閉方向へ復帰することはないが、引き戸4Bを利用者が手で閉方向へ移動させ、完全に閉じた状態(図11の状態)にしたときには、上述したのと同様に、第1突出片35がラッチ体41を復帰させるようになる。これにより、耐震ラッチ機構40の動作が解除されるようになる。
次に、耐震ラッチ付き開閉体閉塞装置10内のレイアウトについて、図14(A)および図14(B)を用いて説明する。
引込部本体20内には、図14(A)に示すように、左右に長い矩形状の領域のうち、耐震ラッチ機構40が左奥側の領域Xに配置され、開閉体閉塞機構50がその他の領域Yに配置されている。このように、限られた矩形状の領域に対して、領域Xおよび領域Yを余すことなく使用することで、引込部本体20を構成するのに必要な領域をより小さなスペースに納められるようにしている。
また、引き戸側係合体30の第1〜第3突出片35、36、37は、図14(B)に示すように、係合体移動長穴23Aの開閉方向に沿って、領域Xと領域Yを通過するように構成されている。より詳細には、領域X1を通過することで、耐震ラッチ機構40のラッチ体41の動作を解除させる一方、この領域X1の延長線上にある領域Y1で開閉体閉塞機構50の動作を行わせている。このように引き戸側係合体30が移動する領域X1、Y1を、領域Xおよび領域Y内に重なるように直線状に配置することで、2つの機構の動作をより小さなスペースで行えるようにしている。
本発明の実施の形態に係る耐震ラッチ付き開閉体閉塞装置によれば、収納庫1の前側開口部を開閉する引き戸4A、4B側に、引き戸4A、4Bの移動に伴って移動する引き戸側係合体30を設ける一方、収納庫1側に、引き戸側係合体30を捕捉して引き戸4A、4Bを完全に閉じた状態まで引き込む開閉体閉塞機構50と、振動発生時に引き戸側係合体30と当接して引き戸4A、4Bの開方向への移動を防止するようにラッチ体41が動作し、引き戸4A、4Bが完全に閉じた状態まで移動したときに引き戸側係合体30がラッチ体41の動作を強制的に解除する耐震ラッチ機構40とを、一つの収容体21の内部に一体に設けているので、一つの収容体21の内部に2つの機構40,50を省スペース化した形で収容することができる。特に、引き戸側係合体30の直線的な移動を2つの機構40、50でそれぞれ共用することで、2つの装置を個々に取り付ける場合と比較して、取付スペースを小さくすることができる。
また、引き戸4A、4Bが完全に閉じた状態まで移動したときに引き戸側係合体30がラッチ体41の動作を強制的に解除するようにしているので、引き戸4A、4Bが完全に閉じた状態まで移動しない限りはラッチ体41の動作が解除されることがない。そのため、振動が繰り返し発生している状態であっても、ラッチ体41は常に動作した状態であり、耐震ラッチ機構40が誤動作する可能性を低くすることができる。そのため、従来技術のように、2つの装置を併設する必要が無く、2倍の取付スペースを必要とすることがない。
また、耐震ラッチ機構40は、ラッチ体41と、引き戸4A、4Bの開閉方向への振動に伴って開閉方向へ移動してラッチ体41を動作させ、振動が無くなったときに所定の位置に復帰する感震体42とを備え、ラッチ体41は、感震体42によって動作した後に感震体42が所定の位置に復帰したとしても動作状態が維持され、引き戸側係合体30によってラッチ体41の動作状態が解除されるようにしているので、感震体42の移動の有無によってラッチ体41の動作が解除されることがなく、誤動作等に対する信頼性が向上する。
さらに、引き戸側係合体30は、開閉体閉塞機構50によって捕捉されるための第3突出片37(捕捉部)と、ラッチ体41の動作を強制的に解除させるための第1突出片35(解除部)と、第3突出片37が捕捉された状態で、動作したラッチ体41と当接する第2突出片36(規制部)とを備え、第1突出片35、第2突出片36、および第3突出片37が引き戸4A、4Bの開閉方向に直線上に設けられているようにしているので、1つの引き戸側係合体30で2つの機構40、50を動作させることができる。また、これらの第1突出片35、第2突出片36、および第3突出片37が引き戸4A、4Bの開閉方向に直線上に設けられているので、2つの機構40、50が動作するスペースを直線上に小さいスペースで構成することができる。そのため、2つの機構40、50を備えた引込部本体20の形状をより小さくすることができ、2つの装置を個々に取り付ける場合と比較して、耐震ラッチ付き開閉体閉塞装置の取付スペースを小さくすることができる。
また、ラッチ体41の動作は、第2突出片36がラッチ体41に対して閉側の位置にある状態で、第2突出片36の開方向への移動軌跡上にラッチ体41を突出させるようにしているので、簡単な構造で第2突出片36を規制することができる。そのため、耐震ラッチ機構40を小さく構成することができるので、耐震ラッチ付き開閉体閉塞装置の取付スペースを小さくすることができる。
さらにまた、引き戸側係合体30が引き戸4A,4Bに取り付けられた状態で、第3突出片37を第2突出片36よりも閉側に設けるようにしているので、例えば、不意に大きな振動が生じて第2突出片36がラッチ体41に突き当たる前に開側に移動してしまった場合であっても、第3突出片37がラッチ体41と突き当たるようになる。そのため、大きな振動が生じても、より確実に引き戸4A、4Bの開方向への移動を防止することができ、信頼性がさらに向上する。
また、ラッチ体41は、ラッチ体回動軸24を中心に回動して第2突出片36の移動軌跡上に突出するようにしているので、簡単な構造でラッチ体41を第2突出片36の開方向への移動軌跡上に突出させることができる。そのため、耐震ラッチ機構40を小さく構成することができるので、耐震ラッチ付き開閉体閉塞装置の取付スペースを小さくすることができる。
他方、開閉体は、収納庫の開口部を左右に開閉する引き戸4A、4Bであり、耐震ラッチ付き開閉体閉塞装置10を、引き戸4A、4Bの上側に設置しているので、耐震ラッチ付き開閉体閉塞装置10を簡単に引き戸4A、4Bに構成することができる。特に、前後方向に併設される引き戸4A、4Bの間隔を広げることなく設置することができるので、収納庫1の収納スペースが小さくなることがない。
以上、本発明の実施の形態に係る耐震ラッチ付き開閉体閉塞装置について述べたが、本発明は既述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術思想に基づいて各種の変形および変更が可能である。
例えば、本実施の形態では、開閉体の一例として引き戸について記載したが、直線的に移動しながら開閉する開閉体であれば、例えば、引出であっても使用することができる。
また、本実施の形態では、2つの引き戸4A、4Bについて記載しているが、開閉方向に3つ或いはそれ以上の引き戸が設けられる場合であっても適用することができる。特に、本発明の耐震ラッチ付き開閉体閉塞装置では、引き戸側係合体30を引き戸4A、4Bの厚みの範囲内に納められるので、前後方向で隣り合う引き戸の間隔を広げることなく構成することができるので、収納庫1の収納スペースが小さくなることがない。
さらに、本実施の形態では、引き戸側係合体30を引込部本体20内で機能させるために、突起状の第1〜第3突出片35、36、37を設けているが、このような突出片に限定されるものではない。すなわち、ラッチ体41を回動させることができ、かつ、係止体52によって捕捉され得る構造であれば他の形状であっても構わない。例えば、係止体52の捕捉溝53の代わりに突起を形成し、引き戸側係合体30側にこの突起を受ける溝を設ける構造であってもよい。
また、振動が発生したときに引き戸4Bを開かないようにする機能のみ発揮させるには、本実施の形態の引き戸側係合体30に第2突出片36を設けない構造で構成することもできる。すなわち、本実施の形態における第2突出片36は、ラッチ体41と突き当たって引き戸4Bが開かないようにする機能の他に、図12に示すように、開閉体閉塞機構50が引き戸4Bを閉側に引き込むことができるぎりぎりの位置で突き当たるようにするために設けられている。そのため、第3突出片37がラッチ体41と突き当たるようにするだけでも、引き戸4Bが開かないようにする機能を発揮することができる。
他方、図15および図16に示すように、振動発生時にラッチ体41が突き当たる対象は、引き戸側係合体30以外であっても構わない。図15および図16は、本発明の変形例を示す平面図である。以下の説明および図15、図16では、本実施の形態と同一の部品については、同じ符号を用いて説明する。
図15で示す耐震ラッチ付き開閉体閉塞装置100の引込部本体120内に設けられた耐震ラッチ機構140は、ラッチ体141が移動収容体170に突き当たり、引き戸4Bの開方向への移動を防止するものである。移動収容体170には、係止体52の前側部分にのこぎり刃状係合部172が形成されている。こののこぎり刃状係合部172のいずれかの刃部172Aが動作したラッチ体141の先端部141Dと係合し、移動収容体170の開方向への移動を防止するようにしている。このとき、引き戸側係合体30の第2突出片36は設けられていない。また、図15の状態では、第3突出片37は、係止体52に捕捉されている。
また、図16で示す耐震ラッチ付き開閉体閉塞装置200の引込部本体220内に設けられた耐震ラッチ機構240は、ラッチ体241が係止体52に突き当たり、引き戸4Bの開方向への移動を防止するものである。このラッチ体241の先端部241Dは、係止体52に向けて突出している。この動作したラッチ体241が係止体52と突き当たり、移動収容体70の開方向への移動を防止するようにしている。このとき、引き戸側係合体30の第2突出片36は設けられていない。また、図16の状態では、第3突出片37は、係止体52に捕捉されている。
これら図15および図16で示す耐震ラッチ付き開閉体閉塞装置100、200によっても、開閉体閉塞機構50で引き戸4Bを閉状態まで引き込むことができると共に、耐震ラッチ機構140,240で、振動が生じた場合に引き戸4Bが開かないようにすることができる。