以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下では、タイヤとして、車両用(例えば乗用車用)の空気入りタイヤを例示する。
本実施形態にかかる空気入りタイヤ(タイヤ)1は、路面に接地するトレッド部2を備えている。なお、本実施形態では、トレッド部2以外の一般的なタイヤ構成部材については図示省略しているが、この空気入りタイヤ1は、一般的なタイヤ構成部材により周知の構造に形成されているものである。
すなわち、空気入りタイヤ1は、一対のビード部と、トレッド部2と、ビード部とトレッド部2の間に位置する一対のサイドウォール部を備えている。また、空気入りタイヤ1は、一対のビードコアと、一対のビードコアの間に配置されたカーカスと、カーカスの外周側に配置されたベルトと、所定のトレッドパターンを有するトレッドゴムを備えている。
以下では、図1〜図3を参照しながら、空気入りタイヤ1のトレッド部2の構成について詳細に説明する。
なお、本実施形態では、図1〜図3における右側をタイヤ幅方向一端側、もしくは、車両装着時内側(タイヤを車両に装着した際に内側となる側)とし、図1〜図3における左側をタイヤ幅方向他端側、もしくは、車両装着時外側(タイヤを車両に装着した際に外側となる側)として説明する。
図1は、本実施形態にかかる空気入りタイヤ1のトレッドパターンを示す平面図であり、トレッド部2のタイヤ周方向Cの一部を模式的に示すものである。
空気入りタイヤ1のトレッド部2は、路面に当接する接地面2aを有しており、図1に示すように、トレッド部2には、トレッドパターンがタイヤ幅方向Wの中央線CLに対して非対称となるように形成されている。なお、タイヤ幅方向Wの中央線CLに対して対称となるようにトレッドパターンを形成してもよい。
また、空気入りタイヤ1のトレッド部2には、複数(本実施形態では3つ)の周方向溝10,11,12が形成されている。本実施形態では、周方向溝10,11,12は、それぞれ、タイヤ周方向Cに連続して延びるように形成されており、それぞれの周方向溝10,11,12が略円環状となるように形成されている。
複数の周方向溝10,11,12は、タイヤ周方向Cに延びる主溝であり、中央周方向溝10が中央線CLに対応する位置に形成されている。そして、外側周方向溝11が、中央周方向溝10からタイヤ幅方向Wの一方側(車両装着時外側)に所定距離だけ離間した位置に形成されている。一方、内側周方向溝12が、中央周方向溝10からタイヤ幅方向Wの他方側(車両装着時内側)に所定距離だけ離間した位置に形成されている。
なお、本実施形態では、中央周方向溝10のタイヤ幅方向Wの中央が中央線CLに略一致するように中央周方向溝10を形成している。また、外側周方向溝11および内側周方向溝12の溝幅(タイヤ幅方向Wの距離)は略同一となっており、中央周方向溝10の溝幅よりも幅広となっている。そして、中央周方向溝10のタイヤ幅方向Wの中央(中央線CL)から外側周方向溝11のタイヤ幅方向Wの中央までの距離と、中央周方向溝10のタイヤ幅方向Wの中央(中央線CL)から内側周方向溝12のタイヤ幅方向Wの中央までの距離とが略同一となっている。
また、トレッド部2には、周方向溝10,11,12によってタイヤ幅方向Wに区画された複数(本実施形態では4つ)の陸部20,21,22,23がタイヤ周方向Cに沿って形成されている。具体的には、トレッド部2には、タイヤ幅方向Wの内側に形成された2つの中央陸部20,21と、中央陸部20、21のタイヤ幅方向Wの外側(ショルダ部側)に形成された2つのショルダ陸部22,23とが形成されている。
この陸部20,21,22,23は、タイヤ周方向Cに連続して延びるリブ(連続陸部)であってもよいし、タイヤ周方向Cに並ぶ複数のブロックからなるブロック列(断続陸部)であってもよい。
本実施形態では、陸部20,21,22,23は、それぞれの陸部が複数のブロック20A,21A,22A,23Aを有するブロック列として構成されている。各ブロック20A,21A,22A,23Aは、トレッド面視で、略四角形状(本実施形態では略矩形状)となるように形成されている。
具体的には、中央陸部20には、当該中央陸部20のタイヤ幅方向Wの一端から他端にかけて延在し、中央周方向溝10および外側周方向溝11に連通する幅方向溝13が、タイヤ周方向Cに所定距離だけ離間した状態で複数形成されている。
なお、本実施形態では、中央陸部20に形成された複数の幅方向溝13の溝幅(タイヤ周方向Cの距離)は、全て略同一となるようにしている。
また、タイヤ周方向Cで隣り合う幅方向溝13間の距離(タイヤ周方向Cで隣り合う幅方向溝13と幅方向溝13とのタイヤ周方向Cの距離)も略同一となるようにしている。すなわち、中央陸部20には、複数の幅方向溝13がタイヤ周方向Cに沿って略等ピッチで並ぶように形成されている。
このように、中央陸部20は、複数の幅方向溝13によってタイヤ周方向Cに区画されており、幅方向溝13、中央周方向溝10および外側周方向溝11によって区画された略矩形状のブロック20Aがタイヤ周方向Cに沿って複数形成されている。
同様に、中央陸部21には、当該中央陸部21のタイヤ幅方向Wの一端から他端にかけて延在し、中央周方向溝10および内側周方向溝12に連通する幅方向溝13が、タイヤ周方向Cに所定距離だけ離間した状態で複数形成されている。
なお、本実施形態では、中央陸部21に形成された複数の幅方向溝13の溝幅(タイヤ周方向Cの距離)は、全て略同一となるようにしている。
また、タイヤ周方向Cで隣り合う幅方向溝13間の距離(タイヤ周方向Cで隣り合う幅方向溝13と幅方向溝13とのタイヤ周方向Cの距離)も略同一となるようにしている。すなわち、中央陸部21には、複数の幅方向溝13がタイヤ周方向Cに沿って略等ピッチで並ぶように形成されている。
このように、中央陸部21は、複数の幅方向溝13によってタイヤ周方向Cに区画されており、幅方向溝13、中央周方向溝10および内側周方向溝12によって区画された略矩形状のブロック21Aがタイヤ周方向Cに沿って複数形成されている。
さらに、本実施形態では、図1に示すように、中央陸部20に形成された幅方向溝13の溝幅と中央陸部21に形成された幅方向溝13の溝幅とが略同一となっており、タイヤ周方向Cで隣り合う幅方向溝13間の距離(ピッチ)も、中央陸部20と中央陸部21とで略同一となっている。そして、中央陸部20に形成された幅方向溝13と中央陸部21に形成された幅方向溝13とがタイヤ幅方向Wに略一直線上に並ぶように形成されている。
一方、ショルダ陸部22には、当該ショルダ陸部22のタイヤ幅方向Wの一端から他端にかけて延在し、外側周方向溝11に連通する幅方向溝14が、タイヤ周方向Cに所定距離だけ離間した状態で複数形成されている。
なお、本実施形態では、ショルダ陸部22に形成された複数の幅方向溝14の溝幅(タイヤ周方向Cの距離)は、全て略同一となるようにしている。
また、タイヤ周方向Cで隣り合う幅方向溝14間の距離(タイヤ周方向Cで隣り合う幅方向溝14と幅方向溝14とのタイヤ周方向Cの距離)も略同一となるようにしている。すなわち、ショルダ陸部22には、複数の幅方向溝14がタイヤ周方向Cに沿って略等ピッチで並ぶように形成されている。
このように、ショルダ陸部22は、複数の幅方向溝14によってタイヤ周方向Cに区画されており、幅方向溝14および外側周方向溝11によって区画された略矩形状のブロック22Aがタイヤ周方向Cに沿って複数形成されている。
同様に、ショルダ陸部23には、当該ショルダ陸部23のタイヤ幅方向Wの一端から他端にかけて延在し、内側周方向溝12に連通する幅方向溝14が、タイヤ周方向Cに所定距離だけ離間した状態で複数形成されている。
なお、本実施形態では、ショルダ陸部23に形成された複数の幅方向溝14の溝幅(タイヤ周方向Cの距離)は、全て略同一となるようにしている。
また、タイヤ周方向Cで隣り合う幅方向溝14間の距離(タイヤ周方向Cで隣り合う幅方向溝14と幅方向溝14とのタイヤ周方向Cの距離)も略同一となるようにしている。すなわち、ショルダ陸部23には、複数の幅方向溝14がタイヤ周方向Cに沿って略等ピッチで並ぶように形成されている。
このように、ショルダ陸部23は、複数の幅方向溝14によってタイヤ周方向Cに区画されており、幅方向溝14および内側周方向溝12によって区画された略矩形状のブロック23Aがタイヤ周方向Cに沿って複数形成されている。
さらに、本実施形態では、図1に示すように、ショルダ陸部22に形成された幅方向溝14の溝幅とショルダ陸部23に形成された幅方向溝14の溝幅とが略同一となっており、タイヤ周方向Cで隣り合う幅方向溝14間の距離(ピッチ)も、ショルダ陸部22とショルダ陸部23とで略同一となっている。そして、ショルダ陸部22に形成された幅方向溝14とショルダ陸部23に形成された幅方向溝14とがタイヤ幅方向Wに略一直線上に並ぶように形成されている。
また、ショルダ陸部22およびショルダ陸部23に形成された幅方向溝14の溝幅は、中央陸部20および中央陸部21に形成された幅方向溝13の溝幅の略2倍となっており、タイヤ周方向Cで隣り合う幅方向溝14間の距離(ピッチ)も、タイヤ周方向Cで隣り合う幅方向溝13間の距離(ピッチ)の略2倍となっている。
そして、タイヤ幅方向Wに略一直線上に並ぶショルダ陸部22に形成された幅方向溝14とショルダ陸部23に形成された幅方向溝14との間には、タイヤ幅方向Wに略一直線上に並ぶ中央陸部20に形成された幅方向溝13と中央陸部21に形成された幅方向溝13とが存在している。すなわち、トレッド部2において幅方向溝14が形成された部位には、ショルダ陸部22に形成された幅方向溝14、中央陸部20に形成された幅方向溝13、中央陸部21に形成された幅方向溝13、および、ショルダ陸部23に形成された幅方向溝14がタイヤ幅方向Wに略一直線上に並んでいる。
なお、周方向溝の数は3つに限られるものではなく、また、周方向溝の溝幅や周方向溝が形成される箇所も適宜設定することができる。また、タイヤ周方向Cに断続的に形成された周方向溝を有するようにしてもよい。
さらに、幅方向溝の溝幅やピッチも適宜設定することが可能であるし、幅方向溝を等ピッチとならないように並設することも可能である。
ところで、上述した複数の陸部20,21,22,23の表面(タイヤ径方向Rの外側の面)は路面に当接することが可能な面であり、それぞれの表面がトレッド部2の接地面2aの一部を構成している。すなわち、陸部20,21,22,23の表面は、それぞれ接地面20a,21a,22a,23aとなっている。
そして、陸部20,21,22,23を備える空気入りタイヤ1においては、陸部20,21,22,23の接地面積(接地面20a,21a,22a,23aのそれぞれの面積を足し合わせた面積)を大きくすることで、ドライ路面での運動性能を向上させることができるようになる。
また、陸部20,21,22,23の端部で生じるトレッドゴムの局所的なせん断変形を抑制できるようにすれば、路面とトレッドゴムとの間の滑りを低減させることができ、タイヤの運動性能をより向上させることができるようになる。
さらに、陸部20,21,22,23の接地面と路面との間の水を除去することで、実際の陸部の接地面積が大きくなり、ウエット路面における空気入りタイヤ1の運動性能を向上させることができるようになる。
ここで、陸部20,21,22,23の接地面20a,21a,22a,23a(トレッド部2の接地面2a)と路面との間の水をより効率的に除去するためには、トレッド部2の溝(周方向溝や幅方向溝)による排水に加えて、陸部20,21,22,23の接地面20a,21a,22a,23aから溝への水の排出をより確実に行えるようにするのが好ましい。
そこで、本実施形態では、陸部20,21,22,23の接地面20a,21a,22a,23aから溝への水の排出をより確実に行えるようにした。
具体的には、接地面の少なくともタイヤ幅方向Wの断面が、少なくとも1つの湾曲線の曲率が他の湾曲線の曲率とは異なる複数の湾曲線で滑らかに接続された凸形状となるマルチラウンド陸部を有するようにした。すなわち、複数の陸部のうち少なくとも1つの陸部を、タイヤ幅方向の断面形状が他の湾曲線の曲率とは異なる曲率の湾曲線を有する複数の湾曲線で滑らかに接続された断面形状(タイヤ径方向Rの外側に凸となる滑らかな凸形状)となるマルチラウンド陸部とした。
以下では、1つの陸部(マルチラウンド陸部としての中央陸部20)を例に採り、当該陸部20の1つのブロック20Aに形成された接地面30について詳細に説明する。
図2は、本実施形態にかかる空気入りタイヤ1に形成された陸部(中央陸部20)における1つのブロック20Aを示す図であって、(a)は断面図、(b)は平面図である。
陸部20の1つのブロック20Aに形成された接地面30は、図2(a)に示すように、陸部20のタイヤ幅方向Wの断面において、複数の湾曲線が滑らかに接続された凸形状に形成されている。
本実施形態では、複数の湾曲線は、接地面30のタイヤ幅方向Wの中央部35を含む中央湾曲線31と、接地面30のタイヤ幅方向Wの端部34,34を含む一対の端側湾曲線32と、を有している。
ここで、中央湾曲線31は0より大きい所定の曲率Rcを有しており、略円弧状に形成されている。一方、端側湾曲線32,32は、0より大きい所定の曲率Reを有しており、略円弧状に形成されている。そして、RcとReとが(Rc<Re)の関係を満たしており、ReがRcよりも大きくなっている。
なお、中央湾曲線31は、陸部20の1つのブロック20Aのタイヤ幅方向Wの中央領域に形成されており、曲率Rcは、中央領域における接地面30の曲率である。端側湾曲線32は、陸部20の1つのブロック20Aのタイヤ幅方向Wの端部領域に形成されており、曲率Reは、端部領域における接地面30の曲率である。そして、接地面30の中央部35は、タイヤ半径方向外側に最も突出する接地面30の頂部である。
このように、接地面30のタイヤ幅方向Wの断面は、2つ以上の湾曲線(一対の端側湾曲線32,32および一対の端側湾曲線32,32とは曲率の異なる中央湾曲線31)を滑らかに接続することで形成されており、接地面30の曲率がタイヤ幅方向Wの両端部34,34の間で変化するようにしている。
すなわち、接地面30のタイヤ幅方向Wの断面形状は、中央湾曲線31と端側湾曲線32とが境界36で滑らかに接続された湾曲形状をしており、接地面30の全体が滑らかに湾曲する湾曲面をなしている。
なお、中央湾曲線31と端側湾曲線32とを境界36で滑らかに接続する方法としては、例えば、中央湾曲線31を含む円に境界36で接する接線と端側湾曲線32を含む円に境界36で接する接線とが一致するように中央湾曲線31と端側湾曲線32とを接続する方法がある。
また、中央湾曲線31の曲率Rcは、2.5〜5(1/m)の範囲内にするのが好ましく、端側湾曲線32の曲率Reは、50〜200(1/m)の範囲内にするのが好ましい。また、陸部20(ブロック20A)のタイヤ幅方向Wの幅をL、端側湾曲線32のタイヤ幅方向Wの幅をLeとしたとき、LeのLに対する比(Le/L)は、0.1〜0.4の範囲内にするのが好ましい。こうすれば、Rc、Re、Re/Rc、Le/Lを、それぞれ最適化することができる。
かかる構成とすることで、マルチラウンド陸部としての中央陸部20においては、接地圧は、接地面30の中央部35側で高くなり、接地面30の端部34に向かって徐々に低下する。これに伴い、端部34におけるトレッドゴムの局所的な変形が抑制されて、路面とトレッドゴムとの間の滑りを低減させることができる。さらに、陸部20の接地面積も充分に確保することができるため、空気入りタイヤ1のドライ路面における運動性能をより向上させることができるようになる。
一方、ウエット路面では、凸形状の接地面30とすることによって、接地面30の水を陸部20の周囲により効率的に排出できるようになる。また、複数の湾曲線が滑らかに接続されている(曲率の異なる湾曲線同士が滑らかに接続されている)ため、接地面30内におけるトレッドゴムの局所的な変形と、接地圧の上昇を防止することができる。その結果、水を接地面30から陸部20の周囲により円滑に排出させることができるようになり、接地面30と路面の間の水をより確実に除去できるようになる。
また、ウエット路面での実際の陸部20の接地面積を大きくすることもできるようになる。
このように、陸部20をマルチラウンド陸部とし、陸部20の排水性能を高めることで、実際の陸部20の接地面積が大きくなって、直進時のWET性能(タイヤ単体のピークμ)を向上させることができる。その結果、ウエット路面における空気入りタイヤ1の運動性能をより向上させることができるようになる。
ところで、接地面30とブロック20Aの側壁20bを、湾曲線により滑らかに接続する場合には、ブロック20Aの接地面30を端部34まで接地させることができなくなってしまう。その結果、陸部20の接地面積が減少してしまうおそれがある。これに対し、本実施形態では、接地面30とブロック20Aの側壁20bを滑らかに接続せずに、接地面30と側壁20bによって、ブロック20Aの接地面30の端部34(陸部20の端部)に角部(エッジ部)が形成されるようにしている。これにより、ブロック20Aの接地面30を端部34まで接地させることができるようになるため、陸部20の接地面積をより確実に確保することができるようになる。
なお、本実施形態では、接地面20a,21a,22a,23aの少なくともタイヤ幅方向Wの断面形状が複数の曲率を有する凸形状となるように陸部20,21,22,23を形成している。このとき、タイヤ幅方向Wの断面において、接地面20a,21a,22a,23aの全体がタイヤ径方向Rの外側に盛り上がる凸形状となるように、それぞれの陸部20,21,22,23を形成している。このように、本実施形態では、陸部20,21,22,23の接地面20a,21a,22a,23aの全体がタイヤ径方向Rの外側に盛り上がるとともに、複数の曲率を有する凸状の湾曲面になっている。すなわち、陸部20,21,22,23の全てをマルチラウンド陸部としている。
しかしながら、複数の陸部20,21,22,23のうち1つ以上の陸部をマルチラウンド陸部とすれば、上記した効果を得ることができる。したがって、全ての陸部20,21,22,23をマルチラウンド陸部とする必要はなく、1つ以上の陸部をマルチラウンド陸部としてもよい。
また、陸部20,21,22,23のブロック20A,21A,22A,23Aを凸形状に形成する(マルチラウンド形状とする)際には、タイヤ幅方向Wの断面のみにおいて複数の曲率を有する凸形状となるように形成してもよいし、ブロック20A,21A,22A,23Aの中心を通る全ての方向の断面において複数の曲率を有する凸形状となるように形成してもよい。
なお、陸部20,21,22,23がリブである場合には、タイヤ幅方向Wの断面のみにおいて複数の曲率を有する凸形状となるように陸部20,21,22,23が形成されることとなる。また、ショルダ陸部22,23の接地面30では、タイヤ幅方向Wの内側部分のみに、本発明を適用させるようにしてもよい。
また、接地面30の中央湾曲線31と外側湾曲線32の間に、RcやReとは曲率の異なる1つ以上の湾曲線を設けるようにしてもよい。このとき、中央部35から端部34に向かうにつれて段階的に曲率が大きくなるようにするのが好ましい。
ところで、上述したように、1つ以上の陸部の接地面30を、少なくともタイヤ幅方向Wの陸部20の断面において、所定の曲率を有する複数の湾曲線が滑らかに接続された凸形状となるように形成(1つ以上の陸部をマルチラウンド陸部と)すれば、直進時のWET性能(タイヤ単体のピークμ)を向上させることができる。
しかしながら、1つ以上の陸部を単にマルチラウンド陸部としただけでは、ウエット路面におけるタイヤ単体ピークμは向上するが、実車のブレーキ性能を改良する効果は小さい。
そして、この実車のブレーキ性能を改良するためには、ウエット路面におけるタイヤ単体のピークμだけでなく、ウエット路面におけるスリップ率に対するμの立ち上がり(勾配)も改良する必要がある。
そこで、本実施形態では、ウエット路面におけるタイヤ単体のピークμをより向上させつつ、空気入りタイヤ1の実車ブレーキ性能もより向上させることができるようにした。
具体的には、マルチラウンド陸部とした陸部(中央陸部20A,21A等)にサイプ部40を設けるとともに、このサイプ部40に面取りを施すようにした。
すなわち、マルチラウンド陸部とした陸部にサイプ部40を有するトレッドパターンが形成されるようにした。
以下では、サイプ部40の構成を、1つの陸部(マルチラウンド陸部としての中央陸部20)を例に採り、当該陸部20の1つのブロック20Aの接地面30に形成されたサイプ部40に基づき、詳細に説明する。
サイプ部40は、例えば溝幅が1.2mm以下の細溝として形成することができる。そして、ブロック20Aにおける接地面30側に、タイヤ周方向Cと交差する方向に延在するようにサイプ部40が形成されている。すなわち、サイプ部40の延在方向とタイヤ幅方向Wとのなす角をθ1としたときに、0°≦θ1<90°となるように、サイプ部40を形成している。なお、θ1が、0°≦θ1≦60°の関係を満たすようにするのが好ましく、本実施形態では、θ1=45°となっている。そして、図1および図2(b)では、サイプ部40が左上から右下に向かうように傾斜しているものを例示している。しかしながら、サイプ部40を逆方向に傾斜させる(左下から右上に向かうように傾斜させる)ことも可能である。
また、本実施形態では、サイプ部40は、ブロック20Aのタイヤ幅方向Wの一端側(車両装着時内側)から他端側(車両装着時外側)にかけて連続して形成されており、タイヤ幅方向Wの両端が中央周方向溝10および外側周方向溝11に連通するように形成されている。すなわち、1つのブロック20Aがサイプ部40によってタイヤ周方向Cに区画されている。なお、1つのブロック20Aに複数のサイプ部40が形成されるようにしてもよい。
また、サイプ部40は、図3に示すように、サイプ幅方向W1の両端に形成される側面部40a,40aと、側面部40a,40aを連接する底面部40bとで区画されており、タイヤ径方向Rの外側に開口している。本実施形態では、このサイプ部40の溝深さ(タイヤ径方向Rの深さ)Dを6.1mmとしている。なお、本実施形態では、底面部40bは平坦面となっており、接地面(踏面)30から底面部40bまでの距離(空気入りタイヤ1を路面に当接させた状態における路面との接地面から底面部40bまでの距離)をサイプ部40の溝深さDとしている。
そして、サイプ部40におけるタイヤ幅方向Wの両端には、内側面取り部(面取り部41,42)および外側面取り部(面取り部43,44)がそれぞれ設けられている。面取り部41,42は、サイプ部40のタイヤ幅方向Wの内側に設けられており、面取り部41および面取り部42がサイプ幅方向W1の両端に、互いに対向するように設けられている。一方、面取り部43,44は、サイプ部40のタイヤ幅方向Wの外側に設けられており、面取り部43および面取り部44がサイプ幅方向W1の両端に、互いに対向するように設けられている。
この面取り部41,42,43,44は、図3に示すように、サイプ部40の接地面30側に設けられている。そして、各面取り部41,42,43,44は、サイプ幅方向W1の内側に向かうにつれて接地面30から離れる方向(タイヤ径方向Rの内側)に傾斜する平坦な傾斜面となっている。
面取り部41は、サイプ部40におけるサイプ幅方向W1の一端側(図2(b)の上側)に設けられており、ブロック20A(マルチラウンド陸部)のタイヤ幅方向Wの一端縁(車両装着時内側の端縁)の始端41aから中央側の終端41bにかけて設けられている。なお、終端41bは、ブロック20Aのタイヤ幅方向Wの中央線CL1に向かう途中に形成されている。このとき、ブロック20A(マルチラウンド陸部)のタイヤ幅方向Wの幅をLとし、面取り部41の始端41aから終端41bまでのタイヤ幅方向Wの距離をli(l)としたとき、l/Lが10%〜40%の範囲内となるように、面取り部41を形成するのが好ましい。本実施形態では、ブロック20A(マルチラウンド陸部)のタイヤ幅方向Wの幅Lを24.4mm、li(l)を8.5mmとしており、l/Lが35%となっている。
また、面取り部41のサイプ幅方向W1の幅Wi1が1.5mm〜3.0mmの範囲内にあるように、面取り部41を形成するのが好ましい。本実施形態では、幅Wi1を2.5mmとしている。
そして、面取り部41のタイヤ径方向Rの深さをd1(d)とし、サイプ部40のタイヤ径方向Rの深さをDとしたときに、d/Dが10%〜40%の範囲内にあるように、面取り部41を形成するのが好ましい。本実施形態では、サイプ部40のタイヤ径方向Rの深さDを6.1mmとし、面取り部41のタイヤ径方向Rの深さd1(d)を1.5mmとしており、d/Dが約24.6%となっている。
なお、面取り部41は、図2(b)に示すように、終端41bよりも中央線CL1側に突出するように形成されている。具体的には、面取り部41の接地面30との境界線C1が、始端41aから終端41bまでは幅Wi1が略一定であるが、終端41bから中央線CL1に向かうにつれて幅Wi1が徐々に小さくなる屈曲線となっている。すなわち、境界線C1は、終端41bよりも中央線CL1側が、トレッド面視で、始端41aと終端41bとを結ぶ直線の延長戦である仮想線C1aよりもサイプ幅方向W1の中央側に位置しており、終端41bを基点としてサイプ幅方向W1の中央側に屈曲した形状をしている。
そして、この境界線C1は、終端41bよりも中央線CL1側では、接地面30よりもタイヤ径方向Rの内側に存在している。すなわち、終端41bよりも中央線CL1側においては、境界線C1のタイヤ径方向Rにおける高さ位置は、中央線CL1側に向かうにつれて徐々に低くなる。言い換えると、終端41bよりも中央線CL1側においては、面取り部41のタイヤ径方向Rの深さはd1よりも小さく、中央線CL1側に向かうにつれて徐々に浅くなっている。したがって、境界線C1の終端41bよりも中央線CL1側の部分は、通常、路面に接触しない部分となっている。
そこで、本実施形態では、幅Wi1が略一定である始端41aから終端41bまでのタイヤ幅方向Wの距離、すなわち、面取り部41のうち路面に接する部分のタイヤ幅方向Wの距離をli(l)と定義した。
面取り部42は、サイプ部40におけるサイプ幅方向W1の他端側(図2(b)の下側)に設けられており、ブロック20A(マルチラウンド陸部)のタイヤ幅方向Wの一端縁(車両装着時内側の端縁)の始端42aから中央側の終端42bにかけて設けられている。なお、終端42bは、ブロック20Aのタイヤ幅方向Wの中央線CL1に向かう途中に形成されている。このとき、ブロック20A(マルチラウンド陸部)のタイヤ幅方向Wの幅をLとし、面取り部42の始端42aから終端42bまでのタイヤ幅方向Wの距離をli(l)としたとき、l/Lが10%〜40%の範囲内となるように、面取り部42を形成するのが好ましい。本実施形態では、ブロック20A(マルチラウンド陸部)のタイヤ幅方向Wの幅Lを24.4mm、li(l)を8.5mmとしており、l/Lが35%となっている。
また、面取り部42のサイプ幅方向W1の幅Wi2が1.5mm〜3.0mmの範囲内にあるように、面取り部42を形成するのが好ましい。本実施形態では、幅Wi1を1.5mmとしている。
そして、面取り部42のタイヤ径方向Rの深さをd2(d)とし、サイプ部40のタイヤ径方向Rの深さをDとしたときに、d/Dが10%〜30%の範囲内にあるように、面取り部42を形成するのが好ましい。本実施形態では、サイプ部40のタイヤ径方向Rの深さDを6.1mmとし、面取り部42のタイヤ径方向Rの深さd2(d)を1.5mmとしており、d/Dが約24.6%となっている。
なお、面取り部42は、図2(b)に示すように、終端42bよりも中央線CL1側に突出するように形成されている。具体的には、面取り部42の接地面30との境界線C2が、始端42aから終端42bまでは幅Wi2が略一定であるが、終端42bから中央線CL1に向かうにつれて幅Wi2が徐々に小さくなる屈曲線となっている。すなわち、境界線C2は、終端42bよりも中央線CL1側が、トレッド面視で、始端42aと終端42bとを結ぶ直線の延長戦である仮想線C2aよりもサイプ幅方向W1の中央側に位置しており、終端42bを基点としてサイプ幅方向W1の中央側に屈曲した形状をしている。
そして、この境界線C2は、終端42bよりも中央線CL1側では、接地面30よりもタイヤ径方向Rの内側に存在している。すなわち、終端42bよりも中央線CL1側においては、境界線C2のタイヤ径方向Rにおける高さ位置は、中央線CL1側に向かうにつれて徐々に低くなる。言い換えると、終端42bよりも中央線CL1側においては、面取り部42のタイヤ径方向Rの深さはd2よりも小さく、中央線CL1側に向かうにつれて徐々に浅くなっている。したがって、境界線C2の終端42bよりも中央線CL1側の部分は、通常、路面に接触しない部分となっている。
そこで、本実施形態では、幅Wi2が略一定である始端42aから終端42bまでのタイヤ幅方向Wの距離、すなわち、面取り部42のうち路面に接する部分のタイヤ幅方向Wの距離をli(l)と定義した。
面取り部43は、サイプ部40におけるサイプ幅方向W1の一端側(図2(b)の上側)に設けられており、ブロック20A(マルチラウンド陸部)のタイヤ幅方向Wの他端縁(車両装着時外側の端縁)の始端43aから中央側の終端43bにかけて設けられている。なお、終端43bは、ブロック20Aのタイヤ幅方向Wの中央線CL1に向かう途中に形成されている。このとき、ブロック20A(マルチラウンド陸部)のタイヤ幅方向Wの幅をLとし、面取り部43の始端43aから終端43bまでのタイヤ幅方向Wの距離をlo(l)としたとき、l/Lが10%〜40%の範囲内となるように、面取り部43を形成するのが好ましい。本実施形態では、ブロック20A(マルチラウンド陸部)のタイヤ幅方向Wの幅Lを24.4mm、lo(l)を8.5mmとしており、l/Lが35%となっている。
また、面取り部43のサイプ幅方向W1の幅Wo1が1.5mm〜3.0mmの範囲内にあるように、面取り部43を形成するのが好ましい。本実施形態では、幅Wo1を2.5mmとしている。
そして、面取り部43のタイヤ径方向Rの深さをd1(d)とし、サイプ部40のタイヤ径方向Rの深さをDとしたときに、d/Dが10%〜30%の範囲内にあるように、面取り部43を形成するのが好ましい。本実施形態では、サイプ部40のタイヤ径方向Rの深さDを6.1mmとし、面取り部43のタイヤ径方向Rの深さd1(d)を1.5mmとしており、d/Dが約24.6%となっている。
なお、面取り部43は、図2(b)に示すように、終端43bよりも中央線CL1側に突出するように形成されている。具体的には、面取り部43の接地面30との境界線C3が、始端43aから終端43bまでは幅Wo1が略一定であるが、終端43bから中央線CL1に向かうにつれて幅Wo1が徐々に小さくなる屈曲線となっている。すなわち、境界線C3は、終端43bよりも中央線CL1側が、トレッド面視で、始端43aと終端43bとを結ぶ直線の延長戦である仮想線C3aよりもサイプ幅方向W1の中央側に位置しており、終端43bを基点としてサイプ幅方向W1の中央側に屈曲した形状をしている。
そして、この境界線C3は、終端43bよりも中央線CL1側では、接地面30よりもタイヤ径方向Rの内側に存在している。すなわち、終端43bよりも中央線CL1側においては、境界線C3のタイヤ径方向Rにおける高さ位置は、中央線CL1側に向かうにつれて徐々に低くなる。言い換えると、終端43bよりも中央線CL1側においては、面取り部43のタイヤ径方向Rの深さはd1よりも小さく、中央線CL1側に向かうにつれて徐々に浅くなっている。したがって、境界線C3の終端43bよりも中央線CL1側の部分は、通常、路面に接触しない部分となっている。
そこで、本実施形態では、幅Wo1が略一定である始端43aから終端43bまでのタイヤ幅方向Wの距離、すなわち、面取り部43のうち路面に接する部分のタイヤ幅方向Wの距離をlo(l)と定義した。
面取り部44は、サイプ部40におけるサイプ幅方向W1の他端側(図2(b)の下側)に設けられており、ブロック20A(マルチラウンド陸部)のタイヤ幅方向Wの他端縁(車両装着時外側の端縁)の始端44aから中央側の終端44bにかけて設けられている。なお、終端44bは、ブロック20Aのタイヤ幅方向Wの中央線CL1に向かう途中に形成されている。このとき、ブロック20A(マルチラウンド陸部)のタイヤ幅方向Wの幅をLとし、面取り部44の始端44aから終端44bまでのタイヤ幅方向Wの距離をlo(l)としたとき、l/Lが10%〜40%の範囲内となるように、面取り部44を形成するのが好ましい。本実施形態では、ブロック20A(マルチラウンド陸部)のタイヤ幅方向Wの幅Lを24.4mm、lo(l)を8.5mmとしており、l/Lが35%となっている。
また、面取り部44のサイプ幅方向W1の幅Wo2が1.5mm〜3.0mmの範囲内にあるように、面取り部44を形成するのが好ましい。本実施形態では、幅Wo2を1.5mmとしている。
そして、面取り部44のタイヤ径方向Rの深さをd2(d)とし、サイプ部40のタイヤ径方向Rの深さをDとしたときに、d/Dが10%〜30%の範囲内にあるように、面取り部44を形成するのが好ましい。本実施形態では、サイプ部40のタイヤ径方向Rの深さDを6.1mmとし、面取り部44のタイヤ径方向Rの深さd2(d)を1.5mmとしており、d/Dが約24.6%となっている。
なお、面取り部44は、図2(b)に示すように、終端44bよりも中央線CL1側に突出するように形成されている。具体的には、面取り部44の接地面30との境界線C4が、始端44aから終端44bまでは幅Wo2が略一定であるが、終端44bから中央線CL1に向かうにつれて幅Wo2が徐々に小さくなる屈曲線となっている。すなわち、境界線C4は、終端44bよりも中央線CL1側が、トレッド面視で、始端44aと終端44bとを結ぶ直線の延長戦である仮想線C4aよりもサイプ幅方向W1の中央側に位置しており、終端44bを基点としてサイプ幅方向W1の中央側に屈曲した形状をしている。
そして、この境界線C4は、終端44bよりも中央線CL1側では、接地面30よりもタイヤ径方向Rの内側に存在している。すなわち、終端44bよりも中央線CL1側においては、境界線C4のタイヤ径方向Rにおける高さ位置は、中央線CL1側に向かうにつれて徐々に低くなる。言い換えると、終端44bよりも中央線CL1側においては、面取り部44のタイヤ径方向Rの深さはd2よりも小さく、中央線CL1側に向かうにつれて徐々に浅くなっている。したがって、境界線C4の終端44bよりも中央線CL1側の部分は、通常、路面に接触しない部分となっている。
そこで、本実施形態では、幅Wo2が略一定である始端44aから終端44bまでのタイヤ幅方向Wの距離、すなわち、面取り部44のうち路面に接する部分のタイヤ幅方向Wの距離をlo(l)と定義した。
このように、本実施形態では、ブロック20A(マルチラウンド陸部)のタイヤ幅方向Wの幅をLとし、面取り部41,42,43,44の始端41a,42a,43a,44aから終端41b,42b,43b,44bまでのタイヤ幅方向Wの距離をl(liまたはlo)としたときに、l/Lが10%〜40%の範囲内となるように各面取り部41,42,43,44を形成している。
ここで、l/Lとウエット路面におけるタイヤ単体のピークμとの関係を表1に示す。なお、表1では、面取り部を設けていないときのピークμを100として指数化しており、この数値が大きいほど、ウエット路面におけるタイヤ単体のピークμの値は大きくなる。また、表1における面取り幅lは、面取り部41,42,43,44の始端41a,42a,43a,44aから終端41b,42b,43b,44bまでのタイヤ幅方向Wの距離l(liまたはlo)を意味している。
表1に示すように、l/Lを10%〜40%の範囲内とすれば、ウエット路面におけるタイヤ単体のピークμの値を大きくすることができる。
また、本実施形態では、面取り部41,42,43,44のサイプ幅方向W1の幅(サイプ幅)Wo1,Wo2,Wi1,Wi2が1.5mm〜3.0mmの範囲内にあるように、各面取り部41,42,43,44を形成している。
ここで、面取り部のサイプ幅とウエット路面におけるタイヤ単体のピークμとの関係を表2に示す。なお、表2では、面取り部を設けていないときのピークμを100として指数化しており、この数値が大きいほど、ウエット路面におけるタイヤ単体のピークμの値は大きくなる。また、表2における面取り量wは、面取り部41,42,43,44のサイプ幅方向W1の幅(サイプ幅)Wo1,Wo2,Wi1,Wi2を意味している。
表2に示すように、サイプ幅を1.5mm〜3.0mmの範囲内とすれば、ウエット路面におけるタイヤ単体のピークμの値を大きくすることができる。
また、本実施形態では、面取り部41,42,43,44のタイヤ径方向Rの深さをd(d1またはd2)とし、サイプ部40のタイヤ径方向Rの深さをDとしたときに、d/Dが10%〜40%の範囲内にあるように、各面取り部41,42,43,44を形成している。
ここで、d/Dとウエット路面におけるタイヤ単体のピークμとの関係を表3に示す。なお、表3では、面取り部を設けていないときのピークμを100として指数化しており、この数値が大きいほど、ウエット路面におけるタイヤ単体のピークμの値は大きくなる。また、表3における面取り深さdは、面取り部41,42,43,44のタイヤ径方向Rの深さd(d1またはd2)を意味している。
表3に示すように、d/Dを10%〜40%の範囲内とすれば、ウエット路面におけるタイヤ単体のピークμの値を大きくすることができる。
また、本実施形態では、サイプ部40の延在方向とタイヤ幅方向Wとのなす角をθ1としたときに、0°≦θ1≦60°の関係を満たすように、サイプ部40を形成している。
ここで、θ1とウエット路面におけるタイヤ単体のピークμとの関係を表4に示す。なお、表4では、サイプ部を設けていないときのピークμを100として指数化しており、この数値が大きいほど、ウエット路面におけるタイヤ単体のピークμの値は大きくなる。また、表4におけるサイプアングルθ1は、サイプ部40の延在方向とタイヤ幅方向Wとのなす角θ1を意味している。
表4に示すように、サイプ部40を、0°≦θ1≦60°となるように延設すれば、ウエット路面におけるタイヤ単体のピークμの値を大きくすることができる。
以上、説明したように、本実施形態では、空気入りタイヤ(タイヤ)1のトレッド部2は、接地面30の少なくともタイヤ幅方向Wの断面が、曲率が他の湾曲線32,32の曲率とは異なる湾曲線31を有する複数の湾曲線32,33で滑らかに接続された凸形状となるマルチラウンド陸部20Aを有している。
また、マルチラウンド陸部20Aの接地面30側には、タイヤ周方向Cと交差する方向に延在するサイプ部40が形成されている。
そして、サイプ部40におけるタイヤ幅方向Wの両端に面取り部41,43および面取り部42,44がそれぞれ設けられている。
このように、マルチラウンド陸部20Aとすることで、接地面30の中央部35側の接地圧をより高い状態で維持することができる。また、マルチラウンド陸部20Aにサイプ部40を設け、当該サイプ部40のタイヤ幅方向Wの両端に面取り部41,43および面取り部42,44をそれぞれ設けることで、タイヤ回転方向に荷重が付加された際に、接地圧が相対的に低くなるタイヤ幅方向両端に形成されたサイプ部40が巻き込まれてしまうのを抑制することができる。
このように、接地面30の接地圧をより高い状態で維持しながらも、サイプ部40のタイヤ幅方向両端の巻き込みを抑制できるようにすることで、ウエット路面におけるタイヤ回転方向のピークμが向上する。また、マルチラウンド陸部20Aのタイヤ回転方向に対する剛性が高くなって、スリップ率に対するμの立ち上がり(勾配)も向上する。
ところで、タイヤのスリップ率と摩擦係数μの関係は、図4に示すグラフのようになっている。
この図4には、サイプ部40に面取りが施されていないタイヤのスリップ率と摩擦係数μの関係が波線で示されている。また、タイヤ幅方向Wに対する傾斜角度が比較的小さいサイプ部40に面取りを施したタイヤのスリップ率と摩擦係数μの関係が一点鎖線で示されている。さらに、タイヤ幅方向Wに対する傾斜角度が比較的大きいサイプ部40に面取りを施したタイヤのスリップ率と摩擦係数μの関係が実線で示されている。
図4の波線と一点鎖線、および波線と実線とを比較すると、一点鎖線や実線で示すグラフのほうがピークμの値が大きくなっていることが解る。すなわち、サイプ部40に面取りを施したほうが、サイプ部40に面取りを施さない場合に較べてピークμの値が大きくなることが解る。なお、サイプ部40に面取りを施すことで、ピークμの値を約1%〜3%大きくすることができる。
また、図4の波線と実線、および一点鎖線と実線とを比較すると、実線で示すグラフのほうがスリップ率に対するμの立ち上がり(勾配)が大きくなっていることが解る。すなわち、サイプ部40に面取りを施すとともに、タイヤ幅方向Wに対するサイプ部40の傾斜角度を比較的大きくすることで、スリップ率に対するμの立ち上がり(勾配)を大きくなることが解る。なお、サイプ部40に面取りを施すとともに、タイヤ幅方向Wに対するサイプ部40の傾斜角度を比較的大きくすることで、スリップ率に対するμの立ち上がり(勾配)を約7%大きくすることができる。
このように、本実施形態によれば、スリップ率に対するμの立ち上がりおよびピークμが向上するため、実車のブレーキ性能が向上する。
その結果、ウエット路面におけるタイヤの運動性能をより向上させることができるようになる。
なお、サイプ部の溝深さ、面取り量や面取り幅、傾斜角度等を最適化すれば、スリップ率に対するμの立ち上がりおよびピークμをより向上させることができ、実車のブレーキ性能をより向上させて、ウエット路面におけるタイヤの運動性能をより一層向上させることができるようになる。
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態には限定されず、種々の変形が可能である。
例えば、上記実施形態では、タイヤとして空気入りタイヤを例示したが、空気以外の気体(例えば、酸素分圧を変えた空気や窒素ガスなどの不活性ガス)を充填したタイヤやその他のタイヤとすることができる。
また、上記実施形態では、周方向溝および幅方向溝で区画されたブロックにサイプ部を設けたものを例示したが、タイヤ周方向に連続して延びるリブ(連続陸部)にサイプ部を設け、ブロックが周方向溝およびサイプ部で区画されるようにしてもよい。
また、上記実施形態では、面取り部の形状を平坦な傾斜面としたものを例示したが、面取り部の形状はこれに限られるものではない。