以下、各実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、図中、同一符号を付しており、同一符号の部分についてはその説明を援用する。
<第1実施形態>
本実施形態に係る電力変換システムは、公称電圧が12Vである鉛バッテリ等の二次電池と、公称電圧が数百Vであるリチウムイオンバッテリ等の高電圧蓄電池とを備えるハイブリッドカーに搭載されるものである。
図1は、本実施形態に係る電力変換システムの回路図である。本実施形態に係る電力変換システムは、鉛バッテリである補機バッテリ100と、リチウムイオンバッテリである主機バッテリ200とを有し、補機バッテリ100側と主機バッテリ200側との電力の授受を、電力変換回路10を介して行うものである。なお、主機バッテリ200を第1電源と称することができ、補機バッテリ100を第2電源と称することができる。
電力変換回路10は、トランスTr11と、MOSFETである第1〜第6スイッチング素子Q11〜Q16を備えている。トランスTr11は、互いに磁気的に結合した第1コイルL11と第2コイルL12とにより構成され、第1コイルL11は、センタータップを有している。第2コイルL12の巻数は、第1コイルL11の巻数のN/2倍である。すなわち、第2コイルL12の巻数が、第1コイルL11のいずれか一方の端からセンタータップまでの巻数のN倍となっている。
第1コイルL11の両端は、それぞれ、第1スイッチング素子Q11のドレイン、第2スイッチング素子Q12のドレインに接続されている。一方、第1スイッチング素子Q11のソースと第2スイッチング素子Q12のソースとが接続されている。
補機バッテリ100は、チョークコイルL13を介して電力変換回路10と接続されている。具体的には、チョークコイルL13の一端が補機バッテリ100の正極に接続され、チョークコイルL13の他端が、第1コイルL11のセンタータップに接続されている。一方、第1スイッチング素子Q11のソースと第2スイッチング素子Q12のソースとの接続点は、補機バッテリ100の負極に接続されている。また、補機バッテリ100には、コンデンサ101が並列接続されている。
第2コイルL12の端部の一方は、第3スイッチング素子Q13のソース及び第4スイッチング素子Q14のドレインに接続されている。第2コイルL12の端部の他方は、第5スイッチング素子Q15のソース及び第6スイッチング素子Q16のドレインに接続されている。第3スイッチング素子Q13のドレイン及び第5スイッチング素子Q15のドレインは、正極側のシステムメインリレー201aを介して主機バッテリ200の正極に接続されている。第4スイッチング素子Q14のソース及び第6スイッチング素子Q16のソースは、負極側のシステムメインリレー201bを介して主機バッテリ200の負極に接続されている。
システムメインリレー201a,201bの電力変換回路10側には、電気負荷である高圧負荷300が接続されている。この高圧負荷は、例えば、モータジェネレータとインバータとを含んでいる。モータジェネレータの駆動時にはインバータを制御してモータジェネレータへ電力の供給し、モータジェネレータの発電時には、インバータにより整流を行う。
高圧負荷300は、昇圧回路301を介してシステムメインリレー201a,201bに接続されている。昇圧回路301は、上アームスイッチング素子S1と下アームスイッチング素子S2との直列接続体と、上アームスイッチング素子S1と下アームスイッチング素子S2との接続点に接続されたコイル301aと、上アームスイッチング素子S1に並列接続された第1ダイオードD1と、下アームスイッチング素子S2に並列接続された第2ダイオードD2とを含んでいる。第1ダイオードD1及び第2ダイオードD2は、正極側から負極側への通電を遮断すべく、カソードが正極側に接続され、アノードが負極側に接続されている。
システムメインリレー201a,201bと昇圧回路301との間には、第1コンデンサC1が並列接続されている。高圧負荷300と昇圧回路301との間には、第2コンデンサC2が並列接続されている。
電力変換システムは、さらに、チョークコイルL13と磁気的に結合する補助コイルL14を備えている。これらチョークコイルL13と補助コイルL14により、フライバックトランスとして機能する第2トランスTr12を構成している。補助コイルL14は、第2コンデンサC2に対して直列接続されている。
この補助コイルL14は、チョークコイルL13に補機バッテリ100の正極側から負極側へ励磁電流が流れた場合に、第2コンデンサC2の正極配線側から負極配線側へと励磁電流が流れる方向に巻かれている。この補助コイルL14とチョークコイルL13との巻数比は、N:1である。加えて、補助コイルL14には、ダイオードD3が、第2コンデンサC2の正極配線側から負極配線側への通電を可能とし、逆方向への通電を遮断するように、直列接続されている。チョークコイルL13に対して補機バッテリ100の正極から電圧が印加される場合には、ダイオードD3により、補助コイルL14を介した出力側への電力の供給は遮断される。
電力変換システムは、電力変換回路10の補機バッテリ100側には、補機バッテリ100側の電圧である第1電圧VBを検出する第1電圧検出部102と、チョークコイルL13を流れる電流であるリアクトル電流ILを検出する入力電流検出部103とを備えている。電力変換回路10の主機バッテリ200側には、主機バッテリ200側の電圧、すなわち第1コンデンサC1の電圧である第2電圧VLを検出する第2電圧検出部202と、高圧負荷300側の電圧、すなわち第2コンデンサC2の電圧である第3電圧VHを検出する第3電圧検出部302とを備えている。検出された第1電圧VB、第2電圧VL、第3電圧VH、及びリアクトル電流ILは、制御部400へ入力される。
制御部400は、入力された第1電圧VB、第2電圧VL、第3電圧VH、及びリアクトル電流ILに基づいて演算を行い、第1スイッチング素子Q11、第2スイッチング素子Q12へ制御信号を送信する。このとき、第1コンデンサC1への充電の進行具合に応じて、第1スイッチング素子Q11及び第2スイッチング素子Q12の制御状態が異なる第1〜第4モードのいずれかを選択して制御を行う。
第1モードの制御について、図2のタイムチャートを用いて説明する。第1モードでは、第1スイッチング素子Q11をONとし、第2スイッチング素子Q12をOFFとする制御Aと、第1スイッチング素子Q11及び第2スイッチング素子Q12をいずれもOFFとする制御Bとを交互に行う。換言すれば、第2スイッチング素子Q12を常にOFFとしておき、第1スイッチング素子Q11のONとOFFとを交互に行う。
制御Aでは、リアクトル電流ILの単位時間あたりの変化量は、第1電圧VBから、第2電圧VLを巻数比Nで除算した値を減算したものとなる。この制御Aが行われる際の電流経路について、図3を用いて説明する。図3では、電流経路を矢印で示している。第1コイルL11側では、補機バッテリ100から供給される電流は、チョークコイルL13、第1コイルL11、第1スイッチング素子Q11の順に通過する経路をとることとなる。第2コイルL12側では、第6スイッチング素子Q16、第2コイルL12、第3スイッチング素子Q13の順に通過する経路をとることとなる。この制御Aが行われる期間において、第1コンデンサC1及び第2コンデンサC2の充電が行われる。
制御Aでは、リアクトル電流ILが単調増加するため、リアクトル電流ILが予め定められた値である第1指令値Iref1となることを条件に、リアクトル電流ILを減少させるべく制御Bへと切り替えられる。
制御Bでは、リアクトル電流ILはゼロとなる。一方で、チョークコイルL13には逆起電力が生じるため、補助コイルL14に流れる電流であるフライバック電流IFは、第3電圧VHの値に基づいて直線的に単調減少する。この制御Bが行われる際の電流経路について、図4を用いて説明する。この電流経路は、制御Bの前半である期間B11の経路を示している。制御Bにおいて、第1コイルL11側では、第1スイッチング素子Q11及び第2スイッチング素子Q12が共にOFFであるため、補機バッテリ100からの電力の供給は行われない。一方で、チョークコイルL13にはリアクトル電流ILが残存しており逆起電力が生ずる。そのリアクトル電流ILによりチョークコイルL13から補助コイルL14への電力の供給がなされることとなる。この期間B11において、第2コンデンサC2の充電が行われる。なお、制御Bの後半である期間B12は、フライバック電流IFがゼロである期間であり、いずれの電流も流れないため、電流経路についての説明を省略する。
続いて、第2モードの制御について、図5のタイムチャートを用いて説明する。第2モードでは、第1スイッチング素子Q11及び第2スイッチング素子Q12を共にONとする制御C、第1スイッチング素子Q11をONとし、第2スイッチング素子Q12をOFFとする制御A、第1スイッチング素子Q11及び第2スイッチング素子Q12を共にOFFとする制御Bを順に行う。
制御Cでは、チョークコイルL13に対して補機バッテリ100から第1電圧VBが印加される。すなわち、リアクトル電流ILは、直線的に単調増加する。このとき、第2コイルL12には電力の供給がなされない。
この制御Cが行われる際の電流経路について、図6を用いて説明する。第1スイッチング素子Q11及び第2スイッチング素子Q12が共にONであるため、第1コイルL11から第2コイルL12へと電力が供給されることはない。そのため、チョークコイルL13に流れるリアクトル電流ILが増加することとなる。
このように、制御Cではリアクトル電流ILが単調増加するため、リアクトル電流ILが予め定められた値である第2指令値Iref2となることを条件に、制御Cから制御Aへと移行する。
続く制御Aでは、図3で示したように、第1モードにおける制御Aと同じ電流経路をとることとなるため、その説明を省略する。制御Aから制御Bへの切り替えは、制御Cの開始から所定時間が経過することを条件としてもよいし、制御Aの開始から所定時間が経過することを条件としてもよい。なお、図5のタイムチャートにおいて、制御Aでリアクトル電流ILが単調増加するものとしているが、リアクトル電流ILは、第1電圧VBと第2電圧VLの関係によっては、増減しない場合もあるし、単調減少する場合もある。
制御Bでは、第1コイルL11側では、第1スイッチング素子Q11及び第2スイッチング素子Q12が共にOFFであるため、補機バッテリ100からの電流の供給は行われず、リアクトル電流ILはゼロとなる。一方で、チョークコイルL13には逆起電力が生じるため、補助コイルL14に流れる電流であるフライバック電流IFは、第3電圧VHの値に基づいて直線的に単調減少する。なお、制御Bが行われる期間の電流経路については、図4で示したように、第1モードにおける電流経路と同様であるため、その説明を省略する。
続いて、第3モードの制御について、図7のタイムチャートを用いて説明する。第3モードでは、第1スイッチング素子Q11及び第2スイッチング素子Q12を共にONとする制御Cと、第1スイッチング素子Q11と第2スイッチング素子Q12との一方をONとし、他方をOFFとする制御Aとを交互に行う。このとき、制御Aについては、第1スイッチング素子Q11がONであり第2スイッチング素子Q12がOFFである場合と、第1スイッチング素子Q11がOFFであり第2スイッチング素子Q12がONである場合とが、交互に行われる。
制御Cでは、リアクトル電流ILは、第2モードと同様に直線的に単調増加する。このとき、第1コイルL11には通電がなされないため出力側電流ICはゼロである。
この制御Cが行われる際の電流経路は、図6で示したものと同等であるため、説明を省略する。制御Cではリアクトル電流ILが単調増加するため、リアクトル電流ILが予め定められた値である第3指令値Iref3となることを条件に、制御Cから制御Aへと移行する。
続く制御Aが行われる際の電流経路について、第1スイッチング素子Q11がONであり、第2スイッチング素子Q12がOFFである場合は、図3で示したものと同等であるため、説明を省略する。図8は、第1スイッチング素子Q11がOFFであり、第2スイッチング素子Q12がONである例を示している。第1コイルL11側では、補機バッテリ100から供給される電流は、チョークコイルL13、第1コイルL11、第2スイッチング素子Q12を通過する経路をとることとなる。第2コイルL12側では、第4スイッチング素子Q14、第2コイルL12、第5スイッチング素子Q15を通過する経路をとることとなる。
続いて、第4モードの制御について、図9のタイムチャートを用いて説明する。第4モードでは、第1スイッチング素子Q11及び第2スイッチング素子Q12を共にONとする制御Cと、第1スイッチング素子Q11及び第2スイッチング素子Q12を共にOFFとする制御Bとを交互に行う。
制御Cが行われる際の電流経路は、図6で示したものと同等である。制御Cではリアクトル電流ILが単調増加するため、リアクトル電流ILが予め定められた値である第4指令値Iref4となることを条件に、制御Cから制御Bへと切り替える。
続く制御Bが行われる際の電流経路は、図3で示したものと同等である。すなわち、チョークコイルL13から補助コイルL14へと電力の供給がなされ、第2コンデンサC2の充電が行われる。
これら第1〜第4モードは、第2電圧VLの値によって切り替えられる。第1,第2コンデンサC1,C2の充電開始時には第1モードで制御が行われ、充電が進行して第2電圧VLが第1所定値V1よりも大きくなれば、第2モードで制御が行われる。そして、さらに充電が進行して第2電圧VLが第2所定値V2よりも大きくなれば、第3モードで制御が行われる。第3モードでの制御が継続され、第1コンデンサC1の充電が完了した場合、すなわち、第2電圧VLが目標値VL*に到達した場合、第4モードの制御に切り替える。この第4モードの制御を行うことにより、第2コンデンサC2の電圧は、第1コンデンサC1の電圧よりも高くなる。
第1モードの制御で入力側から出力側へと電力の供給が可能であるのは、第1電圧VBに巻数比Nを乗算した値が、第2電圧VLよりも大きい場合である。そのため、第1電圧VBが一定であるとしたうえで、第1所定値V1は、少なくとも、定数である第1電圧VBに巻数比Nを乗算した値よりも小さく設定されることとなる。また、第3モードにおける制御Aでリアクトル電流ILが減少する条件は、第1電圧VBに巻数比Nを乗算した値が、第2電圧VLよりも小さい場合である。そのため、第1電圧VBが一定であるとしたうえで、第2所定値V2は、少なくとも、定数である第1電圧VBに巻数比Nを乗算した値よりも大きく設定されることとなる。
続いて、制御部400が実行する一連の処理について、図10のフローチャートを用いて説明する。図9のフローチャートに係る制御は、所定の制御周期で実行される。
まず、起動要求を取得したか否かを判定する(S101)。この起動要求の指令信号は、例えば、上位の制御装置であるECU等から送信される。起動要求を取得していない場合(S101:NO)、一連の制御を行わず、待機状態を継続する。
起動要求を取得すれば(S101:YES)、第2電圧VLを取得し(S102)、その第2電圧VLが第1所定値V1以下であるか否かを判定する(S103)。第2電圧VLが第1所定値V1以下であれば(S103:YES)、第1モードでの制御を行う(S104)。第2電圧VLが第1所定値V1以下でなければ(S103:NO)、続いて、第2電圧VLが第2所定値V2以下であるか否かを判定する(S105)。第2電圧VLが第2所定値V2以下であれば(S105:YES)、第2モードで制御を行う(S106)。
一方、第2電圧VLが第2所定値V2以下でなければ(S105:NO)、第2電圧VLが目標値VL*に到達したか否かを判定する(S107)。第2電圧VLが目標値VL*に到達していなければ(S107:NO)、第3モードで制御を行う(S108)。第2電圧VLが目標値VL*に到達していれば(S107:YES)、第4モードで制御を行う(S109)。
第1〜第4モードのいずれかの制御が所定時間行われた後、制御の終了判定を行う(S110)。具体的には、第3電圧VHが、第3電圧VHの目標値VH*以上となったか否かを判定する。第3電圧VHが目標値VH*以上である場合(S110:YES)、一連の処理を終了して起動要求がなされるまで待機する。第3電圧VHが目標値VH*未満である場合(S110:NO)、終了要求を取得したか否かを判定する(S111)。この終了要求の指令信号は、ECU等の上位の制御装置から送信される。終了要求を取得すれば(S111:YES)、一連の処理を終了して起動要求がなされるまで待機する。終了要求を取得しなければ(S111:NO)、S102以降の処理を再度実行する。
なお、図10のフローチャートでは、第1,第2コンデンサC1,C2への充電制御に関する制御のみを示しているが、電力変換システムは第1,第2コンデンサC1,C2への充電制御以外の電力変換も行う。例えば、主機バッテリ200を介して供給される電力を降圧し、補機バッテリ100への充電を行う制御が挙げられる。その制御は、周知の制御であるため、説明を省略する。
以上の制御が行われた場合の、第2電圧VL及び第3電圧VHの時間変化、及び、リアクトル電流ILの平均値IL_aveについて、図11を参照して説明する。
まず、時刻t0で第1モードの制御が開始される。第1モードでは、制御Aで第1,第2コンデンサC1,C2の充電が行われ、制御Bで第2コンデンサC2の充電が行われるため、第2電圧VLよりも第3電圧VHのほうが高くなる。
時刻t1で第2電圧VLが第1所定値V1よりも大きくなれば、第2モードの制御が開始される。第2モードの制御では、制御Aで第1,第2コンデンサC1,C2の充電が行われ、制御Bで第2コンデンサC2の充電が行われるものの、制御Bでの第2コンデンサC2の充電量は小さい。したがって、第3電圧VHは、第2電圧VLよりも若干高くなる。
時刻t2で第2電圧VLが第2所定値V2よりも大きくなれば、第3モードの制御が開始される。第3モードの制御では、制御Aで第1,第2コンデンサC1,C2の充電が行われる。したがって、第2電圧VLと第3電圧VHとが等しくなる。
時刻t3で第2電圧VLが目標値VL*に到達すれば、第4モードの制御が開始される。第4モードの制御では、第1コンデンサC1の充電は行われず、制御Bで第2コンデンサC2の充電が行われる。したがって、第2電圧VLは目標値VL*を維持し、第2コンデンサC3の充電の進行により第3電圧VHは上昇する。
時刻t4で第3電圧VHが目標値VH*に到達すれば、第4モードの制御を終了する。したがって、第2コンデンサC2の電圧は、目標値VH*に維持される。
上記構成により、本実施形態に係る電力変換システムは以下の効果を奏する。
・主機バッテリ200と、電力変換回路10及び昇圧回路301とを電気的に接続させるべく、システムメインリレー201a,201bを接続状態とする場合、主機バッテリ200の電圧よりも第1コンデンサC1の電圧のほうが高ければ、第1コンデンサC1からシステムメインリレー201a,201bへと突入電流が生ずる場合がある。このとき、昇圧回路301と高圧負荷300との間に接続された第2コンデンサC2の電圧が、第1コンデンサC1の電圧と等しければ、第1コンデンサC1に加えて第2コンデンサC2も突入電流の発生に寄与する。すなわち、突入電流の発生に寄与するコンデンサの容量が、より大きくなる。この点、本実施形態では第3電圧VHを第2電圧VLよりも高くなるように第4モードの制御を行い、第1,第2コンデンサC1,C2の充電を行っている。これにより、第2コンデンサC2は、昇圧回路301の第1ダイオードD1によりフローティング状態となる。システムメインリレー201a,201bを接続状態とした場合に、フローティング状態である第2コンデンサC2は突入電流の発生に寄与しないため、突入電流が発生したとしても、その電流値は小さくなる。したがって、突入電流の発生に寄与する容量を小さくすることができ、システムメインリレー201a,201bの溶着を抑制することができる。
・第1モード及び第2モードにおいて、制御Bでは、チョークコイルL13に残存するリアクトル電流ILを回路中で消費する必要がある。この点、チョークコイルL13と磁気的に結合する補助コイルL14を介して第2コンデンサC2の充電を行うことができるため、第2コンデンサC2の充電を早め、且つ、電力の供給効率を高めることができる。
・第1,第2コンデンサC1,C2への充電(プリチャージ)の開始時等、第2電圧VLが小さい場合では、第1スイッチング素子Q11及び第2スイッチング素子Q12の一方をONとし、他方をOFFとする制御Aと、第1スイッチング素子Q11及び第2スイッチング素子Q12を共にOFFとする制御Bとを交互に行うものとしている。これにより、制御Aにおいて増加したチョークコイルL13の電流を、制御Bで減少させることができる。よって、チョークコイルL13に流れる電流が増加し続けることを防ぐことができる。
・第2電圧VLが第1所定値V1より大きくなった場合において、第2モードへと移行し、第1スイッチング素子Q11及び第2スイッチング素子Q12を共にONとする制御C、第1スイッチング素子Q11をONとし、第2スイッチング素子Q12をOFFとする制御A、第1スイッチング素子Q11及び第2スイッチング素子Q12を共にOFFとする制御Bを順に行うものとしている。そのため、制御CでチョークコイルL13に流れる電流を大きくすることができ、出力側への電力の供給速度を向上させることができる。また、制御BでチョークコイルL13の電流を減少させることができる。よって、チョークコイルL13に流れる電流が増加し続けることを防ぐことができる。
・第1,第2コンデンサC1,C2へのプリチャージがさらに進行した場合等、第2電圧VLが第2所定値V2より大きくなった場合には、第3モードへと移行し、第1スイッチング素子Q11及び第3スイッチング素子Q13をONとし、第2スイッチング素子Q12及び第4スイッチング素子Q14をOFFとする制御Cと、第1スイッチング素子Q11、第3スイッチング素子Q13及び第4スイッチング素子Q14をOFFとし、第2スイッチング素子Q12をONとする制御Aとを交互に行うものとしている。したがって、制御CによりチョークコイルL13に流れる電流を増加させることができ、続く制御AによりチョークコイルL13に流れる電流を減少させることができ、充電が進行した第1,第2コンデンサC1,C2へのさらなる充電を迅速に行うことができる。
<第2実施形態>
本実施形態では、第3モードにおける制御が、第1実施形態と一部異なっている。図12は、本実施形態での第3モードにおける第1スイッチング素子Q11及び第2スイッチング素子Q12の開閉状態と、そのときのリアクトル電流ILとを示している。
第3モードにおいて、制御Cにおけるリアクトル電流ILの増加量と、制御Aにおけるリアクトル電流ILの減少量が等しければ、リアクトル電流ILの過剰な増加を抑制することができる。そこで、制御Cが行われる期間と制御Aが行われる期間の比を、1未満の値であるDを用いてD:(1−D)とし、第1電圧VB及び第2電圧VLを用いてDを定める。
加えて、第3モードでは、低調波発振を抑制すべく、リアクトル電流ILにスロープ電流Isを加算した値が補正指令値Iref3*となるように、制御Cから制御Aへと切り替えるタイミングを制御する。このスロープ電流Isについて、図10を用いて説明する。スロープ電流Isは、直線的に増加する仮想的な値であり、制御Cにおけるリアクトル電流ILの増加量をΔILとし、スロープ電流Isの増加量をΔIsとすれば、第3指令値Iref3にΔILとΔIsとを加算した値である補正指令値Iref3*を算出する。そして、この補正指令値Iref3*となるように、制御Cから制御Aへと切り替える制御を行う。
続いて、制御部400が実行する処理を、図13の制御ブロック図により説明する。定電流制御部50では、第1〜第4モードにおけるリアクトル電流ILの指令値である第1〜第4指令値Iref1〜Iref4を、メモリから読み出して制御に用いる。
第1指令値Iref1、第2指令値Iref2、及び第4指令値は、そのまま、定電流制御部50から出力される。なお、第1指令値Iref1、第2指令値Iref2及び第4指令値Iref4は、同じ値であってもよいし、異なる値であってもよい。
第3指令値Iref3は、フィードバック制御部51に入力される。フィードバック制御部51は、加えて、リアクトル電流ILの実電流である平均値IL_aveを取得する。この平均値IL_aveは、入力電流検出部103により検出されたリアクトル電流ILを所定期間蓄積し、その値を平均化したものである。第3指令値Iref3と平均値IL_aveは加算部52に入力され、加算部52は、第3指令値Iref3と平均値IL_aveの差分をとる。この差分はPI制御器53に入力され、リミッタ54へ入力される。このリミッタ54では、PI制御器53の出力値が上限値よりも大きければ、その出力値を上限値に制限する。リミッタ54からの出力値は、加算器55において第3指令値Iref3に加算され、フィードバック制御部51から出力される。
一方、電流補正部57には、第1電圧VB及び第2電圧VLが入力され、第3指令値Iref3の補正量を出力する。そして、加算器56で第3指令値Iref3とフィードバック制御部51の出力値との和に加算されることにより、補正指令値Iref3*が得られる。
定電流制御部50から出力された第1指令値Iref1、第2指令値Iref2、及び補正指令値Iref3*は、モード選択部60に入力される。モード選択部60には、さらに、第2電圧VLも入力され、その第2電圧VLと、第1所定値V1及び第2所定値V2とを比較する。そして、第1指令値Iref1、第2指令値Iref2及び補正指令値Iref3*のいずれを出力するかを決定して出力する。
モード選択部60から出力された第1指令値Iref1、第2指令値Iref2及び補正指令値Iref3*のいずれかは、ピーク電流制御部70に入力され、DA変換器71においてアナログ値に変換され、コンパレータ72のマイナス端子に入力される。
一方、ピーク電流制御部70のスロープ補償部73は、レジスタの値により得られるスロープ電流Isの値を信号として生成し、DA変換器74に入力する。このスロープ電流Isは、上述した通り、各制御周期において0Aから直線的に単調増加する鋸歯状波の信号である。そして、DA変換器74によりアナログ波形とされたスロープ電流Isとリアクトル電流ILとを、加算部75において加算して、コンパレータ72のプラス端子に入力する。なお、スロープ補償部73は、直接アナログ波形を生成し、DA変換器74を介さずコンパレータ72に入力するものとしてもよい。
このスロープ補償部73は、第1モード及び第2モードでは、スロープ電流Isの値をゼロとし、第3モードでは、上述した鋸歯状波のスロープ電流Isを出力するものとしている。これは、第1モードでは、第1スイッチング素子Q11と第2スイッチング素子Q12とを共にOFFとする期間を有しており、その期間ではリアクトル電流ILがゼロとなり、その結果として低調波発振現象が発生しないためである。
コンパレータ72は、マイナス端子に入力された、第1指令値Iref1、第2指令値Iref2及び補正指令値Iref3*のいずれかと、プラス端子に入力された、リアクトル電流ILにスロープ電流Isが加算された値との比較を行う。そして、プラス端子の入力値がマイナス端子の入力値よりも小さい期間において、ハイ状態の信号をRSフリップフロップ77のS端子に入力し、プラス端子の入力値がマイナス端子の入力値よりも大きい期間において、ロー状態の信号をRSフリップフロップ77のS端子に入力する。また、RSフリップフロップ77のR端子には、クロック76からクロック信号が入力される。
第1モードにおいて、入力された信号がロー状態の信号となれば、リアクトル電流ILが第1指令値Iref1を超えたことを意味する。そのため、RSフリップフロップ77は、第1スイッチング素子Q11及び第2スイッチング素子Q12を共にOFFとする信号を送信することにより、制御Aから制御Bへと切り替える。そして、1制御周期が経過すれば、第1スイッチング素子Q11及び第2スイッチング素子Q12の一方をONとし他方をOFFとする信号を送信することにより、制御Bから制御Aへと切り替える。
第2モードにおいて、入力された信号がロー状態の信号となれば、リアクトル電流ILが第2指令値Iref2を超えたことを意味する。そのため、RSフリップフロップ77は、第1スイッチング素子Q11及び第2スイッチング素子Q12の一方をONとし、他方をOFFとする信号を送信することにより、制御Cから制御Aへと切り替える。続いて、制御Cの開始から1制御周期未満の所定時間(例えば半周期)が経過すれば、RSフリップフロップ77は、第1スイッチング素子Q11及び第2スイッチング素子Q12をいずれもOFFとする信号を送信することにより、制御Aから制御Bへと切り替える。そして、1制御周期が経過すれば、第1スイッチング素子Q11及び第2スイッチング素子Q12を共にONとする信号を送信することにより、制御Bから制御Cへと切り替える。
第3モードにおいて、入力された信号がロー状態の信号となれば、リアクトル電流ILにスロープ電流Isを加算した値が補正指令値Iref3*を超えたことを意味する。そのため、RSフリップフロップ77は、第1スイッチング素子Q11及び第2スイッチング素子Q12の一方をONとし、他方をOFFとする信号を送信することにより、制御Cから制御Aへと切り替える。そして、1制御周期が経過すれば、第1スイッチング素子Q11及び第2スイッチング素子Q12を共にONとする信号を送信することにより、制御Aから制御Cへと切り替える。
RSフリップフロップ77の出力は、Duty制限部78へ入力される。このDuty制限部78では、各制御の期間の長さが上限値を超えていればその上限値に設定され、下限値を下回っていれば、下限値に設定される。そして、第1スイッチング素子Q11及び第2スイッチング素子Q12へ制御信号が送信される。
上記構成により、本実施形態に係る電力変換システムは、第1実施形態に係る電力変換システムが奏する効果に加えて、以下の効果を奏する。
・ピーク電流制御部70において、定電流制御部50から入力された各指令値を用いて定電流制御を行っている。これにより、第1電圧VBに変化が生じた場合等において、過電流に対するロバスト性を向上させることができる。
・第3モードでリアクトル電流ILについてのピーク電流制御を行ううえで、スロープ電流を加算するものとしている。これにより、リアクトル電流ILの低調波発振を抑制することができる。
<第3実施形態>
本実施形態では、電力変換システムの回路構成が第1実施形態と異なっている。また、回路構成が異なっていることから、制御部400が実行する処理についても、一部異なっている。
図14は、本実施形態に係る電力変換システムの回路図である。電力変換システムが備える電力変換回路20は、第1コイルL21及び第2コイルL22からなるトランスTr21と、MOSFETである第1〜第8スイッチング素子Q21〜Q28を備えている。第1コイルL21と第2コイルL22の巻数比は、1:Nである。
第1スイッチング素子Q21のソースと、第2スイッチング素子Q22のドレインとが接続され、その接続点には第1コイルL21の一端が接続されている。一方、第3スイッチング素子Q23のソースと第4スイッチング素子Q24のドレインとが接続され、その接続点には第1コイルL21の他端が接続されている。第1スイッチング素子Q21のドレイン及び第3スイッチング素子Q23のドレインは、チョークコイルL23の一端に接続され、チョークコイルL23の他端は補機バッテリ100の正極に接続されている。第2スイッチング素子Q22のソース及び第4スイッチング素子Q24のソースは、補機バッテリ100の負極に接続されている。
第2コイルL22側に設けられる第5〜第8スイッチング素子Q25〜Q28については、第1実施形態の第3〜第6スイッチング素子Q13〜Q16と同様に接続されるため、その説明を省略する。
チョークコイルL23には、補助コイルL24が磁気的に結合するように設けられ、これらチョークコイルL23及び補助コイルL24により、第2トランスTr22を構成している。補助コイルL24には、ダイオードD3が直列接続されている。なお、チョークコイルL23、補助コイルL24については、第1実施形態と同様に巻かれており、ダイオードD3は第1実施形態と同様に接続されているため、詳しい説明を省略する。
図15は、第1モードにおける処理を示すタイムチャートである。第1モードでは、第1スイッチング素子Q21及び第4スイッチング素子Q24をONし、第2スイッチング素子Q22及び第3スイッチング素子Q23をOFFとする制御Aと、第1〜第4スイッチング素子Q21〜Q24をいずれもOFFとする制御Bとを交互に行う。
制御Aでは、第1実施形態における制御Aと同様に、リアクトル電流ILが単調増加し、第1,第2コンデンサC1,C2へ充電が行われる。制御Bでは、第1実施形態における制御Bと同様にリアクトル電流ILがゼロとなり、フライバック電流IFが単調減少する。この制御Bでは、第1コンデンサC1への充電は行われず、第2コンデンサC2への充電が行われる。
図16は、第2モードにおける処理を示すタイムチャートである。第2モードでは、第1〜第4スイッチング素子Q21〜Q24をいずれもONとする制御C、第1スイッチング素子Q21及び第4スイッチング素子Q24をONし、第2スイッチング素子Q22及び第3スイッチング素子Q23をOFFとする制御A、第1〜第4スイッチング素子Q21〜Q24をいずれもOFFとする制御Bを順に行う。
制御Cでは、第1実施形態における制御Cと同様に、リアクトル電流ILは単調増加する。一方で、第1コイルL21から第2コイルL22への電力の供給は行われない。制御Aでは、第1実施形態における制御Aと同様に、第1電圧VBと第2電圧VLとの関係によって、リアクトル電流ILの変化量が定まる。このとき、第1コイルL21から第2コイルL22への電力の供給が行われ、第1,第2コンデンサC1,C2の充電が行われる。続く制御Bでは、第1実施形態における制御Bと同様に、リアクトル電流ILはゼロとなり、フライバック電流IFが単調減少する。この制御Bでは、第1コンデンサC1への充電は行われず、第2コンデンサC2への充電が行われる。
図17は、第3モードにおける処理を示すタイムチャートである。第3モードでは、第1〜第4スイッチング素子Q21〜Q24をいずれもONとする制御Cと、第1スイッチング素子Q21及び第4スイッチング素子Q24をONし、第2スイッチング素子Q22及び第3スイッチング素子Q23をOFFとする制御A、又は第1スイッチング素子Q21及び第4スイッチング素子Q24をOFFし、第2スイッチング素子Q22及び第3スイッチング素子Q23をONとする制御Aとを、交互に行う。
制御Cでは、第1実施形態における制御Cと同様に、リアクトル電流ILは単調増加する。一方で、第1コイルL21から第2コイルL22への電力の供給は行われない。制御Aでは、第1実施形態における制御Aと同様に、リアクトル電流ILは単調減少する。このとき、第1コイルL21から第2コイルL22への電力の供給が行われ、第1,第2コンデンサC1,C2の充電が行われる。
図18は、第4モードにおける処理を示すタイムチャートである。第4モードでは、第1〜第4スイッチング素子Q21〜Q24をいずれもONとする制御Cと、第1〜第4スイッチング素子Q21〜Q24をいずれもOFFとする制御Bとを、交互に行う。
制御Cでは、リアクトル電流ILは単調増加する。一方で、第1コイルL21から第2コイルL22への電力の供給、及び、チョークコイルL23から補助コイルL24への電力の供給は、行われない。制御Bでは、リアクトル電流ILはゼロとなり、フライバック電流IFが単調減少する。この制御Bでは、第1コンデンサC1への充電は行われず、第2コンデンサC2への充電が行われる。
上記構成により、本実施形態に係る電力変換システムは、第1実施形態に準ずる効果を奏する。
<第4実施形態>
本実施形態では、電力変換システムの回路構成が第1実施形態と異なっている。また、回路構成が異なっていることから、制御部400が実行する処理についても、一部異なっている。
図19は、本実施形態に係る電力変換システムの回路図である。電力変換システムが備える電力変換回路30は、トランスTr31、第1〜第4スイッチング素子Q31〜Q34、第1〜第4ダイオードD31〜D34、及びコンデンサC30を含んで構成されている。トランスTr31の入力側として設けられる第1コイルL31には、MOSFETである第2スイッチング素子Q32が直列接続されて直列接続体をなし、その直列接続体にMOSFETである第1スイッチング素子Q31が並列接続されている。より具体的には、第1コイルL31の一端に第1スイッチング素子Q31のドレインが接続されており、第1コイルL31の他端に第2スイッチング素子Q32のドレインが接続されている。そして、第1スイッチング素子Q31のソースと第2スイッチング素子Q32のソースが接続されている。
第1スイッチング素子Q31のドレインと第1コイルL31との接続点は、チョークコイルL33を介して補機バッテリ100の正極に接続されている。一方、第1スイッチング素子Q31のソースと第2スイッチング素子Q32のソースとの接続点は、補機バッテリ100の負極に接続されている。
トランスTr31の出力側には第1コイルL31と磁気的に結合する第2コイルL32が設けられている。第1コイルL31と第2コイルL32との巻数比は、1:Nである。出力側では、MOSFETである第3スイッチング素子Q33とコンデンサC30とが直列接続されて直列接続体をなし、その直列接続体と第2コイルL32とが並列接続されて並列接続体をなしている。その並列接続体には、MOSFETである第4スイッチング素子Q34が直列接続されている。より具体的には、第2コイルL32の一端とコンデンサC30の一端とが接続され、コンデンサC30の他端と第3スイッチング素子Q33のドレインが接続され、第2コイルL32の他端と第3スイッチング素子Q33のソースが接続されている。第2コイルL32と第3スイッチング素子Q33のソースとの接続点には、第4スイッチング素子Q34のドレインが接続されている。
第2コイルL32とコンデンサC30との接続点は、正極側出力端子200aに接続されており、第4スイッチング素子Q34のソースは負極側出力端子200bに接続されている。この正極側出力端子200a、負極側出力端子200bには、コンデンサ201が並列接続されている。
チョークコイルL33には、補助コイルL34が磁気的に結合するように設けられ、これらチョークコイルL33及び補助コイルL34により、第2トランスTr32を構成している。補助コイルL34には、ダイオードD3が直列接続されている。なお、チョークコイルL33、補助コイルL34については、第1実施形態と同様に巻かれており、ダイオードD3は第1実施形態と同様に接続されているため、詳しい説明を省略する。
図20は、第1モードにおける処理を示すタイムチャートである。第1モードでは、第1スイッチング素子Q31、第3スイッチング素子Q33及び第4スイッチング素子Q34をOFFとし、第2スイッチング素子Q32をONとする制御Aと、第1スイッチング素子Q31、第2スイッチング素子Q32、及び第4スイッチング素子Q34をOFFとし、第3スイッチング素子Q33をONとする制御Bとを交互に行う。換言すれば、第1スイッチング素子Q31及び第4スイッチング素子Q34については常にOFFとし、第2スイッチング素子Q32と第3スイッチング素子Q33とを交互にONとする制御を行う。
制御Aでは、第1実施形態における制御Aと同様に、リアクトル電流ILが単調増加し、第1,第2コンデンサC1,C2へ充電が行われる。制御Bでは、第1実施形態における制御Bと同様にリアクトル電流ILがゼロとなり、フライバック電流IFが単調減少する。この制御Bでは、第1コンデンサC1への充電は行われず、第2コンデンサC2への充電が行われる。
図21は、第2モードにおける処理を示すタイムチャートである。第2モードでは、第1スイッチング素子Q31及び第3スイッチング素子Q33をONとし、第2スイッチング素子Q32及び第4スイッチング素子Q34をOFFとする制御C、第1スイッチング素子Q31、第3スイッチング素子Q33及び第4スイッチング素子Q34をOFFとし、第2スイッチング素子Q32をONとする制御A、第1スイッチング素子Q31、第2スイッチング素子Q32、及び第4スイッチング素子Q34をOFFとし、第3スイッチング素子Q33をONとする制御Bを順に行う。
制御Cでは、第1実施形態における制御Cと同様に、リアクトル電流ILは単調増加する。一方で、第1コイルL31から第2コイルL32への電力の供給は行われない。制御Aでは、第1実施形態における制御Aと同様に、第1電圧VBと第2電圧VLとの関係によって、リアクトル電流ILの変化量が定まる。このとき、第1コイルL31から第2コイルL32への電力の供給が行われ、第1,第2コンデンサC1,C2の充電が行われる。続く制御Bでは、第1実施形態における制御Bと同様に、リアクトル電流ILはゼロとなり、フライバック電流IFが単調減少する。この制御Bでは、第1コンデンサC1への充電は行われず、第2コンデンサC2への充電が行われる。
図22は、第3モードにおける処理を示すタイムチャートである。第3モードでは、第1スイッチング素子Q31及び第3スイッチング素子Q33をONとし、第2スイッチング素子Q32及び第4スイッチング素子Q34をOFFとする制御Cと、第1スイッチング素子Q31、第3スイッチング素子Q33及び第4スイッチング素子Q34をOFFとし、第2スイッチング素子Q32をONとする制御Aとを交互に行う。
制御Cでは、第1実施形態における制御Cと同様に、リアクトル電流ILは単調増加する。一方で、第1コイルL31から第2コイルL32への電力の供給は行われない。制御Aでは、第1実施形態における制御Aと同様に、リアクトル電流ILは単調減少する。このとき、第1コイルL31から第2コイルL32への電力の供給が行われ、第1,第2コンデンサC1,C2の充電が行われる。
図23は、第4モードにおける処理を示すタイムチャートである。第4モードでは、第1スイッチング素子Q31及び第3スイッチング素子Q33をONとし、第2スイッチング素子Q32及び第4スイッチング素子Q34をOFFとする制御Cと、第1スイッチング素子Q31、第2スイッチング素子Q32、及び第4スイッチング素子Q34をOFFとし、第3スイッチング素子Q33をONとする制御Bとを、交互に行う。
制御Cでは、リアクトル電流ILは単調増加する。一方で、第1コイルL31から第2コイルL32への電力の供給、及び、チョークコイルL33から補助コイルL34への電力の供給は、行われない。制御Bでは、リアクトル電流ILはゼロとなり、フライバック電流IFが単調減少する。この制御Bでは、第1コンデンサC1への充電は行われず、第2コンデンサC2への充電が行われる。
上記構成により、本実施形態に係る電力変換システムは、第1実施形態に準ずる効果を奏する。
<第5実施形態>
上述した各実施形態では、図10のフローチャートで示したように、第1〜第4モードの制御を行ううえで、第2電圧VLの値に応じてモードを選択するものとしている。したがって、第2電圧検出部202が故障した場合等、第2電圧VLの値を取得できない場合には、図10で示したフローチャートに係る制御を進めることができなくなる。すなわち、第2電圧VLの検出ができない場合には、図10で示したフローチャートに係る制御では、第1コンデンサC1の充電ができなくなる。
そこで、本実施形態では、第2電圧VLの検出ができない場合においても第1コンデンサC1の充電を可能とすべく、第4モードの制御を行う。上記の各実施形態で説明したように、第4モードの制御では、第3電圧VHが目標値VH*に達するまで第2コンデンサC2の充電を行っている。したがって、第2コンデンサC2を充電した後に、第2コンデンサC2に蓄えられた電力を第1コンデンサC1側へと供給すれば、第1コンデンサC1の充電が可能である。
図24は、本実施形態に係る一連の処理を示すフローチャートである。なお、図24のフローチャートにおいて、第1実施形態の図10で示したものと同等の処理を行う箇所には同じ符号を付与しており、説明を省略する。
まず、起動要求を取得すれば(S101)、第2電圧VLを取得可能であるか否かを判定する(S201)。第2電圧VLを取得可能である場合(S201:YES)、第1実施形態と同様に、S102〜S111の制御を行い、第1コンデンサC1及び第2コンデンサC2の充電を行う。
第2電圧VLを取得できない場合(S201:NO)、第4モードの制御を行う(S202)。第4モードの制御を所定時間行った後、第4モードの制御により第3電圧VHが目標値VH*に到達したか否かを判定する(S203)。この目標値VH*は、第1,2コンデンサC1,C2の容量と、第1コンデンサC1の電圧である第2電圧VLの目標値VL*に基づいて定まる値である。具体的には、第2コンデンサC2の電力を用いた第1コンデンサC1の充電の終了時に、第2電圧VLが目標値VL*となるように定められている。
第3電圧VHが目標値VH*に到達していない場合(S203:NO)、S202の制御を繰り返す。第3電圧VHが目標値VH*に到達している場合(S203:YES)、第4モードの制御を終了し(S204)、昇圧回路301の制御を開始する(S205)。昇圧回路301の制御を所定時間行った後、第3電圧VHが第2電圧VLの目標値VL*に到達したか否かを判定する(S206)。第3電圧VHが第2電圧VLの目標値VL*に到達していない場合(S206:NO)、S205の制御を繰り返す。第3電圧VHが第2電圧VLの目標値VL*に到達している場合、昇圧回路301の制御を停止し(S207)、一連の処理を終了する。
本実施形態に係る制御を行った場合の第2電圧VL及び第3電圧VHの時間変化を、図25のタイムチャートを参照して説明する。
時刻t10にて、第2電圧VLを取得できないとの判定がなされれば、第2コンデンサ2の充電を行うべく、第4モードの制御を行う。この第4モードの制御を行うことで、第2コンデンサC2の充電の進行に伴い、第3電圧VHは上昇する。時刻t11で第3電圧VHが目標値VH*に到達すれば、第4モードの制御を終了し、昇圧回路301の制御を開始する。なお、図25では、第3電圧VHの検出の遅れにより、第3電圧VHがオーバーシュートする例を示している。
昇圧回路301の制御により、第2コンデンサC2から第1コンデンサC1へと電力が供給されれば、第3電圧VHは減少し、第2電圧VLは上昇する。そして、時刻t12で第3電圧VHが第2電圧VLの目標値VL*に到達すれば、昇圧回路301の制御を終了する。
なお、本実施形態において、第2コンデンサC2から第1コンデンサC1へと電力を供給するうえで、第3電圧VHが第2電圧VLよりも高い状態で、電力の供給を終了するものとしてもよい。この場合には、第2コンデンサC2から第1コンデンサC1へと電力を供給する際の時定数を予め測定しておき、第3電圧VHが第2電圧VLよりも高いと推定できる時間で、昇圧回路301の制御を終了すればよい。また、第2コンデンサC2から第1コンデンサC1への充電が進むにつれ、第3電圧VHの時間当たりの減少量は、小さくなる。そこで、第3電圧VHの時間当たりの減少量が所定値を下回った場合に、昇圧回路301の制御を終了してもよい。こうすることで、第2電圧VLの検出ができない場合でも、第1実施形態と同等の効果を得ることができる。
上記構成により、本実施形態に係る電力変換システムは、以下の効果を奏する。
・第4モードの制御を行うことにより第2コンデンサC2の充電を行っているため、第2電圧VLの検出ができない場合でも、第2コンデンサC2に蓄えられた電力を用いて第1コンデンサC1の充電を行うことができる。したがって、フェールセーフ機能を担保することができる。
<変形例>
・実施形態では、通流規制素子としてダイオードD3を使用したが、ダイオードD3の代わりに、スイッチング素子、例えば還流ダイオードを備えるMOSFETやIGBTを用いてもよい。ダイオードD3の代わりにスイッチング素子を用いる場合には、チョークコイルL13から補助コイルL14へと電力を供給する制御Bの期間において、そのスイッチング素子をONとする同期整流制御を行えばよい。特に、スイッチング素子としてMOSFETを使用する場合、制御Bの期間において、MOSFETをONとして同期整流制御を実施することで、チョークコイルL13から補助コイルL14へ電力を供給する際の効率を向上させることができる。
・実施形態では、ダイオードD3を第2コンデンサC2に対して負極側に設けているが、第2コンデンサC2に対して正極側に設けてもよい。
・第2コンデンサC2の電圧を第1コンデンサC1の電圧よりも高くするために用いる回路は、各実施形態で示したものに限られない。例えば、補機バッテリ100側に第2コンデンサC2の充電に用いるスイッチング回路をさらに設けるものとしてもよい。
・第1実施形態の電力変換回路10を、図26のように構成してもよい。具体的には、電力変換回路10aにおいて、トランスTr11aを構成する第1コイルL11aの端部のそれぞれに、第1スイッチング素子Q11aのソース、第2スイッチング素子Q12aのソースをそれぞれ接続する。一方で、第1スイッチング素子Q11aのドレインと第2スイッチング素子Q12aのドレインは接続され、その接続点はチョークコイルL13の一端に接続される。また、第1コイルL11のセンタータップは、補機バッテリ100の負極に接続される。なお、第2コイルL12側の構成については、第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。このとき、制御部400が実行する処理は、第1実施形態と同様のものとなる。
・第4実施形態に係る電力変換回路30(フォワードアクティブクランプ回路)の第2コイルL32側について、図27のように構成してもよい。具体的には、トランスTr31の出力側を構成する第2コイルL32の一端は正極側出力端子200aに接続されており、他端は第4スイッチング素子Q34aのドレインに接続されている。第2コイルL32と第4スイッチング素子Q34aのドレインとの接続点は、コンデンサC30aを介して第3スイッチング素子Q33aのソースに接続されており、第4スイッチング素子Q34aのソースは第3スイッチング素子Q33aのドレインに接続されている。この第4スイッチング素子Q34aと第3スイッチング素子Q33aの接続点は、負極側出力端子200bに接続されている。なお、第3スイッチング素子Q33aには第3ダイオードD33aが逆方向に並列接続されており、第4スイッチング素子Q34には第4ダイオードD34aが逆方向に並列接続されている。制御部400が実行する具体的な処理については、第4実施形態と同様であるため、説明を省略する。
・各実施形態では、第1〜第4モードの制御をいずれも行うものとしているが、第1〜第3モードの少なくとも1つのモードと、第4モードとを行うものであればよい。
・第1実施形態における第1モードにおいて、第2スイッチング素子Q12を常にOFFとする例を示したが、図28(a)に示すように、制御Aでは、第1スイッチング素子Q11がONである場合とQ12がONである場合とを交互に行うものとしてもよい。また、図28(b)に示すように、第1スイッチング素子Q11がONである制御Aを複数回行い、続いて、第2スイッチング素子Q12がONである制御Aを複数回行うものとしてもよい。
・第1実施形態における第2モードにおいて、第2スイッチング素子Q12をOFFとすることにより制御Cから制御Aへと切り替えるものとしているが、図29(a)に示すように、第2スイッチング素子Q12をOFFとすることにより制御Cから制御Aへと切り替える制御と、第1スイッチング素子Q11をOFFとすることにより制御Cから制御Aへと切り替える制御とを交互に行うものとしてもよい。また、図29(b)に示すように、第2スイッチング素子Q12をOFFとすることにより制御Cから制御Aへと切り替える制御を複数回行い、続いて、第1スイッチング素子Q11をOFFとすることにより、制御Cから制御Aへと切り替える制御を複数回行うものとしてもよい。なお、第7スイッチング素子Q17は、制御Bが行われる期間において、ONとされる。
・第1〜第4モードにおいて、第1〜第4指令値Iref1〜Iref4を用いて制御するものとしたが、各モードにおいて、制御A〜制御Cを行う期間の長さを予め定めておき、その定められた期間に基づいて制御を行うものとしてもよい。
・第5実施形態に係る制御は、第3、4実施形態に係るシステムにおいても同様に実施することができる。
・各実施形態では、チョークコイルL13,L23,L33を補機バッテリ100に対して正極側に設けているが、負極側に設けてもよい。また、チョークコイルL13,L23,L33を正極側及び負極側に設け、それぞれに磁気結合する補助コイルL14,L24,L34を設けるものとしてもよい。
・補助コイルL14とチョークコイルL13との巻数比を、N以上:1としてもよい。
・実施形態において、電力変換システムがハイブリッドカーに搭載されるものとしたが、搭載対象はこれに限られることはない。