(第1実施形態)
以下、サイドエアバッグ装置の第1実施形態について、図1〜図12を参照して説明する。
なお、以下の記載においては、車両の前進方向を前方として説明し、車両の後進方向を後方として説明する。また、車両の幅方向(車幅方向)における中央部を基準とし、その中央部に近づく側を「車内側」とし、中央部から遠ざかる側を「車外側」とする。また、車両用シートには、衝突試験用のダミーと同様の体格を有する乗員が正規の姿勢で着座しているものとする。このダミーは、例えば国際統一側面衝突ダミー(WorldSID)のAM50(米国成人男性の50%をカバーするモデル)である。
図1及び図2に示すように、車両10において側壁部11の車内側の近傍には、車両用シート12が配置されている。ここで、側壁部11とは、車両10の側部に配置された車両構成部材を指し、主としてドア、ピラー等がこれに該当する。例えば、前席に対応する側壁部11は、フロントドア、センターピラー(Bピラー)等である。また、後席に対応する側壁部11は、サイドドア(リヤドア)の後部、Cピラー、タイヤハウスの前部、リヤクォータ等である。
車両用シート12は、シートクッション13と、そのシートクッション13の後側から起立し、かつ傾斜角度を調整可能に構成されたシートバック14と、シートバック14上に取付けられたヘッドレスト15とを備えている。車両用シート12は、シートバック14が前方を向く姿勢で車室内に配置されている。このように配置された車両用シート12の幅方向は、車幅方向と合致する。
ここで、シートバック14の車幅方向における各部を区別するために、同方向における中間部分を中間部16といい、同方向における両側部分を側部17,18というものとする。
図3及び図12に示すように、シートバック14の骨格部分は、シートフレーム20によって構成されている。シートフレーム20の周縁部分を構成する外フレーム部21は、一対のサイドフレーム部22,23と上フレーム部24とを備えている。各サイドフレーム部22,23は、金属板を曲げ加工することによって、上下方向へ延びる形状に形成されており、各側部17,18内に配置されている。上フレーム部24は、パイプ材を門形に屈曲させることによって形成されており、その両端部において、両サイドフレーム部22,23の上端部に固定されている。
上フレーム部24には、車幅方向に延びる板状の上補助フレーム部25が架け渡されている。また、両サイドフレーム部22,23の下部間には、車幅方向に延びる板状の下補助フレーム部26が架け渡されている。上補助フレーム部25と下補助フレーム部26との間には、ばね材からなるロッド27が架け渡されている。ロッド27には、車両用シート12に着座した乗員Pの背中を安定した状態で支持するための受圧板28が前側から取付けられている。
シートフレーム20の近傍には、ウレタンフォーム等の弾性材からなるシートパッド30が配設されている。シートパッド30は、複数枚の表皮31によって被覆されている。隣り合う表皮31は、縫合により相互に結合されている。
車外側の側部18及びその近傍であってサイドフレーム部23の周りには、収納部32が設けられている。収納部32は、サイドエアバッグ装置の主要部をなすエアバッグモジュールABMを配置するための空間として設けられている。
収納部32の斜め前車外側の角部からはスリット33が延びている。また、車外側の側部18の前部には溝部34が設けられている。そして、これらのスリット33と溝部34とによって挟まれた箇所は薄肉状をなしており、後述するエアバッグ50の主膨張部51によって破断される破断予定部35を構成している。
エアバッグモジュールABMは、ガス発生器40及びエアバッグ50を主要な構成部材として備えている。次に、これらの構成部材の各々について説明する。
<ガス発生器40>
図8及び図12に示すように、ガス発生器40は、インフレータ41と、そのインフレータ41を覆うリテーナ44とを備えている。ここでは、インフレータ41として、パイロタイプと呼ばれるタイプが採用されている。インフレータ41は、長尺状をなす本体部42と、本体部42よりも小径の円柱状をなし、かつ本体部42の上端部に設けられたガス噴出部43とを備えている。本体部42の内部には、膨張用ガスを発生するガス発生剤(図示略)が収容されている。本体部42の下端部には、インフレータ41への作動信号の入力配線となるハーネス(図示略)が接続されている。ガス噴出部43は、本体部42で生成された膨張用ガスを径方向外方へ噴出する。
なお、インフレータ41としては、上記ガス発生剤を用いたパイロタイプに代えて、高圧ガスの充填された高圧ガスボンベの隔壁を火薬等によって破断して膨張用ガスを噴出させるタイプ(ハイブリッドタイプ)が用いられてもよい。
一方、リテーナ44は、膨張用ガスの噴出する方向を制御するディフューザとして機能するとともに、インフレータ41をエアバッグ50等と一緒にサイドフレーム部23に締結する機能を有する部材である。リテーナ44の大部分は、金属板等の板材を曲げ加工等することによって略筒状に形成されている。リテーナ44においてガス噴出部43に対向する箇所には窓部(図示略)が設けられており、ガス噴出部43から噴出された膨張用ガスの一部がこの窓部を通じてリテーナ44の外部に供給される。
リテーナ44には、これをサイドフレーム部23に取付けるための係止部材として、一対のボルト45が固定されている。なお、ガス発生器40は、インフレータ41とリテーナ44とが一体になったものであってもよい。
図2及び図3に示すように、エアバッグ50の主要部は、主膨張部51と、これよりも容量の少ない副膨張部85とによって構成されている。主膨張部51は、膨張用ガスにより膨張してシートバック14から出て、同シートバック14に正規の姿勢でもたれている乗員Pと側壁部11との間で前方へ向けて展開する。これに対し、副膨張部85は、主膨張部51のシートバック14外部での展開に先立ち、膨張用ガスにより乗員Pの上半身(主として肩部PS)を車内側へ押圧するようにシートバック14内の受圧板28よりも前側で膨張し、主膨張部51よりも早い時期に膨張を完了する。
図4〜図6では、主膨張部51及び副膨張部85が、ともに膨張用ガスを充填させることなく平面状に展開させられた状態(以下「非膨張展開状態」という)で示されている。また、図7では、エアバッグ50の各構成部材がそれぞれ平面状に展開された状態で示されている。図8では、車幅方向の中央部分で分断された主膨張部51が車両用シート12及び乗員Pとともに示されている。ただし、同図8では、副膨張部85の図示が省略されている。
<主膨張部51>
図4及び図6〜図8に示すように、主膨張部51の形成のために、1枚の布片(基布、パネル布等とも呼ばれる)が用いられている。布片の車幅方向における中央部分には、上下方向に延びる折り線52が設定されている。布片は、折り線52に沿って二つ折りされて車幅方向に重ね合わされている。ここでは、主膨張部51の重ね合わされた2つの部分を区別するために、車内側に位置するものを布部53といい、車外側に位置するものを布部54というものとする。
各布部53,54は、主膨張部51が車両用シート12と側壁部11との間の空間で展開及び膨張したときに、その空間のうち、乗員Pの上半身の多くの部分(腰部PPから肩部PSにかけての部位)の側方となる領域を占有し得る形状及び大きさに形成されている(図1参照)。
なお、第1実施形態では、折り線52が主膨張部51の後端部に位置するように布片が二つ折りされているが、折り線52が主膨張部51の他の端部、例えば前端部、上端部、下端部等に位置するように布片が二つ折りされてもよい。また、主膨張部51は折り線52に沿って分割された2枚の布片からなるものであってもよい。さらに、主膨張部51は3枚以上の布片からなるものであってもよい。
上記布片としては、強度が高く、かつ可撓性を有していて容易に折り畳むことのできる素材、例えばポリエステル糸、ポリアミド糸等を用いて形成した織布等が適している。
車幅方向に重ね合わされた布部53,54は、それらの周縁部に沿って設けられた周縁結合部55によって結合されている。第1実施形態では、周縁結合部55は両布部53,54の周縁部のうち、後端部(折り線52の近傍部分)等を除く部分を、縫製(縫糸で縫合)することにより形成されている。両布部53,54の間であって、周縁結合部55によって囲まれた空間は、膨張用ガスによって膨張する箇所である。
上記のように、結合が縫製による点は、後述する各種結合部についても同様である。各種結合部とは、後縦結合部63,64、前縦結合部65、縦結合部72、上横結合部75、前縦結合部76、周縁結合部89、環状結合部91等である。後述する第2実施形態における区画結合部101、環状結合部106、上横結合部107、下横結合部108、難撓部116等についても同様である。さらに、第3実施形態における後傾斜結合部55a、上横結合部125、下横結合部126、縦結合部131、前縦結合部135,136、後縦結合部137、前傾斜結合部145等についても同様である。
上記縫製に関し、図4〜図6及び図8では、3つの線種によって縫製部分が表現されている。1つ目の線種は、一定長さの太線を断続的に並べて表現した線であり、これは、縫糸を側方から見た状態を示している(図4における周縁結合部55等参照)。2番目の線種は、一定長さ(一般的な破線よりも長い長さ)の細線を断続的に並べて表現した線であり、これは、例えば布片の奥に位置していて直接は見えない(隠れている)縫糸の状態を示している(図4における前縦結合部65等参照)。3番目の線種は、点を一定間隔おきに並べて表現した線であり、これは、縫製部分を通る面における縫糸の断面を示している(図8における周縁結合部55等参照)。
なお、周縁結合部55は、上記縫糸を用いた縫合とは異なる手段、例えば接着剤を用いた接着によって形成されてもよい。この点は、上記各種結合部についても同様である。
主膨張部51内には、区画部60及びインナチューブ70が設けられている。これらの部材のうち、区画部60は、一般的にテザーと呼ばれるものと同様の構成を有している。
<区画部60>
図4及び図6〜図8に示すように、区画部60は、主膨張部51を前後方向に2つの部屋(前膨張室57、後膨張室56)に区画するためのものであり、主膨張部51と同様の素材からなる一対の布部61,62によって構成されている。両布部61,62の下部は、下側ほど前方に位置するように傾斜している。こうした両布部61,62は、主膨張部51が非膨張展開状態にあるとき、車幅方向に重ねられた状態となる。両布部61,62の上端部は、上述した周縁結合部55の一部によって、主膨張部51の両布部53,54の上端部に対し、共縫いにより結合されている。また、区画部60における両布部61,62の前下端部は、上述した周縁結合部55の一部によって、主膨張部51の両布部53,54の前下部に対し、共縫いにより結合されている。
車内側の布部61は、その後側の周縁部に沿って設けられた車内側の後縦結合部63によって車内側の布部53に結合されている。車外側の布部62は、その後側の周縁部に沿って設けられた車外側の後縦結合部64によって車外側の布部54に結合されている(図10参照)。
区画部60の両布部61,62は、それらの前側の周縁部に沿って設けられた前縦結合部65によって相互に結合されている(図10参照)。区画部60は、上記形態の結合により、主膨張部51の両布部53,54間に架け渡されている。
主膨張部51において区画部60よりも後側の部分は、後膨張室56を構成している。後膨張室56内の後端部にはガス発生器40が配置される。詳細については、後述する。後膨張室56は、インフレータ41からの膨張用ガスが前膨張室57に対するよりも早い時期から供給されて、乗員Pの上半身のうち、主として胸部PTの後半部の側方と、腰部PPの側方とで展開及び膨張する。
また、主膨張部51において区画部60よりも前側の部分は、前膨張室57を構成している。前膨張室57は、後膨張室56及び区画部60を経由した膨張用ガスが供給されて、乗員Pの上半身のうち、主として胸部PTの前半部の側方と肩部PSの側方とで展開及び膨張する。
区画部60には、その区画部60を挟んで隣接する後膨張室56と前膨張室57とを連通させる開口部66が形成されている。第1実施形態では、開口部66は、区画部60における各布部61,62に一対ずつあけられた孔によって構成されている。
なお、開口部66は、布部61,62毎に1つ又は3つ以上設けられてもよい。また、開口部66は、両布部61,62の片方にのみ設けられてもよい。
<インナチューブ70>
インナチューブ70は、上記後膨張室56内に配置されており、ガス発生器40の下端部を除く多くの部分を包み込んでいる。ガス発生器40において、インナチューブ70によって囲まれる部分には、インフレータ41のガス噴出部43が含まれる。インナチューブ70は、ガス噴出部43から噴出された膨張用ガスを整流する機能を有している。
インナチューブ70の形成のために、主膨張部51と同様の素材からなる略矩形状をなす単一の布片が用いられている。この布片としては、表面にシリコーン樹脂がコーティングされたものが用いられてもよい。
布片の車幅方向における中央部分には、上下方向に延びる折り線71が設定されている。布片は、上記折り線71を、展開された状態の主膨張部51の折り線52に合致させた状態で同主膨張部51に重ね合わされている。布片は、折り線71,52に沿って設けられた縦結合部72によって、主膨張部51に結合されている。この結合により、インナチューブ70の主膨張部51に対する位置決めがなされている。
布片は、上記折り線71に沿って二つ折りされて車幅方向に重ね合わされている。ここでは、布片の上記の重ね合わされた2つの部分を区別するために、車内側に位置する部分を布部73といい、車外側に位置するものを布部74というものとする。
車幅方向に重ね合わされた両布部73,74は、それらの上縁部に沿って設けられた上横結合部75によって相互に結合されている。これに対し、両布部73,74の下縁部は相互に結合されていない。また、両布部73,74は、それらの前縁部に沿って設けられた前縦結合部76によって相互に結合されている。ただし、両布部73,74の前端上部では前縦結合部76が設けられておらず、両布部73,74は結合されていない。
こうした形態の結合により、上端が閉塞され、かつ下端が開放され、さらに前上部が開放された、全体として略上下方向に延びる筒状のインナチューブ70が構成されている。このインナチューブ70の前上部における開放部分と下端の開放部分とは、インフレータ41のガス噴出部43から噴出された膨張用ガスをそれぞれ後膨張室56のうちインナチューブ70の外部に供給するガス供給口77,78を構成している。
主膨張部51及びインナチューブ70の各後端部であって上下方向の中間部分には、折り線52,71に直交する方向へ延びるスリット81が形成されている(図7参照)。両布部53,54及び両布部73,74においてスリット81よりも下側部分は、主膨張部51及びインナチューブ70の他の部分の内側へ折り曲げた状態で入り込ませられた内折り部82となっている(図9参照)。主膨張部51における内折り部82の下端部は、周縁結合部55の一部によって両布部53,54の他の部分に結合(共縫い)されている。また、内折り部82の形成に伴い、スリット81が開かれて、ガス発生器40の挿入口83が形成されている。車内側の布部53,73において、スリット81(挿入口83)の上方には、ガス発生器40の一対のボルト45を挿通するためのボルト挿通孔58,84(図7参照)がそれぞれあけられている。
そして、略上下方向へ延びる姿勢にされたガス発生器40の下端部を除く大部分は、上記挿入口83を通じて、主膨張部51の後膨張室56内の後端部であり、かつインナチューブ70内の後端部に挿通されている。ガス発生器40の下端部は主膨張部51の外部に露出されている。ガス発生器40のボルト45が対応するボルト挿通孔84,58に挿通されることにより、ガス発生器40が、インナチューブ70及び主膨張部51に対し位置決めされた状態で係止されている。
<副膨張部85>
図4、図5及び図7に示すように、副膨張部85の形成のために、主膨張部51と同様の素材からなる1枚の布片が用いられている。布片の車幅方向における中央部分には、上下方向に延びる折り線86が設定されている。布片は、折り線86に沿って二つ折りされて車幅方向に重ね合わされている。ここでは、副膨張部85の重ね合わされた2つの部分を区別するために、車外側に位置するもの(布部53に隣接するもの)を布部88といい、車内側に位置するもの(布部53に隣接しないもの)を布部87というものとする。
各布部87,88は、副膨張部85が膨張したとき、乗員Pの肩部PSと同程度の高さに位置し、その肩部PSを車内側へ押圧し得る形状及び大きさに形成されている。こうした副膨張部85の上部は、シートバック14の上部で膨張する。
なお、第1実施形態では、折り線86が副膨張部85の後端部に位置するように布片が二つ折りされているが、折り線86が副膨張部85の他の端部に位置するように布片が二つ折りされてもよい。また、副膨張部85は折り線86に沿って分割された2枚の布片からなるものであってもよい。さらに、副膨張部85は3枚以上の布片からなるものであってもよい。
車幅方向に重ね合わされた布部87,88は、周縁結合部89によって結合されている(図10、図11参照)。周縁結合部89の多くは、両布部87,88の周縁部のうち、後端部(折り線86の近傍部分)を除く部分に設けられている。周縁結合部89の一部は、両布部87,88の後下部を迂回するように屈曲されている。副膨張部85において、周縁結合部89によって囲まれた領域は、膨張用ガスが供給されて膨張する膨張領域Z1を構成している。また、副膨張部85において、周縁結合部89によって囲まれていない領域、すなわち膨張領域Z1の周りの領域は、膨張用ガスが供給されず膨張しない非膨張領域Z2を構成している。この非膨張領域Z2には、上記後下部が含まれている。
副膨張部85の膨張領域Z1内には、上記主膨張部51内におけるような区画部60やインナチューブ70に相当するものは設けられておらず、またインフレータ41は配置されていない。
非膨張展開状態の副膨張部85は、その少なくとも一部を、同じく非膨張展開状態の主膨張部51に重ねた状態で配置されている。第1実施形態では、この配置は、副膨張部85の主要部を主膨張部51の上部に重ねた状態でなされている(図5参照)。ここでの主要部とは、副膨張部85のうち、上端部を除く大部分のことである。
主膨張部51の後膨張室56、インナチューブ70、及び副膨張部85の膨張領域Z1において、インフレータ41のガス噴出部43の近傍であって、上記膨張領域Z1が主膨張部51に対し重なる部分には、それぞれ孔からなる連通口59,79,90が形成されている。主膨張部51、インナチューブ70及び副膨張部85は、それぞれの連通口59,79,90を介して連通されている(図10、図11参照)。連通口59,79,90の開口面積は共通している。共通とは、開口面積が互いに同一、又は略同一であることを意味する。
第1実施形態では、本体部42の上側に位置するガス噴出部43が、副膨張部85と主膨張部51との重なり部分であり、かつ連通口59,79,90と本体部42との間に位置するようにインフレータ41が配置されることで、ガス噴出部43が連通口59,79,90に接近した箇所に位置している。こうしたインフレータ41の配置により、インフレータ41からの膨張用ガスによる副膨張部85の主膨張部51に対する膨張を促進する膨張促進手段の一部が構成されている。
また、第1実施形態では、ガス噴出部43から連通口59,79,90までの距離が、同ガス噴出部43からインナチューブ70のいずれのガス供給口77,78までの距離よりも短い箇所に連通口59,79,90が形成されることにより、上記膨張促進手段の一部が構成されている(図8参照)。
さらに、第1実施形態では、連通口59,79,90の開口面積が、区画部60における開口部66の開口面積の総和よりも大きく設定されており、こうした設定により上記膨張促進手段の一部が構成されている。ここでの連通口59,79,90の開口面積とは、連通口59,79,90に共通の開口面積であり、総和ではない。
そして、主膨張部51、インナチューブ70及び副膨張部85は、それぞれの連通口59,79,90の周囲に設けられた環状結合部91のみにより、相互に結合されている。
各布部87,88の非膨張領域Z2における上記後下部には、ガス発生器40の一対のボルト45を挿通するためのボルト挿通孔92がそれぞれあけられている。そして、インナチューブ70及び主膨張部51の両者に挿通された上記インフレータ41のボルト45が、副膨張部85における両布部87,88のボルト挿通孔92に挿通されている。
ところで、図12に示すように、ガス発生器40及びエアバッグ50を主要な構成部材として有するエアバッグモジュールABMは、シートバック14の車外側の側部18等における収納部32に収容されている。
ガス発生器40から延びて、インナチューブ70(図12では図示略)、主膨張部51及び副膨張部85のそれぞれに挿通された一対のボルト45が、サイドフレーム部23に対し車外側から挿通されている。これらのボルト45に対し、車内側からナット46が締付けられている。この締付けにより、ガス発生器40が、主膨張部51の後膨張室56、インナチューブ70、及び副膨張部85の非膨張領域Z2と一緒にサイドフレーム部23に固定されている。
ガス発生器40は、上述したボルト45及びナット46とは異なる部材によってサイドフレーム部23に固定されてもよい。
なお、図12中の47は、ボルト45が副膨張部85を傷付けないように、サイドフレーム部23に対し車内側から取付けられて、ボルト45及びナット46を覆うカバーである。
非膨張展開状態の主膨張部51は、ロール折り、蛇腹折り等によって折り畳まれることにより、前後方向及び上下方向にコンパクトにされた状態で上記収納部32に配置されている。ロール折りは、主膨張部51の一方の端部を中心とし、その周りに他の部分を巻き付ける折り態様である。蛇腹折りは、主膨張部51を、一定幅ずつ交互に折り方向を変えながら折り返す折り態様である。
これに対し、副膨張部85のうち車外側のサイドフレーム部23との固定箇所よりも車内側の部分は、折り畳まれることなく車幅方向に展開された状態で、シートバック14内の受圧板28よりも前側に配置されている。より詳しくは、副膨張部85はサイドフレーム部23に対し、その車外側から固定されている。副膨張部85は、サイドフレーム部23の前側を通って、同サイドフレーム部23の車内側に回り込み、カバー47とシートパッド30との間を通って、受圧板28とシートパッド30との間に配置されている。副膨張部85の上部は、シートバック14内の上部に位置している。受圧板28とシートパッド30との間では、副膨張部85の布部88が布部87の前側に位置している。
さらに、同図12に示すように、主として表皮31とシートパッド30との間であって、車外側のサイドフレーム部23と、エアバッグモジュールABMの周りとに対応する箇所には、主膨張部51の展開性向上を目的として、低伸長性材料によってそれぞれ帯状に形成された力布93が巻き付けられている。力布93は、主膨張部51の展開及び膨張の初期に伸長した状態となることにより、所定の展開方向とは異なる方向への主膨張部51の膨張を抑制する。また、力布93は、シートパッド30の変形や表皮31の伸びを抑制することで、シートパッド30を破断予定部35で破断され始めるようにする。このようにして、力布93は、膨張する主膨張部51による車外側の側部18の破断を補助する。
ただし、上記力布93は、副膨張部85の膨張エリアから上下方向(ここでは下方)へ離間した箇所に配置されている。この配置により、力布93が、副膨張部85に干渉して、その副膨張部85の膨張を妨げることが起こりにくい。表現を変えると、力布93は、副膨張部85の膨張時にその副膨張部85と干渉しない位置に配置されている。
図1に示すように、サイドエアバッグ装置は、上述したエアバッグモジュールABMのほかに衝撃センサ95及び制御装置96を備えている。衝撃センサ95は加速度センサ等からなり、車両10の側壁部11(図2参照)等に設けられており、同側壁部11に側方から加えられる衝撃を検出する。制御装置96は、衝撃センサ95からの検出信号に基づきインフレータ41の作動を制御する。
さらに、車両10には、車両用シート12に着座している乗員Pをその車両用シート12に拘束するためのシートベルト装置が装備されているが、図1等ではこのシートベルト装置の図示が省略されている。
次に、上記のようにして構成された第1実施形態のサイドエアバッグ装置の作用及び効果について説明する。
第1実施形態のサイドエアバッグ装置では、エアバッグ50として、主膨張部51と、これよりも小容量の副膨張部85とを備えるものが用いられているところ、インフレータ41が主膨張部51に配置されている。そのため、インフレータ41が小容量の副膨張部85に配置される場合に比べ、インフレータ41の配置がしやすくなり、インフレータ41の配置性が向上する。
図1及び図2に示すように、車両10の走行中等に、側突等により側壁部11に所定値以上の衝撃が加わり、そのことが衝撃センサ95によって検出されると、その検出信号に基づき制御装置96からインフレータ41に対し、これを作動させるための作動信号が出力される。この作動信号に応じて、インフレータ41のガス噴出部43から膨張用ガスが噴出される。噴出された膨張用ガスGは、まず、図8に示すように、ガス噴出部43を囲んでいるインナチューブ70に供給される。この膨張用ガスGにより、主膨張部51の後膨張室56においてインナチューブ70の周りの部分が膨張を開始する。
また、膨張用ガスGは、インナチューブ70の整流作用を受ける。この整流作用により、膨張用ガスGの一部は、インナチューブ70の前上部のガス供給口77(図10参照)と下端のガス供給口78(図11参照)とを通って、後膨張室56のうちインナチューブ70の外部に供給される。
これらの2箇所のガス供給口77,78からの膨張用ガスGにより後膨張室56の内圧が上昇し、同後膨張室56が膨張を開始する。後膨張室56が膨張することで、区画部60の布部61,62がそれぞれ車幅方向の両側へ引っ張られる。区画部60が緊張状態となることで、後膨張室56の車幅方向の膨張が規制される(図2、図3参照)。
また、後膨張室56に供給された膨張用ガスGの一部は、区画部60の開口部66を通って前膨張室57に流出する。前膨張室57は、流入した膨張用ガスGにより、後膨張室56に遅れて膨張を開始する。
これらの後膨張室56及び前膨張室57の各膨張は、折り畳まれた順とは逆の順に、折り状態の解消(展開)を伴いながらなされる。このように展開及び膨張する主膨張部51によってシートバック14のシートパッド30が押圧され、破断予定部35(図12参照)において破断される。主膨張部51は、その一部を収納部32に残した状態で、破断された箇所を通じてシートバック14から、前方へ飛び出す(図1、図2参照)。
一方で、インフレータ41のガス噴出部43からインナチューブ70内に噴出された膨張用ガスGの一部は、そのインナチューブ70の連通口79から、主膨張部51の連通口59及び副膨張部85の連通口90を順に通って同副膨張部85内に流入する(図10、図11参照)。この膨張用ガスGにより副膨張部85が、シートバック14内において受圧板28よりも前側で、中間部16と車外側の側部18との境界部の近傍に向けて膨張し始める。この際、副膨張部85の上部は、シートバック14内の上部で膨張する。
副膨張部85の膨張に際しては、高い剛性を有する車外側のサイドフレーム部23が受圧部として機能し、副膨張部85内で拡散する膨張用ガスGの圧力を受け止めるとともに、シートバック14の上記境界部の近傍に向かう反力を発生させる。この反力により、副膨張部85が斜め前車内側へ向けて膨張していく。この膨張する副膨張部85によって、車外側の側部18において、中間部16寄りの箇所が押圧されて斜め前車内側へ向けて膨らむ。
上記のように、インフレータ41から供給される膨張用ガスGにより、主膨張部51及び副膨張部85がこの順で膨張を開始するところ、その副膨張部85の主膨張部51に対する膨張が、以下のようにして促進される。
(1)第1実施形態では、図4〜図6に示すように、非膨張展開状態の副膨張部85の主要部が、非膨張展開状態の主膨張部51の上部に重ねられている。このことから、重なり部分に形成された主膨張部51、インナチューブ70及び副膨張部85の各連通口59,79,90は、エアバッグ50の上部に位置する。一方、インフレータ41は、ガス噴出部43が本体部42の上側であり、かつ上記重なり部分に位置するように配置されている。そのため、ガス噴出部43が連通口59,79,90に接近した箇所に位置することとなる。
ガス噴出部43から連通口59,79,90までの距離は、ガス噴出部43が本体部42の下側に位置するようにインフレータ41が配置された場合のガス噴出部43から連通口59,79,90までの距離に比べ、短くなる。
また、ガス噴出部43から連通口59,79,90までの距離は、ガス噴出部43が、副膨張部85と主膨張部51との非重なり部分に位置するようにインフレータ41が配置された場合のガス噴出部43から連通口59,79,90までの距離に比べ、短くなる。
上記いずれの場合よりもガス噴出部43が連通口59,79,90に接近した箇所に位置することとなり、ガス噴出部43から噴出された膨張用ガスGが、連通口59,79,90を通じて副膨張部85により早く到達する。その結果、副膨張部85の主膨張部51に対する膨張が促進される。
(2)図7及び図8に示すように、主膨張部51、インナチューブ70及び副膨張部85は、それぞれの連通口59,79,90を介して連通されている。インナチューブ70には、インフレータ41からの膨張用ガスGを主膨張部51(後膨張室56)に供給するガス供給口77,78が設けられている。そして、ガス噴出部43から連通口59,79,90までの距離が、同ガス噴出部43からガス供給口77,78までの距離よりも短い箇所に同連通口59,79,90が形成されている。
そのため、ガス噴出部43から噴出された膨張用ガスGの一部は、ガス供給口77,78に対するよりも早く連通口59,79,90に到達する。ガス噴出部43から噴出された膨張用ガスGの一部は、主膨張部51の後膨張室56のうちインナチューブ70の外部に到達するよりも早く、副膨張部85に到達してその副膨張部85に供給される。その結果、副膨張部85の主膨張部51に対する膨張が促進される。
(3)図8に示すように、主膨張部51は、開口部66を有する区画部60により、インフレータ41が配置され、かつ連通口59の設けられた後膨張室56と、その前側に隣接する前膨張室57とに区画される。連通口59,79,90に共通の開口面積が、開口部66の開口面積の総和よりも大きく設定されている。
そのため、連通口59,79,90と開口部66とが、開口面積の点で上記関係を満たす大きさに形成されることで、開口部66を通って、前膨張室57に供給されるよりも多くの膨張用ガスGが連通口59,79,90を通って副膨張部85に供給される。こうした膨張用ガスGの供給により、副膨張部85の主膨張部51に対する膨張が促進される。
ところで、図6及び図12に示すように副膨張部85は、その膨張領域Z1においては、連通口59,79,90の周りの環状結合部91によって主膨張部51に結合されているにすぎない。強度部材であるサイドフレーム部23に対する副膨張部85の固定は、非膨張領域Z2において行なわれている。そのため、副膨張部85における膨張領域Z1の膨張は、主膨張部51によってもサイドフレーム部23によっても制約されにくい。従って、副膨張部85は、サイドフレーム部23との固定部分を起点として円滑に膨張する。
また、副膨張部85は、折り畳まれた状態で収納されている場合には、その折りを解消しながら膨張する。そのため、折りの解消に膨張用ガスGのエネルギーの一部が奪われ、そのことが、円滑な膨張の妨げとなる。これに対し、第1実施形態では副膨張部85が予め展開された状態で収納されているため、折りの解消が不要となり、膨張が円滑に行なわれる。
そして、上記のようにして、副膨張部85の主膨張部51に対する膨張が促進されることで、主膨張部51がシートバック14の外部で前方へ向けて展開する前に、上記のように斜め前車内側へ向けて膨らむシートパッド30により、図12において二点鎖線で示すように、シートバック14にもたれている乗員Pが背中を斜め前車内側へ押される。乗員Pは図2において二点鎖線で示すように車内側へ移動させられる。この移動方向は、側壁部11から遠ざかる方向である。そして、上記移動により、側壁部11と乗員Pとの間の空間が車幅方向に拡げられる。特に、乗員Pの上半身のうち側壁部11との間隔が最も狭い肩部PSが押されるため、側壁部11と乗員Pとの間の空間が効率よく拡げられる。
一方で、シートバック14から、前方へ飛び出した主膨張部51は、その後も展開及び膨張し続け、シートバック14の外部、より正確には、側壁部11と乗員Pの上半身との間で前方へ向けて展開及び膨張する。
この際、上記したように副膨張部85による乗員Pの移動に伴い側壁部11と乗員Pの上半身との間の空間が車幅方向に拡大されている。そのため、こうした副膨張部85による空間の拡大がなされない場合に比べ、主膨張部51は、乗員Pの上半身と車室内に侵入してくる側壁部11との間で展開及び膨張しやすい。
そして、上記のようにして展開及び膨張した主膨張部51により、乗員Pの上半身が拘束される。すなわち、展開及び膨張した主膨張部51が、乗員Pの上半身と、車室内に進入してくる側壁部11との間に介在する。この主膨張部51により、側壁部11を通じて乗員Pへ伝わる側方からの衝撃が緩和されて、同乗員Pが衝撃から保護される。
(第2実施形態)
次に、サイドエアバッグ装置の第2実施形態について、図13〜図21を参照して説明する。
第2実施形態では、主膨張部51として第1実施形態と異なる構成を有するものが用いられている。第2実施形態は、主膨張部51内に2つの膨張室が形成されている点で第1実施形態と共通するが、それらの膨張室が上下に並んでいる点で、前後に並んでいる第1実施形態と相違している。
また、インフレータ41は、ガス噴出部43が本体部42の下側に位置するように配置されている。副膨張部85として、第1実施形態よりも大きなものが用いられている。連通口が、主膨張部51及び副膨張部85の下部に設けられている。次に、これらの相違点を中心に、詳細について説明する。
<主膨張部51>
図13及び図16に示すように、主膨張部51内には、第1実施形態における区画部60に相当する部材が用いられていない。周縁結合部55の一部に、区画部60と同様の機能を発揮する部分が設けられている。
周縁結合部55の一部は、両布部53,54の周縁部とは異なる箇所に設けられた区画結合部101によって構成されている。区画結合部101は、両布部53,54の上下方向における中央部よりも僅かに低い箇所に位置している。区画結合部101は、車幅方向に重ね合わされた布部53,54の前端から後方へ向けて延びている。区画結合部101が設けられた箇所では、両布部53,54は互いに接触した状態で結合されている。
主膨張部51において、周縁結合部55によって囲まれた領域は、区画結合部101よりも下側に位置する下膨張室102と、区画結合部101よりも上側に位置する上膨張室103とに区画されている。下膨張室102は、その主要部がシートクッション13の直上であって乗員Pの腰部PPの外側方近傍において、高い内圧で展開及び膨張することで、同腰部PPを拘束及び保護する。上膨張室103は、乗員Pの主として胸部PTの外側方近傍において、上記下膨張室102よりも低い内圧で展開及び膨張して、胸部PT等を保護する。
区画結合部101の後端は、折り線52から前方へ離れた箇所に位置している。主膨張部51内において、折り線52と区画結合部101との間の空間は、下膨張室102と上膨張室103とを連通させて、膨張用ガスGの流路となる連通路104を構成している。
両布部53,54において、区画結合部101によって囲まれた部分は、膨張用ガスGによる膨張が起こらない非膨張部105を構成している。
図13及び図15に示すように、スリット81は、車幅方向に重ね合わされた布部53,54の各後端部の上部に形成されており、内折り部82はスリット81よりも上側部分に形成されている。内折り部82の上端部は、周縁結合部55の一部によって両布部53,54の他の部分に対し、共縫いにより結合されている。また、内折り部82の形成に伴い挿入口83が形成されている。上下一対のボルト挿通孔58は、車内側の布部53において、スリット81(挿入口83)の下方にあけられている。
そして、ガス発生器40の上端部を除く大部分が、挿入口83を通じて、主膨張部51の上膨張室103内の後端部に挿通されており、同ガス発生器40の上端部が主膨張部51の外部に露出されている。ガス発生器40の下端部は、折り線52と区画結合部101との間に位置している。インフレータ41において、本体部42の下側のガス噴出部43は、上膨張室103の下膨張室102との境界部分に位置している。ガス発生器40のボルト45が対応するボルト挿通孔58に挿通されることにより、ガス発生器40が、主膨張部51に対し位置決めされた状態で係止されている。
主膨張部51には、インナチューブ70及び逆止弁111が設けられている。
<インナチューブ70>
インナチューブ70形成用の布片は、自身の折り線71を、主膨張部51の折り線52に合致させ、かつ同折り線71に沿って前方へ二つ折りされた状態で、主膨張部51における布部53,54間に配置されている。
上記布片を構成する一対の布部73,74は、それらの上下方向の中間部分に設けられた環状結合部106によって、主膨張部51の対応する布部53,54に結合されている(図17参照)。また、各布部73,74は、折り線71,52に直交した状態で、同布部73,74の上縁部に沿って設けられた上横結合部107によって、主膨張部51の対応する布部53,54に結合されている(図18参照)。上横結合部107の両端部は、上記区画結合部101に対し交差し、非膨張部105に位置している。そして、上記環状結合部106及び上横結合部107により、インナチューブ70の主膨張部51に対する位置決めがなされている。
車幅方向に重ね合わされた両布部73,74は、それらの下縁部に沿って設けられた下横結合部108によって、相互に結合されている(図18参照)。
車幅方向に重ね合わされた両布部73,74の前上部は、上述した区画結合部101によって、主膨張部51の両布部53,54に対し、共縫いにより結合されている。従って、両布部73,74は、前上部においても相互に結合されていることになる。両布部73,74は、上記前上部及び下部とは異なる箇所では相互に結合されていない。
こうした形態の結合により、下部と前上部とが閉塞され、かつ上後部と前下部とが開放されたインナチューブ70が構成されている。このインナチューブ70の前下部における開放部分は、インフレータ41から噴出された膨張用ガスGの一部を、下膨張室102内であってインナチューブ70の外部に供給するガス供給口109を構成している(図17参照)。
<逆止弁111>
図15及び図16に示すように、逆止弁111は、下膨張室102から上膨張室103への膨張用ガスGの流出(逆流)を規制するためのものであり、主膨張部51と同様の素材からなる布片を用いて形成され、上記連通路104及びその近傍に設けられている。布片の車幅方向における中央部には、上下方向に延びる折り線112が設定されている(図19参照)。ここで、逆止弁111のうち折り線112を境として隣り合う2つの部分を区別するために、車内側に位置する部分を弁体部113といい、車外側に位置する部分を弁体部114というものとする。逆止弁111は、その折り線112をインナチューブ70の折り線71に合致させた状態で車幅方向に重ね合わされ、同インナチューブ70の両布部73,74間に配置されている。各弁体部113,114は、上記上横結合部107によって、インナチューブ70と一緒に主膨張部51に対し、共縫いにより結合されている。なお、両弁体部113,114の上端部は相互に結合されていない(図18参照)。
車幅方向に重ね合わされた両弁体部113,114の前上部は、上述した区画結合部101によって、主膨張部51及びインナチューブ70に対し、共縫いにより結合されている。
図19は、図16中のX部を拡大して示している。同図19に示すように、各弁体部113,114において、上横結合部107と、そこから下方へ長さL1離れた箇所との間の領域(図19において一点鎖線で囲まれた領域)は、柔らかく、膨張用ガスGの圧力によって上膨張室103側へ容易に撓むことのできる可撓部115を構成している。
さらに、両弁体部113,114の折り線112から前方へ若干離れた箇所には難撓部116が設けられている。難撓部116は、両弁体部113,114の後部において、可撓部115を挟んで上横結合部107から下方へ一定距離(長さL1)隔てた箇所を起点として下方(下膨張室102側)へ延びている。難撓部116は、両弁体部113,114を縫糸によって1列又は複数列(ここでは2列)に縫合することによって形成されており、上記可撓部115よりも、また、逆止弁111における他の部分よりも硬く(剛性が高く)、撓みにくくなっている。両弁体部113,114は、難撓部116により、折り線112の前側近傍において相互に結合されている。
ここで、上記の構成を有する逆止弁111では、図20に示すように、難撓部116が逆止弁111の折り線112から前方へ離れている。このことから、可撓部115において、折り線112と区画結合部101との間隔D1は、難撓部116と区画結合部101との間隔D2よりも大きくなっている。このことは、両弁体部113,114間を膨張用ガスGが流れることで逆止弁111が膨張する際、難撓部116と区画結合部101との間の領域が、折り線112と区画結合部101との間の領域である可撓部115よりも小さな内径で円筒状に膨張することを意味する。
また、図19に示すように、難撓部116の上下方向の長さをL2とする。区画結合部101において難撓部116との間隔が最も狭くなる箇所Bと、上横結合部107が折り線112と交わる箇所Cとの間隔をD3とする。第2実施形態では、L2>D3の関係が満たされるように、長さL2及び間隔D3が設定されている。
上述したように、各弁体部113,114の上端部が、上横結合部107によって主膨張部51の対応する布部53,54と、インナチューブ70の対応する布部73,74とに結合されているが、それらの上端部同士は結合されていない(図18参照)。従って、逆止弁111は、膨張用ガスGの供給時には、上端部及び前下部において開放された筒状に膨張することとなる。
<副膨張部85>
図14及び図15に示すように、副膨張部85は、シートバック14内で膨張することで、乗員Pを車内側へ押圧するためのものであるが、第2実施形態では、この副膨張部85として、第1実施形態よりも下方へ長いものが用いられている。非膨張展開状態の副膨張部85の主要部は、非膨張展開状態の主膨張部51の下膨張室102及び上膨張室103に跨って重なった状態で配置されている。副膨張部85の上部はシートバック14内の上部で膨張し、下部は同シートバック14内の下部で膨張する。
また、副膨張部85において両布部87,88を結合する周縁結合部89の多くは、両布部87,88の周縁部のうち、後端部(折り線86の近傍部分)を除く部分に設けられている。周縁結合部89の一部は、車幅方向に重ね合わされた両布部87,88の後部のうち、上下方向における上部及び中間部分を迂回するように屈曲されている。副膨張部85において、周縁結合部89によって囲まれた膨張領域Z1は、主膨張部51よりも容量が少ない。また、副膨張部85において、周縁結合部89によって囲まれていない非膨張領域Z2には、上記上下方向における上部及び中間部が含まれている。
図13〜図15に示すように、主膨張部51の下膨張室102、インナチューブ70及び副膨張部85の膨張領域Z1において、インフレータ41のガス噴出部43の近傍であって、上記膨張領域Z1が主膨張部51に対し重なる部分、ここでは膨張領域Z1の後下部には、それぞれ孔からなる連通口59,79,90が形成されている。主膨張部51、インナチューブ70及び副膨張部85は、連通口59,79,90を介して連通されている(図17、図18参照)。連通口59,79,90の開口面積は共通している。
第2実施形態では、インフレータ41は、ガス噴出部43が本体部42の下側であり、かつ上膨張室103のうち下膨張室102との境界部分に位置するように配置されている。この配置により、ガス噴出部43が、副膨張部85と主膨張部51との重なり部分であり、かつ連通口59,79,90と本体部42との間に位置しており、連通口59,79,90に接近している。こうしたインフレータ41の配置により、インフレータ41からの膨張用ガスGによる副膨張部85の主膨張部51に対する膨張を促進する膨張促進手段の一部が構成されている。
また、第2実施形態では、ガス噴出部43から連通口59,79,90までの距離が、同ガス噴出部43からインナチューブ70のガス供給口109までの距離よりも短い箇所に連通口59,79,90が形成されることにより、上記膨張促進手段の一部が構成されている(図16参照)。
主膨張部51、インナチューブ70及び副膨張部85は、それぞれの連通口59,79,90の周囲に設けられた環状結合部91のみにより、相互に結合されている。
各布部87,88の非膨張領域Z2のうち連通口90よりも高い箇所には、上下一対のボルト挿通孔92がそれぞれあけられている。そして、主膨張部51の両ボルト挿通孔58に挿通されたインフレータ41のボルト45が、副膨張部85において車幅方向に重ね合わされた布部87,88毎のボルト挿通孔92に挿通されている。このボルト45が、サイドフレーム部23に対し車外側から挿通されている。これらのボルト45にナット46が締付けられることにより、ガス発生器40が、主膨張部51の上膨張室103、及び副膨張部85の非膨張領域Z2と一緒にサイドフレーム部23に固定されている。
上記以外の構成は第1実施形態と同様である。そのため、第1実施形態で説明したものと同様の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
次に、上記のように構成された第2実施形態のサイドエアバッグ装置の作用及び効果について説明する。逆止弁111については、代表的な動作の態様(モード)を説明する。図20及び図21は、逆止弁111の形態が、膨張用ガスGの供給及び停止の状況に応じて時間とともに変化する様子を模式的に示したものであり、細部については省略及び簡略化されている。
図16に示すように、側突等に応じて制御装置96から出力される作動信号により、インフレータ41のガス噴出部43から膨張用ガスGが噴出されると、その膨張用ガスGの一部は、上膨張室103へ向けて流れ、膨張用ガスGの他の一部は下膨張室102へ向けて流れる。
ここで、ガス噴出部43はインフレータ41の下端部に設けられている。また、インフレータ41のうちガス噴出部43よりも上側の本体部42は、同ガス噴出部43よりも大径に形成されており、膨張用ガスGが上方へ流れるのを妨げようとする。そのため、上膨張室103に向かうよりも多くの膨張用ガスGが、逆止弁111内を下膨張室102へ向けて流れる。
インフレータ41からの膨張用ガスGが逆止弁111に供給されている期間には、逆止弁111の両弁体部113,114には、図21(a)に示すように円筒状になろうとする力が発生する。これは、1つには、各弁体部113,114の上端部が主膨張部51及びインナチューブ70に対し、上横結合部107によって結合されていることによる。さらに、両弁体部113,114の前上部が、主膨張部51及びインナチューブ70に対し、区画結合部101によって結合されていることによる。さらに、両弁体部113,114が後側部において相互に繋がっていることにもよる。
ただし、両弁体部113,114が円筒状になろうとする際、可撓部115と、それよりも下側の部分とでは内径(周長)が異なる。前述したように、逆止弁111では、難撓部116が折り線112から前方へ離れた箇所に設けられている。可撓部115において、折り線112と区画結合部101との間隔D1が、難撓部116と区画結合部101との間隔D2よりも大きくなっている(図20参照)。そのため、両弁体部113,114における可撓部115よりも下側部分は、可撓部115よりも小さな内径(周長)で円筒状に膨張しようとする。
しかし、上述したように、両弁体部113,114の前上部が、主膨張部51及びインナチューブ70に結合されているのに対し、後側部は、難撓部116によって互いに結合されるにとどまり、主膨張部51及びインナチューブ70に結合されていない。両弁体部113,114の前上部が主膨張部51の布部53,54に対し動けないのに対し、上記後部は動き得る。また、両弁体部113,114において、難撓部116は硬く撓みにくいが、可撓部115は柔らかく撓みやすい。
そのため、両弁体部113,114における可撓部115が大きな内径(周長)で円筒状に膨張し、可撓部115よりも下側部分が小さな内径(周長)で円筒状に膨張しようとし、可撓部115が上膨張室103側へ引き寄せられて撓む。これに伴い、両弁体部113,114における可撓部115よりも下側部分は、難撓部116の上端部116Uの近傍部分を支点として、図21(a)において矢印Hで示すように、上横結合部107側(上側)かつ区画結合部101(前側)へ引き寄せられる。この引き寄せにより、難撓部116は、下側ほど前方に位置するような傾斜状態となる。また、前記引き寄せに伴い、区画結合部101と難撓部116との間の撓みやすい部分に皺が入りやすくなる。
両弁体部113,114が上記のように円筒状に膨張することで、インナチューブ70及び主膨張部51において、逆止弁111の周辺部分も膨張する。
上記のように円筒状に膨張した逆止弁111を通過した膨張用ガスGは、インナチューブ70に供給される。図16に示すように、この膨張用ガスGは、インナチューブ70の整流作用を受ける。同膨張用ガスGの一部は、インナチューブ70の前下部のガス供給口109を通って、下膨張室102においてインナチューブ70の外部に供給される。
この膨張用ガスGにより下膨張室102の内圧が上昇し、同下膨張室102が膨張を開始する。インフレータ41からの膨張用ガスGの供給が続くことで、下膨張室102の内圧が上昇していく。一方で、膨張用ガスGにより上膨張室103の内圧も上昇していく。上膨張室103及び下膨張室102がそれぞれ膨張することで、主膨張部51が折り畳まれた順とは逆の順に折り状態を解消する。
この主膨張部51によってシートバック14のシートパッド30が押圧され、破断予定部35(図12参照)において破断される。主膨張部51は、自身の後部をシートバック14の収納部32に残した状態で、破断された箇所を通じてシートバック14から、前方へ飛び出す(図1、図2参照)。
一方で、図16〜図18に示すように、インナチューブ70内に供給された膨張用ガスGの一部は、そのインナチューブ70の連通口79から、主膨張部51の連通口59、及び副膨張部85の連通口90を順に通って同副膨張部85における膨張領域Z1の下部に流入する。膨張用ガスGは、図14に示すように、膨張領域Z1を上方へ向けて流れる。この膨張用ガスGにより副膨張部85の膨張領域Z1が、図12のシートバック14内の受圧板28よりも前側において、中間部16と車外側の側部18との境界部の近傍に向けて膨張し始める。副膨張部85は、シートバック14内の下部から上部までの上下方向に広い領域において、下側から上側に向けて膨張する。副膨張部85の上部は、シートバック14内の上部で膨張する。
副膨張部85の膨張に際しては、サイドフレーム部23が受圧部として機能することで発生する反力により、副膨張部85が斜め前車内側へ向けて膨張していく。この膨張する副膨張部85によって、車外側の側部18において、中間部16寄りの箇所が押圧されて斜め前車内側へ向けて膨らむ。
上記のように、膨張用ガスGにより、主膨張部51及び副膨張部85がこの順で膨張を開始するところ、第2実施形態でも副膨張部85の主膨張部51に対する膨張が、第1実施形態と同様にして促進される。
(1′)図13〜図15に示すように、非膨張展開状態の副膨張部85(膨張領域Z1)の主要部が、非膨張展開状態の主膨張部51に対し重ねられた状態で配置されており、これらの重なり部分に連通口59,90が形成されている。主膨張部51の連通口59が下膨張室102に位置し、インナチューブ70及び副膨張部85の各連通口79,90が、下膨張室102の連通口59に隣接する箇所に位置する。
一方、インフレータ41は、ガス噴出部43が、本体部42の下側であり、かつ上膨張室103の下膨張室102との境界部分に位置するように配置されている。この配置により、ガス噴出部43は、連通口59,79,90と本体部42との間に位置していて、連通口59,79,90に接近している。
従って、ガス噴出部43から連通口59,79,90までの距離は、ガス噴出部43が本体部42の上側に位置するようにインフレータ41が配置された場合のガス噴出部43から連通口59,79,90までの距離に比べ、短くなる。
また、ガス噴出部43から連通口59,79,90までの距離は、ガス噴出部43が、副膨張部85と主膨張部51との非重なり部分に位置するようにインフレータ41が配置された場合のガス噴出部43から連通口59,79,90までの距離に比べ、短くなる。
上記いずれの場合よりもガス噴出部43が連通口59,79,90に接近した箇所に位置することとなり、ガス噴出部43から噴出された膨張用ガスGの一部が、連通口59,79,90を通じて副膨張部85により早く到達する。その結果、副膨張部85の主膨張部51に対する膨張が促進される。
さらに、上述したように、ガス噴出部43が上膨張室103の下膨張室102との境界部分に位置する。このことから、ガス噴出部43は、上記境界部分よりも上方に位置する場合に比べ、連通口59,79,90に接近した箇所に位置する。その結果、ガス噴出部43から噴出された膨張用ガスGの一部は、下膨張室102により早く到達する。また、ガス噴出部43から噴出された膨張用ガスGの一部は、連通口59,79,90を通じて副膨張部85により一層早く到達する。その結果、副膨張部85の主膨張部51に対する膨張がより促進される。
(2′)インフレータ41のガス噴出部43から連通口59,79,90までの距離が、同ガス噴出部43からインナチューブ70のガス供給口109までの距離よりも短い箇所に同連通口59,79,90が形成されている。
そのため、ガス噴出部43から噴出された膨張用ガスGの一部は、ガス供給口109に対するよりも早く連通口59,79,90に到達する。ガス噴出部43から噴出された膨張用ガスGの一部は、主膨張部51の下膨張室102のうちインナチューブ70の外部に到達するよりも早く、副膨張部85に到達してその副膨張部85に供給される。その結果、副膨張部85の主膨張部51に対する膨張が促進される。
そして、主膨張部51がシートバック14の外部で前方へ向けて展開する前に、斜め前車内側へ向けて膨らむシートパッド30により、シートバック14にもたれている乗員Pが背中を斜め前車内側へ押される。特に、シートバック14内の上部で膨張する副膨張部85の上部によって乗員Pの肩部PSが車内側へ押される。
上記のように押された乗員Pは、図2において二点鎖線で示すように車内側へ移動させられる。この移動により、側壁部11と乗員Pとの間の空間が車幅方向に拡げられる。
一方で、シートバック14から前方へ飛び出した主膨張部51は、その後も展開及び膨張し続け、側壁部11と乗員Pの上半身との間において、前方へ向けて展開及び膨張する。主膨張部51の展開及び膨張に際し、上膨張室103は、側壁部11と、車両用シート12に着座している乗員Pの胸部PT、肩部PS等との間で展開及び膨張する。また、膨張用ガスGにより内圧が高くなった下膨張室102は、側壁部11と乗員Pの腰部PPとの間で展開及び膨張する。
この際、上記したように副膨張部85による乗員Pの移動に伴い側壁部11と乗員Pとの間の空間が車幅方向に拡大されている。そのため、こうした副膨張部85による空間の拡大がなされない場合に比べ、主膨張部51は、乗員Pと車室内に侵入してくる側壁部11との間で展開及び膨張しやすい。
そして、上記のようにして展開及び膨張した主膨張部51により、乗員Pの上半身が拘束される。すなわち、展開及び膨張した主膨張部51が、乗員Pの上半身と、車室内に進入してくる側壁部11との間に介在する。この主膨張部51により、側壁部11を通じて乗員Pへ伝わる側方からの衝撃が緩和されて、同乗員Pが衝撃から保護される。
特に、上記(1′)で説明したように、副膨張部85と主膨張部51との重なり部分であり、かつ本体部42の下側に位置するガス噴出部43は、連通口59,79,90に接近している。このことから、ガス噴出部43から噴出された膨張用ガスGの一部は、下膨張室102のうちインナチューブ70の外部に早く到達する。下膨張室102は、シートクッション13に腰掛けている乗員Pの腰部PPの側方で早く展開及び膨張するため、腰部PPを早期に拘束する性能が向上する。
さらに、ガス噴出部43が上膨張室103のうち下膨張室102との境界部分に位置していて、連通口59,79,90に対し、より接近している。ガス噴出部43から噴出された膨張用ガスGの一部が下膨張室102により早く到達する。下膨張室102が腰部PPの側方でより早く展開及び膨張し、腰部PPを早期に拘束する性能がさらに向上する。
インフレータ41からの膨張用ガスGの噴出が停止し、図21(b)に示すように、下膨張室102内の膨張用ガスGが、上膨張室103側へ流れようとすると、逆止弁111が次のように作動する。内径(周長)の相違から上膨張室103側へ引き寄せられて撓んだ可撓部115が、上記膨張用ガスGの噴出停止と略同時に、上膨張室103側へ流れようとする下膨張室102内の膨張用ガスGの高い圧力を一気に受けて、同上膨張室103側へ押圧される。この押圧により、可撓部115が、同図21(b)において矢印Iで示すようにさらに押上げられ、それに伴い、可撓部115よりも下側部分が、前上側へさらに引き寄せられる。
この際、難撓部116もまた引き寄せられ、図21(c)において矢印Jで示すように、上横結合部107に接近する。難撓部116は、上横結合部107に接近した上端部116Uの近傍を支点とし、自身の形状を保ちながら前上側へ倒れ込む。このときには、両弁体部113,114における可撓部115よりも下側部分のうち、難撓部116よりも前側となる部分もまた、上記可撓部115と同様に、上膨張室103側へ向かう下膨張室102内の膨張用ガスGの高い圧力を受ける。この圧力を受けた部分が、両弁体部113,114間に押し込まれるように斜め前上方へ折り曲げられる。これに伴い、両弁体部113,114間の空間、すなわち膨張用ガスGの流路が小さくなる。
ここで、難撓部116の長さL2が間隔D3よりも長く(L2>D3)設定されていることから(図19参照)、同難撓部116は上記のように斜め前上方へ倒れ込む途中で、図21(d)に示すように、区画結合部101に当接する。この区画結合部101は、難撓部116がそれ以上前上側へ倒れ込むのを規制する。そして、この状態になると、逆止弁111が実質的に閉弁した状態となり、下膨張室102内の膨張用ガスGが、両弁体部113,114間を通って上膨張室103側へ流出する(逆流する)ことが規制される。
従って、乗員Pの腰部PPを保護するのに適切な値にまで高められた下膨張室102の内圧が、膨張用ガスGの上膨張室103への流出(逆流)によって低下することが抑制される。乗員Pの上半身のうち、他の部位よりも耐衝撃性の高い腰部PPが、高い内圧の下膨張室102によって適切に拘束及び保護される。
以上が、サイドエアバッグ装置の代表的な動作の態様(モード)であるが、逆止弁111については、これとは異なる態様(別モード)で動作することもあり得る。この態様(別モード)では、逆止弁111は途中までは上記代表的なモードと同様に作動する。途中までとは、可撓部115が上側へ引き寄せられ、難撓部116が前上側へ引き寄せられるまでである。
この引き寄せの後に、両弁体部113,114の可撓部115よりも下側部分が、上膨張室103側へ向かう下膨張室102内の膨張用ガスGの高い圧力を受けて相互に接近させられる。この圧力を受けた部分が、難撓部116に近い側から合わさりながら、上膨張室103側へ向けて潰れていき、両弁体部113,114間の膨張用ガスGの流路を閉塞する。
なお、第2実施形態でも、副膨張部85の膨張領域Z1よりも容量の多い主膨張部51にインフレータ41が配置されている。そのため、インフレータ41が小容量の副膨張部85に配置される場合に比べ、インフレータ41の配置がしやすくなり、インフレータ41の配置性が向上する。
(第3実施形態)
次に、サイドエアバッグ装置の第3実施形態について図22〜図26を参照して説明する。
第3実施形態では、主膨張部51として第2実施形態と異なる構成を有するものが用いられている。第3実施形態は、主膨張部51内に3つの膨張室が形成されている点で、2つの膨張室が形成されている第2実施形態と相違している。次に、この相違点を中心に、詳細について説明する。
図22、図24及び図25に示すように、主膨張部51内には、横区画部121及び縦区画部128が設けられている。第1実施形態と同様、周縁結合部55に区画結合部101は設けられていない。
<横区画部121>
横区画部121の形成のために、主膨張部51と同様の素材からなる1枚の横長の布片が用いられている。布片の車幅方向における中央部分には、上下方向に延びる折り線122が設定されている。布片は、折り線122に沿って二つ折りされて車幅方向に重ね合わされている。ここでは、横区画部121の重ね合わされた2つの部分を区別するために、車内側に位置するものを布部123といい、車外側に位置するものを布部124というものとする。なお、横区画部121は、折り線122に沿って分割された2枚の布片からなるものであってもよい。
車幅方向に重ね合わされた布部123,124は、自身の後部に、略下方へ延びる延出部123a,124aを有している。そして、二つ折りされた横区画部121は、自身の折り線122を主膨張部51の折り線52に合致させた状態で、主膨張部51の両布部53,54間に配置されている。布部123,124は、それらの上縁部に沿って略前後方向へ延びるように設けられた上横結合部125によって、主膨張部51の対応する布部53,54に結合されている。すなわち、布部123は布部53に結合され、布部124は布部54に結合されている(図26(b)参照)。
車幅方向に重ね合わされた両布部123,124は、それらの下側の周縁部に沿って略前後方向に延びるように設けられた下横結合部126によって相互に結合されている(図26(b)参照)。さらに、車幅方向に重ね合わされた布部123,124の前端部は、周縁結合部55の一部によって両布部53,54の前端下部に対し、共縫いにより結合されている。上記態様の結合により、横区画部121は、主膨張部51における両布部53,54の下部間に架け渡されている。
主膨張部51において横区画部121よりも下側の部分は、乗員Pの上半身のうち、腰部PPの側方で展開及び膨張する下膨張室127を構成している。また、横区画部121よりも上側の部分は上膨張室を構成している。
<縦区画部128>
縦区画部128の形成のために、主膨張部51と同様の素材からなる単一の布片が用いられている。上記布片の車幅方向における中央部分には、上下方向に延びる折り線129が設定されている。布片は、折り線129に沿って二つ折りされて車幅方向に重ね合わされている。ここでは、縦区画部128の重ね合わされた2つの部分を区別するために、車内側に位置するものを布部132といい、車外側に位置するものを布部133というものとする。
縦区画部128は、その折り線129を、主膨張部51の折り線52と、横区画部121の折り線122とに合致させた状態で、主膨張部51の両布部53,54間と、横区画部121の両布部123,124間とに配置されている。縦区画部128は、折り線52,129に沿って設けられた縦結合部131によって、主膨張部51に結合されている(図26(a)参照)。この結合により、縦区画部128の主膨張部51に対する位置決めがなされている。
車幅方向に重ね合わされた一対の布部132,133の各前上部は、上側ほど前方に位置するように傾斜する傾斜部132a,133aによって構成されている。両傾斜部132a,133aの前上端部は、上述した周縁結合部55の一部によって両布部53,54の前上部に対し、共縫いにより結合されている。各布部132,133の下部は、横区画部121の両布部123,124上に重ねられている。各布部132,133の下端部は、上述した下横結合部126によって両布部123,124に対し、共縫いにより結合されている。
各布部132,133は、両布部123,124に重ならない箇所では、前側の周縁部に沿って略上下方向へ延びるように設けられた前縦結合部135によって、主膨張部51の対応する布部53,54に結合されている(図26(a)参照)。また、各布部132,133は、両布部123,124に重なる箇所では、前縦結合部135の下側に設けられた前縦結合部136によって、布部123,124にのみ結合されており、布部53,54には結合されていない(図26(c)参照)。
両布部132,133は、上記前縦結合部135,136から後方へ離れた箇所に設けられた後縦結合部137によって相互に結合されている。後縦結合部137は、布部132,133のうち、傾斜部132a,133aとは異なる箇所では、前後方向の中間部分において上下方向へ延びている。後縦結合部137は、傾斜部132a,133aでは、その後縁部に沿って傾斜している。
上膨張室において縦区画部128よりも前側の部分は、膨張用ガスGにより、乗員Pの上半身のうち、胸部PTの前半部の側方で展開及び膨張する上前膨張室138を構成している。上膨張室において縦区画部128よりも後側の部分は上後膨張室139を構成している。上後膨張室139は、膨張用ガスGにより、乗員Pの上半身のうち、主として胸部PTの後半部の側方と、肩部PSの側方とで展開及び膨張する。上後膨張室139及び上前膨張室138は、縦区画部128を介して互いに前後に隣接している。
各布部132,133において、前縦結合部135,136、後縦結合部137、周縁結合部55及び下横結合部126によって囲まれた領域には、上後膨張室139と上前膨張室138とを連通させる開口部141が設けられている。ここでは、開口部141として孔が各布部132,133にあけられている。
車幅方向に重ね合わされた布部132,133(傾斜部132a,133aを除く)のうち、折り線129と後縦結合部137とによって挟まれた領域は、ガス噴出部43から噴出された膨張用ガスGを整流する機能を有するインナチューブ142を構成している。インナチューブ142は、上下方向に延び、かつ上下両端が開放された筒状をなしており、上後膨張室139の後部に位置し、ガス発生器40のリテーナ44を取り囲んでいる。インナチューブ142の上側の開放部分は、インフレータ41から噴出された膨張用ガスGの一部を、上後膨張室139のうちインナチューブ142の外部に供給するガス供給口149を構成している。
スリット81は、主膨張部51及び縦区画部128(インナチューブ142)の各後端部に形成されている。スリット81よりも上側部分に内折り部82が形成される(図22、図25参照)ことで、挿入口83が形成されている。上下で対をなすボルト挿通孔58,84は、車内側の布部53,132において、スリット81(挿入口83)の下方にそれぞれあけられている。
そして、ガス発生器40の上端部を除く大部分が、挿入口83を通じて、上後膨張室139内の後端部であり、かつ縦区画部128(インナチューブ142)内の後端部に挿通されており、同ガス発生器40の上端部が主膨張部51の外部に露出されている。ガス発生器40のボルト45が対応するボルト挿通孔84,58に挿通されることにより、同ガス発生器40が、縦区画部128(インナチューブ142)及び主膨張部51に対し位置決めされた状態で係止されている(図26(a)参照)。ガス発生器40の上端部を除く大部分(ガス噴出部43を含む)は、インナチューブ142によって取り囲まれている。
車幅方向に重ね合わされた布部132,133は、自身の後下部に、略下方へ延びる延出部132b,133bを有している。両延出部132b,133bは、上述した横区画部121における延出部123a,124aと略同一の形状を有している。
横区画部121及び縦区画部128(インナチューブ142)には、連通部143及び逆止弁144が設けられている。連通部143は、下膨張室127と上後膨張室139とを連通させるためのものである。横区画部121及び縦区画部128における下横結合部126は、同横区画部121及び縦区画部128の各後部、より詳しくは、延出部123a,124a,132b,133bとの境界部分において結合を解除されている。表現を変えると、折り線122,129を跨ぐ部分では、布部123,124,132,133を結合させる下横結合部126が設けられていない。このように、下横結合部126が設けられていない部分である、結合を解除された箇所によって連通部143が構成されている。
逆止弁144は、連通部143での膨張用ガスGの流通を制御する弁であり、上後膨張室139から下膨張室127への膨張用ガスGの流通(流入)を許容するが、その逆の流通(流出)を規制する。
横区画部121において車幅方向に重ね合わされた両延出部123a,124aの前縁部と、縦区画部128において車幅方向に重ね合わされた両延出部132b,133bの前縁部とは、前傾斜結合部145によって相互に結合されている。この前傾斜結合部145の上端部は、上記下横結合部126の後端部に繋がっている。
また、上記両延出部123a,124aの後部と、上記両延出部132b,133bの後部とは、周縁結合部55の一部をなす後傾斜結合部55aによって主膨張部51の両布部53,54の後端下部に対し、共縫いにより結合されている。前傾斜結合部145及び後傾斜結合部55aは、いずれも前側ほど低くなるように傾斜している。
各延出部123a,124a,132b,133bにおいて、前傾斜結合部145と後傾斜結合部55aとによって囲まれた箇所は、逆止弁144の弁体部146を構成している。
そして、逆止弁144は、両弁体部146の一方が他方から離間することで膨張用ガスGの流通を許容する。このときの逆止弁144の動作態様を「開弁」という。また、逆止弁144は、両弁体部146が、それらの少なくとも一部において互いに接触することで、膨張用ガスGの流通を規制する。このときの逆止弁144の動作態様を「閉弁」という。
さらに、図22及び図23に示すように、下膨張室127には、膨張用ガスGを排出するための排気孔(ベントホールとも呼ばれる)147が設けられている。
周縁結合部55には、下膨張室127の前下部において両布部53,54の結合を解除されることにより、互いに離間した一対の端末部55bが形成されている。下膨張室127には、各端末部55bを囲んだ状態で両布部53,54を結合する一対の囲み結合部148が設けられている。両布部53,54間であって両囲み結合部148によって挟まれた箇所は、両布部53,54の周縁部同士を結合する機能を有していない。この箇所は、下膨張室127の内部と外部とを連通させて、その下膨張室127内の膨張用ガスGを外部へ排出させるための排気孔147を構成している。
なお、副膨張部85としては、第2実施形態の副膨張部85と同様の形状及び大きさを有するものが用いられている。
図23及び図24に示すように、主膨張部51の下膨張室127及び副膨張部85の膨張領域Z1において、インフレータ41のガス噴出部43の近傍であって、上記膨張領域Z1が主膨張部51に対し重なる部分、ここでは膨張領域Z1の後下部には、それぞれ孔からなる連通口59,90が形成されている。主膨張部51及び副膨張部85は、それぞれの連通口59,90を介して連通されている(図26(c)、図26(d)参照)。連通口59,90の開口面積は共通している。
第3実施形態でも、本体部42の下側に位置するガス噴出部43が、副膨張部85と主膨張部51との重なり部分であり、かつ連通口59,90と本体部42との間に位置するようにインフレータ41が配置されることで、同ガス噴出部43が連通口59,90に接近している。ガス噴出部43は、上後膨張室139の下膨張室127との境界部分に位置している。こうしたインフレータ41の配置により、膨張用ガスGによる副膨張部85の主膨張部51に対する膨張を促進する膨張促進手段が構成されている。
そして、主膨張部51及び副膨張部85は、それぞれの連通口59,90の周囲に設けられた環状結合部91のみにより、相互に結合されている(図26(c)、図26(d)参照)。
各布部87,88の上記非膨張領域Z2のうち連通口90よりも高い箇所には、それぞれ上下一対のボルト挿通孔92があけられている。そして、縦区画部128及び主膨張部51の各ボルト挿通孔84,58に挿通された上記インフレータ41のボルト45が、副膨張部85における両布部87,88のボルト挿通孔92に挿通されている。このボルト45が、サイドフレーム部23に対し車外側から挿通されている。これらのボルト45にナット46が締付けられることにより、ガス発生器40が、主膨張部51の上後膨張室139、縦区画部128(インナチューブ142)、及び副膨張部85の非膨張領域Z2と一緒にサイドフレーム部23に固定されている。
上記以外の構成は第2実施形態と同様である。そのため、第2実施形態で説明したものと同様の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
次に、上記のように構成された第3実施形態のサイドエアバッグ装置の作用及び効果について説明する。
図25に示すように、側突等に応じて制御装置96から出力される作動信号により、インフレータ41のガス噴出部43から膨張用ガスGが噴出されると、その膨張用ガスGは、インナチューブ142の整流作用により、上方へ向かうものと下方へ向かうものとに分配される。ガス噴出部43から噴出された膨張用ガスGは、第2実施形態と同様、上方よりも下方へ多く流れる。
上方へ分配された膨張用ガスGは、インナチューブ142の上端のガス供給口149から上後膨張室139のうちインナチューブ142の外部に供給される。この膨張用ガスGにより、上後膨張室139の内圧が上昇し、同上後膨張室139が膨張を開始する。
また、下方へ分配された膨張用ガスGは逆止弁144に導かれる。膨張用ガスGが逆止弁144に供給されている期間には、両弁体部146には、これを筒状にさせようとする力が発生する。この力により、逆止弁144が開弁する。そのため、膨張用ガスGが両弁体部146間を通り、下膨張室127へ流入する。膨張用ガスGにより下膨張室127の内圧が上昇し、同下膨張室127が膨張を開始する。
ガス発生器40からの膨張用ガスGの供給が続くことで、上後膨張室139及び下膨張室127の各内圧が上昇していく。ただし、下膨張室127には上後膨張室139よりも多くの膨張用ガスGが供給されることから、同下膨張室127の内圧が上後膨張室139の内圧よりも高くなる。上後膨張室139及び下膨張室127が膨張することで、縦区画部128及び横区画部121がそれぞれ車幅方向の両側へ引っ張られる。
上膨張室では、上後膨張室139の膨張が進むにつれて、同上後膨張室139内の膨張用ガスGの一部が開口部141を通じて上前膨張室138へ流出し、上後膨張室139に遅れて上前膨張室138が膨張を開始する。
これらの下膨張室127、上後膨張室139及び上前膨張室138の各膨張は、折り畳まれた順とは逆の順に、折り状態の解消を伴いながらなされる。このように展開及び膨張する主膨張部51によってシートバック14のシートパッド30が押圧され、破断予定部35(図12参照)において破断される。主膨張部51は、その一部を収納部32に残した状態で、破断された箇所を通じてシートバック14から、前方へ飛び出す。
一方で、逆止弁144の両弁体部146間を通って下膨張室127に流入した膨張用ガスGの一部は、下膨張室127の連通口59及び副膨張部85の連通口90を順に通って同副膨張部85における膨張領域Z1の下部に流入する(図26(c)、図26(d)参照)。図23に示すように、膨張用ガスGは、膨張領域Z1を上方へ向けて流れる。この膨張用ガスGにより副膨張部85の膨張領域Z1が、シートバック14内において受圧板28よりも前側で、中間部16と車外側の側部18との境界部の近傍に向けて膨張し始める。
副膨張部85の膨張に際しては、サイドフレーム部23が受圧部として機能することで発生する反力により、副膨張部85が斜め前車内側へ向けて膨張していく。この膨張する副膨張部85によって、車外側の側部18において、中間部16寄りの箇所が押圧されて斜め前車内側へ向けて膨らむ。
上記のように、インフレータ41から供給される膨張用ガスGにより、主膨張部51及び副膨張部85がこの順で膨張を開始するところ、第3実施形態でも副膨張部85の主膨張部51に対する膨張が、第2実施形態の(1′)と同様にして促進される。これは、インフレータ41におけるガス噴出部43が本体部42の下側であり、かつ上後膨張室139の下膨張室127との境界部分に位置していることによる。
そして、上記のようにして、副膨張部85の主膨張部51に対する膨張が促進されることで、主膨張部51がシートバック14の外部で前方へ向けて展開する前に、斜め前車内側へ向けて膨らむシートパッド30により、シートバック14にもたれている乗員Pが背中を斜め前車内側へ押される。乗員Pは図2において二点鎖線で示すように車内側へ移動させられる。そして、上記移動により、側壁部11と乗員Pとの間の空間が車幅方向に拡げられる。
一方で、シートバック14から前方へ飛び出した主膨張部51は、その後も展開及び膨張し続け、側壁部11と乗員Pの上半身との間において、前方へ向けて展開及び膨張する。
図25に示すように、内圧が最も高くなった下膨張室127は、乗員Pの上半身の側部のうち耐衝撃性の最も高い部位である腰部PPの側方で展開及び膨張する。下膨張室127に次いで内圧の高くなった上後膨張室139は、胸部PTの前半部よりも耐衝撃性の高い肩部PSの側方及び胸部PTの後半部の側方で展開及び膨張する。上後膨張室139よりも内圧の低い上前膨張室138は、肩部PSや胸部PTの後半部よりも耐衝撃性の低い胸部PTの前半部の側方で展開及び膨張する。
この際、上記したように副膨張部85による乗員Pの移動に伴い側壁部11と乗員Pとの間の空間が車幅方向に拡大されている。そのため、こうした副膨張部85による空間の拡大がなされない場合に比べ、主膨張部51は、乗員Pと車室内に侵入してくる側壁部11との間で展開及び膨張しやすい。
そして、乗員Pの上半身(腰部PP、肩部PS、胸部PT)が、上記の耐衝撃性に即した圧力分布で膨張した下膨張室127、上後膨張室139及び上前膨張室138によって押圧され、拘束される。その結果、側壁部11を通じて伝わる側方からの衝撃が、下膨張室127、上後膨張室139及び上前膨張室138によって緩和されて、腰部PP、肩部PS及び胸部PTが保護される。
また、上膨張室が単一の部屋によって構成されているものは、その上膨張室が一気に前方へ勢いよく展開及び膨張する。これに対し、第3実施形態では、上膨張室が、上後膨張室139及び上前膨張室138の順に2段階で前方へ展開及び膨張する。そのため、たとえ主膨張部51の前方に障害物があったとしても、その障害物が主膨張部51の展開に伴い強く押圧される現象が抑制される。
インフレータ41からの膨張用ガスGの噴出が停止し、下膨張室127内の膨張用ガスGが、上後膨張室139側へ流れようとすると、逆止弁144における両弁体部146が、下膨張室127内の高い圧力を受けて押圧され、互いに接触する。逆止弁144が閉弁された状態となり、下膨張室127の膨張用ガスGが、両弁体部146間を通って上後膨張室139へ流出(逆流)することを規制される。従って、乗員Pの腰部PPを保護するのに適切な内圧(上後膨張室139よりも高い内圧)にまで高められた下膨張室127の内圧が逆流により低下することが抑制される。
なお、下膨張室127内の余剰の膨張用ガスGは、排気孔147を通じて外部へ排出される。この排出により、乗員Pの主膨張部51による拘束時には、下膨張室127の内圧が低下し、乗員Pの腰部PPが適切な押圧力で押圧される。
上記各実施形態は、これを以下のように変更した変形例として実施することもできる。
<インフレータ41について>
・第2及び第3実施形態におけるインフレータ41は、ガス噴出部43が副膨張部85と主膨張部51との重なり部分であり、かつ本体部42の下側に位置することを条件に、上膨張室103の下膨張室102との境界部分、又は上後膨張室139の下膨張室127との境界部分から上方へ離間した箇所に位置するように配置されてもよい。
この場合にも、ガス噴出部43が、連通口59,79,90(第2実施形態)又は連通口59,90(第3実施形態)に接近した箇所に位置することとなり、ガス噴出部43から噴出された膨張用ガスGの一部は、下膨張室102,127に早く到達する。下膨張室102,127が腰部PPを早期に拘束する性能が向上する。また、ガス噴出部43から噴出された膨張用ガスGの一部が連通口59,79,90又は連通口59,90を通じて副膨張部85により早く到達し、同副膨張部85の主膨張部51に対する膨張が促進される。
<主膨張部51について>
・第1実施形態における主膨張部51は、複数の区画部60により前後方向に3つ以上の複数の膨張室に区画されてもよい。この場合、各区画部60には、その区画部60を挟んで隣接する一対の膨張室を連通させる開口部66が形成される。インフレータ41は、複数の膨張室のうち最後部に位置するものに配置される。連通口59,79,90は、最後部の膨張室とインナチューブ70と副膨張部85とに設けられる。
そして、連通口59,79,90に共通の開口面積が、最後部の膨張室に面する開口部66の開口面積の総和よりも大きく設定されることにより、膨張促進手段が構成されてもよい。
・第1及び第3実施形態におけるインナチューブ70,142は、インフレータ41の少なくともガス噴出部43を取り囲んだ状態で配置されればよい。従って、第1及び第3実施形態では、インフレータ41の大部分がインナチューブ70,142によって取り囲まれたが、ガス噴出部43のみがインナチューブ70,142によって取り囲まれてもよい。
・第2及び第3実施形態における主膨張部51は、上下方向に3つ以上の複数の膨張室に区画されてもよい。より詳しくは、第2実施形態における上膨張室103の上側、又は第3実施形態における上後膨張室139及び上前膨張室138のいずれか一方の上側にさらに膨張室が設けられてもよい。
・第3実施形態における上膨張室は、前後方向に3つ以上の膨張室に区画されてもよい。
・乗員Pの上半身について主膨張部51によって拘束及び保護される部位が、上記各実施形態とは異なる部位に変更されてもよい。
<副膨張部85について>
・上記各実施形態とは異なり、非膨張展開状態の副膨張部85は、その全体が非膨張展開状態の主膨張部51に対し重ねられた状態で配置されてもよい。この場合にも、膨張促進手段を実現するために、インフレータ41は、ガス噴出部43が副膨張部85と主膨張部51との重なり部分であり、かつ連通口59,79,90と本体部42との間に位置するように配置されることが望ましい。
・各実施形態における副膨張部85についても、主膨張部51と同様に折り畳まれた状態で収納部32に配置されてもよい。
<第2実施形態における逆止弁111について>
・逆止弁111は、互いに独立した一対の弁体部113,114を車幅方向に重ね合わせ、それらを筒状となるように結合したものであってもよい。この場合、重ね合わされた両弁体部113,114の後端部を、後縁部に沿って延びる結合部によって相互に結合する。
・難撓部116は、縫糸とは異なるもの、例えば、合成樹脂や金属によって長尺板状に形成されたものによって構成されてもよい。
<第3実施形態における縦区画部128について>
・インナチューブ142が縦区画部128の一部として形成された第3実施形態とは異なり、インナチューブ142と縦区画部128とが別々の部材によって構成されてもよい。
この場合、開口部141の開き具合を調整することにより、上後膨張室139及び上前膨張室138の各内圧を調整する調圧弁が縦区画部128に設けられてもよい。
調圧弁としては、例えば上後膨張室139による乗員Pの拘束前、又は上後膨張室139への膨張用ガスGの供給初期には、上後膨張室139から上前膨張室138への膨張用ガスGの流通を制限するものが用いられてもよい。さらに、上記調圧弁は、上後膨張室139による乗員Pの拘束に伴い加わる外力に応じて、又は上後膨張室139の内圧上昇に応じて、上記流通制限を解除するものであってもよい。
・縦区画部128として、第3実施形態とは異なる形状を有するものが用いられてもよい。この場合、乗員Pの上半身のうち、上後膨張室139によって拘束及び保護したい箇所に応じて縦区画部128の形状が変更されることが望ましい。例えば、傾斜部132a,133aは傾斜せず、略上下方向へ延びる形状に変更されてもよい。
<その他>
・第1実施形態におけるサイドエアバッグ装置は、区画部60及びインナチューブ70の少なくとも一方が省略されたものであってもよい。
・上記サイドエアバッグ装置が適用される車両には、自家用車に限らず各種産業車両も含まれる。