以下に、図面を参照して、本発明を適用した研磨工具ユニットを説明する。
(実施例1)
図1は本発明を適用した実施例1の研磨工具ユニットの斜視図である。本例の研磨工具ユニットはマシニングセンタなどの工作機械に取り付けられて使用される。図1に示すように、研磨工具ユニット1は、工作機械への取付け部となるシャンク2aを備える工具ホルダ2と、工具ホルダ2のシャンク2aとは反対の前端側から突出する線状砥材(砥材)3を備えるブラシ状砥石(研磨工具)4を有する。以下では、研磨工具ユニット1の軸線L方向において、工具ホルダ2から線状砥材3が突出している側を前方、シャンク2aの側を後方として研磨工具ユニット1を説明する。
(工具ホルダ)
工具ホルダ2は、軸線L方向に沿ってシャンク2aの側からシャンクヘッド5とスリーブ6を同軸に備える。シャンクヘッド5はシャンク2aと、円盤部7と、円盤部7とシャンク2aの間を連結する連結円盤部8を備える。連結円盤部8の外径寸法は、シャンク2aの外径寸法よりも長く、円盤部7の外径寸法よりも短い。円盤部7には、半径方向に延びる貫通孔9が2つ設けられている。2つの貫通孔9は軸線L回りで180°の回転対称に形成されている。各貫通孔9には、付勢ネジ10が捻じ込まれている。円盤部7の前端の外周縁部分には、前方および周方向に延びる2つの円弧壁11が設けられている。2つの円弧壁11は軸線L回りで180°の回転対称に設けられている。2つの円弧壁11の隙間部12からは、円弧壁11の内周側に配置されたギアスクリュー操作用歯車13の一部分が露出している。
スリーブ6は、軸線L方向に延びる筒部15と、筒部15の後端から外周側に広がる環状のフランジ16を備える。フランジ16は筒部15と同軸に形成されている。フランジ16の外周縁の後端部分には、シャンクヘッド5の円弧壁11の前端部が嵌合している。筒部15の外周面は、フランジ16に隣接する一定の外径寸法の大径外周面部分15aと、大径外周面部分15aの前端に連続して前方に向かって外径寸法が小さくなるテーパー外周面部分15bと、テーパー外周面部分15bの前端に連続して一定の外径寸法で延びる小径外周面部分15cを備える。筒部15には、大径外周面部分15aからテーパー外周面部分15bを通過して小径外周面部分15cに至る溝状の案内孔17が2つ形成されている。2つの案内孔17は、それぞれ軸線L方向に延びており、軸線L回りで180°の回転対称に形成されている。案内孔17内には連結ネジ18が位置している。
図2(a)は図1の研磨工具ユニット1の分解斜視図であり、図2(b)はギアスクリューの斜視図である。図3は図1の研磨工具ユニット1の第1の縦断面図であり、案内孔17を通過しない位置で切断したものである。図4は図1の研磨工具ユニット1の第2の縦断面図であり、案内孔17を通過する位置で切断したものである。図3に示すように、シャンクヘッド5には、シャンク2a、連結円盤部8および円盤部7を軸線L方向に貫通するヘッド中心孔21が設けられている。ヘッド中心孔21の後端部分の内周面、すなわち、ヘッド中心孔21における後端開口の近傍には、ネジ部21aが形成されている。ネジ部21aには後方から環状ネジ22が捻じ込まれている。円盤部7の前端面の中央には後方に窪む円形凹部23が形成されている。円形凹部23の底面(後端面)は連結円盤部8に位置している。円形凹部23の底面の中央にはヘッド中心孔21の前端開口が形成されている。
円盤部7に設けられた2つの貫通孔9は、それぞれ円形凹部23に連通している。すなわち、各貫通孔9の内側開口は円形凹部23の環状壁面に形成されている。円盤部7の前端面には円形凹部23を同軸に囲むヘッド側環状溝24が設けられている。ヘッド側環状溝24には第1Oリング25が挿入されている。
スリーブ6の内径寸法は一定である。フランジ16の後端面には、スリーブ6の中心孔を同軸に囲むスリーブ側環状溝26が設けられている。スリーブ側環状溝26とヘッド側環状溝24は、軸線L方向から見た場合に重なる位置に形成されている。スリーブ側環状溝26には第2Oリング27が挿入されている。
図2に示すように、シャンクヘッド5およびスリーブ6の内周側には、ギアスクリュー(シャフト)30がシャンク2aおよびスリーブ6と同軸に配置されている。ギアスクリュー30は軸線L方向に貫通するスクリュー中心孔30aを備えている。また、ギアスクリュー30は、図2(b)に示すように、後方から前方に向かって小径部分31と、ギアスクリュー押さえ用歯車32と、小径部分31よりも大径の大径部分33と、大径部分33よりも小径のボルト部分34を備えている。ボルト部分34は小径部分31よりも大径であり、その外周面には雄ネジ34aが形成されている。ギアスクリュー30は小径部分31と大径部分33のほとんどがシャンクヘッド5内に位置し、ボルト部分34がスリーブ6内に位置している。ボルト部分34にはナット36が螺着されている。
ギアスクリュー30は、大径部分33の外周面に、軸線Lを挟んだ両側で軸線Lと平行に延びる一対の平行面33aと、一対の平行面33aの間を周方向で連続させる一対の円弧面33bを備える。大径部分33には、図2(a)および図4に示すように、ギアスクリュー操作用歯車13が同軸に取り付けられている。
ギアスクリュー操作用歯車13は、軸線L方向から見た場合に大径部分33と嵌合する小判型の平面形状を備える装着孔を備えている。小判型とは、平行な2辺と2辺の間を連結する円弧面を備える形状である。図4に示すように、ギアスクリュー操作用歯車13は、この装着孔に大径部分33が挿入された状態で、ギアスクリュー30に取り付けられている。従って、ギアスクリュー操作用歯車13は、ギアスクリュー30と一体に軸線L回りに回転可能である。また、ギアスクリュー操作用歯車13とギアスクリュー30とは軸線L方向に相対移動可能である。ここで、ギアスクリュー30の大径部分33と、ギアスクリュー操作用歯車13は、外部からの操作によってギアスクリュー30を回転させるためのギアスクリュー操作機構(操作機構)35を構成している。ギアスクリュー操作用歯車13は、外部からの操作によってギアスクリュー30を回転させる操作部材である。
ギアスクリュー操作用歯車13は、図3に示すように、その外周側部分がシャンクヘッド5の円盤部7とスリーブ6のフランジ16の間に位置している。ギアスクリュー操作用歯車13は、その後端面の外周側部分が第1Oリング25を介在させてシャンクヘッド5の円盤部7と当接している。また、ギアスクリュー操作用歯車13は、その前端面の外周側部分が第2Oリング27を介在させてスリーブ6のフランジ16と当接している。
ギアスクリュー30のギアスクリュー押さえ用歯車32は円形凹部23に挿入されている。ここで、円盤部7に設けられた各貫通孔9内には、図3に示すように、内周側から外周側に向かって金属製のボール41とコイルバネ42がこの順番に配置されている。また、各貫通孔9内の外周側部分の内周面にはネジ部が設けられており、付勢ネジ10は外周側からこのネジ部に捻じ込まれている。ボール41は、付勢ネジ10の捻じ込みによって圧縮されたコイルバネ42の付勢力(復元力)によってギアスクリュー押さえ用歯車32に押し付けられている。これによりギアスクリュー30は、軸線L回りに不用意に回転しない状態とされている。
ギアスクリュー30の小径部分31は、シャンク2a内に挿入されている。ヘッド中心孔21に止められた環状ネジ22とギアスクリュー30の小径部分31の後端面との間にはコイルバネ45が配置されている。
コイルバネ45は、ギアスクリュー30を図3に示す軸線L方向の第1位置30Aに支持している。第1位置30Aは、円形凹部23の底面とギアスクリュー押さえ用歯車32の後端面との間に隙間が形成されている位置である。ここで、ギアスクリュー30は第1位置30Aと、第1位置30Aから軸線L方向の後方に離間した第2位置30Bの間を移動可能である。第2位置30Bは、ギアスクリュー押さえ用歯車32の後端面と円形凹部23の底面が当接する位置であり、図3に点線で示す。ギアスクリュー30が第1位置30Aから後方に移動すると、コイルバネ45は圧縮されて、ギアスクリュー30を軸線L方向の前方(第1位置30Aに向かう方向)に付勢する付勢力を発揮する。
ギアスクリュー30の前端、すなわち、ボルト部分34の前端は、スリーブ6の前端開口6aよりも後退した位置にある。ボルト部分34に螺着されたナット36の前端側部分にはブラシ状砥石4が連結されている。
ナット36は、図4に示すように、後方から前方に向かって大径筒部分51と、大径筒部分51よりも小径の小径筒部分52を備える。大径筒部分51の外径寸法は、スリーブ6の内径寸法に対応するものであり、ナット36はスリーブ6内を軸線L方向に移動可能な状態で、スリーブ6内に嵌め込まれている。大径筒部分51の内周面にはボルト部分34と螺合する雌ネジ51aが形成されている。ナット36の小径筒部分52には、軸線Lと直交して半径方向に貫通する2つのナット側ネジ孔53が形成されている。2つのナット側ネジ孔53は軸線L回りで180°の回転対称に形成されている。
(ブラシ状砥石)
ブラシ状砥石4は、図2に示すように、線状砥材3と、この線状砥材3の後端部分を束ねた状態で保持する円環状の砥材ホルダ61を備える。ブラシ状砥石4は砥材ホルダ61がナット36に同軸に連結されることにより工具ホルダ2に保持される。図3に示すように、ブラシ状砥石4は、スリーブ6の内側に砥材ホルダ61が位置し、線状砥材3の前端部分がスリーブ6の前端開口6aから突き出し、ナット36と一体に軸線L方向に移動可能な状態で工具ホルダ2に保持される。
砥材ホルダ61は、ナット36の大径筒部分51と同一の外径寸法を備えている。砥材ホルダ61は、図4に示すように、ギアスクリュー30のボルト部分34が貫通可能な軸孔62aを備える環状のホルダ本体部62と、ホルダ本体部62の外周縁部分から後方に延びる円環状壁からなるナット連結部(連結部)63を備える。ナット連結部63の軸線L方向の高さ寸法はナット36の小径筒部分52の高さ寸法に対応するものであり、ナット連結部63の内径寸法は小径筒部分52の外径寸法に対応するものである。従って、ナット36の小径筒部分52はナット連結部63の内周側に形成された凹部に嵌合する。また、ナット連結部63には、軸線Lと直交して半径方向に貫通する2つのホルダ側貫通孔64が設けられている。2つのホルダ側貫通孔64は軸線L回りで180°の回転対称に形成されている。
線状砥材3は、アルミナ長繊維などといった無機長繊維の集合糸にバインダー樹脂を含浸、硬化させたものである。ここで、ホルダ本体部62の前面には、軸孔62aの周囲に複数の線状砥材保持孔66が離間して形成されている。複数の線状砥材保持孔66は軸孔62aを囲む円形に等角度間隔で配列されている。線状砥材3は複数本ずつ束ねられ、束ねられた後端側が線状砥材保持孔66に挿入され、接着剤によって砥材ホルダ61に固定されている。
ブラシ状砥石4を工具ホルダ2に保持させる際には、まず、ナット36をギアスクリュー30のボルト部分34に螺着して、スリーブ6内に配置する。次に、ブラシ状砥石4を砥材ホルダ61の側からスリーブ6内に挿入して、ナット連結部63の内周側に形成された凹部にナット36の小径筒部分52を嵌合させる。その後、連結ネジ18をスリーブ6の外周側から各案内孔17に貫通させ、さらにホルダ側貫通孔64を貫通させて、ナット側ネジ孔53に捻じ込む。これにより、スリーブ6内で砥材ホルダ61とナット36を連結する。
ここで、案内孔17およびホルダ側貫通孔64を貫通させてナット側ネジ孔53に連結ネジ18を捻じ込んだ状態では、連結ネジ18の頭部18a(連結ネジ18の外周側の端部分)は案内孔17内に位置する。従って、ナット36が軸線L回りに回転しようとした場合には、各連結ネジ18の頭部18aが案内孔17の内周壁に周方向から当接して、その回転を阻止する。すなわち、ナット36と砥材ホルダ61を連結する2つの連結ネジ18と案内孔17は、ナット36の軸線L回りの回転を規制するナット回転規制機構71を構成している。ナット回転規制機構71は、ナット36の軸線L方向への移動は許容している。
(砥材突き出し量の調整動作)
図5は工具ホルダ2からのブラシ状砥石4の砥材突き出し量を調整する調整動作の説明図である。研磨工具ユニット1は、そのシャンク2aがツールホルダ(不図示)などを介してマシニングセンタのヘッドに連結される。ワークに対するバリ取り加工や表面仕上げなどの研磨加工は、ヘッドに連結した研磨工具ユニット1を軸線L回りに回転駆動して行なわれる。ヘッドに連結された研磨工具ユニット1の位置はマシニングセンタを駆動制御する制御プログラムによって制御されている。
ここで、線状砥材3の磨耗量が予め設定した摩耗量に達した場合には、制御プログラムによってマシニングセンタを駆動して、研磨工具ユニット1を、ラックギア80が配置された砥材突き出し量調整位置に移動させる。ラックギア80はギアスクリュー操作用歯車13と噛合可能な歯部80aを備えている。
次に、ラックギア80の歯部80aの延設方向Rと研磨工具ユニット1の軸線Lとを直交させ、ギアスクリュー操作用歯車13の歯部をラックギア80の歯部80aに噛合させる。その後、研磨工具ユニット1を歯部80aの延設方向Rに移動させる。これにより、ギアスクリュー操作用歯車13を所定の回転量だけ回転させる。なお、研磨工具ユニット1を延設方向Rに移動させる替わりに、ラックギア80を延設方向Rに移動させて、ギアスクリュー操作用歯車13を所定の回転量だけ回転させることもできる。また、研磨工具ユニット1およびラックギア80の双方を移動させることにより、研磨工具ユニット1とラックギア80を延設方向Rで相対移動させて、ギアスクリュー操作用歯車13を所定の回転量だけ回転させてもよい。
ギアスクリュー操作用歯車13が回転すると、ギアスクリュー30はギアスクリュー操作用歯車13と一体に回転する。ここで、ナット36はナット回転規制機構71によってその軸線L回りの回転が規制されている。従って、ナット36は、ギアスクリュー30の回転に伴って軸線L方向に移動して、ブラシ状砥石4を軸線L方向に移動させる。よって、ギアスクリュー操作用歯車13の回転量に対応する移動量だけ、線状砥材3をスリーブ6の前端開口6aから突き出すことができる。
なお、研磨工具ユニット1とラックギア80の相対移動方向を反対方向とすることにより、ギアスクリュー操作用歯車13の回転量に対応する移動量だけ線状砥材3をスリーブ6の前端開口6aの内側に戻すことができる。
(作用効果)
本例によれば、研磨工具ユニット1における線状砥材3の砥材突き出し量を、シャンク2aとスリーブ6の間から外部に露出しているギアスクリュー操作用歯車13を回転させることによって行うことができる。従って、砥材突き出し量の調整作業が容易である。また、ブラシ状砥石4が連結されているのはナット36であり、ナット36の軸線L方向の移動量は、ギアスクリュー30の回転角度によって正確に規定される。従って、砥材突き出し量を精度よく調整できる。
また、本例では、ギアスクリュー30が第1位置30Aと第2位置30Bの間を移動可能であり、コイルバネ45によって前方の第1位置30Aに支持されている。従って、加工動作中に加工対象のワークの側からブラシ状砥石4をスリーブ6内に押し込む力が働いたときに、ブラシ状砥石4を軸線L方向に後退させて、ブラシ状砥石4の破損や砥材の磨耗を抑制できる。すなわち、加工動作中にブラシ状砥石4を工具ホルダ2の側に押し込む力が働いた場合には、その力はナット36を介してギアスクリュー30に伝わる。従って、ギアスクリュー30はコイルバネ45の付勢力に抗して軸線L方向を後方に移動して、ワークの側からの力を逃す。
さらに、本例では、砥材ホルダ61は、ナット36に連結された状態でギアスクリュー30を貫通させる軸孔62aを備える。従って、砥材ホルダ61の外径寸法とスリーブ6の内径寸法の間の寸法許容差を厳しくしなくても、スリーブ6内で砥材ホルダ61が傾くことがない。よって、砥材突き出し量にばらつきが発生しない。また、砥材ホルダ61の軸孔62aにギアスクリュー30が挿入されるので、砥材ホルダ61の外径寸法とスリーブ6との内径寸法との間の寸法許容差を厳しくしなくても、砥材ホルダ61の中心軸線とスリーブ6の中心軸線を一致させることが容易となる。従って、研磨工具ユニット1を回転させて加工を行う際に、ブラシ状砥石4に振れが発生することを抑制できる。
また、本例では、砥材ホルダ61がスリーブ6内に配置され、砥材ホルダ61に保持された複数本の線状砥材3は、軸孔62aを貫通して延びるギアスクリュー30を軸線L回りで包囲している。従って、研磨工具ユニット1を回転させて加工を行う際に、線状砥材3が外周側に逃げようとすると、スリーブ6の周壁の内面に当たってその逃げが抑制され、内周側に逃げようとすると、ギアスクリュー30の外周面に当たってその逃げが抑制される。これにより、外周側に位置する線状砥材3と、内周側に位置する線状砥材3との間で逃げやすさに差がなくなる。この結果、外周側に位置する線状砥材3と、内周側に位置する線状砥材3との間で剛性に差が出ないので、内周側に位置する線状砥材3が外周側に位置する線状砥材3と比較して磨耗が少なくなることを回避でき、線状砥材3の磨耗が均一となる。
さらに、本例では、ナット36と砥材ホルダ61を連結する連結ネジ18を利用してナット36の回転を規制できる。従って、部品点数を抑制できる。また、本例では、連結ネジ18の端部分は軸線L方向に延びた案内孔17内に位置しているので、ネジの軸線L方向への移動が許容された状態となり、ネジとスリーブ6との干渉によってナット36の軸線L方向の移動が妨げられることがない。
また、本例では、シャンクヘッド5のヘッド中心孔21およびギアスクリュー30のスクリュー中心孔30aが同軸に配置されて連通している。従って、これらを介して切削油やエアーを供給して、加工部分の冷却、潤滑、洗浄などを行うことができる。
(実施例2)
図6は本発明を適用した実施例2の研磨工具ユニット100の斜視図である。本例の研磨工具ユニット100は、図6に示すように、工作機械への取付け部となるシャンク102aを備える工具ホルダ102と、工具ホルダ102のシャンク102aとは反対の前端側から突出する線状砥材103を備えるブラシ状砥石(研磨工具)104を有する。
(工具ホルダ)
工具ホルダ102は、軸線L方向に沿ってシャンク102aの側からシャンクヘッド105とスリーブ106を同軸に備える。シャンクヘッド105はシャンク102aと、円盤部107と、円盤部107とシャンク102aの間を連結する円形の第1連結円盤部108および第2連結円盤部109を備える。第1連結円盤部108は第2連結円盤部109とシャンク102aの間に設けられている。第1連結円盤部108の外径寸法はシャンク102aの外径寸法よりも長く、第2連結円盤部109の外径寸法よりも短い。また、第1連結円盤部108の軸線L方向の長さ寸法は、第2連結円盤部109の長さ寸法よりも短い。第2連結円盤部109の外径寸法は円盤部107の外径寸法よりも短い。
円盤部107には、外周側から切り欠かれた2つの切り欠き部110が設けられている。2つの切り欠き部110は、軸線L回りで180°の回転対称に設けられている。各切り欠き部110からは、シャンクヘッド105の内部に収納された第2歯車113の一部分が外側に露出している。
スリーブ106は、軸線L方向に延びる筒部115と、筒部115の後端から外周側に広がる環状のフランジ116を備える。フランジ116は筒部115と同軸に形成されている。フランジ116の後端面にはシャンクヘッド105の円盤部107の前端面が当接している。フランジ116の外径寸法と円盤部107の外径寸法は同一である。筒部115の外周面は、フランジ116の前側に連続して前方に向かって外径寸法が小さくなる後側テーパー外周面部分115aと、後側テーパー外周面部分115aの前端に連続して一定の外径寸法で前方に延びる一定径外周面部分115bと、一定径外周面部分115bの前端に連続して前方に向かって外径寸法が小さくなる前側テーパー外周面部分115cを備える。筒部115には、一定径外周面部分115bに、溝状の案内孔117が2つ形成されている。2つの案内孔117は、それぞれ軸線L方向に延びており、軸線L回りで180°の回転対称に形成されている。案内孔117内には、連結ネジ118が位置している。
図7(a)は図6の研磨工具ユニット100の分解斜視図であり、図7(b)はシャンクヘッド105を軸線L方向の後方から見た場合の斜視図である。図8は図6の研磨工具ユニット100の第1の縦断面図であり、案内孔117を通過しない位置で切断したものである。図9は図6の研磨工具ユニット100の第2の縦断面図であり、案内孔117を通過する位置で切断したものである。図8に示すように、シャンクヘッド105には、シャンク102a、第1連結円盤部108、第2連結円盤部109および円盤部107を軸線L方向に貫通するヘッド中心孔121が設けられている。円盤部107の前端面には、図7(b)に示すように、中央部分に円盤部107と同軸で後方に窪む第1円形凹部122が形成されている。第1円形凹部122の中心部分には、図8に示すように、大径凹部123と、大径凹部123よりも内径寸法が小さい小径凹部124が円盤部107と同軸に形成されている。大径凹部123の底面は第1連結円盤部108と第2連結円盤部109の間に位置しており、小径凹部124の底面は第1連結円盤部108に位置している。小径凹部124の底面の中央にはヘッド中心孔121の前端開口が形成されている。
また、円盤部107の前端面には、図7(b)に示すように、第1円形凹部122を間に挟んだ両側に一対の第2円形凹部125が形成されている。一対の第2円形凹部125は軸線L回りで180°の回転対称に設けられている。一対の第2円形凹部125は、それぞれの中心部分に前方に突出する支軸126を備える。また、円盤部107は、前端部分の外周側から切り欠かれて一対の第2円形凹部125に連通する切り欠き部110を備える。2つの切り欠き部110は、軸線L回りで180°の回転対称に設けられている。一対の第2円形凹部125の間には、第1円形凹部122を間に挟んだ両側に一対の溝部127が設けられている。一対の第2円形凹部125と一対の溝部127は軸線L回りに90°離間する位置に設けられている。一対の溝部127の内周端は第1円形凹部122に連通している。
図7および図9に示すように、第1円形凹部122には、第1歯車112が収納されている。一対の第2円形凹部125には第1歯車112よりも小径の第2歯車113がそれぞれ収納されている。各第2歯車113は各支軸126に回転可能に支持されている。各第2歯車113は第1歯車112と噛合している。円盤部107の2つの切り欠き部110からは、それぞれ第2歯車113の一部分が外部に部分的に露出している。
第1円形凹部122を間に挟んだ両側に設けられた一対の溝部127には、図8に示すように、内周側から外周側に向かって金属製のボール128とコイルバネ129がこの順番に配置されている。ボール128はコイルバネ129の付勢力によって第1歯車112に押し付けられている。
スリーブ106は、図8に示すように、フランジ116の後端面に、その中心孔106bと同軸で前方に窪むスリーブ側円形凹部131を備える。スリーブ側円形凹部131の内径寸法は中心孔106bの内径寸法よりも長い。従って、図7に示すように、スリーブ側円形凹部131の底面は後方を向く環状面131aとなっている。図8に示すように、スリーブ側円形凹部131には軸孔132aを備える環状プレート132が挿入されている。環状プレート132は、図9に示すように、2本の有頭ネジ133によってシャンクヘッド105に固定されている。2本の有頭ネジ133は、環状プレート132を前方から後方に貫通して、第2円形凹部125の支軸126に同軸に設けられたネジ孔に捩じ込まれている。第1歯車112および一対の第2歯車113はシャンクヘッド105と環状プレート132の間に位置している。
ここで、スリーブ106は、図8に示すように、後側テーパー外周面部分115aと、後側テーパー外周面部分115aが形成されている部位に内径寸法が一定の一定径内周面部分106cを備える。また、スリーブ106は、前側テーパー外周面部分115cが形成されている部位に、一定径内周面部分106cよりも内径寸法が短い小径内周面部分106dを備える。
図8および図9に示すように、シャンクヘッド105およびスリーブ106の内周側には、ギアスクリュー(シャフト)135がシャンクヘッド105およびスリーブ106と同軸に配置されている。ギアスクリュー135は、後方から前方に向かって大径部分136と、大径部分136よりも小径のボルト部分137を備えている。ボルト部分137は外周面に雄ネジ137aを備える。ギアスクリュー135は大径部分136のほとんどがシャンクヘッド105内に位置し、ボルト部分137がスリーブ106内に位置している。ギアスクリュー135は軸線L方向に貫通するスクリュー中心孔138を備えている。ボルト部分137にはナット142が螺着されている。
図7に示すように、ギアスクリュー135は、大径部分136の外周面に、軸線Lを挟んだ両側で軸線Lと平行に延びる一対の平行面136aと、一対の平行面136aの間を周方向で連続させる一対の円弧面136bを備える。大径部分136には、第1歯車112が同軸に取り付けられている。
第1歯車112は、軸線L方向から見た場合に大径部分136と嵌合する小判型の平面形状を備える装着孔を備えており、この装着孔に大径部分136が挿入された状態でギアスクリュー135に取り付けられている。従って、第1歯車112はギアスクリュー135と一体に回転可能である。また、第1歯車112とギアスクリュー135は軸線L方向に相対移動可能である。ここで、図9に示すように、大径部分136に取り付けられた第1歯車112、および、第1歯車112に噛合する各第2歯車113は、外部からの操作によってギアスクリュー135を回転させるギアスクリュー操作機構(操作機構)141を構成している。各第2歯車113は、ギアスクリュー135を回転させるための操作部材である。また、図8に示すように、シャンクヘッド105の前端面の溝部127に収納されたボール128はコイルバネ129の付勢力によって第1歯車112に押し付けられている。これにより、ギアスクリュー135は軸線L回りに不用意に回転しない状態とされている。
また、ギアスクリュー135は、大径部分136の後端面に前方に窪む凹部139を備える。凹部139内にはコイルバネ140が配置されている。コイルバネ140の前端部分は凹部139の底面(前端面)に当接し、後端部分は、シャンクヘッド105の小径凹部124の底面(後端面)に当接する。
コイルバネ140は、ギアスクリュー135を図8に示す軸線L方向の第1位置135Aに支持している。第1位置135Aは、シャンクヘッド105の大径凹部123の底面とギアスクリュー135の後端面(大径部分136)との間に隙間が形成されている位置である。ここで、ギアスクリュー135は第1位置135Aと、第1位置135Aから軸線L方向の後方に離間した第2位置135Bの間を移動可能である。第2位置135Bは、大径部分136の後端面と大径凹部123の底面が当接する位置である。ギアスクリュー135が第1位置135Aから後方に移動すると、コイルバネ140は圧縮されて、ギアスクリュー135を軸線L方向の前方(第1位置135Aに向かう方向)に付勢する付勢力を発揮する。
ギアスクリュー135の前端、すなわち、ボルト部分137の前端は、スリーブ106の前端開口106aよりも後退した位置にある。ボルト部分137に螺着されたナット142の前端側部分にはブラシ状砥石104が連結されている。
ナット142は、図9に示すように、軸線L方向の後方から前方に向かって環状のナット本体部143とホルダ連結部(連結部)144を備える。ホルダ連結部144はナット本体部143の前端の外周縁部分から前方に突出する環状壁により構成されている。ナット本体部143およびホルダ連結部144の外径寸法は、スリーブ106の一定径内周面部分106cの内径寸法に対応するものであり、ナット142はスリーブ106内を軸線L方向に移動可能な状態で、スリーブ106内に嵌め込まれている。ナット本体部143の内周面にはボルト部分137と螺合する雌ネジ143aが形成されている。ホルダ連結部144には、軸線Lと直交して半径方向に貫通する2つのナット側貫通孔145が形成されている。2つのナット側貫通孔145は軸線L回りで180°の回転対称に形成されている。
(ブラシ状砥石)
ブラシ状砥石104は、線状砥材103と、この線状砥材103の後端部分を束ねた状態で保持する円環状の砥材ホルダ150を備える。ブラシ状砥石104は砥材ホルダ150がナット142に同軸に連結されることにより工具ホルダ102に保持される。図8に示すように、ブラシ状砥石104は、スリーブ106の内側に砥材ホルダ150が位置し、線状砥材103の前端部分がスリーブ106の前端開口106aから突き出し、ナット142と一体に軸線L方向に移動可能な状態で工具ホルダ102に保持される。
図9に示すように、砥材ホルダ150は、円環状であり、軸孔150aを備える。また、砥材ホルダ150は、ナット142のホルダ連結部144に嵌合可能な外径寸法を備える。砥材ホルダ150の外径寸法は、スリーブ106の小径内周面部分106dの内径寸法よりも短い。砥材ホルダ150には、軸線Lと直交して半径方向に貫通する2つのホルダ側ネジ孔151が設けられている。2つのホルダ側ネジ孔151は軸線L回りで180°の回転対称に形成されている。
線状砥材103は、アルミナ長繊維などといった無機長繊維の集合糸にバインダー樹脂を含浸、硬化させたものである。ここで、砥材ホルダ150の前面には、軸孔150aの周囲に円環状の線状砥材保持孔152が形成されている。線状砥材103は円環状に配列されて束ねられ、それらの後端側が線状砥材保持孔152に挿入されて、接着剤によって砥材ホルダ150に固定されている。
ブラシ状砥石104を工具ホルダ102に保持させる際には、まず、ナット142をギアスクリュー135のボルト部分137に螺着して、スリーブ106内に配置する。次に、ブラシ状砥石104を砥材ホルダ150の側からスリーブ106内に挿入して、ホルダ連結部144に砥材ホルダ150を挿入する。その後、スリーブ106の各案内孔117およびナット側貫通孔145を介してホルダ側ネジ孔151に連結ネジ118を捻じ込み、スリーブ106内において砥材ホルダ150とナット142を連結する。
ここで、各案内孔117およびナット側貫通孔145を介してホルダ側ネジ孔151に連結ネジ118を捻じ込んだ状態では、各連結ネジ118の頭部118a(連結ネジ118の外周側の端部分)は案内孔117内に位置する。従って、ナット142が軸線L回りに回転しようとした場合には、各連結ネジ118の頭部118aが案内孔117の内周壁に周方向から当接して、その回転を阻止する。すなわち、ナット142と砥材ホルダ150を連結する2つの連結ネジ118と案内孔117は、ナット142の軸線L回りの回転を規制するナット回転規制機構155を構成している。ナット回転規制機構155は、ナット142の軸線L方向への移動は許容している。
(砥材突き出し量の調整動作)
研磨工具ユニット100は、そのシャンク102aがツールホルダ(不図示)などを介してマシニングセンタのヘッドに連結される。線状砥材103の磨耗量が予め設定した摩耗量に達した場合には、制御プログラムによってマシニングセンタを駆動して、研磨工具ユニット100を、ラックギア80が配置された砥材突き出し量調整位置に移動させる。そして、図5に示す場合と同様に、第2歯車113の歯部をラックギア80の歯部80aと噛合させ、歯部80aの延設方向Rで研磨工具ユニット100とラックギア80を相対移動させる。これにより、第2歯車113を所定の回転量だけ回転させる。
第2歯車113が回転すると、第1歯車112が回転してギアスクリュー135が回転する。ここで、ナット142はナット回転規制機構155によってその軸線L回りの回転が規制されている。従って、ナット142は、ギアスクリュー135の回転に伴って軸線L方向に移動して、ブラシ状砥石104を軸線L方向に移動させる。よって、第1歯車112の回転量に対応する移動量だけ、線状砥材103をスリーブ106の前端開口106aから突き出すことができる。なお、研磨工具ユニット100とラックギア80の相対移動方向を反対方向とすることにより、第1歯車112の回転量に対応する移動量だけ、線状砥材103をスリーブ106の前端開口106aの内側に戻すことができる。
本例においても、実施例1の研磨工具ユニット1と同様の効果を得ることができる。
また、本例では、ギアスクリュー135と同軸に配置された第1歯車112は、第2歯車113と噛み合っているので、第1歯車112がギアスクリュー135と一体に回転しようとするイナーシャを抑制できる。ここで、第1歯車112に働くイナーシャを小さくすれば、研磨工具ユニット100の回転開始時および停止時に、第1歯車112に働くイナーシャによって第1歯車112およびギアスクリュー135が回転してしまい、これによりナット142が移動して砥材突き出し量が変化することを防止できる。
さらに、本例では、ブラシ状砥石104の砥材ホルダ150にホルダ側ネジ孔151を形成しておくだけでナット142と連結できる。これにより、ブラシ状砥石104を簡易なものとすることができるので、消耗品となるブラシ状砥石104の製造コストを抑制できる。
(実施例2の変形例)
上記の例では、ギアスクリュー135の不用意な回転を抑制するために、第1歯車112の回転を抑制する機構を搭載している。すなわち、円盤部107の第1円形凹部122を間に挟んだ両側に一対の溝部127を設け、各溝部127にボール128およびコイルバネ129を配置し、コイルバネ129の付勢力によってボール128を第1歯車112に押し付けて第1歯車112の回転を抑制している。このような機構の替わりに、第1歯車112に噛合する第2歯車113の回転を抑制する機構を搭載することにより、ギアスクリュー135が不用意に回転することを抑制することもできる。図10は第2歯車113の回転を抑制する機構を搭載した実施例2の変形例の研磨工具ユニットの説明図である。図10では、第1歯車112および第2歯車113が位置する部分を軸線Lと直交する方向で切断した場合の横断を示す。なお、本例の研磨工具ユニット100Aは、第2歯車113の回転を抑制する機構を除き、実施例2の研磨工具ユニット100と同一の構成を備える。
図10に示すように、本例の研磨工具ユニット100Aでは、第2歯車113が配置される第2円形凹部125を間に挟んだ両側に一対の溝部127Aが設けられている。各溝部127Aにはボール128およびコイルバネ129が配置されている。コイルバネ129は溝部127A内で圧縮されており、ボール128はコイルバネ129の付勢力によって第2歯車113に押し付けられている。これにより、第2歯車113の回転が抑制されるので、第1歯車112の回転が抑制され、ギアスクリュー135が軸線L回りに不用意に回転することが防止される。
なお、実施例2の研磨工具ユニット100および実施例2の変形例の研磨工具ユニット100Aでは、第2歯車113として2つの歯車を備えているが、第2歯車113は一つでもよい。
(実施例3)
図11は本発明を適用した実施例3の研磨工具ユニット200の斜視図である。本例の研磨工具ユニット200は、図11に示すように、工作機械への取付け部となるシャンク202aを備える工具ホルダ202と、工具ホルダ202のシャンク202aとは反対の前端側から突出する線状砥材203を備えるブラシ状砥石(研磨工具)204を有する。
(工具ホルダ)
工具ホルダ202は、軸線L方向に沿ってシャンク202aの側からシャンクヘッド205とスリーブ206を同軸に備える。シャンクヘッド205はシャンク202aと、円盤部207と、円盤部207とシャンク202aの間を連結する第1連結円盤部208および第2連結円盤部209を備える。第1連結円盤部208は第2連結円盤部209とシャンク202aの間に設けられている。第1連結円盤部208の外径寸法はシャンク202aの外径寸法よりも長く、第2連結円盤部209の外径寸法よりも短い。また、第1連結円盤部208の軸線L方向の長さ寸法は、第2連結円盤部209の長さ寸法よりも長い。第2連結円盤部209の外径寸法は円盤部207の外径寸法よりも短い。
円盤部207には、半径方向に延びるネジ孔210が2つ設けられている。2つのネジ孔210は軸線L回りで180°の回転対称に形成されている。各ネジ孔210には、ネジ部を備えるカムピン211が捻じ込まれている。
スリーブ206は、軸線L方向に延びる筒部215と、筒部215の後端から外周側に広がる環状のフランジ216を備える。フランジ216は筒部215と同軸に形成されている。フランジ216の後端面にはシャンクヘッド205の円盤部207の前端面が当接している。フランジ216の外径寸法は円盤部207の外径寸法よりも僅かに短い。フランジ216には半径方向に延びるスリーブ側ネジ孔217が4つ設けられている。4つのスリーブ側ネジ孔217は軸線L回りで90°の回転対称に形成されている。各スリーブ側ネジ孔217には、シャンクヘッド固定ネジ218が捻じ込まれている。
筒部215の外周面は、フランジ216の前端に連続して前方に向かって外径寸法が小さくなる後側テーパー外周面部分215aと、後側テーパー外周面部分215aの前端に連続して一定の外径寸法で前方に延びる一定径外周面部分215bと、一定径外周面部分215bの前端に連続して前方に向かって外径寸法が小さくなる前側テーパー外周面部分215cを備える。筒部215には、後側テーパー外周面部分215aから一定径外周面部分215bにかけて溝状の案内孔219が2つ形成されている。2つの案内孔219は、それぞれ軸線L方向に延びており、軸線L回りで180°の回転対称に形成されている。案内孔219内には、連結ネジ220が位置している。
図12は図11の研磨工具ユニット200の分解斜視図である。図13は図11の研磨工具ユニット200の第1の縦断面図であり、案内孔219を通過しない位置で切断したものである。図14は図11の研磨工具ユニット200の第2の縦断面図であり、案内孔219を通過する位置で切断したものである。図13に示すように、シャンクヘッド205には、シャンク202a、第1連結円盤部208、第2連結円盤部209および円盤部207を軸線L方向に貫通するヘッド中心孔221が設けられている。ヘッド中心孔221の後端部分の内周面、すなわち、ヘッド中心孔221における後端開口の近傍には、ネジ部221aが形成されている。ネジ部221aには後方から環状ネジ222が捻じ込まれている。円盤部207の前端面には、中心部分に円盤部207と同軸で後方に窪む円形凹部223が形成されている。円形凹部223の底面の中央にはヘッド中心孔221の前端開口が形成されている。円形凹部223の底面は第1連結円盤部208に位置している。
また、円盤部207の前端面からは円環状壁224が前方に突出している。円環状壁224は円形凹部223の開口縁において当該円形凹部223を囲んだ状態で円盤部207と同軸に形成されている。円環状壁224の内径寸法は円形凹部223の内径寸法と同一であり、円形凹部223の環状内周面と円環状壁224の環状内周面は連続している。円環状壁224の外径寸法は円盤部207の外径寸法より短い。
円環状壁224の環状前端面には、環状溝225が設けられている。環状溝225にはOリング226が挿入されている。また、円環状壁224には、半径方向に延びるヘッド側ネジ孔227が4つ設けられている。4つのヘッド側ネジ孔227は軸線L回りで90°の回転対称に形成されている。
スリーブ206は、フランジ216の後端面に、スリーブ206の中心孔206bと同軸で、前方に窪むスリーブ側円形凹部231を備える。スリーブ側円形凹部231の内径寸法は中心孔206bの内径寸法よりも長い。従って、スリーブ側円形凹部231の底面は後方を向く環状面231aとなっている。スリーブ側円形凹部231には後方から軸孔232aを備える環状プレート232が挿入されている。
スリーブ側円形凹部231には、シャンクヘッド205の円環状壁224が挿入されている。ここで、スリーブ側円形凹部231の内径寸法は円環状壁224の外径寸法と対応するものであり、円環状壁224はスリーブ側円形凹部231に嵌合する。また、円環状壁224の4つのヘッド側ネジ孔227にはスリーブ206の各スリーブ側ネジ孔217を介してシャンクヘッド固定ネジ218が捻じ込まれている。これにより、シャンクヘッド205とスリーブ206は連結されている。
シャンクヘッド205とスリーブ206が連結された状態では、環状プレート232の後面は、Oリング226を介してシャンクヘッド205の円環状壁224の円環状前端面と当接する。これにより、シャンクヘッド205の円環状壁224および円形凹部223並びに環状プレート232によってカム室234が区画される。図14に示すように、カム室234には、シャンクヘッド205の円盤部207のネジ孔210に捩じ込まれたカムピン211の先端部が突出している。
スリーブ206は、図14に示すように、後側テーパー外周面部分215aと一定径外周面部分215bが形成されている部位に内径寸法が一定の一定径内周面部分206cを備える。また、スリーブ206は、前側テーパー外周面部分215cが形成されている部位に、一定径内周面部分206cよりも内径寸法が短い小径内周面部分206dを備える。
シャンクヘッド205およびスリーブ206の内周側には、図12に示すように、カムスクリュー(シャフト)235がシャンクヘッド205およびスリーブ206と同軸に配置されている。カムスクリュー235は、図13に示すように、軸線L方向に貫通するスクリュー中心孔235aを備えている。また、カムスクリュー235は、後方から前方に向かってカム部分238と、カム部分238よりも小径のボルト部分239を備える。
カム部分238は、その外周面に、シャンクヘッド205の円盤部207のネジ孔210に捩じ込まれたカムピン211の先端部が摺動するカム241を備える。ボルト部分239は外周面に雄ネジ239aを備える。カムスクリュー235は、図14に示すように、カム部分238が、カム室234に配置され、ボルト部分239がスリーブ206内に位置している。ボルト部分239にはナット242が螺着されている。
カムスクリュー235は、図14に示すように、カム部分238の後端面に前方に窪む凹部237を備える。凹部237内にはコイルバネ240が配置されている。コイルバネ240の前端部分は凹部237の底面(後端面)に当接し、後端部分は、シャンク202aの中心孔に捩じ込まれた環状ネジ222の前端面に当接している。
コイルバネ240は、カムスクリュー235を図13に示す軸線L方向の第1位置235Aに付勢している。第1位置235Aは、カム部分238が環状プレート232に当接する位置であり、シャンクヘッド205の円形凹部223の底面(後端面)とカムスクリュー235の後端面(カム部分238の後端面)との間に隙間が形成されている位置である。ここで、カムスクリュー235は、第1位置235Aと、第1位置235Aから軸線L方向の後方に離間した第2位置235Bの間を移動可能である。第2位置235Bは、カム部分238の後端面と円形凹部223の底面が当接する位置である。カムスクリュー235が第1位置235Aから後方に移動すると、コイルバネ240は圧縮されて、カムスクリュー235を軸線L方向の前方(第1位置235Aに向かう方向)に付勢する付勢力を発揮する。
次に、図15を参照して、カム部分238の外周面に形成されたカム241を詳細に説明する。図15はカムスクリュー235のカム部分238の周辺の部分拡大図である。カム部分238の外周面には、当該カム部分238の後側部分から外周側に突出する複数の後側突部245と、当該カム部分238の前側部分から外周側に突出する複数の前側突部246を備える。後側突部245と前側突部246は軸線L方向に離間して設けられている。軸線L方向における後側突部245と前側突部246の間の距離はカムピン211の先端部を挿入可能な距離である。複数の後側突部245は周方向に等角度間隔に設けられている。隣り合う後側突部245と後側突部245の間の距離は、カムピン211の先端部を挿入可能な距離である。複数の前側突部246も周方向に等角度間隔に設けられている。隣り合う前側突部246と前側突部246の間の距離は、カムピン211の先端部を挿入可能な距離である。
各後側突部245において周方向および前方を向く側面はカムピン211が摺接する後側カム面247となっている。後側カム面247は、軸線L方向に延びる後側第1カム面部分247aと、後側第1カム面部分247aの先端から前方に向かって周方向の一方側に傾斜する後側傾斜カム面部分247bと、後側傾斜カム面部分247bの後側第1カム面部分247aとは反対側の端から軸線L方向を後方に延びる後側第2カム面部分247cを備える。後側傾斜カム面部分247bは外周側に向かって後方に傾斜している。周方向で隣り合う後側突部245と後側突部245の間には、前方に向かって開口する後側円弧面247dが形成されている。
一方、各前側突部246においても、外周面から外周側に突出している側面はカムピン211が摺接する前側カム面248となっている。前側カム面248は、軸線L方向に延びる前側第1カム面部分248aと、前側第1カム面部分248aの先端から前方に向かって周方向の一方側に傾斜する前側傾斜カム面部分248bと、前側傾斜カム面部分248bの前側第1カム面部分248aとは反対側の端から軸線L方向を前方に延びる前側第2カム面部分248cを備える。前側傾斜カム面部分248bは外周側に向かって前方に傾斜している。周方向で隣り合う前側突部246と前側突部246の間には、前方に向かって開口する前側円弧面248dが形成されている。
ここで、後側突部245と前側突部246の形成位置は、周方向でずれている。これにより、後側カム面247の後側傾斜カム面部分247bは、2つの前側突部246の間の前側円弧面248dと対向している。また、前側カム面248の前側傾斜カム面部分248bは、2つの後側突部245の間の後側円弧面247dと対向している。
カム部分238がカム室234内に配置された状態では、カム部分238およびカムピン211によって、カムスクリュー235の軸線L方向への往復直線運動を、カムスクリュー235の軸線L回りの一方向への所定の角度の回転運動に変換する運動変換機構250が構成される。なお、カムスクリュー235はコイルバネ240によって通常は第1位置235Aに付勢されている。従って、通常、カムピン211は、後側突部245の間の後側円弧面247dに当接している。
図14に示すように、カムスクリュー235の前端、すなわち、ボルト部分239の前端は、スリーブ206の前端開口206aよりも後退した位置にある。ボルト部分239に螺着されたナット242の前端側部分にはブラシ状砥石204が連結されている。
ナット242は、軸線L方向の後方から前方に向かって環状のナット本体部251とホルダ連結部(連結部)252を備える。ホルダ連結部252はナット本体部251の前端の外周縁部分から前方に突出する環状壁により構成されている。ナット本体部251およびホルダ連結部252の外径寸法は、スリーブ206の一定径内周面部分206cの内径寸法に対応するものであり、ナット242はスリーブ206内を軸線L方向に移動可能な状態で、スリーブ206内に嵌め込まれている。ナット本体部251の内周面にはボルト部分239と螺合する雌ネジ251aが形成されている。ホルダ連結部252には、軸線Lと直交して半径方向に貫通する2つのナット側貫通孔253が形成されている。2つのナット側貫通孔253は軸線L回りで180°の回転対称に形成されている。
(ブラシ状砥石)
ブラシ状砥石204は、線状砥材203と、この線状砥材203の後端部分を束ねた状態で保持する円環状の砥材ホルダ255を備える。ブラシ状砥石204は砥材ホルダ255がナット242に同軸に連結されることにより工具ホルダ202に保持される。図13に示すように、ブラシ状砥石204は、スリーブ206の内側に砥材ホルダ255が位置し、線状砥材203の前端部分がスリーブ206の前端開口206aから突き出し、ナット242と一体に軸線L方向に移動可能な状態で工具ホルダ202に保持される。
図14に示すように、砥材ホルダ255は、円環状であり、軸孔255aを備える。また、砥材ホルダ255は、ナット242のホルダ連結部252に嵌合可能な外径寸法を備える。砥材ホルダ255の外径寸法は、スリーブ206の小径内周面部分206dの内径寸法よりも短い。砥材ホルダ255には、軸線Lと直交して半径方向に貫通する2つのホルダ側ネジ孔256が設けられている。2つのホルダ側ネジ孔256は軸線L回りで180°の回転対称に形成されている。
線状砥材203は、アルミナ長繊維などといった無機長繊維の集合糸にバインダー樹脂を含浸、硬化させたものである。ここで、砥材ホルダ255の前面には、軸孔255aの周囲に複数の線状砥材保持孔257が離間して形成されている。複数の線状砥材保持孔257は軸孔255aを囲む円形に配列されている。線状砥材203は複数本ずつ束ねられ、束ねられた後端側が保持孔に挿入され、接着剤によって砥材ホルダ255に固定されている。
ブラシ状砥石204を工具ホルダ202に保持させる際には、まず、ナット242をカムスクリュー235のボルト部分239に螺着して、スリーブ206内に配置する。次に、ブラシ状砥石204を砥材ホルダ255の側からスリーブ206内に挿入して、ホルダ連結部252の環状壁内に砥材ホルダ255を嵌合させる。その後、スリーブ206の各案内孔219およびナット側貫通孔253を介しておよびホルダ側ネジ孔256に連結ネジ220を捻じ込み、スリーブ206内において砥材ホルダ255とナット242を連結する。
ここで、案内孔219およびナット側貫通孔253を介してホルダ側ネジ孔256に連結ネジ220を捻じ込んだ状態では、各連結ネジ220の頭部220a(連結ネジ220の外周側の端部分)は案内孔219内に位置する。従って、ナット242が軸線L回りに回転しようとした場合には、各各連結ネジ220の頭部220aが案内孔219の内周壁に周方向から当接して、その回転を阻止する。すなわち、ナット242と砥材ホルダ255を連結する2つの連結ネジ220と案内孔219は、ナット242の軸線L回りの回転を規制するナット回転規制機構259を構成している。ナット回転規制機構259は、ナット242の軸線L方向への移動は許容している。
(砥材突き出し量の調整動作)
図16(a)は図11の研磨工具ユニット200の砥材突き出し量を調整する突き出し量調整部材の斜視図であり、図16(b)は突き出し量調整部材のボスが研磨工具ユニット200のスリーブ206内に挿入された状態を示し、図16(c)は、図16(b)に示す状態から更に研磨工具ユニット200が突き出し量調整部材に接近する方向に移動した状態を示す。図17は図11の研磨工具ユニット200の砥材突き出し量の調整動作の説明図である。図17では、カムスクリュー235、カムピン211、ナット242、ブラシ状砥石204、連結ネジ220を取り出して示している。
研磨工具ユニット200は、そのシャンク202aがツールホルダ(不図示)などを介してマシニングセンタのヘッドに連結される。線状砥材203の磨耗量が予め設定した摩耗量に達した場合には、制御プログラムによってマシニングセンタを駆動して、研磨工具ユニット200を突き出し量調整部材81が配置された砥材突き出し量調整位置に移動させる。
ここで、図16(a)に示すように、突き出し量調整部材81は円盤部81aと、円盤部81aの中央から突出する円柱形状のボス81bを備える。ボス81bの直径はカムスクリュー235の直径と略同一であり、ボス81bはスリーブ206内に挿入可能である。ボス81bの先端面は、ボス81bの軸線と直交する平坦面となっている。
砥材突き出し量調整位置に配置された研磨工具ユニット200は、マシニングセンタによって、突き出し量調整部材81のボス81bと同軸に配置される。次に、研磨工具ユニット200は、マシニングセンタによって、突き出し量調整部材81に接近する前方に移動させられる。これにより、図16(b)に示すように、ボス81bは軸線L方向の前方からスリーブ206内に挿入され、カムスクリュー235の前端にボス81bの先端面が当接した状態とされる。カムスクリュー235の前端にボス81bの先端面が当接した時点では、カムスクリュー235はコイルバネ240の付勢力によって第1位置235Aに付勢されている。従って、図17(a)に示すように、カムピン211は、後側円弧面247dに位置している。
その後、研磨工具ユニット200は、マシニングセンタによって、更に、前方に所定の距離だけ押し込まれる。所定の距離とは、第1位置235Aと第2位置235Bとの離間距離であり、カム部分238における後側円弧面247dと前側円弧面248dの離間距離である。ここで、線状砥材203の前端をボス81bに当接させた状態で研磨工具ユニット200を所定の距離だけ前方に押し込むと、カムスクリュー235は、シャンクヘッド205およびスリーブ206に対して相対移動する。すなわち、カムスクリュー235は、図17(b)に示すように、コイルバネ240の付勢力に抗して軸線L方向を第1位置235Aから第2位置235Bに向かって移動する。これにより、カムピン211は、カムスクリュー235のカム部分238に対して前方に相対移動する。そして、カムピン211は、後側円弧面247dから前側突部246の側に移動して、前側突部246の前側傾斜カム面部分248bに摺接する。
しかる後に、図16(c)に示すように、カムスクリュー235が第2位置235Bに配置されると、カムピン211は、図17(c)に示すように、前側傾斜カム面部分248bから前側第1カム面部分248aを経由して前側円弧面248dに至る。ここで、カムピン211はヘッド側ネジ孔227によってシャンクヘッド205に固定されており、カムスクリュー235は軸線L回りに回転可能となっている。従って、カムピン211が前側傾斜カム面部分248bと摺接する際に、カムスクリュー235は一方側に所定の角度だけ回転する。
次に、研磨工具ユニット200は、マシニングセンタによって、突き出し量調整部材81から離間する方向に移動させられる。すなわち、研磨工具ユニット200は、図16(c)に示す状態から、図16(b)に示す状態に移行する。これにより、カムスクリュー235とボス81bの当接が解除される。
ここで、研磨工具ユニット200が突き出し量調整部材81から離間させられるのに伴って、カムスクリュー235はコイルバネ240の付勢力によって軸線L方向を第2位置235Bから第1位置235Aに向かって移動する。従って、図17(d)に示すように、カムピン211は、カムスクリュー235のカム部分238に対して後方に相対移動する。
これにより、カムピン211は、前側円弧面248dから後側突部245の側に移動して、後側突部245の後側傾斜カム面部分247bに摺接する。その後、図17(e)に示すように、カムピン211は後側傾斜カム面部分247bから後側第1カム面部分247aを経由して後側円弧面247dに至る。ここで、カムピン211はヘッド側ネジ孔227によってシャンクヘッド205に固定されており、カムスクリュー235は軸線L回りに回転可能となっている。従って、カムピン211が後側傾斜カム面部分247bと摺接する際に、カムスクリュー235は一方側に所定の角度だけ回転する。
これらの動作により、カムスクリュー235は、後側突部245の離間距離だけ一方向に回転する。ここで、ナット242はナット回転規制機構259によってその軸線L回りの回転が規制されている。従って、ナット242は、カムスクリュー235の回転に伴って軸線L方向に移動して、ブラシ状砥石204を軸線L方向の前方に移動させる。よって、カムスクリュー235の回転量に対応するナット242の移動量(砥材突き出し量P)だけ、線状砥材203をスリーブ206の前端開口206aから突き出すことができる。
本例によれば、研磨工具ユニット200を突き出し量調整部材81に突き当てて押し込むという押し込み動作によって、砥材突き出し量を調整できるので、その調整動作が容易である。
また、本例においても、実施例1の研磨工具ユニット1と同様の効果を得ることができる。すなわち、本例においても、カムスクリュー235は軸線L方向で離間する第1位置235Aと第2位置235Bとの間を移動可能であり、コイルバネ240の付勢力によって前方の第1位置235Aに付勢されている。従って、加工動作中に加工対象のワークの側からブラシ状砥石204をスリーブ206内に押し込む力が働いたときに、ブラシ状砥石204を軸線L方向に後退させて、ブラシ状砥石204の破損や砥材の磨耗を抑制できる。すなわち、加工動作中にブラシ状砥石204を工具ホルダ202の側に押し込む力が働いた場合には、その力はナット242を介してカムスクリュー235に伝わる。従って、カムスクリュー235はコイルバネ240の付勢力に抗して軸線L方向を後方に移動して、ワークの側からの力を逃す。
さらに、本例では、実施例2の研磨工具ユニット200と同様に、ブラシ状砥石204の砥材ホルダ255にホルダ側ネジ孔256を形成しておくだけでナット242と連結できる。これにより、ブラシ状砥石204を簡易なものとすることができるので、消耗品となるブラシ状砥石204の製造コストを抑制できる。
なお、突き出し量調整部材として平板形状のものを配置しておき、線状砥材203の先端を軸線L方向から突き出し量調整部材に当接させ、これにより、カムスクリュー235をカムピン211に対して相対移動させて、砥材突き出し量の調整を行うことも可能である。
(実施例4)
図18は本発明を適用した実施例4の研磨工具ユニット300の斜視図である。本例の研磨工具ユニット300は、図18に示すように、工作機械への取付け部となるシャンク301を備える工具ホルダ302と、工具ホルダ302のシャンク301とは反対の前端側から突出する線状砥材303を備えるブラシ状砥石(研磨工具)304を有する。
(工具ホルダ)
図19は図18の研磨工具ユニット300の分解斜視図である。図20は図18の研磨工具ユニット300の第1の縦断面図であり、案内孔352を通過しない位置で切断したものである。図21は図18の研磨工具ユニット300の第2の縦断面図であり、案内孔352を通過する位置で切断したものである。図19に示すように、工具ホルダ302は、シャンク301と一体に形成されたスクリューロッド(シャフト)305と、スクリューロッド305の外周側にスクリューロッド305と同軸に配置された、スリーブ306、歯車(操作部材)307、スリーブバランサー308、ラチェットカバー309、アンロックナット310を備える。
スクリューロッド305は後端部分がシャンク301となっている。スクリューロッド305の前側部分は雄ネジ311aが形成されたボルト部分311となっている。スクリューロッド305におけるシャンク301とボルト部分311の間には、後方から前方に向かって、大径部分312と、大径部分312よりも外径寸法が長い鍔部分314が設けられている。大径部分312は、シャンク301およびボルト部分311よりも外径寸法が僅かに長い。大径部分312の外周面の後端部にはネジ部312aが設けられている。ボルト部分311は、雄ネジ311aが形成されている領域に軸線L方向に延びる一対の溝状平坦面313を備える。溝状平坦面313は、回りで180°の回転対称に設けられている。
図20に示すように、歯車307は、スクリューロッド305の大径部分312の外周側に位置する。歯車307は、軸孔307aと、軸孔307aの開口縁部分から後方に一定高さで突出する円環状突部307bを備える。また、歯車307は、図19および図21に示すように、円環状突部307bが突出する環状後端面に複数の凹部307cを備える。凹部307cは円環状突部307bの外周側に一定の角度間隔で形成されている。歯車307は軸孔307aおよび円環状突部307bの内周側にスクリューロッド305の大径部分312が挿入されることにより、スクリューロッド305に対して軸線L回りに相対回転可能な状態で支持されている。
歯車307の前方には、スリーブ306が位置している。図20に示すように、歯車307とスリーブ306は、筒状のスリーブ連結部334を介して連結されている。本例では、歯車307、スリーブ連結部334およびスリーブ306は一体に形成されている。スリーブ連結部334の外周面には内周側に窪む環状溝335が形成されている。環状溝335にはOリング336が挿入されている。
スリーブ306の中心孔306bは一定の内径寸法を備える。スリーブ306内には、スクリューロッド305のボルト部分311が前後方向に延びている。ボルト部分311の前端、すなわち、スクリューロッド305の前端は、スリーブ306の前端開口306aよりも後退した位置にある。
ボルト部分311にはナット341が螺着されている。ナット341の環状内周面にはボルト部分311と螺合する雌ネジ341aが形成されている。ナット341は円形の環状外周面を備えている。ナット341の外径寸法はスリーブ306の内径寸法に対応するものであり、ナット341は軸線L方向に移動可能な状態でスリーブ306の内周側に嵌っている。図21に示すように、ナット341には、半径方向に延びるナット側ネジ孔342が2つ設けられている。2つのナット側ネジ孔342は軸線L回りで180°の回転対称に形成されている。
ナット341の前端面には、ナット341と同軸に後方に窪む円形凹部343が設けられている。円形凹部343の軸線L方向の途中位置には、外周側に窪む環状溝345が設けられており、この環状溝345にはOリング346が配置されている。また、円形凹部343には、コイルバネ347が挿入されている。
さらに、ナット341の前端面には、図22に示すように、軸線Lを挟んだ一方の外周縁部分から他方の外周縁部分に向かって軸線Lと直交する方向に直線状に延びる溝部348が形成されている。溝部348において軸線Lと直交する方向で対向する一対の側壁の後端部分には、互いに離れる方向に窪む横溝部349が溝部348に沿って形成されている(図21参照)。溝部348および横溝部349はブラシ状砥石304をナット341に連結するためのナット側連結部(連結部)350を構成している。ブラシ状砥石304はナット側連結部350を利用してナット341の前端側部分に連結されている。
スリーブ306の周壁には溝状の案内孔352が2つ形成されている。2つの案内孔352は、それぞれ軸線L方向に延びており、軸線L回りで180°の回転対称に形成されている。ここで、ナット341のナット側ネジ孔342には、スリーブ306の各案内孔352を介して、回転規制ネジ353が捩じ込まれている。また、回転規制ネジ353の外周側の端部分は、スリーブ306の案内孔352内に位置している。従って、ナット341が軸線L回りに回転しようとした場合には、各回転規制ネジ353が案内孔352の内周壁に周方向から当接して、その回転を阻止する。すなわち、2つの回転規制ネジ353と案内孔352は、ナット341のスリーブ306に対する軸線L回りの相対回転を規制するナット回転規制機構354を構成している。ナット回転規制機構354は、ナット341の軸線L方向への移動は許容している。
図20に示すように、スリーブバランサー308は、筒状であり、上端部分および下端部分に内周側に突出する突出部分356、357を備える。突出部分356、357の内径寸法はスリーブ連結部334およびスリーブ306の外径寸法に対応するものである。下端部分の突出部分357の内周面部分には外周側に窪む環状溝358が形成されている。環状溝358にはOリング359が挿入されている。
スリーブバランサー308は、スリーブ306の後側部分およびスリーブ連結部334を外周側から被う状態に配置されており、上端部分の突出部分356の内周面はOリング336を介してスリーブ連結部334に当接する。また、その下端部分の突出部分357はOリング359を介してスリーブ306の外周面部分に当接する。
ラチェットカバー309は図18および図20に示すように、後方から前方に向かって小径円盤部360と、小径円盤部360よりも大径の大径円盤部361と、大径円盤部361の外周縁部分から前方に突出する環状壁部363を備える。小径円盤部360および大径円盤部361の中心にはスクリューロッド305を貫通させる軸孔309aが形成されている。また、図21に示すように、小径円盤部360および大径円盤部361には、軸孔309aと平行にカバー貫通孔362が形成されている。カバー貫通孔362には、後方から前方に向かってコイルバネ364と金属製のボール365がこの順番で配置されている。環状壁部363の上端部分であって大径円盤部361との隣接位置には、周方向に延びる2つの開口部366が形成されている。2つの開口部366は軸線L回りで180°の回転対称に設けられている。また、大径円盤部361の前端面には、軸孔309aよりも大径の円形凹部367が軸孔309aと同軸に形成されている。大径円盤部361の前端面における円形凹部367の外周側には、環状溝368が形成されている。環状溝368にはOリング369が挿入されている。
ラチェットカバー309は、歯車307およびスリーブバランサー308の後側部分を覆うようにして後方からスリーブバランサー308に固定される。ラチェットカバー309がスリーブバランサー308に固定された状態では、歯車307の円環状突部307bが、大径円盤部361の前端面の円形凹部367に挿入され、歯車307の後端面がOリング369を介して大径円盤部361の前端面と当接した状態となる。また、図20に示すように、歯車307は、軸線L方向でスリーブバランサー308と大径円盤部361の前端面の間に配置された状態となり、図21に示すように、歯車307の一部分が環状壁部363の開口部366から外部に露出した状態となる。
アンロックナット310は、図20に示すように、後方から前方に向かって、軸線Lと直交する方向に延びる環状板部375と、環状板部375の外周縁から前方に一定高さで突出する環状壁部376と、環状壁部376の前端縁から外周側に広がる環状のフランジ部377を備える。環状板部375の軸孔375aの内周面にはスクリューロッド305の大径部分312のネジ部312aの螺合するネジ部375bが設けられている。
アンロックナット310は、スクリューロッド305を環状板部375の軸孔375aに貫通させ、軸孔375aのネジ部375bをスクリューロッド305のネジ部312aに螺合させることによりスクリューロッド305に固定された状態となる。アンロックナット310がスクリューロッド305に固定された状態では、図21に示すように、アンロックナット310は、ラチェットカバー309の小径円盤部360と大径円盤部361の環状後端面を被い、環状板部375が小径円盤部360に当接した状態となる。ここで、環状板部375が小径円盤部360に当接すると、ラチェットカバー309のカバー貫通孔362に挿入されたコイルバネ364の後端部に環状板部375が当接して、コイルバネ364を圧縮させる。従って、ボール365は、コイルバネ364の付勢力(復元力)によって歯車307に押し付けられ、歯車307に形成された凹部307c(図19参照)に嵌り込む。これにより、歯車307およびスリーブ306は、軸線L回りに不用意に回転しない状態とされている。
(ブラシ状砥石)
図22(a)はブラシ状砥石304をナット341に連結する連結動作の説明図であり、図22(b)はナット341と連結されたブラシ状砥石304を軸線Lと直交する方向から見た場合の側面図である。図22に示すように、ブラシ状砥石304は、線状砥材303と、この線状砥材303の後端部分を束ねた状態で保持する円環状の砥材ホルダ381を備える。ブラシ状砥石304は砥材ホルダ381がナット341に同軸に連結されることにより工具ホルダ302に保持される。図20に示すように、ブラシ状砥石304は、スリーブ306の内側に砥材ホルダ381が位置し、線状砥材303の前端部分がスリーブ306の前端開口306aから突き出し、ナット341と一体に軸線L方向に移動可能な状態で工具ホルダ302に保持される。
砥材ホルダ381は、図20に示すように、線状砥材303を保持するホルダ本体382と、ホルダ本体382をナット341に連結するためのホルダ側連結部383を備える。ホルダ本体382は円筒状であり、ナット341の外径寸法と同一の外径寸法を備える。ホルダ側連結部383は、ホルダ本体382の環状後端面から後方に向かって同軸に突出する連結筒部384と、連結筒部384の後端縁から外周側に広がる環状フランジ385を備える。
線状砥材303は、アルミナ長繊維などといった無機長繊維の集合糸にバインダー樹脂を含浸、硬化させたものである。ここで、砥材ホルダ381の前面には、その軸孔381a(中心孔)の周囲に複数の線状砥材保持孔386が離間して形成されている。複数の線状砥材保持孔386はホルダ本体382の軸孔381aを囲む円形に配列されている。線状砥材303は複数本ずつ束ねられ、束ねられた後端側が線状砥材保持孔386に挿入され、接着剤によって砥材ホルダ381に固定されている。
また、ホルダ本体382において、線状砥材保持孔386よりも後方に位置する部分には、半径方向に延びる2つのネジ孔382aが設けられている。2つのネジ孔382aは、軸線L回りで180°の回転対称に形成されている。また、各ネジ孔382aは、ナットに設けられた各ナット側ネジ孔342と同一の角度位置に形成されている。各ネジ孔382aはホルダ本体382を半径方向に貫通している。各ネジ孔382aには、図21に示すように、砥材ホルダ回転規制用ネジ344が捩じ込まれる。
ブラシ状砥石304を工具ホルダ302に保持させる際には、ナット341を工具ホルダ302の前端に位置させ、ナット側連結部350をスリーブ306の前端開口306aから外側に露出させる。そして、図22(a)に示すように、ブラシ状砥石304を軸線Lと直交する方向からナット341に連結する。すなわち、ナット側連結部350の一対の横溝部349に対して、軸線Lと直交する方向からホルダ側連結部383の環状フランジ385を挿入しながら、ナット側連結部350の溝部348にホルダ側連結部383の連結筒部384を挿入する。
ここで、連結筒部384の高さ寸法(軸線L方向の寸法)は、ナット側連結部350の溝部348の深さ寸法(軸線L方向の寸法)と同等であるが、環状フランジ385の厚さ寸法(軸線L方向の寸法)は、ナット側連結部350の横溝部349の溝幅寸法(軸線L方向の寸法)よりも短い。従って、ブラシ状砥石304は、環状フランジ385の厚さ寸法と横溝部349の溝幅寸法との差分に相等する距離だけ軸線L方向に移動可能となっている。すなわち、図22(b)に示すように、ブラシ状砥石304は、環状フランジ385が横溝部349の前側の側面に当接する第1位置304Aと、環状フランジ385が横溝部349の後側の側面に当接する第2位置304Bとの間を軸線L方向に移動可能な状態でナット341に連結される。また、ブラシ状砥石304がナット341に連結されると、図21に示すように、ナット341の円形凹部343に挿入されたコイルバネ347の前端部がブラシ状砥石304の環状フランジ385に当接してブラシ状砥石304を第1位置304Aに付勢する。従って、ブラシ状砥石304は、第1位置304Aに付勢された状態でナット341に連結される。
また、図22(a)に示すように、ホルダ側連結部383を構成する連結筒部384と環状フランジ385を軸線L方向から見た形状は円形であり、ホルダ側連結部383はナット側連結部350の内側に包含される。従って、ブラシ状砥石304は、ナット341に対して軸線L回りに相対回転可能な状態で、ナット341に連結される。
次に、スクリューロッド305とスリーブ306を相対回転させて、ブラシ状砥石304の砥材ホルダをナット341とともにスリーブ306内に位置させる。これにより、スクリューロッド305が砥材ホルダ381の軸孔381aに挿入された状態とする。ここで、スクリューロッド305の外径寸法は砥材ホルダ381の軸孔381aの内径寸法に対応するものであり、スクリューロッド305は、砥材ホルダ381が軸線L方向に移動可能な状態で、軸孔381aに嵌合する。
その後、スリーブ306の案内孔352を介して、砥材ホルダ381の各ネジ孔382aにそれぞれ砥材ホルダ回転規制用ネジ344を捩じ込む。そして、図21に示すように、各砥材ホルダ回転規制用ネジ344の先端面を、スクリューロッド305のボルト部分311に設けられた各溝状平坦面313に僅かなクリアランスを開けて対峙させる。これにより、ブラシ状砥石304は、スクリューロッド305に対する軸線L回りの相対回転が規制された状態となる。すなわち、ブラシ状砥石304はスクリューロッド305と一体と回転するものとなる。従って、シャンク301(スクリューロッド305の後端部分)をマシニングセンタのヘッドに連結して研磨工具ユニット300を回転させたときに、ブラシ状砥石304はシャンク301と一体に回転し、研磨加工を精度よく行うことができる。
また、各砥材ホルダ回転規制用ネジ344の先端面をスクリューロッド305の各溝状平坦面313にクリアランスを開けて対峙させた状態とすることにより、ブラシ状砥石304は、スクリューロッド305をガイドとして当該スクリューロッド305に沿って軸線L方向への移動することが許容された状態となる。
なお、各砥材ホルダ回転規制用ネジ344の外周側の端部分は、砥材ホルダ381の各ネジ孔382aの内側に位置しており、砥材ホルダ381の外周側には突出していない。また、本例では、各砥材ホルダ回転規制用ネジ344を接着剤によりネジ孔382aに固定し、各砥材ホルダ回転規制用ネジ344の半径方向への移動を規制している。
(砥材突き出し量の調整動作)
図23は研磨工具ユニット300の砥材突き出し量を調整する調整動作の説明図である。研磨工具ユニット300は、スクリューロッド305の後端部分(シャンク301)がツールホルダ(不図示)などを介してマシニングセンタのヘッドに連結される。ワークに対するバリ取り加工や表面仕上げなどの研磨加工は、ヘッドに連結した研磨工具ユニット300を軸線L回りに回転駆動して行なわれる。ヘッドに連結された研磨工具ユニット300の位置はマシニングセンタを駆動制御する制御プログラムによって制御されている。
ここで、線状砥材303の磨耗量が予め設定した摩耗量に達した場合には、制御プログラムによってマシニングセンタを駆動して、研磨工具ユニット300を、ラックギア80が配置された砥材突き出し量調整位置に移動させる。ラックギア80はスリーブ306に連結された歯車307と噛合可能な歯部80aを備えている。
次に、ラックギア80の歯部80aの延設方向Rと研磨工具ユニット300の軸線Lとを直交させ、歯車307の歯部をラックギア80の歯部80aに噛合させる。その後、研磨工具ユニット300を歯部80aの延設方向Rに移動させる。これにより、歯車307を所定の回転量だけ回転させる。なお、研磨工具ユニット300を延設方向Rに移動させる替わりに、ラックギア80を延設方向Rに移動させて、歯車307を所定の回転量だけ回転させることもできる。また、研磨工具ユニット300およびラックギア80の双方を移動させることにより、研磨工具ユニット1とラックギア80を延設方向Rで相対移動させて、歯車307を所定の回転量だけ回転させてもよい。
歯車307が回転すると、スリーブ306が歯車307と一体に回転する。ここで、ナット341はナット回転規制機構354によってスリーブ306に対する軸線L回りの相対回転が規制されている。この一方で、スクリューロッド305は、マシニングセンタに保持されており、その回転が規制されている。従って、ナット341は、スリーブ306の回転に伴って軸線L方向に移動して、ブラシ状砥石304を軸線L方向に移動させる。よって、歯車307の回転量に対応する移動量だけ、線状砥材303をスリーブ306の前端開口306aから突き出すことができる。
ここで、ブラシ状砥石304は、砥材ホルダ回転規制用ネジ344の先端面とスクリューロッド305の溝状平坦面313との対峙によって軸線L回りの回転が規制されている。従って、ブラシ状砥石304は、ナット341に対して相対回転しながらスクリューロッド305に沿って軸線L方向に移動する。
なお、研磨工具ユニット300とラックギア80の相対移動方向を反対方向とすることにより、歯車307の回転量に対応する移動量だけ線状砥材303をスリーブ306の前端開口306aの内側に戻すことができる。
本例においても、実施例1の研磨工具ユニット1と同様の効果を得ることができる。
また、本例では、ブラシ状砥石304がナット341上において第1位置304Aと第2位置304Bの間を移動可能であり、コイルバネ364によって前方の第1位置304Aに支持されている。従って、加工動作中に加工対象のワークの側からブラシ状砥石304をスリーブ306内に押し込む力が働いたときに、ブラシ状砥石304を軸線L方向に後退させて、ブラシ状砥石304の破損や砥材の磨耗を抑制できる。
なお、本例において、スクリューロッド305に軸線L方向に貫通するロッド貫通孔を形成しておけば、このロッド貫通孔を介して切削油やエアーを供給して、加工部分の冷却などを行うことができる。
(実施例5)
図24は本発明を適用した実施例5の研磨工具ユニット500の斜視図である。本例の研磨工具ユニット500は、図24に示すように、工作機械への取付け部となるシャンク502aを備える工具ホルダ502と、工具ホルダ502のシャンク502aとは反対の前端側から突出する線状砥材503を備えるブラシ状砥石(研磨工具)504を有する。
(工具ホルダ)
工具ホルダ502は、軸線L方向に沿ってシャンク502aの側からシャンクヘッド505とスリーブ506を同軸に備える。シャンクヘッド505はシャンク502aと、円盤部507と、円盤部507とシャンク502aの間を連結する第1連結円盤部508および第2連結円盤部509を備える。第1連結円盤部508は第2連結円盤部509とシャンク502aの間に設けられている。第1連結円盤部508の外径寸法はシャンク502aの外径寸法よりも長く、第2連結円盤部509の外径寸法よりも短い。また、第1連結円盤部508の軸線L方向の長さ寸法は、第2連結円盤部509の長さ寸法よりも長い。第2連結円盤部509の外径寸法は円盤部507の外径寸法よりも短い。
第2連結円盤部509には、半径方向に延びるネジ孔510が2つ設けられている。2つのネジ孔510は軸線L回りで180°の回転対称に形成されている。各ネジ孔510には、ネジ部を備えるカムピン511が捻じ込まれている。
スリーブ506は軸線L方向に延びる筒部515を備える。筒部515の径寸法は一定である。筒部515の後端部分にはスリーブ側貫通孔517が4つ設けられている。4つのスリーブ側貫通孔517は軸線L回りで90°の回転対称に形成されている。
ここで、シャンクヘッド505の前端部分には環状部材524が同軸に固定されている。環状部材524は円盤部507から前方に一定幅で突出する突出部分524aを備える。スリーブ506は、その後端部分が突出部分524aの外周側に嵌め込まれている。スリーブ506は、各スリーブ側貫通孔517を貫通する固定ネジ518により環状部材524に固定されている。
各スリーブ側貫通孔517の前方には周方向に延びる長孔519が設けられている。また、筒部515には、軸線L方向に延びる溝状の2つの案内孔520が設けられている。2つの案内孔520は、軸線L回りで180°の回転対称に形成されている。各案内孔520はいずれも長孔519の前方に形成されている。従って、軸線L方向から見た場合に2つの長孔519と案内孔520は重なる。案内孔520内には、回転規制ネジ521が位置する。
図25は図24の研磨工具ユニット500を後方から見た場合の分解斜視図である。図26は図24の研磨工具ユニット500を前方から見た場合の分解斜視図である。図27は図24の研磨工具ユニット500の縦断面図であり、案内孔520を通過する位置で切断したものである。図25ないし図27に示すように、工具ホルダ502は、シャンクヘッド505とスリーブ506の内側に、環状部材524、シャフト525、リードカム526、および、コイルバネ(付勢部材)527を備える。また、工具ホルダ502は、シャフト525に設けられたボルト部分553に螺合するナット529を備える。本例では、ナット529は、ブラシ状砥石504と一体に設けられている。
図26に示すように、シャンクヘッド505の前面には凹部531が設けられている。凹部531には環状部材524の後側部分が挿入されて嵌合する。凹部531の中央には、シャンク502a、第1連結円盤部508、第2連結円盤部509および円盤部507を軸線L方向に貫通するヘッド中心孔532の前端開口が露出する。凹部531の底面におけるヘッド中心孔532の外周側には環状部材固定用ネジ孔534が4つ形成されている。
ヘッド中心孔532は、図27に示すように、後方から前方に向かって第1中心孔部分536、第1中心孔部分536よりも内径が大きい第2中心孔部分537、第2中心孔部分537よりも内径が大きい第3中心孔部分538、および、第3中心孔部分538よりも内径が大きい第4中心孔部分539をこの順番に備える。従って、ヘッド中心孔532の内周面には、第1中心孔部分536と第2中心孔部分537の間に形成された第1環状前向き面532aと、第2中心孔部分537と第3中心孔部分538の間に形成された第2環状前向き面532bと、第3中心孔部分538と第4中心孔部分539の間に形成された第3環状前向き面532cが形成されている。
第1中心孔部分536はシャンク502aを貫通している。第1中心孔部分536はシャンク502aが接続された工作機械から加圧されたクーラントの供給を受けるクーラント導入孔である。ここで、第2連結円盤部509に形成されたネジ孔510は第4中心孔部分539に貫通する。従って、ネジ孔510に捻じ込まれたカムピン511の先端部分は第4中心孔部分539に突出する。
環状部材524は、図26に示すように、環状部材本体部541と、環状部材本体部541の前面の中央部分から環状部材本体部541と同軸に前方に突出する筒部542と、筒部542の前端から内周側に突出する環状板部543を備える。図27に示すように、環状部材本体部541の中心孔541aは、第3中心孔部分538の内径寸法よりも僅かに小さい内径寸法を備える。中心孔541aの内周面と筒部542の内周面は段差なく連続している。図26に示すように、環状部材本体部541には、軸線L方向に貫通する4つの貫通孔524cが設けられている。
環状部材524は、その後端部分がシャンクヘッド505の凹部531に嵌め込まれる。そして、環状部材524は、各貫通孔524cに前方から挿入されてシャンクヘッド505の環状部材固定用ネジ孔534に捻じ込まれる4本の環状部材固定用ネジ545によりシャンクヘッド505に固定される。環状部材524がシャンクヘッド505に固定されると、環状部材524はシャンクヘッド505から前方に突出する突出部分524aを備えるものとなる。また、環状部材524がシャンクヘッド505に固定されると、第3環状前向き面532cと環状部材524の後端面の間の空間(第4中心孔部分539)が、リードカム526を配置するカム室として区画される。
突出部分524aの環状外周面には、4つのスリーブ固定用ネジ孔524bが軸線L回りで90°の回転対称に形成されている。スリーブ506は、各スリーブ側貫通孔517を貫通してスリーブ固定用ネジ孔524bに捻じ込まれた固定ネジ518により環状部材524に固定される。
図25に示すように、シャフト525は、シャンクヘッド505、環状部材524、および、スリーブ506の内周側で、シャンク502aと同軸に配置されている。シャフト525は、後方から前方に向かって、カム支持部分551、鍔部分552、およびボルト部分553をこの順番に備える。図27に示すように、リードカム526は、カム支持部分551に支持されて、シャンク502aと同軸に配置される。
カム支持部分551は、その後端面から軸線L方向に所定の長さ寸法だけ延びるシャフト側クーラント導入孔555を備える。また、カム支持部分551は、軸線Lと直交する方向に延びてシャフト側クーラント導入孔555の前端部分と連通するクーラント導出孔556を備える。さらに、カム支持部分551は、図25に示すように、軸線Lを間に挟んで平行に延びる一対の平行面557と、一対の平行面557を一対の平行面557の間でこれら平行面557を接続する一対の円弧面558を備える。
鍔部分552はカム支持部分551およびボルト部分553よりも大径である。また、図27に示すように、鍔部分552の外径寸法は、環状部材524の中心孔541aおよび筒部542の内径寸法よりも小さく、環状板部543の内径寸法よりも大きい。ボルト部分553の外径寸法は、環状板部543の内径寸法よりも小さい。ボルト部分553は外周面に雄ネジを備える。
リードカム526は、全体として円筒形状をしており、その外径寸法はカム室(第4中心孔部分539)の内径寸法よりも小さい。リードカム526は、中心に軸線L方向に貫通するシャフト挿入孔561を備える。シャフト挿入孔561は、後方から前方に向かって小径孔部分561aと小径孔部分561aよりも内径寸法の大きい大径孔部分561bを備える。
図25に示すように、シャフト挿入孔561を軸線L方向の後方から見た形状(小径孔部分561aを見た形状)は、シャフト525のカム支持部分551を軸線L方向から見た形状と対応する。従って、カム支持部分551がシャフト挿入孔561に挿入されてリードカム526がシャフト525に支持されると、リードカム526はカム支持部分551を軸線L方向に移動可能な状態で、かつ、シャフト525に対して相対回転不能な状態となる。シャフト挿入孔561を軸線L方向の前方から見た形状(大径孔部分561bを見た形状)は円形である。ここで、カム支持部分551の外周側にはコイルバネ527が配置されている。コイルバネ527の前端は鍔部分552に当接する。コイルバネ527の後側部分はリードカム526の大径孔部分561bに挿入されている。コイルバネ527の後端は、小径孔部分561aと大径孔部分561bとの間に形成された環状前向き面561c(図27参照)に当接している。
また、リードカム526は、その外周面にカム562を備える。図28はリードカム526の周辺の部分拡大図である。図28に示すように、カム562は、複数の後側突部245に形成された後側カム面247と、複数の前側突部246に形成された前側カム面248を備える。後側カム面247は、後側第1カム面部分247a、後側傾斜カム面部分247b、後側第2カム面部分247c、および、後側円弧面247dを備える。前側カム面248は、前側第1カム面部分248a、前側傾斜カム面部分248bと、前側第2カム面部分248c、および、前側円弧面248dが形成されている。カム562には、半径方向からシャンクヘッド505に捩じ込まれたカムピン511の先端部が摺動する。なお、カム562は実施例3の研磨工具ユニット200のカム241と同一形状を備えるので、対応する部分に同一の符号を付して、その詳細な説明は省略する。
環状部材524をシャンクヘッド505に固定する際には、シャフト525を後方から環状部材524に挿入して、ボルト部分553が環状部材524から前方に突出した状態する。この状態で、鍔部分552は環状部材524の環状部材本体部541および筒部542の内側に位置する。また、環状部材524をシャンクヘッド505に固定する際には、シャフト挿入孔561にカム支持部分551を挿入して、リードカム526をシャフト525に支持させる。しかる後に、シャフト525およびリードカム526をヘッド中心孔532に挿入して、環状部材524をシャンクヘッド505に固定する。
環状部材524をシャンクヘッド505に固定した状態では、図27に示すように、シャフト525の後端部分はヘッド中心孔532の第2中心孔部分537に挿入される。これにより、第1中心孔部分536(クーラント導入孔)と、シャフト側クーラント導入孔555およびクーラント導出孔556が連通する。また、クーラント導出孔556は第3中心孔部分538の内周側に位置し、ボルト部分553はスリーブ506の内周側に位置する。ボルト部分553の前端は、スリーブ506の前端開口506aよりも後退した位置にある。シャフト525はシャンクヘッド505(シャンク502a)、環状部材524およびスリーブ506に対して軸線L回りに相対回転可能である。
また、環状部材524をシャンクヘッド505に固定した状態では、リードカム526はカム室(第4中心孔部分539)に配置される。そして、リードカム526は、コイルバネ527によって、第3環状前向き面532cに当接する後側位置(第2位置)526Aに付勢される。なお、リードカム526がカム室に配置された後に、カムピン511を捻じ込むことにより、カムピン511の先端部分がリードカム526のカム562に挿入される。
ここで、リードカム526は、カム支持部分551に沿って後側位置(第2位置)526Aと、後側位置526Aから軸線L方向の前方に離間した前側位置(第1位置)526Bの間を移動可能である。後側位置526Aは、リードカム526が第3環状前向き面532cに当接する位置であって、カムピン511が前側突部246と当接する位置である。前側位置526Bは、リードカム526が環状部材524に当接する位置であって、カムピン511が後側突部245と当接する位置である。なお、リードカム526は、通常は、コイルバネ527によって後側位置526Aに付勢されている。従って、カムピン511は、通常は、前側突部246の間の前側円弧面248dに当接している。
リードカム526が後側位置526Aから前側位置526Bを経由して後側位置526Aに戻る往復直進運動を行うと、カムピン511がカム562の前側カム面248および後側カム面247を擦動することにより、この往復直動運動はリードカム526の軸線L回りの一方向への所定の角度の回転運動に変換される。すなわち、カム562とカムピン511は、リードカム526の往復直動運動を回転運動に変換する運動変換機構565を構成する。ここで、リードカム526が回転すると、シャフト525はリードカム526と一体に回転する。
(ブラシ状砥石)
図25に示すように、ブラシ状砥石504は、線状砥材503と、線状砥材503の後側部分を保持する砥材ホルダ570を有する。砥材ホルダ570は工具ホルダ502のナット529を兼ねるものである。
砥材ホルダ570は、筒状(環状)であり、シャフト525を貫通させる軸孔570aを備える。砥材ホルダ570の前面には、図26に示すように、軸孔570aの周囲に複数の線状砥材保持孔571が形成されている。複数の線状砥材保持孔571は軸孔570aを囲む円形に等角度間隔に配列されている。線状砥材503は、アルミナ長繊維などといった無機長繊維の集合糸にバインダー樹脂を含浸、硬化させたものである。線状砥材503は複数本ずつ束ねられ、束ねられた後端側が線状砥材保持孔571に挿入され、接着剤によって砥材ホルダ570に固定されている。
図27に示すように、軸孔570aの内周面には、砥材ホルダ570をシャフト525のボルト部分553に螺着可能とする雌ネジ572が形成されている。また、砥材ホルダ570には、軸線Lと直交して半径方向に貫通する2つのネジ孔573が設けられている。2つのネジ孔573は軸線L回りで180°の回転対称に形成されている。
かかるブラシ状砥石504を工具ホルダ502に保持する際には、砥材ホルダ570をシャフト525のボルト部分553に螺着させて、スリーブ506の内側に位置させる。そして、2つのネジ孔573に、案内孔520を介して回転規制ネジ521を捩じ込む。
回転規制ネジ521を案内孔520の外側から各ネジ孔573に捩じ込んだ状態では、回転規制ネジ521の頭部(回転規制ネジ521の外周側の端部分)は案内孔520内に位置する。従って、砥材ホルダ570(ナット529)が軸線L回りに回転しようとした場合には、各回転規制ネジ521の頭部が案内孔520の内周壁に周方向から当接して、その回転を阻止する。すなわち、砥材ホルダ570に捩じ込まれた2つの回転規制ネジ521と案内孔520は、砥材ホルダ570(ナット529)の軸線L回りの回転を規制するナット回転規制機構575を構成する。ナット回転規制機構575は砥材ホルダ570(ナット529)の軸線L方向への移動は許容する。
(砥材突き出し量の調整動作)
図29は図24の研磨工具ユニット500の砥材突き出し量を調整する突き出し量調整動作の説明図である。研磨工具ユニット500は、そのシャンク502aがツールホルダ(不図示)などを介してマシニングセンタのヘッドに連結される。マシニングセンタは、ヘッドに連結した工具等に加圧したクーラントを供給するクーラント供給路を有する。研磨工具ユニット500がマシニングセンタに連結された状態では、図29(a)に示すように、リードカム526はコイルバネ527により後側位置526Aに付勢されている。
加工動作により線状砥材503の磨耗量が予め設定した摩耗量に達した場合には、制御プログラムによってマシニングセンタを駆動して、ヘッドから加圧したクーラントCを研磨工具ユニット500に供給する。
マシニングセンタからのクーラントCは、シャンクヘッド505のヘッド中心孔532に導入される。より詳細には、ヘッド中心孔532の第1中心孔部分536(クーラント導入孔)から、シャフト側クーラント導入孔555およびクーラント導出孔556を介して、第3中心孔部分538および第4中心孔部分539に導入される。図29(b)に示すように、第4中心孔部分539にクーラントCが導入されると、クーラントCの流体圧により、リードカム526がコイルバネ527の付勢力に抗して後側位置526A(第2位置)から前側位置526B(第1位置)に移動する。
リードカム526が前側位置526Bに移動する際には、実施例3の砥材突き出し量の調整動作を説明した図17(c)〜(e)に示す場合と同様に、カムピン511は、カム562の前側円弧面248dから後側突部245の側に移動して、後側突部245の後側傾斜カム面部分247bに摺接する。その後、カムピン511は、カムピン511は後側傾斜カム面部分247bから後側第1カム面部分247aを経由して後側円弧面247dに至る。ここで、カムピン511はシャンクヘッド505に固定されており、リードカム526は軸線L回りに回転可能となっている。従って、カムピン511が後側傾斜カム面部分247bと摺接する際に、リードカム526は一方側に所定の角度だけ回転する。よって、シャフト525がリードカム526と共に一方側に所定の角度だけ回転する。また、砥材ホルダ570(ナット529)はナット回転規制機構575によってその軸線L回りの回転が規制されている。従って、砥材ホルダ570(ナット529)は、シャフト525の回転に伴って軸線L方向に移動する。この結果、ブラシ状砥石504は軸線L方向の前方に移動する。
その後、クーラントCの供給が停止されると、導入されたクーラントCは、リードカム526とカム室(第4中心孔部分539)の間など、部品と部品の隙間を介して下方に流れ、ブラシ状砥石504に伝わる。また、クーラントCは案内孔520からスリーブ506の外側に排出される。ここで、クーラントCの流体圧が低下すると、図29(c)に示すように、コイルバネ527の付勢力によってリードカム526は、前側位置526B(第1位置)から後側位置526A(第2位置)に戻る。
リードカム526が後側位置526Aに戻る際には、実施例3の砥材突き出し量の調整動作を説明した図17(a)〜(c)に示す場合と同様に、カムピン511は、後側円弧面247dから前側突部246の側に移動して、前側突部246の前側傾斜カム面部分248bに摺接する。その後、カムピン511は、前側傾斜カム面部分248bから前側第1カム面部分248aを経由して前側円弧面248dに至る。ここで、カムピン511はシャンクヘッド505に固定されており、リードカム526は軸線L回りに回転可能となっている。従って、カムピン511が前側傾斜カム面部分248bと摺接する際に、リードカム526は一方側に所定の角度だけ回転する。よって、シャフト525がリードカム526と共に一方側に所定の角度だけ回転する。また、砥材ホルダ570(ナット529)はナット回転規制機構575によってその軸線L回りの回転が規制されている。従って、砥材ホルダ570(ナット529)は、シャフト525の回転に伴って軸線L方向に移動する。この結果、ブラシ状砥石504は軸線L方向の前方に移動する。
これらの動作により、砥材ホルダ570(ナット529)は、リードカム526が後側位置526Aから前側位置526Bを経由して後側位置526Aに戻る間にシャフト525が回転する回転量に対応する移動量だけ前方に移動する。従って、マシングセンタからクーラントCを研磨工具ユニット500に供給することにより、所定の砥材突き出し量Pだけ、線状砥材503をスリーブ506の前端開口506aから突き出すことができる。
本例によれば、砥材突き出し量の調整動作を行うために、ラックギアや突き出し量調整部材などを用いる必要がない。また、砥材突き出し量の調整動作を行うために、研磨工具ユニット500をラックギアや突き出し量調整部材が配置された砥材突き出し量調整位置に移動させる必要もない。従って、マシニングセンタでは、自動工具交換装置で工具を研磨工具ユニット500に交換した後に、加工開始位置に移動しながら砥材突き出し量の調整動作を行える。よって、本例の研磨工具ユニット500を用いれば、加工動作のスループットを向上させることができる。
なお、砥材ホルダ570の軸孔570aの内周面への雌ネジ572の形成には、インサートネジを用いることができる。また、砥材ホルダ570がアルミ製であり、シャフト525(ボルト部分553)が炭素鋼製などである場合には、軸孔570aの内周面にアルマイト処理を施すことにより、雌ネジ572の耐久性を向上させておくことができる。
(その他の実施の形態)
上記の各実施例1〜3の研磨工具ユニット1、100、200において、工具ホルダ2、102、202のナット36、142、242をブラシ状砥石4、104、204の砥材ホルダ61、150、255と一体に形成し、砥材ホルダ61、150、255がナット36、142、242を兼ねるように構成することもできる。すなわち、研磨工具ユニット1、100、200において実施例5に記載のブラシ状砥石504を用いることができる。このようにすれば、研磨工具ユニット1、100、200における部品点数を抑制できる。また、実施例5の研磨工具ユニット500において、ブラシ状砥石504に替えて、各実施例1〜3のように、ブラシ状砥石4、104、204とナット36、142、242を連結した形態を用いることもできる。
また、各実施例1〜4において、ギアスクリューやカムスクリューなどのシャフトの先端部分に線状砥材の変位を規制するコマ部材を取り付けてもよい。図30(a)はコマ部材と当該コマ部材をシャフトに固定する有頭ネジの斜視図であり、図30(b)は実施例2の研磨工具ユニット100にコマ部材を取り付けた場合の断面図である。
図30(a)に示すように、コマ部材401は、円盤形状をしており、中央に中心孔401aを備える。また、コマ部材401は、後端面に、中心孔401aと同軸の後側凹部403を備える。後側凹部403はギアスクリューやカムスクリューなどのシャフトの前端部分を挿入可能な形状である。コマ部材401の後端面の外周縁部分には、外周側に向かって前方に傾斜する後側テーパー面404が形成されている。さらに、コマ部材401は、前端面に、その中心孔401aと同軸に前側凹部405を備える。前側凹部405は有頭ネジ402の頭部を挿入可能な形状である。コマ部材401の前端面の外周縁部分には、外周側に向かって後方に傾斜する前側テーパー面406が形成されている。本例のコマ部材401は、軸線Lと直交する仮想の平面に対して面対称である。
図30(b)に示すように、コマ部材401は、ブラシ状砥石104を工具ホルダ102に保持したときに、線状砥材103とギアスクリュー(シャフト)135の間に比較的大きな隙間が形成される場合に、ギアスクリュー135の前端部分に取り付けられて、複数本の線状砥材103の内側に配置される。
コマ部材401をギアスクリュー135に取り付ける際には、ギアスクリュー135を包囲している線状砥材103の内周側にコマ部材401を挿入する。そして、コマ部材401の後側凹部403にギアスクリュー135の前端部分を挿入する。その後、有頭ネジ402のネジ部を前側からコマ部材401の中心孔401aに貫通させて、ギアスクリュー135のスクリュー中心孔138の前端部分の内周面に形成されているネジ部138aに捩じ込む。これにより、コマ部材401をギアスクリュー135の前端部分に固定して、有頭ネジ402の頭部を前側凹部405内に位置させる。ここで、コマ部材401は後側テーパー面404を備えている。従って、線状砥材103の中に途中で折れたものが含まれている場合でも、コマ部材401を折れた線状砥材103に引っ掛けることなく、線状砥材103の内側に挿入できる。
ギアスクリュー135にコマ部材401が取り付けられた状態では、研磨工具ユニット100を回転させて加工を行う際に線状砥材103が内周側に逃げようとすると、線状砥材103はコマ部材401に当たってその逃げ(変位)が抑制される。また、線状砥材103が外周側に逃げようとすると、線状砥材103はスリーブ106の周壁の内面に当たってその逃げが抑制される。従って、内周側に位置する線状砥材103と外周側に位置する線状砥材103の間で逃げやすさに差がなくなる。この結果、内周側に位置する線状砥材103と外周側に位置する線状砥材103の間で剛性に差が出ないので、内周側に位置する線状砥材103が外周側に位置する線状砥材103と比較して磨耗が少なくなることを回避でき、線状砥材103の磨耗が均一となる。
なお、コマ部材401として、前側テーパー面406の傾斜を異ならせて、軸線L方向における前側テーパー面406の後端の位置を相違させたものを複数用意しておけば、コマ部材401を交換することにより、線状砥材103の内周側への挙動を制御する位置を調整することができる。
図31(a)はコマ部材の別の例の斜視図であり、図31(b)は本例のコマ部材を実施例2の研磨工具ユニット100に取り付けた状態の説明図である。図31(a)に示すように、本例のコマ部材401Aは、円盤形状をしており、中央に中心孔401aを備える。また、コマ部材401Aは、中心孔401aの周囲に等角度間隔で複数の貫通孔401bを備える。貫通孔401bの数は、砥材ホルダ150の線状砥材保持孔152の数と同一であり、貫通孔401bの内径は、線状砥材保持孔152の内径と対応する寸法を備える。さらに、コマ部材401Aは、後端面に、中心孔401aと同軸の後側凹部403を備える。後側凹部403はギアスクリューやカムスクリューなどのシャフトの前端部分を挿入可能な形状である。また、コマ部材401Aは、前端面に、その中心孔401aと同軸に前側凹部405を備える。前側凹部405は有頭ネジ402の頭部を挿入可能な形状である。
コマ部材401Aをギアスクリュー135に取り付ける際には、図31(b)に示すように、砥材ホルダ150の各線状砥材保持孔152に挿入された一束の線状砥材103のそれぞれを、各貫通孔401bに貫通させる。そして、コマ部材401Aの後側凹部403にギアスクリュー135の前端部分を挿入する。その後、有頭ネジ402のネジ部を前側からコマ部材401Aの中心孔401aに貫通させて、ギアスクリュー135のスクリュー中心孔138の前端部分の内周面に形成されているネジ部138aに捩じ込む。これにより、コマ部材401Aをギアスクリュー135の前端部分に固定して、有頭ネジ402の頭部を前側凹部405内に位置させる。
ギアスクリュー135にコマ部材401Aが取り付けられた状態では、研磨工具ユニット100を回転させて加工を行う際に線状砥材103が内周側に逃げようとすると、線状砥材103はコマ部材401Aにおける貫通孔401bの内周側の開口縁部分および周壁面部分に当たってその逃げ(変位)が抑制される。また、線状砥材103が外周側に逃げようとすると、線状砥材103はコマ部材401Aにおける貫通孔401bの外周側の開口縁部分および周壁面部分に当たってその逃げ(変位)が抑制される。従って、内周側に位置する線状砥材103と外周側に位置する線状砥材103の間で逃げやすさに差がなくなる。この結果、内周側に位置する線状砥材103と外周側に位置する線状砥材103の間で剛性に差が出ないので、内周側に位置する線状砥材103が外周側に位置する線状砥材103と比較して磨耗が少なくなることを回避でき、線状砥材103の磨耗が均一となる。
次に、上記の各実施例1〜5において、線状砥材は、ナイロン、砥粒入りナイロン、砥粒入りゴム、ステンレス鋼、真鍮からなるものなどを用いることができる。さらに、砥材ホルダに環状の砥石などを保持した研磨工具を工具ホルダに保持して研磨工具ユニットを構成することもできる。
(ラックギア設置治具)
ここで、ラックギア設置治具を説明する。図32はラックギア設置治具およびラックギア80の変形例の説明図である。図32では、実施例2の研磨工具ユニット100における砥材突き出し量の調整動作を例示している。ラックギア設置治具は、実施例1、2、4の研磨工具ユニット1、100、300の砥材突き出し量を調整するラックギア80を砥材突き出し量調整位置に設置するための治具である。
ラックギア設置治具85は一定厚さの板金を折り曲げることにより形成されている。図32に示すように、ラックギア設置治具85は、砥材突き出し量調整位置に固定される固定板部85aと、固定板部85aの外周縁部分から上方に一定幅で延びる縦板部85bと、縦板部85bの上端縁から水平方向に延びる取り付け板部85cを備える。固定板部85aには、ラックギア設置治具85を固定するためのネジを貫通させる長孔85dが設けられている。取り付け板部85cの上面には、ラックギア80が取り付けられている。ラックギア80は、その歯部80aを、取り付け板部85cの縦板部85bとは反対側の端縁から外側に突出させた状態で、取り付け板部85cにネジ止め固定されている。
ここで、ラックギア80が配置される砥材突き出し量調整位置は、研磨工具ユニット100が連結されたマシニングセンタのヘッドの可動領域内に位置する。従って、ヘッドに連結された研磨工具ユニット100によるワークの加工によって発生する切粉や砥材粉がラックギア80に付着することがある。また、切粉や砥材粉がラックギア80に付着した状態で砥材突き出し量の調整動作を行った場合には、切粉や砥材粉が第2歯車113やラックギア80に絡み、これらをロック状態などの動作不良状態に陥らせる可能性がある。ここで、第2歯車113とラックギア80が動作不良状態に陥っているときに砥材突き出し量の調整動作を継続すると、研磨工具ユニット100やラックギア80の損傷を招く。
かかる問題に対して、ラックギア設置治具85は板金で形成されており、その剛性が低い。従って、第2歯車113とラックギア80が動作不良状態に陥っているときに砥材突き出し量の調整動作を継続した場合には、ラックギア設置治具85が撓み、第2歯車113とラックギア80の噛合が解除される。すなわち、ラックギア設置治具85は、各研磨工具ユニット1、100、300とラックギア80の間に過度な力が加わった場合に逃げる特性を備えるので、砥材突き出し量の調整動作において各研磨工具ユニット1、100、300およびラックギア80が損傷することがない。
また、ラックギア設置治具85が過度な力に対して逃げる特性を備えるので、例えば、砥材突き出し量の調整動作を行うために、ラックギア80の歯部80aと各研磨工具ユニット1、100、300の各歯車(ギアスクリュー操作用歯車13、第2歯車113、歯車307)とを噛合させる際に、ラックギア80が研磨工具ユニット1、100のスリーブ6、106や研磨工具ユニット300のスリーブバランサー308などと干渉した場合でも、ラックギア80が各研磨工具ユニット1、100、300を損傷させることを防止或いは抑制できる。さらに、ラックギア設置治具85は、撓むので、ラックギア80が研磨工具ユニット1、100のスリーブ6、106や研磨工具ユニット300のスリーブバランサー308などと干渉して各研磨工具ユニット1、100、300から離れる方向に逃げた場合(変位した場合)でも、その干渉が解除されると当初の状態に戻る。従って、干渉が解除された後に、ラックギア80の歯部80aと各研磨工具ユニット1、100、300の各歯車(ギアスクリュー操作用歯車13、第2歯車113、歯車307)を噛合させることができる。
(ラックギアの変形例)
次に、再び図32を参照して、ラックギア80の変形例を説明する。ラックギア80は、全体として矩形の板状をしており、その長手方向の一辺に沿って歯部80aを備える。ラックギア80はラックギア設置治具85の取り付け板部85cに載置されて固定されている。歯部80aは取り付け板部85cの外側に位置している。本例のラックギア80は、その上面に、歯部80aに沿って一定幅で延びる電着砥石80bを備える。
電着砥石80bを備えるラックギア80を用いて砥材突き出し量の調整動作を行う場合には、図32(a)に示すように、まず、ラックギア80と研磨工具ユニット100の軸線Lを直交させた姿勢として、電着砥石80bに線状砥材103の先端を極僅かに接触させる。そして、研磨工具ユニット100を回転させて、歯部80aに沿って移動させる。
これにより、線状砥材103は電着砥石80bによってツルーイングされ、その先端が整う。また、線状砥材103の回転によってラックギア80の上面が掃除されるので、ラックギア80に切粉や砥材粉が付着している場合には、それらが除去される。ここで、線状砥材103がラックギア80の上面を掃除する際には、それと並行して、線状砥材103の先端がラックギア80の上面よりも高い位置にある電着砥石80bの上面で整えられる。従って、回転する線状砥材103がラックギア80の歯部80aに接触して、そのエッジを研磨してしまうことを防止或いは抑制できる。
その後、図32(b)に示すように、第2歯車113の歯部をラックギア80の歯部80aに噛合させる。しかる後に、研磨工具ユニット100を歯部80aの延設方向に移動させ、これにより、第2歯車113を回転させて、砥材突き出し量を調整する。
ここで、切粉や砥材粉がラックギア80に付着した状態で砥材突き出し量の調整動作を行った場合には、切粉や砥材粉が第2歯車113やラックギア80に絡み、これらをロック状態などの動作不良状態に陥らせる可能性がある。これに対して、本例では、線状砥材103によって切粉や砥材粉をラックギア80から除去した後に、第2歯車113の歯部とラックギア80の歯部80aを噛合させている。従って、切粉や砥材粉に起因して、第2歯車113とラックギア80が動作不良状態に陥ってしまい、砥材突き出し量の調整が不能となることを防止あるいは抑制できる。