JP6553003B2 - 補強用制震耐力壁構造 - Google Patents

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Description

本発明は、補強用制震耐力壁構造に関し、特に、既存の木造の建物の骨組として形成された、上下一対の横架材と左右一対の垂直材とからなる矩形架構の内側に、面状部材を取り付けて建物を補強する補強用制震耐力壁構造に関する。
わが国では、東日本大震災や阪神淡路大震災等の大規模な地震が頻発しており、今後も、例えば東海地震、東南海地震、南海地震等の大規模な地震の発生が予測されることから、特に都市部における木造の建物に対して、耐震改修を行うことが要望されている。また、阪神淡路大震災を受けて、平成10年度に、例えば木造の軸組工法による建物に関して、大規模な地震にも耐え得るように新たな耐震基準が導入され、その後に建築された一般の戸建て住宅等の木造の建物については、一定の耐震性能が確保されているが、それ以前に建築された既存の木造の建物については、新規に導入された耐震基準を満たすものではないことから、耐震改修する必要性に迫られている。
一方、軸組工法による木造の建物の壁に制震性を付与する構造として、耐力壁を構成する面状部材を利用して、耐力壁として必要な壁倍率を確保しつつ所望の制震性能を得ることが可能な、簡易な構成の制震耐力壁構造に関する種々の研究がなされており、また実際の建物に適用することが可能な、施工性に優れると共に汎用や規格化に適した制震耐力壁構造も開発されている(例えば、特許文献1参照)。
特開2009−84876号公報
特許文献1の制震耐力壁構造では、住宅建築物等の建物を新築する際には、木造の建物の壁部分に容易に設けることが可能あるが、例えば木造の軸組工法による既存の建物は、壁の骨組み構造を構成する、矩形架構の左右一対の垂直材と上下一対の横架材が、一般に105mm、120mm、135mm、又は150mmの幅の角材を用いて形成されていて、矩形架構は、一般に105mm、120mm、135mm、又は150mmの狭い奥行きしか有しておらず、また矩形架構の上部は、天井材の上方に形成された天井懐部に配置されていることから、例えば木造の軸組工法による既存の建物を特許文献1の制震耐力壁構造によって耐震改修しようとすると、壁の壁面材や壁下地材の他、天井材や天井下地材をも撤去する必要を生じて、大掛かりで手間のかかる作業を要することになると共に、施工コストが増大することになる。
本発明は、天井材や天井下地材を残置したまま、簡易な作業によって、既存の木造の建物の壁部分を、耐力壁として必要な壁耐力を確保しつつ所望の制震性能を発揮できるように、効果的に耐震補強することのできる補強用制震耐力壁構造を提供することを目的とする。
本発明は、既存の木造の建物の壁部分の骨組として形成された、上下一対の横架材と左右一対の垂直材とからなる矩形架構の内側に、面状部材を取り付けて建物を補強する補強用制震耐力壁構造であって、前記面状部材は、前記矩形架構の内側の開口形状を縦方向分割線及び横方向分割線によって4分割した形状に近似する、略縦長矩形形状を備える左右一対及び上下2段の4枚の分割面状部材からなり、上段の左右一対の分割面状部材は、対向配置される一方の側辺部同士が制震ゴムを挟み込んで互いに接合されると共に、他方の側辺部が縁部接合金物を用いて前記垂直材の内側面に接合固定され、且つ上辺部が縁部接合金物を用いて上方の横架材の内側面に接合固定された状態で、前記矩形架構の内側の上半部分に取り付けられており、下段の左右一対の分割面状部材は、対向配置される一方の側辺部同士が制震ゴムを挟み込んで互いに接合されると共に、他方の側辺部が縁部接合金物を用いて前記垂直材の内側面に接合固定され、且つ下辺部が縁部接合金物を用いて下方の横架材の内側面に接合固定された状態で、前記矩形架構の内側の下半部分に取り付けられており、上段の左右一対の分割面状部材の下辺部と、下段の左右一対の分割面状部材の上辺部とが、中間部接合金物を介して接合固定されており、前記縁部接合金物は、L字断面形状部分を有する金物となっており、一対の前記垂直材の中間部分の内側面に、木製角材からなる中間部受け材が取り付けられており、該中間部受け材に、前記分割面状部材の他方の側辺部の背面側縁部分が密着しており、前記縁部接合金物は、天井懐部において、L字断面形状部分の長辺部を、上段の左右一対の前記分割面状部材の上辺部の表面に沿わせると共に、短辺部を、上方の前記横架材の内側面に沿わせた状態で、上段の左右一対の前記分割面状部材を、上方の前記横架材の内側面に接合固定している補強用制震耐力壁構造を提供することにより、上記目的を達成したものである。
そして、本発明の補強用制震耐力壁構造は、前記中間部接合金物が、平板形状を備える金物となっていることが好ましい。
また、本発明の補強用制震耐力壁構造は、前記分割面状部材の対向配置される一方の側辺部に接合補強金物が各々取り付けられており、該接合補強金物の間に前記制震ゴムが挟み込まれていることが好ましい。
さらに、本発明の補強用制震耐力壁構造は、前記面状部材の一方の側辺部における上下方向の中間部分を除いたこれの上方部分及び下方部分が、縦長に切り欠かれていることが好ましい。
さらにまた、本発明の補強用制震耐力壁構造は、前記面状部材の他方の側辺部における上下方向の上半部分又は下半部分が、縦長に切り欠かれていることが好ましい。
本発明の補強用制震耐力壁構造によれば、天井材や天井下地材を残置したまま、簡易な作業によって、既存の木造の建物の壁部分を、耐力壁として必要な壁耐力を確保しつつ所望の制震性能を発揮できるように、効果的に耐震補強することができる。
本実施形態の好ましい一実施形態に係る補強用制震耐力壁構造の構成を説明する、部分透視斜視図である。 図1のA−Aに沿った断面図である。 (a)は、本実施形態の好ましい一実施形態に係る補強用制震耐力壁構造の構成を説明する、矩形架構を除いた状態で示す正面図、(b)は、(a)のB−Bに沿った断面図である。 (a)は縁部接合金物の正面図、(b)は(a)を左側から見た側面図である。 (a)は中間部接合金物の正面図、(b)は(a)を右側から見た側面図である。 (a)は制震ゴムを挟み込んだ一対の接合部補強金物の正面図、(b)は(a)のC−Cに沿った断面図である。 (a)〜(d)は、本実施形態の好ましい一実施形態に係る補強用制震耐力壁構造を施工する際の工程を説明する略示正面図である。
図1及び図2に示す本発明の好ましい一実施形態に係る補強用制震耐力壁構造10は、例えば平成10年度に導入された新しい耐震基準以前の、旧来の耐震基準に基づいて建築された木造の軸組工法による既存の建物として、例えば既存の木造住宅建築物の壁30を、面状部材14を用いて、好ましくは天井材25や天井下地材(図示せず)を残置したまま、且つ既存の筋交い31(図2、図7参照)を取り外さなくても施工できる場合には当該筋交い31を残置したまま、簡易な作業によって効率良く耐震補強して、新しい耐震基準を満たすように効果的に耐震改修できるようにする壁構造として採用されたものである。
例えば、平成10年度以前に建築された木造の軸組工法による既存の建物は、壁の骨組み構造を構成する、矩形架構13の上下一対の横架材11a,11bと左右一対の垂直材12a,12bが、一般に105mm、120mm、135mm、又は150mm(本実施形態では105mm)の幅の角材を用いて形成されていて、矩形架構13は、一般に105mm、120mm、135mm、又は150mm(本実施形態では105mm)の狭い奥行きしか有しておらず、また矩形架構13の上部は、天井材25や天井下地材の上方に形成された天井懐部26に配置されていることから、既存の建物の壁30を面状部材14によって補強しようとすると、壁30の壁面材や壁下地材の他、天井材25や天井下地材をも撤去する必要を生じることになる。本実施形態の補強用制震耐力壁構造10は、このような既存の建物の壁30を、天井材25や天井下地材を残置したまま、且つ好ましくは既存の筋交い31を残置したまま、建物の屋内での簡易な作業によって、面状部材14を取り付けることを可能にして、効果的に耐震改修できるようにする構造として採用されたものである。
また、本実施形態の補強用制震耐力壁構造10は、制震ゴム20(図6(a)、(b)参照)を挟み込んだ状態で設けられていることによって、耐力壁として必要な好ましくは短期基準耐力が0.9〜14.0kN/mの壁耐力を確保しつつ、所望の制震性能を発揮できるようにする機能を備えている。
そして、本実施形態の補強用制震耐力壁構造10は、既存の木造の建物の壁部分の骨組として形成された、上下一対の横架材11a,11bと左右一対の垂直材12a,12bとからなる矩形架構13の内側に、面状部材14を取り付けて建物を補強する補強用の壁構造であって、図1〜図3(a)、(b)に示すように、面状部材14は、矩形架構13の内側の開口形状を縦方向分割線及び横方向分割線によって4分割した形状に近似する、略縦長矩形形状を備える左右一対及び上下2段の4枚の分割面状部材14a,14b,14c,14dからなり、上段の左右一対の分割面状部材14a,14bは、対向配置される一方の側辺部15a,15b同士が制震ゴム20(図6(a)、(b)参照)を挟み込んで互いに接合されると共に、他方の側辺部16a,16bが縁部接合金物22を用いて垂直材12a,12bの内側面に接合固定され、且つ上辺部17a,17bが縁部接合金物22を用いて上方の横架材11aの内側面(下面)に接合固定された状態で、矩形架構13の内側の上半部分に取り付けられている。下段の左右一対の分割面状部材14c,14dは、対向配置される一方の側辺部15c,15d同士が制震ゴム20(図6(a)、(b)参照)を挟み込んで互いに接合されると共に、他方の側辺部16c,16dが縁部接合金物22を用いて垂直材12a,12bの内側面に接合固定され、且つ下辺部17c,17dが縁部接合金物22を用いて下方の横架材11bの内側面(上面)に接合固定された状態で、矩形架構13の内側の下半部分に取り付けられている。上段の左右一対の分割面状部材14a,14bの下辺部18a,18bと、下段の左右一対の分割面状部材14c,14dの上辺部18c,18dとが、中間部接合金物23を介して接合固定されている。
また、本実施形態では、一対の垂直材12a,12bの中間部分の内側面に、中間部受け材19(図2、図7(a)参照)が取り付けられており、この中間部受け材19に、分割面状部材14a,14b,14c,14dの他方の側辺部16a,16b,16c,16dの背面側縁部分が密着している。
さらに、本実施形態では、分割面状部材14a,14b,14c,14dの対向配置される一方の側辺部14a,14b,14c,14dに接合補強金物21が各々取り付けられており、これらの接合部補強金物21の間に制震ゴム20が挟み込まれている(図2参照)。
本実施形態では、建物の壁部分の骨組である矩形架構13を構成する上下一対の横架材11a,11bは、土台や梁の他、下枠、上枠、頭繋等を含むものであり、例えば木製の角材を用いて設置される。上方横架材11a及び下方横架材11bは、例えば1800〜3500mm程度の高さ方向の中心間間隔をおいて横方向に平行に延設することにより、矩形架構13の上下の短辺部分を形成している。
なお、本実施形態では、左右一対の垂直材12a,12bの端部の上下の横架材11a,11bへの接合は、例えば短ほぞ差しによって行われると共に、適宜引寄せ金物等を用いて、接合部分の固定状態が補強されている。また、本実施形態では、矩形架構13の内側領域に、補強用の1本の既存の筋交い31が、矩形架構13の上端部分の一方の角部から下端部分の他方の角部に向けて対角線方向に斜めに架設されて(図7参照)、取り付けられている。筋交い31は、本実施形態では、矩形架構13の背面側に片寄せて取り付けられており(図2参照)、これによって既存の筋交い31を矩形架構13の内側領域に残置したまま、筋交い31よりも表面側の部分において、補強用制震耐力壁構造10を形成できるようになっている。
矩形架構13の内側に取り付けられる面状部材14は、本実施形態では、好ましくは例えば厚さが24mm程度のスギ材からなる構造用合板を用いて形成されており、矩形架構13の内側の開口形状を縦方向分割線及び横方向分割線によって4分割した形状に近似する、略縦長矩形形状を備える、左右一対及び上下2段の4枚の分割面状部材14a,14b,14c,14dを、組み合わせることによって構成されている。
図1を正面側から見て、矩形架構13の内側の開口形状の上段左側に配置される分割面状部材14aは、図3(a)にも示すように、対向配置される一方の側辺部15aにおける、上下方向の中間部分を除いたこれの上方部分及び下方部分が縦長に切り欠かれていると共に、他方の側辺部16aにおける上下方向の上半部分が縦長に切り欠かれており、且つ上辺部17aにおける内側角部が斜めに切り欠かれた、略縦長矩形形状を備えている。
図1を正面側から見て、矩形架構13の内側の開口形状の上段右側に配置される分割面状部材14bは、図3(a)にも示すように、対向配置される一方の側辺部15bにおける、上下方向の中間部分を除いたこれの上方部分及び下方部分が縦長に切り欠かれていると共に、他方の側辺部16bにおける上下方向の上半部分が縦長に切り欠かれており、且つ上辺部17bにおける内側角部が斜めに切り欠かれた、略縦長矩形形状を備えている。
図1を正面側から見て、矩形架構13の内側の開口形状の下段左側に配置される分割面状部材14cは、図3(a)にも示すように、対向配置される一方の側辺部15cにおける、上下方向の上方部分が縦長に切り欠かれていると共に、他方の側辺部16cにおける上下方向の下半部分が縦長に切り欠かれており、且つ下辺部17cにおける内側角部が斜めに切り欠かれた、略縦長矩形形状を備えている。
図1を正面側から見て、矩形架構13の内側の開口形状の下段右側に配置される分割面状部材14dは、図3(a)にも示すように、対向配置される一方の側辺部15dにおける、上下方向の上方部分が縦長に切り欠かれていると共に、他方の側辺部16dにおける上下方向の下半部分が縦長に切り欠かれており、且つ下辺部17dにおける内側角部が斜めに切り欠かれた、略縦長矩形形状を備えている。
4枚の分割面状部材14a,14b,14c,14dは、これらの部材の他方の側辺部16a,16b,16c,16dを、縁部接合金物22を用いて垂直材12a,12bの内側面に接合固定すると共に、上辺部17a,17bや下辺部17c,17dを、上方の横架材11aの内側面(下面)や、下方の横架材11bの内側面(上面)に接合固定し、さらに、対向配置された上段の一方の側辺部15c,15d同士、及び下段の一方の側辺部15c,15d同士を、好ましくは接合補強金物21を介在させて、制震ゴム20を挟み込んだ状態で接合すると共に、上段の分割面状部材14a,14bの下辺部18a,18bと、下段の分割面状部材14c,14dの上辺部18c,18dとを、中間部接合金物23を用いて突き合わせた状態で接合固定することによって、これらが一体となった面状部材14として、矩形架構13の内側に取り付けられることになる。
ここで、分割面状部材14a,14b,14c,14dを、垂直材12a,12bの内側面や横架材11bの内側面に接合固定する縁部接合金物22は、図4(a)、(b)に示すように、例えば1mm程度の厚さの金属プレートに、L字断面形状を備えるように折曲げ加工を施すと共に、孔開け加工を施したものを、好ましく用いることができる。これによって縁部接合金物22は、L字断面形状部分を有することになる。本実施形態では、このような縁部接合金物22として、より具体的には、例えば商品名「背割りコーナー」(カネシン製)を、好ましく用いることができる。
本実施形態では、縁部接合金物22は、L字断面形状部分の長辺部22a及び短辺部22bの各々に、例えば固定ビスを打ち込むための複数の打込み孔22cが開口形成されている。図1及び図2に示すように、縁部接合金物22の長辺部22aを、分割面状部材14a,14b,14c,14dの側辺部16a,16b,16c,16dや上辺部17a,17bや下辺部17c,17dの表面に沿わせると共に、短辺部22bを、垂直材12a,12bの内側面や横架材11a,11bの内側面に沿わせた状態で、打込み孔22cを介して、分割面状部材14a,14b,14c,14dや垂直材12a,12bや横架材11bに向けて、固定ビス等を打ち込むことにより、分割面状部材14a,14b,14c,14dを、垂直材12a,12bの内側面や横架材11bの内側面に接合固定できるようになっている。
本実施形態では、縁部接合金物22は、上段の分割面状部材14a,14bの他方の側辺部16a,16bに各々5箇所に配置され、下段の分割面状部材14c,14dの他方の側辺部16c,16dに各々5箇所に配置され、且つ上段の分割面状部材14a,14bの他方の側辺部16a,16bと下段の分割面状部材14c,14dの他方の側辺部16c,16dとの境目部分に、上段の分割面状部材14a,14bと下段の分割面状部材14c,14dとに跨るようにして、各々1箇所に配置された状態で、取り付けられている。また、縁部接合金物22は、上段の分割面状部材14a,14bの上辺部17a,17bに各々2箇所に配置され、下段の分割面状部材14c,14dの下辺部17c,17dに各々2箇所に配置された状態で、取り付けられている。
上段の分割面状部材14a,14bの下辺部18a,18bと、下段の分割面状部材14c,14dの上辺部18c,18dとを接合固定する中間部接合金物23は、図5(a)、(b)に示すように、例えば0.6mm程度の厚さの、略縦長矩形形状を有する平板形状の金属プレートからなり、中央の分割線23dを挟んだ両側部分23a,23bに、例えば固定ビスを打ち込むための複数の打込み孔23cが、各々開口形成されている。また、中間部接合金物23には、分割線23dから片側に凹形状の切込みを形成すると共に、切込みの内側部分を垂直に折り立たせることによって、係止爪23eが設けられている。本実施形態では、このような中間部接合金物23として、より具体的には、例えば商品名「フィックステンプレ−ト」(カネシン製)を、好ましく用いることができる。
本実施形態では、中間部接合金物23は、矩形架構13の内側に4枚の分割面状部材14a,14b,14c、14dが取り付けられた後に、好ましくは突き合わされた状態の上段の分割面状部材14a,14bの下辺部18a,18bと下段の分割面状部材14c,14dの上辺部18c,18dとの境目部分に係止爪23eを差し込むようにしながら、分割面状部材14a,14b,14c,14dの表面側に、上段の分割面状部材14a,14bの下辺部18a,18bと下段の分割面状部材14c,14dの上辺部18c,18dとに跨るようにして取り付けられる。しかる後に、打込み孔23cを介して、分割面状部材14a,14b,14c,14dの下辺部18a,18bや上辺部18c,18dに向けて、固定ビス等を打ち込むことにより、上段の分割面状部材14a,14bの下辺部18a,18bと、下段の分割面状部材14c,14dの上辺部18c,18dとを、好ましくは突き合わせた状態で、当該中間部接合金物23を介して接合固定できるようになっている。
分割面状部材14a,14b,14c,14dの対向配置される一方の側辺部15a,15b,15c,15dに各々取り付けられる接合補強金物21は、分割面状部材14a,14b,14c,14dの一方の側辺部15a,15b,15c,15dを挟んで、これの表裏の両側に一対の補強枠材27が添設された部分となっている(図1、図2参照)、当該接合補強金物21の取付け部位の外周形状に沿った、コの字断面形状を備えるように折り曲げ加工されると共に、例えば300mm程度の長さを有するように形成されている。接合補強金物21は、図6(a)、(b)に示すように、前面板21a及び一対の側面板21bからなるコの字断面形状を備えており、一対の側面板21bには、複数のビス孔21cが穿孔形成されている。これらのビス孔21cを介して、補強枠材27に向けて固定ビスを打ち込むことにより、コの字断面形状の接合補強金物22を、補強枠材27を介在させた状態で、分割面状部材14a,14b,14c,14dの一方の側辺部15a,15b,15c,15dに、強固に固定できるようになっている。
本実施形態では、接合補強金物21は、一対の当該接合補強金物21の前面板21aの間に、例えば5mm程度の厚さの制震ゴム20を挟み込んだ状態で予め一体化された、制震ゴムユニット24を形成している。制震ゴムユニット24は、分割面状部材14a,14b,14c,14dの一方の側辺部15a,15b,15c,15dの表裏の両側に、一対の補強枠材27が添設された接合補強金物21の取付け部位において、両側の各々の接合補強金物21を、分割面状部材14a,14b,14c,14dの対向配置された両側の一対の一方の側辺部15a,15b,15c,15dに各々固定することによって、分割面状部材14a,14b,14c,14dに取り付けられる。これによって、図1及び図3(a)に示すように、上段の左右一対の分割面状部材14a,14bの対向配置された一方の側辺部15a,15b同士を、制震ゴム20を挟み込んだ状態で互いに接合すると共に、下段の左右一対の分割面状部材14c,14dの対向配置された一方の側辺部15c,15d同士を、制震ゴム20を挟み込んで互いに接合することがきるようになっている。
分割面状部材14a,14b,14c,14dの対向配置された一方の側辺部15a,15b,15c,15dの間に挟み込まれる制震ゴム20は、制震ゴムとしてとして知られる種々のゴム材料を用いて形成することができる。制震ゴム20は、好ましくは特開2009−84876号公報に記載されるような、振幅が増加しても、剛性の増加が頭打ちになる性質を備えるものを用いることができる。
また、本実施形態では、一対の垂直材12a,12bの中間部分の内側面に、中間部受け材19(図7(a)参照)が取り付けられており、この中間部受け材19に、分割面状部材14a,14b,14c,14dの他方の側辺部16a,16b,16c,16dの背面側縁部分が密着した状態となっている(図2参照)。
中間部受け材19は、例えば75mm×45mmの木製角材からなり、図1及び図3(a)、(b)に示すように、分割面状部材14a,14b,14c,14dの他方の側辺部16a,16b,16c,16dにおける、切り欠かれた上半部分又は下半部分を除いた、切り欠かれていない下半部分又は上半部分の長さの略2倍の長さを有している。中間部受け材19は、一対の垂直材12a,12bの内側面に縁部接合金物22を用いて接合固定される、他方の側辺部16a,16b,16c,16dの切り欠かれていない下半部分又は上半部分が配置される部分となる、垂直材12a,12bの中間部分において、例えば固定ねじ19aを、矩形架構13の内側から、一対の垂直材12a,12bに向けて複数本ねじ込むことによって、垂直材12a,12bの内側面に強固に固定されている。
中間部部受け材19には、矩形架構12の内側領域に上段の一対の分割面状部材14a,14bや下段の一対の分割面状部材14c,14dを固定する際に(図7(b)、(c)参照)、上段の分割面状部材14a,14bや下段の分割面状部材14c,14dの他方の側辺部16a,16b,16c,16dの背面側縁部分を当接させて、分割面状部材14a,14b,14c,14dの矩形架構12の奥行き方向の位置を位置決めするようになっている。この結果、本実施形態の補強用制震耐力壁構造10では、中間部受け材19に、分割面状部材14a,14b,14c,14dの他方の側辺部16a,16b,16c,16dの背面側縁部分が、密着した状態となっている(図2参照)。
本実施形態では、以下のような施工方法によって、好ましくは屋内での作業により、天井材25及び天井下地材に加えて、好ましくは筋交い31を残置したまま、軸組工法による既存の木造住宅建築物の壁30に補強用制震耐力壁構造10を形成することで、木造住宅建築物を耐震補強することができる。
すなわち、本実施形態では、例えば図7(a)〜(d)に示すように、天井材25よりも下方の部分の壁30の表面側の壁面材、及び壁下地材を撤去して、天井材25及び天井下地材を残したまま施工されるようになっており、壁30の表面側の壁面材、及び壁下地材を撤去したら、一対の垂直材12a,12bの中間部分の内側面に、分割面状部材14a,14b,14c,14dの他方の側辺部16a,16b,16c,16dの背面側縁部分を当接させるための、中間部受け材19を取り付ける(図7(a)参照)。
しかる後に、制震ゴムユニット24及び補強枠材27を介在させて接合一体化された、矩形架構13の内側領域の横幅と同様の横幅を有する、上段の一対の分割面状部材14a,14bを、両側の他方の側辺部16a,16bの背面側縁部分を中間部受け材19に当接させることで、矩形架構12の奥行き方向の位置を位置決めした状態で、各々の他方の側辺部16a,16bを縁部接合金物22を用いて垂直材12a,12bの内側面に接合すると共に、上辺部17a,17bを縁部接合金物22を用いて上方の横架材11aの内側面(下面)に接合することにより、矩形架構13の内側領域に固定する(図7(b)参照)。
次に、制震ゴムユニット24及び補強枠材27を介在させて接合一体化された、矩形架構13の内側領域の横幅と同様の横幅を有する、下段の一対の分割面状部材14c,14dを、両側の他方の側辺部16c,16dの背面側縁部分を中間部受け材19に当接させることで、矩形架構12の奥行き方向の位置を位置決めした状態で、各々の他方の側辺部16c,16dを縁部接合金物22を用いて垂直材12a,12bの内側面に接合すると共に、下辺部17c,17dを縁部接合金物22を用いて下方の横架材11bの内側面(上面)に接合することにより、矩形架構13の内側領域に固定する(図7(c)参照)。
さらに、上下方向に隣接する上段側の分割面状部材14a,14bの下辺部18a,18bと、下段側の分割面状部材14c,14dの上辺部18c,18dとを、中間部接合金物23を介して、好ましくは突き合わせた状態で接合固定することによって、本実施形態の補強用制震耐力壁構造10を形成することができる。
ここで、上段の左右一対の分割面状部材14a,14bの対向配置された一方の側辺部15a,15bと、下段の左右一対の分割面状部材14c,14dの対向配置された一方の側辺部15c,15dは、制震ゴムユニット24の接合補強金物21及び補強枠材27が取り付けられる部分を除いて、縦長に切り欠かれており、これによって上段の分割面状部材14a,14bの接合補強金物21及び補強枠材27が取り付けられる部分と、下段の分割面状部材14c,14dの接合補強金物21及び補強枠材27が取り付けられる部分との間には、間隔が保持されている(図7(c),(d)参照)。この間隔部分に既存の筋交い31を通すことで、当該接合補強金物21及び補強枠材27が取り付けられた部分が相当の厚さを有していても、既存の筋交い31と干渉させることなく、上段の分割面状部材14a,14bや下段の分割面状部材14c,14dを取り付けることが可能になる。
また、上段の左右一対の分割面状部材14a,14bの他方の側辺部16a,16bの上半部分と、下段の左右一対の分割面状部材14c,14dの他方の側辺部16c,16dの下半部分とが縦長に切り欠かれており、これによって上段の分割面状部材14a,14bの、上方の横架材11aと垂直材12a,12bとの角部分や、下段の分割面状部材14c,14dの、下方の横架材11bと垂直材12a,12bとの角部分には、垂直材12a,12bの内側面に沿って縦長の間隔部分が形成されている(図7(c),(d)参照)。これによって、上方の横架材11aと垂直材12a,12bとの角部分や、下方の横架材11bと垂直材12a,12bとの角部分に、引き寄せ金物等の接合金物が配置されている場合でも、これらの接合金物と干渉させることなく、上段の分割面状部材14a,14bや下段の分割面状部材14c,14dを取り付けることが可能になる。
補強用制震耐力壁構造10を形成したら、補強用制震耐力壁構造10が設けられた壁30の、壁面材及び壁下地材が撤去された表面側を覆って、石膏ボード等からなる表面側の壁下地材を取り付けると共に、壁仕上げ用の壁面材を取り付け、さらに、必要に応じて取り外した床板下地材や床面材を取り付け直すことによって、既存の木造住宅建築物の壁30を耐震補強する作業を終了する。
そして、上述の構成を備える本実施形態の補強用制震耐力壁構造10によれば、天井材25や天井下地材を残置したまま、簡易な作業によって、既存の木造の建物の壁30を、耐力壁として必要な壁耐力を確保しつつ所望の制震性能を発揮できるように、効果的に耐震補強することが可能になる。
すなわち、本実施形態によれば、補強用制震耐力壁構造10は、上段の左右一対の分割面状部材14a,14bが、対向配置される一方の側辺部15a,15b同士が制震ゴム20を挟み込んで互いに接合されていると共に、他方の側辺部16a,16bが縁部接合金物22を用いて垂直材12a,12bの内側面に接合固定され、且つ上辺部17a,17bが縁部接合金物22を用いて上方の横架材11aの内側面に接合固定された状態で、矩形架構13の内側の上半部分に取り付けられており、下段の左右一対の分割面状部材14c,14dが、対向配置される一方の側辺部15c,15d同士が制震ゴム20を挟み込んで互いに接合されていると共に、他方の側辺部16c,16dが縁部接合金物22を用いて垂直材12a,12bの内側面に接合固定され、且つ下辺部17c,17dが縁部接合金物22を用いて下方の横架材11bの内側面に接合固定された状態で、矩形架構13の内側の下半部分に取り付けられており、上段の左右一対の分割面状部材14a,14bの下辺部18a,18bと、下段の左右一対の分割面状部材14c,14dの上辺部18c,18dとが、中間部接合金物23を介して、好ましくは突き合わされた状態で接合固定されている。
これによって、本実施形態によれば、上段の一対の分割面状部材14a,14bを、矩形架構13の内側領域に固定する際に、上辺部17a,17bに縁部接合金物22が取り付けられた分割面状部材14a,14bの上端部を天井懐部26に差し込んで、上辺部17a,17bを、縁部接合金物22の短辺部22bと共に上方の横架材11aの内側面に当接させた状態で、短辺部22bの打込み孔22cに固定ビス等を打ち込むことにより、分割面状部材14a,14bを横架材11abの内側面に接合固定するので、天井材25や天井下地材を残置したまま、簡易な作業によって、上段の分割面状部材14a,14bを矩形架構13の内側領域に容易に固定することが可能になる。
ここで、上段の分割面状部材14a,14bの上辺部17a,17bに取り付けられた縁部接合金物22の、短辺部22bに設けられた打込み孔22cに固定ビス等を打ち込む作業は、天井懐部26における、狭い空間での作業になるが、例えばL型ビットや長ビットを使用したビス打込み装置を用いることによって、このような幅の狭い空間において、上方の横架材11aの内側面に向けて、縁部接合金物22の短辺部22bの打込み孔22cに固定ビス等を打ち込む作業を、容易に行うことが可能になる。
また、本実施形態によれば、面状部材14は、上段の一対の分割面状部材14a,14bや下段の一対の分割面状部材14c,14dの間に制震ゴム20を挟み込むと共に、これらの他方の側辺部16a,16b,16c,16dや上辺部17a,17bや下辺部17c,17dを、縁部接合金物22を用いて垂直材12a,12bの内側面や上方の横架材11aや下方の横架材11bに接合固定した状態で、矩形架構13の内側領域の略全体に取り付けられているので、特開2009−84876号公報に記載の制震耐力壁構造と同様の機能を発揮して、好ましくは短期基準耐力が0.9〜14.0kN/mの壁耐力を確保しつつ、所望の制震性能を発揮できるように、木造の軸組工法による既存の建物の壁30を、効果的に耐震補強することが可能になる。
なお、本発明は上記実施形態に限定されることなく種々の変更が可能である。例えば、垂直材の中間部分の内側面に、分割面状部材の他方の側辺部の背面側縁部分を密着させる中間部受け材を取り付ける必要は必ずしもない。また、分割面状部材の対向配置される一方の側辺部に、制震ゴムを挟み込む接合補強金物を取り付ける必要は必ずしもない。
10 補強用制震耐力壁構造
11a,11b 横架材
12a,12b 垂直材
13 矩形架構
14 面状部材
14a,14b,14c,14d 分割面状部材
15a,15b,15c,15d 一方の側辺部
16a,16b,16c,16d 他方の側辺部
17a,17b 上辺部
17c,17d 下辺部
18a,18b 下辺部
18c,18d 上辺部
19 中間部受け材
20 制震ゴム
21 接合補強金物
22 縁部接合金物
22a 長辺部
22b 短辺部
22c 打込み孔
23 中間部接合金物
23a,23b 両側部分
23c 打込み孔
23d 分割線
23e 係止爪
24 制震ゴムユニット
25 天井材
26 天井懐部
27 補強枠材
30 壁
31 筋交い

Claims (5)

  1. 既存の木造の建物の壁部分の骨組として形成された、上下一対の横架材と左右一対の垂直材とからなる矩形架構の内側に、面状部材を取り付けて建物を補強する補強用制震耐力壁構造であって、
    前記面状部材は、前記矩形架構の内側の開口形状を縦方向分割線及び横方向分割線によって4分割した形状に近似する、略縦長矩形形状を備える左右一対及び上下2段の4枚の分割面状部材からなり、
    上段の左右一対の分割面状部材は、対向配置される一方の側辺部同士が制震ゴムを挟み込んで互いに接合されると共に、他方の側辺部が縁部接合金物を用いて前記垂直材の内側面に接合固定され、且つ上辺部が縁部接合金物を用いて上方の横架材の内側面に接合固定された状態で、前記矩形架構の内側の上半部分に取り付けられており、
    下段の左右一対の分割面状部材は、対向配置される一方の側辺部同士が制震ゴムを挟み込んで互いに接合されると共に、他方の側辺部が縁部接合金物を用いて前記垂直材の内側面に接合固定され、且つ下辺部が縁部接合金物を用いて下方の横架材の内側面に接合固定された状態で、前記矩形架構の内側の下半部分に取り付けられており、
    上段の左右一対の分割面状部材の下辺部と、下段の左右一対の分割面状部材の上辺部とが、中間部接合金物を介して接合固定されており、
    前記縁部接合金物は、L字断面形状部分を有する金物となっており、
    一対の前記垂直材の中間部分の内側面に、木製角材からなる中間部受け材が取り付けられており、該中間部受け材に、前記分割面状部材の他方の側辺部の背面側縁部分が密着しており、
    前記縁部接合金物は、天井懐部において、L字断面形状部分の長辺部を、上段の左右一対の前記分割面状部材の上辺部の表面に沿わせると共に、短辺部を、上方の前記横架材の内側面に沿わせた状態で、上段の左右一対の前記分割面状部材を、上方の前記横架材の内側面に接合固定している補強用制震耐力壁構造。
  2. 前記中間部接合金物は、平板形状を備える金物となっている請求項1記載の補強用制震耐力壁構造。
  3. 前記分割面状部材の対向配置される一方の側辺部に接合補強金物が各々取り付けられており、該接合補強金物の間に前記制震ゴムが挟み込まれている請求項1又は2記載の補強用制震耐力壁構造。
  4. 前記面状部材は、一方の側辺部における上下方向の中間部分を除いたこれの上方部分及び下方部分が、縦長に切り欠かれている請求項1〜3のいずれか1項記載の補強用制震耐力壁構造。
  5. 前記面状部材は、他方の側辺部における上下方向の上半部分又は下半部分が、縦長に切り欠かれている請求項1〜4のいずれか1項記載の補強用制震耐力壁構造。
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