以下、一実施形態を説明する。
一実施形態の画像表示装置1000は、2次元のカラー画像を表示するヘッドアップディスプレイ(HUD)であり、図1に装置の全体を説明図的に示す。
画像表示装置1000は、一例として、車両、航空機、船舶等の移動体に搭載され、該移動体のフロントガラス10(フロントウインドシールド)を介して該移動体の操縦に必要なナビゲーション情報(例えば移動体の速度、位置、進行方向等の情報)を視認可能にする。この場合、フロントガラス10は、入射された光の一部を透過させ、残部の少なくとも一部を反射させる透過反射部材としても機能する。以下では、移動体に設定されたabc3次元直交座標系(移動体と共に移動する座標系)を適宜用いて説明する。ここでは、a方向は、移動体の左右方向(+a方向が右方向、−a方向が左方向)であり、b方向は、移動体の上下方向(+b方向が上方向、−b方向が下方向)であり、c方向は、移動体の前後方向(−c方向が前方向、+c方向が後方向)である。以下では、画像表示装置1000が車両(例えば自動車)に搭載される例を説明する。
図1において、符号100で示す部分は「光源部」であり、この光源部100からカラー画像表示用の画素表示用ビームLCが出射される。
画素表示用ビームLCは、赤(以下「R」と表示する。)、緑(以下「G」と表示する。)、青(以下「B」と表示する。)の3色のビームを1本に合成したビームである。
即ち、光源部100は、例えば、図2の如き構成となっている。
図2において、符号RS、GS、BSで示す光源としての半導体レーザは、それぞれR、G、Bのレーザ光を放射する。ここでは、各半導体レーザとして、端面発光レーザとも呼ばれるレーザダイオード(LD)が用いられている。
符号RCP、GCP、BCPで示すカップリングレンズは、半導体レーザRS、GS、BSから出射される各レーザ光の発散性を抑制する。
カップリングレンズRCP、GCP、BCPにより発散性を抑制された各色レーザ光束は、アパーチュアRAP、GAP、BAPにより整形される(光束径を規制される)。
整形された各色レーザ光束はビーム合成プリズム101に入射する。
ビーム合成プリズム101は、R色光を透過させG色光を反射するダイクロイック膜D1と、R・G色光を透過させB色光を反射するダイクロイック膜D2を有する。
従って、ビーム合成プリズム101からは、R、G、Bの各色レーザ光束が1本の光束に合成されて出射される。
出射される光束は、レンズ102により所定の光束径の「平行ビーム」に変換される。
この「平行ビーム」が、画素表示用ビームLCである。
画素表示用ビームLCを構成するR、G、Bの各色レーザ光束は、表示するべき「2次元のカラー画像」の画像信号により(画像データに応じて)強度変調されている。
ここでは、半導体レーザRS、GS、BSは、光源駆動手段としてのLDドライバ6111により、R、G、Bの各色成分の画像信号により発光強度を変調(直接変調)される。すなわち、LDドライバ6111は、後述するFPGA600からの点灯トリガ信号に基づいて各半導体レーザに駆動電流を印加して該半導体レーザを発光させる(点灯する)。なお、直接変調に代えて、各半導体レーザから出射されたレーザ光を光変調器で変調(外部変調)しても良い。
光源部100から出射された画素表示用ビームLCは、光走査素子としての2次元偏向手段6に入射し、2次元的に偏向される。
2次元偏向手段6は、本実施形態では、微小なミラーを「互いに直交する2軸」を揺動軸として揺動するように構成されたものである。
すなわち、2次元偏向手段6は、具体的には、半導体プロセス等で微小揺動ミラー素子として作製されたMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)ミラーを含む2次元スキャナである。2次元偏向手段6は、MEMSコントローラ615により制御される。
図4には、2次元偏向手段6の一例としての光偏向器15が平面図にて示されている。図4に示されるように、半導体プロセスにて製造されるMEMSミラーであり、反射面を有し、第1軸周りに揺動可能に第1枠部材151に支持されたミラー150と、第1枠部材151を第1軸に直交する第2軸周りに揺動可能に支持する支持体とを有する。支持体は、複数の梁が蛇行するように連結された一対の蛇行部152と、各蛇行部を支持する第2枠部材154とを有する。各蛇行部は、一端が第1枠部材151に接続され、他端が第2枠部材154に接続されている。各蛇行部の複数の梁には、複数の圧電部材156(例えばPZT)が個別に設けられている。各蛇行部の隣り合う2つの梁152a、152bに個別に設けられた2つの圧電部材156に異なる電圧を印加することで、隣り合う2つの梁152a、152bが異なる方向に撓み、それが累積されて、ミラー150が第2軸周りに大きな角度で揺動する。このような構成により、第2軸周りの光走査(例えば副走査方向の光走査)が、低電圧で可能となる。一方、第1軸周りには、例えばミラー150に接続されたトーションバー、該トーションバーと第1枠部材151との間に接続された、カンチレバーと圧電部材(例えばPZT)を含む圧電アクチュエータなどを利用した共振による光走査(例えば主走査方向の光走査)が行われる。また、光偏向器15は、ミラー150の第1軸周り、第2軸周りの揺動位置を検出する検出器を有し、該検出器の検出情報がMEMSコントローラ615に出力される。そこで、MEMSコントローラ615は、該検出情報に基づいて、ミラー150の第1軸周りの振れ角、第2軸周りの振れ角を所望の振れ角に制御する。
2次元偏向手段は、この例に限らず、他の構成のもの、例えば、1軸の回りに揺動する微小ミラー(例えばMEMSミラーやガルバノミラー)を2個、揺動方向が互いに直交するように組み合わせたものでも良い。また、2次元偏向手段として、2つのMEMSミラーの組み合わせや、2つのガルバノミラーの組み合わせや、2つのポリゴンミラーの組み合わせや、MEMSミラーとポリゴンミラーの組み合わせを採用しても良い。
上記の如く2次元的に偏向された画素表示用ビームLCは、走査ミラー7(例えば凹面鏡)に入射し、透過スクリーン8に向けて反射される。
走査ミラー7は、透過スクリーン8上で発生する走査線(走査軌跡)の曲がりを補正するように設計されている。
走査ミラー7により反射された画素表示用ビームLCは、2次元偏向手段6による偏向に伴い平行移動しつつ透過スクリーン8に入射し、該透過スクリーン8を2次元的に走査する。つまり、透過スクリーン8は、画素表示用ビームLCにより主走査方向及び副走査方向に2次元走査(例えばラスタースキャン)される。
この2次元走査により、透過スクリーン8に中間像としての「2次元のカラー画像」が形成される。ここでは、透過スクリーン8すなわち矩形の画像描画領域(有効走査領域とも呼ぶ)が2次元走査され、該画像描画領域に中間像が形成される(図3参照)。
そこで、光源部100、2次元偏向手段6及び走査ミラー7を含む光走査系と、後述する光検出器13とから、光により透過スクリーン8を走査する光走査装置500が構成されている。
勿論、透過スクリーン8に各瞬間に表示されるのは「画素表示用ビームLCが、その瞬間に照射している画素のみ」である。
カラーの2次元画像は、画素表示用ビームLCによる2次元的な走査により「各瞬間に表示される画素の集合」として形成される。
透過スクリーン8に、上記の如く「2次元のカラー画像」が形成され、該2次元のカラー画像を形成した画素表示用ビームLC、すなわち透過スクリーン8を透過した光が凹面ミラー9(凹面鏡)に入射し反射される。
図1には示されていないが、透過スクリーン8は、後述するように各画素表示用ビームLCを透過させる「微細凸レンズ構造」を有している。凹面ミラー9は「虚像結像光学系」を構成する。
透過スクリーン8の近傍には、上記光走査装置500からの走査光を検出(同期検出)するための光検出器13(図13参照)が配置されている。光検出器13は走査光を検出したときに、後述するFPGA600が有する同期検出信号検出部23(図13参照)に同期検出信号を出力する。FPGA600は、同期検出信号検出部23が同期検出信号を検出したときにLDドライバ6111に点灯トリガ信号(パルス信号)を出力する。LDドライバ6111は、FPGAからの点灯トリガ信号に基づいて各半導体レーザに駆動電流を印加する。
凹面ミラー9は、後に詳述するように、水平面に対して傾斜し、かつ湾曲したフロントガラス10の影響で透過スクリーン8に形成された「2次元のカラー画像」(中間像)の虚像Iにおける水平線(横線)が縦に凸形状となる2次元的な歪み及び垂直線(縦線)が横に凸形状となる2次元的な歪みを補正するように設計、配置されている。
「虚像結像光学系」は、前記「カラー画像」の虚像Iを結像させる。
虚像Iの結像位置の手前側には、フロントガラス10が配置され、虚像Iを結像する光束を、観察者(例えば移動体の操縦者)の側へ反射する。なお、観察者は、フロントガラス10(透過反射部材)で反射されたレーザ光の光路上のアイボックス(観察者の目の近傍の領域)から虚像Iを視認する。ここで、アイボックスは、視点の位置の調整をすることなく虚像Iが視認可能な範囲を意味する。
この反射光により、観察者は虚像Iを視認できる。
図1に示す場合には、a方向は通常、観察者にとって左右方向であり、この方向を「横方向」とも呼ぶ。そして、横方向(a方向)に直交する方向を「縦方向」とも呼ぶ。
透過スクリーン8は、上述の如く、微細凸レンズ構造を有している。
後述するように、微細凸レンズ構造は「複数の微細凸レンズ(マイクロレンズ)が、画素ピッチに近いピッチで密接して2次元配列された」ものである。すなわち、透過スクリーン8は、マイクロレンズアレイである。
ここでは、複数の微細凸レンズは、凸面が入射面となるように、仮想平面に沿って所定ピッチで2次元配列されている。その具体的な配列形態としては、例えばa方向(X方向)を行方向とし、上記仮想平面内でa方向に直交する一方向(Y方向)を列方向とするマトリクス状の配列や、ハニカム状の配列(ジグザグ状の配列)が挙げられる。
各微細凸レンズの平面形状は、例えば円形、正N角形(Nは3以上の自然数)等である。ここでは、微細凸レンズの各々は、互いに曲率(曲率半径)が等しい。
そして、個々の微細凸レンズは、画素表示用ビームLCを等方的に拡散させる機能を持つ。すなわち、各微細凸レンズは、全方位に均等な拡散パワーを持つ。以下に、この「拡散機能」を簡単に説明する。
図3において、符号L1〜L4は、透過スクリーン8に入射する4本の画素表示用ビームを示している。
これ等の4本の画素表示用ビームL1〜L4は、透過スクリーン8に形成される画像の4隅に入射する画素表示用ビームであるものとする。
これら4本の画素表示用ビームL1〜L4は、透過スクリーン8を透過すると、ビームL11〜L14のように変換される。
仮に、画素表示用ビームL1〜L4で囲まれる断面が横長の4辺形の光束を、透過スクリーン8に入射させると、この光束は「ビームL11〜L14で囲まれる断面が横長の4辺形の発散性の光束」となる。
微細凸レンズのこの機能が「拡散機能」である。
「ビームL11〜L14で囲まれる発散性の光束」は、このように発散性光束に変換された画素表示用ビームを時間的に集合した結果である。
画素表示用ビームを拡散させるのは「フロントガラス10により反射された光束が、観察者の目の近傍の広い領域を照射する」ようにするためである。
上記拡散機能が無い場合には、フロントガラス10により反射された光束が「観察者の目の近傍の狭い領域」のみを照射する。
このため、観察者が頭部を動かして、目の位置が上記「狭い領域」から逸れると、観察者は虚像Iを視認できなくなる。
上記のように、画素表示用ビームLCを拡散させることにより、フロントガラス10による反射光束は「観察者の目の近傍の広い領域」を照射する。すなわち、アイボックスを大きくできる。従って、観察者が「頭を少々動かし」ても、虚像Iを確実に視認できる。
以下に、図5(A)及び図5(B)を参照して、透過スクリーン8の画像表示領域に用いられるマイクロレンズアレイにおける拡散と干渉性ノイズ発生について説明する。
図5(A)において、符号802はマイクロレンズアレイを示す。マイクロレンズアレイ802は、微細凸レンズ801を配列した微細凸レンズ構造を有する。符号803で示す「画素表示用ビーム」の光束径807は、微細凸レンズ801の大きさよりも小さい。すなわち、微細凸レンズ801の大きさ806は、光束径807よりも大きい。なお、説明中の形態例で、画素表示用ビーム803はレーザ光束であり、光束中心のまわりにガウス分布状の光強度分布をなす。従って、光束径807は、光強度分布における光強度が「1/e2」に低下する光束半径方向距離である。
図5(A)では、光束径807は微細凸レンズ801の大きさ806に等しく描かれているが、光束径807が「微細凸レンズ801の大きさ806」に等しい必要は無い。微細凸レンズ801の大きさ806を食み出さなければよい。図5(A)において、画素表示用ビーム803は、その全体が1個の微細凸レンズ801に入射し、発散角805をもつ拡散光束804に変換される。なお、「発散角」は、以下において「拡散角」と呼ぶこともある。
図5(A)の状態では、拡散光束804は1つで、干渉する光束が無いので、干渉性ノイズは発生しない。なお、発散角805の大きさは、微細凸レンズ801の形状により適宜設定できる。
図5(B)では、画素表示用ビーム811は、光束径が微細凸レンズの配列ピッチ812の2倍となっており、2個の微細凸レンズ813、814に跨って入射している。この場合、画素表示用ビーム811は、入射する2つの微細凸レンズ813、814により2つの発散光束815、816のように拡散される。2つの発散光束815、816は、領域817において重なり合い、この部分で互いに干渉して干渉性ノイズを発生する。
上に説明したヘッドアップディスプレイは、上述の如く、例えば、自動車等の車載用として用いることができ、a方向は「運転席から見て横方向」、b方向は「縦方向」である。
この場合、自動車等のフロントガラス10前方に虚像Iとして、例えば「ナビゲーション画像」を表示でき、観察者である運転者は、この画像を運転席に居ながらフロントガラス10前方から視線をほとんど動かさずに観察できる。
このような場合、上述の如く、表示される虚像Iは「運転者から見て横長の画像」であること、即ち、マイクロレンズアレイに形成される画像(中間像)および、虚像Iは、a方向に画角の大きい画像であることが一般に好ましい。
また、上述の如く、観測者である運転者が、左右斜め方向から表示画像を見た場合にも、表示を認識できるように、横方向には「縦方向に比して大きな視野角」が要求される。
このため、虚像Iの長手方向(a方向)には短手方向(b方向)に比して大きな拡散角(非等方拡散)が要求される。
従って、微細凸レンズ構造(マイクロレンズアレイ)の各微細凸レンズ(マイクロレンズ)を、透過スクリーン8に形成された中間像もしくは虚像Iの短手方向よりも長手方向の方の曲率が大きいアナモフィックなレンズとし、画素表示用ビームを拡散させる拡散角を「中間像の横方向を縦方向よりも広く」するのが好ましい。
このようにして、ヘッドアップディスプレイの要求画角を満たす必要最小限の範囲に光を発散させ、光の利用効率を向上させ、表示画像の輝度を向上させることが可能である。
勿論、上記のような「非等方拡散」ではなく、縦方向と横方向で拡散角が等しい「等方拡散」とする場合も可能である。
しかし、自動車等の車載用として用いるヘッドアップディスプレイの場合であれば、運転者が表示画像に対して上下方向の位置から観察を行なう場合はすくない。
従って、このような場合であれば、上記のように、画素表示用ビームを拡散させる拡散角を「中間像の横方向を縦方向よりも広く」するのが光利用効率の面から好ましい。
微細凸レンズ(マイクロレンズ)は、そのレンズ面を「非球面」として形成できることが従来から知られている。
直上に説明したアナモフィックなレンズ面も「非球面」であるが、微細凸レンズのレンズ面をより一般的な非球面として形成でき、収差補正を行なうこともできる。
収差の補正により「拡散の強度ムラ」を低減することも可能である。
微細凸レンズ構造の微細凸レンズは、上記の如く画素表示用ビームを拡散させるものであるが、x方向、y方向の2方向のうち、1方向のみの拡散を行なう場合も考えられる。
このような場合には、微細凸レンズのレンズ面として「微細凸シリンダ面」を用いることができる。
なお、微細凸レンズの形状を、六角形状とすることや、その配列をハニカム型配列とすることは、従来から、マイクロレンズアレイの製造方法に関連して知られている。
図6は、画像表示装置1000のハードウェア構成図である。画像表示装置1000は、図6に示されるように、FPGA600、CPU602、ROM604、RAM606、I/F608、バスライン610、LDドライバ6111、MEMSコントローラ615などを備えている。FPGA600は、LDドライバ6111やMEMSコントローラ615を制御して、光源部100のLD(半導体レーザ)および光偏向器15を動作させる。CPU602は、画像表示装置1000の各機能を制御する。ROM604は、CPU602が画像表示装置1000の各機能を制御するために実行する画像処理用プログラムを記憶している。RAM606はCPU602のワークエリアとして使用される。I/F608は、外部コントローラ等と通信するためのインターフェイスであり、例えば自動車のCAN(Controller Area Network)等に接続されることができる。
図7は、画像表示装置1000の機能ブロック図である。画像表示装置1000は、図7に示されるように、車両情報入力部900、外部情報入力部902、画像生成部904、画像表示部906を備える。車両情報入力部800には、CAN等から車両の情報(速度、走行距離等の情報)が入力される。外部情報入力部902には、外部ネットワークから車両外部の情報(GPSからのナビ情報等)が入力される。画像生成部904は、CPU602、ROM604、RAM606を含み、車両情報入力部900および外部情報入力部902から入力される情報に基づいて、表示させる画像を生成する。画像表示部906は、FPGA600、LDドライバ6111、MEMSコントローラ615、各半導体レーザ、2次元偏向手段6、光検出器13を含み、画像生成部904で生成された画像に応じた画像光をフロントガラス10に照射する。この結果、観察者の視点から虚像Iが視認可能となる。
以下に、本実施形態の光走査装置500、光走査方法について図8〜図17を用いて詳細に説明する。図8には、光走査装置500を含む画像表示装置1000の概略図(一部省略)が示されている。
ここでは、本実施形態の光走査装置500及び光走査方法を、比較例の光走査装置700及び光走査方法と並行して説明する。比較例の光走査装置700は、本実施形態の光走査装置500と概ね同様な構成を有する。すなわち、比較例の光走査装置700も、光源部100、2次元偏向手段6、走査ミラー7、透過スクリーン8、凹面ミラー9、光検出器13等を有する。なお、比較例、本実施形態の光走査装置500、700を、区別しない場合、「光走査装置」と総称する。また、以下の説明において、特に断りがない場合は、光走査装置500、700に共通の内容である。
光走査装置では、図8に示されるように、光源部100において、3つの半導体レーザRS、GS、BSからR,G,Bのレーザ光が集約された1本のビームは大部分が、画素表示用ビームLCとして2次元偏向手段6に導かれ、一部が各半導体レーザのパワー(出力)を検出するためのカラーセンサCSに導かれる。このカラーセンサCSは、R,G,Bのレーザ光の光量を電気信号に変換し、該電気信号をFPGA600に出力する。そこで、FPGA600は、カラーセンサCSからの電気信号に基づいて点灯トリガ信号(パルス信号)を生成し、LDドライバ6111に出力する。
さらに、比較例の光走査装置700では、FPGA600は、カラーセンサCSからの電気信号に基づいて各半導体レーザの出力を一定にするための制御を行う。
光走査装置では、図8に示されるように、光源部100からの画素表示用ビームLCは、2次元偏向手段6によって偏向され、フレーム部材11に嵌め込まれた透過スクリーン8上やフレーム部材11に取り付けられた光検出器13上を走査する。
すなわち、透過スクリーン8は、光走査装置による走査範囲内における有効走査領域(画像描画領域)に配置され、光検出器13は、該走査範囲内における有効走査領域外に配置されている。
ここでは、光走査装置は、ラスタースキャン、すなわち光により透過スクリーン8を主走査方向に往復走査しつつ副走査方向に片道走査する。
この際、副走査方向に1スキャンする毎すなわち1フレーム毎に、光検出器13が少数回走査された後、透過スクリーン8が多数回走査され画像が描画される。
ここでは、光検出器13は、一例として、フレーム部材11における透過スクリーン8の中央上部近傍(走査範囲内における有効走査領域外)に配置されている。なお、光検出器13は、走査範囲内における有効走査領域外の他の位置に配置されても良い。
光検出器13は、図9、図10、図13に示されるように、受光素子としてのPD13a(フォトダイオード)と、PD13aからの出力電流(電気信号)を処理し、同期検出信号として出力する、電流アンプ20及びコンパレータ21(比較器)を有する同期検出回路13bとを含む。
そこで、光検出器13では、光走査装置からの走査光がPD上を通過した(横切った)ときに同期検出回路13bから同期検出信号検出部23に同期検出信号出力される。同期検出信号検出部23が同期検出信号を検出したタイミングにより、走査光の位置である走査位置を検出(同期検出)することができる。
以上の説明から分かるように、比較例の光走査装置700では、カラーセンサからの出力信号に基づいてレーザパワーの制御を行い、光検出器13からの同期検出信号に基づいて同期検出を行う。
一方、本実施形態の光走査装置500でも、光検出器13からの同期検出信号に基づいて同期検出を行う。
次に、光検出器13の動作原理について図10、図13を参照して説明する。走査光がPD13aに入射されると、走査光の光量(半導体レーザのレーザパワー)に応じてPD13aから電流が出力される。PD13aから出力される電流は微小なため、電流アンプ20にて増幅される。
比較例の光走査装置700では、電流アンプ20で増幅された電流は、ゲイン抵抗22で電圧に変換され、コンパレータ21の一方の入力側へ入力される(図10参照)。
一方、本実施形態の光走査装置500では、電流アンプ20で増幅された電流は、後述する選択的に用いられる2つのゲイン抵抗30、31を含むゲイン調整手段で電圧に変換され、コンパレータ21の一方の入力側へ入力される(図13参照)。
コンパレータ21の他方の入力は、同期検出回路13b内のリファレンス電圧Vrefに接続されており、ゲイン抵抗で変換された電圧とこのリファレンス電圧との比較がコンパレータ21内部で行われる(図10、図13参照)。
ゲイン抵抗にかかる電圧がリファレンス電圧Vrefよりも高い場合は、コンパレータ21からはLow信号が出力され、ゲイン抵抗にかかる電圧すなわちゲイン抵抗両端電圧(以下では「ゲイン電圧」とも呼ぶ)がリファレンス電圧Vrefよりも低い場合は、コンパレータ21からはHigh信号が出力される。コンパレータ21からの出力信号である同期検出信号は、FPGA600の同期検出信号検出部23に入力される。同期検出信号検出部23は、同期検出信号のHigh/Lowの切替わりの時間(タイミング)を取得する。FPGA600は、該タイミングの取得時に発光トリガ信号をLDドライバ6111に出力する。以下では、「リファレンス電圧Vref」を「閾値電圧Vth」とも呼ぶ。
次に、光走査装置からの走査光によりPD13aが走査されたときの同期検出回路13bの動作を、図11を参照して説明する。
図11に示されるように、走査光がPD13a上を走査し始めるとゲイン抵抗へ流れる電流が徐々に増加し、ゲイン電圧が徐々に上昇する。その電圧値がリファレンス電圧Vrefを上回ったタイミングで同期検出信号がHighからLowへと切り替わる。次いで、走査光がPD13a上から外れ始めるとゲイン抵抗22へ流れる電流が徐々に減少し、ゲイン電圧が徐々に下降する。その電圧値がリファレンス電圧Vrefを下回ったタイミングで同期検出信号がLowからHighへと戻る。
このように同期検出信号がHighからLowへもしくはLowからHighへ切替わるタイミングを検出することで、走査光がPD13a上を通過したタイミングを検出することができる。
以下に、異なるレーザパワー(異なる光量の走査光)によりPD13aが走査されたときの同期検出回路13bの動作を、図12を参照して説明する。
図12上図において、実線はレーザパワー(レーザ光の光量)が大きいときのゲイン電圧の波形であり、破線はレーザパワーが小さいときのゲイン電圧の波形である。レーザパワーが大きい場合には、PD13aから出力される電流値が大きくなるためゲイン電圧の変化が急になる。一方、レーザパワーが小さい場合には、PD13aから出力される電流値が小さくなるためゲイン電圧の変化が緩やかになる。このため、レーザパワーが大きい場合と小さい場合とでは、ゲイン電圧がVthと交差するタイミングが異なる。この結果、レーザパワーが大きい場合と小さい場合とでは、同期検出信号が出力されるタイミングにずれ(誤差Δt)が発生する。この誤差Δtがフレーム間やライン間の映像の乱れにつながる。
そこで、本実施形態の光走査装置500は、図13に示されるように、PD13aに電流アンプ20を介して選択的に接続される2つのゲイン抵抗30、31と、PD13aに対するゲイン抵抗30、31の接続を切り替える抵抗切替回路32と、抵抗切替制御部33とを含むゲイン調整手段を備えている。
詳述すると、2つのゲイン抵抗30、31は、PD13aに対して切替回路32により選択的に接続(導通)される。ゲイン抵抗30は同期検出を行う際に使用する同期検出用ゲイン抵抗であり、ゲイン抵抗31はレーザのパワー制御を行う際に使用するパワー制御用ゲイン抵抗である。ここでは、同期検出用ゲイン抵抗の抵抗値>パワー制御用ゲイン抵抗の抵抗値の関係が成立している。PD13aに対する2つのゲイン抵抗30、31の選択接続の切替は、切替回路32のスイッチ32a、32bを抵抗切替制御部33でオン/オフ制御することにより可能である。
以下に、本実施形態の光走査装置500によるラスタースキャンの際に、ゲイン調整手段により、パワー制御時と同期検出時との間で、PD13aに接続されるゲイン抵抗を切り替える場合の動作について、図14を参照して説明する。
ここでは、パワー制御と同期検出を異なる走査において行う。すなわち、ラスタースキャンによりPD13aが複数回走査されるときの、別々の走査においてパワー制御と同期検出を行う。
先ず、パワー制御時の動作について説明する。パワー制御時には、PD13aにパワー制御用ゲイン抵抗(ゲイン抵抗31)が接続され、同期検出信号検出部23は、走査光がPD13a上部を通過するはずである一定期間中に同期検出信号の有無を確認する。具体的には、一定期間中に同期信号が検出されなかった場合、レーザパワーに対応するパワー制御用ゲイン抵抗のゲイン電圧がVth未満であると判断し、レーザパワーを大きくする。一方、一定期間中に同期検出信号が検出された場合、レーザパワーに対応するゲイン電圧がVth以上であると判断し、レーザパワーを小さくする。
このように、パワー制御時には、レーザパワーを、Vthを基準に増減させることで、レーザパワーの変動によるゲイン電圧の変動をΔVに制御することができる。
次に、同期検出時の動作について説明する。パワー制御時には、PD13aに同期検出用ゲイン抵抗(ゲイン抵抗30)が接続される。レーザパワーは前述したパワー制御によってΔV内に制御されているとする。同期検出用ゲイン抵抗の抵抗値がパワー制御用ゲイン抵抗の抵抗値のN倍とした場合、同期検出時のゲイン電圧もパワー制御時のゲイン電圧のN倍となり、同期検出時のゲイン抵抗はVthに対して十分大きな値となり確実に同期検出信号が出力できるようになる。このとき、レーザパワーの変動ΔVもN倍され変動幅がΔV×Nとなり増加してしまうが、一般的にはパワー制御時のΔVを小さく制御できるため同期検出信号の出力タイミングのずれ(誤差Δt)に対する影響は小さい。
以上のように、本実施形態の光走査装置500では、光検出器13からの同期検出信号に基づいて、パワー制御と同期検出の両方を行う。
結果として、本実施形態の光走査装置500、光走査方法では、パワー制御時と同期検出時との間でゲイン電圧を切り替えることで、汎用的な単一の光検出器13を用いてパワー制御と同期検出を高精度に行うことができる。すなわち、簡素な構成かつ低コストでパワー制御と同期検出を高精度に行うことができる。
一方、比較例の光走査装置700では、上述の如く光源部100のカラーセンサCSの出力に基づいてパワー制御を行っているが、光源部100からのレーザ光は通過経路の影響を受けるため、カラーセンサCSでモニタされるレーザ光のパワーは透過スクリーン8上の走査光のパワーとは異なり、該走査光のパワーを常に一定に制御することは困難である。
以下に、本実施形態の光走査装置500、光走査方法を幾つかの実施例を挙げてさらに掘り下げて説明する。
図15には、本実施形態の光走査装置500からの走査光の1フレーム内の走査軌跡(通過経路)が示されている。
図15において、走査光は、フレーム(走査範囲)の上部から主走査方向(紙面左右方向)へ振動しながら副走査方向の一側(紙面下方向)へ移動する。走査光は、副走査方向のスキャン初期にPD13a上を複数回横切った後、副走査方向のスキャン中期から後期にかけて透過スクリーン8上を多数回往復し、フレームの下部まで行くと、またフレーム上部へ戻り同じ動作を繰り返す。
以下の実施例1、2では、PD13a上を走査光が横切る回数を5回(図15参照)として説明を行う。
《実施例1》
図16には、実施例1における、4フレーム分の光検出器13からの同期検出信号が示されている。
実施例1では、最初の第1フレームにおいては、同期検出信号が確実に出力されるようにレーザパワーの大きい同期検出から行う。なお、前述のように同期検出時には、PD13aに対して、同期検出用ゲイン抵抗であるゲイン抵抗30が接続される。
次の第2フレームにおいては、レーザパワーをN分の1に落とした状態で、パワー制御を行う。なお、前述のようにパワー制御時には、PD13aに対して、パワー制御用ゲイン抵抗であるゲイン抵抗31が接続される。
この第2フレームでPD13a上を走査光が5回目に横切ったときの結果(レーザパワー)を保持し、その値をN倍したレーザパワーで第3フレームの同期検出を行う。そして、レーザパワーを保持した値に戻し、第4フレームのパワー制御を行い、第4フレームの5回目の結果(レーザパワー)に更新する。以降、同様の動作を繰り返す。なお、同期検出を行わない第2フレームと第4フレームでは、それぞれの前のフレームの結果を流用する。
このように、同期検出とパワー制御をフレーム毎に切り替えて(交互に行い)、同期検出タイミングとレーザパワーを随時更新していくことで両方の変動を最小限に抑えることができる。
《実施例2》
図17には、実施例2における、4フレーム分の光検出器13からの同期検出信号が示されている。
実施例2では、各フレーム内で同期検出とパワー制御の両方を行う。なお、前述のように同期検出時には、PD13aに対して、同期検出用ゲイン抵抗であるゲイン抵抗30が接続され、パワー制御時には、PD13aに対して、パワー制御用ゲイン抵抗であるゲイン抵抗31が接続される。
走査光がPD13a上を5回横切るうちの1回目から4回目までの各回で同期検出を行い、5回目でパワー制御を行う。この場合、各フレームでパワー制御が行われる回数が少ないため、レーザパワーが大きく変動した場合、レーザパワーが目標値まで収束するまで時間がかかってしまうが、パワー変動が比較的小さい場合は、該フレームで同期検出を行うことができる。
なお、光走査装置500の仕様によりPD13a上を通過する回数、想定されるレーザパワーの変動幅などが異なるため、上記思想をもとに同期検出とパワー制御を行う最適な組み合わせ(例えば各フレーム内における同期検出とパワー制御を行う走査の組み合わせや、複数のフレームにおいて同期検出を行うフレームとパワー制御を行うフレームの組み合わせ)を選択すればよい。
例えば、各フレーム内において同期検出とパワー制御を交互に(相前後する走査で)行っても良い。この場合、ゲイン抵抗の切替制御がやや煩雑となるが、同期検出とパワー制御の高精度化を高次元で(高バランスで)両立できる。
また、各フレーム内において同期検出の回数をパワー制御の回数よりも多くしても良い。この場合、レーザパワーが目標値まで収束するまでの時間を短くでき、パワー変動が比較的大きくても、各フレームで同期検出を行うことができる。
以上説明した本実施形態の光走査装置500は、半導体レーザ(光源)を含み、該半導体レーザからの光により走査範囲を走査する光走査系と、走査範囲内における有効走査領域外に配置されたPD13a(受光素子)と、該PD13aの出力電流に基づいて、光走査系からの走査光の位置(走査位置)を検出するとともに光源の出力(レーザパワー)を制御する、同期検出回路13bを含む制御系と、を備え、制御系は、位置検出時と前記出力制御時との間で、出力電流に基づく電圧のゲインを異ならせる、ゲイン抵抗30、31、抵抗切替回路32及び抵抗切替制御部33を有するゲイン調整手段を更に含む。
この場合、単一の受光素子を用いて、走査光の位置検出と光源の出力制御を精度良く行うことができる。
この結果、例えば上記比較例のように複数(例えば2つ)の受光素子を用いる場合に比べて、レーザ光の通過経路や受光素子間の特性差の影響をなくすことができるため、レーザパワーの変動に伴う走査光の位置検出タイミングの変動を最小限に抑えることができ、ひいては高精度な光走査を安定して行うことができる。
また、ゲイン調整手段は、出力制御時の電圧のゲイン(ゲイン電圧)よりも位置検出時の電圧のゲイン(ゲイン電圧)を大きくする。
この場合、位置検出時に出力制御時よりもゲインが大きくなるため、確実に同期検出信号を出力できるようになり、ひいては走査光の位置検出と光源の出力制御を確実に精度良く行うことができる。
また、ゲイン調整手段は、受光素子に選択的に導通可能な複数(例えば2つ)のゲイン抵抗30、31を含むため、簡易な構成により、PD13aの出力電流に基づく電圧のゲインを調整できる。
また、制御系は、PD13aとゲイン調整手段との間に接続され、該出力電流を増幅する電流アンプ20と、ゲイン調整手段によるゲイン調整後の電圧が閾値を超えたときに同期検出信号を出力するコンパレータ21を更に含み、同期検出信号の出力タイミングに基づいて走査位置を検出するとともに同期検出信号の出力の有無に基づいて光源の出力を制御する。
この場合、PD13a、電流アンプ20及びコンパレータ21を含む汎用の光検出器13を用いて、走査位置の検出とレーザパワーの制御を精度良く行うことができる。また、レーザパワーの絶対値を取得することなく、同期検出信号の有無のみを判断するだけでレーザパワーを制御(一定に保つことが)できる。
また、制御系は、出力制御時に同期検出信号が出力されたときに光源の出力を下げ、同期検出信号が出力されなかったときに光源の出力を上げるため、同期検出信号の出力タイミングのずれを抑制しつつレーザパワーを制御できる。
また、光走査系は、走査範囲を主走査方向に往復走査しつつ副走査方向に片道走査することにより2次元走査し、制御系は、走査位置検出とレーザパワー制御をPD13aに対する主走査方向の異なる走査時に行うため、走査位置とレーザパワー制御をそれぞれより精度良く行うことができる。
また、光走査系は、2次元走査を繰り返し行い、制御系が、走査位置検出とレーザパワー制御を2次元走査毎に交互に行う場合には、両方の変動を抑えることができる。
また、光走査系は、2次元走査を繰り返し行い、制御系は、位置検出と出力制御を同一の2次元走査において行う場合には、やや制御は煩雑になるが両方の変動をさらに抑制することができる。
制御系は、同一の2次元走査において出力制御の回数よりも走査位置検出の回数を多くする場合には、パワー変動が小さい場合に、各2次元走査において走査位置を検出できる。
また、光走査装置500と、該光走査装置500により光走査される透過スクリーン8と、を備える画像表示装置1000では、画像品質を向上できる。
また、透過スクリーン8は、マイクロレンズアレイであるため、画像品質(虚像の視認性)の更なる向上を図ることができる。
また、画像表示装置1000は、透過スクリーン8からの画像を形成した光を透過反射部材に導く凹面ミラー9(光学系)を更に備えるため、拡大されかつ歪みが抑制された虚像Iを透過反射部材を介して視認可能とすることができる。
また、画像表示装置1000と該画像表示装置1000が搭載される移動体とを備える移動体装置では、観察者(例えば移動体の操縦者)がストレスなく確実に虚像Iを視認できる。
また、本実施形態の光走査方法は、光源(半導体レーザ)からの光を偏向して走査範囲を走査する工程と、走査範囲における有効走査領域外を走査する走査光を受光したPD13a(受光素子)の出力電流に基づいて、走査光の位置を検出するとともに光源の出力を制御する工程と、を含み、制御する工程では、位置検出時と出力制御時との間で、出力電流に基づく電圧のゲインを異ならせる。
また、制御する工程では、出力制御時のゲインよりも位置検出時のゲインを大きくするため、走査光の位置検出と光源の出力制御を確実に精度良く行うことができる。
なお、図18に示される変形例のように、電流アンプ20の増幅率を変更することにより、PD13aの出力電流に基づく電圧(ゲイン電圧)を調整しても良い。
変形例では、ゲイン調整手段における基本的な制御は同じであるが、図18から分かるようにゲイン抵抗30、31の用途が上記実施形態とは逆になっている。すなわち、同期検出時に抵抗値が小さいゲイン抵抗31を選択し、パワー制御時に抵抗値が大きいゲイン抵抗30を選択する。
この場合、電流アンプ20からゲイン抵抗31に流れる電流の方が、電流アンプ20からゲイン抵抗30に流れる電流よりも大きくなる。
この結果、同期検出時の方がパワー制御時よりも、コンパレータ21の一方の入力側へ入力される電圧が大きくなる。
また、上記実施形態では、光走査装置500による走査対象として透過スクリーン8(マイクロレンズアレイ)が用いられているが、これに限らず、例えば拡散板、ホログラフィックディフューザ、偏光板、マイクロミラーアレイを用いても良い。
なお、上記実施形態では、複数の光源を用いてカラー画像を形成しているが、複数又は単一の光源を用いてモノクロ画像を形成しても良い。
また、上記実施形態では、スクリーンに2次元偏向手段を用いて2次元走査して2次元画像を形成しているが、例えば、MEMSミラー、ガルバノミラー、ポリゴンミラー等を含む1次元偏向手段を用いて1次元走査しても良い。この場合、光走査装置を例えば電子写真方式の複写機やプリンタに用いることもできる。
また、上記実施形態では、光源として、LD(端面発光レーザ)を用いているが、これに限らず、VCSEL(面発光レーザ)、半導体レーザ以外のレーザ、レーザ以外の光源を用いても良い。
また、上記実施形態では、光検出器の受光素子として、PD(フォトダイオード)が用いられているが、これに限らず、例えばフォトトランジスタ、APD(Avalanche Photo Diode)、ガイガーモードAPDであるSPAD(Single Photon Avalanche Diode)等を用いても良い。特に、APDやSPADは、PDよりも感度が高いため、同期検出及びパワー制御の更なる高精度化を図ることができる。なお、上記実施形態の光検出器において、電流アンプは必須ではない。特に、光検出器の受光素子の感度が高い場合には、電流アンプを用いなくても、同期検出及びパワー制御を精度良く行うことが可能である。
また、上記実施形態において、光源からの光を透過スクリーン8に導く光学系も適宜変更可能である。例えば、走査ミラー7を省略しても良い。この場合、2次元偏向手段6で偏向された光を透過スクリーン8に直接入射させても良い。
また、上記実施形態において、走査ミラー7として凹面鏡の代わりに、平面鏡や凸面鏡を設けても良い。
また、上記実施形態において、凹面ミラー9に代えて又は加えて、平面鏡や凸面鏡を設けても良い。
また、透過反射部材は、移動体のフロントガラスに限らず、例えばサイドガラス、リアガラス等の移動体の搭乗者(例えば操縦者、ナビゲータ、乗組員、乗客等)が移動体の外部を視認するための他の窓部材であっても良い。また、透過反射部材は、ガラス製のものに限らず、例えば樹脂製であっても良い。また、透過反射部材の形状も適宜変更可能である。
また、透過反射部材は、例えば、いわゆるコンバイナのように、移動体の窓部材(例えばフロントガラス)とは別の部材で構成され、観察者から見て該窓部材よりも手前に配置されていても良い。
また、上記実施形態では、画像表示装置は、例えば車両、航空機、船舶等の移動体に搭載されるものを一例として説明したが、要は、物体に搭載されるものであれば良い。この場合も、物体と、該物体に搭載された画像表示装置とを備える物体装置では、上記実施形態及び各変形例と同様の効果が得られる。この場合、画像表示装置は、透過反射部材を構成要素として備えていても良いし、備えていなくても良い。なお、「物体」は、移動体の他、恒常的に設置されるものや運搬可能なものを含む。
また、本発明の画像表示装置は、物体に搭載されるものに限らず、例えば、単独で設置されるものや人体に装着可能なもの(例えばヘッドマウントディスプレイ)にも応用可能である。例えば、映画鑑賞用の画像表示装置としても実施可能である。
以下に、本発明の発明者が上記実施形態を発案する至った思考プロセスを説明する。
車のフロントガラスに表示像を投影し虚像を表示する車載用ヘッドアップディスプレイ装置において、半導体レーザを光源とし、MEMSミラーで走査し映像を投影するヘッドアップディスプレイがある。
ヘッドアップディスプレイなどの操作型映像投影方式では、各フレームや各ライン間での同期をとるため、レーザ走査範囲内に同期検出用フォトセンサなどのセンサを配置し、レーザが通過した際に出力される同期検出信号にあわせて映像の同期をとるという術が考えられ既に知られている。
しかし、従来の同期検出用フォトセンサでは、レーザのパワー変動により同期検出信号が出力されるタイミングがずれてしまい、各フレームやライン間で映像が乱れるという問題があった。
この問題に対し、レーザのパワーをモニタするためのカラーセンサを別途配置しカラーセンサでレーザのパワーを制御するという方式が一般的である。しかし、同期検出用フォトセンサとは異なるセンサ(カラーセンサ)でパワーをモニタして制御を行うため、レーザ光が通過する経路の違いやセンサ自体の特性の違いにより、周辺環境の変化によって精度が悪化するという問題があった。
特許文献1には、映像投影部に近いエリアに、同期検出とレーザパワー制御の両方を行うための単一のセンサを配置した構成が開示されている。
しかし、特許文献1には、単一のセンサを用いてレーザのパワー制御と同期検出の両方を正確に行うことが可能な構成、方法は、開示されていない。
単一のセンサを用いてレーザのパワー制御と同期検出の両方を正確に行うためには多くの問題がある。
また、レーザのパワーと同期検出タイミングの両方を高精度に検出できるセンサを作ることは技術的に難しく、価格が高くなるという問題もある。
そこで、発明者は、汎用的な単一のセンサを用いて、同期検出とレーザのパワー制御の両方を正確に行うことで、周辺環境の影響をなくし同期検出信号の時間変動を最小限にすることを目的として、上記実施形態を発案するに至った。