以下、図面を参照しながら、発明を実施するための形態を説明する。なお、図面の説明において同一要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
●システム構成●
まず、図1乃至図8を用いて、各実施形態における光源装置が適用されるシステムについて説明する。図1は、実施形態に係る表示システムのシステム構成の一例を示す図である。表示システム1は、表示装置10から投射される投射光を、透過反射部材に投射させることによって観察者3に表示画像を視認させるシステムである。表示画像は、観察者3の視界に虚像45として重畳して表示する画像である。
表示システム1は、例えば、車両、航空機もしくは船舶等の移動体、または操縦シミュレーションシステムもしくはホームシアターシステム等の非移動体に備えられる。本実施形態は、表示システム1が、移動体の一例である自動車に備えられた場合について説明する。なお、表示システム1の使用形態は、これに限られるものではない。
表示システム1は、例えば、フロントガラス50を介して車両の操縦に必要なナビゲーション情報(例えば車両の速度、進路情報、目的地までの距離、現在地名称、車両前方における物体(対象物)の有無や位置、制限速度等の標識、渋滞情報等の情報等)を、観察者3(操縦者)に視認可能にする。この場合、フロントガラスは、入射された光の一部を透過させ、残部の少なくとも一部を反射させる透過反射部材として機能する。観察者3の視点位置からフロントガラス50までの距離は、数十cm~1m程度である。
表示システム1は、表示装置10、自由曲面ミラー30およびフロントガラス50を備える。表示装置10は、例えば、移動体の一例である自動車に搭載されたヘッドアップディスプレイ装置(HUD装置)である。表示装置10は、自動車のインテリアデザインに準拠して任意の位置に配置される。表示装置10は、例えば、自動車のダッシュボードの下方に配置されてもよく。ダッシュボード内に埋め込まれていてもよい。
表示装置10は、レーザ光を出力する光源装置11と、光源装置11から出力されたレーザ光を偏向する光偏向装置13と、光偏向装置13によって偏向されたレーザ光を発散させるスクリーン15を備える。光源装置11は、光源から射出されたレーザ光を、装置外部へ照射するデバイスである。光源装置11は、例えば、R、G、Bの3色のレーザ光を合成したレーザ光を照射してもよい。光源装置11から射出(出力)されたレーザ光は、光偏向装置13の反射面に導かれる。光源装置11は、光源として、LD(Laser Diode)等の半導体発光素子を有する。なお、光源は、これに限られず、LED(light emitting diode)等の半導体発光素子を有してもよい。
光偏向部としての光偏向装置13は、光源装置11から射出された光を主走査方向および主走査方向に直交する副走査方向に走査して、光学素子としてのスクリーン15上に中間像40を形成するものであり、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)等を利用してレーザ光の進行方向を変化させるデバイスである。光偏向装置13は、例えば、直交する2軸に対して揺動する単一の微小なMEMSミラー、または1軸に対して揺動もしくは回転する2つのMEMSミラーからなるミラー系等の走査手段を利用して構成される。光偏向装置13から出力されたレーザ光は、スクリーン15に走査される。なお、光偏向装置13は、MEMSミラーに限られず、ポリゴンミラー等を用いて構成されてもよい。
光を発散させる光学素子としてのスクリーン15は、レーザ光を所定の発散角で発散させる機能を有する発散部材である。スクリーン15は、例えば、EPE(Exit Pupil Expander)の形態として、マイクロレンズアレイ(MLA)または拡散板等の光拡散効果を持つ透過型の光学素子によって構成される。なお、スクリーン15は、マイクロミラーアレイ等の光拡散効果を持つ反射型の光学素子によって構成されてもよい。スクリーン15は、光偏向装置13から出力されたレーザ光がスクリーン15上に走査されることによって、スクリーン15上に二次元像である中間像40を形成する。
ここで、表示装置10の投射方式は、液晶パネル、DMDパネル(デジタルミラーデバイスパネル)または蛍光表示管(VFD)等イメージングデバイスで中間像40を形成する「パネル方式」と、光源装置11から出力されたレーザ光を走査手段で走査して中間像40を形成する「レーザ走査方式」がある。
本実施形態に係る表示装置10は、後者の「レーザ走査方式」を採用する。「レーザ走査方式」は、各画素に対して発光または非発光を割り当てることができるため、一般に高コントラストの画像を形成することができる。なお、表示装置10は、投射方式として「パネル方式」を用いてもよい。
スクリーン15から出力されたレーザ光(光束)によって、自由曲面ミラー30およびフロントガラス50に投射された虚像45は、中間像40から拡大されて表示される。自由曲面ミラー30は、フロントガラス50の湾曲形状による画像の傾き、歪、位置ずれ等を相殺するように設計および配置されている。自由曲面ミラー30は、所定の回転軸を中心として回転可能に設置されてもよい。これにより、自由曲面ミラー30は、スクリーン15から出力されたレーザ光(光束)の反射方向を調整し、虚像45の表示位置を変化させることができる。
ここでは、自由曲面ミラー30は、虚像45の結像位置が所望の位置になるように、一定の集光パワーを有するように既存の光学設計シミュレーションソフトを用いて設計されている。表示装置10は、虚像45が観察者3の視点位置から例えば1m以上かつ30m以下(好ましくは10m以下)の位置(奥行位置)に表示されるように、自由曲面ミラー30の集光パワーを設定する。なお、自由曲面ミラー30は、凹面ミラーやその他集光パワーを有する素子であってもよい。自由曲面ミラー30は、結像光学系の一例である。
フロントガラス50は、レーザ光(光束)の一部を透過させ、残部の少なくとも一部を反射させる機能(部分反射機能)を有する透過反射部材である。フロントガラス50は、観察者3に前方の景色および虚像45を視認させる半透過鏡として機能する。虚像45は、例えば、車両情報(速度、走行距離等)、ナビゲーション情報(経路案内、交通情報等)、警告情報(衝突警報等)等を観察者3に視認させるための画像情報である。なお、透過反射部材は、フロントガラス50とは別途設けられたフロントウインドシールド等であってもよい。フロントガラス50は、反射部材の一例である。
虚像45は、フロントガラス50の前方の景色と重畳するように表示されてもよい。また、フロントガラス50は、平面でなく、湾曲している。そのため、虚像45の結像位置は、自由曲面ミラー30とフロントガラス50の曲面によって決定される。なお、フロントガラス50は、部分反射機能を有する個別の透過反射部材としての半透過鏡(コンバイナ)を利用してもよい。
このような構成により、スクリーン15から出力されたレーザ光(光束)は、自由曲面ミラー30に向けて投射され、フロントガラス50で反射される。観察者3は、フロントガラス50で反射された光によって、スクリーン15に形成された中間像40が拡大された虚像45を視認することができる。
●ハードウエア構成●
図2は、実施形態に係る表示装置のハードウエア構成の一例を示す図である。なお、図2に示すハードウエア構成は、必要に応じて構成要素が追加または削除されてもよい。
表示装置10は、表示装置10の動作を制御するためのコントローラ17を有する。コントローラ17は、表示装置10の内部に実装された基板またはICチップ等である。コントローラ17は、FPGA(Field-Programmable Gate Array)1001、CPU(Central Processing Unit)1002、ROM(Read Only Memory)1003、RAM(Random Access Memory)1004、I/F(Interface)1005およびバスライン1006を含む。
FPGA1001は、表示装置10の設計者による設定変更が可能な集積回路である。CPU1002は、表示装置10全体を制御するための処理を行う集積回路である。ROM1003は、CPU1002を制御するプログラムを記憶する記憶装置である。RAM1004は、CPU1002のワークエリアとして機能する記憶装置である。I/F1005は、外部装置と通信するためのインターフェースである。I/F1005は、例えば自動車のCAN(Controller Area Network)等に接続される。
LD1007は、例えば、光源装置11の一部を構成する半導体発光素子である。MEMS1009は、光偏向装置13の一部を構成し、走査ミラーを変位させるデバイスである。モータ1011は、自由曲面ミラー30の回転軸を回転させる電動機である。
●機能構成●
図3は、実施形態に係る表示装置の機能構成の一例を示す図である。表示装置10により実現される機能は、車両情報受信部171、外部情報受信部172、画像生成部173および画像表示部174を含む。
車両情報受信部171は、CAN等から自動車の情報(速度、走行距離等の情報)を受信する機能である。車両情報受信部171は、図2に示したI/F1005およびCPU1002の処理、並びにROM1003に記憶されたプログラム等により実現される。
外部情報受信部172は、外部ネットワークから自動車外部の情報(GPSからの位置情報、ナビゲーションシステムからの経路情報または交通情報等)を受信する機能である。外部情報受信部172は、図2に示したI/F1005およびCPU1002の処理、並びにROM1003に記憶されたプログラム等により実現される。
画像生成部173は、車両情報受信部171および外部情報受信部172により入力された情報に基づいて、中間像40および虚像45を表示させるための画像情報を生成する機能である。画像生成部173は、図2に示したCPU1002の処理、およびROM1003に記憶されたプログラム等により実現される。
画像表示部174は、画像生成部173により生成された画像情報に基づいて、スクリーン15に中間像40を形成し、中間像40を構成したレーザ光(光束)をフロントガラス50に向けて投射して虚像45を表示させる機能である。画像表示部174は、図2に示したCPU1002およびFPGA1001の処理、並びにROM1003に記憶されたプログラム等により実現される。
画像表示部174は、制御部175、中間像形成部176および投影部177を含む。
制御部175は、中間像40を形成するために、光源装置11および光偏向装置13の動作を制御する制御信号を生成する。また、制御部175は、虚像45を所定の位置に表示させるために、自由曲面ミラー30の動作を制御する制御信号を生成する。
中間像形成部176は、制御部175によって生成された制御信号に基づいて、スクリーン15に中間像40を形成する。投影部177は、観察者3に視認させる虚像45を形成するために、中間像40を構成したレーザ光を、透過反射部材(フロントガラス50等)に投射させる。
●光偏向装置●
図4は、実施形態に係る光偏向装置の具体的構成の一例を示す図である。光偏向装置13は、半導体プロセスにより製造されるMEMSミラーであり、ミラー130、蛇行状梁部132、枠部材134、および圧電部材136を含む。光偏向装置13は、走査部の一例である。
ミラー130は、光源装置11から出力されたレーザ光をスクリーン15側に反射する反射面を有する。光偏向装置13は、ミラー130を挟んで一対の蛇行状梁部132を形成する。蛇行状梁部132は、複数の折り返し部を有する。折り返し部は、交互に配置される第1の梁部132aと第2の梁部132bとから構成されている。蛇行状梁部132は、枠部材134に支持されている。圧電部材136は、隣接する第1の梁部132aと第2の梁部132bとを接続するように配置されている。圧電部材136は、第1の梁部132aと第2の梁部132bとに異なる電圧を印加し、梁部132a,132bのそれぞれに反りを発生させる。
これにより、隣接する梁部132a,132bは、異なる方向に撓む。ミラー130は、撓みが累積されることによって、左右方向の軸を中心として垂直方向に回転する。このような構成により、光偏向装置13は、垂直方向への光走査が低電圧で可能となる。上下方向の軸を中心とした水平方向の光走査は、ミラー130に接続されたトーションバー等を利用した共振により行われる。
●スクリーン●
図5は、実施形態に係るスクリーンの具体的構成の一例を示す図である。スクリーン15は、光源装置11の一部を構成するLD1007から出力されたレーザ光を結像させる。また、スクリーン15は、所定の発散角で発散させる発散部材である。スクリーン15は、光学素子の一例である。図5に示すスクリーン15は、六角形形状を有する複数のマイクロレンズ150が隙間なく配列されたマイクロレンズアレイ構造を有している。マイクロレンズ150のレンズ径(対向する2辺間の距離)は、200μm程度である。スクリーン15は、マイクロレンズ150の形状を六角形とすることにより、複数のマイクロレンズ150を高密度で配列することができる。
なお、マイクロレンズ150の形状は、六角形に限られるものではなく、例えば四角形、三角形等であってもよい。また、複数のマイクロレンズ150が規則正しく配列された構造を例示しているが、マイクロレンズ150の配列は、これに限られるものではなく、例えば、各マイクロレンズ150の中心を互いに偏心させ、不規則な配列としてもよい。このように偏心させた配列を採用する場合、各マイクロレンズ150は、互いに異なる形状となる。
図6は、マイクロレンズアレイにおいて、入射光束径とレンズ径の大小関係の違いによる作用の違いについて説明するための図である。図6(a)において、スクリーン15は、マイクロレンズ150が整列して配置された光学板151によって構成される。光学板151上に入射光152を走査する場合、入射光152は、マイクロレンズ150により発散され、発散光153となる。スクリーン15は、マイクロレンズ150の構造により、入射光152を所望の発散角154で発散させることができる。この発散角154は、マイクロレンズ150の曲率と対応関係がある。マイクロレンズ150の周期155は、入射光152の径156aよりも大きくなるように設計される。これにより、スクリーン15は、レンズ間での干渉を起こさずに、干渉ノイズの発生を抑制する。
図6(b)は、入射光152の径156bが、マイクロレンズ150の周期155の2倍大きい場合の発散光の光路を示す。入射光152は、二つのマイクロレンズ150a、150bに入射し、それぞれ発散光157、158を生じさせる。このとき、領域159において、二つの発散光が存在するため、光の干渉を生じうる。この干渉光が観察者の目に入った場合、干渉ノイズとして視認される。
以上を考慮して、干渉ノイズを低減するため、マイクロレンズ150の周期155は、入射光の径156よりも大きく設計される。なお、図6は、凸面レンズの形態で説明したが、凹面レンズの形態においても同様の効果があるものとする。
図7は、光偏向装置のミラーと走査範囲の対応関係について説明するための図である。光源装置11の各光源素子は、FPGA1001によって発光強度や点灯タイミング、光波形が制御される。各光源素子から出力され光路合成されたレーザ光は、図7に示すように、光偏向装置13のミラー130によってα軸周り、β軸周りに二次元的に偏向され、ミラー130を介して走査光としてスクリーン15に照射される。すなわち、スクリーン15は、光偏向装置13による主走査および副走査によって二次元走査される。
走査範囲は、光偏向装置13によって走査しうる全範囲である。走査光は、スクリーン15の走査範囲を、2~4万Hz程度の速い周波数で主走査方向(X軸方向)に振動走査(往復走査)しつつ、数十Hz程度の遅い周波数で副走査方向(Y軸方向)に片道走査する。すなわち、光偏向装置13は、スクリーン15に対してラスタースキャンを行う。この場合、表示装置10は、走査位置(走査光の位置)に応じて各光源素子の発光制御を行うことで、画素ごとの描画または虚像の表示を行うことができる。
一画面を描画する時間、すなわち1フレーム分の走査時間(二次元走査の1周期)は、
上記のように副走査周期が数十Hzであることから、数十msecとなる。例えば、主走査周期を20000Hz、副走査周期を50Hzとした場合、1フレーム分の走査時間は、20msecとなる。
図8は、2次元走査時の走査線軌跡の一例を示す図である。スクリーン15は、図8に示すように、中間像40が描画される(画像データに応じて変調された光が照射される)画像領域61(有効走査領域)と、画像領域61を取り囲むフレーム領域62を含む。
走査範囲は、スクリーン15における画像領域61とフレーム領域62の一部(画像領域61の外縁近傍の部分)を併せた範囲とする。図8において、走査範囲における走査線の軌跡は、ジグザグ線によって示される。図8において、走査線の本数は、便宜上、実際よりも少なくしている。
スクリーン15は、上述のように、マイクロレンズアレイ150等の光拡散効果を持つ透過型の光学素子で構成されている。画像領域61は、矩形または平面である必要はなく、多角形または曲面であってもよい。また、スクリーン15は、光拡散効果を持たない平板または曲板であってもよい。さらに、スクリーン15は、装置レイアウトに応じて、例えば、マイクロミラーアレイ等の光拡散効果を持つ反射型の光学素子とすることもできる。
スクリーン15は、走査範囲における画像領域61の周辺領域(フレーム領域62の一部)に、受光素子を含む同期検知系60を備える。図8において、同期検知系60は、画像領域61の-X側かつ+Y側の隅部に配置される。同期検知系60は、光偏向装置13の動作を検出して、走査開始タイミングや走査終了タイミングを決定するための同期信号をFPGA1001に出力する。
●光源装置●
●構成
続いて、図9乃至図29を用いて、本実施形態に係る光源装置11について説明する。まず、図9乃至図12を用いて、本実施形態に係る光源装置11の構成について説明する。
図9は、実施形態に係る光源装置の具体的構成の一例を示す図である。光源装置11は、光源素子111(r),111(g),111(b)(以下、区別する必要のないときは、光源素子111とする。)、カップリングレンズ112(r),112(g),112(b)(以下、区別する必要のないときは、カップリングレンズ112とする。)、アパーチャ113(r),113(g),113(b)(以下、区別する必要のないときはアパーチャ113とする。)、ミラー114、光合成素子115,116、光分岐素子117および光検出器119を含む。
三色(R,G,B)の光源素子111(r),111(g),111(b)は、例えば、それぞれ単数または複数の発光点を有するLD(レーザダイオード)である。光源素子111(r),111(g),111(b)は、互いに異なる波長λR,λG,λB(例えば、λR=650nm,λG=515nm,λB=450nm)のレーザ光(光束)を出力(射出)する。光源装置11は、画像に必要な色生成のため、波長の異なる光束を出力する複数の光源素子111(111(r),111(g),111(b))を有する。光源素子111を駆動させるための回路基板は、小型化や低コストを考え、各光源素子111(r),111(g),111(b)を光源装置11の同じ面に配置することで共通化される。なお、図9に示す光源素子111は、図2に示したLD1007に対応する構成である。
出力された各光束は、それぞれ対応するカップリングレンズ112(r),112(g),112(b)によりカップリングされる。光源素子111から出力されるレーザ光(光束)は、拡散光であるため、対応するカップリングレンズ112によって集光されて平行光となる。半導体レーザは、指向性が高い一方で出射端において拡がりを有するため、次第に減衰してしまう。光源装置11は、放射された光束の損失を小さくするため、カップリングレンズ112を用いて放射された光束を平行光にする。
カップリングされた各光束は、それぞれ対応するアパーチャ113(r),113(g),113(b)により整形される。アパーチャ113は、光束の発散角等の所定の条件に応じた形状(例えば円形、楕円形、長方形、正方形等)を有する。アパーチャ113により整形された光束は、ミラー114と、2つの合成素子115,116とを用いて合成される。
ミラー114は、光源素子111(b)から出力された光束を偏向して、光分岐素子117へ導光する。光合成素子115は、ミラー114により導光された光束と、光源素子111(g)から出力された光束とを合成する。光合成素子116は、光合成素子115によって合成された光束と、光源素子111(r)から出力された光束とをさらに合成する。光合成素子115,116は、プレート状またはプリズム状のダイクロイックミラーであり、波長に応じて光束を反射または透過し、一つの光束に合成する。光源素子111(r),111(g),111(b)から出力された光束は、光合成素子115および光合成素子116によって合成され、同一の光路をたどるようになる。
光分岐素子117に入射した入射光の一部は、光分岐素子117を透過し、他の一部すなわち残部の少なくとも一部は、光分岐素子117で反射される。すなわち、光合成素子116によって合成された光束は、光分岐素子117によって透過光と反射光に分岐される。なお、光分岐素子117は、光合成素子116と光偏向装置13との間の光路上に配置されていればよい。
透過光は、光偏向装置13に照射され、スクリーン15上での画像描画および虚像表示に用いられる。すなわち、透過光は、画像光として用いられる。一方で、反射光は、光検出器119に照射され、虚像の色や輝度を調整するためのモニタ光として用いられる。
光検出器119は、光分岐素子117によって分岐されたモニタ光の光量を検出する。光検出器119は、光源装置11の小型化のため、複数の光源素子111から出力されたレーザ光(光束)を一つの素子で検出することが好ましい。
波長の異なる複数のレーザ光源を用いた光源装置11において、表示させる虚像の色の表現は、液晶ディスプレイと同様に、白色を実現するホワイトバランスが基準となるので、ホワイトバランス(光量比)を適切に設定する必要がある。各光源素子111によって出力されるレーザ光(光束)の光量は、温度変化等の環境変動によって変動するため、ホワイトバランスを実現するための光量も変化してしまう。そこで、光源装置11は、各光源素子111から出力されるレーザ光(光束)の光量変動を光検出器119で検出し、光源素子111によって出力されるレーザ光(光束)の光量制御(APC)を行う。光源装置11は、合成素子116で合成されたレーザ光の一部を光分岐素子117によって光検出器119へ分岐させる。なお、光源装置11は、光分岐素子117における分岐面をレーザ光(光束)の入射面とし、光分岐素子117によって反射されたレーザ光を光検出器119へ導光し、光分岐素子117を透過したレーザ光を光偏向装置13へ導光するように、光分岐素子117が配置されている。
ここで、図10を用いて、光源装置11によって行われる光量制御のタイミングについて説明する。図10は、実施形態に係る光源装置から射出されたレーザ光のスクリーン上における走査領域の一例を示す図である。
表示装置10は、光源装置11から射出されたレーザ光を、光偏向装置13によって偏向させ、スクリーン15上に二次元走査する。光量制御(APC)において、光源装置11は、光検出器119によって検出されたモニタ光を用いて、光源素子111が所望の光量を出力するための電流デジタル値を決定するために、光源素子111を所定の期間点灯させる必要がある。また、光源装置11は、光量制御(APC)の精度向上のために、複数の光量で光源素子111を点灯させる必要がある。そこで、図10に示すように、スクリーン15上の走査領域230は、画像光によって画像を形成するための画像形成領域220とは異なる位置に、光量制御領域(非画像領域)210を有する。なお、画像形成領域220は、図8に示したような画像領域61と同様である。光源装置11は、光偏向装置13によって画像光を光量制御領域210に走査させるタイミングで、各光源素子111から出力されるレーザ光の光量制御(APC)を行う。
観察者3に視認させる画像を形成する画像形成領域220で光量制御を行った場合、光量の変化に応じて、形成される画像に色ムラが生じてしまう。そのため、表示装置10は、図10に示すように、光量制御用のレーザ光を点灯させる光量制御領域210と画像形成領域220とを分離し、光量制御用のレーザ光を、画像形成領域220から遮光することによって、画像形成領域220に形成される画像の色ムラの発生を抑制することができる。
図11は、実施形態に係る光源装置の構成の一例を概略的に示した図である。光源装置11は、図9に示した構成に加えて、制御回路300を含む。制御回路300は、バスライン307を介して、光源素子111および光検出器119に接続されている。制御回路300は、光源装置11の内部に実装された回路基板またはICチップ等である。制御回路300は、光検出器119からの出力に基づいて、光源素子111から出力されるレーザ光の光量を制御する。
制御回路300は、FPGA301、CPU302、ROM303、RAM304、I/F305、ドライバ306およびバスライン307を含む。FPGA301は、光源装置11の設計者による設定変更が可能な集積回路である。ドライバ306は、FPGA301からの制御信号に応じて、光源素子111の駆動信号を生成する。CPU302は、光源装置11全体を制御するための処理を行う集積回路である。ROM303は、CPU302を制御するプログラムを記憶する記憶装置である。光源装置11は、例えば、本発明に係るプログラムをCPU302またはFPGA301が実行することによって、本発明に係る光量制御方法を実現する。なお、本発明に係る光量制御方法は、本発明に係るプログラムを図2に示したCPU1002またはFPGA1001が実行することによって実現される構成であってもよい。RAM304は、CPU302のワークエリアとして機能する記憶装置である。I/F305は、光検出器119と通信するためのインターフェースである。
続いて、図12を用いて、実施形態に係る光源装置11が有する制御回路300によって実現される機能を説明する。図12は、実施形態に係る制御回路の機能構成の一例を示す図である。図12に示す制御回路300によって実現される機能は、検出部310、光量算出部330、電流決定部350、駆動制御部370、記憶・読出制御部390および記憶部3000を含む。検出部310、光量算出部330、電流決定部350、駆動制御部370、記憶・読出制御部390および記憶部3000は、例えば、図11に示したFPGA301、ドライバ306およびCPU302の処理によって実現される。なお、検出部310、光量算出部330、電流決定部350、駆動制御部370、記憶・読出制御部390および記憶部3000の機能は、表示装置10に設けられた専用IC(例えば、図2に示したコントローラ17)によって実現されてもよい。
検出部310は、光源装置11による各光源素子111から出力されるレーザ光の光量制御(APC)を行うタイミングを検出する機能である。検出部310は、例えば、光偏向装置13からの同期信号によって、図10に示した光量制御領域210に対する走査期間であることを検出する。また、検出部310は、光偏向装置13による走査周期を予め記憶し、光量制御領域210の走査周期であることを検出してもよい。検出部310は、主に、図11に示したFPGA301、CPU302およびI/F305の処理によって実現される。
光量算出部330は、光検出器119によって検出されたレーザ光(光束)の平均光量を算出する機能である。光量算出部330は、例えば、光検出器119から出力される検出信号に基づいて、光源素子111から出力されたレーザ光の平均光量を算出する。光量算出部330は、光源素子111ごとにそれぞれから出力されるレーザ光の平均光量を算出する。光量算出部330は、主に、図11に示したFPGA301、CPU302およびI/F305の処理によって実現される。
電流決定部350は、光量制御(APC)によって、光量制御範囲を設定するためのオフセット値およびゲイン値、並びに光源素子111から所定の光量のレーザ光を出力させるための電流デジタル値を決定する機能である。電流決定部350は、主に、図11に示したFPGA301およびCPU302の処理によって実現される。電流決定部350は、電流決定手段の一例である。
駆動制御部370は、電流決定部350によって決定されたパラメータに基づいて、光源素子111の駆動を制御する機能である。駆動制御部370は、主に、図11に示したFPGA301およびCPU302の処理によって実現される。駆動制御部370は、駆動制御手段の一例である。駆動制御部370は、変換部371、オフセット制御部372およびゲイン制御部373を含む。
変換部371は、電流決定部350によって決定された電流デジタル値を、光源素子111を駆動させるためのアナログ電流値に変換する機能である。変換部371によって変換されたアナログ電流値は、光源素子111から出力されるレーザ光の出力電流値の一例である。
オフセット制御部372は、電流決定部350によって設定されたオフセット値に基づいて、光源素子111の電流値をオフセットする機能である。
ゲイン制御部373は、電流決定部350によって設定されたゲイン値に基づいて、光源素子111の電流値を増幅させる機能である。
記憶・読出制御部390は、記憶部3000に各種データを記憶させ、または記憶部3000から各種データを読み出す機能である。記憶・読出制御部390は、主に、図11に示したFPGA301、CPU302の処理によって実現される。記憶部3000は、主に、図11に示したFPGA301、CPU302およびROM303によって実現される。
●光量制御
続いて、図13乃至図17を用いて、光源装置11による光量制御について説明する。
図13は、光源素子からの出力光量とアナログ電流値の特性を示す図である。図13は、絶対最大定格が50mWである光源素子の出力光量の電流値特性(IL特性)の一例を示す。図13に示すように、光源素子111の出力光量は、発振閾値電流(100mA)の前後で特性が異なり、発振閾値より小さい電流値ではほとんど発光せず、発振閾値より大きい電流値では線形性が高い。光源装置11は、光源素子111の出力光量の制御を、図12に示したような駆動制御部370を用いて行われる。また、光源装置11は、アナログ値(以下、アナログ電流値と称する。)ではなくデジタル値(以下、電流デジタル値と称する)を、駆動制御部370に設定する。駆動制御部370は、例えば、電流値を10bitで処理し、アナログ電流値0mAを0digit、アナログ電流値300mAを1023digitに対応させた場合、図14(a)に示すようなIL特性が得られる。光源装置11は、図10に示したような光量制御領域210において、複数の光量で光源素子111を発光させ、光検出器119による出力を得ることで、画像描画および虚像表示に必要な光量(出力値)となる電流デジタル値を探索する。
光検出器119へは光源素子111から出力されたレーザ光の一部が到達する。光検出器119へ入射したレーザ光は、図14(b)に示すようなデジタル値で処理される。そこで、光源装置11は、予め調整工程等で光検出器119の出力と光源光量との関係を取得しておくことで、図14(b)に示すような光検出器119の出力値を、図14(a)に示すような光源光量に変換することができる。光量算出部330は、光検出器119の出力と光源光量の関係に基づいて、光検出器119からの出力された出力値から、光源素子111から出力されたレーザ光の光量を算出する。なお、光検出器119の出力と光源光量の関係(近似式)は、予め記憶部3000に記憶されている。
電流デジタル値1digitあたりの分解能は、約0.3mA/digitであり、発振閾値電流以上の光量は、0.07mW/digitとなる。環境照度が低い場合、HUDのような車載装置である表示装置10が必要な光源素子111からの出力光量の上限は、例えば、10mWである。この場合、発振閾値電流に対応するデジタル電流値(340digit)から出力光量の上限値(10mW)に対応するデジタル電流値(480digit)までの範囲が有効な電流デジタル値(以下、有効電流デジタル値と称する。)となる。この有効電流デジタル値の範囲が、光量制御が行うことが可能な範囲(以下、光量制御範囲と称する。)である。
ここで、一般的に画像の階調は、256段階で表される。一方で、光量制御範囲は、140digit(340digit~480digit)であるため、滑らかな階調表現を行うことが困難である。また、光源素子が出力可能な最大電流値(最大アナログ電流値)は、画像描画に必要な電流値に対して余裕を持たせるため、300mA以上に設計される。電流デジタル値に対応するアナログ電流値を大きくした場合、デジタル値1digit当たりの制御電流値の範囲が大きくなるので、光量制御の分解能は低くなる。したがって、1023digitに対応するアナログ電流値が高くなり、光量制御範囲は、140digit以下となるため、光量制御の分解能は、さらに低くなってしまう。
そこで、光量制御の分解能を高める方法として、光源素子111を駆動させるためのゲイン値およびオフセット値を最適値に設定する方法がある。ここで、アナログ電流値、電流デジタル値、ゲイン値およびオフセット値の関係は、以下の式1のように表される。式1に示されるように、光源装置11は、光源素子111を駆動させるために設定されるオフセット値およびゲイン値を制御することで、同じ電流デジタル値が入力されても、光源素子111から出力するレーザ光のアナログ電流値(出力電流値)を変更することができる。
アナログ電流値=電流デジタル値 × ゲイン値 + オフセット値 ・・・(式1)
また、式1に示されるように、光源装置11は、ゲイン値を制御することで、電流デジタル値に対応する出力電流値(アナログ電流値)をg倍させることができる。図15は、ゲイン値の制御によるIL特性の変動の一例を示す図である。図15は、例えば、10mWの光量を出力可能な電流値を、1023digitの電流デジタル値に対応させた場合の例である。図15に示すIL特性は、図14(a)に示したようなIL特性のゲイン値を、約2倍にしたものである。図15に示すように、発振閾値の光量に対応する電流デジタル値を730digit、10mWの光量に対応する電流デジタル値を1023digitに設定させたので、光量制御範囲は、約300digitとなる。このように、光源装置11は、ゲイン値を制御することによって、光量制御の分解能を向上させることができる。
また、式1に示されるように、光源装置11は、オフセット値を制御することで、電流デジタル値に対する出力電流値(アナログ電流値)を一定量増加させることができる。図16は、オフセット値の制御によるIL特性の変動の一例を示す図である。図16は、例えば、画像描画および虚像表示に必要な最小光量が1mWである場合、1mWの光量を出力するための電流値をオフセットした場合の例である。図16に示すIL特性は、図14(a)に示したようなIL特性を、電流デジタル値が低い方向へシフトさせたものである。光源素子111から出力されるレーザ光は、発振閾値以上の電流値で光量が安定するため、光量制御(電流値制御)には発振閾値以上の光量を用い、発振閾値以下の光量制御(電流値制御)は、不要である。そのため、図16に示すように、光源装置11は、最小光量(1mW)を出力するための電流デジタル値が0に近づくように、デジタル電流値をオフセットする。
このように、ゲイン値およびオフセット値の最適値を組み合わせることで、光源装置11は、図17に示すような理想的なIL特性を取得することができる。ここで、光量制御の分解能は、10bitの最大値1023digitに対応する電流値を、最大光量を出力する電流値(Imax_n)とし、0digitに対応する電流値を、最小光量を出力する電流値(Imax_0)とした場合が最も高い。光量制御の分解能が高ければ、光量制御の精度も高くなるので、光源装置11は、ホワイトバランスを適切に設定することができる。図17に示すようなIL特性の場合、0digit~1023digitの範囲が光量制御範囲となるので、光量制御の分解能が向上することで制御精度が向上する。光源装置11は、ゲイン値およびオフセット値の制御を、画像描画および虚像表示に必要な光量に対する電流デジタル値の探索の前に行うことで、光量制御の分解能を高めることができる。
本実施形態は、光源装置11が、温度変化等の環境変動に合わせて光源素子111の出力光量のダイナミックレンジをカバーするように、オフセット値およびゲイン値を最適値に設定することで、光量制御に用いる光量制御範囲を最適化して光量制御に掛かる試行回数を低減させることを目的とする。
●光量制御範囲の設定
次に、図18乃至21を用いて、本実施形態における光量制御範囲の設定方法について説明する。HUDのような表示装置10は、様々な環境照度に対して適切な輝度で画像表示するために光源素子111の出力光量を変更したり、温度変動等で光源のIL特性が変化したりするため、適切なゲイン値およびオフセット値を決定し、光量制御範囲を設定しなければならない。ここで、ばらつきや経年劣化等を含めると、あらかじめ最適値をテーブルとして保持するよりもその都度適正値を探索する方が精度は高い。しかしながら、ゲイン値およびオフセット値の探索に時間がかかり処理が遅れた場合、光量制御の分解能が悪くなり、画像のコントラストや色が表現できなくなる。したがって、光源装置11は、素早く探索を行って、適正な光量制御範囲を設定する必要がある。
図18は、実施形態に係る光源装置において、光量制御方法の一例を示すフローチャートである。ステップS101において、光源装置11の検出部310は、光量制御(APC)のタイミングであることを検出した場合、処理をステップS102へ移行させる。具体的には、検出部310は、光偏向装置13からの同期信号によって、図10に示した光量制御領域210に対する走査期間であることを検出した場合、光量制御タイミングであることを検出する。また、検出部310は、光偏向装置13による走査周期を予め記憶し、光量制御領域210の走査周期であることを検出した場合、光量制御タイミングであることを検出してもよい。一方で、光源装置11は、検出部310によって光量制御タイミングであることが検出されるまでステップS101の処理を繰り返す。
ステップS102において、光源装置11の電流決定部350は、検出部310によって光量制御のタイミングであることが検出された場合、光量制御範囲の探索処理を実行する。
ここで、電流決定部350における光量制御範囲の探索処理の詳細を説明する。図19は、電流決定部における探索処理の一例を示すフローチャートである。上記式1に示すように、ゲイン値は、電流デジタル値に寄与し、オフセット値は、電流デジタル値とは独立していることがわかる。したがって、ゲイン値は、一つのIL特性から適正値が求められ、オフセット値は、二つのIL特性の差分から適正値が求められる。適正値の探索は、例えば、光量決定用の非画像領域210において、異なるゲイン値およびオフセット値のIL特性を取得し、それぞれの最小光量および最大光量の電流デジタル値とその傾きを算出することによって行われる。
まず、ステップS201において、電流決定部350は、第1の探索用オフセット値α1と探索用ゲイン値β1を設定する、そして、ステップS202において、電流決定部350は、設定した第1の探索用オフセット値α1と探索用ゲイン値β1を用いて、発振閾値以上の光量になるよう、電流デジタル値I1で光源素子111を発光させる。具体的には、電流決定部350は、発振閾値以上の光量になるよう、電流デジタル値I1を決定する。駆動制御部370の変換部371は、電流デジタル値I1を、光源素子111を駆動させるためのアナログ電流値に変換する。駆動制御部370のオフセット制御部372は、第1の探索用オフセット値α1に基づいて、光源素子111の電流値をオフセットする。駆動制御部370のゲイン制御部373は、探索用ゲイン値β1に基づいて、光源素子111の電流値を増幅させる。そして、駆動制御部370は、設定されたパラメータを用いて、光源素子111を発光させる。
ステップS203において、電流決定部350は、光検出器119による出力光量を検出する。具体的には、光検出器119は、ステップS202の処理において発光された光源素子111のレーザ光を検出する。光量算出部330は、光検出器119によって検出されたモニタ光の平均光量を算出する。光量算出部330は、例えば、光検出器119の出力信号を検出し、記憶部300に記憶された光検出器119の出力と光源光量の関係に基づいて、光検出器119からの出力信号の出力値をモニタ光の光量に換算する。そして、電流決定部350は、光量算出部330によって算出された、光検出器119による出力光量を検出する。
ステップS204において、電流決定部350は、ステップS201の処理によって設定された第1の探索用オフセット値α1と探索用ゲイン値β1を用いて、発振閾値以上の光量になるよう、電流デジタル値I1とは異なる電流デジタル値I2で光源素子111を発光させる。具体的には、電流決定部350は、発振閾値以上の光量になるよう、電流デジタル値I2を決定する。駆動制御部370の変換部371は、電流デジタル値I2を、光源素子111を駆動させるためのアナログ電流値に変換する。駆動制御部370のオフセット制御部372は、第1の探索用オフセット値α1に基づいて、光源素子111の電流値をオフセットする。駆動制御部370のゲイン制御部373は、探索用ゲイン値β1に基づいて、光源素子111の電流値を増幅させる。そして、駆動制御部370は、設定されたパラメータを用いて、光源素子111を発光させる。
ステップS205において、電流決定部350は、光検出器119による出力光量を検出する。具体的には、光検出器119は、ステップS204の処理において発光された光源素子111のレーザ光を検出する。光量算出部330は、光検出器119によって検出されたモニタ光の平均光量を算出する。光量算出部330は、例えば、光検出器119の出力信号を検出し、記憶部300に記憶された光検出器119の出力と光源光量の関係に基づいて、光検出器119からの出力信号の出力値をモニタ光の光量に換算する。そして、電流決定部350は、光量算出部330によって算出された、光検出器119による出力光量を検出する。
ステップS206において、電流決定部350は、最小光量に対応する電流デジタル値(Imin_1)、および最大光量に対応する電流デジタル値(Imax_1)を算出する。ここで、Imin_1は、第1の最小光量デジタル値の一例であり、Imax_1は、最大光量デジタル値の一例である。具体的には、まず、電流決定部350は、ステップS204の処理において検出された電流デジタル値I1における光量と、ステップS205の処理において検出された電流デジタル値I2における光量との間における光量の増加量(以下、第1の増加量と称する。)を算出する。画像描画および虚像表示における最大光量が40mWである場合、電流決定部350は、光検出器119の出力値を光源光量に換算し、図20に示すような回帰直線を求める。そして、電流決定部350は、最小光量の電流デジタル値Imin_1と、最大光量の電流デジタル値Imax_1を算出する。
さらに、ステップS207において、電流決定部350は、第2の探索用オフセット値α2と探索用ゲイン値β1を設定する。そして、ステップS208において、電流決定部350は、設定した第2の探索用オフセット値α2と探索用ゲイン値β1を用いて、発振閾値以上の光量になるよう、電流デジタル値I1で光源素子111を発光させる。具体的には、電流決定部350は、発振閾値以上の光量になるよう、電流デジタル値I1を決定する。駆動制御部370の変換部371は、電流デジタル値I1を、光源素子111を駆動させるためのアナログ電流値に変換する。駆動制御部370のオフセット制御部372は、第2の探索用オフセット値α2に基づいて、光源素子111の電流値をオフセットする。駆動制御部370のゲイン制御部373は、探索用ゲイン値β1に基づいて、光源素子111の電流値を増幅させる。そして、駆動制御部370は、設定されたパラメータを用いて、光源素子111を発光させる。
ステップS209において、電流決定部350は、光検出器119による出力光量を検出する。具体的には、光検出器119は、ステップS208の処理において発光された光源素子111のレーザ光を検出する。そして、電流決定部350は、光検出器119からの出力された出力光量を検出する。光量算出部330は、光検出器119によって検出されたモニタ光の平均光量を算出する。光量算出部330は、例えば、光検出器119の出力信号を検出し、記憶部300に記憶された光検出器119の出力と光源光量の関係に基づいて、光検出器119からの出力信号の出力値をモニタ光の光量に換算する。そして、電流決定部350は、光量算出部330によって算出された、光検出器119による出力光量を検出する。
ステップS210において、電流決定部350は、ステップS207の処理によって設定された第2の探索用オフセット値α2と探索用ゲイン値β1を用いて、発振閾値以上の光量になるよう、電流デジタル値I1とは異なる電流デジタル値I2で光源素子111を発光させる。具体的には、電流決定部350は、発振閾値以上の光量になるよう、電流デジタル値I2を決定する。駆動制御部370の変換部371は、電流デジタル値I2を、光源素子111を駆動させるためのアナログ電流値に変換する。駆動制御部370のオフセット制御部372は、第2の探索用オフセット値α2に基づいて、光源素子111の電流値をオフセットする。駆動制御部370のゲイン制御部373は、探索用ゲイン値β1に基づいて、光源素子111の電流値を増幅させる。そして、駆動制御部370は、設定されたパラメータを用いて、光源素子111を発光させる。
ステップS211において、電流決定部350は、光検出器119による出力光量を検出する。具体的には、光検出器119は、ステップS204の処理において発光された光源素子111のレーザ光を検出する。光量算出部330は、光検出器119によって検出されたモニタ光の平均光量を算出する。光量算出部330は、例えば、光検出器119の出力信号を検出し、記憶部300に記憶された光検出器119の出力と光源光量の関係に基づいて、光検出器119からの出力信号の出力値をモニタ光の光量に換算する。そして、電流決定部350は、光量算出部330によって算出された、光検出器119による出力光量を検出する。
ステップS212において、電流決定部350は、最小光量に対応する電流デジタル値Imin_2、および最大光量に対応する電流デジタル値Imax_2を算出する。ここで、Imin_2は、第2の最小光量デジタル値の一例である。具体的には、電流決定部350は、ステップS204の場合と同様に、図21に示すような回帰直線を求める。そして、電流決定部350は、最小光量の電流デジタル値Imin_2と、最大光量の電流デジタル値Imax_2を算出する。
ステップS213において、電流決定部350は、最小光量の電流デジタル値Imin_1,Imin_2と、最大光量の電流デジタル値Imax_1,Imax_2から、最小光量に対応する電流デジタル値(Imax_0)が0digitに近づき、最大光量に対応する電流デジタル値(Imax_n)がn(0~n、ただし、nは自然数。)に近づくよう、電流決定部350は、最適なオフセット値、ゲイン値を算出する。具体的には、電流決定部350は、算出した最小光量の電流デジタル値Imin_1,Imin_2、および最大光量の電流デジタル値Imax_1、並びに第1の探索用オフセット値α1、第2の探索用オフセット値α2および探索用ゲイン値β1に基づいて、下記式2および式3によって、ゲイン値β2およびオフセット値α3を決定する。nは、例えば、1023digitである。
このように、光源装置11は、オフセット値α3およびゲイン値β2を決定することで、光量制御に用いる電流値の範囲を示す光量制御範囲を設定することができる。設定される光量制御範囲は、例えば、図17に示したIL特性のような電流デジタル値の範囲となる。光源装置11の電流決定部350は、設定した光量制御範囲において、光源素子111から出力するレーザ光の光量に対応する電流デジタル値の探索処理を行う。電流デジタル値の探索処理については、後述する。
図18に戻り、光源装置11における光量制御処理の説明を続ける。ステップS103において、電流決定部350は、決定したゲイン値β2およびオフセット値α3、並びに後述する探索処理によって決定された電流デジタル値を、駆動制御部370へ出力する。
ステップS103において、光源装置11の駆動制御部370は、決定された駆動条件に基づく駆動信号を、光源素子111に出力する。具体的には、駆動制御部370の変換部371は、電流決定部350によって決定された電流デジタル値を、光源素子111を駆動させるためのアナログ電流値に変換する。また、駆動制御部370のオフセット制御部372は、電流決定部350によって決定されたオフセット値α3に基づいて、光源素子111の電流値をオフセットする。さらに、駆動制御部370のゲイン制御部373は、電流決定部350によって決定されたゲイン値β2に基づいて、光源素子111の電流値を増幅させる。このように、光源装置11は、電流決定部350によって決定されたパラメータに基づく変換部371、オフセット制御部372およびゲイン制御部373のそれぞれの処理によって、光源素子111を駆動させるための駆動信号を生成する。
駆動制御部370は、変換部371、オフセット制御部372およびゲイン制御部373によって設定された駆動条件(パラメータ)に基づいて、駆動信号を光源素子111に出力する。そして、光源素子111は、駆動制御部370から出力された駆動信号に基づいて、レーザ光を出力する。
ここで、図19に示したような探索処理は、使用者にとって不要な発光であるため、図10で示したような光量制御領域210を用いて行われることが好ましい。また、高画角や輝度等の観点から、光量制御領域210は狭いほど、すなわち光偏向装置13の垂直方向に対する水平方向の走査線本数は少ないほどよい。水平方向の1走査の時間は数十μsであるため、光検出器119で光量を検出する時間等を考慮すると、垂直方向の1往復(1フレーム)において光量制御領域210で点灯できる回数は限られている。そのため、光源装置11は、探索処理に要する発光回数が多くなった場合、複数フレームに亘って光量を取得する必要があるため、探索処理に時間を要してしまう。そこで、図19に示したようなオフセット値α3およびゲイン値β2の探索処理の場合、必要な光源素子111の点灯回数は、最小で4点であるので、少ない試行回数、すなわち短時間で探索処理を終えることができる。
このように、光源装置11は、光検出器119からの出力に基づいて、光源素子111から出力されるレーザ光の光量の制御に用いる電流値の範囲を示す光量制御範囲を設定し、設定した光量制御範囲において、光源素子111から出力されるレーザ光の光量を制御する。そのため、光源装置11は、温度変化等の環境変動に合わせて光源素子111の出力光量のダイナミックレンジをカバーするように、光検出器119からの出力に基づいて光量制御範囲を設定するので、光量制御に用いる範囲を最適化することができる。
また、光源装置11は、光検出器119からの出力に基づいて、オフセット値α3およびゲイン値β2が適正な値となるように決定することで、光量制御範囲を最適化するとともに、光量制御に掛かる試行回数を低減させることができる。
さらに、例えば、HUDのような表示装置は、様々な環境照度に対して適切な表示輝度で画像描画および虚像表示を行う必要があるため、レーザ光の電流値を増減させたり、光源素子の点灯パルスのデューティ比を変更したりして、光源装置から出力されるレーザ光の平均光量を最適化する。そのため、環境照度に合わせて光源素子111の出力光量のダイナミックレンジをカバーするようにオフセット値、ゲイン値を設定しても、温度変動でIL特性が変化したり、環境照度が変化に基づいて異なる点灯パルスのデューティ比に変更することによりIL特性が変化したりして、使用するダイナミックレンジが変化した場合、オフセット値、ゲイン値は適切ではなくなってしまう。そこで、光源装置11は、光源素子111から出力されるレーザ光のダイナミックレンジが随時変化するような場合においても、光検出器119からの出力に基づいて光量制御範囲を設定するので、様々な変動に対応することができる。
また、光源装置11は、光源素子111から出力されるダイナミックレンジを高い分解能で制御することできるようにオフセット値α3およびゲイン値β2を決定することで、最適な光量制御範囲を設定して、量子化誤差を小さくするように光量制御を行うことができる。
さらに、光源装置11は、駆動制御部370による設定の切り替えを簡易な処理で行うことができるので、複数の光量を同じフレームで調整できる場合、1フレーム内で探索処理を完了させることができる。また、光源装置11は、光源装置11による光量の測定を一つの光量の電流値特性に対して2点以上で行うことで、オフセット値α3およびゲイン値β2の推定精度を向上させることができる。
●最小光量および最大光量の電流デジタル値の探索
続いて、図22および図23を用いて、最小光量のデジタル値の探索処理について説明する。光源素子111の出力光量と電流デジタル値の特性は、図22(a)に示すように線形性が悪い場合がある。このような線形性の電流値特性を用いて、図19のステップS206およびステップS212で示したような回帰直線を求めた場合、図22(b)に示すような結果となる。図22(b)に示すように、電流デジタル値100digit,200digitの2点から求めた回帰直線と、電流デジタル値700digit,800digitの2点から求めた回帰直線は異なる。そのため、回帰直線を求めるために用いる値によって、最小光量の電流デジタル値と最大光量の電流デジタル値の算出結果が異なってしまう。
そこで、最小光量の電流デジタル値を算出する場合、光源装置11は、低光量側で求めた回帰直線を用い、最大光量の電流デジタル値を算出する場合、光源装置11は、高光量側で求めた回帰直線を用いればよい。最小光量のデジタル値を算出する場合、最小光量付近の光量を使用するのが好ましく、回帰直線を求めるために用いる光量は、最大電流デジタル値(Imax_n)の値nの半分以下の値であることが好ましい。すなわち、回帰直線を求めるために用いる電流デジタル値は、0以上かつn/2以下の値であることが好ましい。一方で、最大光量のデジタル値を算出する場合、最大光量付近の光量を使用するのが好ましく、回帰直線を求めるために用いる光量は、最大電流デジタル値(Imax_n)の値nの半分以上であることが好ましい。すなわち、回帰直線を求めるために用いる電流デジタル値は、n/2以上かつn以下の値であることが好ましい。
最小光量の探索には、図23に示すようなオフセット値の異なるIL特性を取得する必要がある。まず、駆動制御部370は、第1の探索用オフセット値α1と探索用ゲイン値β1を用いて、発振閾値以上の光量になるように電流デジタル値I3およびI4の2点で、光源素子111を発光させる。電流決定部350は、光検出器119によって検出された、第1の探索用オフセット値α1と探索用ゲイン値β1によって出力されたレーザ光に基づいて、回帰直線を求め、最小光量の電流デジタル値Imin_3を算出する。同様に、駆動制御部370は、第2の探索用オフセット値α2と探索用ゲイン値β1を用いて、発振閾値以上の光量になるように、電流デジタル値I3とI4の2点で、光源素子111を発光させる。電流決定部350は、光検出器119によって検出された、第2の探索用オフセット値α2と探索用ゲイン値β1によって出力されたレーザ光に基づいて、回帰直線を求め、最小光量の電流デジタル値Imin_4を算出する。そして、電流決定部350は、上記式3を用いて、第1の探索用オフセット値α1と第2の探索用オフセット値α2の差と、算出した二つの最小光量の電流デジタル値との差(Imin_3-Imin_4)から、最小光量における電流デジタル値が0digitに近づくように、オフセット値α3を算出する。
このとき、電流決定部350は、電流デジタル値I3とI4の差分を、図19乃至図21で示したような電流デジタル値I1とI2の差分よりも小さくすることで、最小光量の電流デジタル値の算出精度を向上させることができる。
続いて、最大光量の電流デジタル値の探索処理について説明する。最大光量の探索において、駆動制御部370は、第1の探索用オフセット値α1と探索用ゲイン値β1を用いて、発振閾値以上の光量になるように電流デジタル値I5およびI6の2点で、光源素子111を発光させる。そして、電流決定部350は、光検出器119によって検出された、第1の探索用オフセット値α1と探索用ゲイン値β1によって出力されたレーザ光に基づいて、図24に示すような回帰直線を求め、最大光量の電流デジタル値Imax_nを算出する。そして、電流決定部350は、上記式2を用いて、最大光量の電流デジタル値Imax_nが1023digitに近づくように、ゲイン値β2を算出する。
このとき、電流決定部350は、電流デジタル値I5とI6の差分を、図19乃至図21で示したような電流デジタル値I1とI2の差分よりも小さくすることで、最大光量の電流デジタル値の算出精度を向上させることができる。
これによって、光源装置11は、光量制御に用いる最小光量および最大光量の電流デジタル値を決定するために、それぞれに適する探索用オフセット値および探索用ゲイン値を用いることで、光量制御範囲の算出精度を向上させることができる。
また、光源素子111の出力光量の電流値特性は、環境変化に応じて変化し、高温になるほど同じ光量を出力するための電流値が高くなる。したがって、最大光量の電流デジタル値Imax_nがnとなるように調整されていても、電流デジタル値の探索を行う場合の温度が上昇している場合、最大光量の探索結果として電流デジタル値がnより大きくなる。この増加を見越して、最大光量の電流デジタル値Imax_nは、設定可能な最大デジタル値N(N=0~N、ただし、Nは自然数)に対して余裕を持たせて設定した方が好ましい。設定可能な最大デジタル値Nは、例えば、駆動制御部370の変換部371によってアナログ電流値に変換することができるデジタル値の最大値である。電流決定部350は、設定可能な最大デジタル値N=1023digitに対して、最大光量の電流デジタル値(Imax_n)の値nがn=900digitとなるように、ゲイン値β2を設定する。このように、光源装置11は、温度変化等の環境変動に対応することができるように光量制御範囲を設定することで、光量制御の精度を向上させることができる。
なお、設定可能な最大デジタル値Nに対する余裕を大きくした場合、有効な電流デジタル値が少なくなり量子化誤差が大きくなってしまうため、最大光量の電流デジタル値(Imax_n)の値nは、設定可能な最大デジタル値Nの半分の値より上回っていることが好ましい。すなわち、nは、2/N<n<Nの関係を満たす値であることが好ましい。
●電流デジタル値の決定
続いて、図25および図26を用いて、画像信号の走査に使用する電流デジタル値を決定する処理について説明する。光源装置11は、上述のオフセット値およびゲイン値の探索処理が完了した場合、画像描画および虚像表示に使用する電流デジタル値の探索を行う。例えば、画像信号が一般的なディスプレイ同様に、256の階調値で構成されている場合、光源装置11は、各階調に対応する光量を取得することが好ましい、また、電流デジタル値の探索処理において、光量を取得する回数は、多ければ多いほどよい。しかしながら、光量制御領域210において光量を取得できる回数は限られており、一色の光源素子111に対する光量の取得回数は限定される。したがって、光源装置11は、オフセット値およびゲイン値と同様に、各階調の電流デジタル値を回帰直線から算出する。
まず、電流デジタル値の探索処理において、光源装置11は、IL特性をp点分の電流デジタル値から取得する場合、最大光量の電流デジタル値の値nをp等分した値(n/p)ごとに電流デジタル値を増加させてIL特性を取得する。この場合、隣接点の間における光量の増加量(n/p)を第二の増加量とする。これに対して、図19に示したようなゲイン値およびオフセット値を決定するための第一の増加量は、最小光量および最大光量付近の電流デジタル値に対する光量の変動をより正確に取得するため、第二の増加量よりも小さくして、より狭い領域の光量を取得することが好ましい。
また、電流デジタル値を算出するための回帰直線は、少ない取得点数から求めた方がIL特性の線形性の影響を受けにくい。しかしながら、IL特性に線形性があっても、駆動制御部370および光検出器119の量子化誤差やノイズ等の影響によって、図25に示すような再現性のない異常点(例えば、図25に示す電流デジタル値が400付近の点)を取得する場合がある。回帰直線を求めるための光量は、算出する電流デジタル値に近い値を用いる方が好ましいが、図19に示したような探索処理のように2点間で回帰直線を求める場合、異常点の影響を大きく受けてしまう。
図25において、理想的なIL特性は、実線で示される。図25の実線において、7mWの光量を出力する電流デジタル値は、280digitである。電流デジタル値を200digit間隔で取得し、7mWの光量を、電流デジタル値200digitと400digitの2点間の回帰直線から求める場合、異常点の影響を受けるため電流デジタル値は、400digitと算出されてしまう。しかしながら、この異常点は、再現性がないため、光源素子111からは10mWの光量が出力されてしまうので、誤差が大きくなる。
このような異常点の影響を小さくするため、光源装置11は、少なくとも3点以上の取得点数を用いて回帰直線を求める方が好ましい。図26は、異常点が存在する場合において、3点を用いて求めた回帰直線を点線で示し、実際に光源素子111から出力される光量のIL特性を実線で示したものである。図26において、7mWの光量に対応する電流デジタル値を、電流デジタル値200digit、400digitおよび600digitの3点から求めた場合、算出された電流デジタル値は、328digitとなる。一方で、実際に電流デジタル値328digitにおいて、光源素子111から出力される光量は、8.2mWとなる。つまり、3点の取得点数を用いて求めた回帰直線は、2点の取得点数で求めた回帰直線よりも、誤差が小さくなることがわかる。
このように、光源装置11は、3点以上の光量の取得点数を用いて算出された回帰直線を用いて、画像描画および虚像表示に使用する電流デジタル値を決定することで、取得光量の異常値の影響を低減させ、実際に光源素子111から出力されるレーザ光のIL特性との誤差が少ない電流デジタル値を算出することができる。
●起動時の発振閾値の算出
続いて、光源装置11の起動時における発振閾値の算出処理について説明する。ゲイン値およびオフセット値の探索処理を行う場合、光源装置11は、発振閾値の電流デジタル値を記憶しておく必要がある。しかしながら、光源装置11の電源起動時は、発振閾値の値(電流デジタル値)がわからないため、光源装置11は、まず、発振閾値の電流デジタル値の探索処理を行う。
光源装置11は、図27に示すI7,I8,I9のような隣接する電流デジタル値における光量の増加量を第一の増加量より大きくなるように、電流デジタル値I7,I8,I9で光源素子111を発光させる。光源装置11は、光検出器119から少なくとも2点以上の出力を取得するまで、駆動制御部370によって電流デジタル値を変化させる。そして、光源装置11は、発振閾値以上の電流デジタル値I8とI9の2点を用いて、図14(a),(b)に示したような電流デジタル値と光検出器119の出力の関係性によって、発振閾値光量に対応する電流デジタル値(Imin_0)を算出する。
●光量制御方法
続いて、光源装置11を備える表示装置10を用いた光量制御方法について説明する。光源装置11は、図9に示したように、三色の光源素子111を有する。光量制御領域210で光源素子111を点灯させる回数Mが決まっている場合、表示装置10は、電流デジタル値の探索を素早く行うため、光偏向装置13の垂直方向の一往復(1フレーム)中で三色のIL特性を取得することが好ましい。したがって、一色の光源素子111が出力したレーザ光に対する光量の取得回数pは、1フレーム内での光源素子111の全点灯回数Mを三色で配分したM/3以下であり、M/3に最も近い整数である。
例えば、M=28、p=9と設定したとする。この場合、光源装置11は、三色の光源素子111のそれぞれのIL特性を、それぞれ9点分の電流デジタル値(n=900digitとした場合、100digitおきの電流デジタル値)を用いて、1フレーム内で取得することができる。
また、迷光の観点から、光量制御領域210における発光位置は、画像形成領域220から距離を取っていた方が好ましい。そのため、図28に示すように、光量制御領域210は、左端210aと右端210bに分かれていることが好ましい。この場合、IL特性を左端210aと右端210bで一回ずつ取得することから、1フレーム内での光源素子111の全点灯回数Mは、2の倍数となる。
なお、設定パラメータの探索期間を光偏向装置13の垂直方向の一往復(1フレーム)とした場合において、IL特性の取得点数を増加させる場合、画像形成領域220が狭くなるため、バランスを考慮する必要がある。異常点の影響を小さくするため、3点ごとまたは4点ごとでグループにして回帰直線を求める場合、光源装置11は、線形性の悪いIL特性であっても、9点分の電流デジタル値を用いてIL特性を取得すれば、色再現性の観点からも十分な光量制御の精度が得られる。
また、光源装置11は、例えば、画像形成領域220と光量制御領域210において、オフセット値とゲイン値を切り替えることができる。これにより、光源装置11は、オフセット値およびゲイン値の探索処理による駆動制御部370の設定値の変更が、画像形成領域220に影響しないようにすることができる。さらに、光源装置11は、光量制御領域210内においてもオフセット値およびゲイン値が変更できる場合、オフセット値およびゲイン値のそれぞれの探索を、光偏向装置13の垂直方向の一往復(1フレーム)内に完了させることができる。
さらに、表示装置10の表示輝度を変化させる方法として、光源素子111を点灯させるパルス幅を変更してデューティ比を可変にする方法がある。図29に示すように、パルス幅が異なる場合、IL特性も変わることから、光源装置11は、オフセット値とゲイン値を、パルス幅ごとに設定した方がより高精度に光量制御を行うことができる。
また、画像形成領域220と光量制御領域210において、光源素子111を点灯させるパルスのデューティ比を切り替えることによって、画像描画および虚像表示に用いるパルスとは別に、光量制御領域210においてゲイン値、オフセット値および電流デジタル値の探索処理を行うことができる。例えば、表示装置10がHUDである場合、表示輝度は、高い頻度で切り替えられる。そのため、表示装置10は、異なるパルスにおける設定パラメータの探索を、光量制御領域210を用いて事前に行っておけば、パルスの変更命令があっ場合においても、素早く適切な設定を反映させることができる。
●まとめ●
以上説明したように、本発明の一実施形態に係る光源装置は、レーザ光を出力する光源素子111(光源の一例)と、光源素子111から出力されるレーザ光の光量を制御する制御回路300(制御部の一例)と、を備える。そして、制御回路300は、光源素子111から出力されたレーザ光を検出する光検出器119からの出力に基づいて、光量の制御に用いる電流値の範囲を示す光量制御範囲に設定し、設定した光量制御範囲において光源素子111から出力されるレーザ光の光量を制御する。そのため、光源装置11は、光検出器119の出力に基づいて光量制御範囲を設定することで、光量制御範囲を最適化することができる。
また、本発明の一実施形態に係る光源装置において、制御回路300は、レーザ光の最小光量に対応する電流デジタル値が0に近づき、かつレーザ光の最大光量に対応する電流デジタル値Imax_nがn(0~n、ただし、nは自然数)に近づくように、光量の制御に用いる電流値の範囲を示す光量制御範囲を設定する。そして、光源装置11において、レーザ光の最大光量は、画像形成領域220(画像領域の一例)で必要とされるホワイトバランスを維持するための最大の輝度となる光量であり、レーザ光の最小光量は、画像形成領域220で色を生成するために必要とされる最小の光量である。そのため、光源装置11は、画像描画および虚像表示に用いるレーザ光の光量の範囲に合わせて光量制御範囲を設定することで、光量制御の分解能を高めることができる。
さらに、本発明の一実施形態に係る光源装置において、制御回路300(制御部の一例)は、光量制御範囲において光源素子111(光源の一例)から出力されるレーザ光の出力電流値を決定し、光源素子111は、決定された出力電流値でレーザ光を出力する。そのため、光源装置11は、光検出器119の出力に基づいて最適設定された光量制御範囲において、光源素子111から出力されるレーザ光の出力電流値を決定するため、光量制御に要する試行回数を低減させることができる。
また、本発明の一実施形態に係る光源装置は、光源素子111(光源の一例)から出力されるレーザ光の光量の制御に用いる電流値の範囲を示す光量制御範囲を設定するためのオフセット値α3およびゲイン値β2、並びに光源素子111から所定の光量のレーザ光を出力させるための電流デジタル値を決定する電流決定部350(電流決定手段の一例)と、設定された光量制御範囲において、光源素子111の駆動を制御する駆動制御部370(駆動制御手段の一例)とを有する。駆動制御部370は、レーザ光の発振閾値以上の光量を出力する電流デジタル値I1(第1の電流デジタル値の一例)、および電流デジタル値I1に対応する光量から第1の増加量で増加させた光量を出力する電流デジタル値I2(第2の電流デジタル値の一例)を用いて、光源素子111からレーザ光を出力させる。そして、電流決定部350は、第1の探索用オフセット値α1と探索用ゲイン値β1を用いてレーザ光を出力した場合と、第2の探索用オフセット値α2と探索用ゲイン値β1を用いてレーザ光を出力した場合とにおいて、それぞれにおける電流デジタル値と光検出器119の出力の関係を算出し、算出した結果に基づいて光量制御範囲を設定するためのオフセット値α3およびゲイン値β2を決定する。そのため、光源装置11は、光源素子111から出力されるダイナミックレンジを高い分解能で制御することできるオフセット値α3およびゲイン値β2を決定し、高精度に所望の光量に対応する電流デジタル値を決定することで、最適な光量制御範囲を設定して、量子化誤差を小さくするように光量制御を行うことができる。
さらに、本発明の一実施形態に係る光源装置において、電流決定部350(電流決定手段の一例)は、第1の探索用オフセット値α1と探索用ゲイン値β1を用いて出力されたレーザ光を検出した光検出器119の出力に基づいて、レーザ光の最小光量に対応する電流デジタル値Imin_1(第1の最小電流デジタル値の一例)、およびレーザ光の最大光量に対応する電流デジタル値Imax_1(最大電流デジタル値の一例)を算出し、第2の探索用オフセット値α2と探索用ゲイン値β1を用いて出力されたレーザ光を検出した光検出器119の出力に基づいて、レーザ光の最小光量に対応する電流デジタル値Imin_2(第2の最小電流デジタル値の一例)を算出する。そして、電流決定部350は、算出した電流デジタル値Imin_1,Imax_1およびImin_2、並びに第1の探索用オフセット値α1、第2の探索用オフセット値α2および探索用ゲイン値β1に基づいて、光量の制御に用いるアナログ電流値の範囲を示す光量制御範囲を設定するためのオフセット値α3およびゲイン値β2を決定する。そのため、光源装置11は、光源素子111から出力されるダイナミックレンジを高い分解能で制御することできるオフセット値およびゲイン値を決定し、高精度に所望の光量に対応する電流デジタル値を決定することで、最適な光量制御範囲を設定して、量子化誤差を小さくするように光量制御を行うことができる。
また、本発明の一実施形態に係る光源装置において、光源素子111の発振閾値以上の光量を出力する電流デジタル値I1(第1の電流デジタル値の一例)、および電流デジタル値I1に対応する光量から第1の増加量で増加させた光量を出力する電流デジタル値I2(第2の電流デジタル値の一例)は、0以上かつn/2以下の値である。そして、電流決定部350(電流決定手段の一例)は、第1の探索用オフセット値α1と第2の探索用オフセット値α2の差と、電流デジタル値Imin_1(第1の最小電流デジタル値の一例)と電流デジタル値Imin_2(第2の最小電流デジタル値の一例)の差から、電流デジタル値が0に近づくように、オフセット値α3を決定する。そのため、光源装置11は、光量制御に用いる最小光量の電流デジタル値を決定するために、適する探索用オフセット値を用いることで、オフセット値α3の算出精度を向上させることができる。
さらに、本発明の一実施形態に係る光源装置において、電流デジタル値I1(第1の電流デジタル値の一例)および電流デジタル値I2(第2の電流デジタル値の一例)は、n/2以上かつn以下の値である。そして、電流決定部350(電流決定手段の一例)は、電流デジタル値Imax_1(最大電流デジタル値の一例)がnに近づくように、ゲイン値β2を決定する。そのため、光源装置11は、光量制御に用いる最大光量の電流デジタル値を決定するために、適する探索用ゲイン値を用いることで、ゲイン値β1の算出精度を向上させることができる。
また、本発明の一実施形態に係る光源装置において、駆動制御部370(駆動制御手段の一例)は、電流決定部350(電流決定手段の一例)によって決定された電流デジタル値を、アナログ電流値である光源素子111から出力される出力電流値に変換する変換部371と、電流決定部350によって決定されたオフセット値α3に基づいて、変換されたアナログ電流値をオフセットするオフセット制御部372と、電流決定部350によって決定されたゲイン値β2に基づいて、変換されたアナログ電流値を増幅させるゲイン制御部373と、を有する。そして、光源装置11において、レーザ光の最大光量に対応する電流デジタル値Imax_nは、変換部371がアナログ電流値に変換できる最大のデジタル値をN(N=0~N、ただし、Nは自然数)としたとき、2/N<Imax_n<Nの関係を満たす値である。そのため、光源装置11は、温度変化等の環境変動に対応することができるように光量制御範囲を設定することで、光量制御の精度を向上させることができる。
さらに、本発明の一実施形態に係る表示装置は、光源装置11と、光源装置11から出力されたレーザ光を二次元走査する光偏向装置13(走査部の一例)と、二次元走査によって画像光が照射されるスクリーン15(光学素子の一例)と、を備え、スクリーン15に照射された画像光をフロントガラス50(反射部材の一例)で反射させることによって、所定の画像を表示させる。そして、表示装置10において、スクリーン15は、画像光が照射される画像形成領域220(画像領域の一例)と、光量の制御に用いるモニタ光が照射させる光量制御領域210(非画像領域の一例)と、を有する。そして、光源装置11の制御回路300(制御部の一例)は、光量制御領域210において照射されたモニタ光を用いて、光量制御範囲の設定または光源素子111から出力されるレーザ光の光量の制御を行う。そのため、表示装置10は、光源装置11による光量制御を、画像形成領域220とは異なる光量制御領域210に照射されるモニタ光を用いて行うことで、画像形成領域220に形成される画像の色ムラの発生を抑制することができる。
また、本発明の一実施形態に係る表示システムは、表示装置10と、スクリーン15(光学素子の一例)に照射された画像光によって、所定の画像を結像させる自由曲面ミラー30(結像光学系の一例)とを備える。そして、表示システム1において、表示装置10は、移動体のフロントガラス50(反射部材の一例)に所定の画像を表示するヘッドアップディスプレイである。そのため、表示システム1は、光源装置11による光量制御に用いる光量制御範囲を最適化することで、環境変動等の影響に対応させた所定の画像を表示させることができる。
さらに、本発明の一実施形態に係る光量制御方法は、レーザ光を出力する光源素子111(光源の一例)と、光源素子111から出力されるレーザ光の光量を制御する制御回路300(制御部の一例)と、を備える光源装置11が実行する光量制御方法である。そして、本発明の一実施形態に係る光量制御方法において、光源装置11は、光検出器119からの出力に基づいて、光量の制御に用いる電流値の範囲を示す光量制御範囲に設定するステップと、設定された光量制御範囲において、光源素子111から出力されるレーザ光の光量を制御するステップと、を実行する。そのため、光源装置11は、光検出器119の出力に基づいて光量制御範囲を設定することで、光量制御範囲を最適化することができる。
また、本発明の一実施形態に係る光源装置は、レーザ光を出力する光源素子111(光源の一例)と、光源素子111から出力されるレーザ光の光量を制御する制御回路300(制御部の一例)と、を備える。そして、制御回路300は、光源素子111から出力されたレーザ光の光量の制御に用いる電流値の範囲を示す光量制御範囲において光源素子111から出力されるレーザ光の光量を制御し、光量制御範囲は、前記レーザ光の発振閾値以上の電流値の範囲である。そのため、光源装置11は、レーザ光の発振閾値以上の電流値の範囲において光量制御を行うことで、光量制御範囲を最適化するとともに、光量制御に掛かる試行回数を低減させることができる。
●補足●
なお、本発明の一実施形態に係る光源装置、表示装置、表示システムおよび移動体について説明してきたが、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、当業者が想到することができる範囲内で変更することができる。
また、本発明の一実施形態に係る光源装置を搭載した表示装置10は、HUD装置に限られず、例えば、ヘッドマウントディスプレイ装置、プロンプタ装置、プロジェクタ装置であってもよい。例えば、本発明の一実施形態に係る光源装置11をプロジェクタ装置に適用する場合、プロジェクタ装置を表示装置10と同様に構成することができる。すなわち、表示装置10は、自由曲面ミラー30を介した画像光を映写幕や壁面等に投影すればよい。なお、表示装置10は、自由曲面ミラー30を介さずに、スクリーン15を介した画像光を映写幕や壁面等に投影してもよい。