JP6550028B2 - 能動型防振装置 - Google Patents

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Description

本発明は、車両に搭載される多気筒の内燃機関と車体との間に介在するエンジンマウントを備え、エンジンマウントのアクチュエータが発生させる能動的振動により内燃機関側から車体側への振動伝達を抑制する能動型防振装置に関する。
内燃機関(以下「エンジン」ともいう。)で発生する振動は車体(サブフレーム及び/又はメインフレーム)を経て車室に伝搬する。エンジンから車室に伝搬する振動の経路としては、大きくは、エンジンからエンジンマウントを経て車体に伝搬する経路(以下「マウント系経路」という。)と、エンジンの出力軸からサスペンション等を経て車体へ伝搬する経路(以下「駆動系経路」という。)がある。
車両にはマウント系経路を伝搬する振動を抑制するために防振装置が設けられる。防振装置としては、液体を封入した液室を備える液封マウントや、液封マウントとアクチュエータとを一体にしたアクティブコントロールマウント(以下「ACM」という。)等が公知である。本明細書では、ACMやその制御装置(ACM−ECU)等、防振に関わる機器をまとめて能動型防振装置という。
ところで、エンジンから車体に伝搬する振動の特性は、変速機において設定されているギア段に応じて変化する。特許文献1には、ACMに印加する電圧の振幅及び位相制御に使用するマップをギア段毎に備え、ギア段の切り替えに応じて使用するマップを切り替えることで、電圧の振幅及び位相制御を微修正する技術が示される。
特開平09−025984号公報
ACMの制御精度を向上させるために、ACMに印加する電圧の振幅・位相を、エンジン状態を反映する様々な情報、例えばエンジンの運転状態(全気筒運転状態、気筒休止運転状態)等に基づいて制御する試みがなされている。特許文献1で示される技術のように、ギア段毎にマップを設定していると、エンジン状態を反映する情報が増加するに応じて、マップ数が指数関数的に増加する。すると、容量が大きい記憶装置を設けないと対応できなくなる。
本発明はこのような課題を考慮してなされたものであり、ACMを制御するために予め設定するデータを削減できる能動型防振装置を提供することを目的とする。
第1発明は、車両に搭載される多気筒の内燃機関と車体との間に介在するエンジンマウントを備え、前記エンジンマウントのアクチュエータが発生させる能動的振動により前記内燃機関側から前記車体側への振動伝達を抑制する能動型防振装置であって、前記内燃機関の回転情報に基づいて前記アクチュエータが発生させる前記能動的振動を制御する振動制御部を備え、前記振動制御部は、前記車両に搭載される変速機のギア段を検知するギア段検知部を有し、前記アクチュエータが発生させる前記能動的振動の振幅を前記回転情報に応じて可変制御すると共に前記アクチュエータが発生させる前記能動的振動の位相を固定制御する振幅可変・位相固定制御、又は、前記アクチュエータが発生させる前記能動的振動の振幅と位相を前記回転情報に応じて可変制御する振幅可変・位相可変制御を実行し、前記ギア段検知部により前記ギア段の切り替わりが検知されると同時又は検知後に、前記振幅可変・位相固定制御から前記振幅可変・位相可変制御への第1切替制御、又は、前記振幅可変・位相可変制御から前記振幅可変・位相固定制御への第2切替制御を実行することを特徴とする。
第1発明においては、ギア段が切り替えられると同時又は切り替え後に、振幅可変・位相固定制御から振幅可変・位相可変制御へ、又は、振幅可変・位相可変制御から振幅可変・位相固定制御へと切り替える。第1発明によれば、振幅可変・位相可変制御の実行時に使用するマップと、振幅可変・位相固定制御の実行時に使用するマップを設定しておけばよいため、予め設定するデータを少なくすることができる。
前記ギア段には、前記車両の駐車時に用いる駐車ギアと、前記車両の走行時に用いる走行ギアとが含まれ、前記振動制御部は、前記ギア段検知部により前記駐車ギアから前記走行ギアへの切り替えが検知されると同時又は検知後に、前記第1切替制御を実行し、前記ギア段検知部により前記走行ギアから前記駐車ギアへの切り替えが検知されると同時又は検知後に、前記第2切替制御を実行し、前記第1切替制御に要する第1時間間隔を、前記第2切替制御に要する第2時間間隔よりも長くしてもよい。
駐車ギア設定時よりも振動が増大する走行ギア設定時に、制振効果が大きい振幅可変・位相可変制御を実行することにより、内燃機関から車室に伝搬する振動を好適に抑制できる。また、振幅可変・位相固定制御と振幅可変・位相可変制御とを比較すると、振幅可変・位相固定制御の方が安定している。このような場合、振幅可変・位相固定制御から振幅可変・位相可変制御への第1切替制御を素早く行うと、制御が不安定になる虞がある。このため、第1時間間隔を第2時間間隔よりも長くし、制御を徐々に切り替えることにより、制御が不安定になることを抑制できる。また、第2時間間隔を第1時間間隔よりも短くすることにより、制御を素早く切り替えることができる。
前記振動制御部は、前記内燃機関の運転状態が、一部の気筒で燃焼を休止させる気筒休止運転状態であることを検知する運転状態検知部を有し、前記運転状態検知部により前記気筒休止運転状態が検知される場合には、前記振幅可変・位相可変制御を実行してもよい。
全気筒運転状態よりも振動が増大する気筒休止運転状態のときに、制振効果が大きい振幅可変・位相可変制御を実行することにより、内燃機関から車室に伝搬する振動を好適に抑制できる。
第2発明は、車両に搭載される多気筒の内燃機関と車体との間に介在するエンジンマウントを備え、前記エンジンマウントのアクチュエータが発生させる能動的振動により前記内燃機関側から前記車体側への振動伝達を抑制する能動型防振装置であって、前記内燃機関の回転情報に基づいて前記アクチュエータが発生させる前記能動的振動を制御する振動制御部を備え、前記振動制御部は、シフトレバーのシフトレンジを検知するシフトレンジ検知部を有し、前記アクチュエータが発生させる前記能動的振動の振幅を前記回転情報に応じて可変制御すると共に前記アクチュエータが発生させる前記能動的振動の位相を固定制御する振幅可変・位相固定制御、又は、前記アクチュエータが発生させる前記能動的振動の振幅と位相を前記回転情報に応じて可変制御する振幅可変・位相可変制御を実行し、前記シフトレンジ検知部により前記シフトレンジの切り替わりが検知されると同時又は検知後に、前記振幅可変・位相固定制御から前記振幅可変・位相可変制御への第1切替制御、又は、前記振幅可変・位相可変制御から前記振幅可変・位相固定制御への第2切替制御を実行することを特徴とする。
第2発明においては、シフトレンジが切り替えられると同時又は切り替え後に、振幅可変・位相固定制御から振幅可変・位相可変制御へ、又は、振幅可変・位相可変制御から振幅可変・位相固定制御へと切り替える。第2発明によれば、振幅可変・位相可変制御の実行時に使用するマップと、振幅可変・位相固定制御の実行時に使用するマップを設定しておけばよいため、予め設定するデータを少なくすることができる。
第3発明は、車両に搭載される多気筒の内燃機関と車体との間に介在するエンジンマウントを備え、前記エンジンマウントのアクチュエータが発生させる能動的振動により前記内燃機関側から前記車体側への振動伝達を抑制する能動型防振装置であって、前記内燃機関の回転情報に基づいて前記アクチュエータが発生させる前記能動的振動を制御する振動制御部を備え、前記振動制御部は、前記車両に搭載される変速機のギア段を検知するギア段検知部を有し、前記アクチュエータが発生させる前記能動的振動の振幅を前記回転情報に応じて可変制御すると共に前記アクチュエータが発生させる前記能動的振動の位相を固定制御する振幅可変・位相固定制御を実行し、前記ギア段検知部により前記ギア段の切り替わりが検知されると同時又は検知後に、前記アクチュエータが発生させる前記能動的振動の振幅と位相を前記回転情報に応じて可変制御する振幅可変・位相可変制御を実行することを特徴とする。
第3発明においては、ギア段が非走行ギアから走行ギアに切り替えられると同時又は切り替え後に、振幅可変・位相固定制御から振幅可変・位相可変制御へと切り替える。第3発明によれば、振幅可変・位相可変制御の実行時に使用するマップと、振幅可変・位相固定制御の実行時に使用するマップを設定しておけばよいため、予め設定するデータを少なくすることができる。また、非走行ギア設定時よりも振動が増大する走行ギア設定時に、制振効果が大きい振幅可変・位相可変制御を実行することにより、内燃機関から車室に伝搬する振動を好適に抑制できる。
本発明によれば、振幅可変・位相可変制御の実行時に使用するマップと、振幅可変・位相固定制御の実行時に使用するマップを設定しておけばよいため、予め設定するデータを少なくすることができる。
図1は第1実施形態に係る能動型防振装置を備える車両の構成図である。 図2は第1実施形態に係る能動型防振装置の機能ブロック図である。 図3は第1実施形態で使用されるACM−ECUの制御ブロック図である。 図4AはTDCパルスとCRKパルスの波形図であり、図4Bはエンジンの振動の波形図であり、図4CはACMのソレノイドに対して通電する電流の波形図である。 図5Aは電流波形マップを示す図であり、図5Bは補正マップを示す図である。 図6は第1実施形態で実行する処理のフローチャートである。 図7は第1実施形態で実行する禁止判定処理のフローチャートである。 図8Aは位相固定制御の作用効果を説明するためのベクトル図であり、図8Bは位相可変制御の作用効果を説明するためのベクトル図である。 図9は第2実施形態で使用されるACM−ECUの制御ブロック図である。 図10は第2実施形態で実行する処理のフローチャートである。
以下、本発明に係る能動型防振装置について、好適な実施形態を挙げ、添付の図面を参照して詳細に説明する。
[1 第1実施形態]
[1.1 車両10]
図1を用いて車両10について説明する。車両10は、エンジン12から車体14(サブフレーム14S及び/又はメインフレーム14M)を介して車室10aに伝搬する振動を抑制する能動型防振装置16を備える。車両10は、走行用の駆動源としてエンジン12を搭載するエンジン車両、又は、エンジン12及び電動モータ(図示せず)を含むハイブリッドパワープラントを搭載するハイブリッド車両である。
エンジン12は、全気筒運転状態と気筒休止運転状態の切り替えが可能な多気筒の内燃機関である。エンジン12は、複数のACM18を介してサブフレーム14Sの上に固定される。本実施形態では、エンジン12の前部にフロント側ACM18F(以下「ACM−Fr18F」ともいう。)が配置され、エンジン12の後部にリア側ACM18R(以下「ACM−Rr18R」ともいう。)が配置される。なお、複数のACM18が設けられるのではなく、1つのACM18が設けられてもよい。また、ACM18以外に他のマウントが設けられてもよい。ACM18等のマウント系の機構と車体14によりマウント系経路が形成される。マウント系経路にはエンジン12の振動Vmが伝搬する。
エンジン12は、燃料制御装置20から供給される燃料を燃焼させて出力軸22を回転させる。出力軸22は、ロックアップクラッチ26(以下「LC26」ともいう。)を有するトルクコンバータ24、変速機28、駆動軸(図示せず)を介して駆動輪(図示せず)に連結される。LC26の締結率Lr、及び、変速機28のギア段は、油圧制御装置30から供給される圧油に応じて変化する。駆動輪と車体14の間にはサスペンション(図示せず)が介在する。出力軸22からサスペンションまでの駆動系の機構と車体14により駆動系経路が形成される。駆動系経路にはエンジン12の振動Vdが伝搬する。
[1.2 能動型防振装置16の構成]
図2を用いて能動型防振装置16の構成について説明する。能動型防振装置16は、ACM18と、TDCセンサ34と、CRKセンサ36と、フューエルインジェクションECU38(以下「FI−ECU38」という。)と、ACM−ECU40と、トランスミッションECU(以下「TM−ECU」という)50を有する。
ACM18は、上述したようにACM−Fr18FとACM−Rr18Rとからなる。ACM18には公知のもの、例えば特開2007−107579号公報等で開示されたものを使用可能である。ACM18は、液室とリニア式のアクチュエータ(共に図示せず)を有する。アクチュエータは、固定子と可動子とソレノイドを有する。可動子は、ACM−ECU40から出力される駆動信号に応じて振動する。本明細書では、ACM18のアクチュエータが発生させる振動を能動的振動という。能動的振動の振幅、周期及び位相はエンジン12の周期的な振動に応じて調整される。
ACM−ECU40は、マイクロコンピュータを含む計算機であり、A/D変換器やD/A変換器や各種回路等を備える入出力部42と、CPUを備える処理部44と、フラッシュメモリやEEPROM及びSRAM等を備える記憶部46を有する。処理部44は、CPUが各種プログラムを実行し、下記[1.3]で説明する各機能を実現する。ACM−ECU40は1つのECUで構成されてもよいし、複数のECUで構成されてもよい。
TDCセンサ34は、エンジン12のピストン(図示せず)が上死点に来たこと(上死点タイミング)を検知し、検知毎にTDCパルスを生成してFI−ECU38に出力する。各気筒が作動している場合、TDCパルスの間隔は、エンジン12の各気筒が上死点に位置する間隔、すなわち、爆発工程の間隔を示す。CRKセンサ36は、エンジン12のクランクシャフト(図示せず)が所定角度(クランクアングル)だけ回転したことを検知し、検知毎に回転CRKパルスを生成してFI−ECU38に出力する。なお、TDCパルス及びCRKパルスがACM−ECU40に直接出力されてもよい。
FI−ECU38は、ACM−ECU40と同様の構成を有する。FI−ECU38は、TDCパルス及びCRKパルスの他にアクセルペダル操作量等を入力し、燃料制御装置20に対して燃料噴射指令を出力する。また、FI−ECU38は、ACM−ECU40に対してTDCパルス及びCRKパルスを出力すると共に、エンジン12の運転状態の切り替わりを示す気筒切替信号を出力する。
TM−ECU50は、ACM−ECU40と同様の構成を有する。TM−ECU50は、シフトセンサ52で検出されるシフトレバー54のシフトレンジ、車速センサ(図示せず)で検出される車両の走行速度(以下「車速」という。)、加速度センサ(図示せず)で検出される車両10の加速度等を入力する。そして、油圧制御装置30に対してシフトレンジと、車速及び/又は加速度に基づいて目標とする締結率Lr及びギア段を求め、締結率指令及び変速指令を出力する。また、TM−ECU50は、ACM−ECU40に対して変速指令の指令値(ギア段)をギア段信号として出力する。
[1.3 ACM−ECU40が実行する制御]
図3を用いてACM−ECU40が実行する制御について説明する。ACM−ECU40は、処理部44によりACM18に通電する電流を求め、入出力部42によりACM18に駆動信号を出力する。処理部44は、外乱84を考慮したフィードフォワード制御を実行し、ACM18に通電する電流を求める。ACM18に通電する電流は、エンジン12の振動を車両10の所定位置で相殺する波形情報(後述の電流波形マップ68M及び補正マップ70M)として予め記憶部46に記憶されている。処理部44は、図3で示される各機能(パルス読み取り機能56〜ソレノイドデューティ制御機能76)を有する。
パルス読み取り機能56において、FI−ECU38から出力されるTDCパルス及びCRKパルスを読み取る(図4A参照)。ENG振動パターン判定機能58において、FI−ECU38から出力される気筒切替信号に基づいてエンジン12の運転状態が全気筒運転状態と気筒休止運転状態のいずれであるかを判定する。ギア段検知機能60において、TM−ECU50から出力されるギア段信号に基づいて変速機28のギア段を検知する。
回転情報算出機能62において、パルス読み取り機能56で読み取られたTDCパルス及びCRKパルスに基づいてエンジン12の回転情報を算出する。ここでは、エンジン12の回転情報として周期MEと回転トルクTRを算出する。なお、周期MEに代えて周波数を算出してもよい。本明細書において、周期MEを回転数NEと読み換えることも可能である。周期MEは単位時間当たりのTDCパルス数又はCRKパルス数に基づいて求められる。一方、回転トルクTRは、次のようにして求められる。先ず、CRKパルスの間隔を算出する。次に、所定のクランクアングルをCRKパルスの間隔で除算してクランク角速度を算出し、クランク角速度を時間微分してクランク角加速度を算出する。そして、エンジン12のクランクシャフト回りの所定のイナーシャとクランク角加速度とを乗算することによりクランクシャフト回りの回転トルクTRを算出する。
ENG振動推定機能64において、エンジン12の振動推定値を算出する。ここでは、エンジン12の振動の大きさVAPP(Vibration Amplitude Peak to Peak)を算出する。以下では、エンジン12の振動の大きさVAPPを「振動値VAPP」という。振動値VAPPは、例えば回転トルクTRから求められる。具体的には、時間的に隣接する回転トルクTRの最大値と最小値を判定し、その差を算出する。この差はエンジン12が発生する振動の振幅とみなされる。この振幅をエンジン12の振動値VAPPとする。なお、図4Bで示されるように、エンジン12の振動は波形で表されるため、振動の位相Pも求められる。例えば、任意のTDCパルスPrの立ち上がり又は立ち下がりのタイミングを基準とし、振動値VAPPが最小値となるタイミングまでのずれを位相Pとする。
なお、振動値VAPPは、例えばCRKパルスから求めることも可能である。具体的には、先ず、1つのTDCパルス内で計測される複数のCRKパルスを、横軸を経過時間、縦軸を各CRKパルス間で計測される時間の累積値としての累積時間(CRKパルス間時間累積値)とする座標にプロットする。次に、このプロットにおいて、1つのTDCパルス内で計測される複数のCRKパルスの始値と終値を結ぶ直線(平均CRKパルス間時間累積)を算出する。そして、直線(平均CRKパルス間時間累積)に対する累積時間の偏差を算出する。この偏差は、1つのTDCパルス内で計測される複数のCRKパルスの個数と同数のデータからなる。最後に、この偏差の最大値と最小値の差を振動値VAPPとする。
上述したように、本実施形態では、エンジン12の回転情報として周期MEと回転トルクTRを算出する。しかし、振動値VAPPは回転トルクTRの特徴を備えることに鑑み、エンジン12の回転情報として周期MEと振動値VAPPを算出してもよい。
制御選択機能66において、ENG振動パターン判定機能58で判定されたエンジン12の運転状態と、ENG振動推定機能64で算出された振動値VAPPに基づいてACM18の制御を選択する。具体的には、振幅可変・位相固定制御と振幅可変・位相可変制御のいずれかを選択する。
振幅可変・位相固定制御というのは、ACM18のアクチュエータが発生させる能動的振動の振幅を、エンジン12の回転情報(周期ME、回転トルクTR(振動値VAPP))に応じて可変制御すると共に、アクチュエータが発生させる能動的振動の位相を、エンジン12の振動値VAPPに関わらず固定制御(保持)することをいう。また、振幅可変・位相可変制御というのは、ACM18のアクチュエータが発生させる能動的振動の振幅と位相を、エンジン12の回転情報(周期ME、回転トルクTR(振動値VAPP))に応じて可変制御することをいう。以下では、説明の便宜のために、振幅可変・位相固定制御を単に「位相固定制御」とも称し、振幅可変・位相可変制御を単に「位相可変制御」とも称する。
制御選択機能66において、エンジン12の運転状態が全気筒運転状態である場合には位相固定制御を選択し、気筒休止運転状態である場合には位相可変制御を選択する。また、変速機28のギア段が非走行ギアである場合には位相固定制御を選択し、変速機28のギア段が走行ギアである場合には位相可変制御を選択する。非走行ギアというのは、駐車時に用いられるギア段であって、ニュートラルやパーキングのギア段が含まれる。走行ギアというのは、車両10の走行時に用いられるギアであって、後退、1速、2速、…のギア段が含まれる。振動値VAPPが所定振動値VAPP_th以上である場合には、位相可変制御を禁止する。
電流算出機能68において、エンジン12の回転情報に基づいてACM18に通電する電流の波形を求める。電流算出機能68の処理は、制御選択機能66で位相固定制御と位相可変制御のどちらが選択されても行われる。以下で電流算出機能68において行われる処理の一例を説明する。
記憶部46(図2参照)には、ACM18の電流波形情報とエンジン12の回転情報とを対応付ける電流波形マップ68M(図5A参照)が記憶される。電流波形情報というのは、車両10内の第1位置を制振するためにACM18に通電する電流の情報であり、振幅A、周期T及び位相Pの情報を含む。この電流波形は、ACM18が発生させる振動の波形に相当する。第1位置というのは、位相固定制御を行う場合の評価点に相当する。本実施形態では、第1位置をACM18とサブフレーム14Sとの連結点にする。電流波形情報に含まれる位相Pというのは、エンジン12の振動波形を基準とした場合の位相である。
電流波形マップ68Mは、ACM18毎に設定される。個別の電流波形マップ68Mには、第1位置におけるエンジン12の振動を各ACM18の協調制御によって抑制するための電流波形情報が、エンジン12の回転情報に対応付けて設定される。なお、1つの電流波形マップ68Mの各アドレスに各ACM18の電流波形情報がまとめて設定されていてもよい。
図5Aで示される電流波形マップ68Mは、周期ME(横軸)と振動値VAPP(縦軸)とで特定されるアドレスに電流波形情報を紐付けている。例えば、図5Aで示されるように、ME=a1、VAPP=b1で特定されるアドレスXには(振幅A1、周期T1、位相P1)という電流波形情報が紐付けられている。また、ME=a1、VAPP=b2で特定されるアドレスYには(振幅A2、周期T2、位相P1)という電流波形情報が紐付けられている。また、ME=a2、VAPP=b1で特定されるアドレスZには(振幅A3、周期T3、位相P3)という電流波形情報が紐付けられている。
このように、電流波形マップ68Mには、電流波形の振幅A及び周期Tとして、周期ME及び振動値VAPPに対応する個別の値が設定される。また、電流波形の位相Pとして、周期MEに対応する一方で振動値VAPPに依存しない値が設定される。このため、周期MEが変化せずに振動値VAPPが変化する状況では、電流波形マップ68Mにより求められる振幅A及び周期Tは異なる値となり、位相Pは同じ値となる。
補正値算出機能70において、エンジン12の回転情報に基づいてACM18に通電する電流の波形の補正値を求める。補正値算出機能70の処理は、制御選択機能66で位相可変制御が選択され、且つ、位相可変制御が禁止されていない場合に行われる。以下で補正値算出機能70において行われる処理の一例を説明する。
記憶部46(図2参照)には、ACM18の電流波形情報の補正情報とエンジン12の回転情報とを対応付ける補正マップ70M(図5B参照)が記憶される。補正情報というのは、車両10内の第2位置を制振するためにACM18に通電する電流の補正値の情報であり、振幅A及び位相Pの情報を含む。第2位置というのは、位相可変制御を行う場合の評価点に相当する。本実施形態では、第2位置をサブフレーム14Sとメインフレーム14Mとの連結点、又は、サスペンションとメインフレーム14Mとの連結点にする。なお、第1位置と第2位置は同じでもよい。
補正マップ70Mは、ACM18毎に設定される。個別の補正マップ70Mには、第2位置におけるエンジン12の振動を各ACM18の協調制御によって抑制するための補正情報が、エンジン12の回転情報に対応付けて設定される。なお、1つの補正マップ70Mの各アドレスに各ACM18の補正情報がまとめて設定されていてもよい。
図5Bで示される補正マップ70Mは、周期ME(横軸)と振動値VAPP(縦軸)とで特定されるアドレスに補正情報を紐付けている。例えば、図5Bで示されるように、ME=a1、VAPP=b1で特定されるアドレスXには(振幅A1´、位相P1´)の補正情報が紐付けられる。また、ME=a1、VAPP=b2で特定されるアドレスYには(振幅A2´、位相P2´)の補正情報が紐付けられる。また、ME=a2、VAPP=b1で特定されるアドレスZには(振幅A3´、P3´)の補正情報が紐付けられる。
このように、補正マップ70Mには、振幅A及び位相Pの補正値として、周期ME及び振動値VAPPに対応する個別の値が設定される。このため、周期ME及び/又は振動値VAPPが変化する状況では、補正マップ70Mにより求められる振幅Aの補正値及び位相Pの補正値は異なる値となる。
加算機能72において、電流算出機能68で求められたACM18の電流の振幅A及び位相Pに、補正値算出機能70で求められた振幅A及び位相Pの補正値を加算する。制御選択機能66で位相固定制御が選択された場合、補正値算出機能70により補正情報が出力されないため、加算機能72からは電流算出機能68の電流波形情報がそのまま出力される。つまり、位相固定制御を実行することができる。一方、制御選択機能66で位相可変制御が選択された場合、補正値算出機能70により補正情報が出力されるため、加算機能72からは電流算出機能68の電流波形情報が補正値算出機能70の補正情報で補正されて出力される。つまり、位相可変制御を実行することができる。
目標電流決定機能74において、加算機能72で算出された電流波形情報の振幅A、周期T及び位相PをACM18のソレノイドに対して通電する電流の振幅A、周期T及び位相Pの目標値として決定する(図4C参照)。
ソレノイドデューティ制御機能76において、目標電流決定機能74で決定された電流の振幅A、周期T及び位相Pに基づいてソレノイドに対して通電する電流を実現するためのデューティ比を求める。この際、電流検出回路80により検出されるACM18の実電流に基づいてフィードバック制御、例えばPID制御を行う。
入出力部42に含まれるソレノイド駆動回路88は、電源86に接続されており、ソレノイドデューティ制御機能76で求められたデューティ比に基づいてACM18に対して駆動信号を出力する。
なお、制御選択機能66以降の処理は、ENG振動パターン判定機能58の判定及びギア段検知機能60の検知と同時に行ってもよいし、ENG振動パターン判定機能58の判定及びギア段検知機能60の検知後に行ってもよい。
[1.4 ACM−ECU40の処理フロー]
図6を用いてACM−ECU40が実行する一連の処理について説明する。図6は、図3で示される一連の制御ブロックを処理フローにして示すものである。ACM−ECU40は、以下で説明する処理を極短い時間間隔で繰り返し実行する。
ステップS1において、各種情報、ここではTDCパルス、CRKパルス、気筒切替信号、ギア段信号等を取得する。ステップS2において、TDCパルス及びCRKパルスに基づいてエンジン12の回転情報(周期ME及び回転トルクTR)を算出する。
ステップS3において、エンジン12の振動を推定する。本実施形態では振動値VAPPを算出する。ステップS4において、禁止判定処理(図7参照)を行う。ここでは、位相可変制御を禁止するか否かを判定する。禁止判定処理に関しては後述する。
ステップS5において、エンジン12の運転状態、及び、変速機28のギア段を判定する。全気筒運転状態且つ非走行ギアである場合(ステップS5:全気筒且つ非走行ギア)、処理はステップS7に移行する。一方、気筒休止運転状態又は走行ギアである場合(ステップS5:気筒休止又は走行ギア)、処理はステップS6に移行する。
ステップS5からステップS6に移行した場合、位相可変制御が禁止されているか否かを判定する。上記[1.3]で説明したように、制御選択機能66により、振動値VAPPが所定振動値VAPP_th以上であると判定される場合、位相可変制御は禁止される。位相可変制御が禁止されている場合(ステップS6:YES)、処理はステップS7に移行する。一方、位相可変制御が禁止されていない場合(ステップS6:NO)、処理はステップS8に移行する。
ステップS5又はステップS6からステップS7に移行した場合、位相固定制御を実行する。ここでは、ステップS2で算出した周期MEと、ステップS3で算出した振動値VAPPに基づいてACM18に通電する電流の波形(振幅A、周期T及び位相P)を決定する。具体的には、上記[1.3]で説明したように、図5Aで示される電流波形マップ68Mを用いて電流の波形(振幅A、周期T及び位相P)を求める。電流波形マップ68Mによれば、エンジン12の周期MEが変わらない限り、演算毎に同じ位相Pが求められる。すなわち位相Pは固定(保持)される。
ステップS6からステップS8に移行した場合、位相可変制御を実行する。ここでは、ステップS2で算出した周期MEと、ステップS3で算出した振動値VAPPに基づいてACM18に通電する電流の波形(振幅A、周期T及び位相P)を決定する。具体的には、上記[1.3]で説明したように、図5Aで示される電流波形マップ68Mを用いて電流の波形(振幅A、周期T及び位相P)を求め、更に、図5Bで示される補正マップ70Mを用いて補正値(振幅A及び位相P)を求める。そして、電流の波形を補正値で補正する。
ステップS9において、ステップS7又はステップS8で求められた電流波形に基づいて目標電流を決定する。ステップS10において、ステップS9で決定された目標電流に基づいてACM18を駆動する。
[1.5 禁止判定処理]
図7を用いて禁止判定処理(図6のステップS4)について説明する。ステップS11において、図6のステップS3で算出した振動値VAPPと記憶部46に記憶される所定振動値VAPP_thとを比較する。振動値VAPPが所定振動値VAPP_th未満である場合(ステップS11:<)、処理はステップS12に移行する。そして、ステップS12において、位相可変制御を許可する。一方、振動値VAPPが所定振動値VAPP_th以上である場合(ステップS11:≧)、処理はステップS13に移行する。そして、ステップS13において、位相可変制御を禁止する。
[1.6 位相固定制御と位相可変制御の切り替え]
ACM−ECU40の処理部44は、ギア段検知機能60により駐車ギアから走行ギアへの切り替えが検知されると同時又は検知後に、位相固定制御から位相可変制御への第1切替制御を実行する。また、ギア段検知機能60により走行ギアから駐車ギアへの切り替えが検知されると同時又は検知後に、位相可変制御から位相固定制御への第2切替制御を実行する。そして、第1切替制御に要する第1時間間隔を、第2切替制御に要する第2時間間隔よりも長くする。
例えば、制御の切り替え時には、補正値算出機能70において、補正マップ70Mで求められる補正値(振幅A、位相P)に対して0から1の間で変化する係数を乗算する。このとき、位相固定制御から位相可変制御への切り替え時には、時間の経過と共に係数を徐々に大きくし(0から1)、位相可変制御から位相固定制御への切り替え時には、時間の経過と共に係数を徐々に小さくする(1から0)。位相固定制御から位相可変制御への切り替え時に係数の変化率を小さくし、位相可変制御から位相固定制御への切り替え時に係数の変化率を大きくすることにより、第1時間間隔を第2時間間隔よりも長くすることができる。
位相固定制御と位相可変制御とを比較すると、位相固定制御の方が安定している。このような場合、位相固定制御から位相可変制御への切り替えを素早く行うと、制御が不安定になる虞がある。このため、第1時間間隔を第2時間間隔よりも長くして制御を徐々に切り替えることにより、制御が不安定になることを抑制できる。また、第2時間間隔を第1時間間隔よりも短くすることにより、制御を素早く切り替えることができる。
[1.7 位相固定制御、位相可変制御の作用効果]
図8A、図8Bを用いて能動型防振装置16の作用効果について説明する。図8A、図8Bは、車両10内に設定された評価点に伝搬する各振動成分の大きさと位相とを示すベクトル図である。本実施形態では、評価点を、上述した第2位置、すなわちサブフレーム14Sとメインフレーム14Mとの連結点、又は、サスペンションとメインフレーム14Mとの連結にしている。図8A、図8Bにおいて、ベクトルの長さは各振動により発生する駆動力の大きさ(単位[m/s2])を示し、ベクトルの角度(横軸正方向を基準にした正方向すなわち図中左回りの回転角度)はエンジン12の振動を基準にした場合の位相を示す。また、図8A、図8Bにおいて、円状の許容範囲90は、許容できる駆動力の範囲を示す。
図8Aを用いてエンジン12の運転状態が全気筒運転状態であり且つ変速機28のギア段が非走行ギアである場合に実行される位相固定制御の作用効果について説明する。全気筒運転状態であり且つ変速機28のギア段が非走行ギアである場合、評価点には、駆動系経路を介してエンジン12の振動Vd1が伝搬し、マウント系経路を介してエンジン12の振動Vm1が伝搬する。図8Aの点92で示されるように、振動Vd1と振動Vm1により、評価点における振動の駆動力は許容範囲90外となる。
電流波形マップ68M(図5A参照)を使用する位相固定制御が実行されると、評価点には、マウント系経路を介してACM−Fr18Fの振動Vf1とACM−Rr18Rの振動Vr1が伝搬する。このとき、振動Vf1及び振動Vr1の位相は、エンジン12の振動を基準にして一定となるように制御される。ここでは、振動Vr1の位相よりも振動Vf1の位相が90度程度遅れるように制御される。図8Aの点94で示されるように、振動Vf1と振動Vr1の合成振動Vfr1により、エンジン12から伝搬する振動が相殺され、評価点における振動の大きさを許容範囲90内にすることができる。
図8Bを用いてエンジン12の運転状態が気筒休止運転状態であり且つ変速機28のギア段が走行ギアである場合に実行される位相可変制御の作用効果について説明する。エンジン12の周期MEが一定のまま、全気筒運転状態から気筒休止運転状態に切り替わり、更に変速機28のギア段が走行ギアになったとする。このとき、評価点には、駆動系経路を介してエンジン12の振動Vd2が伝搬し、マウント系経路を介してエンジン12の振動Vm2が伝搬する。振動Vd2は、図8Aで示される振動Vd1と、気筒休止運転状態により増大する振動Vdin1と、変速機28のギア段が走行ギアになることにより増大する振動Vdin2が合成されたものである。また、振動Vm2は、図8Aで示される振動Vm1に、気筒休止運転状態により増大する振動Vminが合成されたものである。図8Bの点96で示されるように、振動Vd2と振動Vm2により、評価点における振動の大きさは許容範囲90外となる。このとき発生する振動は、全気筒運転状態のときに発生する振動(点92)よりも大きくなる。
電流波形マップ68M(図5A参照)及び補正マップ70M(図5B参照)を使用する位相可変制御が実行されると、評価点には、マウント系経路を介してACM−Fr18Fの振動Vf2とACM−Rr18Rの振動Vr2が伝搬する。振動Vf2は、図8Aで示される振動Vf1と比較して、駆動力が大きく且つ位相が位相角θ1[deg]だけ遅れる方向(図中右回り)に変化している。また、振動Vr2は、図8Aで示される振動Vr1と比較して、駆動力が大きく且つ位相が位相角θ2[deg]だけ進む方向(図中左回り)に変化している。
本実施形態では位相可変制御を行い、ACM−Fr18FとACM−Rr18Rに通電される電流を制御し、振動Vf2の位相と振動Vr2の位相を互いに逆方向(進む方向と遅れる方向)に変化させる。すると、振動Vf2と振動Vr2の合成ベクトルは大きくなる。つまり、位相可変制御によれば、ACM18の駆動により評価点に伝搬する振動の駆動力を位相固定制御時よりも大きくすることができる。図8Bの点98で示されるように、振動Vf2と振動Vr2の合成振動Vfr2により、エンジン12から伝搬する振動が相殺され、評価点における振動の大きさを許容範囲90内にすることができる。
図8Bにおいては、振動Vf2の駆動力と振動Vr2の駆動力は略同じであり、且つ、位相角θ1と位相角θ2は略同じである。位相角θ1と位相角θ2を略同じにすることで、合成振動Vfr2の駆動力を大きくすることができる。但し、振動Vf2の駆動力と振動Vr2の駆動力が相違し、又は、位相角θ1と位相角θ2が相違してもよい。要は、評価点における振動の駆動力を点96から許容範囲90内に戻すことができるのであれば、振動Vf2の駆動力と振動Vr2の駆動力、及び、位相角θ1と位相角θ2をどのようしてもよい。
なお、各ACM18に通電する電流を定格値まで増加させれば、各ACM18から出力される振動の振幅を最大にすることができる。その結果、ACM18の駆動により評価点に伝搬する振動の駆動力を最大にすることができる。
[1.8 変形例]
本実施形態の位相可変制御は、電流波形マップ68M(図5A参照)を補正マップ70M(図5B参照)で補正する制御である。これに代えて、位相固定制御と位相可変制御を、それぞれ独立した電流波形マップを用いて実行してもよい。
本実施形態では、各アドレスに電流波形情報(振幅A、周期T、位相P)が紐付けられた電流波形マップ68M(図5A参照)を使用する。これに代えて、各アドレスに個別の情報が紐付けられた複数のマップを使用してもよい。例えば、各アドレスに電流波形の振幅A及び周期Tの情報が紐付けられた電流振幅マップと、各アドレスに電流波形の位相Pの情報が紐付けられた電流位相マップを使用してもよい。また、本実施形態では、各アドレスに電流波形の振幅A及び位相Pの補正情報が紐付けられた補正マップ70M(図5B参照)を使用する。これに代えて、各アドレスに個別の情報が紐付けられた複数のマップを使用してもよい。例えば、各アドレスに電流波形の振幅Aの補正情報が紐付けられた振幅補正マップと、各アドレスに電流波形の位相Pの補正情報が紐付けられた位相補正マップを使用してもよい。
[1.9 第1実施形態のまとめ]
第1実施形態は、車両10に搭載される多気筒のエンジン12(内燃機関)と車体14との間に介在するACM18(エンジンマウント)を備え、ACM18のアクチュエータが発生させる能動的振動によりエンジン12側から車体14側への振動伝達を抑制する能動型防振装置16に関する。能動型防振装置16は、エンジン12の回転情報に基づいてアクチュエータが発生させる能動的振動を制御するACM−ECU40(振動制御部)を備える。ACM−ECU40は、車両10に搭載される変速機28のギア段を検知するギア段検知機能60(ギア段検知部)を有する。ACM−ECU40は、アクチュエータが発生させる能動的振動の振幅を回転情報に応じて可変制御すると共にアクチュエータが発生させる能動的振動の位相を固定制御する位相固定制御、又は、アクチュエータが発生させる能動的振動の振幅と位相を回転情報に応じて制御する位相可変制御を実行する。そして、ACM−ECU40は、ギア段検知機能60によりギア段の切り替わりが検知されると同時又は検知後に、位相固定制御から位相可変制御への第1切替制御、又は、位相可変制御から位相固定制御への第2切替制御を実行する。
第1実施形態においては、ギア段が切り替えられると同時又は切り替え後に、位相固定制御から位相可変制御へ、又は、位相可変制御から位相固定制御へと切り替える。本実施形態によれば、位相可変制御の実行時に使用する電流波形マップ68Mと、位相固定制御の実行時に使用する補正マップ70Mを設定しておけばよいため、予め設定するデータを少なくすることができる。
ACM−ECU40は、エンジン12の運転状態が、一部の気筒で燃焼を休止させる気筒休止運転状態であることを検知するENG振動パターン判定機能58(運転状態検知部)を有する。そして、ENG振動パターン判定機能58により気筒休止運転状態が検知される場合には、位相可変制御を実行する。
全気筒運転状態よりも振動が増大する気筒休止運転状態のときに、制振効果が大きい位相可変制御を実行することにより、エンジン12から車室10aに伝搬する振動を好適に抑制できる。
[2 第2実施形態]
図1を用いて第2実施形態に係る能動型防振装置16の構成について説明する。上述の第1実施形態では、ACM−ECU40はTM−ECU50から出力されるギア段信号を入力する。これに代えて、図1の破線で示すように、ACM−ECU40がシフトセンサ52から出力されるシフトレンジ信号を入力してもよい。
この場合、図3で示されるギア段検知機能60に代えて、図9で示されるシフトレンジ検知機能162において、シフトセンサ52から出力されるシフトレンジ信号に基づいてシフトレバー54のシフトポジション(Nレンジ、Pレンジ、Rレンジ、Dレンジ等)を検知する。
図10は第2実施形態で実行する処理のフローチャートである。図10で示されるステップS21〜ステップS24、ステップS26〜ステップS30の処理は、図6で示されるステップS1〜ステップS4、ステップS6〜ステップS10の処理に相当する。第2実施形態の独自の処理は、ステップS25である。
ステップS25において、エンジン12の運転状態、及び、シフトレバー54のシフトレンジを判定する。全気筒運転状態且つ非走行レンジ、例えばPレンジやNレンジである場合(ステップS25:全気筒且つ非走行レンジ)、処理はステップS27に移行する。一方、気筒休止運転状態又は走行レンジ、例えばRレンジやDレンジ等である場合(ステップS25:気筒休止又は走行レンジ)、処理はステップS26に移行する。
第2実施形態によれば、第1実施形態と同様に、位相可変制御の実行時に使用する電流波形マップ68Mと、位相固定制御の実行時に使用する補正マップ70Mを設定しておけばよいため、予め設定するデータを少なくすることができる。
なお、本発明に係る能動型防振装置16は、上述の実施形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることはもちろんである。
10…車両 12…エンジン(内燃機関)
14…車体 14M…メインフレーム
14S…サブフレーム 16…能動型防振装置
18…ACM(エンジンマウント) 18F…ACM−Fr
18R…ACM−Rr
40…ACM−ECU(振動制御部)
58…ENG振動パターン判定機能(運転状態検知部)
60…ギア段検知機能(ギア段検知部)
64…ENG振動推定機能 68M…電流波形マップ
70M…補正マップ
162…シフトレンジ検知機能(シフトレンジ検知部)

Claims (7)

  1. 車両に搭載される多気筒の内燃機関と車体との間に介在するエンジンマウントを備え、前記エンジンマウントのアクチュエータが発生させる能動的振動により前記内燃機関側から前記車体側への振動伝達を抑制する能動型防振装置であって、
    前記内燃機関の回転情報に基づいて前記アクチュエータが発生させる前記能動的振動を制御する振動制御部と、
    前記車両の第1位置を制振するために前記アクチュエータに通電する電流波形の情報である電流波形情報と前記回転情報とを対応付ける電流波形マップと、前記車両の第2位置を制振するために前記電流波形情報を補正する情報である補正情報と前記回転情報とを対応付ける補正マップと、を記憶する記憶部と、を備え、
    前記振動制御部は、
    前記車両に搭載される変速機のギア段を検知するギア段検知部を有し、
    前記アクチュエータが発生させる前記能動的振動の振幅を前記回転情報と前記電流波形マップとに基づいて可変制御すると共に前記アクチュエータが発生させる前記能動的振動の位相を固定制御する振幅可変・位相固定制御、又は、前記アクチュエータが発生させる前記能動的振動の振幅と位相を前記回転情報と前記電流波形マップと前記補正マップとに基づいて可変制御する振幅可変・位相可変制御を実行し、
    前記ギア段検知部により前記ギア段が走行ギアから非走行ギアへ又は非走行ギアから走行ギアへ切り替えられることが検知されると同時又は検知後に、前記振幅可変・位相固定制御から前記振幅可変・位相可変制御への第1切替制御、又は、前記振幅可変・位相可変制御から前記振幅可変・位相固定制御への第2切替制御を実行する
    ことを特徴とする能動型防振装置。
  2. 車両に搭載される多気筒の内燃機関と車体との間に介在するエンジンマウントを備え、前記エンジンマウントのアクチュエータが発生させる能動的振動により前記内燃機関側から前記車体側への振動伝達を抑制する能動型防振装置であって、
    前記内燃機関の回転情報に基づいて前記アクチュエータが発生させる前記能動的振動を制御する振動制御部を備え、
    前記振動制御部は、
    前記車両に搭載される変速機のギア段を検知するギア段検知部と、
    前記内燃機関の前記回転情報に基づいて前記内燃機関の振動値を推定する振動推定部と、を有し、
    前記アクチュエータが発生させる前記能動的振動の振幅を前記回転情報に応じて可変制御すると共に前記アクチュエータが発生させる前記能動的振動の位相を固定制御する振幅可変・位相固定制御、又は、前記アクチュエータが発生させる前記能動的振動の振幅と位相を前記回転情報に応じて可変制御する振幅可変・位相可変制御を実行し、
    前記ギア段検知部により前記ギア段が走行ギアから非走行ギアへ又は非走行ギアから走行ギアへ切り替えられることが検知されると同時又は検知後に、前記振幅可変・位相固定制御から前記振幅可変・位相可変制御への第1切替制御、又は、前記振幅可変・位相可変制御から前記振幅可変・位相固定制御への第2切替制御を実行し、
    前記振動推定部により推定される前記振動値が所定振動値以上の場合には、前記振幅可変・位相可変制御を禁止する
    ことを特徴とする能動型防振装置。
  3. 請求項1又は2に記載の能動型防振装置において、
    前記ギア段には、前記車両の駐車時に用いる駐車ギアと、前記車両の走行時に用いる走行ギアとが含まれ、
    前記振動制御部は、
    前記ギア段検知部により前記駐車ギアから前記走行ギアへの切り替えが検知されると同時又は検知後に、前記第1切替制御を実行し、
    前記ギア段検知部により前記走行ギアから前記駐車ギアへの切り替えが検知されると同時又は検知後に、前記第2切替制御を実行し、
    前記第1切替制御に要する第1時間間隔を、前記第2切替制御に要する第2時間間隔よりも長くする
    ことを特徴とする能動型防振装置。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載の能動型防振装置において、
    前記振動制御部は、
    前記内燃機関の運転状態が、一部の気筒で燃焼を休止させる気筒休止運転状態であることを検知する運転状態検知部を有し、
    前記運転状態検知部により前記気筒休止運転状態が検知される場合には、前記振幅可変・位相可変制御を実行する
    ことを特徴とする能動型防振装置。
  5. 車両に搭載される多気筒の内燃機関と車体との間に介在するエンジンマウントを備え、前記エンジンマウントのアクチュエータが発生させる能動的振動により前記内燃機関側から前記車体側への振動伝達を抑制する能動型防振装置であって、
    前記内燃機関の回転情報に基づいて前記アクチュエータが発生させる前記能動的振動を制御する振動制御部と、
    前記車両の第1位置を制振するために前記アクチュエータに通電する電流波形の情報である電流波形情報と前記回転情報とを対応付ける電流波形マップと、前記車両の第2位置を制振するために前記電流波形情報を補正する情報である補正情報と前記回転情報とを対応付ける補正マップと、を記憶する記憶部と、を備え、
    前記振動制御部は、
    シフトレバーのシフトレンジを検知するシフトレンジ検知部を有し、
    前記アクチュエータが発生させる前記能動的振動の振幅を前記回転情報と前記電流波形マップとに基づいて可変制御すると共に前記アクチュエータが発生させる前記能動的振動の位相を固定制御する振幅可変・位相固定制御、又は、前記アクチュエータが発生させる前記能動的振動の振幅と位相を前記回転情報と前記電流波形マップと前記補正マップとに基づいて可変制御する振幅可変・位相可変制御を実行し、
    前記シフトレンジ検知部により前記シフトレンジが走行ギアから非走行ギアへ又は非走行ギアから走行ギアへ切り替えられることが検知されると同時又は検知後に、前記振幅可変・位相固定制御から前記振幅可変・位相可変制御への第1切替制御、又は、前記振幅可変・位相可変制御から前記振幅可変・位相固定制御への第2切替制御を実行する
    ことを特徴とする能動型防振装置。
  6. 車両に搭載される多気筒の内燃機関と車体との間に介在するエンジンマウントを備え、前記エンジンマウントのアクチュエータが発生させる能動的振動により前記内燃機関側から前記車体側への振動伝達を抑制する能動型防振装置であって、
    前記内燃機関の回転情報に基づいて前記アクチュエータが発生させる前記能動的振動を制御する振動制御部と、
    前記車両の第1位置を制振するために前記アクチュエータに通電する電流波形の情報である電流波形情報と前記回転情報とを対応付ける電流波形マップと、前記車両の第2位置を制振するために前記電流波形情報を補正する情報である補正情報と前記回転情報とを対応付ける補正マップと、を記憶する記憶部と、を備え、
    前記振動制御部は、
    前記車両に搭載される変速機のギア段を検知するギア段検知部を有し、
    前記アクチュエータが発生させる前記能動的振動の振幅を前記回転情報と前記電流波形マップとに基づいて可変制御すると共に前記アクチュエータが発生させる前記能動的振動の位相を固定制御する振幅可変・位相固定制御を実行し、
    前記ギア段検知部により前記ギア段が走行ギアから非走行ギアへ又は非走行ギアから走行ギアへ切り替えられることが検知されると同時又は検知後に、前記アクチュエータが発生させる前記能動的振動の振幅と位相を前記回転情報と前記電流波形マップと前記補正マップとに基づいて可変制御する振幅可変・位相可変制御を実行する
    ことを特徴とする能動型防振装置。
  7. 請求項1、5、6のいずれか1項に記載の能動型防振装置において、
    前記第1位置は、前記エンジンマウントとサブフレームとの連結点であり、
    前記第2位置は、前記サブフレームとメインフレームとの連結点、又は、サスペンションと前記メインフレームとの連結点である
    ことを特徴とする能動型防振装置。
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