JP6547278B2 - 撥水性フィルムの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、撥水性フィルムの製造方法に関する。
屋外、又は水が飛散する場所で用いられる装置には、その表面において撥水性が求められる場合がある。そのような装置に撥水性を付与する手段として、撥水性フィルムを装置に貼付することが行われる。
撥水性フィルムの製造方法としては、基材フィルムの表面に撥水性の層を形成する方法(例えば特許文献1)、基材フィルムの表面に微細な凹凸構造を設ける方法(例えば特許文献2)等が知られている。
特開2009−154480号公報 特開2012−126073号公報
しかしながら、特許文献1及び2に記載される方法では、撥水性の層を形成する材料、及び/又は凹凸構造を形成するための特別な装置が必要になるため、フィルム製造の工程で汎用される装置及び材料により容易に実施できない。
さらに、特許文献1に記載される方法では、撥水性の層の耐久性が不十分で、長期間の使用により撥水性の層が剥がれて撥水性が低下するという問題もある。
したがって、本発明の目的は、容易に実施することができ、且つ耐久性の高い撥水性フィルムを製造することができる、撥水性フィルムの製造方法を提供することにある。
本発明者は、前記の課題を解決するべく検討した結果、2枚の基材フィルムを貼合してから剥離することにより、剥離面に微小な凹凸構造を形成しうることを、撥水性フィルムの製造に利用することを着想した。そして、貼合するフィルムとして、特定のフィルムを用いることにより、撥水性フィルムを、フィルムの製造において汎用される設備及び材料により容易に製造しうることを見出した。本発明は、かかる知見に基づき完成されたものである。
すなわち、本発明は以下の通りである。
〔1〕 第1の基材フィルムの第1表面と、第2の基材フィルムの第1表面とを、貼合材料を介して貼合して積層体を得る貼合工程、及び
前記第1の基材フィルムと前記第2の基材フィルムとを剥離して撥水性フィルムを得る剥離工程を含み、
前記第1の基材フィルム又は前記第2の基材フィルムが、
延伸フィルムであり、且つ、引張弾性率が1600MPa以上2600MPa以下である、
撥水性フィルムの製造方法。
〔2〕 前記第1の基材フィルム、前記第2の基材フィルム、又はこれらの両方が、脂環式構造含有重合体樹脂のフィルムである、〔1〕に記載の撥水性フィルムの製造方法。
〔3〕 前記貼合材料が紫外線硬化型の接着剤である、〔1〕又は〔2〕に記載の撥水性フィルムの製造方法。
本発明の製造方法は、容易に実施することができ、且つ耐久性の高い撥水性フィルムを製造することができる。
図1は、本発明の製造方法の貼合工程で得られた積層体を模式的に示す側面図である。 図2は、図1に示した積層体を剥離工程に供して得られた一対の撥水性フィルムを模式的に示す側面図である。 図3は、本発明の製造方法により得られた撥水性フィルムの撥水面の一例を示す電子顕微鏡写真である。
以下、本発明について実施形態及び例示物等を示して詳細に説明する。ただし、本発明は以下に示す実施形態及び例示物等に限定されるものではなく、本発明の特許請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施しうる。
以下の説明において、「(メタ)アクリル」とは、アクリル及びメタクリルの両方を包含する。また、「(メタ)アクリレート」は、アクリレートとメタクリレートの両方を包含する。
以下の説明において、要素の方向が「平行」とは、特に断らない限り、本発明の効果を損ねない範囲内、例えば±5°の範囲内での誤差を含んでいてもよい。
さらに、以下の説明において「長尺」のフィルムとは、幅に対して、少なくとも5倍以上の長さを有するフィルムをいい、好ましくは10倍若しくはそれ以上の長さを有し、具体的にはロール状に巻き取られて保管又は運搬される程度の長さを有するフィルムをいう。
〔1.製造方法の概要〕
本発明の撥水性フィルムの製造方法は、特定の貼合工程及び剥離工程を含む。
〔2.貼合工程〕
貼合工程では、第1の基材フィルムの第1表面と、第2の基材フィルムの第1表面とを、貼合材料を介して貼合して積層体を得る。
図1は、本発明の製造方法の貼合工程で得られた積層体を模式的に示す側面図である。図1において、積層体100は、第1の基材フィルム111と、第2の基材フィルム112と、その間に介在する貼合材料層122とを備える。
積層体100において、第1の基材フィルム111は、第1表面111U及び第2表面111Dを有し、第2の基材フィルム112は、第1表面112D及び第2表面112Uを有する。第1の基材フィルム111の第1表面111Uと第2の基材フィルム112の第1表面112Dとは、貼合材料122とを介して貼合され、これにより積層体100が構成される。
図1に示す例では、第1の基材フィルム111及び第2の基材フィルム112は、その全面が貼合されているのではなく、一部に貼合されない部分が存在している。即ち、第1の基材フィルム111は、その一部に不貼合部分111Gを有し、第2の基材フィルム112は、その一部に不貼合部分112Gを有する。
貼合工程は、第1の基材フィルムの第1表面及び第2の基材フィルムの第1表面の一方又は両方に、貼合材料の層を設け、その後、第1の基材フィルムの第1表面及び第2の基材フィルムの第1表面が向き合った状態でこれらを接触させることにより行いうる。接触と同時に、又は接触の前若しくは後に、必要に応じて、加熱、加圧等の操作を併せて行いうる。加圧を行う場合の圧力は、0.1MPa以上が好ましく、また1.3MPa以下が好ましい。圧力を前記下限以上とすることにより、貼合を十分に達成することができる。また特に、貼合材料として接着剤を用いた場合には、接着剤の膜厚ムラの発生を低減し剥離工程における剥離を均一に達成することができる。一方、圧力を前記上限以下とすることにより、基材フィルムの皺等の不具合の発生を低減しうる。貼合工程の具体的な操作は、用いる基材フィルム及び貼合材料に適した操作としうる。
〔2.1.基材フィルム〕
貼合工程に用いる基材フィルム(第1の基材フィルム及び第2の基材フィルム)としては、通常、樹脂フィルムを用いる。基材フィルムを構成する樹脂としては、任意の重合体を含む樹脂を用いうる。中でも、基材フィルムを構成する樹脂としては、熱可塑性樹脂が好ましく、脂環式構造含有重合体を含む樹脂を用いることが特に好ましい。脂環式構造含有重合体を含む樹脂を、以下、適宜「脂環式構造含有重合体樹脂」と呼ぶ。脂環式構造含有重合体樹脂は、撥水性、透明性、低吸湿性、寸法安定性および軽量性などに優れ、光学フィルムに適している。
脂環式構造含有重合体は、重合体の構造単位中に脂環式構造を有する重合体であり、主鎖に脂環式構造を有する重合体、及び、側鎖に脂環式構造を有する重合体のいずれを用いてもよい。また、脂環式構造含有重合体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。中でも、機械的強度、耐熱性などの観点から、主鎖に脂環式構造を含有する重合体が好ましい。
脂環式構造としては、例えば、飽和脂環式炭化水素(シクロアルカン)構造、不飽和脂環式炭化水素(シクロアルケン、シクロアルキン)構造などが挙げられる。中でも、機械強度、耐熱性などの観点から、シクロアルカン構造及びシクロアルケン構造が好ましく、中でもシクロアルカン構造が特に好ましい。
脂環式構造を構成する炭素原子数は、一つの脂環式構造あたり、好ましくは4個以上、より好ましくは5個以上であり、好ましくは30個以下、より好ましくは20個以下、特に好ましくは15個以下の範囲である。これにより、基材フィルムの機械強度、耐熱性、及び成形性が高度にバランスされ、好適である。
脂環式構造含有重合体中の脂環式構造を有する構造単位の割合は、使用目的に応じて適宜選択してもよく、好ましくは55重量%以上、さらに好ましくは70重量%以上、特に好ましくは90重量%以上である。脂環式構造含有重合体中の脂環式構造を有する構造単位の割合がこの範囲にあると、基材フィルムの透明性および耐熱性の観点から好ましい。
脂環式構造含有重合体としては、例えば、ノルボルネン系重合体、単環の環状オレフィン系重合体、環状共役ジエン系重合体、ビニル脂環式炭化水素系重合体、及び、これらの水素化物等を挙げることができる。これらの中で、ノルボルネン系重合体は、透明性と成形性が良好なため、好適である。
ノルボルネン系重合体としては、例えば、ノルボルネン構造を有する単量体の開環重合体、若しくはノルボルネン構造を有する単量体と任意の単量体との開環共重合体、又はそれらの水素化物;ノルボルネン構造を有する単量体の付加重合体、若しくはノルボルネン構造を有する単量体と任意の単量体との付加共重合体、又はそれらの水素化物;等を挙げることができる。これらの中で、ノルボルネン構造を有する単量体の開環(共)重合体水素化物は、透明性、成形性、耐熱性、低吸湿性、寸法安定性、軽量性などの観点から、特に好適である。ここで「(共)重合体」とは、重合体及び共重合体の両方を包含する。
ノルボルネン構造を有する単量体としては、例えば、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン(慣用名:ノルボルネン)、トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3,7−ジエン(慣用名:ジシクロペンタジエン)、7,8−ベンゾトリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン(慣用名:メタノテトラヒドロフルオレン)、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン(慣用名:テトラシクロドデセン)、およびこれらの化合物の誘導体(例えば、環に置換基を有するもの)などを挙げることができる。ここで、置換基としては、例えばアルキル基、アルキレン基、極性基などを挙げることができる。また、これらの置換基は、同一または相異なって、複数個が環に結合していてもよい。また、ノルボルネン構造を有する単量体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
極性基の種類としては、例えば、ヘテロ原子、またはヘテロ原子を有する原子団などが挙げられる。ヘテロ原子としては、例えば、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、ケイ素原子、ハロゲン原子などが挙げられる。極性基の具体例としては、カルボキシル基、カルボニルオキシカルボニル基、エポキシ基、ヒドロキシル基、オキシ基、エステル基、シラノール基、シリル基、アミノ基、ニトリル基、スルホン酸基などが挙げられる。
ノルボルネン構造を有する単量体と開環共重合可能な任意の単量体としては、例えば、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテンなどのモノ環状オレフィン類およびその誘導体;シクロヘキサジエン、シクロヘプタジエンなどの環状共役ジエンおよびその誘導体;などが挙げられる。ノルボルネン構造を有する単量体と開環共重合可能な任意の単量体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
ノルボルネン構造を有する単量体の開環重合体、およびノルボルネン構造を有する単量体と共重合可能な任意の単量体との開環共重合体は、例えば、単量体を公知の開環重合触媒の存在下に重合又は共重合することにより製造しうる。
ノルボルネン構造を有する単量体と付加共重合可能な任意の単量体としては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテンなどの炭素数2〜20のα−オレフィンおよびこれらの誘導体;シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセンなどのシクロオレフィンおよびこれらの誘導体;1,4−ヘキサジエン、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエンなどの非共役ジエン;などが挙げられる。これらの中でも、α−オレフィンが好ましく、エチレンがより好ましい。また、ノルボルネン構造を有する単量体と付加共重合可能な任意の単量体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
ノルボルネン構造を有する単量体の付加重合体、およびノルボルネン構造を有する単量体と共重合可能な任意の単量体との付加共重合体は、例えば、単量体を公知の付加重合触媒の存在下に重合又は共重合することにより製造しうる。
単環の環状オレフィン系重合体としては、例えば、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテン等の単環を有する環状オレフィン系モノマーの付加重合体を挙げることができる。
環状共役ジエン系重合体としては、例えば、1,3−ブタジエン、イソプレン、クロロプレン等の共役ジエン系モノマーの付加重合体を環化反応して得られる重合体;シクロペンタジエン、シクロヘキサジエン等の環状共役ジエン系モノマーの1,2−または1,4−付加重合体;およびこれらの水素化物;などを挙げることができる。
ビニル脂環式炭化水素重合体としては、例えば、ビニルシクロヘキセン、ビニルシクロヘキサン等のビニル脂環式炭化水素系モノマーの重合体およびその水素化物;スチレン、α−メチルスチレン等のビニル芳香族炭化水素系モノマーを重合してなる重合体に含まれる芳香環部分を水素化してなる水素化物;ビニル脂環式炭化水素系モノマー、またはビニル芳香族炭化水素系モノマーとこれらビニル芳香族炭化水素系モノマーに対して共重合可能な任意のモノマーとのランダム共重合体若しくはブロック共重合体等の共重合体の、芳香環の水素化物;等を挙げることができる。前記のブロック共重合体としては、例えば、ジブロック共重合体、トリブロック共重合体またはそれ以上のマルチブロック共重合体、並びに傾斜ブロック共重合体等を挙げることもできる。
基材フィルムを構成する樹脂に含まれる重合体の重量平均分子量(Mw)は、通常10,000以上、好ましくは15,000以上、より好ましくは20,000以上であり、通常100,000以下、好ましくは80,000以下、より好ましくは50,000以下である。ここで、前記の重量平均分子量は、溶媒としてシクロヘキサンを用いて(但し、試料がシクロヘキサンに溶解しない場合にはトルエンを用いてもよい)ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィーで測定したポリイソプレンまたはポリスチレン換算の重量平気分子量である。重量平均分子量がこのような範囲にあるときに、基材フィルムの機械的強度および成型加工性が高度にバランスされ、好適である。
基材フィルムを構成する樹脂に含まれる重合体の分子量分布(重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn))は、通常1.2以上、好ましくは1.5以上、更に好ましくは1.8以上であり、通常3.5以下、好ましくは3.0以下、更に好ましくは2.7以下である。分子量分布を前記範囲の下限値以上にすることにより、重合体の生産性を高め、コストを抑制することができる。また、上限値以下にすることにより、低分子量成分を減らすことができるので、緩和時間を長くできる。そのため、高温曝露時の緩和を抑制でき、基材フィルムの安定性を高めることができる。
本発明の製造方法で得られる撥水性フィルムを貼付する対象は、液晶表示装置の表示面等の、光透過性が求められ、且つ光学特性が所定のものであることが求められる場合がある。そのような用途に用いる撥水性フィルムを製造する場合、基材フィルムを構成する樹脂に含まれる重合体は、光弾性係数Cの絶対値が10×10−12Pa−1以下であることが好ましく、7×10−12Pa−1以下であることがより好ましく、4×10−12Pa−1以下であることが特に好ましい。光弾性係数Cは、複屈折をΔn、応力をσとしたとき、「C=Δn/σ」で表される値である。重合体の光弾性係数を前記範囲に納めることにより、基材フィルムの面内レターデーションReのバラツキを小さくできる。
基材フィルムを構成する樹脂に含まれる重合体の飽和吸水率は、好ましくは0.03重量%以下、さらに好ましくは0.02重量%以下、特に好ましくは0.01重量%以下である。飽和吸水率が前記範囲であると、得られる撥水性フィルムの機械的性質及び光学的性質の経時変化を小さくすることができる。
飽和吸水率は、試験片を一定温度の水中に一定時間浸漬して増加した質量を、浸漬前の試験片の質量に対する百分率で表した値である。通常は、23℃の水中に24時間、浸漬して測定される。重合体における飽和吸水率は、例えば、重合体中の極性基の量を減少させることにより、前記の範囲に調節することができる。飽和吸水率をより低くする観点から、前記の重合体は、極性基を有さないことが好ましい。
基材フィルムを構成する樹脂は、本発明の効果を著しく損なわない限り、重合体以外に任意の成分を含んでいてもよい。その任意の成分の例を挙げると、顔料、染料等の着色剤;可塑剤;蛍光増白剤;分散剤;熱安定剤;光安定剤;紫外線吸収剤;耐電防止剤;酸化防止剤;滑剤;界面活性剤などの添加剤が挙げられる。これらの成分は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
ただし、基材フィルムを構成する樹脂に含まれる重合体の量は、一般的には50%〜100%、又は70%〜100%である。重合体の量の割合を一定以上の高い値とすることにより、重合体の好ましい性質を良好に発現することができる。例えば、重合体が脂環式構造含有重合体である場合、透明性、低吸湿性、寸法安定性および軽量性などの利点を高い水準で享受しうる。
基材フィルムは、1層のみを含む単層構造のフィルムであってもよく、2層以上の層を備える複層構造のフィルムであってもよい。
基材フィルムが2層以上の層を備える場合、一種類のフィルム層を2層以上備えていてもよく、異なる二種類以上のフィルム層を備えていてもよい。基材フィルムが複層構造を有する場合、良好な物性を有する撥水性フィルムを得る観点から、基材フィルムが備える層のうち1層以上が脂環式構造含有重合体樹脂からなることが好ましく、基材フィルムの第1表面が脂環式構造含有重合体樹脂からなることが特に好ましい。また、基材フィルムには、上述した脂環式構造含有重合体樹脂以外の樹脂からなる層を設けてもよい。脂環式構造含有重合体樹脂以外からなる層としては、例えば、反射防止、帯電防止、防眩などの機能を有するフィルム層が挙げられる。
本発明の製造方法により、光透過性を有する撥水性フィルムを製造する場合、製造に用いる基材フィルムは、光透過性を有するものとしうる。この場合、基材フィルムは、1mm厚換算での全光線透過率が、70%以上であることが好ましく、80%以上がより好ましい。全光線透過率は、JIS K0115に準拠して、分光光度計(日本分光社製、紫外可視近赤外分光光度計「V−570」)を用いて測定できる。また、基材フィルムは、1mm厚でのヘイズが、5%以下であることが好ましく、3%以下であることがより好ましい。ここで、ヘイズは、JIS K7361−1997に準拠して、日本電色工業社製「濁度計 NDH−300A」を用いて、5箇所測定し、それから求めた平均値である。
基材フィルムは、その幅方向の寸法を、例えば1000mm〜3000mmとしうる。基材フィルムの長手方向の寸法には制限は無いが、長尺のフィルムであることが好ましい。長尺のフィルムを用いることにより、効率的な製造が可能となる。
基材フィルムの平均厚みは、好ましくは5μm以上、より好ましくは20μm以上であり、好ましくは500μm以下、より好ましくは300μm以下である。基材フィルムの厚み変動幅は、長尺方向及び幅方向にわたって、前記平均厚みの±3%以内であることが好ましい。厚み変動を前記範囲にすることにより、得られる撥水性フィルムの機械的性質及び光学性質のバラツキを小さくできる。
基材フィルムが含む揮発性成分の量は、好ましくは0.1重量%以下、より好ましくは0.05重量%以下、さらに好ましくは0.02重量%以下である。揮発性成分の量を前記範囲にすることにより、寸法安定性が向上し、得られる撥水性フィルムの機械的性質及び光学性質の経時変化を小さくすることができる。ここで、揮発性成分とは、分子量200以下の物質である。揮発性成分としては、例えば、残留単量体及び溶媒などが挙げられる。揮発性成分の量は、分子量200以下の物質の合計として、ガスクロマトグラフィーにより分析することにより定量することができる。
基材フィルムの製造方法に制限はない。基材フィルムは、当該基材フィルムを形成するための樹脂を公知のフィルム成形法で成形することによって得られる。フィルム成形法としては、例えば、キャスト成形法、押出成形法、インフレーション成形法などが挙げられる。中でも、溶媒を使用しない溶融押出法が、残留揮発成分量を効率よく低減させることができ、地球環境や作業環境の観点、及び製造効率に優れる観点から好ましい。溶融押出法としては、ダイスを用いるインフレーション法などが挙げられ、中でも生産性や厚み精度に優れる点でTダイを用いる方法が好ましい。
基材フィルムのそれぞれは、2層以上の層を備えた複層フィルムであってもよいが、良好に制御された凝集破壊を発生させる観点から、単層のフィルムであることが好ましい。
〔2.2.延伸処理、及び第1の基材フィルムと第2の基材フィルムとの関係〕
基材フィルムは、延伸処理を施されていない未延伸フィルムであってもよく、延伸処理を施された延伸フィルムであってもよい。但し、本発明の製造方法においては、第1の基材フィルム又は前記第2の基材フィルムが延伸フィルムであり、且つ、引張弾性率が1600MPa以上2600MPa以下である。以下の説明では、別に断らない限り、第1の基材フィルムが延伸フィルムであり、且つ、引張弾性率が1600MPa以上2600MPa以下である場合について説明する。
延伸フィルムは、前記方法で得られた未延伸の基材フィルムを延伸することにより得られる。延伸方法は特に制限されず、例えば、一軸延伸法、二軸延伸法のいずれを採用してもよい。延伸方法の例を挙げると、一軸延伸法の例としては、フィルム搬送用のロールの周速の差を利用して長尺方向に一軸延伸する方法;テンター延伸機を用いて幅方向に一軸延伸する方法等が挙げられる。また、二軸延伸法の例としては、固定するクリップの間隔を開いての長尺方向の延伸と同時に、ガイドレールの広がり角度により幅方向に延伸する同時二軸延伸法;フィルム搬送用のロール間の周速の差を利用して長尺方向に延伸した後、その両端部をクリップ把持してテンター延伸機を用いて幅方向に延伸する逐次二軸延伸法などの二軸延伸法等が挙げられる。さらに、例えば、幅方向又は長尺方向に左右異なる速度の送り力若しくは引張り力又は引取り力を付加できるようにしたテンター延伸機を用いて、フィルムの幅方向に対して平行でもなく垂直でもない方向に連続的に斜め延伸する斜め延伸法を用いてもよい。
延伸に用いる装置として、例えば、縦一軸延伸機、テンター延伸機、バブル延伸機、ローラー延伸機等が挙げられる。延伸温度は、延伸されるフィルムを構成する樹脂のガラス転移温度をTgとして、好ましくは(Tg−30℃)以上、より好ましくは(Tg−10℃)以上であり、好ましくは(Tg+60℃)以下、より好ましくは(Tg+50℃)以下である。
延伸倍率は、通常1.05倍以上、好ましくは1.1倍以上であり、通常10.0倍以下、好ましくは2.0倍以下である。延伸倍率を前記上限以下とすることにより、得られる撥水性フィルムの強度を所望の高い値に保つことができる。延伸倍率を前記下限以上とすることにより、第1の基材フィルムの層内における凝集破壊を良好な態様で発生させることができ、その結果、良好な品質の撥水性フィルムを容易に製造することができる。
第1の基材フィルムの引張弾性率は、1600MPa以上であり、好ましくは1800MPa以上である。一方、第1の基材フィルムの引張弾性率の上限は、2600MPa以下であり、好ましくは2400MPa以下、より好ましくは2200MPa以下としうる。
引張弾性率が前記下限以上であることにより、剥離工程において、第1の基材フィルムの層内における凝集破壊を良好な態様で発生させることができ、その結果、良好な品質の撥水性フィルムを容易に製造することができる。一方、引張弾性率が前記上限以下であることにより、得られる撥水性フィルムの強度を所望の高い値に保つことができる。
第2の基材フィルムは、延伸フィルムであってもよく、未延伸フィルムであってもよい。延伸フィルムと未延伸フィルムとを対比すると、延伸フィルムのほうが、分子の絡み合いが比較的少ないため凝集破壊しやすく、従って、第2の基材フィルムとして未延伸フィルムを用いた場合、第1の基材フィルムの層内においてより良好に制御された凝集破壊を発生させることができる。但し、第2の基材フィルムが延伸フィルムである場合であっても、剥離の態様により、第1の基材フィルムの層内において制御された凝集破壊を発生させうる。第2の基材フィルムの引張弾性率は、凝集破壊を容易に発生させる観点から、好ましくは1000MPa以上としうる。上限は特に制限されないが、5000MPa以下である。
基材フィルムが2層以上の層を備える場合、予め延伸処理を施されたフィルム層を貼り合せて延伸フィルムを得てもよく、共押出等により得られた複層構造の延伸前フィルムに延伸処理を施して延伸フィルムを得てもよい。
基材フィルムのそれぞれが2層以上の層を備える場合、基材フィルムの少なくとも第1表面を構成する層が前記要件を満たす場合、前記要件を満たす基材フィルムとして、本発明の製造方法に用いうる。例えば、第1の基材フィルムが2層以上の層を備える場合、その第1表面を構成する層が引張弾性率が1600MPa以上の延伸フィルムである場合、当該フィルムを、第1の基材フィルムとして用いうる。
〔2.3.貼合材料〕
貼合工程に際し、第1の基材フィルムと第2の基材フィルムとの間に介在する貼合材料の例としては、
・第1の基材フィルムと第2の基材フィルムとを接着する接着剤層を形成しうる接着剤
・第1の基材フィルムと第2の基材フィルムとの間に化学的結合を形成しうるカップリング剤
等の材料が挙げられる。
〔2.4.接着剤〕
接着剤の例としては、水性接着剤、溶剤型接着剤、二液硬化型接着剤、光硬化型接着剤、及び感圧性接着剤が挙げられる。この中でも、光硬化型接着剤が好ましい。また、接着剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
光硬化型接着剤としては、例えば、ウレタン(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、およびアクリルアミド誘導体を含むアクリレート系接着剤を用いることができる。これらの接着剤は、紫外線硬化型の接着剤としうる。貼合材料として、紫外線硬化型の接着剤を用いることにより、他の形式の接着剤を用いる場合及びシランカップリング剤を用いる場合に比べて、塗布及び硬化を迅速に行うことができ、高い生産性を得ることができる。
ウレタン(メタ)アクリレートは、例えば、ポリイソシアネートとポリオールとを反応させた後、更に水酸基含有(メタ)アクリル化合物および必要に応じて水酸基含有アリルエーテル化合物を反応させることによって、ラジカル重合性不飽和基含有オリゴマーとして得ることができる。また、ウレタン(メタ)アクリレートは、例えば、水酸基含有(メタ)アクリル化合物とポリオールとを反応させた後、更にポリイソシアネートを反応させることによっても得ることができる。
ウレタン(メタ)アクリレートとしては、一分子当たり2個〜3個の二重結合を有し、且つ、二重結合1個当たりの数平均分子量が500〜3000であるウレタン(メタ)アクリレートを用いることが、接着強度、柔軟性、光硬化性及び粘度等をバランスさせやすいので、好ましい。
光硬化型接着剤におけるウレタン(メタ)アクリレートの量は、通常30重量%〜50重量%である。ウレタン(メタ)アクリレートの量を前記範囲の下限値以上にすることにより、接着剤層が脆くなることを防止できる。また、上限値以下にすることにより、接着剤の粘度を低くでき、また、接着強度を高くできる。
ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートが挙げられる。それらの中でも、特にヒドロキシエチルメタアクリレートが好ましい。
光硬化型接着剤におけるヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの量は、通常13重量%〜40重量%である。ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの量を前記範囲の下限値以上にすることにより、接着剤全体の親水性を適切な範囲とすることができる。また、上限値以下にすることにより、接着剤層が脆くなることを防止でき、また、接着剤の光硬化性を高くできる。
アクリルアミド誘導体としては、例えば、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、N−ヒドロキシエチルアクリルアミドが挙げられる。中でも、特にN,N−ジエチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、N−ヒドロキシエチルアクリルアミドが好ましい。
光硬化型接着剤におけるアクリルアミドの量は、通常0〜30重量%、好ましくは1重量%〜30重量%の範囲である。
光硬化型接着剤は、上述した成分に加えて、イソボルニル(メタ)アクリレートを30重量%〜40重量%含むことが好ましい。イソボルニル(メタ)アクリレートを含むことで、接着剤層に耐熱性が付与される。さらに、接着性能を低下させずに塗工性能を改良するための粘度調整を容易に行うことができる。
光硬化型接着剤は、光重合開始剤を含むことが好ましい。光重合開始剤としては、例えば、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、キサントン、フルオレノン、ベンズアルデヒド、フルオレン、アントラキノン、トリフェニルアミン、カルバゾール、3−メチルアセトフェノン、4−クロロベンゾフェノン、4,4′−ジメトキシベンゾフェノン、4,4′−ジアミノベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、チオキサントン、ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチル−1−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルホリノ−プロパン−1−オン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド等が挙げられる。また、光硬化型接着剤における光重合開始剤の量は、通常2重量%〜10重量%である。
接着剤の粘度は、23℃で、通常20mPa・s以上、好ましくは30mPa・s以上、より好ましくは50mPa・s以上であり、通常5000mPa・s以下、好ましくは3000mPa・s以下、より好ましくは1500mPa・s以下である。
接着剤を、第1の基材フィルムの第1表面と第2の基材フィルムの第1表面との間に介在させ、さらに必要に応じて硬化させることにより、貼合材料として接着剤を用いた積層体を得うる。より具体的には例えば、第1の基材フィルムの第1表面及び/又は第2の基材フィルムの第1表面に接着剤を塗布した後、ロールラミネーター等の貼合装置を用いて第1の基材フィルムと第2の基材フィルムとを貼り合せ、必要に応じて乾燥又は紫外線等の光の照射を行い、接着剤層を形成しうる。
接着剤層の平均厚みは、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは0.3μm以上であり、好ましくは50μm以下、より好ましくは30μm以下である。接着剤層の厚みが前記上限以下であることにより、剥離時の力を基材フィルムに負荷させ、基材フィルム層内の所望の凝集破壊を容易に起こすことができる。また、接着剤層の厚みが前記下限以上であることにより、接着剤層の強度を確保し、基材フィルム層内の所望の凝集破壊を容易に起こすことができる。
接着剤層は、その貯蔵弾性率が、好ましくは3.00GPa以上、より好ましくは3.50GPa以上である。上限は特に制限されないが、10.0GPa以下である。貯蔵弾性率が前記範囲内であることにより、基材フィルム層内の所望の凝集破壊を容易に起こすことができる。貯蔵弾性率は、HYSITRON社製TI−950 TriboIndenterを用いて、常温、300Hz、押し込み深さ50nmの条件により測定しうる。
〔2.5.改質処理〕
接着剤層の形成に先立ち、基材フィルムの表面に改質処理を施し、基材フィルムと接着剤層との密着性を向上させることが好ましい。基材フィルムに対する表面改質処理としては、例えば、エネルギー線照射処理、プライマー処理、及び薬品処理等が挙げられる。エネルギー線照射処理としては、例えば、コロナ放電処理、プラズマ処理、電子線照射処理、紫外線照射処理等が挙げられ、処理効率の点等から、コロナ放電処理及びプラズマ処理が好ましく、コロナ放電処理が特に好ましい。プライマー処理の例としては、基材フィルムの表面に、ポリウレタンの層を形成する処理が挙げられる。また、薬品処理としては、例えば、ケン化処理、重クロム酸カリウム溶液、濃硫酸等の酸化剤水溶液中に浸漬し、その後、水で洗浄する方法が挙げられる。
コロナ放電処理は、電極の構造として、ワイヤー電極、平面電極又はロール電極のものが好適である。電極の材質としては、例えば、鉄、銅、アルミニウム、ステンレスなどの金属が挙げられる。電極形状としては、例えば、薄板状、ナイフエッジ状、ブラシ状などが挙げられる。
また、コロナ放電処理では、放電を均一にするために、処理対象のフィルムと電極との間に誘電体を挟んで処理を実施することが好ましい。誘電体としては、比誘電率が10以上のものを使用することが好ましい。また、誘電体の設置構造は、両極の電極をそれぞれ誘電体で挟んだ構造が好ましい。誘電体の材質としては、例えば、セラミック;シリコンゴム、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレンテレフタレート等のプラスチック;ガラス;石英;二酸化珪素;酸化アルミニウム、二酸化ジルコニウム、二酸化チタンなどの金属酸化物;チタン酸バリウム等の化合物;などが挙げられる。特に、比誘電率10以上(25℃環境下)の固体誘電体を介在させておくことが、低電圧で高速にコロナ放電処理を行えるという点で有利である。前記比誘電率10以上の固体誘電体としては、例えば、二酸化ジルコニウム、二酸化チタンなどの金属酸化物;チタン酸バリウムなどの酸化物;シリコンゴムなどが挙げられる。誘電体の厚みは0.3mm〜1.5mmの範囲が好ましい。誘電体の厚みを前記範囲の下限値以上にすることにより絶縁破壊を防止できる。また、上限値以下にすることにより、印加電圧を高くする必要がなくなるので、処理効率を良くできる。
コロナ放電処理では、処理対象となるフィルムと電極との間隔は、0.5mm〜10mmであることが好ましい。間隔を前記範囲の下限値以上にすることにより、厚みの厚いフィルムであっても電極間を通すことができる。このため、例えば継ぎ目等の厚みが厚い部分を有するフィルムであっても、安定して電極間を通過させることができるので、フィルムの傷つきを防止できる。また、上限値以下にすることにより、印加電圧を低くできるので、電源を小型化でき、放電がストリーマ状になることを防止できる。
コロナ放電処理の出力は、処理対象面のダメージをできるだけ少なく処理する条件が好ましく、具体的には、好ましくは0.02kW以上、より好ましくは0.04kW以上であり、好ましくは5kW以下、より好ましくは2kW以下である。また、この範囲内で、可能な限り低出力で数回コロナ放電処理を施すことが、好ましいコロナ放電処理方法である。
コロナ放電処理の密度は、好ましくは1W・min/m以上、より好ましくは5W・min/m以上、特に好ましくは10W・min/m以上であり、好ましくは1000W・min/m以下、より好ましくは500W・min/m以下、特に好ましくは300W・min/m以下である。処理密度を前記範囲の下限値以上にすることにより、ウレタン組成物の塗布性を良好にできる。また、上限値以下にすることにより、処理面の破壊による防止による接着性の低下を防止できる。
コロナ放電処理の周波数は、好ましくは5kHz以上、より好ましくは10kHz以上であり、好ましくは100kHz以下、より好ましくは50kHz以下である。周波数を前記範囲の下限値以上にすることにより、コロナ放電処理の均一性を高めることができるので、コロナ放電処理のムラを防止できる。また、上限値以下にすることにより、安定したコロナ放電処理を行うことができる。
コロナ放電処理は電極周辺をケーシングで囲い、ケーシングの内部に不活性ガスを入れ、電極部にガスをかけて行うと、放電をより細かい状態で発生させることができる。不活性ガスとしては、例えば、ヘリウム、アルゴン、窒素等が挙げられる。不活性ガスは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
改質処理としてプラズマ処理を行う場合、プラズマ放電処理としては、例えば、グロー放電処理、フレームプラズマ処理などが挙げられる。グロー放電処理としては、真空下で行う真空グロー放電処理、大気圧下で行う大気圧グロー放電処理のいずれも用いうる。中でも、生産性の観点から、大気圧下で行う大気圧グロー放電処理が好ましい。ここで、大気圧とは、700Torr〜780Torrの範囲である。
グロー放電処理は、相対する電極の間に処理対象のフィルムを置き、装置中にプラズマ励起性気体を導入し、電極間に高周波電圧を印加することにより、該気体をプラズマ励起させ、電極間においてグロー放電を行うものである。これにより、処理された面の親水性がより高められる。
プラズマ励起性気体とは、前記のような条件においてプラズマ励起されうる気体をいう。プラズマ励起性気体としては、例えば、アルゴン、ヘリウム、ネオン、クリプトン、キセノン等の希ガス;窒素;二酸化炭素;テトラフルオロメタンのようなフロン類及びそれらの混合物;アルゴン、ネオンなどの不活性ガスに、カルボキシル基、水酸基、カルボニル基などの極性官能基を付与し得る反応性ガスを加えたもの;などが挙げられる。また、プラズマ励起性気体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
プラズマ処理における高周波電圧の周波数は、1kHz〜100kHzの範囲が好ましい。電圧の大きさは、電極に印加した時の電界強度が1kV/cm〜100kV/cmとなる範囲にすることが好ましい。
改質処理としてケン化処理を行う場合、ケン化処理としては、アルカリケン化処理が好適である。処理方法としては、例えば浸漬法、アルカリ液塗布法等が挙げられ、生産性の観点から浸漬法が好ましい。
ケン化処理における浸漬法は、アルカリ液の中に処理対象のフィルムを適切な条件で浸漬し、そのフィルムの全表面のアルカリと反応性を有する全ての面をケン化処理する手法である。浸漬法は、特別な設備を必要としないため、コストの観点で好ましい。アルカリ液は、水酸化ナトリウム水溶液であることが好ましい。アルカリ液の濃度は、好ましくは0.5mol/リットル以上、より好ましくは1mol/リットル以上であり、好ましくは3mol/リットル以下、より好ましくは2mol/リットル以下である。アルカリ液の液温は、好ましくは25℃以上、より好ましくは30℃以上であり、好ましくは70℃以下、より好ましくは60℃以下である。処理された面の平均水接触角及び水接触角の標準偏差を所望の範囲に設定するためには、例えば、浸漬時間などを適宜調整する。
アルカリ液にフィルムを浸漬した後は、処理されたフィルムにアルカリ成分が残留しないように、フィルムを水で十分に水洗したり、フィルムを希薄な酸に浸漬してアルカリ成分を中和したりすることが好ましい。
改質処理として紫外線照射処理を行う場合、照射する紫外線の波長は、通常100nm〜400nmである。また、紫外線の光源であるランプの出力値は、通常120W以上、好ましくは160W以上であり、通常240W以下、好ましくは200W以下である。紫外線の照射量は、紫外線を照射される対象物に対しての紫外線の積算光量の総量で表記すると、好ましくは100mJ/cm以上、更に好ましくは、200mJ/cm以上、特に好ましくは300mJ/cm以上であり、好ましくは2,000mJ/cm以下、更に好ましくは1,500mJ/cm以下、特に好ましくは1,000mJ/cm以下である。積算光量の総量は、紫外線照射ランプの照度とライン速度(フィルムの移動速度)によって決まる値であり、例えば、紫外線積算照度計(アイグラフィック社製:EYEUV METER UVPF−A1)で測定しうる。
〔2.6.カップリング剤〕
貼合材料としてのカップリング剤の例としては、材料の表面処理に用いられるシランカップリング剤が挙げられる。
シランカップリング剤の具体的としては、
ビニルトリクロルシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランなどのビニル基を有するもの;
2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシランなどのエポキシ基を有するもの;
p−スチリルトリメトキシシランなどのスチリル基を有するもの;
3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシトリエトキシシランなどのメタクリロキシ基を有するもの;
3−アクリロキシプロピルトリメトキシシランなどのアクリロキシ基を有するもの;
N−2−アミノエチル−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−アミノエチル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−アミノエチル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチルブチリデンプロピルアミン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(ビニルベンジル)−2−アミノエチル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン塩酸塩、特殊アミノシラン(信越化学社製、KBM−6135など)などのアミノ基を有するもの;
3−ウレイドプロピルトリエトキシシランなどのウレイド結合を有するもの;
3−クロロプロピルトリメトキシシランなどのハロゲン原子を含有するもの;
3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシランなどのメルカプト基を有するもの;
ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィドなどのスルフィド結合を有するもの;
3−イソシアネートプロピルトリエトキシシランなどのイソシアネート基を有するもの;
等が挙げられる。これらのうちの一種を単独で用いることもでき、二種以上を組み合わせて用いることもできる。
気化したシランカップリング剤を含むガス(以下、「処理用ガス」と呼ぶ場合がある。)を、第1の基材フィルムの第1表面及び/又は第2の基材フィルムの第1表面に接触させてこれらの表面を処理し、その後第1の基材フィルム及び第2の基材フィルムを適切な条件で圧着することにより、貼合材料としてシランカップリング剤を用いた積層体を得うる。処理用ガスによる処理は、第1の基材フィルムの第1表面及び第2の基材フィルムの第1表面の一方のみに行ってもよいが、通常はこれらの両方に行う。
処理用ガスは、シランカップリング剤に加えて、キャリアガスを含有しうる。かかるキャリアガスとしては、窒素、ヘリウム、アルゴン等の不活性ガスを用いうる。
処理用ガスにおけるシランカップリング剤濃度(飽和濃度を100%とした割合)は、好ましくは20%以上であり、より好ましくは40%以上であり、さらにより好ましくは60%以上であり、且つ、100%以下であり、好ましくは95%以下であり、さらに好ましくは90%以下である。シランカップリング剤濃度を飽和濃度の20%以上とすることにより、剥離工程において、第1の基材フィルムの層内における凝集破壊を良好な態様で発生させることができ、その結果、良好な品質の撥水性フィルムを容易に製造することができる。
処理用ガスは、さらに、必要に応じて、水蒸気を含むことができる。水蒸気を含むことにより、高い剥離強度を与えるシランカップリング処理を、さらに効率的に達成することができる。処理用ガスにおける水蒸気の含有割合は、飽和濃度の5%〜100%とすることができる。
処理用ガスは、さらに、必要に応じて、任意の気体成分を含むことができる。かかる任意の気体成分としては、メタノール、エタノールなどを挙げることができる。処理用ガスにおける任意の気体成分の含有割合は、飽和濃度の0.1%〜10%とすることができる。
シランカップリング剤を貼合材料として用いた場合、貼合材料の層の厚さは、通常5nm以下の範囲となる。
カップリング剤による処理に先立ち、基材フィルムの表面に改質処理を施し、カップリング剤の効果を向上させることが好ましい。かかる改質処理の例としては、上に述べた接着剤層の形成に先立つ改質処理と同様の処理が挙げられる。
〔3.剥離工程〕
剥離工程では、第1の基材フィルムと第2の基材フィルムとを剥離して撥水性フィルムを得る。
剥離のより具体的な操作の例としては、積層体中の第1の基材フィルム又は前記第2の基材フィルムの一方の端部を把持し、当該端部から、他の一方の端部へ剥離位置が移動するよう、把持したフィルムを引っ張ることにより、剥離を達成しうる。
基材フィルムが長尺のフィルムである場合、その長手方向を剥離方向とすることが、製造効率を高める上で好ましい。
剥離速度について特に制限はないが、剥離速度が低すぎると生産性が悪く、逆に剥離速度が高すぎると剥離時の応力が強くなり基材が破断する場合がある。したがって、基材が破断しない程度に剥離速度を速めることが、高い生産性で安定した製造を行うことができるため好ましい。
第1の基材フィルムが延伸フィルムであり且つ引張弾性率が1600MPa以上である場合は、剥離工程を行うことにより、第1の基材フィルムの層内において凝集破壊を発生させ、第1の基材フィルムの一部を、積層体の残余の部分から剥離することができる。このような凝集破壊は、第1の基材フィルムとして前記所定のものを用い、且つ、貼合材料及び第2の基材フィルムの材料並びに積層体の形成条件を適宜調節することにより達成しうる。この剥離工程により、分離された第1の基材フィルムの一部、及び積層体の残余の部分の剥離面に、凝集破壊に起因する微細な凹凸構造を形成することができ、これらの分離物はいずれも、製品たる撥水性フィルムとしうる。剥離工程により生じる凝集破壊は、第1の基材フィルムの層内のみ、又は第2の基材フィルムの層内のみにおいて発現させることが好ましく、特に、第1の基材フィルムの層内のみにおいて発現させ、それにより生業された態様の凝集破壊が発生した大面積で均質な撥水性フィルムを安定して製造することが、特に好ましい。
図2は、図1に示した積層体を剥離工程に供して得られた一対の撥水性フィルムを模式的に示す側面図である。図1における第1の基材フィルム111は、凝集破壊することにより、その一部が、第1の撥水性フィルム211となっている。第1の基材フィルム111の残余212と、貼合材料層122と、第2の基材フィルム112は、第2の撥水性フィルム202を構成している。第1の撥水性フィルム211の剥離面211U、及び第2の撥水性フィルム202の剥離面202Dは、いずれも、第1の基材フィルム111の凝集破壊により生じた微細な凹凸構造を有する。当該剥離面は、微細な凹凸構造が無い場合に比べて、高い撥水効果を有するため、撥水面として利用しうる。
図3は、本発明の製造方法により得られた撥水性フィルムの撥水面の一例を示す電子顕微鏡写真である。このように、凝集破壊により撥水面の表面に微細な凹凸構造が形成され、これにより、高い撥水効果を得ることができる。
〔4.撥水性フィルム〕
本発明の製造方法により、撥水性フィルムとして、上に述べた第1の撥水性フィルム及び第2の得られる撥水性フィルムが得られる。撥水性フィルムの界面は、粒子等により構成される凹凸構造とは異なり、基材フィルムにより構成される凹凸構造であるため、使用時における耐久性が高い。特に、第1の撥水性フィルムは、凹凸構造と基材とが一体になっているため、使用時における耐久性に特に優れたフィルムとしうる。
本発明の製造方法により得られる撥水性フィルムは、水滴の付着による汚れの付着、美観の低下、視認性の低下等の不所望な現象を低減することが好ましい表面に適用しうる。例えば、降雨、結露、水の飛散等の現象により水滴が付きやすい箇所に用いる装置又は部材の表面に適用しうる。具体的には、窓、屋外又は浴室で用いる表示装置、照明等の表面に適用しうる。
撥水性フィルムは、適用対象の表面に、必要に応じて接着剤層等の層を介して貼付することにより使用しうる。具体的には、撥水面とは反対の面(図2に示す第1の撥水性フィルム211であれば面211D、第2の撥水性フィルム202であれば面202U)に、接着剤層を形成し、当該接着剤層を介して適用対象の表面に貼付することにより、撥水性フィルムを使用しうる。
基材フィルム(又は、図2に示す第2の撥水性フィルム202のような層構成を有する場合は基材フィルム及び貼合材料)として光透過性を有する材料を用いた場合、得られる撥水性フィルムも、光透過性を有するものとしうる。例えば、撥水性フィルムは1mm厚換算での全光線透過率を、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上としうる。また、撥水性フィルムの1mm厚換算でのヘイズを、好ましくは5%以下、より好ましくは3%以下としうる。このような特性を有することにより、窓及び表示装置等の、光透過性が求められる部材又は装置に、撥水性フィルムを良好に適用しうる。
撥水性フィルムの撥水面は、その平均水接触角を、好ましくは115°以上、より好ましくは120°以上としうる。基材フィルムの材質を適宜選択することにより、基材フィルムの表面が平滑であっても、110°程度の平均水接触角を得ることは可能だが、本発明の製造方法により得られる撥水性フィルムは、撥水面における微細な凹凸構造により、それよりもさらに高い平均水接触角を得ることができる。
前記の平均水接触角は、接触角計を用いてθ/2法により求めうる。
平均水接触角は、例えば、測定対象の表面において、100cmの範囲内で無作為に選んだ20点の水接触角を測定し、この測定値の加算平均により算出される。
以下、実施例を示して本発明について具体的に説明するが、本発明は以下に示す実施例に限定されるものではなく、本発明の特許請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施しうる。
また、以下の説明において、量を示す「部」及び「%」は、別に断らない限り、重量基準である。また、以下に説明する操作は、別に断らない限り、常温及び常圧の条件において行った。
〔評価方法の説明〕
(引張弾性率)
フィルムの引張弾性率は、JIS K7113に則り、引張試験機(インストロン社製、5564型デジタル材料試験機)にて、長手方向(MD方向)及び幅方向(TD方向)それぞれのフィルムの引張弾性率を測定した。測定条件は、引張速度を5m/分、試験回数を5回、室温を23℃、湿度を50%RHとした。引張弾性率の測定におけるひずみ測定は、試験片中央部に50mmの間隔をあけ点を打ち、2点の間隔をビデオ伸び計(インストロン社製)にて測定した。
(接触角)
JISR3257:1999に準拠し、撥水性フィルムの撥水面の接触角を測定した。
協和界面科学株式会社製 自動接触角計(型名:DropMaster500)を用い、液滴として蒸留水を使用し接触角を求めた。
(貯蔵弾性率)
接着層の貯蔵弾性率は、得られた積層体の一部から、接着剤層を剥離して取り出し試料とし、HYSITRON社製TI−950 TriboIndenterを用いて、常温、300Hz、押し込み深さ50nmの条件にて測定した。
〔実施例1〕
(1−1.第2の基材フィルム:未延伸フィルムの製造)
ノルボルネン系重合体(商品名「ZEONOR 1420」、日本ゼオン社製;ガラス転移温度Tg136℃)のペレットを、空気を流通させた熱風乾燥機を用いて100℃で、4時間乾燥した。そしてこのペレットを、リーフディスク形状のポリマーフィルター(濾過精度30μm)を設置した50mmの単軸押出機と内面に表面粗さRa=0.15μmのクロムメッキを施した650mm幅のT型ダイスを用いて260℃で押出した。押出されたシート状のノルボルネン系重合体を第1冷却ドラム(直径250mm、温度:135℃、周速度R1:25.7m/分)に密着させ、次いで第2冷却ドラム(直径250mm、温度125℃、周速度R2:25.7m/分)、次いで第3冷却ドラム(直径250mm、温度100℃、周速度R3:25.5m/分)に順次密着させて移送し、幅600mm、長さ300mの未延伸フィルム1を得た。これらの移送経路のうち、T型ダイスの開口部から押出されたシート状のノルボルネン系重合体が最初に密着する第1冷却ドラムまでをアルミ製の囲い部材で覆い、かつ前記囲い部材からシート状の溶融樹脂が最初に密着する冷却ドラムまでの距離を80mmとした。得られた未延伸フィルム1の引張弾性率を測定したところ1650MPaであった。
(1−2.第1の基材フィルム:延伸フィルムの製造)
(1−1)で作製した未延伸フィルム1をそのまま連続してフローティング方式の縦延伸装置に供給し、140℃、1.3倍の条件で縦延伸を行った後、さらに連続してテンターに供給した。テンター内では、フィルムを、145℃、1.5倍で進行方向に対し直角方向に延伸した。これにより、延伸フィルム1を得た。得られた延伸フィルム1の引張弾性率を測定したところ1630MPaであった。
(1−3.貼合工程:積層体の製造)
図1に模式的に示す構造を有する積層体を、下記の操作により製造した。
(1−2)で得られた延伸フィルム1(図1中の第1の基材フィルム111に相当)の一方の表面及び(1−1)で得られた未延伸フィルム1(図1中の第2の基材フィルム112に相当)の一方の表面に、コロナ処理装置(春日電機社製)を用いて、出力500W、電極長1.35m、搬送速度5m/minの条件で放電処理を施した。
延伸フィルム1及び未延伸フィルム1の放電処理された面を、UV硬化タイプ接着剤を介して貼合した。貼合に際しては、市販のラミネータ(アコブランズジャパン社製GLM320R4)を用いた。この時の貼合圧力は1.1MPaであった。貼合に際しては、全面を貼合するのではなく、剥離のために把持する不貼合部分(図1中の不貼合部分111G及び112Gに相当)を残して貼合した。UV硬化タイプ接着剤としては、東亜合成社製、商品名「アロニックス7300K」を用い、接着剤層の厚みは、硬化後の厚みが2μmとなるよう調整した。
得られた貼合物に、未延伸フィルム1側からUV照射(メタルハライドランプ 500mW/m、2000mJ/m)を行い、接着剤を硬化させ、接着剤層(図1中の貼合部材122に相当)を形成し、積層体を得た。得られた接着剤層の貯蔵弾性率は、3.9GPaであった。
(1−4.剥離工程)
図2に模式的に示す構造を有する撥水性フィルムを、下記の操作により製造した。
(1−3)で得られた積層体を、延伸フィルム1の縦延伸方向が長手方向になるように、100mm×25mmの長方形にカットした。
カットした積層体を、引張り試験器(インストロンジャパン社製「引っ張り試験機5564」)に、長手方向が剥離方向になるようにセットし、不貼合部分にチャックを取り付けて把持し、180°方向でT型剥離(未延伸フィルム1及び延伸フィルム1のそれぞれが、剥離箇所において90°曲がった状態で、これらを反対方向に牽引する剥離)するように300mm/minの速度で引張を行なった。引張の結果、延伸フィルム1の層内において凝集破壊が生じ、延伸フィルム1の一部が、残余の部分から剥離された。これにより、延伸フィルム1の当該剥離された部分を第1の撥水性フィルム(図2中の撥水性フィルム211に相当)として得、残余の部分を、第2の撥水性フィルム(図2中の撥水性フィルム202に相当)として得た。得られた第1及び第2の撥水性フィルムにおいては、撥水面即ち凝集破壊が発生した側の面において、微小な凹凸構造が形成されていた。
(1−5.評価)
得られた第1及び第2の撥水性フィルムの撥水面の接触角を評価した。
〔実施例2〕
(2−1.第2の基材フィルム:未延伸フィルムの製造)
第1冷却ドラムの周速度R1を10.05m/分、第2冷却ドラムの周速度R2を10.05m/s、及び第3冷却ドラムの周速度R3を9.98m/分とした他は、実施例1の(1−1)の未延伸フィルム1の製造と同様にして、未延伸フィルム2を得た。
(2−2.第1の基材フィルム:延伸フィルムの製造)
(1−1)で得た未延伸フィルム1に代えて、(2−1)で得た未延伸フィルム2を用いた他は、実施例1の(1−2)の延伸フィルム1の製造と同様にして、延伸フィルム2を得た。得られた延伸フィルム2の引張弾性率を測定したところ2580MPaであった。
(2−3.積層体、撥水性フィルムの製造及び評価)
延伸フィルム1に代えて、(2−2)で得た延伸フィルム2を用いた他は、実施例1の(1−3)〜(1−5)と同様にして((1−3)においては、未延伸フィルムについては、実施例1と同様に未延伸フィルム1を使用)、積層体及び撥水性フィルムを製造して評価した。
〔実施例3〕
(3−1.貼合工程:積層体の製造)
実施例1の(1−2)で得られた延伸フィルム1の一方の表面及び実施例1の(1−1)で得られた未延伸フィルム1の一方の表面に、コロナ処理装置(春日電機社製)を用いて、出力500W、電極長1.35m、搬送速度5m/分の条件で放電処理を施した。
シランカップリング剤(信越シリコーン社製KBM−903)を密閉容器内に少量入れ、容器内をシランカップリング剤の蒸気で飽和状態にした。ここに、放電処理された延伸フィルム1を入れ、シランカップリング剤の液面がフィルムに触れないようにして、25℃で15分間保持し、ベーパー処理法によるシランカップリング処理を行なった。
一方、シランカップリング剤(信越シリコーン社製KBM−403)を密閉容器内に少量入れ、容器内をシランカップリング剤の蒸気で飽和状態にした。ここに、放電処理された未延伸フィルム1を入れ、シランカップリング剤の液面がフィルムに触れないようにして、25℃で15分間保持し、ベーパー処理法によるシランカップリング処理を行なった。
延伸フィルム1の放電処理及びシランカップリング処理された面と、未延伸フィルム1の放電処理及びシランカップリング処理された面とを合わせた後、ラミネータ(日本GBC社製GLM320R4)を用いて圧着貼合した。圧着貼合の条件は、圧力0.4MPa、及び温度130℃とした。貼合に際しては、全面を貼合するのではなく、剥離のために把持する不貼合部分を残して貼合した。これにより、積層体を得た。
(3−2.剥離工程)
(3−1)で得られた積層体を、延伸フィルム1の縦延伸方向が長手方向になるように、100mm×25mmの長方形にカットした。
カットした積層体を、引張り試験器(インストロンジャパン社製「引っ張り試験機5564」)に、長手方向が剥離方向になるようにセットし、不貼合部分にチャックを取り付けて把持し、180°方向でT型剥離するように300mm/minの速度で引張を行なった。引張の結果、延伸フィルム1の層内において凝集破壊が生じ、延伸フィルム1の一部が、残余の部分から剥離された。これにより、延伸フィルム1の当該剥離された部分を第1の撥水性フィルムとして得、残余の部分を、第2の撥水性フィルムとして得た。得られた第1及び第2の撥水性フィルムにおいては、撥水面即ち凝集破壊が発生した側の面において、微小な凹凸構造が形成されていた。
(3−3.評価)
得られた第1及び第2の撥水性フィルムの撥水面の接触角を評価した。
〔参考例1〕
実施例1の(1−2)で得られた延伸フィルムの一方の面について接触角を測定した。
〔比較例1〕
延伸フィルムとして、(1−2)で得られたものに代えて、2軸延伸PETフィルム(東洋紡社製 コスモシャインA4300 膜厚100μm)を用いた他は、実施例1の(1−1)及び(1−3)〜(1−5)と同様にして、第1及び第2の撥水性フィルムを得て評価した。但し、(1−3)における積層体のカットは、カットする前の長尺の2軸延伸PETフィルムの長手方向が、カットされた積層体の長手方向に一致するように行った。
〔比較例2〕
(1−2)で得られた延伸フィルムに代えて、未延伸のポリビニルアルコールフィルム(厚さ80μm)を用いた他は、実施例1の(1−1)及び(1−3)〜(1−5)と同様にして、第1及び第2の撥水性フィルムを得て評価した。但し、積層体を構成するフィルムがいずれも異方性の無いフィルムであるので、(1−3)における積層体のカットは、任意のある方向が長手方向になるように行った。
実施例及び比較例の概要及び評価結果を、表1に示す。
表1の結果より、本発明の製造方法により、高い撥水性を有する撥水性フィルムを容易に製造しうることが分かる。
100:積層体
111:第1の基材フィルム
111G:不貼合部分
112:第2の基材フィルム
112G:不貼合部分
122:貼合材料
211:第1の撥水性フィルム
212:第1の基材フィルムの残余
202:第2の撥水性フィルム

Claims (6)

  1. 第1の基材フィルムの第1表面と、第2の基材フィルムの第1表面とを、貼合材料を介して貼合して積層体を得る貼合工程、及び
    前記第1の基材フィルムと前記第2の基材フィルムとを剥離して撥水性フィルムを得る剥離工程を含み、
    前記貼合材料が紫外線硬化型の接着剤又はシランカップリング剤であり、
    前記第1の基材フィルム又は前記第2の基材フィルムが、
    延伸フィルムであり、且つ、引張弾性率が1600MPa以上2600MPa以下であり、
    前記剥離工程において、前記延伸フィルム内において凝集破壊を発生させる、
    撥水性フィルムの製造方法。
  2. 前記第1の基材フィルム、前記第2の基材フィルム、又はこれらの両方が、脂環式構造含有重合体樹脂のフィルムである、請求項1に記載の撥水性フィルムの製造方法。
  3. 前記貼合材料が紫外線硬化型の接着剤である、請求項1又は2に記載の撥水性フィルムの製造方法。
  4. 前記貼合工程が、
    気化したシランカップリング剤を含む処理用ガスを、前記第1の基材フィルムの前記第1表面、前記第2の基材フィルムの前記第1表面、又はこれらの両方に接触させて、これらの表面を処理する工程を含む、
    請求項1又は2に記載の撥水性フィルムの製造方法。
  5. 前記処理用ガスにおける、飽和濃度を100%としたシランカップリング剤濃度が20%以上である、請求項4に記載の撥水性フィルムの製造方法。
  6. 前記貼合工程が、
    前記第1の基材フィルムの前記第1表面及び前記第2の基材フィルムの前記第1表面が向き合った状態でこれらを接触させること、及び
    前記接触と同時に又は前記接触の後に、加圧の操作を併せて行うこと
    を含み、
    前記加圧を行う場合の圧力が、0.1MPa以上1.3MPa以下である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の撥水性フィルムの製造方法。
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