JP2007144917A - 超撥水性フィルムおよびこれを用いた超撥水性自動車窓、超撥水性帖着フィルムおよびこの製造方法、超撥水性透明基板の製造方法ならびに自動車窓の超撥水処理方法 - Google Patents

超撥水性フィルムおよびこれを用いた超撥水性自動車窓、超撥水性帖着フィルムおよびこの製造方法、超撥水性透明基板の製造方法ならびに自動車窓の超撥水処理方法 Download PDF

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Abstract

【課題】動的な水の飛来に対応した、飛来する水を効果的に除去可能な超撥水性フィルムを得る。
【解決手段】基材フィルム11と、基材フィルム11の一方の面に設けられた微細凹凸形状を有する超撥水層12とを備えた超撥水性フィルムに、接着層32を介して積層された剥離フィルムと超撥水層12の微細凹凸形状に対応した保護フィルムとが積層された超撥水性帖着フィルムにより、剥離フィルムを剥離し接着層32を介して基体1に超撥水性フィルムを積層し、保護フィルム上から超撥水性フィルムを押圧することで、超撥水性フィルムを水平方向に対しなす角9°に保持し超撥水層の鉛直上方1000mmの位置から0.75gの水滴を滴下し滴下された水滴が静止状態になった後に残存する水滴量が0.3g以下となる超撥水層12を有する超撥水性フィルムを基体1に帖着する。
【選択図】図1

Description

本発明は、超撥水性フィルムおよびこれを用いた超撥水性自動車窓、超撥水性帖着フィルムおよびこの製造方法、超撥水性透明基板の製造方法ならびに自動車窓の超撥水処理方法に関する。
従来より、基材表面に微細凹凸を設けることで、当該表面に撥水性能が与えられることが知られている。このような撥水性能は、水との接触角が150°以上であると、一般に超撥水と呼ばれている。すなわち、水が接触する面が基材のみであると、水と空気との界面張力(水の表面張力)、基材表面と水との界面張力、基材と空気との界面張力(基材の表面張力)がつりあうように、接触角が決まる。ところが、基材表面に微細凹凸があると、水は、基材表面と、基材表面に設けられた微細凹凸による水と微細凹凸との間に介在する空気と接触する。そのため、基材表面と水との間の界面張力が増大し、力のつりあいから接触角が大きくなる。こうして、基材表面に微細凹凸を設けることで、超撥水性能を付与できるといわれている。
このような超撥水営性能は、例えば車両や建物の窓に付与することで雨滴により視界が遮られることを防止できる。特に自動車のウインドシールドに超撥水性能が付与されれば、降雨時にワイパーを使用しなくても運転できるようになるので、超撥水性能を有するガラス板に対する期待は高い。また、標識、信号、街灯、道路鏡の表面に微細凹凸形状による超撥水機能を有することで、雨滴による表示情報等の視認性低下を防止できる。
他に、建物内、特に風呂場の鏡に超撥水性能を付与することで、水による鏡の反射像の視認性低下を防止できる。さらに、医療・治療用器具、特に歯科用反射鏡が超撥水性能を有することで、医療・治療行為中の器具への水分付着による処置効率の低下を防止できる。
このような超撥水性能を各種部品に付与するためには、直接これら部品の表面を処理する他に、あらかじめ微細凹凸による超撥水性能が付与されたフィルムを帖着することが考えられる。このための超撥水性フィルムとして、例えば特許文献1や2にあるように、一方の面に微細凹凸による微細凹凸を有する超撥水性フィルムがある。
特開2003−276121号公報 特開2000−167955号公報
ところで、これまで超撥水性と呼ばれていた機能は、例えば特許文献2(特に実施例)で述べられているように静的な接触角により評価されていた。しかし、接触角の値がいかに大きくても、例えば自動車の運転者にとってはあまり問題ではなく、運転時に窓に付着した雨水が窓から離脱しているかどうかが重要な問題である。ここで考慮すべき点は、運転時に窓に付着した雨水が窓から離脱するかどうかという現象は、特許文献2において評価されていた静的なものではなく、動的な現象であるという点である。すなわち、自動車に向かってくる雨水は上から下に落下してくるものであり、さらには、自動車は移動するものである。したがって、自動車窓の撥水性能は、向かってくる雨水に対し動的な現象として撥水性能を有しているか否かが問われるべきである。
このようにこれまでの超撥水性能は、超撥水性能とはいうものの自動車に代表されるように超撥水性能を具備するとされている対象物に対し飛来する水に対する性能として、効果的な超撥水性能であるかどうか検証されたものではなかった。実際、接触角や転落角といった静的な評価により超撥水性能を有するとされた対象物は、動的な観点で飛来する水を離脱させる性能を有する場合もあれば有さない場合もあることが判明した。このことは、図5に示すグラフにより説明できる。
すなわち、カーメイト社製商品名「Sivクリア」として市販されている超撥水材料を、取扱説明書どおりに塗布したガラス基板(計7枚のうち7枚について接触角を、4枚について転落角を測定)を略水平に保持し、超撥水材料が塗布された面に向かって鉛直情報1000mmの位置から0.75gの水滴を滴下したところ、ほぼ同等の接触角、転落角であるにもかかわらず、落下してきた水滴を充分除去できていないことがわかる。したがって、これまで超撥水性ガラスといわれている、接触角が大きい(例えば150°以上)ものや転落角が小さい(例えば10°以下)ものでも、必ずしも飛来する水を除去できるとはいえないものであった。なお、図4において(a)は縦軸を残存水滴量(単位:g)、横軸を接触角(単位:°)としたグラフ、(b)は縦軸を残存水滴量(単位:g)、横軸を転落角(単位:°)としたグラフである。
本発明の目的は、飛来する水を効果的に除去可能な、超撥水性フィルムおよびこれを用いた超撥水性自動車窓、超撥水性帖着フィルムおよびこの製造方法、超撥水性透明基板の製造方法ならびに自動車窓の超撥水処理方法を提供することにある。
本発明は、基材フィルムと、該基材フィルムの一方の面に設けられた微細凹凸形状を有する超撥水層とを備えた超撥水性フィルムであって、前記超撥水層は、前記超撥水性フィルムを水平方向に対しなす角9°に保持し、前記超撥水層の鉛直上方1000mmの位置から0.75gの水滴を滴下し滴下された水滴が静止状態になった後に残存する水滴量が0.3g以下となる層であることを特徴とする、超撥水性フィルムを提供する。
また、本発明は、上記のような超撥水性フィルムと、該超撥水性フィルムの前記超撥水層と反対側の面に積層された接着層と、該接着層を介して前記超撥水性フィルムに積層された剥離フィルムとを有する、超撥水性帖着フィルムを、さらには前記超撥水層に保護フィルムが積層されている、超撥水性帖着フィルムを提供する。
ここで上記の保護フィルムは、超撥水層の微細凹凸形状に対応した微細凹凸形状を有し、両微細凹凸形状が嵌合しあうように超撥水層に積層されていることが好ましい。すなわち、超撥水性フィルムを基体に帖着する場合、超撥水性フィルムが帖着される基体の表面に超撥水性フィルムを載置した後、超撥水性フィルムを基体に押し付けることになる。これにより、超撥水性フィルムを基体に確実に接着できる。さらに、超撥水性フィルムが基体表面にならいなじむように超撥水性フィルムをしごくことで、超撥水性フィルムにヨリ・シワが発生しないようにできる。しかし、これら超撥水性フィルムに対する押し付け、しごきのための力は、超撥水性フィルムの微細凹凸を有する面から与えられる。そのため、例えば特許文献2等のような超撥水性フィルムではこうした外力により微細凹凸形状が破壊され、超撥水性フィルム表面が平坦化する。その結果、基体に帖着された超撥水性フィルムの期待される超撥水性能が低下する。そこで、先にあげたような保護フィルムを用いることが好ましい。
こうした観点で、本発明はまた、基材フィルムと該基材フィルムの一方の面に設けられた微細凹凸形状を有する超撥水層とを備えた超撥水性フィルムと、該超撥水性フィルムの前記超撥水層と反対側の面に積層された接着層と、該接着層を介して前記超撥水性フィルムに積層された剥離フィルムとを有する超撥水性帖着フィルムであって、前記超撥水層には、前記微細凹凸形状に対応した微細凹凸形状を有する保護フィルムが、両微細凹凸形状が嵌合しあうように積層されていることを特徴とする、超撥水性帖着フィルムを、また、基材フィルムの一方の面に微細凹凸形状の超撥水層を形成するとともに、前記基材フィルムのもう一方の面に接着剤を塗布し、該接着剤を介して剥離フィルムを積層し、基材フィルムの一方の面に超撥水層を、もう一方の面に剥離フィルムをそれぞれ設ける超撥水帖着フィルムの製造方法であって、前記超撥水層および剥離フィルムが設けられた基材フィルムを型に配置し、型内に液状保護フィルム材料を注入し、該液状保護フィルム材料を固化または硬化させて、前記超撥水層に保護フィルムを積層することを特徴とする、超撥水性帖着フィルムの製造方法を、提供する。
さらに本発明は上記のような各超撥水帖着フィルムにより、超撥水性帖着フィルム、および該超撥水性帖着フィルムの超撥水性フィルムを帖着する透明基板を用意する工程1と、前記超撥水性帖着フィルムから前記剥離フィルムを剥離し、前記接着層を介して前記透明基板に超撥水性フィルムを載置する工程2と、前記保護フィルム側から保護フィルムを押圧し前記透明基板に超撥水性フィルムを圧着する工程3と、前記保護フィルムを前記超撥水層から剥離する工程4とを、工程1、2、3、4の順に含む、超撥水性透明基板の製造方法を提供する。
このような超撥水性透明基板の製造方法を用いることで、本発明は、上記のような超撥水性帖着フィルム、および該超撥水性帖着フィルムの超撥水性フィルムを帖着する自動車窓用ガラス板を車体に組み付けられた状態で用意する工程1と、前記超撥水性帖着フィルムから前記剥離フィルムを剥離し、前記接着層を介して車体に組み付けられた状態のまま前記自動車窓用ガラス板に超撥水性フィルムを積層する工程2と、前記保護フィルム側から保護フィルムを押圧し前記透明基板に超撥水性フィルムを圧着する工程3と、前記保護フィルムを前記超撥水層から剥離する工程4とを、工程1、2、3、4の順に含む、自動車窓の超撥水処理方法を提供する。
本発明によれば、従来大きければ良い撥水性能を示すといわれていた接触角、小さければ良い撥水性能を示すといわれていた転落角は、静的な値であり、現実に飛来する水の除去に必ずしも有益であるとはいい難かったところ、超撥水性フィルムを水平方向に対しなす角9°に保持し、超撥水層の鉛直上方1000mmの位置から0.75gの水滴を滴下し滴下された水滴が静止状態になった後に残存する水滴量が0.3g以下となる超撥水層としたことで、飛来する水を効果的に除去できる。
さらに本発明によれば、基体に帖着する際の微細凹凸の破壊を防止でき、所望の超撥水性能を維持できる超撥水性帖着フィルムを提供することができる。このような超撥水性帖着フィルムによって、超撥水性能の低下しやすい環境で使用される自動車窓等にも、容易に超撥水性フィルムを帖着できるとともに、超撥水性能の低下後のフィルムの交換も容易になる。
以下、図面に基づき本発明をさらに詳細に説明する。図1は、本発明の超撥水性フィルムが透明基板に帖着された一例を示す概略断面図である。超撥水性フィルムは、基材フィルム11と、基材フィルム11の一方の面に微細凹凸が形成されて設けられた超撥水層12とを備える。この基材フィルムが、接着層32を介して透明基板1に積層されている。
本例における超撥水層12は、超撥水性フィルムを水平方向に対しなす角9°に保持し、超撥水層の鉛直上方1000mmの位置から0.75gの水滴を滴下し滴下された水滴が静止状態になった後に残存する水滴量が0.3g以下となる層である。
すなわち超撥水層12は、次のような層である。図4に示すように、超撥水層(12)を有する超撥水性フィルムが保持基板に保持された供試体100を、超撥水層(12)が鉛直方向上方になるように、固定台300上に載置する。この際、スペーサ310を供試体100の縁辺と固定台300との間に介在させ、供試体100が水平方向に対しなす角θ=9°となるように、供試体100を保持する。次いで、超撥水層(12)の鉛直上方h=1000mmの位置から、滴下治具200として精密ピペット(例えばSHIBAT製デジフィットAU)から1滴あたり0.015gの水滴を50滴(合計0.75g)超撥水層(12)に滴下する。その後、超撥水層に落下した水滴が静止状態になるまで待機し、静止状態において、超撥水層に残存する水滴の量が0.3g以下となる層である。
このような超撥水性フィルムは、透明基板1への帖着前に例えば次のように用意される。図2は、本発明の超撥水性帖着フィルムの一例を示す概略断面図である。本例における超撥水性帖着フィルム10の基本構成は、基材フィルム11、剥離フィルム31、および保護フィルム21である。基材フィルム11の一方の面には微細凹凸が形成されて、超撥水層12が設けられている。基材フィルム11の超撥水層12が設けられている面と反対側の面には、接着層32を介して剥離フィルム31が積層されている。ここで本発明の好ましい態様として、保護フィルム21の基材フィルム11に対向する側の面は、超撥水層12の微細凹凸に対応した微細凹凸を有する。こうして、超撥水層12の微細凹凸と保護フィルム21の微細凹凸とが嵌合するように、超撥水層12の上に保護フィルム21が積層されている。
このような超撥水性帖着フィルムは、次のように製造できる。すなわち、基材フィルム11の一方の面に、特許文献1や特許文献2などに記載された公知の方法や後述する方法によって、微細凹凸形状の超撥水層12を形成する。一方で、特許文献1や特許文献2などに記載された公知の方法により、基材フィルム11のもう一方の面に接着剤を塗布し接着層32を形成し、さらに接着層32に剥離フィルム31を積層する。ここで、微細凹凸形状の超撥水層12に保護フィルム21を積層するにあたっては、保護フィルム21に超撥水層12の微細凹凸に対応する微細凹凸を設けるために、次の方法を採用することが好ましい。
すなわち、保護フィルム21の形状に対応するキャビティが形成されるよう、型を超撥水層12上に配置する。このキャビティに液状保護フィルム材料を注入する。この際、超撥水層12の微細凹凸形状になじみ(濡れ)、微細凹凸の凹部に液状保護フィルム材料が充分に充填されるように、表面張力が20〜40×10−3N/mにある液状保護フィルム材料を用いたり、型に対し超音波振動を付与させたりすることが好ましい。その後、液状保護フィルム材料を固化または硬化させることで、超撥水層12の微細凹凸に対応した微細凹凸を有する保護フィルム21を形成できる。このように保護フィルム21を形成することで、保護フィルム21の微細凹凸と超撥水層12の微細凹凸とが嵌合するように対応させることができる。
一方で、超撥水層の微細凹凸に対応する微細凹凸を保護フィルムに設けるにあたっては、超撥水層の微細凹凸の凸部に対応した凹部を設け、超撥水層の凹部の底に保護フィルムの凸部が到達しなくてもよい。すなわち、保護フィルムに設けられた微細凹凸のうち、凹部は超撥水層の凸部を充分包み込んでいるため、超撥水性フィルムを基体に帖着する際の押圧によって超撥水層の凸部が破壊されることを防止できる。その意味で、本発明においてはこのような態様も「超撥水層の微細凹凸形状に対応した微細凹凸形状を有する保護フィルムが、両微細凹凸形状が嵌合しあうように積層されている」ということができる。
保護フィルム21は、超撥水性帖着フィルム10を基体に帖着した後に、超撥水層12から剥がすものである。この作業を容易にするために、超撥水層12の微細凹凸は、最外層に撥水剤が塗布されていることが好ましい。
本発明にける保護フィルムは、軟質フィルムであることが好ましい。「軟質」とは、次の意味である。基体に超撥水性フィルムを帖着するにあたり、超撥水性帖着フィルムを保護フィルム上から押圧することで超撥水性フィルムを基体に密着させることができる。そのため、超撥水性フィルムの微細凹凸に過度の力が働かないように外力を吸収する程度に、保護フィルムに柔軟性を持たせることは好ましい。このように外力を吸収できる程度が、「軟質」といえる。このような保護フィルムの材料としては、ウレタン系、特に自己修復性のあるウレタン系の樹脂を例示できる。
本発明における基材フィルムは、0.1〜1mmの厚さを有することが好ましい。また、本発明における基材フィルムは、3×10−6〜50×10−6(/℃)の熱膨張係数を有することが好ましい。その理由は、後述する超撥水性フィルムを基体に帖着する方法は、加熱することで超撥水性フィルムと基体との接着力を向上できるので、加熱による過度の収縮を防止することが好ましいからである。
このような基材フィルムは、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル、ポリ塩化ビニル、(メタ)アクリル酸エステルの重合体、ポリウレタン、ポリプロピレン、ポリカーボネートなどから形成される。さらに、これら材料に赤外線吸収剤や紫外線吸収剤が配合されていることが好ましい。このうち紫外線吸収剤については、特に超撥水性フィルムが屋外で使用される場合、例えば自動車窓の車外側面に帖着される場合に、紫外線が超撥水性フィルムを透過し接着層を劣化させることを防止できる。
本発明における、超撥水性フィルムを水平方向に対しなす角9°に保持し、超撥水層の鉛直上方1000mmの位置から0.75gの水滴を滴下し滴下された水滴が静止状態になった後に残存する水滴量が0.3g以下となる超撥水層12は、例えば次のように形成できる。
この例は、基材フィルムに設けられる微細凹凸を、下記に示す撥水性被膜形成材料により形成する例である。すなわち、下記撥水性被膜形成材料を基材フィルム表面に塗布、加熱乾燥する。
撥水性被膜形成材料(A):撥水性微粒子、加水分解性基を有する金属化合物、および溶剤を含む撥水性被膜形成材料、または、
撥水性被膜形成材料(B):金属酸化物ゾル、含フッ素シラン化合物、加水分解性基を有する金属化合物、および溶剤を含む撥水性被膜形成材料。
撥水性被膜形成材料(A)に含まれる撥水性微粒子としては、前記金属酸化物微粒子を撥水処理したものが好ましく、たとえば、表面のシラノール基の一部が−Si(CH(n=2〜3)なったシリカが挙げられる。これらの撥水性を有する微粒子は、平均一次粒子径が数μm〜30μmであることが好ましい。
加水分解性基を有する金属化合物とは、少なくとも1個の加水分解性基を有するケイ素原子やチタン原子等が挙げられる。加水分解性基としては、アルコキシ基、イソシアネート基、および塩素原子等が挙げられる。加水分解性基を有する金属化合物としては、テトラアルコキシシラン、テトライソシアネートシラン等が挙げられ、テトラエトキシシランが好ましい。また、これらの化合物は、事前に酸や塩基によって加水分解された後に使用してもよく、撥水性被膜形成材料を調製する工程中において加水分解されてもよい。
溶剤としては、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類が好ましい。
撥水性被膜形成材料(A)は、前記の構成成分以外に、金属酸化物を含んでいてもよい。該金属酸化物としては、シリカ、アルミナ等が挙げられる。
撥水性被膜形成材料(A)に含まれる構成成分の配合割合は、撥水性微粒子/加水分解性基を有する金属化合物(酸化物換算の質量比)として1〜20であることが好ましい。また、溶剤は、撥水性微粒子、加水分解性基を有する金属化合物、必要に応じて含まれる金属酸化物との合計量に対して20〜150倍量が好ましい。
撥水性被膜形成材料(A)は、撥水性微粒子、加水分解性基を有する金属化合物、溶剤、および必要に応じて金属酸化物を混合することによって得られる。加水分解性基を有する金属酸化物は、前記のように事前に加水分解されたものを混合してもよく、混合工程中において加水分解されてもよい。
撥水性被膜形成材料(A)としては、たとえば、撥水性シリカ粉体(日本アエロジル社製、商品番号:R976S、RX300)、テトラエトキシシラン、10%硝酸水溶液、およびエタノールを含む撥水性被膜形成材料が挙げられる。
撥水性被膜形成材料(B)における金属酸化物ゾルとしては、前記金属酸化物のゾルが好ましい。具体的にはシリカゾルおよびアルミナゾルが好ましい。金属酸化物ゾルは、平均一次粒子径が10〜50nmであることが好ましい。
含フッ素シラン化合物としては、特に限定されず、トリデカフルオロオクチルトリメトキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルトリメトキシシラン、ノナフルオロヘキシルトリメトキシシラン等が挙げられる。また、加水分解性基を有する金属化合物および溶剤は、撥水性被膜形成材料(A)におけるものと同様のものが例示され、好ましい態様も同様である。
具体的な例を挙げて撥水性被膜形成材料(B)の調製手順について説明する。まず、エタノール(溶剤)に硝酸水溶液(加水分解反応用)を加え、つぎにシリカゾル(金属酸化物ゾル)を加える。つぎに含フッ素シラン化合物を加えて充分撹拌する。さらに、テトラエトキシシラン(加水分解性基を有する金属化合物)を加え、40〜60℃程度で加熱撹拌することによって撥水性被膜形成材料(B)を調製する。含フッ素シラン化合物を加えて撹拌する工程において、シリカゾルの表面が含フッ素シラン化合物によってコーティングされることによってシリカゾルが撥水性を示し、超撥水性の発現に寄与するものと考えられる。
撥水性被膜形成材料(B)に含まれる溶剤は、金属酸化物ゾル、含フッ素シラン化合物、加水分解性基を有する金属化合物との合計量に対して20〜150倍量が好ましい。
このように調整された撥水性被膜形成材料は、ディップコート法、フローコート法、スピンコート、スプレーコート法等により基材フィルムの一方の面に塗布される。もう一方の面に撥水性被膜形成材料が付着せず、適宜の厚さの層を形成できる点から、スプレーコート法が好ましい。つぎに、乾燥、必要に応じて加熱しながら乾燥を行うことによって本発明の超撥水性フィルムが得られる。乾燥は、室温〜100℃で1分間〜1時間保持することによって達成される。
このように撥水性被膜形成材料により表面処理された超撥水性フィルムの表面の形状は、算術的平均粗さ(Ra)が10〜50nm程度、凹凸の最大高低差が150〜500nm程度、一次凹凸の凸部と凸部との間隔が0.5〜10μm程度、二次凹凸の凸部と凸部との間隔が80〜200nm程度となる。
こうして、基材フィルムの一方の面に、超撥水性フィルムを水平方向に対しなす角9°に保持し超撥水層の鉛直上方1000mmの位置から0.75gの水滴を滴下し滴下された水滴が静止状態になった後に残存する水滴量が0.3g以下となる超撥水層を形成できる。
このような超撥水性フィルムは、超撥水性帖着フィルムの形態を出発点として基体に帖着される。帖着される基体としては、ガラス板や透明樹脂板等の透明基板、鏡、道路標識等の金属基板などを例示できる。これらの基体のうち、透明基板に超撥水性フィルムを帖着する方法は、例えば図3を用いて次のように説明できる。
まず、すでに述べたようないずれかの超撥水帖着フィルム(10)と超撥水性フィルムを帖着する透明基板1とを用意する。次いで超撥水性帖着フィルム(10)から剥離フィルム31を剥離し、接着層32を介して透明基板1に超撥水性フィルムを載置する。その後、保護フィルム21側から保護フィルム21を押圧し透明基板1に超撥水性フィルムを圧着する。この際、例えば押圧ローラ40などを用いることで、透明基板1に超撥水性フィルムを密着させることができる。最後に、保護フィルム21を超撥水層12から剥離することで超撥水性透明基板を製造できる。
このような超撥水性透明基板の製造方法を用いることで、自動車窓に超撥水性能を付与できる。すなわち、超撥水性帖着フィルムから剥離フィルム31を剥離し、接着層32を介して、車体に組み付けられた状態の自動車窓用ガラス板の車外側面に超撥水性フィルムを積層する。次いで、車体に組み付けられた状態のまま保護フィルム21を押圧し、必要に応じて加熱することで、曲面を有する自動車窓用ガラス板に超撥水性フィルムを密着させることができる。最後に、保護フィルム21を超撥水層12から剥離することで、自動車窓を超撥水処理することができる。なお、このように自動車窓、特に自動車のウインドシールドやバックライトに超撥水性フィルムを帖着する場合、ウインドシールドやバックライトの周縁に設けられた環状の暗色セラミックの焼成体に、超撥水性フィルムの端縁が正面視で重畳するように帖着することが好ましい。これにより、超撥水性フィルムの端縁が車内側から視認されないからである。
さらに、接着層21を、所望の溶剤により除去容易なものに選ぶことで、超撥水性能の経時的低下に対し効果的である。すなわち、上記のように超撥水処理された自動車窓は、屋外での過酷な環境にさらされながら使用される。例えば、降雨時に雨水に土砂が混じったり、洗車時にブラシ圧を受けたり、降雪、寒冷地使用により窓が凍結したり、などがあげられる。このような環境下では、微細凹凸形状の破壊などにより、超撥水性能が経時的に低下するおそれがある。そのような場合、超撥水性フィルムを貼りかえることで、低下した超撥水性を復元できる。そのためには、超撥水性フィルムを自動車窓用ガラス板から除去した後、自動車窓用ガラス板の表面に付着した接着層の残存物を取り去ることが求められる。そこで、所望の溶剤により除去が容易な接着剤を選択することが、好ましい。このような接着層を形成する材料としては、ニトリルゴム系粘着剤、ポリウレタン系粘着剤、エポキシ系粘着剤、ホットメルト系粘着剤、などを例示できる。
このように性能が低化した超撥水性フィルムを除去した後は、上記した処理方法により再び超撥水性フィルムを自動車窓ガラス板の車外側面に帖着することで、自動車窓の超撥水性を復活させることができる。このような処理は、自動車窓以外にも、自動車ミラー、道路標識、街灯、道路反射鏡、建築物の窓、屋内外の鏡、さらには医療・治療用鏡にも利用できる。
本発明の超撥水性フィルムは、飛来する水を除去可能にできるフィルムであることから、屋外、特に移動体である自動車等の輸送機器の窓や鏡に用いて好適な超撥水性フィルムである。また、同様に雨水が飛来してくる道路標識、信号、街灯、反射鏡等に帖着することで、動的効果を充分発揮する超撥水性フィルムとして用いることができる。
さらに本発明によれば、上記のような、超撥水性フィルムが帖着される基体に容易に超撥水性フィルムを帖着でき、しかも、基体に帖着する際の微細凹凸の破壊を防止でき、所望の超撥水性能を維持できる超撥水性帖着フィルムを提供することができる。これにより、超撥水性能の低下しやすい環境で使用される自動車窓等にも、容易に超撥水性フィルムを帖着できるとともに、超撥水性能の低下後のフィルムの交換も容易になる。
本発明の超撥水性フィルムの一例を示す概略断面図である。 本発明の超撥水性帖着フィルムの一例を示す概略断面図である。 本発明の超撥水性透明基板の製造方法の一例を示す概略断面図である。 本発明における超撥水性能を説明する概念図である。 従来の超撥水ガラスの接触角・転落角と水滴の残存量との関係を示すグラフである。
符号の説明
1:透明基板
10:超撥水性帖着フィルム
11:基材フィルム
12:超撥水層
21:保護フィルム
31:剥離フィルム
32:接着層

Claims (14)

  1. 基材フィルムと、該基材フィルムの一方の面に設けられた微細凹凸形状を有する超撥水層とを備えた超撥水性フィルムであって、前記超撥水層は、前記超撥水性フィルムを水平方向に対しなす角9°に保持し、前記超撥水層の鉛直上方1000mmの位置から0.75gの水滴を滴下し滴下された水滴が静止状態になった後に残存する水滴量が0.3g以下となる層であることを特徴とする、超撥水性フィルム。
  2. 前記基材フィルムは、0.1〜1mmの厚さを有する請求項1に記載の超撥水性フィルム。
  3. 前記基材フィルムは、3×10−6〜50×10−6(/℃)の熱膨張係数を有する請求項1または2に記載の超撥水性フィルム。
  4. 請求項1、2または3に記載の超撥水性フィルムが、自動車窓用ガラス板の車外側面に帖着された、超撥水性自動車窓。
  5. 請求項1、2または3に記載の超撥水性フィルムと、該超撥水性フィルムの前記超撥水層と反対側の面に積層された接着層と、該接着層を介して前記超撥水性フィルムに積層された剥離フィルムとを有する、超撥水性帖着フィルム。
  6. 前記超撥水層に保護フィルムが積層されている、請求項5に記載の超撥水性帖着フィルム。
  7. 前記保護フィルムは前記微細凹凸形状に対応した微細凹凸形状を有し、両微細凹凸形状が嵌合しあうように前記保護フィルムが前記超撥水層に積層されている、請求項6に記載の超撥水性帖着フィルム。
  8. 基材フィルムと該基材フィルムの一方の面に設けられた微細凹凸形状を有する超撥水層とを備えた超撥水性フィルムと、該超撥水性フィルムの前記超撥水層と反対側の面に積層された接着層と、該接着層を介して前記超撥水性フィルムに積層された剥離フィルムとを有する超撥水性帖着フィルムであって、前記超撥水層には、前記微細凹凸形状に対応した微細凹凸形状を有する保護フィルムが、両微細凹凸形状が嵌合しあうように積層されていることを特徴とする、超撥水性帖着フィルム。
  9. 前記保護フィルムが軟質フィルムである、請求項1に記載の超撥水性帖着フィルム。
  10. 請求項6、7、8または9に記載の超撥水性帖着フィルム、および該超撥水性帖着フィルムの超撥水性フィルムを帖着する透明基板を用意する工程1と、前記超撥水性帖着フィルムから前記剥離フィルムを剥離し、前記接着層を介して前記透明基板に超撥水性フィルムを載置する工程2と、前記保護フィルム側から保護フィルムを押圧し前記透明基板に超撥水性フィルムを圧着する工程3と、前記保護フィルムを前記超撥水層から剥離する工程4とを、工程1、2、3、4の順に含む、超撥水性透明基板の製造方法。
  11. 前記透明基板が自動車窓用ガラス板であり、該自動車窓用ガラス板の車外側面に前記超撥水性フィルムを帖着する、請求項10に記載の超撥水性透明基板の製造方法。
  12. 請求項6、7、8または9に記載の超撥水性帖着フィルム、および該超撥水性帖着フィルムの超撥水性フィルムを帖着する自動車窓用ガラス板を車体に組み付けられた状態で用意する工程1と、前記超撥水性帖着フィルムから前記剥離フィルムを剥離し、前記接着層を介して車体に組み付けられた状態のまま前記自動車窓用ガラス板に超撥水性フィルムを積層する工程2と、前記保護フィルム側から保護フィルムを押圧し前記透明基板に超撥水性フィルムを圧着する工程3と、前記保護フィルムを前記超撥水層から剥離する工程4とを、工程1、2、3、4の順に含む、自動車窓の超撥水処理方法。
  13. 基材フィルムの一方の面に微細凹凸形状の超撥水層を形成するとともに、前記基材フィルムのもう一方の面に接着剤を塗布し、該接着剤を介して剥離フィルムを積層し、基材フィルムの一方の面に超撥水層を、もう一方の面に剥離フィルムをそれぞれ設ける超撥水帖着フィルムの製造方法であって、前記超撥水層および剥離フィルムが設けられた基材フィルムを型に配置し、型内に液状保護フィルム材料を注入し、該液状保護フィルム材料を固化または硬化させて、前記超撥水層に保護フィルムを積層することを特徴とする、超撥水性帖着フィルムの製造方法。
  14. 前記液状保護フィルム材料が軟質フィルム材料である、請求項13に記載の超撥水性帖着フィルムの製造方法。
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