JP2019028109A - 複層フィルム及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】熱可塑性樹脂で形成された延伸フィルム上に良溶媒を含む塗工液を塗工して、延伸フィルム及び塗工層を含む複層フィルムを得る製造方法であって、延伸フィルムと塗工層との接着強度を高くでき、且つ、塗工液の塗工による延伸フィルムのレターデーションの変化を抑制できる製造方法を提供する。
【解決手段】延伸フィルムの表面に有機溶媒A、有機溶媒B及び溶質を含む塗工液を塗工して塗工液の層を形成する第一工程と、塗工液の層を乾燥させる第二工程とを含む、複層フィルムの製造方法であって、溶媒の少なくとも一方が延伸フィルムの表面にある熱可塑性樹脂に対する良溶媒であり、複層フィルムの延伸フィルム内に溶媒が浸透した溶媒浸透層が形成されていて、複層フィルムの面内レターデーションRe、複層フィルムのヘイズHz、複層フィルムの厚みd及び溶媒浸透層の厚みtが、所定の関係を満たす。
【選択図】図1

Description

本発明は、複層フィルム及びその製造方法に関する。
熱可塑性樹脂で形成された基材フィルム上に塗工液を塗工して複層フィルムを製造する方法が、従来から知られていた。この製造方法では、通常、基材フィルム上に塗工液を塗工して、塗工液の層を形成する。その後、この塗工液の層を乾燥させて、基材フィルム及び塗工層を含む複層フィルムを得る(特許文献1参照)。
特許第6043315号公報
複層フィルムの製造のための基材フィルムとして、延伸フィルムを用いることがある。延伸フィルムは、熱可塑性樹脂で形成されたフィルムに少なくとも一方向に延伸する延伸処理を施して得られるフィルムである。このような延伸フィルムは、通常、当該延伸フィルムに含まれる重合体分子が延伸処理によって配向しているので、レターデーション等の光学特性を有する。このような延伸フィルムを用いて製造された複層フィルムは、光学用途において用いられることがある。
ところが、延伸フィルムの中には、塗工層に対する接着強度が低いものがある。例えば、シクロオレフィン重合体を含む樹脂で形成された延伸フィルムは、他の部材に対する接着性に乏しい。そのため、そのような延伸フィルム上に塗工層を形成しても、塗工層が延伸フィルムから容易に剥がれることがあった。
そこで、本発明者は、延伸フィルムに含まれる樹脂に対する良溶媒を含む塗工液を用いて、複層フィルムを製造することを試みた。良溶媒を含む塗工液を延伸フィルムに塗工すると、その良溶媒の一部が延伸フィルムの表面近傍部分に浸透して、溶媒浸透層が形成される。この溶媒浸透層では、浸透した良溶媒によって、延伸フィルムに含まれる樹脂中の重合体分子の配向が緩和する。そのため、重合体分子の絡み合いの程度が大きくなり、溶媒浸透層での樹脂の靱性が高まって、接着性が向上する。これにより、塗工層の剥離を抑制できる。
溶媒浸透層が薄いと、重合体分子の配向の緩和が十分に行えないことがある。また、配向の緩和が不十分であると、延伸フィルムの表面の接着性が十分には向上しない。そのため、前記のように塗工層の剥離を抑制する効果を得るためには、溶媒浸透層は、ある程度厚いことが求められる。
ところが、溶媒浸透層では、浸透した溶媒によって、延伸フィルムに含まれる樹脂中の重合体分子の配向が緩和しているので、その緩和した分だけ、レターデーションが損なわれる。よって、塗工層の剥離を抑制するために溶媒浸透層を厚くすると、延伸フィルムのレターデーションが塗工液の塗工によって大きく変化する傾向がある。このようなレターデーションの変化は、複層フィルムを光学用途に用いた場合に、光学特性の調整を困難にするので、その改善が望まれる。
本発明は、前記の課題に鑑みて創案されたもので、熱可塑性樹脂で形成された延伸フィルム上に、前記熱可塑性樹脂に対する良溶媒を含む塗工液を塗工して、延伸フィルム及び塗工層を含む複層フィルムを得る製造方法であって、延伸フィルムと塗工層との接着強度を高くでき、且つ、塗工液の塗工による延伸フィルムのレターデーションの変化を抑制できる製造方法;並びに、熱可塑性樹脂で形成された延伸フィルムと、この延伸フィルム上に形成された塗工層とを含む複層フィルムであって、前記熱可塑性樹脂に対する良溶媒を含む塗工液を延伸フィルムに塗工して製造することができ、延伸フィルムと塗工層との接着強度を高くでき、且つ、塗工液の塗工による延伸フィルムのレターデーションの変化を抑制できる、複層フィルム;を提供することを目的とする。
本発明者は、前記の課題を解決するべく鋭意検討した結果、複層フィルムの面内レターデーションRe、複層フィルムのヘイズHz、複層フィルムの厚みd、及び、溶媒浸透層の厚みtが所定の関係を満たす場合に、前記の課題を解決できることを見い出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、以下のものを含む。
〔1〕 熱可塑性樹脂で形成された延伸フィルムの表面に、有機溶媒A、有機溶媒B及び溶質を含む塗工液を塗工して、前記塗工液の層を形成する第一工程と、
前記塗工液の層を乾燥させる第二工程と、を含む、複層フィルムの製造方法であって、
前記有機溶媒A及び前記有機溶媒Bの少なくとも一方が、前記延伸フィルムの前記表面にある前記熱可塑性樹脂に対する良溶媒であり、
前記複層フィルムの前記延伸フィルム内に、前記有機溶媒A及び前記有機溶媒Bの少なくとも一方が浸透した溶媒浸透層が形成されていて、
前記複層フィルムの測定波長590nmにおける面内レターデーションRe、前記複層フィルムのヘイズHz、前記複層フィルムの厚みd、及び、前記溶媒浸透層の厚みtが、下記式(1)〜(3):
0.00470<Re/d<0.00900 (1)
0.5%<Hz<5% (2)
200nm<t<500nm (3)
を満たす、複層フィルムの製造方法。
〔2〕 前記有機溶媒A及び前記有機溶媒Bの一方が、前記延伸フィルムの前記表面にある前記熱可塑性樹脂に対する良溶媒であり、
前記有機溶媒A及び前記有機溶媒Bの他方が、前記延伸フィルムの前記表面にある前記熱可塑性樹脂に対する貧溶媒である、〔1〕に記載の複層フィルムの製造方法。
〔3〕 前記熱可塑性樹脂が、シクロオレフィン重合体を含む、〔1〕又は〔2〕に記載の複層フィルムの製造方法。
〔4〕 前記第一工程における前記有機溶媒A及び前記有機溶媒Bの合計量100%に対する、前記有機溶媒Aの重量割合Sa、及び、
前記第一工程における前記有機溶媒A及び前記有機溶媒Bの合計量100%に対する、前記有機溶媒Bの重量割合Sbが、下記式(4)及び(5):
75%≧Sa≧50% (4)
50%≧Sb≧25% (5)
を満たす、〔1〕〜〔3〕のいずれか一項に記載の複層フィルムの製造方法。
〔5〕 前記製造方法が、前記第一工程以後、前記第二工程の前に、前記塗工液の層が露点温度Trの雰囲気に晒される第三工程を含み、
前記第一工程における前記塗工液の液温T、及び、前記第三工程における露点温度Trが、下記式(6)及び(7):
15℃>T−Tr>0℃ (6)
30℃>T>20℃ (7)
を満たす、〔1〕〜〔4〕のいずれか一項に記載の複層フィルムの製造方法。
〔6〕 熱可塑性樹脂で形成された延伸フィルムと、前記延伸フィルムの表面に形成された溶質又は当該溶質の反応生成物を含む層とを備える複層フィルムであって、
前記溶質は、有機溶媒A及び有機溶媒Bを含む混合溶媒に溶解でき、
前記有機溶媒A及び前記有機溶媒Bの少なくとも一方は、前記延伸フィルムの前記表面にある前記熱可塑性樹脂に対する良溶媒であり、
前記延伸フィルムが、前記有機溶媒A及び前記有機溶媒Bの少なくとも一方を含む溶媒浸透層を含み、
前記複層フィルムの測定波長590nmにおける面内レターデーションRe、前記複層フィルムのヘイズHz、前記複層フィルムの厚みd、及び、前記溶媒浸透層の厚みtが、下記式(1)〜(3):
0.00470<Re/d<0.00900 (1)
0.5%<Hz<5% (2)
200nm<t<500nm (3)
を満たす、複層フィルム。
本発明によれば、熱可塑性樹脂で形成された延伸フィルム上に、前記熱可塑性樹脂に対する良溶媒を含む塗工液を塗工して、延伸フィルム及び塗工層を含む複層フィルムを得る製造方法であって、延伸フィルムと塗工層との接着強度を高くでき、且つ、塗工液の塗工による延伸フィルムのレターデーションの変化を抑制できる製造方法;並びに、熱可塑性樹脂で形成された延伸フィルムと、この延伸フィルム上に形成された塗工層とを含む複層フィルムであって、前記熱可塑性樹脂に対する良溶媒を含む塗工液を延伸フィルムに塗工して製造することができ、延伸フィルムと塗工層との接着強度を高くでき、且つ、塗工液の塗工による延伸フィルムのレターデーションの変化を抑制できる、複層フィルム;を提供できる。
図1は、本発明の一実施形態に係る製造方法で得られる複層フィルムを模式的に示す断面図である。 図2は、本発明の一実施形態に係る製造方法に用いる延伸フィルムを模式的に示す断面図である。 図3は、本発明の一実施形態に係る製造方法の第一工程において、延伸フィルムの表面に塗工液の層を形成した様子を模式的に示す断面図である。 図4は、一例としての複層フィルムの断面を透過型電子顕微鏡で観察して得られる像を示す写真である。
以下、例示物及び実施形態を示して本発明について詳細に説明するが、本発明は以下に示す例示物及び実施形態に限定されるものではなく、本発明の特許請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施しうる。
以下の説明において、ある層のレターデーションとは、別に断らない限り、面内レターデーションReを表す。この面内レターデーションReは、別に断らない限り、Re=(nx−ny)×dで表される値である。ここで、nxは、層の厚み方向に垂直な方向(面内方向)であって最大の屈折率を与える方向の屈折率を表す。nyは、層の前記面内方向であってnxの方向に直交する方向の屈折率を表す。dは、層の厚みを表す。レターデーションの測定波長は、別に断らない限り、590nmである。
以下の説明において、ある材料に対する良溶媒とは、前記材料を溶解させ易い溶媒をいう。また、材料を溶解させ易い溶媒とは、25℃において、材料0.5gを100gの溶媒に溶解させた場合に、不溶分が0.5重量%未満である溶媒をいう。
以下の説明において、ある材料に対する貧溶媒とは、前記材料を溶解し難い溶媒をいう。また、材料を溶解し難い溶媒とは、25℃において、材料0.5gを100gの溶媒に溶解させた場合に、不溶分が0.5重量%以上である溶媒をいう。
以下の説明において、用語「(メタ)アクリル」は、アクリル、メタクリル及びこれらの組み合わせを包含し、用語「(メタ)アクリロニトリル」は、アクリロニトリル、メタクリロニトリル及びこれらの組み合わせを包含し、用語「(メタ)アクリレート」は、アクリレート、メタクリレート及びこれらの組み合わせを包含する。
[1.複層フィルムの製造方法の実施形態の概要]
図1は、本発明の一実施形態に係る製造方法で得られる複層フィルム100を模式的に示す断面図である。また、図2は、本発明の一実施形態に係る製造方法に用いる延伸フィルム110を模式的に示す断面図である。さらに、図3は、本発明の一実施形態に係る製造方法の第一工程において、延伸フィルム110の表面110Uに塗工液の層130を形成した様子を模式的に示す断面図である。
本発明の一実施形態に係る複層フィルム100の製造方法は、図1に示すように、延伸フィルム110と、この延伸フィルム110の表面110Uに形成された塗工層120とを備える複層フィルム100の製造方法である。この製造方法は、図2に示すような、熱可塑性樹脂で形成された延伸フィルム110を用意する工程と;図3に示すように、延伸フィルム110の表面110Uに、有機溶媒A、有機溶媒B及び溶質を含む塗工液を塗工して、前記塗工液の層130を形成する第一工程と;塗工液の層130を乾燥させる第二工程と;をこの順に含む。
前記の製造方法において、延伸フィルム110の表面110Uに塗工液が塗工されると、図3に示すように、塗工液に含まれていた有機溶媒A及び有機溶媒Bの少なくとも一方が延伸フィルム110に浸透する。そのため、製造された複層フィルム100の延伸フィルム110内には、図1に示すように、有機溶媒A及び有機溶媒Bの少なくとも一方を含む溶媒浸透層111が形成される。
この製造方法では、製造される複層フィルム100の面内レターデーションRe、複層フィルム100の厚みd、複層フィルム100のヘイズHz、及び、溶媒浸透層111の厚みtが所定の範囲を満たすようにしている。そして、これにより、塗工液の塗工による延伸フィルム110のレターデーションの変化を抑制しながら、延伸フィルム110と塗工層120との接着強度を高くできるという、本発明の所望の効果を得ている。
第一工程と第二工程との間には、一般に、フィルム搬送等のハンドリングの操作を要する。よって、第一工程と第二工程との間には、通常、時間が空く。この空いた時間において、延伸フィルム110上に設けられた塗工液の層130は、露点温度Trの雰囲気に晒されることが好ましい。このように第一工程と第二工程との間において、塗工液の層130が露点温度Trの雰囲気に晒される工程を、以下、第三工程ということがある。
[2.延伸フィルム]
延伸フィルムは、熱可塑性樹脂で形成されたフィルムであって、少なくとも1方向に延伸する延伸処理を施されたフィルムである。
熱可塑性樹脂としては、熱可塑性の重合体と、必要に応じて任意の成分とを含む樹脂を用いうる。製造される複層フィルムのヘイズは、通常、熱可塑性樹脂の種類に応じて変わるので、熱可塑性樹脂に含まれる成分の種類及び量は、複層フィルムの所望のヘイズが得られるように設定することが好ましい。
重合体としては、例えば、シクロオレフィン重合体、セルロースエステル、ポリビニルアルコール、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、エポキシ重合体、ポリスチレン、アクリル重合体、メタクリル重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、及びこれらの組み合わせが挙げられる。これらの中でも、透明性、低吸湿性、寸法安定性及び軽量性等の観点から、シクロオレフィン重合体、セルロースエステル及びアクリル重合体が好ましい。中でも、シクロオレフィン重合体を用いた延伸フィルムは、従来、塗工層が剥離し易かったので、塗工層の剥離を抑制できるという効果を有効に活用する観点では、シクロオレフィン重合体がより好ましい。
シクロオレフィン重合体は、その重合体の構造単位が脂環式構造を有する重合体である。シクロオレフィン重合体は、主鎖に脂環式構造を有する重合体、側鎖に脂環式構造を有する重合体、主鎖及び側鎖に脂環式構造を有する重合体、並びに、これらの2以上の任意の比率の混合物としうる。中でも、機械的強度及び耐熱性の観点から、主鎖に脂環式構造を有する重合体が好ましい。
脂環式構造の例としては、飽和脂環式炭化水素(シクロアルカン)構造、及び不飽和脂環式炭化水素(シクロアルケン、シクロアルキン)構造が挙げられる。中でも、機械強度及び耐熱性の観点から、シクロアルカン構造及びシクロアルケン構造が好ましく、シクロアルカン構造が特に好ましい。
脂環式構造を構成する炭素原子数は、一つの脂環式構造あたり、好ましくは4個以上、より好ましくは5個以上、特に好ましくは6個以上であり、好ましくは30個以下、より好ましくは20個以下、特に好ましくは15個以下である。脂環式構造を構成する炭素原子数がこの範囲であると、延伸フィルムの機械強度、耐熱性及び成形性が高度にバランスされる。
シクロオレフィン重合体において、脂環式構造を有する構造単位の割合は、好ましくは50重量%以上、さらに好ましくは70重量%以上、特に好ましくは90重量%以上である。シクロオレフィン重合体における脂環式構造を有する構造単位の割合がこの範囲にあると、延伸フィルムの透明性及び耐熱性が良好となる。
シクロオレフィン重合体の具体例としては、(1)ノルボルネン系重合体、(2)単環の環状オレフィン重合体、(3)環状共役ジエン重合体、(4)ビニル脂環式炭化水素重合体、及びこれらの水素添加物が挙げられる。これらの中でも、透明性や成形性の観点から、ノルボルネン系重合体及びこれらの水素添加物がより好ましい。
ノルボルネン系重合体の例としては、ノルボルネン構造を有する単量体の開環重合体及びその水素化物;ノルボルネン構造を有する単量体の付加重合体及びその水素化物が挙げられる。また、ノルボルネン構造を有する単量体の開環重合体の例としては、ノルボルネン構造を有する1種類の単量体の開環単独重合体、ノルボルネン構造を有する2種類以上の単量体の開環共重合体、並びに、ノルボルネン構造を有する単量体及びこれと共重合しうる任意の単量体との開環共重合体が挙げられる。さらに、ノルボルネン構造を有する単量体の付加重合体の例としては、ノルボルネン構造を有する1種類の単量体の付加単独重合体、ノルボルネン構造を有する2種類以上の単量体の付加共重合体、並びに、ノルボルネン構造を有する単量体及びこれと共重合しうる任意の単量体との付加共重合体が挙げられる。これらの重合体としては、例えば、特開2002−321302号公報等に開示されている重合体が挙げられる。これらの中で、ノルボルネン構造を有する単量体の開環重合体の水素化物は、透明性、成形性、耐熱性、低吸湿性、寸法安定性及び軽量性の観点から、特に好適である。
ノルボルネン系重合体の好適な具体例としては、日本ゼオン社製「ゼオノア」;JSR社製「アートン」;TOPAS ADVANCED POLYMERS社製「TOPAS」などが挙げられる。
熱可塑性樹脂に含まれる重合体の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは10,000以上、より好ましくは25,000以上であり、好ましくは100,000以下、より好ましくは80,000以下、特に好ましくは50,000以下である。重合体の重量平均分子量がこのような範囲にあるときに、延伸フィルムの機械的強度および成型加工性が高度にバランスされる。
熱可塑性樹脂に含まれる重合体の分子量分布(重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn))は、好ましくは1以上、より好ましくは1.2以上であり、好ましくは10以下、より好ましくは4以下、特に好ましくは3.5以下である。
ここで、重合体の重量平均分子量及び数平均分子量は、溶媒としてシクロヘキサンを用いて(但し、試料がシクロヘキサンに溶解しない場合にはトルエンを用いてもよい)、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィーにより、ポリイソプレン換算(溶媒がトルエンのときは、ポリスチレン換算)の値として測定できる。
熱可塑性樹脂における重合体の量は、好ましくは70重量%〜100重量%、より好ましくは80重量%〜100重量%である。
熱可塑性樹脂のガラス転移温度は、好ましくは80℃以上、より好ましくは100℃以上であり、好ましくは250℃以下の範囲である。ガラス転移温度がこのような範囲にある熱可塑性樹脂は、高温下での使用における変形及び応力の発生が抑制されるので、耐久性に優れる。
熱可塑性樹脂は、その分子量2,000以下の樹脂成分(すなわち、オリゴマー成分)の含有量が、好ましくは5重量%以下、より好ましくは3重量%以下、さらに好ましくは2重量%以下である。オリゴマー成分の含有量が、前記範囲内にあると、延伸フィルムの表面における微細な凸部の発生が減少し、厚みのばらつきが小さくなり、面精度が向上する。オリゴマー成分の量の低減は、例えば、重合触媒及び水素化触媒の選択;重合、水素化等の反応条件;樹脂を成形用材料としてペレット化する工程における温度条件;を適切に設定することにより、行うことができる。また、オリゴマー成分の量は、前述のゲル・パーミエーション・クロマトグラフィーによって測定できる。
延伸フィルムは、1層のみを備える単層構造のフィルムを用いてもよく、2層以上の層を備える複層構造のフィルムを用いてもよい。延伸フィルムが2層以上の層を備える場合、塗工層の剥離を抑制できるという効果を有効に活用する観点では、塗工液を塗布される側の最外層が、シクロオレフィン重合体を含むことが好ましい。
塗工液を塗工される前において、延伸フィルムは、通常、延伸処理によって発現した面内レターデーションを有する。この面内レターデーションの範囲は、複層フィルムの用途に応じて設定しうる。具体的な範囲の例を示すと、複層フィルムを1/4波長板として用いる場合、延伸フィルムの面内レターデーションは、好ましくは110nm以上、より好ましくは115nm以上であり、好ましくは155nm以下、より好ましくは150nm以下、特に好ましくは145nm以下である。また、例えば、複層フィルムを1/2波長板として用いる場合、延伸フィルムの面内レターデーションは、好ましくは240nm以上、より好ましくは250nm以上であり、好ましくは300nm以下、より好ましくは290nm以下、特により好ましくは280nm以下である。さらに、複層フィルムを光学補償フィルムとして用いる場合、延伸フィルムの面内レターデーションは、好ましくは90nm以上、より好ましくは100nm以上であり、好ましくは350nm以下、より好ましくは300nm以下である。
本実施形態に係る製造方法においては、通常、塗工液を塗工される前の延伸フィルムの複屈折を調整することにより、塗工液の塗工によって延伸フィルムの表面に形成される凹凸の調整が可能であるので、製造される複層フィルムのヘイズを調整できる。具体的には、延伸フィルムの複屈折が大きいほど、製造される複層フィルムのヘイズが大きくなる傾向がある。よって、延伸フィルムの複屈折は、複層フィルムの所望のヘイズが得られるように設定することが好ましい。具体的な複屈折の範囲は、延伸フィルムに含まれる熱可塑性樹脂の種類にも依存するが、通常は、製造される複層フィルムが後述する式(1)を満たすことができる範囲に、延伸フィルムの複屈折を調整することが好ましい。フィルムの複屈折は、フィルムの面内レターデーションを、当該フィルムの厚みで割って、求めることができる。
塗工液を塗工される前において、延伸フィルムのヘイズは、通常、小さい。延伸フィルムのヘイズは、好ましくは0%〜0.20%、より好ましくは0%〜0.15%、特に好ましくは0%〜0.10%である。フィルムのヘイズは、JIS K7136に準拠して、ヘイズメーターを用いて測定できる。
延伸フィルムとしては、枚葉のフィルムを用いてもよいが、長尺のフィルムを用いることが好ましい。「長尺のフィルム」とは、幅に対して5倍以上の長さを有するフィルムをいい、好ましくは10倍若しくはそれ以上の長さを有し、具体的にはロール状に巻き取られて保管又は運搬される程度の長さを有するフィルムをいう。フィルムの幅に対する長さの割合の上限は、特に限定されないが、例えば100,000倍以下としうる。長尺の延伸フィルムを用いることにより、ロールトゥロール法での製造が可能になり、複層フィルムの生産性を高めることができる。
延伸フィルムの厚みは、複層フィルムの用途に応じて任意に設定してもよく、好ましくは1μm以上、より好ましくは5μm以上、特に好ましくは10μm以上であり、好ましくは100μm以下、より好ましくは50μm以下、特に好ましくは30μm以下である。このような厚みを有する延伸フィルムは、生産性が良好であり、厚みが薄く、且つ、軽量化が可能である。
延伸フィルムは、熱可塑性樹脂フィルムを用意し、この熱可塑性樹脂フィルムを延伸することによって、製造できる。
熱可塑性樹脂フィルムは、例えば、熱可塑性樹脂を任意のフィルム成形法で成形することによって製造できる。フィルム成形法としては、例えば、キャスト成形法、押出成形法、インフレーション成形法などが挙げられる。中でも、溶媒を使用しない溶融押出法は、揮発性成分の量を効率よく低減させることができ、地球環境の観点、作業環境の観点、及び、製造効率の観点から好ましい。溶融押出法としては、例えばダイスを用いるインフレーション法などが挙げられ、生産性及び厚み精度に優れる点で、Tダイを用いる方法が好ましい。
熱可塑性樹脂フィルムを用意した後で、その熱可塑性樹脂フィルムを延伸する延伸処理を行うことにより、延伸フィルムが得られる。延伸方向は、1方向でもよく、2方向以上でもよい。よって、延伸処理としては、例えば、一方向のみに延伸を行う一軸延伸処理を行ってもよく、異なる2方向に延伸を行う二軸延伸処理を行ってもよい。また、二軸延伸処理では、2方向に同時に延伸を行う同時二軸延伸処理を行ってもよく、ある方向に延伸を行った後で別の方向に延伸を行う逐次二軸延伸処理を行ってもよい。さらに、延伸処理は、フィルム長手方向に延伸を行う縦延伸処理、フィルム幅方向に延伸を行う横延伸処理、フィルム幅方向に平行でもなく垂直でもない斜め方向に延伸を行う斜め延伸処理のいずれを行ってもよく、これらを組み合わせて行ってもよい。延伸処理の方式は、例えば、ロール方式、フロート方式、テンター方式などが挙げられる。
[3.塗工液]
塗工液は、有機溶媒A、有機溶媒B及び溶質を含む。また、塗工液は、有機溶媒A、有機溶媒B及び溶質に組み合わせて、必要に応じて、任意の成分を含んでいてもよい。この塗工液において、有機溶媒A及び有機溶媒Bを含む混合溶媒中に、溶質が溶解している。
前記の有機溶媒A及び有機溶媒Bのうち、少なくとも一方は、塗工液を塗工される延伸フィルムの表面にある熱可塑性樹脂に対する良溶媒である。このような良溶媒を用いることにより、延伸フィルムの表面に塗工液を塗工した場合に、有機溶媒A及び有機溶媒Bの少なくとも一方を延伸フィルムに浸透させて、延伸フィルムの塗工層側の最外層として溶媒浸透層を形成することができる。
有機溶媒A及び有機溶媒Bの他方は、塗工液を塗工される延伸フィルムの表面にある熱可塑性樹脂に対する良溶媒であってもよいが、塗工液を塗工される延伸フィルムの表面にある熱可塑性樹脂に対する貧溶媒であることが好ましい。よって、有機溶媒A及び有機溶媒Bの一方が、塗工液を塗工される延伸フィルムの表面にある熱可塑性樹脂に対する良溶媒であり、且つ、有機溶媒A及び有機溶媒Bの他方が、塗工液を塗工される延伸フィルムの表面にある熱可塑性樹脂に対する貧溶媒であることが好ましい。良溶媒と貧溶媒とを組み合わせて用いることにより、塗工液の塗工による延伸フィルムの破損を効果的に抑制することができる。また、貧溶媒の種類を調整することにより、良溶媒の延伸フィルムへの浸透の程度を調整できるので、複層フィルムの延伸フィルム内の溶媒浸透層の厚みを調整することが可能である。よって、貧溶媒の種類は、所望の厚みの溶媒浸透層が得られるように設定することが好ましい。
有機溶媒A及び有機溶媒Bとして用いることができる溶媒としては、例えば、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、アセトン等のケトン溶媒;エタノール、メタノール、1−プロパノール、2−プロパノール等のアルコール溶媒;シクロヘキサン、ヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン等の炭化水素溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル等の酢酸エステル溶媒;トルエン、キシレン、クロロベンゼン、1,2−ジクロロベンゼン等の芳香族炭化水素溶媒;クロロホルム、ジクロロメタン、1,2−ジクロルエタン等のハロゲン化炭化水素溶媒;1,4−ジオキサン、シクロペンチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン等のエーテル溶媒;などが挙げられる。
熱可塑性樹脂の種類に応じた良溶媒及び貧溶媒の具体例を挙げると、シクロオレフィン重合体を含む熱可塑性樹脂に対する良溶媒としては、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、シクロヘキサン、ヘキサン、メチルシクロヘキサン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、1,2−ジクロロベンゼン、クロロホルム、ジクロロメタン、1,2−ジクロルエタン、1,4−ジオキサン、シクロペンチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン、及びテトラヒドロピランが挙げられる。また、シクロオレフィン重合体を含む熱可塑性樹脂に対する貧溶媒としては、例えば、メチルエチルケトン、アセトン、エタノール、メタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミル、酢酸プロピル、及び酢酸イソプロピルが挙げられる。
塗工液を塗工される延伸フィルムの表面にある熱可塑性樹脂がシクロオレフィン重合体を含む場合の好ましい有機溶媒の組み合わせを、下記の表1に示す。このような組み合わせで有機溶媒A及び有機溶媒Bを用いることにより、本発明の所望の効果を顕著に得ることができる。
有機溶媒A及び有機溶媒Bの量比は、所望の複層フィルムが得られる範囲で、任意に設定しうる。通常は、有機溶媒A及び有機溶媒Bの量比を調整することにより、良溶媒の延伸フィルムへの浸透の程度を調整できるので、複層フィルムの延伸フィルム内の溶媒浸透層の厚みを調整することが可能である。よって、塗工液の塗工を行う第一工程において有機溶媒A及び有機溶媒Bの量比は、所望の厚みの溶媒浸透層が得られるように設定することが好ましい。
具体的には、有機溶媒A及び有機溶媒Bの合計量100%に対する有機溶媒Aの重量割合Sa、及び、有機溶媒A及び有機溶媒Bの合計量100%に対する有機溶媒Bの重量割合Sbが、下記式(4)及び(5)を満たすことが好ましい。
75%≧Sa≧50% (4)
50%≧Sb≧25% (5)
より詳細には、有機溶媒Aの重量割合Saは、好ましくは50%以上、より好ましくは55%以上、更に好ましくは60%以上であり、好ましくは80%以下、より好ましくは78%以下、更に好ましくは75%以下である。
また、有機溶媒Bの重量割合Sbは、好ましくは20%以上、より好ましくは22%以上、更に好ましくは25%以上であり、好ましくは50%以下、より好ましくは45%以下、更に好ましくは40%以下である。
塗工液を塗工される延伸フィルムの表面にある熱可塑性樹脂に対する良溶媒及び貧溶媒を、有機溶媒A及び有機溶媒Bとして用いる場合、良溶媒よりも貧溶媒を多く用いることが好ましい。これにより、塗工液の塗工による延伸フィルムの破損を、効果的に抑制できる。よって、有機溶媒A及び有機溶媒Bの量比を前記のように設定する場合には、有機溶媒Aとして貧溶媒を用い、有機溶媒Bとして良溶媒を用いることが好ましい。また、これにより、良溶媒の延伸フィルムへの浸透の程度を適切に調整できるので、本発明の所望の効果を顕著に得ることができる。
ところで、あるフィルム上に塗工層を形成すると、従来、ブラッシングが生じることがあった。ここで、ブラッシングとは、溶媒の揮発によって塗工液の層から気化熱が失われ、塗工液の層の温度が低下することにより、塗工液の層の表面に結露が生じる現象をいう。このようなブラッシングは、通常、塗工液の層を形成してから乾燥させるまでの期間において、塗工液の層に含まれる溶媒が揮発することによって生じる。ブラッシングが生じると、結露の作用によって塗工層の表面に窪み又は突起が生じ、これらの窪み又は突起が複層フィルムに欠陥となって現れることがある。これに対し、有機溶媒A及び有機溶媒Bの量比を前記の範囲に調整することにより、通常は、前記の欠陥の発生を抑制することが可能である。
塗工液100重量%に対する有機溶媒A及び有機溶媒Bの合計量の割合は、好ましくは50重量%以上、より好ましくは55重量%以上、特に好ましくは60重量%以上であり、好ましくは95重量%以下、より好ましくは90重量%以下、特に好ましくは85重量%以下である。有機溶媒A及び有機溶媒Bの合計量の割合が、前記範囲の下限値以上であることにより、本発明の所望の効果を顕著に発揮でき、更に通常は、塗工層における欠陥の発生を効果的に抑制できる。また、上限値以下であることにより、塗工された塗工液の層の厚みを厚くできるので、厚い塗工層を容易に形成することができる。
溶質は、塗工液に含まれる有機溶媒A及び有機溶媒B以外の成分であって、塗工液中において有機溶媒A及び有機溶媒Bを含む混合溶媒に溶解でき、第三工程における乾燥によっては除去されない成分である。この溶質としては、塗工液において溶解できる任意の材料を用いうる。本実施形態に係る複層フィルムの製造方法では、通常、塗工液に含まれる溶質又は当該溶質の重合体等の反応生成物を含む層として、塗工層が形成される。よって、塗工層の溶質の種類は、複層フィルムに設ける塗工層の種類に応じて、設定することが好ましい。
溶質としては、例えば、アクリル系化合物が挙げられる。溶質としてアクリル系化合物を用いた場合、塗工層として、高い硬度を有するハードコート層を得ることができる。アクリル系化合物としては、例えば、(メタ)アクリル酸化合物、(メタ)アクリル酸エステル化合物、(メタ)アクリルアミド化合物、(メタ)アクリロニトリル化合物、ウレタン(メタ)アクリレート化合物などが挙げられる。これらの具体例としては、例えば、特開2012−236921号公報に記載のものなどが挙げられる。
また、溶質としては、例えば、レベリング剤、重合開始剤、界面活性剤、紫外線吸収剤、光安定剤、シランカップリング剤、液晶性化合物等が挙げられる。
溶質は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
塗工液における溶質の濃度は、複層フィルムに設ける塗工層の厚み、溶質の種類などに応じて、適切に設定しうる。具体的な濃度は、好ましくは10重量%以上、より好ましくは12重量%以上、特に好ましくは15重量%以上であり、好ましくは30重量%以下、より好ましくは27重量%以下、特に好ましくは25重量%以下である。溶質の濃度が前記の範囲にあることにより、本発明の所望の効果を顕著に得ることができる。また、通常は、溶質の濃度が前記範囲の下限値以上であることにより、所望の厚みの塗工層を容易に形成することができる。また、前記範囲の上限値以下であることにより、通常は、欠陥の発生を効果的に抑制できる。
塗工液は、上述した有機溶媒A、有機溶媒B及び溶質に組み合わせて、更に任意の成分を含みうる。例えば、有機溶媒A及び有機溶媒B以外の任意の溶媒;溶媒に溶解しない非溶解成分;などが挙げられる。また、非溶解成分としては、例えば、有機粒子、無機粒子等の粒子が挙げられる。任意の成分は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組合わせて用いてもよい。
塗工液は、溶媒浸透層を生じないガラス板等の基材に塗工して対照用塗工層を得た場合に、ヘイズの小さい対照用塗工層を得られるものを用いてもよい。このように溶媒浸透層を生じないように形成された場合にヘイズの小さい対照用塗工層しか得られない塗工液を用いた場合でも、溶媒浸透層が形成されるように塗工液が延伸フィルムに塗工されると、所定の範囲のヘイズHzを有する複層フィルムを得ることが可能である。前記の対照用塗工層のヘイズは、例えば、0%〜0.20%、0%〜0.15%、0%〜0.10%などでありうる。前記の対照用塗工層のヘイズは、延伸フィルムの代わりに平滑な表面を有するガラス板を用いること以外は本発明の複層フィルムの製造方法と同じ方法で対照用塗工層を得て、濁度計(日本電色工業社製「NDH−2000」)を用いて測定できる。
[4.第一工程]
本発明の一実施形態に係る複層フィルムの製造方法では、塗工液及び延伸フィルムを用意した後で、塗工液を延伸フィルムの表面に塗工する第一工程を行う。塗工液は、延伸フィルムの少なくとも片面に塗工するものであり、両面に塗工してもよい。塗工液の塗工により、延伸フィルムの表面に塗工液の層が形成される。
第一工程において、塗工される塗工液の液温Tは、下記式(7)を満たすことが好ましい。
30℃>T>20℃ (7)
より詳細には、塗工液の液温Tは、好ましくは20℃より高く、更に好ましくは21℃より高く、特に好ましくは22℃より高く、また、好ましくは30℃未満、更に好ましくは29℃未満、特に好ましくは28℃未満である。塗工液の液温Tが前記の温度範囲にある場合に、本発明の所望の効果を顕著に得ることができ、更に通常は、塗工層における欠陥の発生を効果的に抑制できる。
また、複層フィルムの製造方法が第三工程を含む場合、第一工程における雰囲気は、当該第一工程における雰囲気の露点温度が第三工程における雰囲気の露点温度Trと同じになるように調整することが好ましい。これにより、本発明の所望の効果を顕著に得ることができ、更に通常は、塗工層における欠陥の発生を効果的に抑制できる。通常、第一工程と第三工程とは、同じ室内で行われるので、第三工程における雰囲気を露点温度Trが得られるように調整することで、第一工程における雰囲気の露点温度も前記温度Trに調整される。
塗工方法に制限は無く、例えば、スプレーコート法、バーコート法、ロールコート法、ダイコート法、インクジェットコート法、スクリーンコート法、ディップコート法、スロットダイコート法、凸版印刷法、凹版印刷法、グラビア印刷法等が挙げられる。
[5.第三工程]
複層フィルムの製造方法は、第一工程以後、第二工程の前に、延伸フィルム上に形成された塗工液の層を、露点温度Trの雰囲気に晒す第三工程を含むことが好ましい。第三工程において塗工液の層が晒される雰囲気の露点温度Trは、下記式(6)を満たすことが好ましい。
15℃>T−Tr>0℃ (6)
より詳細には、第一工程において塗工される塗工液の液温Tと第三工程における雰囲気の露点温度Trとの差T−Trは、好ましくは0℃より大きく、また、好ましくは15℃未満、より好ましくは14.5℃未満、特に好ましくは14℃未満である。前記の温度差T−Trが前記の温度範囲にある場合に、本発明の所望の効果を顕著に得ることができ、更に通常は、塗工層における欠陥の発生を効果的に抑制できる。
第三工程は、第一工程以後第二工程より前の期間の、少なくとも一部の期間において行いうる。中でも、第三工程は、第一工程から連続する少なくとも一部の期間において行うことが、好ましい。さらには、第三工程は、第一工程以後第二工程より前の全ての期間で行うことが、特に好ましい。よって、例えば長尺の延伸フィルムを搬送しながら複層フィルムの製造を行う場合には、第一工程を行うための塗工装置以降、塗工液の層の乾燥を行うための乾燥装置よりも前の区間において、フィルム搬送路の雰囲気を露点温度Trが得られるように調整することが好ましい。これにより、本発明の所望の効果を顕著に得ることができ、更に通常は、塗工層における欠陥の発生を効果的に抑制できる。
延伸フィルム上に形成された塗工液の層を、露点温度Trの雰囲気に晒す時間は、好ましくは3秒以上、より好ましくは5秒以上、特に好ましくは7秒以上であり、好ましくは30秒以下、より好ましくは27秒以下、特に好ましくは25秒以下である。塗工液の層を露点温度Trの雰囲気に晒す時間が、前記範囲の下限値以上であることにより、本発明の所望の効果を顕著に得ることができ、更に通常は、塗工層における欠陥の発生を効果的に抑制できる。
[6.第二工程]
第一工程を行い、更に通常は第三工程を行った後で、延伸フィルム上に形成された塗工液の層を乾燥させる第二工程を行う。第二工程により、塗工液の層から有機溶媒A、有機溶媒B、並びに任意の揮発成分が除去されて、塗工層が形成される。これにより、延伸フィルム及び塗工層を備える複層フィルムが得られる。
第二工程では、通常、塗工液の層を加熱することによって、乾燥を行う。加熱は、例えば、塗工液の層を高温の乾燥雰囲気に晒すことで、達成しうる。乾燥雰囲気の温度は、通常は、第一工程における塗工液の液温Tより高温である。乾燥雰囲気の具体的な温度は、溶媒の除去が可能である限り任意であるが、好ましくは70℃以上、より好ましくは75℃以上、特に好ましくは80℃以上であり、好ましくは110℃以下、より好ましくは105℃以下、特に好ましくは100℃以下である。
[7.任意の工程]
本発明の一実施形態に係る複層フィルムの製造方法は、上述した工程に加えて、更に任意の工程を含んでいてもよい。
複層フィルムの製造方法は、例えば、塗工層に含まれる溶質等の成分を反応させる工程、塗工層を硬化させる工程、などを含んでいてもよい。以下、その例を説明する。上述した第二工程によって得られる塗工層は、通常、溶質を含む。この溶質が紫外線等の活性エネルギー線によって重合できる場合には、第二工程の後で、塗工層に活性エネルギー線を照射する工程を行ってもよい。活性エネルギー線の照射により溶質が重合して、溶質の反応生成物としての重合体を含む塗工層が得られる。こうして得られる塗工層では、通常、硬度が向上しているので、機械的強度の高い複層フィルムを得ることができる。
また、複層フィルムの製造方法は、例えば、複層フィルムに表面処理を施す工程、複層フィルムの塗工面あるいはその反対側の面(反塗工面)に保護フィルムを貼合する工程、複層フィルムをスリットする工程、複層フィルムを巻き取る工程、などを含んでいてもよい。
[8.複層フィルム]
上述した製造方法により、延伸フィルムと、この延伸フィルムの表面に形成された塗工層とを備える複層フィルムを得ることができる。
塗工層は、通常、塗工液に含まれていた成分のうち乾燥によっては除去されなかった成分(以下、適宜「固形分」ということがある。)を含むか、又は、この固形分の一部又は全部から誘導される反応生成物を含む。よって、塗工層は、通常、塗工液に含まれていた溶質、又は、当該溶質の反応生成物を含む層となっている。ここで、前記の反応生成物としては、例えば、前記溶質の重合体などが挙げられる。
また、得られた複層フィルムの延伸フィルムは、有機溶媒A及び有機溶媒Bの少なくとも一方を含む溶媒浸透層を含む。この溶媒浸透層は、延伸フィルムの表面に塗工された塗工液に含まれていた有機溶媒A及び有機溶媒Bの少なくとも一方が浸透して形成された層であるので、延伸フィルムの前記塗工層側の部分として形成されている。また、この溶媒浸透層は、塗工液に含まれていた溶質を含んでいてもよい。
そして、この得られた複層フィルムにおいては、複層フィルムの面内レターデーションRe、複層フィルムのヘイズHz、複層フィルムの厚みd、及び、延伸フィルム内の溶媒浸透層の厚みtが、下記式(1)〜(3)を満たす。これにより、塗工液の塗工による延伸フィルムのレターデーションの変化を抑制しながら、延伸フィルムと塗工層との接着強度を高くできるという、本発明の所望の効果を得ている。
0.00470<Re/d<0.00900 (1)
0.5%<Hz<5% (2)
200nm<t<500nm (3)
以下、前記の式(1)〜式(3)について詳細に説明する。
式(1)に示されるRe/dは、は、複層フィルムの全体としての複屈折の大きさを表す。複屈折Re/dは、通常0.00470より大きく、好ましくは0.00480より大きく、特に好ましくは0.00482より大きく、また、通常0.00900未満、好ましくは0.00700未満、特に好ましくは0.00695未満である。複層フィルムの複屈折Re/dは、例えば、延伸フィルムの複屈折、及び、溶媒浸透層の厚みによって、調整できる。
式(2)は、複層フィルムのヘイズHzの範囲を表す。複層フィルムのヘイズHzは、通常0.5%より大きく、好ましくは0.53%より大きく、特に好ましくは0.57%より大きく、また、通常5.0%未満、好ましくは1.0%未満、特に好ましくは0.95%未満である。複層フィルムのヘイズHzは、例えば、延伸フィルムの材料、延伸フィルムの複屈折、及び、塗工液の層の乾燥方法によって、調整できる。
式(3)は、複層フィルムの延伸フィルムが含む溶媒浸透層の厚みtの範囲を表す。溶媒浸透層の厚みtは、通常200nmより大きく、好ましくは210nmより大きく、より好ましくは215nmより大きく、また、通常500nm未満、好ましくは450nm未満、より好ましくは410nm未満である。溶媒浸透層の厚みtは、例えば、塗工液に含まれる有機溶媒の種類、並びに、有機溶媒Aと有機溶媒Bとの量比によって、調整できる。
溶媒浸透層の厚みtは、複層フィルムの断面を透過型電子顕微鏡を用いて観察して測定できる。この方法で観察された複層フィルムの断面の例を、図4に示す。図4において、中央の濃色部分が溶媒浸透層であり、この濃色部分より下が延伸フィルムの前記溶媒浸透層以外の部分であり、この濃色部分より上が塗工層である。このように観察された像において、濃色部分の厚みを測定することにより、溶媒浸透層の厚みtを測定できる。
前記の式(1)〜式(3)が満たされることによって本発明の所望の効果が得られる仕組みを、本発明者は下記のように推察する。ただし、本発明の技術的範囲は、下記の仕組みの説明によって制限されるものでは無い。
一般に、大きい複屈折を有するフィルムにおいて、当該フィルムに含まれる重合体分子の配向が緩和すると、配向が緩和した部分において複屈折が低下して、その結果、フィルムのレターデーションが大きく変化する傾向があった。よって、このように大きい複屈折を有するフィルムにおいて、良溶媒を含む塗工液の塗工によるレターデーションの変化という、本発明が解決すべき課題が生じていた。式(1)は、このように従来の技術では解決困難であった課題を有していた複層フィルムの範囲を、その複屈折の値によって特定したものである。このような課題に対し、上述した複層フィルムは、式(3)に示すように、溶媒浸透層の厚みtを小さくしている。このように溶媒浸透層の厚みtが小さいことにより、良溶媒の浸透による重合体分子の配向の緩和が生じる部分を小さくできる。よって、複屈折の低下が生じる部分を小さくできるので、塗工液の塗工によるレターデーションの変化を小さくできる。
ただし、このように溶媒浸透層の厚みtが小さいと、重合体分子の配向の緩和による靱性向上の作用を得られる部分が小さくなる。そうすると、塗工層を剥離させようとする応力に対する延伸フィルムの耐性が低下する。そこで、上述した複層フィルムは、延伸フィルムと塗工層との界面、即ち、溶媒浸透層と塗工層との界面を所定の程度に粗くしている。この界面の粗れは、通常、塗工液の塗工によって形成される。粗い界面では、当該界面の凹部及び凸部の作用として、アンカー効果が得られる。そして、このアンカー効果という物理的作用によって、塗工層と延伸フィルムとの接着強度を高くできている。ここで、延伸フィルムと塗工層との界面の粗さにより、複層フィルムには前記粗さに対応した大きさのヘイズHzが生じる。また、延伸フィルムと塗工層との界面が粗くなることで、塗工層の延伸フィルムとは反対側の面も粗くなることがあり、この粗さも前記のヘイズHzに影響することが考えられるが、その粗さの程度は、延伸フィルムと塗工層との界面の粗さに対応しているので、このような塗工層の延伸フィルムとは反対側の面の粗さを考慮しても、前記のヘイズHzは、延伸フィルムと塗工層との界面の粗さに対応している。よって、式(2)に示される複層フィルムのヘイズHzは、アンカー効果が得られる延伸フィルムと塗工層との界面の粗さを間接的に表すものである。
このような仕組みによって、式(1)〜式(3)が満たされる複層フィルムは、塗工液の塗工による延伸フィルムのレターデーションの変化の抑制、及び、延伸フィルムと塗工層との接着強度の向上という、従来は同時に得ることが難しかった効果を達成している。
一般に、ある面の粗さの程度が増大すると、その面を有するフィルムのヘイズの値は増大する。延伸フィルムの表面に着目すると、通常は、延伸フィルムの表面に、塗工液の塗工によって凹部又は凸部が形成されることで、延伸フィルムと塗工層との界面の粗さが向上し、その結果、複層フィルムにおいて大きなヘイズが得られる。よって、塗工液の塗工前の延伸フィルムのヘイズと、複層フィルムのヘイズとの差は、通常、延伸フィルムと塗工層との界面の粗さに相関し、よって、延伸フィルムと塗工層との接着強度に相関する。優れた接着強度を得る観点では、複層フィルムのヘイズと、塗工液の塗工前の延伸フィルムのヘイズとの差は、好ましくは0.4%以上、より好ましくは0.45%以上、特に好ましくは0.5%以上であり、好ましくは1.5%以下、より好ましくは1%以下、特に好ましくは0.8%以下である。
複層フィルムの塗工層の厚みは、複層フィルムの用途に応じて、任意に設定できる。具体的な範囲を示すと、塗工層の厚みは、好ましくは0.5μm以上、より好ましくは1μm以上、特に好ましくは1.5μm以上であり、好ましくは20μm以下、より好ましくは15μm以下、特に好ましくは10μm以下である。
複層フィルムの面内レターデーションの範囲は、複層フィルムの用途に応じて設定しうる。複層フィルムの面内レターデーションの具体的な範囲は、例えば、延伸フィルムの面内レターデーションの範囲として説明したのと同じ範囲に設定してもよい。
光学フィルムとして用いる観点から、複層フィルムは、高い透明性を有することが好ましい。具体的には、複層フィルムの全光線透過率は、好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、特に好ましくは90%以上である。複層フィルムの全光線透過率は、紫外・可視分光計を用いて、波長380nm〜780nmの範囲で測定しうる。
複層フィルムの用途に特に制限は無いが、例えば、位相差フィルム、偏光板保護フィルム、光学補償フィルム、光学用保護フィルムなどの光学フィルムとして用いることが好ましい。
以下、実施例を示して本発明について具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではなく、本発明の特許請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施しうる。
以下の説明において、量を表す「%」及び「部」は、別に断らない限り重量基準である。以下の操作は、別に断らない限り、常温常圧大気中にて行った。
[評価方法]
(面内レターデーションReの測定方法)
塗工液を塗工される前の延伸フィルムの面内レターデーションReを測定した。また、測定後、延伸フィルムの測定位置を示すマーキングをした。
その後、複層フィルムを製造した後で、その複層フィルムの面内レターデーションReを、前記の測定位置において測定した。
前記のようにして測定された延伸フィルムの面内レターデーションから複層フィルムの面内レターデーションを引き算して、位相差変化量ΔReを求めた。位相差変化量ΔReが3nmより小さい場合は「○」と判定し、3nm以上である場合は「×」と判定した。
前記の面内レターデーションReの測定は、位相差計(AXOMETRICS社製「Axoscan」)を用いて、測定波長590nmで行った。
(フィルムのヘイズの測定方法)
フィルムのヘイズは、濁度計(日本電色工業社製「NDH−2000」)を用いて測定した。
(溶媒浸透層の厚みの測定方法)
複層フィルムをエポキシ樹脂で包埋して、試料片を用意した。この試料片を、ミクロトームを用いて厚み0.05μmにスライスした。その後、スライスにより現れた断面を、透過型電子顕微鏡を用いて観察して、溶媒浸透層の厚みを測定した。
(剥離強度の測定方法)
複層フィルムの塗工層側の面に、紫外線硬化型の接着剤(トーヨーケム社製「CRBシリーズ」)を介して、樹脂フィルム(日本ゼオン社製「ZF16」、厚み100μm)を貼り合わせた。次いで、紫外線を照射して接着剤を硬化させて、試料フィルムを得た。試料フィルムを、幅15mmに切り取り、その延伸フィルム側の面を、粘着剤(日東電工社製「CS9621T」)を介して、ガラスプレートの表面に貼り合わせた。その後、ガラスプレートに貼り合わせた試料フィルムの前記樹脂フィルムを、前記ガラスプレートの表面に対して垂直な方向に引っ張る90°剥離試験を行って、樹脂フィルムを剥がすために要する力を剥離強度として測定した。この測定の際、樹脂フィルムを引っ張る速度は300mm/分とした。測定された剥離強度は、複層フィルムの延伸フィルムと塗工層との接着強度に相当する。
測定された剥離強度について、下記の基準で判定を行った。
「○」:剥離強度が2N以上。
「△」:剥離強度が1Nより大きく2N未満。
「×」:剥離強度が1N以下。
[実施例1]
(1−1.延伸フィルムの用意)
延伸フィルムとして、シクロオレフィン重合体を含む熱可塑性樹脂からなる長尺の一軸延伸フィルム(日本ゼオン社製「ゼオノアフィルム」、熱可塑性樹脂のガラス転移温度126℃、ヘイズ0.05%、厚み15μm、波長590nmにおける面内レターデーション100.2nm)を用意した。
(1−2.塗工液の用意)
有機溶媒Aとしてのアセトンと、有機溶媒Bとしてのメチルシクロヘキサンとを含む混合溶媒(重量比が、アセトン/メチルシクロヘキサン=75/25)を用意した。アセトンは、延伸フィルムに含まれる樹脂に対する貧溶媒であり、メチルシクロヘキサンは、延伸フィルムに含まれる樹脂に対する良溶媒である。
この混合溶媒62.0部、1分子中に6個以上のアクリロイル基を有するウレタンアクリレートオリゴマー(日本合成化学工業社製「UV−7640B」)50.0部、シリカ粒子(CIKナノテック社製、数平均粒径30nm)10.0部、レベリング剤(DIC社製「GRANDIC PC11−6204L」)0.2部、及び、重合開始剤(BASF社製「イルガキュア379」)3.0部を混合して、ハードコート組成物としての塗工液を製造した。
この塗工液を、ガラス板(ヘイズ0.1%未満)の平滑な表面に塗工し、温度100℃で2分乾燥し、照度250mW/cm、積算光量100mJ/cmの条件で紫外線を照射して、厚み2μmの対照用塗工層を得た。そして、この対照用塗工層のヘイズを測定して、0.1%未満であることを確認した。
(1−3.複層フィルムの製造)
塗工液ストックタンク、ギアポンプ、送液チューブ及び塗工ダイからなるダイコーターを、塗工室に設置した。塗工液ストックタンク及び塗工ダイとしては、通水により温度調整可能なものを用いた。また、送液チューブは、通水ジャケットで覆うことにより、通水ジャケット中の通水によって温度調整できるように設置した。前記のストックタンク、塗工ダイ及び通水ジャケットには、26.5℃の水を流し、塗工液の液温Tが26.5℃に維持されるように調整した。
また、塗工室内の温度及び相対湿度を調節することにより、塗工室内の露点温度Trを16.7℃に調整した。
前記の延伸フィルムを、長手方向に連続的に搬送しながら、下記の工程を行った。
延伸フィルムを、塗工室に供給した。そして、延伸フィルムの片面に、ダイコーターを用いて、ハードコート組成物としての液温T=26.5℃の塗工液を塗工し、塗工液の層を形成した(第一工程)。
その後、延伸フィルムを、塗工室の直ぐ下流に設けられたオーブンに向けて搬送した。この際、塗工液の層は、ダイコーターによって塗工されてからオーブンに入るまでの20秒間、塗工室内を走行することにより、露点温度Tr=16.7℃の雰囲気に晒された(第三工程)。
その後、100℃のオーブンにおいて、塗工液の層が2分ほど乾燥された。これにより、塗工液の層から溶媒が除去されて、塗工層が形成された(第二工程)。
その後、紫外線照射装置(高圧水銀ランプ)を用いて、照度250mW/cm、積算光量100mJ/cmの条件で、塗工層に紫外線を照射した。これにより、塗工層に含まれるウレタンアクリレートオリゴマーが重合して、塗工層が硬化した。硬化後の塗工層の厚みは、2μmであった。
以上のようにして、延伸フィルムと、この延伸フィルムの表面に形成されたハードコート層としての塗工層とを備える複層フィルムを得た。この複層フィルムを、上述した方法によって評価した。
[実施例2〜3及び比較例1〜5]
塗工液を塗工される前の延伸フィルムの厚み及び面内レターデーション、有機溶媒Aの種類及び量、有機溶媒Bの種類及び量、塗工時の混合溶媒の液温T、並びに、塗工室内の露点温度Trを、下記の表2に示すように変更した。以上の事項以外は、実施例1と同じにして、複層フィルムの製造及び評価を行った。
使用した有機溶媒のうち、酢酸エチル及び酢酸プロピルは、延伸フィルムに含まれる樹脂に対する貧溶媒である。また、トルエンは、延伸フィルムに含まれる樹脂に対する良溶媒である。
また、各実施例及び比較例で用いた塗工液を用いて、実施例1と同じように対照用塗工層を製造し、そのヘイズを測定して、いずれも0.1%未満であることを確認した。
[結果]
前記の実施例及び比較例の結果を、下記の表2に示す。表2において、略称の意味は、下記の通りである。
COP:シクロオレフィン重合体。
UA:ウレタンアクリレート。
Ac:アセトン。
EA:酢酸エチル。
MCH:メチルシクロヘキサン。
To:トルエン。
PA:酢酸プロピル。
Sa:有機溶媒Aと有及び有機溶媒Bの合計量100%に対する有機溶媒Aの重量割合。
Sb:有機溶媒Aと有及び有機溶媒Bの合計量100%に対する有機溶媒Bの重量割合。
Hz:ヘイズ。
100 複層フィルム
110 延伸フィルム
111 溶媒浸透層
120 塗工層
130 塗工液の層

Claims (6)

  1. 熱可塑性樹脂で形成された延伸フィルムの表面に、有機溶媒A、有機溶媒B及び溶質を含む塗工液を塗工して、前記塗工液の層を形成する第一工程と、
    前記塗工液の層を乾燥させる第二工程と、を含む、複層フィルムの製造方法であって、
    前記有機溶媒A及び前記有機溶媒Bの少なくとも一方が、前記延伸フィルムの前記表面にある前記熱可塑性樹脂に対する良溶媒であり、
    前記複層フィルムの前記延伸フィルム内に、前記有機溶媒A及び前記有機溶媒Bの少なくとも一方が浸透した溶媒浸透層が形成されていて、
    前記複層フィルムの測定波長590nmにおける面内レターデーションRe、前記複層フィルムのヘイズHz、前記複層フィルムの厚みd、及び、前記溶媒浸透層の厚みtが、下記式(1)〜(3):
    0.00470<Re/d<0.00900 (1)
    0.5%<Hz<5% (2)
    200nm<t<500nm (3)
    を満たす、複層フィルムの製造方法。
  2. 前記有機溶媒A及び前記有機溶媒Bの一方が、前記延伸フィルムの前記表面にある前記熱可塑性樹脂に対する良溶媒であり、
    前記有機溶媒A及び前記有機溶媒Bの他方が、前記延伸フィルムの前記表面にある前記熱可塑性樹脂に対する貧溶媒である、請求項1に記載の複層フィルムの製造方法。
  3. 前記熱可塑性樹脂が、シクロオレフィン重合体を含む、請求項1又は2に記載の複層フィルムの製造方法。
  4. 前記第一工程における前記有機溶媒A及び前記有機溶媒Bの合計量100%に対する、前記有機溶媒Aの重量割合Sa、及び、
    前記第一工程における前記有機溶媒A及び前記有機溶媒Bの合計量100%に対する、前記有機溶媒Bの重量割合Sbが、下記式(4)及び(5):
    75%≧Sa≧50% (4)
    50%≧Sb≧25% (5)
    を満たす、請求項1〜3のいずれか一項に記載の複層フィルムの製造方法。
  5. 前記製造方法が、前記第一工程以後、前記第二工程の前に、前記塗工液の層が露点温度Trの雰囲気に晒される第三工程を含み、
    前記第一工程における前記塗工液の液温T、及び、前記第三工程における露点温度Trが、下記式(6)及び(7):
    15℃>T−Tr>0℃ (6)
    30℃>T>20℃ (7)
    を満たす、請求項1〜4のいずれか一項に記載の複層フィルムの製造方法。
  6. 熱可塑性樹脂で形成された延伸フィルムと、前記延伸フィルムの表面に形成された溶質又は当該溶質の反応生成物を含む層とを備える複層フィルムであって、
    前記溶質は、有機溶媒A及び有機溶媒Bを含む混合溶媒に溶解でき、
    前記有機溶媒A及び前記有機溶媒Bの少なくとも一方は、前記延伸フィルムの前記表面にある前記熱可塑性樹脂に対する良溶媒であり、
    前記延伸フィルムが、前記有機溶媒A及び前記有機溶媒Bの少なくとも一方を含む溶媒浸透層を含み、
    前記複層フィルムの測定波長590nmにおける面内レターデーションRe、前記複層フィルムのヘイズHz、前記複層フィルムの厚みd、及び、前記溶媒浸透層の厚みtが、下記式(1)〜(3):
    0.00470<Re/d<0.00900 (1)
    0.5%<Hz<5% (2)
    200nm<t<500nm (3)
    を満たす、複層フィルム。
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