JP6540636B2 - 高炉操業方法 - Google Patents

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Description

本発明は、高炉における吹抜けの兆候を検出する高炉操業方法に関する。
高炉操業においては、コークスや鉱石の原料の降下状態を管理することが重要であり、炉下部から一定量の熱風を送り、炉上部から安定的に原料を降下させて、熱バランスを保つことが必要である。高炉炉内では炉上部から装入された原料が下降する間に、段階的に昇温、還元、溶融等の各過程を経て全体の熱的バランスが保たれている。
このとき、高炉炉内では、堆積した原料の間隙を通り熱風が炉下部から上昇している。高炉の水平断面を考えると間隙の大きい部分には多くの熱風が上昇し、間隙の小さい部分では相対的に少ない熱風が上昇する。通常は、高炉の中心部側に比較的粗いコークスを多く装入し、炉壁部側に比較的細かい鉱石を多く装入することで安定して原料を下降させている。そして、高炉での生産性を高く維持するために、熱風の送風量を増加させて、より多くのコークスを燃焼させ、鉱石の昇温、還元、溶融の促進を図っている。
しかしながら、送風量を増加させ過ぎると高炉炉内を上昇する熱風の圧力と、高炉炉内の原料の荷重とのバランスが局所的に崩れる場合がある。バランスが崩れた部分では炉内のガスが原料を吹上げて上昇するという現象が発生することがある。このような現象は、吹抜けと呼ばれる。高炉炉内の原料は、高炉中心を軸として軸対象になるように装入されているが、コークスや鉱石の装入中の粒度変化を完全に防止することはできないので、原料の間隙を完全に軸対象とすることはできない。従って、上記のような吹抜けが高炉炉内の水平断面の一部分で生じることがある。
高炉炉内で吹抜けが発生すると、原料が昇温、還元といった過程を経ずに落下するので、炉下部の冷却を誘引する。また、熱風ガスが保有する熱エネルギーが利用されないまま炉外に放出されるので、高炉炉内の熱バランスがくずれ、高炉炉内が冷えて炉況不調を引き起こす原因になることが多い。
吹抜けの発生を検出するものとして、シャフト部に設置された圧力計にて圧力を測定し、圧力の変動に基いて吹抜けを検出することが知られている。また、特許文献1には、高炉のシャフト部に複数の音響センサ、または、振動センサを設け、当該センサの測定値が予め定められた閾値を超えた表面域の面積を推定し、当該面積のシャフト全展開面積に対する比率に応じて減風量を決定して減風する方法が開示されている。さらに、炉口部に設定された固定式温度計によって炉頂部のガス温度を測定することで、ガスの温度変化を、吹抜け発生の兆候として検出する方法も知られている。
特許第2970357号公報
高炉内の吹抜けが発生する場合、その端緒となるのは、高炉内を水平断面でみたときに炉内を上昇する熱風の圧力と原料の間隙の比較的小さな箇所での原料荷重のバランスが崩れることと考えられる。このため、この端緒を検知することで、早期に高炉の吹抜けの兆候を検出でき、そして、早期に対策することができると考えられる。
しかしながら、シャフト部に設置された圧力計、音響センサ、または、振動センサでは、炉壁の圧力変動しか検出できない。このため、これらのセンサを用いた方法では、炉壁部近傍の吹抜けの兆候を検出できたとしても、それ以外の部分の吹抜けの兆候を検出できない、もしくは、その検出が遅くなるという課題があった。また、固定式温度計を用いた方法では、温度計を設置する梁が原料を炉内へ装入したときの落下ルートと干渉するので、温度計の設置位置が限られる。さらに、炉頂部のガスから温度計への伝熱に時間がある程度必要である。このように、固定式温度計を用いた方法では、温度計の設置が限られ、温度計が設置できない部分は、ガス温度を把握することができず、さらに、温度計を設置できた部分においても、ガス温度の測定に時間がかかるので、早期に高炉の吹抜けの兆候を検出できない、という課題があった。
本発明は、上述した課題を鑑みてなされたものであり、その目的は、高炉の吹抜けの兆候を、早期に高精度に検出することにある。そして、高炉の吹抜けの兆候を検出した場合に、吹抜けの進行を抑制し早期に高炉内のガス流れの乱れを安定させることで、安定した高炉操業を実現させることにある。
このような課題を解決するための本発明の特徴は、以下の通りである。
(1)高炉炉口部の同一平面に設置された複数の超音波センサを用いて、炉口部平面内の複数の測定点の温度を測定し、前記複数の測定点のうち、関連する2以上の測定点の温度が所定時間に所定温度以上上昇した場合に、吹抜けの兆候があったと判断することを特徴とする、高炉操業方法。
(2)前記関連する2以上の測定点とは、予め定められた距離内にある2以上の測定点であることを特徴とする、(1)に記載の高炉操業方法。
(3)前記予め定められた距離は、前記炉口部平面の単位面積あたりの前記複数の測定点が少ない領域では長くし、前記炉口部平面の単位面積あたりの前記複数の測定点が多い領域では短くすることを特徴とする、(2)に記載の高炉操業方法。
(4)高炉炉口部の同一平面に設置された複数の超音波センサを用いて、炉口部平面内の複数の測定点の温度を測定し、前記複数の測定点の間の温度を補間することで前記炉口部平面内の温度分布を算出し、前記温度分布において所定時間に所定温度以上上昇した温度領域の面積が前記炉口部平面の面積に対して予め定められた割合以上である場合に、吹抜けの兆候があったと判断することを特徴とする、高炉操業方法。
(5)前記予め定められた割合は、前記炉口部平面の単位面積あたりの前記複数の測定点が少ない領域では大きくし、前記炉口部平面の単位面積あたりの前記複数の測定点が多い領域では小さくすることを特徴とする、(4)に記載の高炉操業方法。
(6)前記複数の超音波センサに加えて、複数の温度センサを用いて温度を測定することを特徴とする、(1)から(5)のいずれか1つに記載の高炉操業方法。
(7)前記吹抜けの兆候があったと判断された場合に、前記高炉の炉下部から送風する熱風の送風量を所定量低下させることを特徴とする、(1)から(6)のいずれか1つに記載の高炉操業方法。
本発明によれば、超音波センサを用いて炉口部平面内の複数の測定点の温度または温度分布を測定し、関連する2以上の測定点の温度変化、または、温度分布の変化に基づいて吹抜けの兆候を検出する。これにより、高炉の吹抜けの兆候を早期に高精度に検出できる。そして、高炉の吹抜けの兆候を検出した場合に、高炉の炉下部から送風する熱風の送風量を所定量低下させることで、吹抜けの進行を抑制するとともに早期に高炉内のガス流れの乱れを安定化させることができ、安定した高炉操業が実現できる。
本実施形態に係る高炉操業方法が実施できる超音波温度計測システム10の一例を示す。 炉口部平面内における温度分布の一例を示す。 炉口部平面内が特異な温度分布となった例を示す。 炉口部平面内における複数の測定点を示す。 炉口部平面内における複数の測定点を示す。 炉口部平面内における温度分布の差を示す。
上述したように、高炉炉内の中心部に比較的粗いコークスを多く装入し、炉壁部に比較的細かい鉱石を多く装入しているので、炉口部の水平方向断面のガス温度を考えると、通常は、炉中心部に高温ガスが流れ、炉壁方向に向けて徐々にガス温度が低下する。しかし、高炉内で吹抜けが発生すると、その端緒は、高炉内の一部分に熱風と原料荷重のバランスが崩れることにあるので、その部分では熱風が吹上げ、原料への伝熱が十分行われないまま炉頂へ吹き出す。このため、吹抜けが始まった部分のガス温度は急激に上昇する。
したがって、高炉の炉口部空間における水平面(以後、炉口部平面と記載する)の複数の測定点の温度を略連続的に測定することができれば、吹抜けが始まった部分のガス温度の上昇を早期に検出することができ、これにより、早期に高炉の吹抜けの兆候を検出できる。発明者らは、高炉炉口部の同一平面に設置された複数の超音波センサを用いて、炉口部平面内における複数の測定点の温度、および、炉口部平面内の温度分布が測定できることに着目し、これら複数の測定点または温度分布に所定の温度上昇が見られた場合に、吹抜けの兆候があったと判断することで、吹抜けの誤検知を抑制しながら、早期に高炉の吹抜けの兆候を検出できることを見出して本発明を完成させた。以下、発明の実施形態を通じて本発明を説明する。
図1は、本実施形態に係る高炉操業方法が実施できる超音波温度計測システム10の一例を示す。超音波温度計測システム10は、高炉30の炉口部に沿って同一平面上に等間隔で10個設けられた超音波センサ12と、処理装置14とを備える。超音波センサ12は、超音波を発信する発信機と、発信された超音波を受信する受信機とを有する。また、処理装置14は、制御部16と、表示部18と、格納部20とを有する。
処理装置14は、例えば、ワークステーションやパソコン等の汎用コンピュータである。制御部16は、例えば、CPU等であって、格納部20に保存されたプログラムやデータを用いて、超音波温度計測システム10の動作を制御し、所定の演算を実行する。表示部18は、例えば、LCDまたはCRTディスプレイ等である。格納部20は、例えば、更新記録可能なフラッシュメモリ、内蔵あるいはデータ通信端子で接続されたハードディスク、メモリーカード等の情報記録媒体およびその読み書き装置である。格納部20には、超音波温度計測システム10が有する種々の機能を実現するためのプログラムや、当該プログラム実行中に使用するデータ等が予め格納されている。
高炉操業中において、任意の超音波センサ12からの超音波を発信し、他の全ての超音波センサ12で当該超音波を受信する。超音波センサ12からの超音波の発信は、制御部16の制御によって、例えば、任意の超音波センサ12から時計回りに順番に繰り返し実行される。それぞれの超音波センサ12は、超音波を発信した発信時間、または、当該超音波を受信した受信時間を制御部16に出力する。
1つの発信時間に対応した9つの受信時間を9つのデータとし、これら9つのデータを1セットのデータとすると、制御部16は、10個の超音波センサ12から10セットのデータを取得する。制御部16は、予め、格納部20に格納されているそれぞれの超音波センサ12間の距離を読み出し、発信時間、受信時間および超音波センサ12間の距離を用いて、それぞれの超音波センサ12間の音速を算出する。音速は、炉口部空間の温度により変化するので、以下の(1)式によりそれぞれの超音波センサ12間の温度を算出できる。
C=331.5×((273+T)/273)・・・(1)
但し、(1)式において、Cは、超音波センサ12間の音速(m/s)であり、Tは、超音波センサ12間の温度(℃)である。なお、(1)式の計算において、より精度を上げるために、炉頂ガスの成分や圧力による補正を加えてもよい。
制御部16は、超音波センサ12間の温度を用いて、それぞれの超音波センサ12を接続した線が交差する複数の測定点の温度を算出する。制御部16は、例えば、複数の測定点の時間(温度の関数)と複数の測定点までの既知の距離とから算出される時間の和が、それぞれの超音波センサ12間の受信時間を再現できるように算出する。
超音波センサ12からの超音波の発信および受信は、精度を保持できる範囲内でなるべく短時間に行うことが好ましい。本実施形態においては、例えば、1つの超音波センサ12から超音波を4秒間発信しながら他の超音波センサ12で当該超音波を受信する。その後、2秒間インタバルを置き、他の一つの超音波センサ12からの超音波の発信とその他の一つの超音波センサ12以外の超音波センサによる受信を行う、ということを同様に繰り返す。図1に示した例においては、10個の超音波センサ12を備えるので、制御部16は、60秒ごとに炉口部平面内の複数の測定点の温度を算出することになる。
制御部16は、炉口部平面内の複数の測定点の温度を算出して、表示部18に炉口部平面内の温度を表示する。これにより、使用者は、炉口部平面内の温度を確認できる。また、制御部16は、上述した動作を繰り返し実行して炉口部平面内の温度を算出し、表示部18に表示させた炉口部平面内の温度を更新する。このようにして、超音波温度計測システム10は、炉口部平面内の温度を略連続的に測定する。
本実施形態において、超音波温度計測システム10は、10個の超音波センサ12を備える。1つの超音波センサ12から4秒間発信ながら他の超音波センサ12で当該超音波を受信し、その後2秒間インタバルをおくので、制御部16は、60秒間で90個のデータを取得する。しかしながら、90個のデータのうち、45個のデータは、同じ超音波センサ12間を逆に測定した重複するデータになる。すなわち、1回目の測定で得られる1セットのデータには重複するものはないが、2回目以降の測定から1セットのデータに含まれる前の測定と重複するデータが1つずつ増える。
このように、測定を繰り返すごとに重複するデータが増えるので、炉口部平面内の複数の測定点の温度を更新する場合においては、一部前のデータを用いて、30秒ごとに炉口部平面内の温度を更新することが好ましく、さらには、制御部16が1セットのデータを取得するごとに、すなわち、6秒ごとに炉口部平面内の温度を更新することがより好ましい。
また、制御部16は、炉口部平面内の複数の測定点の温度を用いて、炉口部平面内の温度分布を算出し、表示部18に炉口部平面内の温度分布を表示してもよい。制御部16は、例えば、複数の測定点の間の温度はその距離に比例して変化するとして測定点間の温度を補間し、炉口部平面内の温度分布を算出する。
図2は、炉口部平面内における温度分布の一例を示す。図2に示した温度分布は、安定した高炉操業が行なわれている場合の温度分布を示したものである。上述したように、高炉の中心部側に粗いコークスを装入し、炉壁部側に細かい鉱石を多く装入するので、高炉操業が安定している場合においては、図2に示したように、高炉の中心部には比較的高温のガスが流れ、炉壁部には比較的低温のガスが流れ、炉中心側と比較して炉壁側の温度が低くなる。一方、高炉炉内へのコークスや鉱石の原料の装入は、円周方向に均等になるように行っているが、装入中における原料の粒径変動等の影響もあって、炉中心軸に対して完全に軸対象なガス流れにはなっていないことが見てとれる。
高炉での生産性を上げる目的で送風量を増やすと、高炉炉内の上昇するガス量が増えるので、ガスの上昇する圧力と原料の荷重のバランスが崩れやすくなり、図3に示すような特異な温度差分布になることがある。図3は、炉口部平面内が特異な温度分布となった例を示す。
図3に示した例においては、60秒後に右上方向に300℃以上の高温の温度領域40が現れ、炉中心部に100℃以下の低温の温度領域42が発生している。高温の温度領域40では炉内から高温ガスが上昇し、いわゆる吹抜けが発生していると考えられる。この吹抜けの発生により、この部分にあった原料が吹上げられて中心部側に流れ込んだために、中心部の温度が低下していると考えられる。このように、吹抜けが発生すると炉口部平面内の一部分が高温になるので、制御部16によって略連続的に更新される炉口部平面内の温度を監視し、炉口部平面内の温度上昇を検出することで、早期に吹抜けの兆候を検出できることがわかる。
次に、吹抜けの兆候を検出する方法について説明する。まず、炉口部平面内の複数の測定点の温度変化から吹抜けの兆候を検出する方法を説明する。図4は、炉口部平面内における複数の測定点を示す。図4(a)は、炉口部平面全体を示す図であり、図4(b)は、その部分拡大図である。図4(b)において、測定点50、測定点52、測定点54が60秒後の測定で温度が50℃以上上昇した測定点であるとする。
制御部16は、炉口部平面内の複数の測定点の温度を算出すると、60秒前の炉口部平面内の複数の測定点の温度測定結果を用いて、60秒間で50℃以上温度が上昇した測定点50、測定点52、測定点54を特定する。制御部16は、特定した測定点50、測定点52、測定点54のそれぞれから予め定められた距離を半径とした円60、円62、円64を作成する。制御部16は、作成された円60、円62、円64のいずれかに他の50℃以上温度が上昇した測定点が少なくとも1つ含まれる、すなわち、予め定められた距離内に50℃以上温度が上昇した測定点が2以上ある場合に、吹抜けの兆候があった判断する。なお、本実施形態において60秒は、所定時間の一例であり、50℃は、所定温度の一例である。また、2以上の測定点が予め定められた距離内にあることは、関連する2以上の測定点であることの一例である。
図4(b)に示した例においては、測定点50を中心とした円60の中に、測定点52および測定点54が含まれる。また、測定点52を中心とした円62の中に、測定点50および測定点54が含まれる。さらに、測定点54を中心とした円64の中に、測定点50および測定点52が含まれる。このように、図4(b)に示した例においては、測定点50を中心とした円60の中に他の50℃以上温度が上昇した測定点52および測定点54が含まれるので、制御部16は、吹抜けの兆候があると判断して、表示部18に吹抜けの兆候がある旨を表示する。
なお、図4(b)に示した例においては、測定点50を中心とした円60の中に、測定点52および測定点54が含まれる例を示したが、測定点50を中心とした円60の中に、測定点52が含まれ、測定点54が含まれない場合であっても制御部16は、吹抜けの兆候があると判断する。また、仮に、測定点54を中心とする円64に測定点50および測定点52が含まれない場合であっても、測定点50を中心とした円60の中に、測定点52が含まれる場合には制御部16は、吹抜けの兆候があると判断する。
また、制御部16は、吹抜けの兆候があると判断した場合に、高炉の炉下部から送風する熱風の送風量を100Nm/min以上低下させる。これにより、高炉内における吹抜けの進行を抑制し、炉況を回復させ、早期にガス流れの乱れを安定させることができる。なお、なお、本実施形態において、100Nm/min以上は、送風量を低下させる所定量の一例である。また、送風量の低下量は、少なくとも100Nm/min以上であればよく、上昇した温度が高い場合には、100Nm/minよりも多く低下させてもよい。また、上記所定量を、変更前の送風量に対する減少割合で規定してもよく、例えば、1%以上としてもよい。ただし、本実施形態では、高炉内の部分的な吹抜け現象を早期に、兆候として把握することができるので、送風量の低下量を大きくし過ぎると炉内全体の圧力バランスを過剰に変更してしまう恐れもあるため、送風量の低下量は1000Nm/min以下、あるいは10%以下とすることが好ましい。
図5は、炉口部平面内における複数の測定点を示す。図5(a)は、炉口部平面全体を示す図であり、図5(b)は、その部分拡大図である。図5(b)において、測定点56、測定点58が30分の間に50℃以上温度が上昇した測定点であるとする。
図5(b)に示した場合において、制御部16は、図4(b)で説明したように、60秒間で50℃以上温度が上昇した測定点56、測定点58を特定し、測定点56、測定点58のそれぞれから予め定められた距離を半径とした円66、円68を作成する。なお、円66および円68の半径は、図4(b)における円60、円62、円64の半径と同じである。
図5(b)に示した例においては、測定点56を中心とした円66の中に、50℃以上温度が上昇した測定点58は含まれない。また、測定点58を中心とした円68の中に、50℃以上温度が上昇した測定点66は含まれない。このように、図5(b)に示した例においては、予め定められた距離内に50℃以上温度が上昇した測定点が2以上ないので、制御部16は、吹抜けの兆候がないと判断する。なお、制御部16は、吹抜けの兆候がないと判断した場合に、その旨を表示部18に表示してもよい。
このように、本実施形態では、予め定められた距離内に50℃以上温度が上昇した測定点が2以上のある場合に、制御部16は、吹抜けの兆候があると判断する。これにより、吹抜けの兆候がないのに、何らかの不具合で1つの測定点が高温になったとしても、そのことで吹抜けの兆候があると制御部16が誤検出することを回避し、高精度に高炉の吹抜けの兆候を検出できる。また、何らかの不具合で2以上の測定点が高温になった場合でも、それらの測定点が予め定められた距離内になければ、吹抜けの兆候があると誤検出することがない。
高炉の吹抜けが発生すると、吹抜け部から高温の熱風が吹き上げられ、その高温領域は徐々に広がる。このため、吹抜けの兆候としては近接した複数の測定点の温度が高温になる。このため、予め定められた距離内の2以上の測定点において50℃以上温度が上昇した場合に、吹抜けの兆候があると判断することで、制御部16は、吹抜けの誤検知を抑制しながら、早期に高炉の吹抜けの兆候を検出できる。
また、早期に高炉の吹抜けの兆候を検出した場合に、制御部16は、高炉の炉下部から送風する熱風の送風量を100Nm/min以上低下させる。これにより、吹抜けが進行し炉況が大幅に悪化する前に、高炉内のガス流れの乱れを安定させて炉況を回復できるので、減風期間は短くなり、減風による高炉の減産量を少なくできる。
なお、予め定められた距離は、以下に示す方法で予め定めてよい。本実施形態においては、複数の測定点を中心に円を作成し、当該円に他の測定点が含まれる最小の半径を求める。そして、炉口部平面におけるそれぞれの測定点で求められた最小の半径のうち、最大の値を予め定められた距離としてよい。このように、最大の値を予め定められた距離とすることで、予め定められた距離内に2つの測定点が含まれない状況を回避できる。
また、図1に示した超音波センサ12を10個設けた場合であって、上述した方法で予め定めた距離を定めると、最小の半径は、炉口部平面の単位面積あたりの測定点が多い炉壁部側の領域では小さい半径となる一方で、炉口部平面の単位面積あたりの測定点が少ない中心部側の領域では大きい半径となる。そのため、上述した方法に従うと、予め定められた距離は、これらの半径のうち最大の値とするので、予め定められた距離としては、炉中心側の領域に対応した大きい半径が採用される。
予め定められた距離を大きい半径にして、炉口部平面の単位面積あたりの測定点が多い炉壁部側の領域における吹抜けの兆候の有無を判断すると、半径が大きいので、ある測定点に近接する測定点だけでなく、近接しない他の測定点を含む円になり、近接した2つの測定点の温度上昇に基づいて吹抜けを検出できないおそれが生じる。このため、予め定められた距離を、炉口部平面の単位面積あたりの測定点の数が少ない領域では長くし、炉口部平面の単位面積あたりの測定点の数が多い領域では短くしてもよい。例えば、炉口部平面の単位面積あたりの測定点の数が少ない中心部側の領域と、炉口部平面の単位面積あたりの測定点の数が多い炉壁部側の領域とに分け、これらの領域のそれぞれで上述した方法を用いて予め定められた距離を決定する。このように、炉口部平面の単位面積あたりの測定点の数に基づいて予め定められた距離を決定することで、さらに誤検知を少なくし、高精度に高炉の吹抜けの兆候を検出できる。
次に、炉口部平面内の温度分布に基づいて高炉の吹抜けの兆候を検出する方法について説明する。図6は、炉口部平面内における温度分布の差を示す。図6において、温度領域44は、60秒間で50℃以上上昇した温度領域である。なお、図6に示す温度分布の差は、例えば、制御部16が測定した炉口部平面内における温度分布と、60秒前の炉口部平面内における温度分布とを用いて算出する。
本実施形態において、制御部16は、50℃以上上昇した温度領域を特定し、当該温度領域の面積を測定する。制御部16は、予め格納された炉口部平面の面積を示すデータを格納部20から読み出し、炉口部平面の面積に対する50℃以上上昇した温度領域の割合を算出する。制御部16は、当該割合が10%以上であった場合に、高炉の吹抜けの兆候があると判断する。なお、10%は、予め定められた割合の一例である。予め定められた割合は、炉口部平面の単位面積あたりの測定点の数によって定めてよく、炉口部平面の単位面積あたりの測定点の数が少ない領域では当該割合を大きくし、炉口部平面の単位面積あたりの測定点の数が少ない領域では割合を小さくしてよい。
図6に示した例において、温度領域44の面積は、炉口部平面の面積の15%である。このように、図6に示した例においては、50℃以上上昇した温度領域44の面積が10%以上であるので、制御部16は、高炉の吹抜けの兆候があると判断し、表示部18に高炉の吹抜けの兆候がある旨を表示する。
また、制御部16は、高炉の吹抜けの兆候があると判断した場合に、高炉の炉下部から送風する熱風の送風量を100Nm/min以上低下させる。これにより、高炉内における吹抜けの進行を抑制し、早期にガス流れの乱れを安定させて、炉況を回復できる。
一方、温度分布において温度が50℃以上上昇した温度領域の面積の割合が、炉口部平面の面積の10%以上でない場合、制御部16は、高炉の吹抜けの兆候はないと判断する。なお、制御部16は、高炉の吹抜けの兆候がないと判断した場合に、その旨を表示部18に表示してもよい。
吹抜けの兆候がないのに、何らかの不具合で局所的に高温部分が生じたとしても、他の部分は高温になっていないので、温度分布における高温部分の温度領域の面積は狭くなる。本実施形態において、制御部16は、温度分布において温度が50℃以上上昇した温度領域であって、当該温度領域の面積が炉口部平面の面積に対して10%以上である場合に、高炉に吹抜けの兆候があると判断する。これにより、何らかの不具合で局所的に高温部分が生じた場合に、吹抜けの兆候を誤検出することを回避できる。このように、温度分布における50℃以上上昇した温度領域の面積の割合が、炉口部平面の面積の10%以上である場合に高炉の吹抜けの兆候があると判断することで、制御部16は、吹抜けの兆候を誤検出することを回避し、高精度に吹抜けの兆候を検出できる。
また、このように、吹抜けの兆候を早期に検出した場合に、高炉30の炉下部から送風する熱風の送風量を100Nm/min以上低下させる。これにより、吹抜けが進行し炉況が大幅に悪化する前に、高炉30のガス流れの乱れを安定させて炉況を回復できるので、減風期間は短くなり、減風による減産量を少なくできる。
なお、本実施形態においては、制御部16が吹抜けの兆候があると判断した場合に、制御部16が高炉30の炉下部から送風する熱風の送風量を100Nm/min以上低下させる例を示したがこれに限られない。例えば、使用者が表示部18に表示された炉口部平面内の複数の測定点または温度分布を確認し、使用者が上述した方法に従って吹抜けの兆候の有無を判断し、吹抜けの兆候があると判断した場合に、使用者の操作によって高炉30の炉下部からの熱風の送風量を100Nm/min以上低下させてもよい。
また、本実施形態においては、超音波センサ12を用いて60秒ごとに炉口部平面内の温度を測定する例を示し、60秒間における炉口部平面内の温度変化に基づいて吹抜けの兆候の有無を判断する例を示した。しかしながら、30秒ごとに炉口部平面内の温度を算出する場合には、30秒間における炉口部平面内の温度変化に基づいて吹抜けの兆候の有無を判断してよい。
また、本実施形態においては、炉口部周面に超音波センサ12を設けて炉口部平面内の温度を測定する例を示したが、超音波センサに加えて固定式温度センサを複数設けてもよい。固定式の温度センサを炉口部平面内における複数の測定点がない位置に設けることで、炉口部平面内における温度測定位置を追加できる。これにより、炉口部平面内の温度をより詳細に測定でき、温度測定精度を向上できる。
また、本実施形態においては、超音波温度計測システム10が超音波センサ12を10個備える例を示したが、超音波センサ12の数は10個に限られず、少なくとも5個以上あればよい。さらに、超音波センサ12を高炉30の炉口部に沿って等間隔に設けた例を示したが、これに限られない。超音波センサ12を接続した線が交差する測定点の数を増やすことを目的として、超音波センサ12の設置間隔をそれぞれ変えてもよい。
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲に限定するものではない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者には明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
また、特許請求の範囲、明細書、および図面中に示した装置、システムおよび方法における動作の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるものでない限り、任意の順序で実現し得ることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書において、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
10 超音波温度計測システム
12 超音波センサ
14 処理装置
16 制御部
18 表示部
20 格納部
30 高炉
40 温度領域
42 温度領域
44 温度領域
50 測定点
52 測定点
54 測定点
56 測定点
58 測定点
60 円
62 円
64 円
66 円
68 円

Claims (4)

  1. 高炉炉口部の同一平面に設置された複数の超音波センサを用いて、前記複数の超音波センサのそれぞれを接続した線が交差する点である炉口部平面内の複数の測定点の温度を測定し、
    前記複数の測定点のうち、予め定められた距離内にある2以上の測定点の温度が所定時間に所定温度以上上昇した場合に、吹抜けの兆候があったと判断することを特徴とする、高炉操業方法。
  2. 高炉炉口部の同一平面に設置された複数の超音波センサを用いて、前記複数の超音波センサのそれぞれを接続した線が交差する点である炉口部平面内の複数の測定点の温度を測定し、前記複数の測定点の間の温度を補間することで前記炉口部平面内の温度分布を算出し、
    前記温度分布において所定時間に所定温度以上上昇した温度領域の面積が前記炉口部平面の面積に対して予め定められた割合以上である場合に、吹抜けの兆候があったと判断することを特徴とする、高炉操業方法。
  3. 前記複数の超音波センサに加えて、複数の温度センサを前記炉口部平面内における複数の測定点がない位置に設けて、前記複数の温度センサの設置位置の温度を測定し、
    前記複数の測定点に前記設置位置を追加することを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の高炉操業方法。
  4. 前記吹抜けの兆候があったと判断された場合に、前記高炉の炉下部から送風する熱風の送風量を所定量低下させることを特徴とする、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の高炉操業方法。
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