JP7307341B2 - 炉内ガス圧力の変動検知方法 - Google Patents

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Description

本発明は、高炉内におけるガス圧力の変動を検知することができる変動検知方法に関する。
高炉内のガス流を安定化させることは、高炉の安定操業を行う上で重要であるとともに、出銑量の安定供給や還元材比の抑制の観点からも重要である。ここで、特許文献1には、炉内の圧力変動を予知する方法が記載されている。
特許文献1では、高炉シャフト内の複数の測定点において炉内圧力を測定し、炉内圧力の時間変化率の最大値及び最小値の差を、炉内全体の圧力変動を予知する数値としている。また、炉内圧力の時間変化率の平均値及び最大値の差や、炉内圧力の時間変化率の平均値及び最小値の差を、炉内全体の圧力変動を予知する数値としている。そして、この圧力変動を予知する数値が閾値を超えるか否かに基づいて、炉内全体の圧力の変動を予知している。
特許第4336262号公報
特許文献1において、炉内圧力の時間変化率の最大値及び最小値の差を、圧力変動を予知する数値として用いる場合には、時間変化率が突発的に上昇したときの値が最大値となったり、時間変化率が突発的に低下したときの値が最小値となったりすることがある。このような瞬時値としての最大値や最小値は、炉内の実際の圧力変動から乖離した値となりやすいため、炉内の圧力変動を予知する上では改善の余地がある。
また、炉内圧力の時間変化率の平均値及び最大値の差、または、炉内圧力の時間変化率の平均値及び最小値を、圧力変動を予知する数値として用いる場合も同様に、瞬時値としての最大値や最小値を用いること、十分な時間にわたって圧力変動を観察しないことから、炉内の実際の圧力変動から乖離した値となりやすいため、炉内の圧力変動を予知する上では改善の余地がある。
本願第1の発明である炉内ガス圧力の変動検知方法は、高炉の炉周方向における複数の測定点で炉内のガス圧力を連続的に測定し、少なくとも時間標準偏差を用いて定義されるガス圧力変動指数が閾値よりも大きいとき、炉内のガス圧力が変動したことを検知する。時間標準偏差は、所定時間内で算出された複数の炉周標準偏差の標準偏差である。炉周標準偏差は、所定の炉高位置における炉周方向の複数の位置でのガス圧力の標準偏差である。
ガス圧力変動指数は、下記式(I)で表すことができる。
I=σc×σt ・・・(I)
上記式(I)において、Iはガス圧力変動指数であり、σcは炉周標準偏差であり、σtは時間標準偏差である。
ガス圧力変動指数は、時間標準偏差とすることができる。
ガス圧力変動指数は、下記式(II)で表すことができる。
I=Σσt/n ・・・(II)
上記式(II)において、Iはガス圧力変動指数であり、σtは時間標準偏差であり、nは、第2の所定時間Δt2に含まれる時間標準偏差の総数である。
ガス圧力変動指数は、下記式(III)で表すことができる。
I=Σ(σc×σt)/n ・・・(III)
上記式(III)において、Iはガス圧力変動指数であり、σcは炉周標準偏差であり、σtは時間標準偏差であり、nは、第3の所定時間Δt3に含まれる時間標準偏差の総数である。
ガス圧力変動指数は、下記式(IV)で表すことができる。
I=σca×σt ・・・(IV)
上記式(IV)において、Iはガス圧力変動指数であり、σcaは、炉周標準偏差を炉高方向の所定領域内に含まれる複数の炉高位置で算出したときにおいて、複数の炉高位置での炉周標準偏差を平均した平均値であり、σtは、平均値σcaに関する時間標準偏差であって、所定時間内で算出された複数の平均値σcaの標準偏差である。
ここで、所定領域としては、羽口から炉頂部までの領域とすることができる。また、所定領域としては、羽口から炉頂部までの領域を炉高方向で複数の領域に区画したときの最上部に位置する領域とすることができる。さらに、所定領域としては、羽口から炉頂部までの領域を炉高方向で複数の領域に区画したときの各領域とすることができる。ここで、複数の領域についてそれぞれ算出された複数のガス圧力変動指数のうち少なくとも1つが閾値よりも大きいとき、炉内のガス圧力が変動したことを検知することができる。
本願第2の発明である炉内ガス圧力の変動検知方法は、高炉の炉周方向における複数の測定点で炉内のガス圧力を連続的に測定し、所定の炉高位置における炉周方向の複数の位置でのガス圧力の標準偏差σcが第1閾値よりも大きく、かつ、所定時間内で算出された複数の標準偏差σcの標準偏差σtが第2閾値よりも大きいとき、炉内のガス圧力が変動したことを検知する。
本願第3の発明である炉内ガス圧力の変動検知方法は、高炉の炉高方向及び炉周方向における複数の測定点で炉内のガス圧力を連続的に測定し、同一の炉高位置における炉周方向の複数の位置でのガス圧力の標準偏差を炉高方向の所定領域内に含まれる複数の炉高位置で算出したときにおいて、複数の炉高位置での標準偏差を平均した平均値σcaが第1閾値よりも大きく、かつ、所定時間内で算出された複数の平均値σcaの標準偏差σtが第2閾値よりも大きいとき、炉内のガス圧力が変動したことを検知する。
本願第1の発明によれば、上述したガス圧力変動指数を定義し、ガス圧力変動指数が閾値よりも大きいことを判別することにより、ガス圧力の変動を検知することができる。
本願第2の発明によれば、標準偏差σcが第1閾値よりも大きく、かつ、標準偏差σtが第2閾値よりも大きいことを判別することにより、ガス圧力の変動を検知することができる。また、本願第3の発明によれば、平均値σcaが第1閾値よりも大きく、かつ、標準偏差σtが第2閾値よりも大きいことを判別することにより、ガス圧力の変動を検知することができる。
時間標準偏差σtを算出するための所定時間Δt1を説明する図である。 時間標準偏差σtを算出するための所定時間Δt1を説明する図である。 互いに異なる炉高位置に配置された複数の圧力センサを説明する概略図である。 所定の炉高位置において、炉周方向に配置された複数の圧力センサを説明する概略図である。 炉高位置及び炉周角度のそれぞれを座標軸とし、ガス圧力の分布を示す二次元画像データを示す図である。 炉内のガス圧力の変動を検知する処理を示すフローチャートである。 実炉の操業における平均炉周標準偏差σca及び時間標準偏差σtの関係と、ガス圧力変動指数が所定値(0.3または0.5)であるときのラインを示す図である。 炉周標準偏差σc及び時間標準偏差σt(所定時間Δt1が10分)によって定義されたガス圧力変動指数の経時変化を示す図である。 炉周標準偏差σc及び時間標準偏差σt(所定時間Δt1が60分)によって定義されたガス圧力変動指数の経時変化を示す図である。 時間標準偏差σt(所定時間Δt1が10分)によって定義されたガス圧力変動指数の経時変化を示す図である。 時間標準偏差σt(所定時間Δt1が10分)及び所定時間Δt2(10分)によって定義されたガス圧力変動指数の経時変化を示す図である。 時間標準偏差σt(所定時間Δt1が10分)及び所定時間Δt2(60分)によって定義されたガス圧力変動指数の経時変化を示す図である。 炉周標準偏差σc、時間標準偏差σt(所定時間Δt1が10分)及び所定時間Δt3(10分)によって定義されたガス圧力変動指数の経時変化を示す図である。 炉周標準偏差σc、時間標準偏差σt(所定時間Δt1が10分)及び所定時間Δt3(60分)によって定義されたガス圧力変動指数の経時変化を示す図である。 実炉の操業における平均炉周標準偏差σca及び時間標準偏差σtの関係と、平均炉周標準偏差σcaの閾値及び時間標準偏差σtの閾値のラインを示す図である。
高炉に装入された装入物(コークスや鉱石)の層の充填構造が変化すると、炉内のガス流が変動することにより、炉内のガス圧力が変化する。充填構造の変化としては、例えば、炉壁の付着物が脱落することなどによる炉壁状態の変化、装入物の性状の変化、装入物の粉化によって発生する粉体の増加、融着帯形状の変化が挙げられる。また、ガス流が変動することによって、充填構造がさらに変化することがある。上述した理由により、炉内における複数の測定点でのガス圧力を測定すれば、炉内のガス圧力の変動を検知することができる。
(第1実施形態)
本実施形態は、以下に説明するようにガス圧力変動指数Iを定義し、ガス圧力変動指数Iに基づいて、炉内のガス圧力の変動を検知するものである。具体的には、ガス圧力変動指数Iが予め定めた閾値Ithよりも大きいときには、炉内のガス圧力に変動が発生したことを検知することができる。また、ガス圧力変動指数Iが閾値Ith以下であるときには、炉内のガス圧力に変動が発生していないと判断することができる。なお、ここでいうガス圧力の変動とは、後述するように、炉内におけるガス流の異常に寄与するガス圧力の変動である。
ガス圧力変動指数Iは、下記式(1)によって定義することができる。
I=σc×σt ・・・(1)
上記式(1)において、σcは、所定の炉高位置における高炉の周方向(以下、炉周方向という)の複数の位置でのガス圧力の標準偏差(以下、炉周標準偏差という)である。炉高位置とは、高炉の高さ方向(以下、炉高方向という)における位置である。上述した所定の炉高位置は、高炉の羽口(熱風を吹き込む、いわゆる通常羽口)から炉頂部までの範囲内において、適宜決めることができる。例えば、ガス圧力が変動した場合に高炉の安定操業に対して影響を与えやすい位置を考慮して、所定の炉高位置を決めることができる。なお、炉周標準偏差σcの詳細については、後述する。
上記式(1)において、σtは、所定時間Δt1内における炉周標準偏差σcの標準偏差(以下、時間標準偏差という)であり、言い換えれば、所定時間Δt1内において炉周標準偏差σcが変動するときの標準偏差である。所定時間Δt1は、適宜決めることができるが、例えば、1~60分のうちの任意の時間とすることができる。なお、時間標準偏差σtの詳細については、後述する。
上記式(1)では、炉周標準偏差σc及び時間標準偏差σtを用いて、ガス圧力変動指数Iを定義しているが、これに限るものではない。ガス圧力変動指数Iは、少なくとも時間標準偏差σtを用いることによって定義することができる。以下、ガス圧力変動指数Iの他の定義について説明する。
第1の定義としては、ガス圧力変動指数Iを下記式(2)によって定義することができる。
I=σt ・・・(2)
上記式(2)によれば、時間標準偏差σtがガス圧力変動指数Iとなる。上記式(1)では、炉周標準偏差σc及び時間標準偏差σtの両方に着目しているが、時間標準偏差σtだけに着目して、ガス圧力変動指数Iを定義することもできる。なお、上述したように、時間標準偏差σtを算出するためには、炉周標準偏差σcを算出する必要がある。
第2の定義としては、ガス圧力変動指数Iを下記式(3)によって定義することができる。
I=Σσt/n ・・・(3)
上記式(3)において、nは、第2の所定時間Δt2に含まれる時間標準偏差σtの総数であり、Σσtは、所定時間Δt2内で算出された複数の時間標準偏差σtを積算した値(積算値)である。ガス圧力変動指数Iは、積算値Σσtを総数nで除算した値(すなわち、時間平均値)である。所定時間Δt2は、適宜決めることができるが、例えば、所定時間Δt2を10~120分のうちの任意の時間とすることができる。
第3の定義としては、ガス圧力変動指数Iを下記式(4)によって定義することができる。
I=Σ(σc×σt)/n ・・・(4)
上記式(4)において、nは、第3の所定時間Δt3に含まれる時間標準偏差σtの総数であり、Σ(σc×σt)は、所定時間Δt3内で算出された時間標準偏差σt及び炉周標準偏差σcの乗算値(複数)を積算した値(積算値)である。ガス圧力変動指数Iは、積算値Σ(σc×σt)を総数nで除算した値(すなわち、時間平均値)である。所定時間Δt3は、適宜決めることができるが、例えば、所定時間Δt3を10~120分のうちの任意の時間とすることができる。
第4の定義では、上記式(1)~(4)に示す炉周標準偏差σcの代わりに、複数の炉高位置における炉周標準偏差σcを平均した値(以下、平均炉周標準偏差という)を用いることができる。この場合には、上記式(1)~(4)で定義されるガス圧力変動指数Iは、下記式(5-1)~(5-4)によって定義される。
I=σca×σt ・・・(5-1)
I=σt ・・・(5-2)
I=Σσt/n ・・・(5-3)
I=Σ(σca×σt)/n ・・・(5-4)
上記式(5-1)~(5-4)において、σcaは、上述した平均炉周標準偏差である。σtは、所定時間Δt1内における平均炉周標準偏差σcaの標準偏差(以下、時間標準偏差という)であり、言い換えれば、所定時間Δt1内において平均炉周標準偏差σcaが変動するときの標準偏差である。なお、平均炉周標準偏差σca及び時間標準偏差σtの詳細については、後述する。
平均炉周標準偏差σcaは、下記式(6)によって表される。
σca=Σσc/N ・・・(6)
上記式(6)において、Σσcは、複数の炉高位置における炉周標準偏差σcの積算値であり、Nは、積算値Σσcの算出に用いられる炉高位置の総数である。総数Nは予め決めておくことができる。
積算値Σσcの算出に用いられる炉高位置としては、羽口から炉頂部までの領域(以下、全体領域という)内で設定されたすべての炉高位置とすることができる。例えば、羽口から炉頂部までの高さが20m程度の高炉において、略1.5m間隔で炉高位置が設定される場合、全体領域についてΣσcの算出に用いられる炉高位置の総数Nは14個となる。
一方、積算値Σσcの算出に用いられる炉高位置としては、全体領域のうち、炉高方向の一部の領域(以下、部分領域という)内に含まれる炉高位置とすることができる。
全体領域を炉高方向において複数の部分領域に区画すれば、各部分領域に含まれる複数の炉高位置での炉周標準偏差σcを用いて、平均炉周標準偏差σcaを算出することができる。ここで、炉高方向における各部分領域の距離が等しくなるように、複数の部分領域を区画することができる。部分領域の数は、適宜決めることができるが、例えば、部分領域の数を3つ以上とすることができる。例えば、全体領域についてΣσcの算出に用いられる炉高位置の総数Nが14個であるとき、高炉の最上端(炉頂圧力)と最下端(送風圧力)を除いた12個の炉高位置について、炉高方向を上部・中部・下部の3つに等分すると、各部分領域についてΣσcの算出に用いられる炉高位置の総数Nは4個となる。
複数の部分領域を設定する場合には、すべての部分領域のそれぞれにおいて、平均炉周標準偏差σcaを算出することもできるし、一部(1つ又は複数)の部分領域だけにおいて、平均炉周標準偏差σcaを算出することもできる。複数の部分領域において、平均炉周標準偏差σcaを算出する場合には、部分領域毎にガス圧力変動指数Iが算出される。高炉の操業においては、原料の装入を適切に行うためにシャフト上部におけるガス圧力の変動を検知することが重要であることを考慮すれば、高炉の最も上方の最上部に位置する部分領域において、平均炉周標準偏差σcaを算出することが好ましい。
次に、時間標準偏差σtの算出方法について説明する。上述したように、時間標準偏差σtは、所定時間Δt1内における炉周標準偏差σc又は平均炉周標準偏差σcaから算出されるが、この算出方法としては、例えば以下の2つの方法が挙げられる。
第1の算出方法では、図1に示すように、所定時間Δt1が経過するたびに時間標準偏差σtを算出することができる。後述するように、ガス圧力は、圧力センサによって所定のサンプリング周期で測定されるため、所定の算出周期で(例えば、ガス圧力が測定されるたびに)、炉周標準偏差σcや平均炉周標準偏差σcaが算出される。所定時間Δt1は、圧力センサのサンプリング周期よりも長い時間に設定されるため、所定時間Δt1内においては、複数の炉周標準偏差σcや、複数の平均炉周標準偏差σcaが算出される。したがって、所定時間Δt1内に含まれる複数の炉周標準偏差σcに基づいて時間標準偏差σtを算出したり、所定時間Δt1内に含まれる複数の平均炉周標準偏差σcaに基づいて時間標準偏差σtを算出したりすることができる。
第2の算出方法では、図2に示すように、時間軸に対して所定時間Δt1を時間δtだけずらしながら、各所定時間Δt1において、時間標準偏差σtを算出することができる。ここで、時間δtは所定時間Δt1よりも短い時間に設定されるため、前後の2つの所定時間Δt1は、一部において互いに重なる時間帯を含む。第2の算出方法では、所定時間Δt1の設定方法が第1の算出方法と異なるだけであり、所定時間Δt1毎に時間標準偏差σtを算出する方法は、上述した第1の算出方法と同じである。
所定時間Δt1は、上述したように適宜設定することができるが、例えば、1~60分の範囲内の時間とすることができる。所定時間Δt1が短すぎると、時間標準偏差σtの算出において、圧力センサの測定誤差の影響が出やすくなることがあり、ガス圧力変動指数Iに基づいてガス圧力の変動を検知する上で悪影響を与えることがある。一方、所定時間Δt1が長すぎると、時間標準偏差σtの算出が遅れるとともに、ガス圧力変動指数Iの算出が遅れるため、ガス圧力変動指数Iに基づいてガス圧力の変動を検知することが遅れてしまう。これらの点を考慮して、所定時間Δt1を設定することができる。
次に、上述した炉周標準偏差σcについて、詳細に説明する。炉周標準偏差σcは、同一の炉高位置に設けられた複数の圧力センサによって測定されたガス圧力に基づいて算出することができる。
図3に示すように、高炉1の同一の炉高位置には、炉周方向において複数の圧力センサ2が配置されている。ここで、圧力センサ2が配置された位置がガス圧力の測定点である。また、図4に示すように、同一の炉高位置にある複数の圧力センサ2は、炉周方向において等間隔に配置することができる。同一の炉高位置に配置される圧力センサ2の数は、適宜決めることができる。なお、同一の炉高位置とは、厳密に同一の炉高位置にある場合のみに限らず、設備上その他の理由による誤差も含む範囲である。また、炉周方向において等間隔とは、厳密に等間隔の場合のみに限らず、設備上その他の理由による誤差も含む範囲である。
圧力センサ2は、所定のサンプリング周期(例えば、1秒)において炉内のガス圧力を連続的に測定し、この測定結果を検知装置10に出力する。圧力センサ2により測定されるガス圧力の単位は、例えばkPaである。検知装置10は、圧力センサ2によって測定されたガス圧力に基づいて、炉周標準偏差σc又は平均炉周標準偏差σcaを算出したり、時間標準偏差σtを算出したりするとともに、上記式(1)~(4),(5-1)~(5-4)のいずれかに基づいてガス圧力変動指数Iを算出する。
炉周標準偏差σcを算出するときにおいて、圧力センサ2の測定値に異常が認められる場合には、この測定値は、炉周標準偏差σcの算出から除外することができる。例えば、特定の圧力センサ2の測定値が、他の圧力センサ2の測定値に対して所定値以上ずれているときには、特定の圧力センサ2の測定値に異常があると判別することができる。この判別処理は、検知装置10によって行うことができる。
炉周標準偏差σcを算出するときには、圧力センサ2の測定値だけを用いることもできるし、圧力センサ2が配置されていない位置でのガス圧力を推定した上で、この推定値を用いることもできる。ガス圧力の推定は、例えば、特許第3814143号公報、特許第4094245号公報や特許第4094290号公報に記載された技術を用いることができる。具体的には、炉周方向をX軸とし、炉高方向をZ軸とした二次元平面(X-Z平面)において、複数の圧力センサ2が配置された複数の地点と、各圧力センサ2によって測定されたガス圧力(測定値)とに基づいて、空間補間を行うことにより、圧力センサ2が配置されていない位置でのガス圧力を推定することができる。この推定処理は、検知装置10によって行うことができる。
上述したようにガス圧力を推定することにより、図5に示す二次元画像データを生成することができる。図5では、複数の等圧線が示されており、複数の黒点は、圧力センサ2が配置された地点を示している。
図5において、縦軸は無次元化した炉高位置[-]を示し、横軸は炉周方向における基準位置からの角度(以下、炉周角度という)θ[度]である。炉周角度θは、図4に示すように、基準点Pr及び炉中心Oを結ぶ仮想線Lrと、炉壁の任意の点Pn及び炉中心Oを結ぶ仮想線Lnとのなす角度である。炉周角度θは0~360度の範囲となり、点Pnが点Prと一致しているときに炉周角度θが0度となる。図5に示す炉高位置について、最下端でのガス圧力は送風圧力に相当し、最上端でのガス圧力は炉頂圧力に相当する。
図5に示す二次元画像データは、炉高位置及び炉周角度θのそれぞれにおいて、複数の分割線(点線)によって分割されている。分割線の数は、例えば、炉高位置及び炉周角度θのそれぞれにおいて、10以上とすることができる。分割線の交点に圧力センサ2が配置されていない場合であっても、分割線の交点におけるガス圧力を推定することにより、分割線の交点におけるガス圧力を用いて、炉周標準偏差σcを算出することができる。
同様に、分割線の交点におけるガス圧力を用いて、平均炉周標準偏差σcaを算出することができる。
炉内において、炉周方向における充填構造のバランスが良く、かつ充填構造が安定的に保たれている状態(以下、理想状態という)では、ガスは高炉の炉下部から炉頂部に向かって理想的に流れる。このとき、同一の炉高位置において、ガス圧力は、炉周角度θにかかわらず略等しくなり、炉周方向における圧力分布は一定となる。したがって、炉周標準偏差σcは、ゼロ又はゼロに近い値となる。
また、充填構造が理想状態にあるとき、羽口が設けられた位置において、ガス圧力が最も高くなる。そして、炉頂部に向かうにしたがい、装入物層の圧力損失によってガス圧力が低下し、炉頂部において、ガス圧力が最も低くなる。このように、充填構造が理想状態にあるときには、炉全体におけるガス圧力の偏差は、炉高方向におけるガス圧力の偏差だけに依存することになる。
炉内のガス流の異常は、以下に説明する現象によって発生するため、本実施形態のようにガス圧力の変動を検知することにより、ガス流の異常が発生する前に対策を取ることが可能になる。
まず、炉内では、炉周方向における充填構造の均一性(例えば、装入物の空隙率分布や粒子径分布など)が崩れることがある。炉周方向における充填構造の均一性が崩れたことを起因として、充填構造の変化が、高炉の下方から上方に向かって経時的に推移する。結果として、炉全体における充填構造が変化して、ガス流の異常が発生する。なおここで、炉周方向における充填構造の均一性が崩れていても、この均一性が崩れた状態が維持されていれば、ガス流の異常は発生しないと考えられる。
炉周方向における充填構造の均一性が崩れると、同一の炉高位置におけるガス圧力は、炉周角度θに応じて異なり、炉周標準偏差σcが上昇することになる。また、炉周方向における充填構造の均一性が崩れたことに起因して、炉周方向の圧力分布が変化し、さらにガス流速分布が変化することなどに起因して、高炉の下方から上方に向かって充填構造が経時的に推移する。よって、炉高位置に応じてガス圧力が変動し、平均炉周標準偏差σcaが時間の推移とともに変動することになる。そして、充填構造の変化が経時的に進行すれば、時間標準偏差σtが上昇することになる。
炉周方向の充填構造が変化してガス流速分布・圧力分布の変化が発生するまでの過程においては、上述した炉周標準偏差σc(又は平均炉周標準偏差σca)及び時間標準偏差σtが変動する。このため、これらから算出されるガス圧力変動指数I(少なくとも時間標準偏差σtを用いて算出されるガス圧力変動指数I)に着目すれば、ガス圧力の変動を検知して、ガス流の異常の発生を早期に検知することができる。ガス流の異常が発生するまでの過程においては、ガス圧力変動指数Iが高くなるため、ガス圧力変動指数Iを閾値Ithと比較することにより、ガス流の異常に寄与するガス圧力の変動を早期かつ定量的に検知することができる。
ここで、時間標準偏差σtが大きくても、炉周標準偏差σc又は平均炉周標準偏差σcaが小さければ、高炉の操業への悪影響は少ないこともあり得る。したがって、ガス圧力の変動を検知する上では、時間標準偏差σtだけでなく、炉周標準偏差σc又は平均炉周標準偏差σcaも考慮することが好ましい。
次に、ガス圧力の変動を検知する方法について、図6に示すフローチャートを用いて説明する。図6に示す処理は、図3及び図4に示す検知装置10によって行われる。
ステップS101では、高炉1に設けられた複数の圧力センサ2を用いて、ガス圧力を測定する。ステップS102では、ステップS101で測定された複数のガス圧力から炉周標準偏差σcを算出する。ここで、炉周標準偏差σcを算出すれば、平均炉周標準偏差σcaも算出することができる。
ステップS103では、所定時間Δt1が経過したか否かを判別する。例えば、検知装置10に設けられたタイマの計測結果に基づいて、所定時間Δt1が経過したか否かを判別することができる。所定時間Δt1が経過していなければ、ステップS101の処理に戻り、ステップS101及びステップS102の処理が繰り返される。所定時間Δt1が経過しているとき、ステップS104において、時間標準偏差σtを算出する。
ステップS105では、ステップS102で算出された炉周標準偏差σcと、ステップS104で算出された時間標準偏差σtを上記式(1)に代入することにより、ガス圧力変動指数Iを算出する。なお、上述したとおり、上記式(1)の代わりに、上記式(2)~(4)、(5-1)~(5-4)のいずれかを用いて、ガス圧力変動指数Iを算出することもできる。上記式(5-1)~(5-4)に基づいてガス圧力変動指数Iを算出するときには、平均炉周標準偏差σcaが用いられる。
ここで、時間標準偏差σtは所定時間Δt1が経過するたびに算出されるが、所定時間Δt1内には複数の炉周標準偏差σcが存在する。ガス圧力変動指数Iを算出するときには、所定時間Δt1内に含まれる複数の炉周標準偏差σcの平均値を用いることができる。また、別の方法として、所定時間Δt1内に含まれる複数の炉周標準偏差σcのうち、任意の1つの炉周標準偏差σc(例えば、直近に算出された炉周標準偏差σc)を用いることができる。
ステップS106では、ステップS105で算出したガス圧力変動指数Iが予め定めた閾値Ithよりも大きいか否かを判別する。閾値Ithは、過去の操業実績から定めることができる。上述したように、複数の部分領域のそれぞれにおいて、ガス圧力変動指数Iを算出する場合があるが、この場合には、各部分領域で算出されたガス圧力変動指数Iが閾値Ithよりも大きいか否かを判別する。
ガス圧力変動指数Iが閾値Ith以下であるときには、図6に示す処理を終了する。この場合には、炉内のガス圧力の変動が発生していないと判断することになる一方、ガス圧力変動指数Iが閾値Ithよりも大きいときには、ステップS107において、炉内のガス圧力の変動が発生していることを検知する。
ここで、複数の部分領域のそれぞれにおいて、ガス圧力変動指数Iを算出した場合には、少なくとも1つのガス圧力変動指数Iが閾値Ithよりも大きいときには、ステップS107において、炉内のガス圧力の変動が発生していることを検知する。また、すべてのガス圧力変動指数Iが閾値Ith以下であるときには、炉内のガス圧力の変動が発生していないと判断して、図6に示す処理を終了する。このとき、閾値Ithとして、複数の部分領域のそれぞれについて異なる値を設定しておくことができる。
図6に示す処理は、炉内のガス圧力の変動が発生していることを検知しているだけであるが、ガス圧力の変動が発生していることを検知したときには、作業者に対して警告を行うことができる。この警告は、作業者に対してガス流の改善を促すための警告であり、具体的な警告内容は適宜決めることができる。また、警告の手段としては、例えば、音声を出力したり、ディスプレイでの表示を行ったりすることができる。
ガス流を改善させる処理としては、例えば、減風が挙げられる。過度の減風を行うと、高炉の生産効率が低下してしまうおそれがあるが、本実施形態では、ガス圧力の変動が発生し、将来においてガス流の異常が発生することを予測したときに予め減風を行うことができるため、過度の減風を行う必要が無くなる。ガス圧力の変動を検知したタイミング、言い換えれば、ガス流の異常が実際に発生するよりも前のタイミングにおいて、予め減風を行うようにすれば、ガス流の異常が実際に発生してから減風を行うよりも減風量を抑えることができる。したがって、過度の減風によって炉況が大きく変動してしまうことを回避することが可能となる。
図7には、ある期間の実炉の操業において、圧力センサ2によって測定されたガス圧力から算出された平均炉周標準偏差σca及び時間標準偏差σtの関係を示す。図7において、横軸は平均炉周標準偏差σcaであり、縦軸は時間標準偏差σtである。平均炉周標準偏差σcaは、高炉1の羽口から炉頂部までの領域(全体領域)に含まれる、すべての炉高位置での炉周標準偏差σcを平均した値である。なお、図7においては、34個の圧力センサの1分間で測定されたガス圧力(kPa)を用いて、二次元画像データを炉高方向及び炉周方向にそれぞれ14分割する分割線の交点についてガス圧力を推定した。所定時間Δt1は10分とし、1分(上記時間δt)ずつずらしながら時間標準偏差σtを算出した。
図7において、実線は、ガス圧力変動指数Iが0.5であるときの平均炉周標準偏差σca及び時間標準偏差σtの関係を示し、点線は、ガス圧力変動指数Iが0.3であるときの平均炉周標準偏差σca及び時間標準偏差σtの関係を示す。
ガス圧力変動指数Iが0.5よりも大きいときには、言い換えれば、平均炉周標準偏差σca及び時間標準偏差σtの関係(図7中のプロット)が図7の領域A(右上がり斜線のハッチング領域)に含まれるときには、多くの場合において実際に減風を行った。すなわち、後に減風を行う必要があるようなガス流の異常が発生した。
一方、ガス圧力変動指数Iが0.3よりも大きく、かつ0.5以下であるときには、言い換えれば、平均炉周標準偏差σca及び時間標準偏差σtの関係(図7中のプロット)が図7の領域B(右下がり斜線のハッチング領域)に含まれるときには、直後に減風を行う必要がなかったものの、炉内の充填構造が大きく変動していたことが推定された。ガス圧力変動指数Iが0.3以下であるときには、言い換えれば、平均炉周標準偏差σca及び時間標準偏差σtの関係(図7中のプロット)が図7の領域C(白抜きの領域)に含まれるときには、炉内の充填構造があまり変動していないと推定された。
上述したように、ガス圧力変動指数Iに基づいて、炉内の充填構造の変化を推定することができ、ガス圧力変動指数Iが0.5よりも大きいときには、操業を継続することによって、減風を要するガス流の異常が発生したと考えられる。したがって、ガス圧力変動指数Iが0.5よりも大きいときには、ガス圧力の変動を検知することにより、早めに減風などの対策を取ることが可能になる。
以下、実炉を用いてガス圧力変動指数Iを算出した結果について、図8~図14を用いて説明する。図8~図14において、縦軸はガス圧力変動指数Iであり、炉高方向を3等分したときの下部、すなわち炉下部に含まれる4個の炉高位置についての平均炉周標準偏差σcaを用いた。なお、ガス圧力の単位はkPaとした。また、図8~図14において、横軸は時間[分]であり、ある同一期間(約10時間)の高炉操業についての解析結果である。
図8には、上記式(5-1)によって定義されるガス圧力変動指数Iの経時変化を示す。ここで、時間標準偏差σtを算出するための所定時間Δt1は10分とし、閾値Ithは0.5とした。ガス圧力変動指数Iの算出に用いられる炉周標準偏差σcaとしては、所定時間Δt1内に含まれる複数の炉周標準偏差σcaの平均値を用いた。
図9には、上記式(5-1)によって定義されるガス圧力変動指数Iの経時変化を示す。ここで、時間標準偏差σtを算出するための所定時間Δt1は60分とし、閾値Ithは0.5とした。ガス圧力変動指数Iの算出に用いられる炉周標準偏差σcaとしては、所定時間Δt1内に含まれる複数の炉周標準偏差σcaの平均値を用いた。
図10には、上記式(5-2)によって定義されるガス圧力変動指数Iの経時変化を示す。ここで、時間標準偏差σtを算出するための所定時間Δt1は10分とし、閾値Ithは0.05とした。
図11には、上記式(5-3)によって定義されるガス圧力変動指数Iの経時変化を示す。ここで、時間標準偏差σtを算出するための所定時間Δt1は10分とし、第2の所定時間Δt2も10分とし、nを10個とした。閾値Ithは0.05とした。
図12には、上記式(5-3)によって定義されるガス圧力変動指数Iの経時変化を示す。ここで、時間標準偏差σtを算出するための所定時間Δt1は10分とし、第2の所定時間Δt2は60分とし、nを60個とした。閾値Ithは0.05とした。
図13には、上記式(5-4)によって定義されるガス圧力変動指数Iの経時変化を示す。ここで、時間標準偏差σtを算出するための所定時間Δt1は10分とし、所定時間Δt3も10分とし、nを10個とした。閾値Ithは0.5とした。ガス圧力変動指数Iの算出に用いられる炉周標準偏差σcaとしては、所定時間Δt1内に含まれる複数の炉周標準偏差σcaの平均値を用いた。
図14には、上記式(5-4)によって定義されるガス圧力変動指数Iの経時変化を示す。ここで、時間標準偏差σtを算出するための所定時間Δt1は10分とし、所定時間Δt3は60分とし、nを60個とした。閾値Ithは0.5とした。ガス圧力変動指数Iの算出に用いられる炉周標準偏差σcaとしては、所定時間Δt1内に含まれる複数の炉周標準偏差σcaの平均値を用いた。
図8から図14を比較すると、ガス圧力変動指数Iの具体的な挙動は互いに異なるものの、ガス圧力変動指数Iが閾値Ithよりも大きくなるタイミングや、ガス圧力変動指数Iが閾値Ithよりも大きくなっている継続時間は、ほぼ同様である。したがって、上記式(5-1)~(5-4)によって定義されるガス圧力変動指数Iのいずれを用いても、炉内のガス圧力の変動を検知することができる。上記式(1)~(4)によって定義されるガス圧力変動指数I用いる場合についても同様である。
図8及び図9は、上記式(5-1)によって定義されるガス圧力変動指数Iの経時変化を示すが、所定時間Δt1が互いに異なっている。ここで、図8に示すように、所定時間Δt1を短くすることにより、ガス圧力変動指数Iの細かな挙動を把握することができる。また、図9に示すように、所定時間Δt1を長くすることにより、ガス圧力変動指数Iの大まかな挙動を把握することができる。このため、上記式(5-1)によって定義されるガス圧力変動指数Iについては、把握しようとするガス圧力変動指数Iの挙動を考慮して、所定時間Δt1を決めることができる。
上記式(5-1)によって定義されるガス圧力変動指数Iを用いる場合、時間標準偏差σtだけでなく、平均炉周標準偏差σcaの大きさも考慮することができる点において好ましい。
図11及び図12は、上記式(5-3)によって定義されるガス圧力変動指数Iの経時変化を示すが、所定時間Δt2(すなわちn)が互いに異なっている。ここで、図11に示すように、所定時間Δt2を短くすることにより、ガス圧力変動指数Iの細かな挙動を把握することができる。また、図12に示すように、所定時間Δt2を長くすることにより、ガス圧力変動指数Iの大まかな挙動を把握することができる。このため、上記式(5-3)によって定義されるガス圧力変動指数Iについては、把握しようとするガス圧力変動指数Iの挙動を考慮して、所定時間Δt2を決めることができる。
図13及び図14は、上記式(5-4)によって定義されるガス圧力変動指数Iの経時変化を示すが、所定時間Δt3(すなわちn)が互いに異なっている。ここで、図13に示すように、所定時間Δt3を短くすることにより、ガス圧力変動指数Iの細かな挙動を把握することができる。また、図14に示すように、所定時間Δt3を長くすることにより、ガス圧力変動指数Iの大まかな挙動を把握することができる。このため、上記式(5-4)によって定義されるガス圧力変動指数Iについては、把握しようとするガス圧力変動指数Iの挙動を考慮して、所定時間Δt3を決めることができる。
上記式(5-1)~(5-2)によって定義されるガス圧力変動指数Iは、経時的な変動が大きかったり、閾値をまたいで値が上下したりと、変動検知や操業アクション判断のタイミングが難しい場合があるが、上記式(5-3)~(5-4)によって定義されるガス圧力変動指数Iは時間平均値を用いるため、変動検知や操業アクション判断がより行いやすい。
(第2実施形態)
本実施形態は、第1実施形態について述べた炉周標準偏差σc(又は平均炉周標準偏差σca)及び時間標準偏差σtに基づき、炉内のガス圧力の変動を検知するものである。具体的には、炉周標準偏差σcが予め定めた閾値σc_th(第1閾値)よりも大きく、かつ、炉周標準偏差σcの時間標準偏差σtが予め定めた閾値σt_th(第2閾値)よりも大きいときには、炉内のガス圧力の変動を検知する、炉内ガス圧力の変動検知方法である。また、平均炉周標準偏差σcaが予め定めた閾値σca_th(第1閾値)よりも大きく、かつ、平均炉周標準偏差σcaの時間標準偏差σtが予め定めた閾値σt_th(第2閾値)よりも大きいときには、炉内のガス圧力の変動を検知する、炉内ガス圧力の変動検知方法である。炉周標準偏差σc(又は平均炉周標準偏差σca)及び時間標準偏差σtについては、第1実施形態で述べた通りであるので、説明を省略する。
図15には、実炉の操業において、圧力センサ2によって測定されたガス圧力から算出された平均炉周標準偏差σca及び時間標準偏差σtの関係を示す。図15の横軸及び縦軸は、図7と同じく、それぞれ平均炉周標準偏差σca及び時間標準偏差σtである。平均炉周標準偏差σca及び時間標準偏差σtの算出の詳細は図7について述べた通りであり、図中のプロットも図7に示すデータと同じものである。
図15には、平均炉周標準偏差σcaの閾値σca_thと、時間標準偏差σtの閾値σt_thを示す。図15において、閾値σca_thは1.8であり、閾値σt_thは0.28である。
本実施形態においても、炉周標準偏差σc(又は平均炉周標準偏差σca)及び時間標準偏差σtをそれぞれ閾値と比較判定することにより、第1実施形態と同様に、炉内のガス圧力の変動を検知することができる。すなわち、平均炉周標準偏差σca及び時間標準偏差σtの関係(図15中のプロット)が図15の領域D(右上がり斜線のハッチング領域)に含まれるときには、多くの場合において実際に減風を行った。すなわち、後に減風を行う必要があるようなガス流の異常が発生した。したがって、平均炉周標準偏差σcaが閾値σca_thよりも大きく、かつ、時間標準偏差σtが閾値σt_thよりも大きいときには、ガス圧力の変動を検知することにより、早めに減風などの対策を取ることが可能になる。
1:高炉、2:圧力センサ、10:検知装置

Claims (11)

  1. 高炉の炉周方向における複数の測定点で炉内のガス圧力を連続的に測定し、
    所定の炉高位置における炉周方向の複数の位置でのガス圧力の標準偏差である炉周標準偏差について、所定時間内で算出された複数の前記炉周標準偏差の標準偏差である時間標準偏差を求め、
    少なくとも前記時間標準偏差を用いて定義されるガス圧力変動指数が閾値よりも大きいとき、炉内のガス圧力が変動したことを検知することを特徴とする炉内ガス圧力の変動検知方法。
  2. 前記ガス圧力変動指数は、下記式(I)で表されることを特徴とする請求項1に記載の炉内ガス圧力の変動検知方法。
    I=σc×σt ・・・(I)
    上記式(I)において、Iは前記ガス圧力変動指数であり、σcは前記炉周標準偏差であり、σtは前記時間標準偏差である。
  3. 前記ガス圧力変動指数は、前記時間標準偏差であることを特徴とする請求項1に記載の炉内ガス圧力の変動検知方法。
  4. 前記ガス圧力変動指数は、下記式(II)で表されることを特徴とする請求項1に記載の炉内ガス圧力の変動検知方法。
    I=Σσt/n ・・・(II)
    上記式(II)において、Iは前記ガス圧力変動指数であり、σtは前記時間標準偏差であり、nは、第2の所定時間Δt2に含まれる前記時間標準偏差の総数である。
  5. 前記ガス圧力変動指数は、下記式(III)で表されることを特徴とする請求項1に記載の炉内ガス圧力の変動検知方法。
    I=Σ(σc×σt)/n ・・・(III)
    上記式(III)において、Iは前記ガス圧力変動指数であり、σcは前記炉周標準偏差であり、σtは前記時間標準偏差であり、nは、第3の所定時間Δt3に含まれる前記時間標準偏差の総数である。
  6. 前記ガス圧力変動指数は、下記式(IV)で表されることを特徴とする請求項1に記載の炉内ガス圧力の変動検知方法。
    I=σca×σt ・・・(IV)
    上記式(IV)において、Iは前記ガス圧力変動指数であり、σcaは、前記炉周標準偏差を炉高方向の所定領域内に含まれる複数の炉高位置で算出したときにおいて、前記複数の炉高位置での前記炉周標準偏差を平均した平均値であり、σtは、前記平均値σcaに関する前記時間標準偏差であって、所定時間内で算出された複数の前記平均値σcaの標準偏差である。
  7. 前記所定領域は、羽口から炉頂部までの領域であることを特徴とする請求項6に記載の炉内ガス圧力の変動検知方法。
  8. 前記所定領域は、羽口から炉頂部までの領域を炉高方向で複数の領域に区画したときの最上部に位置する領域であることを特徴とする請求項6に記載の炉内ガス圧力の変動検知方法。
  9. 前記所定領域は、羽口から炉頂部までの領域を炉高方向で複数の領域に区画したときの各領域であり、前記複数の領域についてそれぞれ算出された複数のガス圧力変動指数のうち少なくとも1つが前記閾値よりも大きいとき、炉内のガス圧力が変動したことを検知することを特徴とする請求項6に記載の炉内ガス圧力の変動検知方法。
  10. 高炉の炉周方向における複数の測定点で炉内のガス圧力を連続的に測定し、
    所定の炉高位置における炉周方向の複数の位置でのガス圧力の標準偏差が第1閾値よりも大きく、かつ、所定時間内で算出された複数の前記標準偏差の標準偏差が第2閾値よりも大きいとき、炉内のガス圧力が変動したことを検知することを特徴とする炉内ガス圧力の変動検知方法。
  11. 高炉の炉高方向及び炉周方向における複数の測定点で炉内のガス圧力を連続的に測定し、
    同一の炉高位置における炉周方向の複数の位置でのガス圧力の標準偏差を炉高方向の所定領域内に含まれる複数の炉高位置で算出したときにおいて、前記複数の炉高位置での前記標準偏差を平均した平均値が第1閾値よりも大きく、かつ、所定時間内で算出された複数の前記平均値の標準偏差が第2閾値よりも大きいとき、炉内のガス圧力が変動したことを検知することを特徴とする炉内ガス圧力の変動検知方法。
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