JP3487203B2 - 高炉炉況予知方法 - Google Patents

高炉炉況予知方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は炉頂圧力及び送風流
量がそれぞれ所定の値に制御される高炉の炉況予知方
法、特に送風圧力又は炉内圧力の時系列データによる異
常炉況の予知に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、この種の高炉の異常炉況予知方法
としては、特公昭60−41123号公報、特開平3−
126806号公報、「鉄と鋼 72〔10〕(198
6)高炉異常炉況予知システムの開発 P1545」等
に開示されているものがある。これらの予知方法は、炉
体に設置された多くのセンサ情報について、オペレータ
が目視で判断できるパターン(レベルが高い、円周方向
の差が拡大、上昇傾向等)で管理し、設定基準値又は理
論値との比較により炉の状態を判定し、全センサの判定
結果を総合評価することにより炉況の良し悪しを判断す
るものである。
【0003】また、特開平10−60510号公報にお
いても「高炉異常予知方法」が提案されており、この予
知方法は、送風圧力又は炉内圧力を検出し、その時系列
データを時間周波数解析し、特定の周波数付近を監視す
ることにより異常炉況を事前予知するものであり、セン
サ信号の時間推移を目視で監視しただけでは判断できな
い時系列信号の周波数分布を評価している。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】上記の特公昭60−4
1123号公報、特開平3−126806号公報、「鉄
と鋼 72〔10〕(1986) 高炉異常炉況予知シ
ステムの開発 P1545」等においては、オペレータ
が目視で判断できるパターン(レベルが高い、円周方向
の差が拡大、上昇傾向等)をシステム化したものであ
り、目視で判断できないような時系列データ列に存在す
る微妙な変化(時間領域で観察した場合の変化)までは
扱っていない。このため、異常炉況の検出は、人間が判
断できる程度にパターンが大きく変化した場合に限られ
る。また、パターン化には多くのセンサ情報が必要であ
り、センサが十分に設置されていない高炉(海外の高炉
に多い)に対しては適用できない、という問題点があっ
た。
【0005】また、特開平10−60510号公報の予
知方法は、上記の問題点を解決しているが、ノイズによ
る影響を受けやすく、また、周波数の上昇傾向及びパワ
ーの変動を相対評価できない、という問題点がある。
【0006】本発明は、このような問題点を解決するた
めになされたものであり、高炉の異常炉況を適切に予知
することを可能にした高炉炉況予知方法を提供すること
を目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明に係る高炉炉況予
知方法は、炉頂圧力及び送風流量がそれぞれ所定の値に
制御される高炉において、送風圧力又は炉内圧力を検出
し、その時系列データを時間周波数解析し、その解析結
果から、基準となる周波数分布に対する周波数分布の偏
位及びパワー変動指数の少なくとも1つを、特定の周波
数におけるパワースぺクトルからなる線形微分方程式か
ら求めて、その求められたものに基づいて高炉の炉況を
予知する。例えば前記の偏位又はパワー変動指数のいず
れか一方又は両方が所定の範囲を外れたときに炉況が悪
化したと判断する。また、前記の偏位又はパワー変動指
数を最小2乗法により求めることで、ノイズによる誤検
出を防ぐ。
【0008】図2は炉況安定時と炉況悪化時の送風圧力
信号の時系列データを周波数解析した結果を示した図で
ある。炉況悪化により周波数分布のエネルギーが周波数
上昇方向にシフトし、全体のパワーも変動していること
が分かる。
【0009】図1は図2の周波数分布の偏位及びパワー
変動を評価する方法を示した説明図である。図1におい
て、実線が変化前のパワースペクトル、一点鎖線が一定
時間経過後のパワースペクトルを表している。特定の周
波数f0について考えると、一定時間経過後のパワース
ペクトルの変化量は、パワースペクトルが周波数上昇方
向へシフトすることによる変化量ΔP1と、パワー全体
が変動することによる変化量ΔP2とに分けて考えられ
る。
【0010】パワースペクトルが実線から点線の位置に
βだけシフトすると、周波数f0のパワーはΔP1減少
する。三角形a,b,cに着目すると、a点での傾きを
用いて周波数シフト量βとΔP1との関係を次の(1)
式のように近似することができる。次に、点線のパワー
スペクトルが比率α(パワー変動指数)だけ変動する
と、αとΔP2の関係は次の(2)式のようになる。こ
れらの(1)式及び(2)式から(3)式及び(4)式
が得られ、更に(5)式が得られる。
【0011】
【数式1】
【0012】上記の(5)式は、特定の周波数f0にお
けるパワースペクトルPの線形微分方程式であるから、
オンライン最小2乗法を用いて逐次α,βを同定するこ
とができる。この逐次同定されるαとβを監視すること
で炉況の悪化を予知できる。同様な処理を特定の周波数
f0の以外の着目すべき周波数について行い、各時刻に
おいて着目すべき周波数毎のαとβを加算した結果を監
視してもよい。
【0013】なお、高炉が不調になっときに、上述のよ
うに、炉内圧力の周波数分布やパワーが変動するのは、
図3に示される炉内現象に起因する。即ち、図3は高炉
が不調になったときの説明図であり、 原料性状悪化、原料層厚分布の乱れ、炉壁不着物生
成、炉内残滓量の変動、棚吊り(スリップ)等が起きる
と、 高空隙領域、局所的過剰ガス流、局所的圧損低下が起
きる。そして、 局所的にガス流速が増大し、限界値を超過する場合が
起きる。 それによって吹き抜けが起きる。 という炉内現象が起きて、炉内圧力の周波数分布やパワ
ーが変動する。
【0014】
【発明の実施形態】図4は本発明の対象となっている高
炉の炉内を示した説明図である。図示のように、高炉1
0の炉内にはコークスと鉱石が層状に装入されて、コー
クス層11及び鉱石層12が交互に形成される。炉内原
料は炉下部のコークス燃焼と鉱石の溶融により、安定時
は一定の降下速度で炉下部に向かって降下している。炉
内の温度分布は炉下部で約2000度、炉上部で数百度
というように下部に向かって上昇する。約1000〜1
100度の領域では鉱石が溶融しはじめ、通気抵抗がコ
ークス層の数百倍になる溶融帯13が存在する。このコ
ークス層11・鉱石層12の層厚分布や、溶融帯13の
形状、特に溶融帯13のコークス層のスリット14の数
は炉内通気抵抗に大きく影響する。高炉は炉頂圧力一
定、送風流量一定制御を行っているため、炉内通気抵抗
の変化は送風圧力センサ15の出力やシャフト圧力セン
サ16の出力、即ち送風圧力やシャフト圧力によって管
理できる。
【0015】図5は本発明の実施形態に係る高炉炉況予
知方法が適用されたシステムの構成を示すブロック図で
ある。高炉10は、上述のように、その炉頂圧力及び送
風流量がそれぞれ一定に制御されているものとし、これ
らの制御は従来から行われていることなのでその詳細は
省略する。そして、この高炉10には、図示のように、
送風圧力を検出する送風圧力センサ15及びシャフト圧
力を検出するシャフト圧力センサ16がそれぞれ取り付
けられており、データ収集部25はこれらのセンサ1
5,16にて検出されたデータを定周期に収集して蓄積
する。時間周波数解析部26では、収集蓄積された圧力
データの最新値から過去一定期間内のデータの時間周波
数解析を行う。
【0016】更に、周波数解析部26は、時間周波数解
析されたデータP(t,f)に基づいて、次の(21)
式の演算を行ってパワースペクトルのパワー変動率αと
周波数シフト量βとを求める。このα,βは次のように
して導かれる。
【0017】ここでは、図1に示される変数を用いて
α、βの算出手順を説明する。図1の実線は変化前の関
数、点aの座標を(Xa,Ya)とすると、 Xa=f0、 Ya=P(t、f0)=ΔP1+ΔP2+P(t+1、f0)…(11) となる。ここで、Yaは前回測定したf0のパワースペ
クトルの値として求められている。一点鎖線は変化後の
関数、点dの座標を(Xd,Yd)とすると、 Xd=f0、 Yd=P(t+1、f0) …(12) となる。ここで、Ydは今回測定したf0のパワースペ
クトルの値として求められている。
【0018】図1の点線は過渡的に変化したと仮想した
関数であり、点bの座標を(Xb,Yb)とすると、 Xb=f0、 Yb=ΔP2+P(t+1、f0) …(13) となる。ここで、Ybはまだ不明の値である。先ず、三
角形△abcを考える。辺bcの傾きを近似的に点cに
おける微係数とすると、 ΔP1=β×dP/df …(14) となる。ここで、dP/dfは点cにおける微係数、即
ち点aにおける微係数であり、既知の値である。
【0019】次に、Yb(=ΔP2+P(t+1、f
0))を考える。これは、点線で表わされる変化前の関
数の X=f0 における値であるが、これはまた次の
式で表される。 Yb=P(t、f0)−△P1 …(15) さて、Ybがαの変化率で変動してYdになったので、 Yd=P(t+1、f0)=α×Yb …(16) の関係が成立する。
【0020】上記(16)式に(11)式と(15)式
の関係式を代入して、 α×(P(t、f0)−△P1)=P(t+1、f0) =P(t、f0)−△P1−△P2 …(17) (17)式を得る。そして、この(17)式より △P2=(1−α)×(P(t、f0)−△P1) …(18) を得る。さて、実線が一点鎖線に変化したとして、 dP/dt=P(t+1、f0)−P(t、f0) =−(ΔP1+ΔP2) …(19) を得る。この(19)式に(14)式と(18)式を代
入して、 P(t+1、f0)−P(t、f0) =−β×dP/df−(1−α)×(P(t、f0)−β×dP/df) =α×P(t、f0)−αβ×dP/df−P(t、f0)…(20) を得る。更に、この(20)式を変形して、 P(t+1、f0)=α×P(t、f0)−αβ×dP/df …(21) を得る。この(21)式では、P(t+1、f0)、P
(t、f0)、dP/dfは既知である。従って、各測
定周期ごとにこれらの値を(21)式に代入して、最小
2乗法によってαとβを求めることができる。
【0021】図6は吹き抜け10時間前までのパワース
ペクトルの周波数シフト量βの推移を示した図である。
また、図7は同様に吹き抜け10時間前までのパワース
ペクトルのパワー変動率αの推移を示した図である。な
お、いずれも0〜1の間で正規化してある。β,αは吹
き抜けの前で大きく変化しており、これらの値を監視し
て所定の範囲外になったとき吹き抜けの発生を予知する
ことができる。
【0022】
【発明の効果】以上のように本発明によれば、時系列デ
ータを時間周波数解析してその解析結果に基づいて高炉
の炉況を予知するようにしており、通常オペレータが行
っている推移図の目視監視等による方法では判別できな
いような時系列データ列に存在する異常炉況前の微妙な
変化までを検出できる。また、本発明によれば、炉体に
設置された多くのセンサ情報から空間的パターン(円周
方向分布、半径方向分布、垂直方向分布等)を求めてこ
れらの変化を監視する必要もないため、例えばセンサ情
報として送風圧力1点あれば検出可能であり、センサが
十分に設置されていない高炉(海外の高炉に多い)にも
適用可能である。また、本発明によれば、各周波数毎の
パワースペクトルの変化を周波数分布の偏位とパワー変
動とによる効果に分けて相対評価できるため、周波数に
よって前述のどちらが炉況と相関があるかを判断するこ
ともできる。また、本発明によれば、監視項目を最小2
乗法で算出するためノイズによる誤検出を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明においてパワースペクトルの周波数分布
及びパワーの変動を評価するための方法をした説明図で
ある。
【図2】本発明において炉況安定時と炉況悪化時の送風
圧力信号の時系列データを周波数解析した結果を示した
図である。
【図3】高炉が不調になっときの炉内現象の説明図であ
る。
【図4】本発明の対象となっている高炉の炉内を示した
説明図である。
【図5】本発明の実施形態に係る高炉炉況予知方法が適
用されたシステムの構成を示すブロック図である。
【図6】吹き抜け10時間前までのパワースペクトルの
周波数シフト量βの推移を示した図である。
【図7】吹き抜け10時間前までのパワースペクトルの
パワー変動率αの推移を示した図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平10−60510(JP,A) 特開 平8−166330(JP,A) 特開 昭61−254853(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C21B 5/00 323

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 炉頂圧力及び送風流量がそれぞれ所定の
    値に制御される高炉において、送風圧力又は炉内圧力を
    検出し、その時系列データを時間周波数解析し、その解
    析結果から、基準となる周波数分布に対する周波数分布
    の偏位及びパワー変動指数の少なくとも1つを、特定の
    周波数におけるパワースぺクトルからなる線形微分方程
    式から求めて、その求められたものに基づいて高炉の炉
    況を予知することを特徴とする高炉炉況予知方法。
  2. 【請求項2】 前記偏位又はパワー変動指数のいずれか
    一方又は両方が所定の範囲を外れたときに炉況が悪化し
    たと判断することを特徴とする請求項1記載の高炉炉況
    予知方法。
  3. 【請求項3】 前記偏位又は前記パワー変動指数を最小
    2乗法により求めることを特徴とする請求項1又は2記
    載の高炉炉況予知方法。
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