JP4094245B2 - 高炉操業における操業監視方法、装置、コンピュータプログラム、及びコンピュータ読み取り可能な記録媒体 - Google Patents
高炉操業における操業監視方法、装置、コンピュータプログラム、及びコンピュータ読み取り可能な記録媒体 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、高炉の操業中、その操業状態を監視し、吹き抜け等の操業異常を予測する方法、その実施に使用する装置、コンピュータプログラム、及びコンピュータ読み取り可能な記録媒体に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、高炉の操業異常等の監視並びに予測方法に関するものとしては、特開平5−156328号公報、特開平11−140520号公報等に開示されているものがある。これらの監視並び予測方法は、いずれも、各センサの高炉設備上の設置位置情報を反映することなく各センサからの計測データを収集し、予め設定しておく基準値又は簡易的な物理モデルによる閾価との比較により操業状態の監視並びに操業異常を予測するものである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、本発明が対象とする高炉というプロセスは、動特性を有する分布定数系のプロセスとして取り扱うべき対象である。したがって、高炉設備上に分布をもって設置されている複数の各種センサの計測データは互いに独立して収集し、評価してよいものではなく、各々のセンサが取り付けられている高炉設備上の設置位置に関連づけられて収集し、評価されるべきものである。
【0004】
従来の方式では、このような各センサの設置位置を計測データに関連づけて収集し、評価しておらず、その結果、高炉の操業状態の監視並びに予測の精度が低いという問題があった。
【0005】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであり、上記問題を解決し、高炉の操業状態の監視並びに操業異常の予測を可能とすることを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明の高炉操業における操業監視方法は、高炉設備上に複数設置されたセンサから出力される測定対象量の計測データ、及び該複数設置されたセンサそれぞれの設置位置に基づいて、各センサの設置位置を反映させた2次元平面又は2次元平面で構成される3次元立体の表面であり、複数の座標軸を有する所定の面に前記計測データの分布状態を表して、高炉の操業状態を監視する方法であって、
(ア)前記複数設置されたセンサそれぞれから出力される計測データを所定のサンプリング周期で収集するデータ収集手順と、
(イ)予め設定されている前記センサそれぞれの設置位置情報に基づき、各センサ及び該センサによる計測データを、前記センサの設置位置に対応する所定の面上の地点に配置する手順と、
(ウ)所定の面の各地点において、各座標軸方向について前記計測データの差分を計算して計測データの各座標軸方向の空間的勾配を得て、該座標軸方向の空間的勾配を成分とする計測データの空間的勾配のベクトルを算出する手順と、
(エ)前記空間的勾配のベクトルの各座標軸方向の成分に基づき、所定の面上において、各座標軸方向についての空間的勾配が同値な任意の等値線を算出する手順と、
(オ)所定の面上の任意の点における各座標軸方向についての空間的勾配を、該点を間にもつ前記等値線から補間して算出する手順と、
(カ)前記任意の点において、前記各座標軸方向ついての空間的勾配を成分として持つ空間的勾配のベクトルを算出する手順と、
(キ)該ベクトルを所定の面上のそれぞれの点に配置してベクトル表現する手順と、からなることを特徴とする。
【0007】
また、本発明の高炉操業における操業監視方法の他の特徴とするところは、さらに、前記所定の面上の任意の点における、前記各座標軸方向についての空間的勾配を成分として持つ空間的勾配のベクトルについて、所定の面に任意に指定した領域内において該ベクトル又はベクトル成分の総和、最大値、最小値、平均値、及び分散のうちの少なくとも一つをベクトル特徴情報として算出する手順と、該ベクトル特徴情報を予め設定した監視条件と比較する手順と、からなる点にある。
【0008】
また、本発明の高炉操業における操業監視方法の他の特徴とするところは、さらに、前記データ収集手順で収集された前記複数設置されたセンサそれぞれから出力された測定対象量の計測データについて、前記所定の面上における同値な任意の等値線を算出する手順と、該等値線によって形成する任意の図形領域内において前記空間的勾配のベクトル又はベクトル成分の総和、最大値、最小値、平均値、及び分散のうちの少なくとも一つをベクトル特徴情報として算出する手順と、該ベクトル特徴情報を予め設定した監視条件と比較する手順と、からなる点にある。
【0009】
本発明の別の高炉操業における操業監視方法は、高炉設備上に複数設置されたセンサから出力される測定対象量の計測データ、及び前記複数設置されたセンサそれぞれの設置位置に基づいて、各センサの設置位置を反映させた2次元平面又は2次元平面で構成される3次元立体の表面であり、複数の座標軸を有する所定の面に前記計測データの分布状態を表して、高炉の操業状態を監視する方法であって、
(a)前記複数設置されたセンサそれぞれから出力される計測データを所定のサンプリング周期で収集するデータ収集手順と、
(b)予め設定されている前記センサそれぞれの設置位置情報に基づき、各センサ及び該センサによる計測データを、前記センサの設置位置に対応する所定の面上の地点に配置する手順と、
(c)所定の面上の任意の地点において、該点の計測データの現時刻での値と、現時刻から前の所定の1つ又は複数の時刻での値とに基づいて、計測データの時間的勾配を算出する手順と、
(d)前記所定の面上の任意の地点における計測データの時間的勾配に基づき、所定の面上において、計測データの時間的勾配が同値な任意の等値線を算出する手順と、
(e)所定の面上における前記計測データの時間的勾配が同値となる任意の等値線を、モニタの画面上にコンタ表現する手順と、からなることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の別の高炉操業における操業監視方法の他の特徴とするところは、前記(b)〜(d)の手順を所定の周期で繰り返し、さらに、前記所定の面上において、前記計測データの時間的勾配が同値な等値線に基づき、所定の閾値となる等値線によって形成される図形を得て、該図形の個数、位置、面積、重心及び図形の縦横比率のいずれかの図形の特徴情報、並びに、該図形内における計測データの時間的勾配の最大値、最小値、平均値及び分散のいずれかの特徴情報のうち少なくとも一つの特徴情報の時間的推移を所定の画像処理によって算出する手順と、該特徴情報の時間的推移と予め設定した監視条件とを比較する手順と、からなる点にある。
【0012】
本発明の別の高炉操業における操業監視方法は、高炉設備上に複数設置されたセンサから出力される測定対象量の計測データ、及び該複数設置されたセンサそれぞれの設置位置に基づいて、各センサの設置位置を反映させた2次元平面又は2次元平面で構成される3次元立体の表面であり、複数の座標軸を有する所定の面に前記計測データの分布状態を表して、高炉の操業状態を監視する方法であって、
(ア)前記複数設置されたセンサそれぞれから出力される計測データを所定のサンプリング周期で収集するデータ収集手順と、
(イ)予め設定されている前記センサそれぞれの設置位置情報に基づき、各センサ及び該センサによる計測データを、前記センサの設置位置に対応する所定の面上の地点に配置する手順と、
(ウ)所定の面の各地点において、各座標軸方向について前記計測データの差分を計算して計測データの各座標軸方向の空間的勾配を得て、該座標軸方向の空間的勾配を成分とする計測データの空間的勾配のベクトルを算出する手順と、
(エ)前記空間的勾配のベクトルの各座標軸方向の成分に基づき、所定の面上において、各座標軸方向についての空間的勾配が同値な任意の等値線を算出する手順と、
(オ)所定の面上の任意の点における各座標軸方向についての空間的勾配を、該点を間にもつ前記等値線から補間して算出する手順と、
(ク)所定の面上の任意の点において、各座標軸方向についての空間的勾配の現時刻の値と、現時刻から所定の1つ又は複数の時間前の値とに基づいて、空間的勾配の時間的勾配を逐次演算する手順と、
(ケ)所定の面上の任意の点において、前記各座標軸方向についての空間的勾配の時間的勾配に基づき、所定の面上において前記空間的勾配の時間的勾配が同値な任意の時間的勾配の等値線を算出する手順と、
(コ)所定の面上の任意の点において、各座標軸方向についての空間的勾配の時間的勾配を、該点を間にもつ前記時間的勾配の等値線から補間して算出する手順と、
(サ)前記任意の点それぞれにおいて、前記各座標軸方向ついての空間的勾配値の時間的勾配を、成分として持つ空間的勾配値の時間的勾配のベクトルを算出する手順と、
(シ)該ベクトルを所定の面上のそれぞれの点に配置してベクトル表現する手順と、
からなることを特徴とする。
【0013】
また、本発明の別の高炉操業における操業監視方法の他の特徴とするところは、上記の高炉操業における操業監視方法において、さらに、前記所定の面上の任意に指定した領域内において前記空間的勾配値の時間的勾配のベクトルの総和、最大値、最小値、平均値、及び分散のうちの少なくとも一つのベクトル特徴情報を算出する手順と、これらのベクトル特徴情報を予め設定した監視条件と比較する手順と、からなる点にある。
【0014】
また、本発明の別の高炉操業における操業監視方法の他の特徴とするところは、さらに、前記地点それぞれに配置された計測データに基づき、前記所定の面上において、計測データが同値となる任意の等値線を算出する手順と、所定の面上で、前記計測データが同値となる等値線に基づき、所定の閾値により等値線で形成される任意の図形領域内において、前記空間的勾配の時間的勾配のベクトル又はベクトル成分の総和、最大値、最小値、平均値、及び分散のうちの少なくとも一つをベクトル特徴情報として算出する手順と、該ベクトル特徴情報を予め設定した監視条件と比較する手順と、からなる点にある。
また、前記(イ)〜(コ)の手順を所定の周期で繰り返し、さらに、前記所定の面上において、前記空間的勾配値の時間的勾配が同値となる等値線に基づき、所定の閾値となる等値線で形成される図形を得て、該図形について、該図形の個数、位置、面積、重心及び縦横比率のうちのいずれかの図形の特徴情報、並びに、該図形内における空間的勾配値の時間的勾配の最大値、最小値、平均値及び分散のうちのいずれかのベクトル特徴情報の少なくとも一つを、該特徴情報の時間的推移を所定の画像処理によって算出する手順と、該特徴情報の時間的推移と予め設定した監視条件とを比較する手順と、からなるようにしてもよい。
【0015】
さらに、本発明の高炉操業における操業監視方法の他の特徴とするところは、計測データ、空間的勾配、又は時間的勾配の等値線を算出する手順は、2次元平面に均等又は不均等な位置関係に配置されるデータに対して、内角の一つが180度を越えない四角形要素を選択し、その対角線の交点に4頂点のデータの平均値を設定して、この交点を頂点にもつ三角形要素を用いて等値線を探索し描画する手法である点にある。
【0016】
本発明の高炉操業における操業監視装置は、高炉設備上に複数設置されたセンサから出力される測定対象量の計測データ、及び該複数設置されたセンサそれぞれの設置位置に基いて、各センサの設置位置を反映させた2次元平面又は2次元平面で構成される3次元立体の表面であり、複数の座標軸を有する所定の面に前記計測データの分布状態を表して、高炉の操業状態を監視する操業監視装置であって、
前記複数設置されたセンサそれぞれから出力される計測データを所定のサンプリング周期で収集するデータ収集手段と、
予め設定されている前記センサそれぞれの設置位置情報に基づき、各センサからのサンプリングされた計測データを前記センサの設置位置に対応する所定の面上の地点に配置し、各地点に配置された計測データに基づき、所定の面上において計測データが同値となる任意の等値線を算出する等値線算出手段と、
該算出した等値線に基づき、所定の面上の任意の点における前記測定対象量の各座標軸方向の空間的勾配、時間的勾配及び各座標軸方向の空間的勾配の時間的勾配を算出する勾配算出手段と、
前記等値線によって形成する図形、又は、該図形の個数、位置、面積、重心及び縦横比率のいずれかである図形の特徴情報を画像処理によって算出し、また前記勾配算出手段において算出した、各座標軸方向の空間的勾配又は各座標軸方向の空間的勾配の時間的勾配に基づいて、所定の数学的演算によって、該各勾配を成分とするベクトル又はベクトル成分の総和、最大値、最小値、平均値、及び分散のいずれかであるベクトル特徴情報を算出する図形及びベクトル特徴情報算出手段と、
前記図形及びベクトル特徴情報算出手段で得られた図形又は図形の特徴情報、ベクトル特徴情報と、予め設定した図形又は図形の特徴情報、ベクトル特徴情報とを所定の時間間隔で比較する操業を監視する操業監視手段と、を備えたことを特徴とする。
【0017】
また、本発明の高炉操業における操業監視装置の他の特徴とするところは、前記等値線算出手段、勾配算出手段、図形及びベクトル特徴情報算出手段は、所定の時間間隔で計算して、前記図形又は図形の特徴情報、ベクトル特徴情報を出力するものであり、さらに、該図形又は図形の特徴情報、ベクトル特徴情報に基づいて、図形又は図形の特徴情報、ベクトル特徴情報の時間的推移を算出する図形及びベクトル特徴情報推移算出部と、該図形又は図形の特徴情報、ベクトル特徴情報の時間的推移と予め設定した監視条件とを比較することによって、吹き抜けを含む操業異常を予測する操業予測手段とを備えた点にある。
【0018】
また、本発明の高炉操業における操業監視装置の他の特徴とするところは、前記等値線算出手段が、2次元平面上に不均等な位置関係に配置されるデータに対して、内角の一つが180度を越えない四角形要素を選択し、その対角線の交点に4頂点のデータの平均値を設定して、この交点を頂点にもつ三角形要素を用いて等値線を探索し描画する機能を有する点にある。
【0019】
また、本発明の高炉操業における操業監視装置の他の特徴とするところは、前記図形及び図形の特徴情報の時間的推移及びベクトル情報を可視化する出力手段を備えた点にある。
【0020】
本発明のコンピュータプログラムは、上記高炉操業における操業監視方法の各処理手順をコンピュータに実行させる点に特徴を有する。また、本発明の別のコンピュータプログラムは、上記高炉操業における操業監視装置の各手段としてコンピュータを機能させることを特徴とする。また、本発明のコンピュータ読み取り可能な記憶媒体は、これらコンピュータプログラムを格納した点に特徴を有する。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して、本発明の高炉操業における操業監視方法、装置、コンピュータプログラム、及びコンピュータ読み取り可能な記録媒体の実施の形態について説明する。
【0022】
図1は、本実施の形態の高炉操業における操業監視装置の構成を示すブロック図である。同図において、高炉設備1上には、ステーブ温度やシャフト圧力等を計測する各種のセンサが複数設置されている。図1では、ステーブ温度やシャフト圧力を例にとり、高炉設備の外形面上に複数設置してあるセンサ位置を示しているが、高炉設備内部に各種センサが複数設置されている場合も同様であり、また、各種センサの高炉設備上の配置は不等間隔で構わないものである。以下、図1に示す操業監視装置の構成にしたがって、本発明の実施の形態を説明する。
【0023】
(1.高炉設備と2.高炉設備上の複数の各種センサ)
高炉設備1上の複数の各種センサ2において、温度又は圧力、流量、粒径、密度、組成等の物理量が計測される。以下では、温度を計測するセンサが、図1に示すように高炉外形面上に複数配置されている場合を例に説明する。高炉外形面上に複数配置された各々の温度センサの設置位置情報が、3次元空間座標(x(i), y(i), z(i))、ただし、i=1,2,3,・・・,N(N:温度センサの個数)として予めわかっている。
【0024】
(3.データ収集装置)
データ収集装置3においては、高炉設備上に配置された複数の温度センサから出力される計測データが、予め設定されたサンプリング周期Δtでサンプリングされ、収集される。サンプリング周期Δtは、データ収集装置3の処理能力及びデータ処理装置4の処理能力と操業監視及び操業予測に要求される時間間隔に対応して数ms以上の時間間隔で任意に設定できる。データ収集装置3で収集された温度データは、データ処理装置4にリアルタイムで送られる。
【0025】
(4.データ処理装置と5.等値線算出部)
等値線算出部5において、データ収集装置3から入力された温度データを、高炉設備上の各センサ設置位置情報を反映させた2次元平面又は2次元平面で構成される3次元立体の表面に配置し、温度データが同値な任意の等値線を算出して該等値線によって形成される図形を算出する。
【0026】
以下、等値線算出部5における等値線算出方法の一例を示す。図2は、等値線算出部5において、高炉の炉周方向にr軸、炉高方向にh軸をとった2次元平面を定義し、この2次元平面上に等値線によって形成される図形の例を示したものである。図2において、●印は、高炉外形上に配置された複数の温度センサ設置位置を、その3次元空間座標(x(i), y(i), z(i))を座標変換することによって配置したものである。
【0027】
図2では、座標変換は、炉体高さ、炉床壁高さ、羽口径、炉腹径、炉底径、シャフト角度、ボッシュ角度(朝顔角度)等から該2次元平面への射影を演算する等の幾何学的な関係を用いて実施した。本発明における手法は、定義する2次元平面を図2のような正方形状の平面に限定する必要はなく、シャフト角度、ボッシュ角度(朝顔角度)に応じて部分的に扇形の2次元平面を定義してもよい。
【0028】
また、図2は説明のため、高炉の炉周方向にr軸、炉高方向にh軸をとった2次元平面を定義し用いているが、温度センサ設置位置を、その3次元空間座標にしたがって3次元空間上に配置し、2次元平面で構成される3次元立体の表面上で表現する場合の説明も同様である。
【0029】
図2の2次元平面において、温度センサ設置位置を示す●印の地点に、対応する計測データを配置すると、ある時刻tにおける温度データの分布状態が表現できる。このとき、●印の相互間隔は、後述する等値線探索手法によって、空間的に不均等な間隔であって構わなく、空間的に等間隔である必要はない。
【0030】
●印の地点に配置した温度データをもとに、●印の相互空間における温度データを空間的に補間し等値線を探索する。ここで等値線とは、空間的に分布している温度データの中から同じ値を示している地点を線で結ぶことによって得られるものである。
【0031】
空間的に不均等な位置に分布した温度データに対して等値線を探索するには、温度センサ設置地点で構成される三角形要素を用いる方法が確実であるが、空間上に三角形要素を構成させるときの組み合わせには膨大な自由度がある。また、空間に対して測定地点が少ない場合、三角形要素の選択いかんによって、得られる等値線の形状が異なってしまう問題が生じる。
【0032】
そこで、要素選択の自由度を下げて選択を容易にするとともに、要素選択による等値線形状の誤差を少なくする手法として、「四角形要素四頂点平均を頂点に用いる三角形要素を用いた等値線探索手法」を例示する。
【0033】
図3を用いて本手法を説明する。図2の2次元平面上の温度センサ設置位置●印の地点全てについて、内角の一つが180度を越えない四角形要素で構成されるよう予め各地点を関連づけておく。この四角形要素に対する要素選択条件により、要素選択の自由度は低減し、要素選択を容易にすることが可能となる。高炉設備の場合、各センサ位置座標は既知であるので一度関連付けを行えばよいし、また組み合わせ問題として自動探索アルゴリズムを用いて自動的に関連付けさせても構わない。
【0034】
図3において、内角の一つが180度を越えない任意の四角形要素、すなわち各頂点P1、P2、P3、P4地点での温度センサ測定データがそれぞれT1、T2、T3、T4であるような例を示す。この四角形要素の対角線の交点、すなわち図3中の○印地点Pmの温度をTmとする。Tmは、T1、T2、T3、T4から演算される平均値であり、例えば、下式(1)に示すように、相加平均として定義するものとする。
Tm=(T1+T2+T3+T4)÷4 …(1)
【0035】
次に、この対角線上の交点Pmを頂点にもつ4つの三角形要素を、この四角形要素内部に定義し、各三角形要素の辺上の温度データは、その辺の両端を構成する頂点の温度データによって補間することによって得られるものとする。補間にあたっては、1次補間法等、任意の手法であって構わない。
【0036】
仮に、いま、探索したい等値線の値をTとし、四角形要素の4頂点の温度データに対して、下式(2)、(3)に示すように、
T1<T<T4 …(2)
T1<T<T2 …(3)
なる関係があるものとする。
【0037】
図3の例では、式(2)の条件により、Tは、必ず、P1とP4を結ぶ直線上に存在し、かつ、必ずP1とPmを結ぶ直線又はPmとP4を結ぶ直線上に補間された温度データ地点として存在する。ここで、仮に、下式(4)に示すように、
T1<T<Tm …(4)
であるとすると、P1とPmを結ぶ直線上に、Tの温度データ地点が存在する。これら温度データTの地点を、△印で示す。同様にして、式(3)の条件より、Tは、必ず、P1とP2を結ぶ直線上に補間された温度データ地点として存在し、これを△印で示す。以上より得られた温度Tの地点を直線で結ぶと着目した四角形要素内の温度Tの等値線が探索できる。
【0038】
また、上記の例で、式(4)の代わりに、下式(5)に示すように、
Tm<T<T4 …(5)
であるとき、下式(6)に示すように、
T2<T<T3 …(6)
の場合を例にとれば、このときの温度データ地点は□印で示すごとくであり、これらを直線で結ぶ等値線を破線で示すことができる。
【0039】
さらに、以上の処理を空間内の全ての四角形要素に繰り返すことにより、空間内における等値線の探索及び描画が完了する。図2に例示するように、得られた等値線によって温度データは2次元平面内で、ある図形を形成する。特に閉曲線となる等値線は、ある特徴的な図形を形成する。図2では、ある温度Tの等値線を実線で示し、その閉曲線で囲まれる図形をハッチングで示している。破線は、その他の温度の等値線である。
【0040】
以上のように、空間的に不均等な位置関係に配置されるデータに対して、内角の一つが180度を越えない四角形要素を選択し、その対角線の交点に4頂点のデータの平均値を設定して、この交点を頂点にもつ三角形要素を用いて等値線を探索し描画する手法は、三角形要素のみを用いて等値線を探索する手法に比べて、要素選択の自由度を減らし選択を容易にするとともに、四角形要素の各頂点の平均値を頂点とする三角形要素を用いるため、要素選択に依存する等値線の探索誤差を低減できる有効な方法である。探索の最終段階で三角形要素を用いるので、探索する等値線が途中で他の等値線と交わったり、また途中で等値線が途切れたりするといった問題を発生することがないのは言うまでもない。
【0041】
また、本探索手法は2次元平面に限定されるものでなく、2次元平面で構成される3次元立体の表面上の四角形平面要素で構成される3次元空間に対しても実施可能かつ有効な手法である。なお、本発明においては、等値線の探索手法を限定する必要はなく、2次元平面又は2次元平面で構成される3次元立体の表面に対して他の手法や三角形要素を用いた等値線を描画しても構わない。
【0042】
以上説明した如く等値線算出部5において、データ収集装置3から入力された温度データを、高炉設備上の各センサ設置位置情報を反映させた2次元平面又は四角形平面要素で構成される3次元空間に配置し、等値線を描画することができる。
【0043】
さらに、2次元平面又は2次元平面で構成される3次元立体の表面上の任意の点において、該点を間にもつ等値線から補間して算出することにより、任意の該点における温度データを該点を間にとる異なる値のいくつかの等値線から空間的に補間することによって該点における温度データを算出することができる。
【0044】
例えば、図4は、高炉の炉周方向にr軸、炉高方向にh軸をとった2次元平面を定義し、等値線算出部5において、時間tのときの温度データの等値線を算出し、さらに該等値線から温度データを空間的に補間して得られる画面上の画素単位毎の温度T(i,j,k)を示したものである。ただし、i=1,2,3,・・・,Nr(Nr:炉周方向の画素数)、j=1,2,3,・・・,Nh(Nh:炉高方向の画素数)、k=0,1,2,・・・、(k:離散化時間)、Δhは画素の炉高方向長さ、Δrは画素の炉周方向長さである。
【0045】
(6.勾配算出部)
次に、勾配算出部6において、等値線算出部で算出した2次元平面上又は2次元平面で構成される3次元立体の表面上の任意の点の温度データを例に、各センサ設置における温度データの1)空間的勾配(空間的変化率、空間的変化量)、2)時間的勾配(時間的変化率、時間的変化量)又は3)空間的勾配の時間的勾配(空間的変化率の時間的変化率、空間的変化量の時間的変化量)を算出する。
【0046】
まず、勾配算出部6における1)空間的勾配の算出方法の一例を示す。図4において、時間kのときの画素位置(i,j)における温度T(i,j,k)の炉高方向の空間的勾配ΔTh(i,j,k)は、炉高方向の温度差を画素の炉高方向の長さで除したもの、すなわち、下式(7)に示すように、
ΔTh(i,j,k)=[T(i,j+1,k)-T(i,j,k)]÷Δh …(7)
により算出する。
【0047】
同様にして温度T(i,j,k)の炉周方向の空間的勾配ΔTr(i,j,k)は、炉周方向の温度差を画素の炉周方向の長さで除したもの、すなわち、下式(8)に示すように、
ΔTr(i,j,k)=[T(i,j+1,k)-T(i,j,k)]÷Δr …(8)
により算出する。
【0048】
このとき、2次元平面の境界線上における温度の空間的勾配についてであるが、炉周方向については空間的勾配の連続性が維持されるようにして算出する。また、炉高方向については、物理的な根拠による境界条件に基づき設定する。例えば、図4で例示する温度の場合では、断熱条件が仮定できる境界線上では、温度の空間的勾配=0を設定する。
【0049】
また、式(7)及び式(8)は、テーラー展開の基づく1次差分形を例示したが、下式(9)、(10)に示すように、
ΔTh(i,j,k)=[T(i,j+1,k)-T(i,j-1,k)]÷(2Δh) …(9)
ΔTr(i,j,k)=[T(i+1,j,k)-T(i-1,j,k)]÷(2Δr) …(10)
といった中心差分形等、他の差分形を用いても構わない。また、図4では、温度を例に説明したが、圧力など他のポテンシャル量についても有効であることは言うまでもない。
【0050】
次に、勾配算出部6における2)時間的勾配の算出方法の例を示す。図5は、画素位置(i,j)における温度データの時間推移を示したものである。図5では、時間tを離散化し、離散化時間kのときの画素位置(i,j)における温度T(i,j,k)の時間的勾配(温度の時間的変化率、温度の時間的変化量)ΔTt(i,j,k)を、現在の温度データから時間変化基準量を差し引いたものを基準時間(m×Δt)で除したもの、すなわち、下記の数1に示す式(11)で算出する。
【0051】
【数1】
【0052】
ここで、n、mは、設定パラメータで、それぞれ、nは時間変化基準評価データ数、mは時間的勾配の基準時間数である。Δtは、サンプリング周期Δtである。また、ω(k-m×l)は時間変化基準量を算出にあたって過去の温度データの影響度を考慮する重み係数で、任意に設定することができる。
【0053】
ここで、前記設定パラメータの使用例について説明する。例えば、n=1、m=1、ω(k-1)=1と設定すれば、式(11)は、下記の数2に示す式(12)となり、現在の温度データとΔt時間前の温度データとの時間的勾配が算出できる。
【0054】
【数2】
【0055】
また、例えば、ω(k-m×l)=1(=const.)と設定すれば、式(11)の右辺の[]内第2項で算出する時間変化基準量は、時間区間(n×m×Δt)における温度データ相加平均値となり、式(11)は、現在の温度データと時間区間(n×m×Δt)における温度データ相加平均値との時間的勾配が算出できる。
【0056】
さらに、例えば、ω(k-m×l)=ρ(k-m×l)、ただし、ρ>1とすると式(11)は、下記の数3に示す式(13)となり、式(13)の右辺の[]内第2項で算出する時間変化基準量は、時間区間(n×m×Δt)における温度データの忘却係数型重み平均値となり、式(13)は、現在の温度データと時間区間(n×m×Δt)における温度データの忘却係数型重み平均値との時間的勾配が算出できる。
【0057】
【数3】
【0058】
ここで、ρは、忘却の強さを定義するパラメータ、すなわち忘却係数と呼び、任意に設定できる。
【0059】
ここでは、温度の時間的勾配(時間的変化率、時間的変化量)の算出方法として、式(11)、式(12)、式(13)の3つを例示し説明したが、本発明においては他の重み係数ω(k-m×l)の与え方や時間的勾配の定義を用いても構わない。また、図5では、温度の時間推移を例に説明したが、圧力等、他のポテンシャル量についても有効であることは言うまでもない。
【0060】
次に、勾配算出部6における3)空間的勾配の時間的勾配の算出方法の例を示す。図6は、画素位置(i,j)における温度の炉高方向の空間的勾配ΔTh(i,j,k)の時間推移を示したものである。図6では、時間tを離散化し、離散化時間kのときの画素位置(i,j)における温度の炉高方向の空間的勾配の時間的勾配ΔTht(i,j,k)は、現在の温度の炉高方向の空間的勾配から時間変化基準量を差し引いたものを時間(m×Δt)で除したもの、すなわち、下記の数4に示す式(14)で算出する。
【0061】
【数4】
【0062】
ここで、n、mは、設定パラメータで、それぞれ、nは時間変化基準評価データ数、mは時間的勾配の基準時間数である。Δtは、サンプリング周期Δtである。また、ω(k-m×l)は時間変化基準量を算出にあたって過去の温度データの影響度を考慮する重み係数で、任意に設定することができる。
【0063】
ここで、前記設定パラメータの使用例について説明する。例えば、n=1、m=1、ω(k-1)=1と設定すれば、式(14)は、下記の数5に示す式(15)となり、現在の温度の炉高方向の空間的勾配とΔt時間前の温度の炉高方向の空間的勾配との時間的勾配が算出できる。
【0064】
【数5】
【0065】
また、例えば、ω(k-m×l)=1(=const.)と設定すれば、式(14)の右辺の[]内第2項で算出する時間変化基準量は、時間区間(n×m×Δt)における温度の炉高方向の空間的勾配の相加平均値となり、式(14)は、現在の温度の炉高方向の空間的勾配と時間区間(n×m×Δt)における温度の炉高方向の空間的勾配の相加平均値との時間的勾配が算出できる。
【0066】
さらに、例えば、ω(k-m×l)=ρ(k-m×l)、ただし、ρ>1とすると、式(14)は、下記の数6に示す式(16)となり、式(14)の右辺の[]内第2項で算出する時間変化基準量は、時間区間(n×m×Δt)における温度の炉高方向の空間的勾配の忘却係数型重み平均値となり、式(16)は、現在の温度の炉高方向の空間的勾配と時間区間(n×m×Δt)における温度の炉高方向の空間的勾配の忘却係数型重み平均値との時間的勾配が算出できる。
【0067】
【数6】
【0068】
ここで、ρは、忘却の強さを定義するパラメータ、すなわち忘却係数と呼び、任意に設定できる。
【0069】
ここでは、温度の炉高方向の空間的勾配の時間的勾配の算出方法として、式(14)、式(15)、式(16)の3つを例示し説明したが、本発明においては他の重み係数ω(k-m×l)の与え方や時間的勾配の定義を用いても構わない。また、図6では、温度の炉高方向の空間的勾配の時間推移を例に説明したが、炉周方向における空間的勾配等他の座標軸や圧力など他のポテンシャル量の空間的勾配についても有効であることは言うまでもない。
【0070】
(7.図形及びベクトル特徴情報算出部と8.操業監視部)
図形及びベクトル特徴情報算出部7において、等値線算出部5で算出した図形に対して画像処理を行い、図形及び図形の特徴情報、すなわち、個数、位置、面積、重心、図形の縦横比率、図形内の最大値又は最小値、平均値、分散を算出する。また、等値線算出部5で算出した図形領域内において、勾配算出部6で算出したベクトルに対して数学的演算を行い、ベクトル特徴情報、すなわちベクトル又はベクトル成分の総和、最大値又は最小値、平均値、分散を算出する。
【0071】
図7は、高炉の炉周方向にr軸、炉高方向にh軸をとった2次元平面上において、等値線算出部5において算出された等値線を基に、温度がある閾値以上の領域(図形A)を例に、勾配算出部6において、図形A領域内の各画素(i,j,k)における温度の空間的勾配の時間的勾配を図形A領域内にベクトル表現した図を例示したものである。
【0072】
図7では、図形及びベクトル特徴情報算出部7において、画像処理によって図形Aの重心GA(t)を演算し、さらに数学的演算により図形A領域内のベクトルの総和を、下記の数7に示す式(17)で演算し、前記2次元平面上にベクトル表現した。
【0073】
【数7】
【0074】
図7により、例えば、ある温度領域が時刻tにおいてどのような形状で分布しているか、また、当該領域が当該時刻以後、どのような形状に変化し、そのような方向に移動しつつある状態であるかといった情報を容易に獲得することができる。
【0075】
図7では、温度を例にとり、図形の特徴情報として重心を、ベクトル特徴情報として総和を例にして説明したが、他の計測データ、他の図形の特徴情報、他のベクトル特徴情報を用い、さらにはこれらを組み合わせて図形及びベクトル特徴情報の演算を行うことが可能であることは言うまでもない。
【0076】
図8は、温度の炉高方向の空間的勾配の時間的勾配がある閾値となる等値線を求め、その閾値以上である図形領域(以後、図形Aと称す)が、時間の推移、すなわち、時間t-2Δt、時間t-Δt、時間tに対応して、炉高方向及び炉周方向で定義した2次元平面上を移動している状態を説明する図である。図8は、図形Aが時間の推移につれて拡大し、かつ、高炉設備上部へ移動しつつある状況、すなわち操業異常を示すものであって、この場合、所謂、吹き抜け現象を示すものである。
【0077】
このとき、操業監視部8において、図形及びベクトル特徴情報算出部7で算出する図形及び図形の特徴情報、ベクトル特徴情報を予め設定した図形及び図形の特徴情報、ベクトル特徴情報とを比較することにより操業を監視することが可能である。
【0078】
(9.図形及びベクトル情報推移算出部)
さらに、図形及びベクトル特徴情報推移算出部9において、図形及びベクトル特徴情報算出部7で算出した図形及び図形の特徴情報、ベクトル情報の時間的推移を算出する。操業予測部10において、図形及びベクトル特徴情報推移算出部9で算出した図形及び図形の特徴情報、ベクトル特徴情報の時間推移と予め設定した図形及び図形の特徴情報の監視条件とを比較することにより、操業状態の予測が可能である。
【0079】
図9において、図形Aの特徴情報の一つである重心位置を例に本発明の操業監視方法及び操業予測手法を説明する。図9は、図8で例示した図形Aの重心位置が、時間的に推移する過程を、縦軸に重心位置、横軸に時間をとることによって例示したものである。
【0080】
(10.操業予測部)
操業予測部10において、操業状態を予測するために予め重心位置の上限管理値GAu及び下限管理値GAlを設定しておく。操業安定状態においては、図形Aが存在しないか、又は、存在してもその重心位置は下限管理値GAl以下である。
【0081】
何らかの操業要因の変動により、図形Aが発生し、かつ、その重心位置が下限管理値GAlを上回った場合、操業変動が発生したと判断することができる。
【0082】
さらに、その重心位置が高炉上部へ移動し、上限管理値GAuを上回った場合は、すなわち、高炉上部において、温度の炉高方向の空間的勾配の時間的勾配がある閾値以上の図形領域が存在することを明示するものであり、その存在から、その後の操業状態において吹き抜け等の操業異常が発生すると予測することが可能である。
【0083】
また、例えば、時刻tにおける図形Aの重心位置GA(t)とその時間変化率dGA(t)から、ある時間Δt後の操業状態、すなわち、Δt後の重心位置GA(t+Δt)を、下式(18)に示すように、
GA(t+Δt) = GA (t)+dGA(t)・Δt …(18)
により予測し、このとき、当該図形領域Aが存在しないか、存在しても下限設定値GAl以下、すなわち、下式(19)に示すように、
GA(t+Δt) < GAl …(19)
であるならば、操業安定状態がΔt後においても継続すると予測することが可能である。
【0084】
図9では、等値線で形成される温度の炉高方向の空間的勾配の時間的勾配がある閾値以上である図形の特徴情報として、画像処理によって得られる図形の重心位置GA(t)の値とその時間変化率dGA(t)を例に、本発明による手法によって操業異常の予測が可能であることを示したが、重心位置以外にも画像処理で得られる上述の図形の特徴情報や、その時間的変化率を評価する手法、また図形のいくつかの特徴情報を組み合わせて評価する手法、さらに対象図形領域内のベクトル又はベクトル成分の総和、最大値又は最小値、平均値、分散等のベクトル特徴情報を組み合わせて評価する手法も有効である。
【0085】
例えば、別の操業予測方法として、時刻tにおいてある温度以上の図形領域の面積S(t)と勾配算出部6や図形及びベクトル特徴情報算出部7で算出する対象図形領域内の温度の時間的勾配から、ある時間Δt後の操業状態、すなわち該温度以上の図形の面積S(t+Δt)は、下式(20)に示すように、
S(t+Δt)=S(t)+(対象図形領域内の時間的勾配)×Δt …(20)
により予測することができる。
【0086】
さらに別の操業予測方法として、ある時間tにおけるある閾値以上の図形形状と勾配算出部6や図形及びベクトル特徴情報算出部7で算出する対象図形領域内の空間的勾配の時間的勾配を用いて、ある時間Δt後の対象図形の形状を予測することができる。
【0087】
(11.記録部)
記録部11において、図形及びベクトル特徴情報推移算出部9における算出結果をテキスト形式等のファイルとして記録し、データベース化する。図形及び図形特徴情報、ベクトル特徴情報の推移の記録にあたって、算出結果をAVI形式等の動画ファイルとして記録することも可能である。このとき、本発明における高炉操業の監視方法の実施にあたり冗長な動画情報を、必要に応じて各種のデータ圧縮手法を用いて取り除くことにより、効率のよい記録及びデータベース化を実施することも可能である。本発明の手法においては、そのデータ圧縮手法を限定する必要はない。そして、記録部11で記録した情報をファイル入力して、オフラインで高炉の操業状態を評価することも可能である。
【0088】
(12.出力部)
また、出力部12において、図形及び図形の特徴情報、ベクトル特徴情報の推移や操業監視結果及び操業予測結果をモニタ等によって画面出力する。
【0089】
なお、本実施の形態では、ステーブ温度データを例に本発明の手法を説明したが、本発明の手法は、ステーブ温度データに限定する必要はなく、シャフト圧力データ等、他の計測データについても有効であることは言うまでもない。
【0090】
以上述べた実施の形態のデータ処理装置4は、コンピュータのCPU或いはMPU、RAM、ROM等で構成されるものであり、RAMやROMに記録されたプログラムが動作することによって実現できる。従って、上記機能を果たすようにコンピュータを動作させるプログラム自身は本発明を構成する。
【0091】
また、かかるプログラムをコンピュータ読み取り可能に記憶させた記憶媒体は、本発明を構成する。記録媒体としては、CD−ROM、DVD、フロッピーディスク、ハードディスク、磁気テープ、光磁気テープ、不揮発性のメモリカード等を用いることができる。
【0092】
また、コンピュータが供給されたプログラムを実行することにより上述の実施形態の機能が実現されるだけでなく、そのプログラムコードがコンピュータにおいて稼働しているOS(オペレーティングシステム)或いは他のアプリケーションソフト等と共同して上述の実施形態の機能が実現される場合にもかかるプログラムコードは本発明の実施形態に含まれることは言うまでもない。
【0093】
【発明の効果】
以上の如く詳述した本発明によれば、高炉設備上に空間的分布をもって配置している複数の各種センサの計測データを、各々のセンサの設置位置情報を反映させて評価することを可能とし、さらに計測データのもつ空間的分布情報、時間的推移情報を各々のセンサの設置位置情報を反映させた2次元平面又は2次元平面で構成される3次元立体の表面上の図形情報、ベクトル情報として評価し、画像処理によってこの図形及び図形の特徴情報を算出し、さらに数学的演算によって図形領域内のベクトル特徴情報を算出、評価することによって、高炉の操業状態の監視及び操業異常の予測を正確に実施することを可能とする。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施の形態の操業監視装置の構成を示すブロック図である。
【図2】空間的に不均等な位置に分布した複数のセンサの計測データの勾配から等値線を探索し、ある等値線によって形成される図形を示す図である。
【図3】等値線算出部において、空間的に不均等な位置に分布した複数のセンサの計測データから等値線を探索する方法の一例として、「四角形要素四頂点平均を頂点に用いる三角形要素を用いた等値線探索手法」を説明する図である。
【図4】計測データから空間的勾配を算出する方法を説明する図である。
【図5】計測データから時間的勾配を算出する方法を説明する図である。
【図6】計測データから空間的勾配の時間的勾配を算出する方法を説明する図である。
【図7】図形及びベクトル特徴情報算出部において、計測データから図形及びベクトル特徴情報を算出する手法を説明する図である。
【図8】操業監視部において、温度の炉高方向の空間的勾配の時間的勾配の時間推移を例にその操業監視手法を説明する図である。
【図9】操業予測部において、温度の炉高方向の空間的勾配の時間的勾配を例に図形の特徴情報の時間的推移を用いた操業予測手法を説明する図である。
【符号の説明】
1 高炉設備
2 高炉設備上の複数の各種センサ
3 データ収集装置
4 データ処理装置
5 等値線算出部
6 勾配算出部
7 図形及びベクトル特徴情報算出部
8 操業監視部
9 図形及びベクトル特徴情報推移算出部
10 操業予測部
11 記録部
12 出力部
Claims (17)
- 高炉設備上に複数設置されたセンサから出力される測定対象量の計測データ、及び該複数設置されたセンサそれぞれの設置位置に基づいて、各センサの設置位置を反映させた2次元平面又は2次元平面で構成される3次元立体の表面であり、複数の座標軸を有する所定の面に前記計測データの分布状態を表して、高炉の操業状態を監視する方法であって、
(ア)前記複数設置されたセンサそれぞれから出力される計測データを所定のサンプリング周期で収集するデータ収集手順と、
(イ)予め設定されている前記センサそれぞれの設置位置情報に基づき、各センサ及び該センサによる計測データを、前記センサの設置位置に対応する所定の面上の地点に配置する手順と、
(ウ)所定の面の各地点において、各座標軸方向について前記計測データの差分を計算して計測データの各座標軸方向の空間的勾配を得て、該座標軸方向の空間的勾配を成分とする計測データの空間的勾配のベクトルを算出する手順と、
(エ)前記空間的勾配のベクトルの各座標軸方向の成分に基づき、所定の面上において、各座標軸方向についての空間的勾配が同値な任意の等値線を算出する手順と、
(オ)所定の面上の任意の点における各座標軸方向についての空間的勾配を、該点を間にもつ前記等値線から補間して算出する手順と、
(カ)前記任意の点において、前記各座標軸方向ついての空間的勾配を成分として持つ空間的勾配のベクトルを算出する手順と、
(キ)該ベクトルを所定の面上のそれぞれの点に配置してベクトル表現する手順と、からなることを特徴とする高炉操業における操業監視方法。 - さらに、前記所定の面上の任意の点における、前記各座標軸方向についての空間的勾配を成分として持つ空間的勾配のベクトルについて、所定の面に任意に指定した領域内において該ベクトル又はベクトル成分の総和、最大値、最小値、平均値、及び分散のうちの少なくとも一つをベクトル特徴情報として算出する手順と、
該ベクトル特徴情報を予め設定した監視条件と比較する手順と、からなることを特徴とする請求項1に記載の高炉操業における操業監視方法。 - さらに、前記データ収集手順で収集された前記複数設置されたセンサそれぞれから出力された測定対象量の計測データについて、前記所定の面上における同値な任意の等値線を算出する手順と、
該等値線によって形成する任意の図形領域内において前記空間的勾配のベクトル又はベクトル成分の総和、最大値、最小値、平均値、及び分散のうちの少なくとも一つをベクトル特徴情報として算出する手順と、
該ベクトル特徴情報を予め設定した監視条件と比較する手順と、からなることを特徴とする請求項1に記載の高炉操業における操業監視方法。 - 高炉設備上に複数設置されたセンサから出力される測定対象量の計測データ、及び前記複数設置されたセンサそれぞれの設置位置に基づいて、各センサの設置位置を反映させた2次元平面又は2次元平面で構成される3次元立体の表面であり、複数の座標軸を有する所定の面に前記計測データの分布状態を表して、高炉の操業状態を監視する方法であって、
(a)前記複数設置されたセンサそれぞれから出力される計測データを所定のサンプリング周期で収集するデータ収集手順と、
(b)予め設定されている前記センサそれぞれの設置位置情報に基づき、各センサ及び該センサによる計測データを、前記センサの設置位置に対応する所定の面上の地点に配置する手順と、
(c)所定の面上の任意の地点において、該点の計測データの現時刻での値と、現時刻から前の所定の1つ又は複数の時刻での値とに基づいて、計測データの時間的勾配を算出する手順と、
(d)前記所定の面上の任意の地点における計測データの時間的勾配に基づき、所定の面上において、計測データの時間的勾配が同値な任意の等値線を算出する手順と、
(e)所定の面上における前記計測データの時間的勾配が同値となる任意の等値線を、モニタの画面上にコンタ表現する手順と、からなることを特徴とする高炉操業における操業監視方法。 - 前記(b)〜(d)の手順を所定の周期で繰り返し、
さらに、前記所定の面上において、前記計測データの時間的勾配が同値な等値線に基づき、所定の閾値となる等値線によって形成される図形を得て、該図形の個数、位置、面積、重心及び図形の縦横比率のいずれかの図形の特徴情報、並びに、該図形内における計測データの時間的勾配の最大値、最小値、平均値及び分散のいずれかの特徴情報のうち少なくとも一つの特徴情報の時間的推移を所定の画像処理によって算出する手順と、
該特徴情報の時間的推移と予め設定した監視条件とを比較する手順と、からなることを特徴とする請求項4に記載の高炉操業における操業監視方法。 - 高炉設備上に複数設置されたセンサから出力される測定対象量の計測データ、及び該複数設置されたセンサそれぞれの設置位置に基づいて、各センサの設置位置を反映させた2次元平面又は2次元平面で構成される3次元立体の表面であり、複数の座標軸を有する所定の面に前記計測データの分布状態を表して、高炉の操業状態を監視する方法であって、
(ア)前記複数設置されたセンサそれぞれから出力される計測データを所定のサンプリング周期で収集するデータ収集手順と、
(イ)予め設定されている前記センサそれぞれの設置位置情報に基づき、各センサ及び該センサによる計測データを、前記センサの設置位置に対応する所定の面上の地点に配置する手順と、
(ウ)所定の面の各地点において、各座標軸方向について前記計測データの差分を計算して計測データの各座標軸方向の空間的勾配を得て、該座標軸方向の空間的勾配を成分とする計測データの空間的勾配のベクトルを算出する手順と、
(エ)前記空間的勾配のベクトルの各座標軸方向の成分に基づき、所定の面上において、各座標軸方向についての空間的勾配が同値な任意の等値線を算出する手順と、
(オ)所定の面上の任意の点における各座標軸方向についての空間的勾配を、該点を間にもつ前記等値線から補間して算出する手順と、
(ク)所定の面上の任意の点において、各座標軸方向についての空間的勾配の現時刻の値と、現時刻から所定の1つ又は複数の時間前の値とに基づいて、空間的勾配の時間的勾配を逐次演算する手順と、
(ケ)所定の面上の任意の点において、前記各座標軸方向についての空間的勾配の時間的勾配に基づき、所定の面上において前記空間的勾配の時間的勾配が同値な任意の時間的勾配の等値線を算出する手順と、
(コ)所定の面上の任意の点において、各座標軸方向についての空間的勾配の時間的勾配を、該点を間にもつ前記時間的勾配の等値線から補間して算出する手順と、
(サ)前記任意の点それぞれにおいて、前記各座標軸方向ついての空間的勾配値の時間的勾配を、成分として持つ空間的勾配値の時間的勾配のベクトルを算出する手順と、
(シ)該ベクトルを所定の面上のそれぞれの点に配置してベクトル表現する手順と、からなることを特徴とする高炉操業における操業監視方法。 - さらに、前記所定の面上の任意に指定した領域内において前記空間的勾配値の時間的勾配のベクトルの総和、最大値、最小値、平均値、及び分散のうちの少なくとも一つのベクトル特徴情報を算出する手順と、
これらのベクトル特徴情報を予め設定した監視条件と比較する手順と、からなることを特徴とする請求項6に記載の高炉操業における操業監視方法。 - さらに、前記地点それぞれに配置された計測データに基づき、前記所定の面上において、計測データが同値となる任意の等値線を算出する手順と、
所定の面上で、前記計測データが同値となる等値線に基づき、所定の閾値により等値線で形成される任意の図形領域内において、前記空間的勾配の時間的勾配のベクトル又はベクトル成分の総和、最大値、最小値、平均値、及び分散のうちの少なくとも一つをベクトル特徴情報として算出する手順と、
該ベクトル特徴情報を予め設定した監視条件と比較する手順と、からなることを特徴とする請求項6に記載の高炉操業における操業監視方法。 - 前記(イ)〜(コ)の手順を所定の周期で繰り返し、
さらに、前記所定の面上において、前記空間的勾配値の時間的勾配が同値となる等値線に基づき、所定の閾値となる等値線で形成される図形を得て、該図形について、該図形の個数、位置、面積、重心及び縦横比率のうちのいずれかの図形の特徴情報、並びに、該図形内における空間的勾配値の時間的勾配の最大値、最小値、平均値及び分散のうちのいずれかのベクトル特徴情報の少なくとも一つを、該特徴情報の時間的推移を所定の画像処理によって算出する手順と、
該特徴情報の時間的推移と予め設定した監視条件とを比較する手順と、からなることを特徴とする請求項6に記載の高炉操業における操業監視方法。 - 計測データ、空間的勾配、又は時間的勾配の等値線を算出する手順は、2次元平面に均等又は不均等な位置関係に配置されるデータに対して、内角の一つが180度を越えない四角形要素を選択し、その対角線の交点に4頂点のデータの平均値を設定して、この交点を頂点にもつ三角形要素を用いて等値線を探索し描画する手法であることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の高炉操業における操業監視方法。
- 高炉設備上に複数設置されたセンサから出力される測定対象量の計測データ、及び該複数設置されたセンサそれぞれの設置位置に基いて、各センサの設置位置を反映させた2次元平面又は2次元平面で構成される3次元立体の表面であり、複数の座標軸を有する所定の面に前記計測データの分布状態を表して、高炉の操業状態を監視する操業監視装置であって、
前記複数設置されたセンサそれぞれから出力される計測データを所定のサンプリング周期で収集するデータ収集手段と、
予め設定されている前記センサそれぞれの設置位置情報に基づき、各センサからのサンプリングされた計測データを前記センサの設置位置に対応する所定の面上の地点に配置し、各地点に配置された計測データに基づき、所定の面上において計測データが同値となる任意の等値線を算出する等値線算出手段と、
該算出した等値線に基づき、所定の面上の任意の点における前記測定対象量の各座標軸方向の空間的勾配、時間的勾配及び各座標軸方向の空間的勾配の時間的勾配を算出する勾配算出手段と、
前記等値線によって形成する図形、又は、該図形の個数、位置、面積、重心及び縦横比率のいずれかである図形の特徴情報を画像処理によって算出し、また前記勾配算出手段において算出した、各座標軸方向の空間的勾配又は各座標軸方向の空間的勾配の時間的勾配に基づいて、所定の数学的演算によって、該各勾配を成分とするベクトル又はベクトル成分の総和、最大値、最小値、平均値、及び分散のいずれかであるベクトル特徴情報を算出する図形及びベクトル特徴情報算出手段と、
前記図形及びベクトル特徴情報算出手段で得られた図形又は図形の特徴情報、ベクトル特徴情報と、予め設定した図形又は図形の特徴情報、ベクトル特徴情報とを所定の時間間隔で比較する操業を監視する操業監視手段と、を備えたことを特徴とする高炉操業における操業監視装置。 - 前記等値線算出手段、勾配算出手段、図形及びベクトル特徴情報算出手段は、所定の時間間隔で計算して、前記図形又は図形の特徴情報、ベクトル特徴情報を出力するものであり、
さらに、該図形又は図形の特徴情報、ベクトル特徴情報に基づいて、図形又は図形の特徴情報、ベクトル特徴情報の時間的推移を算出する図形及びベクトル特徴情報推移算出部と、
該図形又は図形の特徴情報、ベクトル特徴情報の時間的推移と予め設定した監視条件とを比較することによって、吹き抜けを含む操業異常を予測する操業予測手段とを備えたことを特徴とする請求項11に記載の高炉操業における操業監視装置。 - 前記等値線算出手段が、2次元平面に不均等な位置関係に配置されるデータに対して、内角の一つが180度を越えない四角形要素を選択し、その対角線の交点に4頂点のデータの平均値を設定して、この交点を頂点にもつ三角形要素を用いて等値線を探索し描画する機能を有することを特徴とする請求項11又は12に記載の高炉操業における操業監視装置。
- 前記図形及び図形の特徴情報の時間的推移及びベクトル情報を可視化する出力手段を備えたことを特徴とする請求項11〜13のいずれか1項に記載の高炉操業における操業監視装置。
- 請求項1〜10のいずれか1項に記載の高炉操業における操業監視方法の各処理手順をコンピュータに実行させることを特徴とするコンピュータプログラム。
- 請求項11〜14のいずれか1項に記載の高炉操業における操業監視装置の各手段としてコンピュータを機能させることを特徴とするコンピュータプログラム。
- 請求項15又は16に記載のコンピュータプログラムを格納したことを特徴とするコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
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