JP3814143B2 - 高炉操業における操業監視方法、装置、及びコンピュータ読み取り可能な記録媒体 - Google Patents

高炉操業における操業監視方法、装置、及びコンピュータ読み取り可能な記録媒体 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、高炉の操業中、その操業状態を監視し、吹き抜け等の操業異常を予測する方法、その実施に使用する装置、及びコンピュータ読み取り可能な記録媒体に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、高炉の操業異常等の監視並びに予測方法に関するものとしては、特開平5−156328号公報、特開平11−140520号公報等に開示されているものがある。これらの監視並び予測方法は、いずれも、各センサの高炉設備上の設置位置情報を反映することなく各センサからの計測データを収集し、予め設定しておく基準値又は簡易的な物理モデルによる閾価との比較により操業状態の監視並びに操業異常を予測するものである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、本発明が対象とする高炉というプロセスは、動特性を有する分布定数系のプロセスとして取り扱うべき対象である。したがって、高炉設備上に分布をもって設置されている複数の各種センサの計測データは互いに独立して収集し、評価してよいものではなく、各々のセンサが取り付けられている高炉設備上の設置位置に関連づけられて収集し、評価されるべきものである。
【0004】
従来の方式では、このような各センサの設置位置を計測データに関連づけて収集し、評価しておらず、その結果、高炉の操業状態の監視並びに予測の精度が低いという問題があった。
【0005】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであり、高炉の操業状態の監視並びに操業異常の予測を正確に実施する可能とすることを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明の高炉操業における操業監視方法は、高炉外形面上に複数設置されたセンサからの測定対象量の計測データ、及び前記複数設置されたセンサそれぞれの設置位置に基づき、2次元平面又は3次元空間内に表現された高炉外形面上に前記計測データの分布状態を表して高炉の操業状態を監視する方法であって、
(a)前記複数設置されたセンサそれぞれから出力される計測データを収集するデータ収集工程と、
(b)予め設定されている前記センサの設置位置情報に基づき、各センサ及び該センサによる計測データを、前記2次元平面又は3次元空間内に表現された高炉外形面上の各地点に配置し、さらに前記各地点について隣接する地点間で、内角の一つが180度を越えない四角形要素を構成して関連づけて、該四角形要素の4頂点の計測データの平均値をその対角線の交点に設定して、該交点を頂点にもつ三角形要素を用いて、測定対象量の値が同じ任意の等値線を探索して描画し、所定の値の等値線である閉曲線の図形を算出する等値線算出工程と、
(c)前記図形に対して画像処理して、計測データの分布状態を表す図形又は図形の特徴情報を導出する図形特徴情報算出工程と、
(d)前記図形又は図形の特徴情報と、予め設定した図形又は図形の特徴情報とを比較して操業の安定状態又は異常状態を評価して監視する操業監視工程とからなることを特徴とする。
【0007】
また、本発明の高炉操業における操業監視方法の他の特徴とするところは、前記図形特徴情報算出工程は、前記等値線によって形成する図形の、個数、位置、面積、重心、図形の縦横比率、図形内の最大値又は最小値、平均値、及び分散のうち少なくとも一つの特徴情報を、画像処理によって算出する点にある。
【0008】
また、本発明の高炉操業における操業監視方法の他の特徴とするところは、前記データ収集工程は、前記複数設置されたセンサから、各時刻における計測データを所定の時間間隔で連続的に収集する工程であり、さらに前記時刻における計測データについて前記(b)〜(c)の工程を繰り返して、各計測データの時間的推移に対応して等値線によって形成する図形又は図形の特徴情報を更新する図形情報推移算出工程からなる点にある。
【0009】
また、本発明の高炉操業における操業監視方法の他の特徴とするところは、前記データ収集工程は、前記複数設置されたセンサから、各時刻における計測データを所定の時間間隔で連続的に収集する工程であり、さらに前記時刻における計測データについて前記(b)〜(c)の工程を繰り返して、各計測データの時間的推移に対応して等値線によって形成する図形又は図形の特徴情報を更新して時間的推移を導出する図形情報推移算出工程と、これらの時間的推移を予め設定した推移条件と比較する操業予測工程とからなる点にある。
【0011】
本発明の高炉操業における操業監視装置は、高炉外形面上に複数設置されたセンサからの測定対象量の計測データ、及び前記複数設置されたセンサそれぞれの設置位置に基づき、2次元平面又は3次元空間内に表現された高炉外形面上に前記計測データの分布状態を表して高炉の操業状態を監視する装置であって、
(e)前記複数設置されたセンサそれぞれから出力される計測データを収集するデータ収集手段と、
(f)予め設定されている前記センサの設置位置情報に基づき、各センサ及び該センサによる計測データを、前記2次元平面又は3次元空間内に表現された高炉外形面上の各地点に配置して、さらに前記各地点について隣接する地点間で、内角の一つが180度を越えない四角形要素を構成して関連づけて、該四角形要素の4頂点の計測データの平均値をその対角線の交点に設定して、該交点を頂点にもつ三角形要素を用いて、測定対象量の値が同じ任意の等値線を探索して描画し、所定の値の等値線である閉曲線の図形を算出する等値線算出手段と、
(g)前記図形に対して画像処理して、計測データの分布状態を表す図形又は図形の特徴情報を導出する図形特徴情報算出手段と、
(h)前記図形又は図形の特徴情報と、予め設定した図形又は図形の特徴情報とを比較して操業の安定状態又は異常状態を評価して監視する操業監視手段とを具備することを特徴とする。
【0012】
また、本発明の高炉操業における操業監視装置の他の特徴とするところは、前記図形特徴情報算出手段は、前記等値線によって形成する図形の、個数、位置、面積、重心、図形の縦横比率、図形内の最大値又は最小値、平均値、及び分散のうち少なくとも一つの特徴情報を、画像処理によって算出する点にある。
【0013】
また、本発明の高炉操業における操業監視装置の他の特徴とするところは、前記データ収集手段は、前記複数設置されたセンサから、各時刻における計測データを所定の時間間隔で連続的に収集するものであり、さらに前記時刻における計測データについて前記(f)〜(g)の各手段を繰り返して用いて、各計測データの時間的推移に対応して等値線によって形成する図形又は図形の特徴情報を更新して時間的推移を導出する図形情報推移算出手段と、これらの時間的推移を予め設定した推移条件と比較する操業予測手段とを具備する点にある。
【0014】
また、本発明の高炉操業における操業監視装置の他の特徴とするところは、前記図形及び図形の特徴情報の推移を可視化する出力手段を備えた点にある。
【0015】
本発明のコンピュータ読み取り可能な記録媒体は、上記高炉操業における操業監視方法のうちの一つにおいて、各工程をコンピュータに実行させるためのプログラムを記録した点に特徴を有する。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して、本発明の高炉操業における操業監視方法、装置、及びコンピュータ読み取り可能な記録媒体の実施の形態について説明する。
【0018】
図1は、本実施の形態の高炉操業における操業監視装置の構成を示すブロック図である。同図において、高炉設備1上には、ステーブ温度やシャフト圧力等を計測する各種のセンサが複数設置されている。図1では、ステーブ温度やシャフト圧力を例にとり、高炉設備の外形面上に複数設置してあるセンサ位置を示しているが、高炉設備内部に各種センサが複数設置されている場合も同様であり、また、各種センサの高炉設備上の配置は不等間隔で構わないものである。
【0019】
高炉設備1上の複数の各種センサ2において、温度、圧力、流量、粒径、密度、組成等の物理量が計測される。以下では、温度を計測するセンサが、図1に示すように高炉外形面上に複数配置されている場合を例に説明する。
【0020】
高炉外形面上に複数配置された各々の温度センサの設置位置情報が、3次元空間座標(x(i)、 y(i)、 z(i))、ただし、i=1、2、3、・・・、N(N:温度センサの個数)として予めわかっている。
【0021】
データ収集装置3においては、高炉設備上に配置された複数の温度センサから出力される計測データが、予め設定されたサンプリング周期Δtでサンプリングされ、収集される。サンプリング周期Δtは、データ収集装置3の処理能力及びデータ処理装置4の処理能力と操業監視及び操業予測に要求される時間間隔に対応して数ms 以上の時間間隔で任意に設定できる。データ収集装置3で収集された温度データは、データ処理装置4にリアルタイムで送られる。
【0022】
等値線算出部5において、データ収集装置3から入力された温度データを、高炉設備上の各センサ設置位置情報を反映させた2次元平面又は3次元空間に配置し、温度データが同値な任意の等値線を算出して該等値線によって形成される図形を算出する。
【0023】
以下、等値線算出部5における等値線算出方法の一例を示す。図2は、等値線算出部5において、高炉の炉周方向にr軸、炉高方向にh軸をとった2次元平面を定義し、この2次元平面上に等値線によって形成される図形の例を示したものである。図2において、●印は、高炉外形上に配置された複数の温度センサ設置位置を、その3次元空間座標(x(i)、 y(i)、 z(i))を座標変換することによって配置したものである。
【0024】
図2では、座標変換は、羽口径、炉腹径、炉底径、シャフト角度、ボッシュ角度(朝顔角度)等から該2次元平面への射影を演算する等の幾何学的な関係を用いて実施した。本発明における手法は、定義する2次元平面を図2のような正方形状の平面に限定する必要はなく、シャフト角度、ボッシュ角度(朝顔角度)に応じて部分的に扇形の2次元平面を定義してもよい。
【0025】
また、図2は説明のため、高炉の炉周方向にr軸、炉高方向にh軸をとった2次元平面を定義し用いているが、温度センサ設置位置を、その3次元空間座標にしたがって3次元空間上に配置した場合の説明も同様である。
【0026】
図2の2次元平面において、温度センサ設置位置を示す●印の地点に、対応する計測データを配置すると、ある時刻tにおける温度データの分布状態が表現できる。このとき、●印の相互間隔は、後述する等値線探索手法によって、空間的に不均等な間隔であって構わなく、空間的に等間隔である必要はない。
【0027】
●印の地点に配置した温度データをもとに、●印の相互空間における温度データを空間的に補間し等値線を探索する。ここで等値線とは、空間的に分布している温度データの中から同じ値を示している地点を線で結ぶことによって得られるものである。
【0028】
空間的に不均等な位置に分布した温度データに対して等値線を探索するには、温度センサ設置地点で構成される三角形要素を用いる方法が確実であるが、空間上に三角形要素を構成させるときの組み合わせには膨大な自由度がある。また、空間に対して測定地点が少ない場合、三角形要素の選択いかんによって、得られる等値線の形状が異なってしまう問題が生じる。
【0029】
そこで、要素選択の自由度を下げて選択を容易にするとともに、要素選択による等値線形状の誤差を少なくする手法として、「四角形要素四頂点平均を頂点に用いる三角形要素を用いた等値線探索手法」を例示する。
【0030】
図3を用いて本手法を説明する。図2の2次元平面上の温度センサ設置位置●印の地点全てについて、内角の一つが180度を越えない四角形要素で構成されるよう予め各地点を関連づけておく。この四角形要素に対する要素選択条件により、要素選択の自由度は低減し、要素選択を容易にすることが可能となる。高炉設備の場合、各センサ位置座標は既知であるので一度関連付けを行えばよいし、また組み合わせ問題として自動探索アルゴリズムを用いて自動的に関連付けさせても構わない。
【0031】
図3において、内角の一つが180度を越えない任意の四角形要素、すなわち各頂点P1、P2、P3、P4地点での温度センサ測定データがそれぞれT1、T2、T3、T4であるような例を示す。この四角形要素の対角線の交点、すなわち図3中の○印地点Pmの温度をTmとする。Tmは、T1、T2、T3、T4から演算される平均値であり、例えば、相加平均として定義するものとする。
Tm=(T1+T2+T3+T4)÷4 …(1)
【0032】
次に、この対角線上の交点Pmを頂点にもつ4つの三角形要素を、この四角形要素内部に定義し、各三角形要素の辺上の温度データは、その辺の両端を構成する頂点の温度データによって補間することによって得られるものとする。補間にあたっては、1次補間法等、任意の手法であって構わない。
【0033】
仮に、今、探索したい等値線の値をT とし、四角形要素の4頂点の温度データに対して、下式
T1<T<T4 …(2)
T1<T<T2 …(3)
なる関係があるものとする。
【0034】
図3の例では、式(2)の条件により、T は、必ず、P1とP4を結ぶ直線上に存在し、かつ必ずP1とPmを結ぶ直線又はPmとP4を結ぶ直線上に補間された温度データ地点として存在する。ここで、仮に、
T1<T<Tm …(4)
であるとすると、P1とPmを結ぶ直線上に、Tの温度データ地点が存在する。これら温度データTの地点を、△印で示す。同様にして、式(3)の条件より、T は、必ず、P1とP2を結ぶ直線上に補間された温度データ地点として存在し、これを△印で示す。以上より得られた温度Tの地点を直線で結ぶと着目した四角形要素内の温度Tの等値線が探索できる。
【0035】
また、上記の例で、式(4)の代わりに、
Tm<T<T4 …(5)
であるとき、
T2<T<T3 …(6)
の場合を例にとれば、このときの温度データ地点は□印で示すごとくであり、これらを直線で結ぶ等値線を破線で示すことができる。
【0036】
さらに以上の処理を空間内の全ての四角形要素に繰り返すことにより、空間内における等値線の探索及び描画が完了する。図2に例示するように、得られた等値線によって温度データは2次元平面内で、ある図形を形成する。特に閉曲線となる等値線は、ある特徴的な図形を形成する。図2では、ある温度Tの等値線を実線で示し、その閉曲線で囲まれる図形をハッチングで示している。破線は、その他の温度の等値線である。
【0037】
以上のように、空間的に不均等な位置関係に配置されるデータに対して、内角の一つが180度を越えない四角形要素を選択し、その対角線の交点に4頂点のデータの平均値を設定して、この交点を頂点にもつ三角形要素を用いて等値線を探索し描画する手法は、三角形要素のみを用いて等値線を探索する手法に比べて、要素選択の自由度を減らし選択を容易にするとともに、四角形要素の各頂点の平均値を頂点とする三角形要素を用いるため、要素選択に依存する等値線の探索誤差を低減できる有効な方法である。探索の最終段階で三角形要素を用いるので、探索する等値線が途中で他の等値線と交わったり、また途中で等値線が途切れるといった問題を発生することがないのは言うまでもない。
【0038】
また、本探索手法は2次元平面に限定されるものでなく、四角形平面要素で構成される3次元空間図形に対しても実施可能かつ有効な手法である。
【0039】
なお、本発明においては、等値線の探索手法を限定する必要はなく、2次元平面又は3次元空間に対して他の手法や三角形要素を用いた等値線を描画しても構わない。
【0040】
図形特徴情報算出部6において、等値線算出部5で算出した図形に対して画像処理を行ない、図形及び図形の特徴情報、すなわち、個数、位置、面積、重心、図形の縦横比率、図形内の最大値又は最小値、平均値、分散を算出する。
【0041】
操業監視部7において、図形特徴情報算出部6で算出した図形及び図形の特徴情報と、予め設定した図形及び図形の特徴情報とを比較することにより高炉操業を監視することが可能である。図4〜7において、温度データを例にその操業監視手法を説明する。
【0042】
図4〜7は、図形特徴情報算出部6において画像処理を行なった図形特徴情報算出の一例を、時間の推移にしたがって並べたものを例示したものである。図4〜7は、高い温度による等値線内の図形領域ほど白く、低い温度による等値線内の図形領域ほど黒くなるようグレー階調で示している。さらに図4〜7では、ある高い温度による等値線で形成される図形を画像処理によって演算し、その図形を線で取り囲むとともにラベリングを行なったものである。
【0043】
図4は、高炉の操業が安定している場合で、融着帯根部に起因する、ある高い温度による等値線で形成される図形が、高炉下部の炉周全般に広く存在している状態である。
【0044】
図5は、図4の状態からある時間が経過した状態で、操業上の外乱により、融着帯根部に起因するある高い温度による等値線で形成される図形が、炉周方向のある地点において炉高方向に拡大しつつある状態を示している。
【0045】
図6は、図5の状態から更に時間が経過した状態で、ある高い温度による等値線で形成される図形の面積が、炉周方向のある地点において更に拡大し、かつその高さ位置が上方へ移動し、高炉設備の高さ方向中央位置までに至っている状態を示している。
【0046】
図7は、図6の状態から更に時間が経過した状態で、ある高い温度による等値線で形成される図形は、その大部分の面積部分が高炉設備上部へ抜けた後、残った図形の面積部分が炉高方向のほぼ中央位置、炉周方向のほぼ4分の3の位置に存在している状態を示しており、図4のような操業安定状態に戻っていない操業異常状態を示すものである。
【0047】
図6、7は、ある高い温度による等値線で形成される図形が、高炉設備上部へ抜けつつある状況、すなわち操業異常を示すものであって、この場合、所謂、吹き抜け現象を示すものである。
【0048】
このとき、操業監視部7において、図形特徴情報算出部6で算出する図形及び図形の特徴情報を予め設定した図形及び図形の特徴情報とを比較することにより操業を監視することが可能である。
【0049】
さらに、図形特徴情報推移算出部8において、図形特徴情報算出部6で算出した図形及び図形の特徴情報の時間的推移を算出する。操業予測部9において、図形特徴情報推移算出部8で算出した図形及び図形の特徴情報の時間推移と予め設定した図形及び図形の特徴情報の推移条件とを比較することにより、操業状態の予測が可能である。
【0050】
図8において、温度データを例にその操業予測手法を説明する。図8は、図4〜7で例示したある高い温度による等値線で形成される図形の重心位置が、図4から図7へ推移する過程を、縦軸に重心位置、横軸に時間をとることによって例示したものである。
【0051】
操業予測部9において、操業状態を予測するために予め重心位置の上限管理値を設定しておく。図4で示すような操業安定状態においては、対象図形の重心位置G(t)は設定した上限管理値Guより小さい。重心位置G(t)とその時間変化率dG(t)から、ある時間Δt後の操業状態、すなわち、Δt後の重心位置G(t+Δt)を、
G(t+Δt) = G(t)+dG(t)・Δt …(7)
と予測し、このとき、
G(t+Δt) < Gu …(8)
であるならば、操業安定状態がΔt後においても継続すると予測することが可能である。
【0052】
一方、図6で示すような操業変動状態においては、対象図形の重心位置G(t)は設定した上限管理値Guより小さいものの、重心位置G(t)とその時間変化率dG(t)から、ある時間Δt後の操業状態、すなわちΔt後の重心位置G(t+Δt)を、式(7)と同様にして予測した場合、
G(t+Δt) > Gu …(9)
であれば、Δt後の操業状態において吹き抜け等の操業異常が発生すると予測することが可能である。
【0053】
図8では、ある高い温度による等値線で形成される図形の特徴情報として、画像処理によって得られる図形の重心位置G(t)の値とその時間変化率dG(t)を例に、本発明による手法によって操業異常の予測が可能であることを示したが、重心位置以外にも画像処理で得られる上述の図形の特徴情報や、その時間変化率を評価する手法、また図形のいくつかの特徴情報を組み合わせて評価する手法、上限管理値だけでなく下限管理値を用いたり、上限管理値と下限管理値を組み合わせて評価する手法も有効である。
【0054】
さらに、記録部10において、図形特徴情報推移算出部8における算出結果をテキスト形式等のファイルとして記録し、データベース化する。図形及び図形特徴情報の推移の記録にあたって、算出結果をAVI形式等の動画ファイルとして記録することも可能である。このとき、本発明における高炉操業の監視方法の実施にあたり冗長な動画情報を、必要に応じて各種のデータ圧縮手法を用いて取り除くことにより、効率のよい記録及びデータベース化を実施することも可能である。本発明の手法においては、そのデータ圧縮手法を限定する必要はない。
【0055】
そして、記録部10で記録した情報をファイル入力して、オフラインで高炉の操業状態を評価することも可能である。
【0056】
また、出力部11において、図形及び図形の特徴情報の推移や操業監視結果及び操業予測結果をモニタ等によって画面出力する。
【0057】
なお、本実施の形態では、ステーブ温度データを例に本発明の手法を説明したが、本発明の手法は、ステーブ温度データに限定する必要はなく、シャフト圧力データ等、他の計測データについても有効であることは言うまでもない。
【0058】
以上述べた実施の形態のデータ処理装置4は、コンピュータのCPU或いはMPU、RAM、ROM等で構成されるものであり、RAMやROMに記録されたプログラムが動作することによって実現できる。従って、コンピュータが上記機能を果たすように動作させるプログラムを記録媒体に記録し、コンピュータに読み取らせることによって実現できるものである。記録媒体としては、CD−ROM、DVD、フロッピーディスク、ハードディスク、磁気テープ、光磁気テープ、不揮発性のメモリカード等を用いることができる。
【0059】
また、コンピュータが供給されたプログラムを実行することにより上述の実施形態の機能が実現されるだけでなく、そのプログラムコードがコンピュータにおいて稼働しているOS(オペレーティングシステム)或いは他のアプリケーションソフト等と共同して上述の実施形態の機能が実現される場合にもかかるプログラムコードは本発明の実施形態に含まれることは言うまでもない。
【0060】
【発明の効果】
以上の如く詳述した本発明の手法は、高炉設備上に空間的分布をもって配置している複数の各種センサの計測データを、各々のセンサの設置位置情報を反映させて評価することを可能とし、さらに計測データのもつ空間的分布情報を各々のセンサの設置位置情報を反映させた2次元平面又は3次元空間上の図形情報として評価し、この図形及び図形の特徴情報を画像処理によって演算し評価することによって、高炉の操業状態の監視及び操業異常の予測を正確に実施することを可能とする。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施の形態の操業監視装置の構成を示すブロック図である。
【図2】空間的に不均等な位置に分布した複数のセンサの計測データから等値線を探索し、ある等値線によって形成される図形を示す図である。
【図3】等値線算出部において、空間的に不均等な位置に分布した複数のセンサの計測データから等値線を探索する方法の一例として、「四角形要素四頂点平均を頂点に用いる三角形要素を用いた等値線探索手法」を説明する図である。
【図4】図形特徴情報算出部において、操業安定から操業異常(吹き抜け)に至る過程での図形特徴情報算出の一例を示す図である。
【図5】図形特徴情報算出部において、操業安定から操業異常(吹き抜け)に至る過程での図形特徴情報算出の一例を示す図である。
【図6】図形特徴情報算出部において、操業安定から操業異常(吹き抜け)に至る過程での図形特徴情報算出の一例を示す図である。
【図7】図形特徴情報算出部において、操業安定から操業異常(吹き抜け)に至る過程での図形特徴情報算出の一例を示す図である。
【図8】操業予測部において、図形の特徴情報の時間的推移を用いた操業予測手法を説明する図である。
【符号の説明】
1 高炉設備
2 高炉設備上の複数の各種センサ
3 データ収集装置
4 データ処理装置
5 等値線算出部
6 図形特徴情報算出部
7 操業監視部
8 図形特徴情報推移算出部
9 操業予測部
10 記録部
11 出力部

Claims (9)

  1. 高炉外形面上に複数設置されたセンサからの測定対象量の計測データ、及び前記複数設置されたセンサそれぞれの設置位置に基づき、2次元平面又は3次元空間内に表現された高炉外形面上に前記計測データの分布状態を表して高炉の操業状態を監視する方法であって、
    (a)前記複数設置されたセンサそれぞれから出力される計測データを収集するデータ収集工程と、
    (b)予め設定されている前記センサの設置位置情報に基づき、各センサ及び該センサによる計測データを、前記2次元平面又は3次元空間内に表現された高炉外形面上の各地点に配置し、さらに前記各地点について隣接する地点間で、内角の一つが180度を越えない四角形要素を構成して関連づけて、該四角形要素の4頂点の計測データの平均値をその対角線の交点に設定して、該交点を頂点にもつ三角形要素を用いて、測定対象量の値が同任意の等値線を探索して描画し、所定の値の等値線である閉曲線の図形を算出する等値線算出工程と、
    (c)前記図形に対して画像処理して、計測データの分布状態を表す図形又は図形の特徴情報を導出する図形特徴情報算出工程と、
    (d)前記図形又は図形の特徴情報と、予め設定した図形又は図形の特徴情報とを比較して操業の安定状態又は異常状態を評価して監視する操業監視工程と、
    からなることを特徴とする高炉操業における操業監視方法。
  2. 前記図形特徴情報算出工程は、前記等値線によって形成する図形の、個数、位置、面積、重心、図形の縦横比率、図形内の最大値又は最小値、平均値、及び分散のうち少なくとも一つの特徴情報を画像処理によって算出することを特徴とする請求項1に記載の高炉操業における操業監視方法。
  3. 前記データ収集工程は、前記複数設置されたセンサから、各時刻における計測データを所定の時間間隔で連続的に収集する工程であり、
    さらに前記時刻における計測データについて前記(b)〜(c)の工程を繰り返して、各計測データの時間的推移に対応して等値線によって形成する図形又は図形の特徴情報を更新する図形情報推移算出工程からなることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の高炉操業における操業監視方法。
  4. 前記データ収集工程は、前記複数設置されたセンサから、各時刻における計測データを所定の時間間隔で連続的に収集する工程であり、
    さらに前記時刻における計測データについて前記(b)〜(c)の工程を繰り返して、各計測データの時間的推移に対応して等値線によって形成する図形又は図形の特徴情報を更新して時間的推移を導出する図形情報推移算出工程と、
    これらの時間的推移を予め設定した推移条件と比較する操業予測工程とからなることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の高炉操業における操業監視方法。
  5. 高炉外形面上に複数設置されたセンサからの測定対象量の計測データ、及び前記複数設置されたセンサそれぞれの設置位置に基づき、2次元平面又は3次元空間内に表現された高炉外形面上に前記計測データの分布状態を表して高炉の操業状態を監視する装置であって、
    (e)前記複数設置されたセンサそれぞれから出力される計測データを収集するデータ収集手段と、
    (f)予め設定されている前記センサの設置位置情報に基づき、各センサ及び該センサによる計測データを、前記2次元平面又は3次元空間内に表現された高炉外形面上の各地点に配置して、さらに前記各地点について隣接する地点間で、内角の一つが180度を越えない四角形要素を構成して関連づけて、該四角形要素の4頂点の計測データの平均値をその対角線の交点に設定して、該交点を頂点にもつ三角形要素を用いて、測定対象量の値が同じ任意の等値線を探索して描画し、所定の値の等値線である閉曲線の図形を算出する等値線算出手段と、
    (g)前記図形に対して画像処理して、計測データの分布状態を表す図形又は図形の特徴 情報を導出する図形特徴情報算出手段と、
    (h)前記図形又は図形の特徴情報と予め設定した図形又は図形の特徴情報とを比較し操業の安定状態又は異常状態を評価して監視する操業監視手段
    を具備することを特徴とする高炉操業における操業監視装置。
  6. 前記図形特徴情報算出手段は、前記等値線によって形成する図形の、個数、位置、面積、重心、図形の縦横比率、図形内の最大値又は最小値、平均値、及び分散のうち少なくとも一つの特徴情報を、画像処理によって算出することを特徴とする請求項5に記載の高炉操業における操業監視装置。
  7. 前記データ収集手段は、前記複数設置されたセンサから、各時刻における計測データを所定の時間間隔で連続的に収集するものであり、
    さらに前記時刻における計測データについて前記(f)〜(g)の各手段を繰り返して用いて、各計測データの時間的推移に対応して等値線によって形成する図形又は図形の特徴情報を更新して時間的推移を導出する図形情報推移算出手段と、
    これらの時間的推移を予め設定した推移条件と比較する操業予測手段とを具備することを特徴とする請求項5又は請求項6に記載の高炉操業における操業監視装置。
  8. 前記図形及び図形の特徴情報の推移を可視化する出力手段を備えたことを特徴とする請求項5〜7の何れか1項に記載の高炉操業における操業監視装置。
  9. 請求項1〜4の何れか1項に記載の高炉操業における操業監視方法の各工程をコンピュータに実行させるためのプログラムを記録したことを特徴とするコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
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