JP6535920B2 - ゴム組成物及び防振ゴム - Google Patents

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Description

本発明は、ゴム組成物及びそれを用いてなる防振ゴムに関する。
従来、防振ゴムは、自動車、一般産業機械等の分野において、エンジンや車体の振動や騒音等を防止するために使用されている。このような防振ゴムに求められる性能としては、防振性能に加えて、耐熱性、伸張疲労特性等の耐久性、省エネルギー性等が挙げられる。
防振性能を向上させるためには、防振ゴムに用いられるゴム組成物の動倍率(動バネ定数(Kd)/静バネ定数(Ks))の値を十分小さくすることが有効である。従って自動車のエンジン等の振動を伝達する振動状態での動バネ定数が小さく、かつエンジンや車体の支持性能を示す静的剛性すなわち静バネ定数が大きいほど防振性能に優れるものとなる。
ゴム組成物の動倍率を低くするため、従来から動倍率が低く強度の高い天然ゴムの単独、あるいは天然ゴムを主体としてブタジエンゴムやスチレンブタジエンゴム等のジエン系合成ゴムをブレンドしたものをゴム成分としカーボンブラックを配合したものが使用されてきた。
耐熱性を向上させるため、変性ポリマー、各種添加剤を用いたフィラーの分散改良技術の検討が行われてきた。例えば、ゴム成分としてエチレン・プロピレン・ジエンゴムを用い、過酸化物で加硫することで耐熱性を向上させたゴム組成物が提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、ジエン系ゴムに過酸化物、(メタ)アクリル酸亜鉛、及びビスマレイミド化合物を配合するゴム組成物が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
特開2001−64460号公報 特開2011−144320号公報
しかし、特許文献1に記載の方法では、近年要求が厳しい防振性能、耐久性等の要求性能に対応できない場合があった。また、特許文献2に記載の方法については、伸張疲労特性等の耐久性、省エネルギー性の点についての更なる改良が望まれていた。
本発明は、上記事情に鑑みなされたものであり、防振性能に加えて、優れた伸張疲労特性等の耐久性、及び省エネルギー性を有するゴム組成物、及びそれを硬化させてなる防振ゴムを提供することを目的とする。
本発明者は、上記課題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、下記の発明により解決できることを見出した。すなわち、本発明は、下記の構成を有するゴム組成物、及び防振ゴムを提供するものである。
1.ジエン系ゴムを含むゴム成分、カーボンブラック、ベンズアゾリル構造を含む有機基を有するスルフィド化合物、有機過酸化物、及び硫黄を含有し、該カーボンブラック100質量部に対する該スルフィド化合物の配合量が0.2〜1.6質量部であるゴム組成物。
2.上記1に記載のゴム組成物を硬化させてなる防振ゴム。
本発明によれば、防振性能に加えて、優れた伸張疲労特性等の耐久性、及び省エネルギー性を有するゴム組成物、及びそれを硬化させてなる防振ゴムを提供することができる。
まず、本発明のゴム組成物について説明する。
<ゴム組成物>
本発明のゴム組成物は、ジエン系ゴムを含むゴム成分、カーボンブラック、ベンズアゾリル構造を含む有機基を有するスルフィド化合物、有機過酸化物、及び硫黄を含有し、該カーボンブラック100質量部に対する該スルフィド化合物の配合量が0.2〜1.6質量部であることを特徴とするものである。
以下、本発明のゴム組成物に含有される成分について説明する。
(ゴム成分)
本発明のゴム組成物は、ジエン系ゴムを含むゴム成分を採用する。ジエン系ゴムの種類に特に制限はなく、例えば、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、及びアクリロニトリル−ブタジエンゴム等が挙げられ、これらの中から1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。本発明においては、引張強さ等の基本物性に加えて、防振性能、伸長疲労特性等の耐久性を得る観点から、天然ゴムを単独で、又は天然ゴムと他のジエン系ゴムとの2種以上を組み合わせて好適に用いることができ、特に天然ゴムを単独で用いることが好ましい。
本発明の目的を逸脱しない範囲であれば、ゴム成分としてジエン系以外のゴムを用いることもできる。例えば、イソブチレン−イソプレンゴム、シリコーンゴム、アクリルゴム、エチレンプロピレンゴム、アクリレートブタジエンゴム、ウレタンゴム、クロロスルフォン化ゴム、塩素化ポリエチレン、エピクロルヒドリンゴム、フッ素ゴム等の合成ゴムが挙げられる。また、これら合成ゴムの分子鎖末端が変性された変性合成ゴムを用いることもできる。合成ゴムと変性合成ゴムは、以上の中から1種又は2種以上を適宜選択して使用することができる。
本発明において、ゴム成分に含まれるジエン系ゴムの割合は、70質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましく、90質量%以上が更に好ましく、特に100質量%が好ましい。上記ジエン系ゴムの割合とすることで、引張強さ等の基本物性に加えて、防振性能、伸長疲労特性等の耐久性を得ることができる。
(カーボンブラック)
本発明のゴム組成物は、カーボンブラックを含むことを要する。
カーボンブラックとしては特に制限されないが、引張強さ等の基本物性に加えて、防振性能、伸長疲労特性等の耐久性を得る観点から、窒素吸着比表面積(NSA)が15〜150m/gのものを用いることが好ましい。ここで、窒素吸着比表面積(NSA)は、JIS K 6217−2:2001の規定に従い測定される値である。
このようなカーボンブラックとしては、例えば標準品種であるHS−IISAF(窒素吸着比表面積:96〜101m/g)、LS−ISAF(窒素吸着比表面積:104〜108m/g)、ISAF(窒素吸着比表面積:114〜120m/g)等のISAF級;HAF(窒素吸着比表面積:75〜80m/g)、HS−HAF(窒素吸着比表面積:78〜83m/g)、LS−HAF(窒素吸着比表面積:80〜85m/g)、LI−HAF(窒素吸着比表面積:73〜75m/g)等のHAF級;N339(窒素吸着比表面積:88〜96m/g);MAF−HS(54〜58m/g)、MAF(46〜50m/g)等のMAF級;FEF−HS(42〜49m/g)、FEF(40〜42m/g)等のFEF級;GPF(26〜28m/g)、SRF−HS(28〜32m/g)、SRF(26〜28m/g)、SRF−LS(23〜26m/g)等のSRF級;FT(13〜19m/g)、MT(6m/g)等が好ましく挙げられ、これらを単独で、又は複数種を組み合わせて用いることができる。
また、カーボンブラックのDBP吸油量(ジブチルフタレート吸油量)は、30〜165cm/100g以下が好ましく、30〜140cm/100gがより好ましい。DBP吸油量が上記範囲内であると、引張強さ等の基本物性に加えて、防振性能、伸長疲労特性等の耐久性が得られる。ここで、DBP吸収量は、JIS K 6217−4:2001に準じて測定される、カーボンブラック100g当りに吸収されるジブチルフタレート(DBP)の容量(cm/100g)である。
カーボンブラックの含有量は、特に制限されるものではないが、上記ゴム成分100質量部に対して、好ましくは5〜100質量部、より好ましくは15〜60質量部である。カーボンブラックの含有量が上記範囲内であると、引張強さ等の基本物性に加えて、防振性能、伸長疲労特性等の耐久性が得られる。
(ベンズアゾリル構造を含む有機基を有するスルフィド化合物)
本発明のゴム組成物は、ベンズアゾリル構造を含む有機基を有するスルフィド化合物を含むことを要する。該スルフィド化合物はカーボンブラック用のカップリング剤として機能するものであり、カーボンブラックと所定の割合で組み合わせることで、引張強さ等の基本物性に加えて、防振性能、伸長疲労特性等の耐久性、及び省エネルギー性が得られる。
ベンズアゾリル構造を含む有機基を有するスルフィド化合物は、硫黄原子からなるスルフィド部の両末端に有機基が結合し、該有機基が下記一般式(2)で示されるベンズアゾリル構造を含むものであれば特に制限されない。
式(2)中、XはO原子、S原子、−NH−、又は−NR−を示し、R及びRは水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数2〜6のアルケニル基、炭素数3〜6のシクロアルキル基、炭素数3〜6のシクロアルケニル基を示す。
また、本発明においては、上記式(2)で示される有機基を二つ以上含むスルフィド化合物であることが好ましく、スルフィド部の両末端に上記式(2)で示されるベンズアゾリル構造を含む有機基が結合したビス体構造を有するスルフィド化合物であることがより好ましく、このようなスルフィド化合物としては、下記一般式(1)で示されるものが好ましく挙げられる。
(式(1)中、XはO原子、S原子、−NH−、又は−NR−を示し、R及びRは水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数2〜6のアルケニル基、炭素数3〜6のシクロアルキル基、炭素数3〜6のシクロアルケニル基を示し、複数のX、Rは同じでも異なっていてもよい。lは1〜4の整数を示し、mは1〜6の整数を示し、nは0〜4の整数を示し、複数のm、nは同じでも異なっていてもよい。)
炭素数1〜6のアルキル基は、直鎖状でも、分岐状でもよく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基及びイソプロピル基等の各種プロピル基、n−ブチル基、イソブチル基及びt−ブチル基等の各種ブチル基、各種ペンチル基、各種ヘキシル基等が挙げられる。
炭素数2〜6のアルケニル基は、直鎖状でも、分岐状でもよく、例えば、ビニル基、2−プロペニル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基、4−ペンテニル基、2−メチル−2−プロペニル基、2−メチル−2−ブテニル基、3−メチル−2−ブテニル基、ペンテニエル基、ヘキセニル基等が挙げられる。
炭素数3〜6のシクロアルキル基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
炭素数3〜6のシクロアルケニル基としては、例えば、シクロプロペニル基、シクロペンテニル基等が挙げられる。
また、これらのアルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、及びシクロアルケニル基は置換基を有していてもよく、置換基としては、例えば、ハロゲン原子、アシル基、カルボキシル基、エステル基、カルバモイル基等が挙げられ、これらから選択される少なくとも一種が好ましい。
lは2〜4の整数が好ましい。また、mは1〜4の整数が好ましく、2〜4の整数がより好ましく、nは0〜2の整数が好ましく、0又は1の整数がより好ましく、特に0が好ましい。
特に好ましいスルフィド化合物としては、2,2’−ビス(ベンズイミダゾリル−2)エチルジスルフィド、2,2’−ビス(ベンズイミダゾリル−2)エチルテトラスルフィド、2,2’−ビス(ベンズオキサゾリル−2)エチルジスルフィド、2,2’−ビス(ベンズオキサゾリル−2)エチルテトラスルフィド、2,2’−ビス(ベンズチアゾリル−2)エチルジスルフィド、及び2,2’−ビス(ベンズチアゾリル−2)エチルテトラスルフィド等が挙げられる。
カーボンブラック100質量部に対するスルフィド化合物の配合量は、0.2〜1.6質量部であることを要する。本発明では、カーボンブラックと、特定のスルフィド化合物とを上記配合量で組み合わせることで、引張強さ等の基本物性に加えて、防振性能、伸長疲労特性等の耐久性、及び省エネルギー性が得られる。これらの効果をさらに向上させる観点から、本発明で規定されるカーボンブラックのうち、窒素吸着比表面積が15m/g以上35m/g未満のものを採用する場合、該カーボンブラック100質量部に対するスルフィド化合物の配合量が0.2〜0.9質量部であることが好ましく、窒素吸着比表面積が35〜70m/gのものを採用する場合、該カーボンブラック100質量部に対するスルフィド化合物の配合量が0.2〜1.3質量部であることが好ましく、また、70m/g超90m/g以下のものを採用する場合、該カーボンブラック100質量部に対するスルフィド化合物の配合量が0.2〜1.6質量部であることが好ましい。
(有機過酸化物)
本発明のゴム組成物は、有機過酸化物を含むことを要する。有機過酸化物は架橋剤として機能するものである。
有機過酸化物としては、一般的に過酸化水素(H)の誘導体とみなされる、すなわちH−O−O−Hの水素原子を有機原子団で置換した化合物であり、有機原子団を変えることにより、その熱分解特性が異なる化合物であれば特に制限なく、例えば、過安息香酸、過酸化ベンゾイル、クメンパーオキシド、ジクミルパーオキシド、1,1−ビス(1,1−ジメチルエチルペルオキシ)シクロヘキサン、t−ブチルペルオキシラウレート、t−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサネート等が好ましく挙げられる。本発明においては、これらの有機過酸化物から選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましい。
有機過酸化物の配合量は、ゴム成分100質量部に対し、好ましくは0.1〜10質量部であることが好ましく、0.1〜5質量部がより好ましく、0.1〜2質量部が更に好ましい。有機過酸化物の配合量を上記範囲内にすることで、伸長疲労特性等の耐久性、及び省エネルギー性を損なうことなく耐熱性が得られ、また不飽和脂肪酸の金属塩とのラジカル反応において所望の発熱が得られ、加硫時間が短縮化される。
(硫黄)
本発明のゴム組成物は、硫黄を含むことを要する。硫黄は、架橋剤として機能するものである。本発明のゴム組成物は、基本的には有機過酸化物が架橋剤として機能しており、これに硫黄を添加することで、伸長疲労特性等の耐久性、及び省エネルギー性を損なうことなく、有機過酸化物を架橋剤として用いる場合に期待される耐熱性が得られる。本発明においては、従来架橋剤として知られる硫黄が、有機過酸化物と組み合わせることで、有機過酸化物を用いた場合の弊害、すなわち耐熱性は得られるものの、伸長疲労特性等の耐久性、及び省エネルギー性を損なうという弊害を解決しうることを見出した。
スルフィド化合物100質量部に対する硫黄の配合量は、40質量部以上が好ましい。硫黄の配合量が、40質量部以上であることで、十分な加硫効果が得られて、目標性能を達成しやすい。同様の観点から、70質量部以上がより好ましく、100質量部以上が更に好ましい。また、硫黄の配合量の上限については特に制限はないが、ゴム組成物中のゴム成分の架橋が進み過ぎず、得られる防振ゴムがもろくなることを抑制し、ゴムの疲労性能の低下を抑制する観点から、500質量部以下が好ましく、300質量部以下がより好ましい。
(その他成分)
本発明のゴム組成物には、ゴム成分、充填剤のカーボンブラック、及びカーボンブラック用のカップリング剤のベンズアゾリル構造を含む有機基を有するスルフィド化合物、有機過酸化物、硫黄以外に、必要に応じて各種添加剤、例えば架橋剤、加硫促進剤、亜鉛華、脂肪酸、カーボンブラック及びシリカ以外の充填剤(以下、他の充填剤という)、シランカップリング剤、老化防止剤、可塑剤、軟化剤、加工助剤等を本発明の目的に反しない範囲で適宜含有することができる。以下、これら各成分について説明する。
上記の有機過酸化物、硫黄以外の架橋剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、無機架橋剤、ポリアミン架橋剤、樹脂架橋剤、硫黄化合物系架橋剤、オキシム−ニトロソアミン系架橋剤等が挙げられる。
ゴム組成物中の架橋剤の配合量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、ゴム成分100質量部に対し、0.3質量部〜10質量部が好ましい。架橋剤の配合量が0.3質量部以上であると、架橋を確実に進行させることができ、10質量部以下であると、一部の架橋剤により混練り中に架橋が進んでしまったり、架橋物の物性が損なわれたりすることを防止することができる。
加硫促進剤としては、CBS(N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド)、TBBS(N−t−ブチル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド)、TBSI(N−t−ブチル−2−ベンゾチアジルスルフェンイミド)等のスルフェンアミド系の加硫促進剤;DPG(ジフェニルグアニジン)等のグアニジン系の加硫促進剤;TMTD(テトラメチルジスルフィド)、TETD(テトラエチルチウラムジスルフィド)、TBTD(テトラブチルチウラムジスルフィド)、テトラベンジルチウラムジスルフィド等のチウラム系加硫促進剤;ジアルキルジチオリン酸亜鉛等が例示される。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
加硫促進剤の含有量はゴム成分100質量部に対して0.1〜3質量部とすることが好ましく、0.5〜2.5質量部とすることがより好ましい。
加硫を促進する観点から、亜鉛華や脂肪酸等の加硫促進助剤をゴム組成物に含有することができる。脂肪酸としては飽和、不飽和あるいは直鎖状、分岐状のいずれであってもよい。また、炭素数も特に制限されるものではなく、例えば、炭素数1〜30、好ましくは15〜30のものを使用することができる。
脂肪酸の具体例としては、シクロヘキサン酸(シクロヘキサンカルボン酸)、側鎖を有するアルキルシクロペンタン等のナフテン酸、ヘキサン酸、オクタン酸、デカン酸(ネオデカン酸等の分岐状カルボン酸を含む)、ドデカン酸、テトラデカン酸、ヘキサデカン酸、オクタデカン酸(ステアリン酸)等の飽和脂肪酸、メタクリル酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸等の不飽和脂肪酸、ロジン、トール油酸、アビエチン酸等の樹脂酸等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。本発明においては、亜鉛華及びステアリン酸を好適に用いることができる。これら加硫促進助剤のゴム組成物中の含有量は、特に制限されるものではないが、ゴム成分100質量部に対して好ましくは0.5〜10質量部、より好ましくは0.5〜5質量部とすることができる。加硫促進助剤の含有量が0.5質量部以上であることで、ゴム組成物の混練作業性を損ねにくく、動倍率の上昇を抑制することができ、10質量部以下であることで、加硫遅延等を起こしにくい。
他の充填剤としては、シリカ、微粒子ケイ酸マグネシウム、重質炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、クレー及びタルク等の無機充填剤や、ハイスチレン樹脂、クマロンインデン樹脂、フェノール樹脂、リグニン、変性メラミン樹脂及び石油樹脂等の有機充填剤を使用することができる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
ゴム組成物中の充填剤の分散性を向上させ、防振ゴムの補強性を向上させる観点から、本発明のゴム組成物にシランカップリング剤を含有することができる。
シランカップリング剤としては、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルメトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、ビス−トリエトキシシリルプロピルテトラスルフィド、ビス−トリエトキシシリルプロピルジスルフィド等を挙げることができる。
これらのシランカップリング剤は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。また、その含有量は、特に制限されるものではないが、カーボンブラックを含む充填剤の含有量に対して、好ましくは1〜10質量%、より好ましくは5〜10質量%とすることができる。シランカップリング剤の含有量が充填剤の含有量に対して1質量%以上であることで、充填剤の分散性及び防振ゴムの補強性向上効果を十分に発現し易く、10質量%以下であることで、シランカップリング剤の配合過多を抑制し、経済的な面でも好ましい。
老化防止剤としては、公知のものを用いることができ、特に制限されないが、フェノール系老化防止剤、イミダゾール系老化防止剤、アミン系老化防止剤等を挙げることができる。これら老化防止剤は1種を単独で又は2種以上を併用することができる。老化防止剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して好ましくは1〜10質量部、より好ましくは1〜7質量部である。
可塑剤としては、公知のパラフィンワックス及びミクロクリスタリンワックス等のワックス、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド及びエルカ酸アミド等のアマイド化合物等が例示され、1種を単独で又は2種以上を併用して用いればよい。特に本発明においては、パラフィンワックス、ミクロクリスタリンワックスを好適に用いることができる。これらの含有により、成形作業性を向上させることができる。含有量は、特に制限されるものではないが、ゴム成分100質量部に対して好ましくは0.5〜10質量部とすることができる。
軟化剤としては、公知のものを使用することができ、特に制限されないが、具体的には、アロマティック油、ナフテニック油、パラフィン油等のプロセスオイルや、やし油等の植物油、アルキルベンゼンオイル等の合成油、ヒマシ油等を使用することができる。本発明においては、ナフテニック油を好適に用いることができる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これら軟化剤の含有量は、特に制限されるものではないが、ゴム成分100質量部に対して好ましくは1〜80質量部とすることができる。含有量が上記範囲内であることで、ゴム組成物の混練作業性を損ねにくい。
なお、油展されたゴム(すなわち、軟化剤を含有するゴム)を上記ゴム成分として用いる場合は、油展されたゴムに含有される軟化剤と、混合時に別途添加される軟化剤との合計量が上記範囲となるように調整すればよい。
また、本発明のゴム組成物は、上記の成分以外にも必要に応じて、通常使用されている酸化防止剤、滑剤、粘着付与剤、石油系樹脂、紫外線吸収剤、分散剤、相溶化剤、均質化剤、加硫遅延剤等の添加剤を適量配合することができる。
本発明のゴム組成物を得る際、上記各成分の配合方法に特に制限はなく、全ての成分を一度に配合して混練してもよいし、2段階又は3段階に分けて各成分を配合して混練を行ってもよい。なお、成分の混練に際しては、ロール、インターナルミキサー、バンバリーローター等の公知の混練機を用いることができる。更に、混練物をシート状又は帯状等に成形する際には、押出成形機、プレス機等の公知の成形機を用いればよい。
<防振ゴム>
本発明の防振ゴムは、本発明のゴム組成物を硬化させてなるものである。
ゴム組成物の硬化は、例えば、ゴム組成物に既述の加硫剤を配合し、加熱することにより、硬化することができる。
ゴム組成物を硬化させる際の硬化条件(加硫条件)は、特に限定されるものはないが、通常140〜180℃、好ましくは150〜170℃で、5〜120分間の条件を採用することができる。
本発明のゴム組成物を硬化させてなる防振ゴムは、引張強さ等の基本物性、防振性能に加えて、優れた伸張疲労特性等の耐久性、及び省エネルギー性を有するものである。よって、これらの性能が要求される過酷な環境において使用される防振ゴム、特に自動車のエンジンマウント、ストラットマウント、ボディマウント、サスペンションブッシュ等に使用する防振ゴムとして好適に使用されるものであるが、これらに限定されるものではない。
以下、本発明について実施例及び比較例を挙げて詳細に説明するが、本発明は下記実施例に制限されるものではない。各例で得られたゴム組成物を用い、以下に示す方法に従って、耐久性及び省エネルギー性を評価した。
(tanδの測定)
各例で得られた防振ゴムから、縦40mm、横5mm、厚さ2mmのシートを作製し、粘弾性スペクトロメーター(株式会社東洋精機製作所製)により、チャック間距離30mm、動的歪2%、周波数10Hzの測定条件にて、動的粘弾性測定を行ない、20℃における損失正接(tanδ)を測定した。各例の損失正接を、比較例1、3及び5の損失正接を100として、下記の各表に指数表示し、省エネルギー性の評価基準とした。
(伸張疲労破断回数の測定)
JIS K6270に準拠し、ダンベル状試験片にて試験歪み0〜200%、試験周波数3.5Hzで伸張疲労(一軸伸張疲労)を与え、サンプルが破断するまでの回数(伸張疲労破断回数)を測定した。測定された回数を、比較例1、3及び5の回数を100として、下記の各表に指数表示し、耐久性(伸張疲労特性)の評価基準とした。
(実施例1〜13、及び比較例1〜6)
下記表1〜3に示される種類及び量の各成分を、バンバリーミキサー中で混練し、ゴム組成物を得た。次いで、得られたゴム組成物を155℃においてT90×2(分)加硫処理して防振ゴムを作製した。ここで、T90は、加硫時間を横軸とし、トルクを縦軸とする加硫曲線を求め、応力が最大値をとる点を加硫100%、最小値の点を加硫0%としたとき、90%加硫に対応する加硫時間(分)である。
表1〜3に示した各成分の詳細は下記の通りである。また、スルフィド化合物の配合量は、カーボンブラック100質量部に対する配合量(質量部)である。
ゴム成分:天然ゴム,「RSS#1」
カーボンブラックA:東海カーボン株式会社製「シーストTA」,窒素吸着比表面積:19m/g,DBP吸着量:42cm/100g
カーボンブラックB:東海カーボン株式会社製「シーストSO」,窒素吸着比表面積:42m/g,DBP吸着量:115cm/100g
カーボンブラックC:東海カーボン株式会社製「シースト3」,窒素吸着比表面積:79m/g,DBP吸着量:101cm/100g
スルフィド化合物:2,2’−ビス(ベンズイミダゾリル−2)エチルジスルフィド,四国化成工業株式会社製
スルフィド化合物配合量:カーボンブラック100質量部に対する配合量(質量部)である。
硫黄:鶴見化学工業株式会社製「粉末硫黄」
硫黄配合量:スルフィド化合物100質量部に対する配合量(質量部)である。
有機過酸化物:ジクミルパーオキシド,日油株式会社製「パークミルD−40」
老化防止剤:N−フェニル−N’−(1,3−ジメチルブチル)−p−フェニレンジアミン,大内新興化学工業株式会社製「ノクラック 6C」
表1〜3の結果から、本発明のゴム組成物を用いた防振ゴムは、伸張疲労特性等の耐久性及び省エネルギー性に優れ、これらの性能を両立し得ることが確認された。一方、スルフィド化合物を含まない、あるいはその含有量が少ない、又は多すぎる比較例のゴム組成物を用いたゴムは、耐久性、省エネルギー性の点で優れた性能が得られていないことが確認された。

Claims (6)

  1. ジエン系ゴムを含むゴム成分、窒素吸着比表面積が15m/g以上19m/g以下であるカーボンブラック、ベンズアゾリル構造を含む有機基を有するスルフィド化合物、有機過酸化物、及び硫黄を含有し、該カーボンブラック100質量部に対する該スルフィド化合物の配合量が0.2〜1.6質量部であるゴム組成物であって、
    前記ベンズアゾリル構造を含む有機基を有するスルフィド化合物が、下記一般式(1)で示される化合物であるゴム組成物。

    (式(1)中、XはO原子、S原子、−NH−、又は−NR−を示し、R及びRは炭素数1〜6のアルキル基、炭素数2〜6のアルケニル基、炭素数3〜6のシクロアルキル基、炭素数3〜6のシクロアルケニル基を示し、複数のX、Rは同じでも異なっていてもよい。lは1〜4の整数を示し、mは1〜4の整数を示し、nは0〜4の整数を示し、複数のm、nは同じでも異なっていてもよい。)
  2. 有機過酸化物が、過安息香酸、過酸化ベンゾイル、クメンパーオキシド、ジクミルパーオキシド、1,1−ビス(1,1−ジメチルエチルペルオキシ)シクロヘキサン、t−ブチルペルオキシラウレート、t−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサネートからなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1に記載のゴム組成物。
  3. ゴム成分100質量部に対する有機過酸化物の配合量が、0.1〜10質量部である請求項1又は2に記載のゴム組成物。
  4. スルフィド化合物100質量部に対する硫黄の配合量が40質量部以上である請求項1〜3のいずれか1項に記載のゴム組成物。
  5. カーボンブラックの窒素吸着比表面積が15m/g以上19m/g以下であり、該カーボンブラック100質量部に対するスルフィド化合物の配合量が0.2〜0.9質量部である請求項1〜4のいずれか1項に記載のゴム組成物。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項に記載のゴム組成物を硬化させてなる防振ゴム。
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