JP6535481B2 - 既設建物の耐震補強構造及び既設建物の耐震補強方法 - Google Patents

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本発明は、既設建物の耐震補強構造及び既設建物の耐震補強方法に関する。
従来、既設建物の耐震補強方法として、既設建物の柱及び梁に複数のアンカーボルトを差し込んで、それらアンカーボルトに長尺の鋼板を固定した後、その鋼板の周囲にコンクリートを打設することによって、矩形枠状の鋼板入りコンクリート体を既設建物に接合させるものがある(例えば、特許文献1)。
特開平10−152997号公報
ところで、既設建物に矩形枠状の鋼板入りコンクリート体を接合し、その矩形の対角線上に斜状介在補強体(ブレース)を配置すると、窓などの開口部を塞いでしまう、という課題がある。
本発明は、このような従来技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的とするところは、開口部を塞ぐことなく耐震性能を高めることができる既設建物の耐震補強構造及び既設建物の耐震補強方法を提供することにある。
以下、上記課題を解決するための手段及びその作用効果について記載する。
上記課題を解決する既設建物の耐震補強構造は、複数の梁及び前記梁と接する壁部を備える既設建物の耐震補強構造であって、前記梁に沿って配置された鋼材と、前記鋼材に連結された状態で前記壁部に沿って配置された鉄筋と、前記鋼材及び前記鉄筋を内部に含んで前記梁及び前記壁部に沿って設けられたコンクリート体と、を備え、前記壁部の厚さ方向において、前記梁に沿って配置された前記鋼材及び前記コンクリート体により構成される第1補強部の長さは、前記壁部に沿って配置された前記鉄筋及び前記コンクリート体により構成される第2補強部の長さ以上である。
この構成によれば、第1補強部はコンクリート体の内部に強度と変形性能に優れた鋼材を含むので、既設建物の耐震性能を大きく向上させることができる。なお、第1補強部は梁に沿って配置されるので、鋼材を含むことによって厚さ方向における長さが長く(厚く)なってもじゃまになりにくい。また、壁部に沿って配置される第2補強部は、第1補強部と比較して、厚さ方向における長さ(厚さ)が第1補強部以下なので、既設建物の開口部からつづく居住空間への突出を抑制することができる。そして、第2補強部に含まれる鉄筋と第1補強部に含まれる鋼材とを連結することにより、鉄筋の軸方向に生じる力を鋼材と鉄筋との間で効率よく伝達して、梁と壁部の相対的な変位による梁及び壁部の破壊を抑制することができる。このような補強のための構造体を梁及び壁部に沿って配置することにより、開口部を塞ぐことなく既設建物の耐震性能を高めることができる。
上記既設建物の耐震補強構造は、前記梁に先端部が差し込まれた軸材を備え、前記鋼材は、前記軸材の基端部を挿通可能な軸材挿通孔が設けられたウエブ及び前記ウエブの両端から延びる一対のフランジを有するH形鋼であることが好ましい。
この構成によれば、H形鋼のウエブに設けられた軸材挿通孔に軸材を挿通して軸材と鋼材を接合することにより、軸材の軸方向と交差する方向に生じる力を鋼材と軸材との間で効率よく伝達することができる。また、鋼材をH形鋼とすることで、コンクリート体の圧縮応力をフランジで効率よく受けることができる。
上記既設建物の耐震補強構造において、前記鋼材は鉄筋を挿通可能な鉄筋挿通孔を有し、前記鋼材に連結された前記鉄筋を第1の鉄筋とするときに、前記鋼材の前記鉄筋挿通孔に固定されることなく挿通される第2の鉄筋を備えることが好ましい。
この構成によれば、第1の鉄筋は鋼材に連結されているので、鋼材に作用する曲げ応力に対して第1の鉄筋の引張り応力で抵抗することができる。一方、第2の鉄筋は鋼材に対しては連結されず、鉄筋挿通孔に挿通するだけでよいので、第2の鉄筋を鋼材に連結する手間を省くことができる。
上記既設建物の耐震補強構造において、前記第1補強部は前記第2補強部よりも水平方向における長さが長いことが好ましい。
この構成によれば、第2補強部の上下に設けられる第1補強部の長さを伸ばすことにより、既設建物の梁が補強され、地震時等の横揺れに対する耐力を向上させることができる。
上記課題を解決する既設建物の耐震補強方法は、複数の梁及び前記梁と接する壁部を備える既設建物の耐震補強方法であって、前記梁に沿って鋼材を配置する鋼材配置工程と、前記壁部に沿って鉄筋を配置する鉄筋配置工程と、前記鋼材と前記鉄筋とを連結する連結工程と、前記梁及び前記壁部に沿う位置に、前記鋼材及び前記鉄筋を含むようにコンクリートを打設するコンクリート打設工程と、を備え、前記梁に沿って配置される前記鋼材及び前記コンクリートにより構成される第1補強部は、前記壁部に沿って配置される前記鉄筋及び前記コンクリートにより構成される第2補強部よりも、前記壁部の厚さ方向における長さが長いことを特徴とする。
この構成によれば、上記耐震補強構造と同様の作用効果を得ることができる。
本発明によれば、開口部を塞ぐことなく既設建物の耐震性能を高めることができる。
既設建物の耐震補強構造の一実施形態を模式的に示す正面図。 既設建物の耐震補強構造を示す断面図。 補強部の構成を模式的に示す正面図。 補強部の設置位置を示す斜視図。 第2補強部がせん断応力を負担したときの第1補強部における応力の釣り合いを示す説明図。 第2補強部が曲げ応力を負担したときの第1補強部における応力の釣り合いを示す説明図。 補強部の第1変更例を示す断面図。 補強部の第2変更例を示す正面図。
以下、既設建物の一例として、鉄筋コンクリート造の共同住宅の耐震補強構造及び既設建物の耐震補強方法の実施形態を図面に従って説明する。
図1に示すように、既設建物11は、水平方向Hに並ぶ複数の柱12と、鉛直方向Zに並ぶ複数の梁13と、柱12及び梁13と接する壁部14と、壁部14に外接して張り出すことで居住空間を形成するベランダ15と、を備える。なお、梁13のうち、鉛直方向Zにおける最下部にあるものを基礎梁13Bという。本実施形態の既設建物11は、鉛直方向Zに並んで水平方向Hに延びる6つ(複数)の梁13を備える5階建ての建物である。
壁部14には、ベランダ15への出入り口となる掃き出し窓16と、下端位置が床面よりも高い窓17とが設けられている。掃き出し窓16及び窓17は既設建物11の壁部14に設けられた開口部の一例であり、既設建物11の壁部14には、これら窓の他に、開閉扉が取り付けられるドア開口部などが開口部として設けられていてもよい。なお、掃き出し窓16及び窓17の鉛直上方にある外壁を垂れ壁14b、窓17の鉛直下方にある外壁を腰壁14w、鉛直方向Zに並ぶ2つの梁13(床梁と天井梁)の間に延びる開口部のない外壁を袖壁14sという。
既設建物11には、耐震補強構造として、既設建物11の開口部にかからないように補強部21(図1において二点鎖線で示す)が設置されている。補強部21は、梁13に沿って配置される鉄筋鉄骨コンクリート構造の第1補強部22(図1において濃い網掛けで示す部分)と、袖壁14sに沿って配置される鉄筋コンクリート構造の第2補強部23(図1において薄い網掛けで示す部分)とを備える。第1補強部22及び第2補強部23は、補強部21として一体化した状態で、それぞれ梁13及び袖壁14sから外方に向けて突出するように既設建物11に接合される。
補強部21は、鉛直方向Zに並んで対をなす2つの第1補強部22と、それら対をなす第1補強部22の間に位置する第2補強部23と、を基本の1ユニットとすることが好ましい。例えば、既設建物11の1階部分を補強する補強構造であれば、1階部分の床梁(基礎梁13B)に沿って設けられる第1補強部22と、1階部分の天井梁(2階部分の床梁)に沿って設けられる第1補強部22と、1階部分の袖壁14sに沿って設けられる第2補強部23と、が1ユニットとなる。そして、これに加えて2階部分も補強する場合には、2階部分の袖壁14sに沿って設けられる第2補強部23と、2階部分の天井梁(3階部分の床梁)に沿って設けられる第1補強部22とが追加される。
図1に例示する補強部21A〜21Dのように、補強部21は、鉛直方向Zに並ぶ第1補強部22の数や水平方向Hに並ぶ第2補強部23の数、あるいは第1補強部22及び第2補強部23の水平方向Hへの延設長さなどを任意に変更することができる。なお、補強部21A〜21Dは、一棟の既設建物11を補強するための組み合わせを示すものではなく、補強部21の変更例を示すために一棟の既設建物11上に表現したものである。
図1において一番左に位置する補強部21Aは、鉛直方向Zに並ぶ3つの第1補強部22と、これら第1補強部22の間に位置して鉛直方向Zに並ぶ2つの第2補強部23と、を備える。そして、水平方向Hにおいて、3つの第1補強部22及び2つの第2補強部23の長さは等しい。
図1において補強部21Aの右隣に位置する補強部21Bは、補強部21Aと比較して、一番下側に位置する第1補強部22の水平方向Hにおける長さが、他の第1補強部22及び2つの第2補強部23よりも長い。
図1において一番右に位置する補強部21Dは、鉛直方向Zに並ぶ4つの第1補強部22と、これら第1補強部22の間に位置して鉛直方向Zに並ぶ3つの第2補強部23と、を備える。そして、水平方向Hにおいて4つの第1補強部22の長さは3つの第2補強部23よりも長い。
図1において補強部21Dの左隣に位置する補強部21Cは、鉛直方向Zに並ぶ4つの第1補強部22と、これら第1補強部22の間に位置して鉛直方向Zに並ぶ第2補強部23と、を備える。そして、水平方向Hにおいて、4つの第1補強部22は複数の袖壁14s、掃き出し窓16及び窓17にまたがるように水平方向Hに延設され、第2補強部23は、第1補強部22に上下端が接続するように、袖壁14sのある位置に間隔をあけて配置される。
図2に示すように、補強部21は、梁13に先端部が差し込まれた複数の軸材24と、梁13に沿って配置された鋼材25と、袖壁14sに沿って配置された鉄筋26と、鋼材25及び鉄筋26を内部に含んで既設建物11と一体化されたコンクリート体27と、を備える。すなわち、第1補強部22は、鋼材25及びコンクリート体27を含んで梁13に沿って配置されているとともに、第2補強部23は鉄筋26及びコンクリート体27を含んで袖壁14sに沿って配置されている。なお、鋼材25の周囲にはせん断補強筋28(あばら筋)を配置して、鋼材25とコンクリート体27との一体性を高めることが好ましい。
鋼材25は、ウエブ25w及びウエブ25wの両端から延びる一対のフランジ25fを有するH形鋼とすることが好ましい。この場合、鋼材25において、ウエブ25wには軸材24の基端部を挿通可能な複数の軸材挿通孔35が設けられるとともに、フランジ25fには鉛直方向Zに延びる鉄筋26を挿通可能な複数の鉄筋挿通孔36が設けられる。なお、図2においては、紙面と直交する方向において異なる位置にある軸材挿通孔35と鉄筋挿通孔36を図示するために、2点差線で囲んで示す拡大断面図においては、拡大していない部分と紙面と直交する方向において異なる位置で切断した断面を示している。
鉄筋挿通孔36に挿通される鉄筋26は、壁部14の厚さ方向(図2では左右方向)において鋼材25のウエブ25wと袖壁14sの間に配置され、第2補強部23のコンクリート体27は、その鉄筋26の周囲に配置される。第1補強部22は、H形鋼のように鉄筋26よりも断面積の大きい鋼材25を含むことから、壁部14の厚さ方向において、第1補強部22の長さは第2補強部23の長さよりも長い。例えば、厚さ方向において、第1補強部22の長さ(厚さ)が265mm程度である場合に、第2補強部23の長さ(厚さ)は135mm程度となる。
軸材24は、その基端部にナット31に形成される雌ねじ部と対応する雄ねじ部を有するアンカーボルトとすることが好ましい。この場合、軸材24の基端部を挿通した鋼材25のウエブ25wを軸材24に取り付けたナット31で挟持することにより、軸材24を介して鋼材25を梁13に連結することができる。
図3に示すように、複数の軸材24のうち、特に鋼材25の長手方向における両端付近の軸材24には鋼材25のウエブ25wを挟持するように対をなすナット31を取り付けることが好ましいが、その他の軸材24においては、抜け留めとなるように基端側にのみナット31を取り付けたり、ナット31を取り付けなかったりしてもよい。この場合にも、鋼材25を含むようにコンクリートを打設すれば、軸材挿通孔35と軸材24の間に入り込むコンクリート体27を介して鋼材25を軸材24と連結することができる。なお、図3では、鉄筋26の構成を明示するために、せん断補強筋28の図示を省略している。
鉄筋26は、水平方向Hと交差する方向(例えば鉛直方向Z)に延設されて鋼材25の鉄筋挿通孔36に挿通される第1の鉄筋26M及び第2の鉄筋26Lと、水平方向Hに延設される第3の鉄筋26Hと、を含む。
第1の鉄筋26Mは、例えば機械式継手32によって接合されるネジ節鉄筋であり、第2補強部23において水平方向Hの両端部分に配置され、ナット33などによって鋼材25に連結される。第2の鉄筋26Lは、例えば重ね継手等により接合される第1の鉄筋26Mよりも直径の小さい鉄筋であって、水平方向Hにおいて両端部分に配置された第1の鉄筋26Mの間に配置される。第2の鉄筋26Lは必ずしも鋼材25に連結する必要はなく、鋼材25の鉄筋挿通孔36に対して、固定されることなく挿通されればよい。なお、第1の鉄筋26M及び第2の鉄筋26Lの数は任意に変更できる。
次に、既設建物11の耐震補強方法について説明する。
図2に示すように、本実施形態の補強部21は、ベランダ15の床部分を上下に貫通して設けられるため、補強部21の設置にあたっては、まずベランダ15の袖壁14sに接する床部分の一部を除去して設置用開口15hを設ける。
そして、軸材24の先端部を梁13に差し込んで、軸材24の基端部が梁13から突出した状態となるように、軸材24を設置する(軸材設置工程)。
続いて、鋼材25をクレーン等で吊して、鋼材25に設けられた複数の軸材挿通孔35に軸材24の基端部をそれぞれ挿通する(挿通工程)。
また、一部または全部の軸材24において、ナット31等により鋼材25を固定することにより、フランジ25fが水平をなすように梁13に沿って鋼材25を配置する。このとき、鋼材25は梁13から5cm程度離れた位置に配置する(鋼材配置工程)。そして、必要に応じて、鋼材25の周囲にせん断補強筋28(帯筋)を配置する。
次に、袖壁14sに沿って鉄筋26を配置する(鉄筋配置工程)。まず、第1の鉄筋26Mを鉛直方向Zに並ぶ鋼材25の鉄筋挿通孔36に挿通し、ナット33等で全ての鋼材25に対して固定することにより、鋼材25と鉄筋26Mとを連結する(連結工程)。続いて、第1の鉄筋26Mに接合する態様で、水平方向Hに延びる第3の鉄筋26Hを配筋する。さらに、第2の鉄筋26Lを鉛直方向Zに並ぶ全ての鋼材25の鉄筋挿通孔36に挿通し、水平方向Hに延びる第3の鉄筋26Hに固定する。
そして、鉄筋26の配筋が終了すると、鋼材25及び鉄筋26を囲むように、壁部14の外面側にコンクリートを打設するための型枠を取り付け、その型枠内にコンクリートを流し込むことにより、既設建物11と接する位置に鋼材25及び鉄筋26を含むように普通コンクリートを打設する(コンクリート打設工程)。
そして、打設したコンクリートが固まってコンクリート体27となった後に、型枠を取り外す。これにより、梁13に沿って第1補強部22が形成されるとともに、袖壁14sに沿って第2補強部23が形成される。その後、必要に応じて、外装材の吹付けなど、コンクリート体27の表面処理を行って、補強部21を完成させる。
次に、本実施形態における既設建物11の耐震補強構造及び既設建物の耐震補強方法の作用について説明する。
図4に二点鎖線で示すように、補強部21は、掃き出し窓16などの開口部を塞ぐことなく、既設建物11の外壁部分に接合される。さらに、壁部14に沿って設けられる第2補強部23は第1補強部22よりも外方への突出長さが短いので、圧迫感が少なく、既設建物11において掃き出し窓16からつづく居住空間であるベランダ15が狭くなりにくい。すなわち、H形鋼である鋼材25を含む第1補強部22は増し打壁となる第2補強部23よりも外方に突出するが、第1補強部22は居住空間としての利用度が低い位置(床や天井から水平に延びる位置)に配置されるので、突出していてもじゃまになりにくい。
また、補強部21は梁13や袖壁14sなど、既設建物11が備える構造物に対して平面的なはみ出しがないため、既設建物11の外壁に取り付けても、その美観に与える影響が小さい。そして、補強部21は既設建物11の外側から施工可能なので、建物内部での作業を必要としない。
なお、壁部14に増打ち壁を設けるにあたって、無収縮モルタルの吹き付けやコテ塗りを行う場合には、作業の手間がかかったり、コストが高くなってしまったりする。その点、本実施形態の補強部21は、普通コンクリートの打設によりコンクリート体27を形成するので、作業の手間が少なく、コスト面でも有利である。
そして、本実施形態では、第1補強部22を介して第2補強部23を既設建物11に取り付けるため、図5及び図6に示すように、地震時などに第2補強部23がせん断応力や曲げ応力を負担することにより、梁13や壁部14の変形や破壊が抑制される。なお、図5及び図6においては、構造要素に作用する力の関係を明示するために、補強部21の構成を簡素化して表現している。
図5は、第2補強部23がせん断応力を負担したときの、第1補強部22における応力の釣り合いを示す。第2補強部23がせん断応力Fsを負担すると、コンクリート体27には斜め方向に圧縮応力Fcが生じ、鉄筋26Lには引張応力Ftが生じる。そして第1補強部22の内部では、コンクリート体27の圧縮応力Fcと鉄筋26Lの引張応力Ftが、鋼材25を介して軸材24のせん断応力Fsと釣り合う。
図6は、第2補強部23が曲げ応力を負担したときの、第1補強部22における応力の釣り合いを示す。第2補強部23が曲げ応力を負担すると、コンクリート体27には鉛直方向に圧縮応力Fcが生じ、鉄筋26Mには引張応力Ftが生じる。そして第1補強部22の内部では、コンクリート体27の鉛直方向の圧縮応力Fcと鉄筋26Mの引張応力Ftが、鋼材25を介して軸材24のせん断応力Fsと釣り合う。
このように、鋼材25は、コンクリート体27の圧縮応力Fc、鉄筋26L,26Mの引張応力Ft及び軸材24のせん断応力Fsを伝達するためにある。なお、鋼材25としてのH形鋼のウエブ25wに設けられた軸材挿通孔35に軸材24を挿通して軸材24と鋼材25を接合することにより、軸材24の軸方向と交差する方向に生じる力を鋼材25と軸材24との間で効率よく伝達することができる。また、鋼材25としてのH形鋼のフランジ25fに設けられた鉄筋挿通孔36に鉄筋26L,26Mを挿通して鉄筋26L,26Mと鋼材25を接合することにより、鉄筋26L,26Mの軸方向に生じる力を鋼材25と鉄筋26L,26Mとの間で効率よく伝達することができる。そして、鋼材25をH形鋼とすることで、コンクリート体27の圧縮応力Fcをフランジ25fで効率よく受けることができる。
補強部21は鉛直方向Zに延びる鋼材を備えず、第2補強部23は第1補強部22と比較して厚さが薄いが、第2補強部23は壁部14に対する設置面積が広いため、高い耐震性を発揮することができる。
そして、例えば1階部分に補強部21を設ける場合、1階の天井梁(2階の床梁)となる梁13を第1補強部22で補強することにより、第2補強部23の強度を活かすことができる。
なお、図1に示す補強部21B,21C,21Dのように、水平方向Hにおいて第1補強部22の長さを第2補強部23よりも長くすれば、その分、既設建物11の梁13を補強する効果が高くなり、地震時等の横揺れに対する耐力を向上させることができるので、補強部21全体として耐震性を確保することができる。
また、補強部21の設置にあたっては、袖壁14sには軸材24(あと施工アンカー)を設置しないので、軸材24を差し込む穴を形成する際に発生する騒音や振動の発生が少なくて済む。
以上詳述した実施形態によれば、次のような効果が発揮される。
(1)第1補強部22はコンクリート体27の内部に強度と変形性能に優れた鋼材25を含むので、既設建物11の耐震性能を大きく向上させることができる。なお、第1補強部22は梁13に沿って配置されるので、鋼材25を含むことによって厚さ方向における長さが長く(厚く)なってもじゃまになりにくい。また、壁部14に沿って配置される第2補強部23は、第1補強部22と比較して、厚さ方向における長さ(厚さ)が第1補強部22以下なので、既設建物11の開口部からつづく居住空間への突出を抑制することができる。そして、第2補強部23に含まれる鉄筋26Mと第1補強部22に含まれる鋼材25とを連結することにより、鉄筋26Mの軸方向に生じる力を鋼材25と鉄筋26Mとの間で効率よく伝達して、梁13と壁部14の相対的な変位による梁13及び壁部14の破壊を抑制することができる。このような補強のための構造体を梁13及び壁部14に沿って配置することにより、開口部を塞ぐことなく既設建物11の耐震性能を高めることができる。
(2)鋼材25としてのH形鋼のウエブ25wに設けられた軸材挿通孔35に軸材24を挿通して軸材24と鋼材25を接合することにより、軸材24の軸方向と交差する方向に生じる力を鋼材25と軸材24との間で効率よく伝達することができる。また、鋼材25をH形鋼とすることで、コンクリート体27の圧縮応力をフランジ25fで効率よく受けることができる。
(3)鋼材25としてのH形鋼のフランジ25fに設けられた鉄筋挿通孔36に鉄筋26L,26Mを挿通して鉄筋26L,26Mと鋼材25を接合することにより、鉄筋26L,26Mの軸方向に生じる力を鋼材25と鉄筋26L,26Mとの間で効率よく伝達することができる。
(4)第1の鉄筋26Mは鋼材25に連結されているので、鋼材25に作用する曲げ応力に対して第1の鉄筋26Mの引張り応力で抵抗することができる。一方、第2の鉄筋26Lは中間の鋼材25に対しては連結されず、鉄筋挿通孔36に挿通するだけでよいので、第2の鉄筋26Lを鋼材25に連結する手間を省くことができる。
(5)第2補強部23の上下に設けられる第1補強部22の長さを伸ばすことにより、既設建物11の梁13が補強され、地震時等の横揺れに対する耐力を向上させることができる。
(変更例)
なお、上記実施形態は、次のように変更して具体化することも可能である。また、上記実施形態及び下記変更例は、任意に組み合わせて具体化することが可能である。
・補強部21に内蔵する鋼材25はH形鋼に限らず、例えば、鋼板、I形鋼、L形鋼、溝形鋼、山形鋼など、任意に変更することができる。ただし、鋼材25として、平行をなす一対のフランジ25fを有するH形鋼を用いることにより、コンクリート体27の圧縮応力を上下方向から効率よく受けることができるので、より好ましい。
・第2補強部23は、袖壁14sだけでなく、窓(開口部)の上下にある垂れ壁14bや腰壁14wにも設けることができる。
・図7に示す第1変更例のように、例えば補強部21を取り付ける壁部14に外接して居住空間を形成するベランダ15やバルコニー、廊下等がないなどの事情により、補強部21の突出が許容される場合には、壁部14の厚さ方向において、第1補強部22と第2補強部23の長さ(厚さ)が等しくてもよい。また、この場合には、鉄筋26を鋼材25のウエブ25wの両側に配置することにより、補強部21による補強効果をより高くすることができる。
・図8に示す第2変更例のように、補強部21において、鉄筋26M,26L,26Hに加えて、あるいは鉄筋26M,26L,26Hに変えて、水平方向H及び鉛直方向Zの双方と交差する斜状の鉄筋26Sを配筋してもよいし、斜状の鉄筋26Sを互いに交差させてX状をなすように配筋してもよい。
・軸材24は必ずしも鋼材25に軸材挿通孔35を設けて挿通させる必要はない。例えば、梁13に先端部分が差し込まれた軸材24の既設建物11から突出する基端部と鋼材25とを含むようにコンクリートを打設すれば、固化したコンクリート体27を介して軸材24と鋼材25との間で力を伝達することができる。この構成によれば、軸材24を梁13に差し込む際にその位置がずれてしまったとしても、その軸材24を軸材挿通孔35に挿通するという作業上の困難を回避することができる。ただし、軸材24を軸材挿通孔35に挿通しておいた方が、軸材24の軸方向と交差する方向に作用する力を軸材24と鋼材25との間でより確実に伝達することができるので、好ましい。
H…水平方向、Z…鉛直方向、11…既設建物、13…梁、14s…壁部である袖壁、22…第1補強部、23…第2補強部、24…軸材、25…鋼材、25f…フランジ、25w…ウエブ、26,26H,26L,26M,26S…鉄筋、26L…第2の鉄筋、26M…第1の鉄筋、27…コンクリート体、35…軸材挿通孔、36…鉄筋挿通孔。

Claims (5)

  1. 複数の梁及び前記梁と接する壁部を備える既設建物に対し前記梁及び前記壁部から外方に向けて突出するように接合される既設建物の耐震補強構造であって、
    前記梁に沿って配置された鋼材と、
    前記鋼材に連結された状態で前記壁部に沿って配置された鉄筋と、
    前記鋼材及び前記鉄筋を内部に含んで前記梁及び前記壁部に沿って設けられたコンクリート体と、
    を備え、
    前記壁部の厚さ方向において、前記梁に沿って配置された前記鋼材及び前記コンクリート体により構成される第1補強部の長さは、前記壁部に沿って配置された前記鉄筋及び前記コンクリート体により構成される第2補強部の長さよりも長いことを特徴とする既設建物の耐震補強構造。
  2. 前記梁に先端部が差し込まれた軸材を備え、
    前記鋼材は、前記軸材の基端部を挿通可能な軸材挿通孔が設けられたウエブ及び前記ウエブの両端から延びる一対のフランジを有するH形鋼である
    ことを特徴とする請求項1に記載の既設建物の耐震補強構造。
  3. 前記鋼材は鉄筋を挿通可能な鉄筋挿通孔を有し、
    前記鋼材に連結された前記鉄筋を第1の鉄筋とするときに、前記鋼材の前記鉄筋挿通孔に固定されることなく挿通される第2の鉄筋を備える
    ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の既設建物の耐震補強構造。
  4. 前記第1補強部は前記第2補強部よりも水平方向における長さが長い
    ことを特徴とする請求項1から請求項3のうち何れか一項に記載の既設建物の耐震補強構造。
  5. 複数の梁及び前記梁と接する壁部を備える既設建物に対し前記梁及び前記壁部から外方に向けて突出するように接合される既設建物の耐震補強方法であって、
    前記梁に沿って鋼材を配置する鋼材配置工程と、
    前記壁部に沿って鉄筋を配置する鉄筋配置工程と、
    前記鋼材と前記鉄筋とを連結する連結工程と、
    前記梁及び前記壁部に沿う位置に、前記鋼材及び前記鉄筋を含むようにコンクリートを打設するコンクリート打設工程と、
    を備え、
    前記壁部の厚さ方向において、前記梁に沿って配置された前記鋼材及び前記コンクリートにより構成される第1補強部の長さは、前記壁部に沿って配置された前記鉄筋及び前記コンクリートにより構成される第2補強部の長さよりも長いことを特徴とする既設建物の耐震補強方法。
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