JP6523082B2 - ポリカーボネート樹脂 - Google Patents

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Description

本発明は、耐傷付き性、且つ耐熱性が求められる製品の製造に好適なポリカーボネート樹脂に関する。中でも本発明は、特定の繰り返し単位からなるポリカーボネート樹脂、およびポリカーボネート樹脂組成物から形成された、耐傷付き性、耐熱性、さらには耐有機溶剤性が良好である成形品、フィルム、シートを提供するものである。
ポリカーボネート樹脂は、耐熱性、寸法安定性、耐衝撃性、透明性に優れた熱可塑性樹脂であり、OA機器、電気・電子部品、光学部品、建築部品、自動車用部品などの構成材料として広く用いられている。しかしながら、ポリカーボネート樹脂から形成された成形品、フィルム、またはシートは表面が軟らかいために傷がつきやすいという問題がある。このような問題に対処するためポリカーボネート樹脂表面をハードコート処理する手法が知られているが、ハードコートする塗料のポリカーボネート樹脂に対する濡れ性やハードコート処理の環境条件によってピンホール、クラック、ハジキ、ゆず肌といった外観不良や密着不良が発生するため、不良率の増加により生産性が低下し、結果としてコスト増の原因となっている。そのため、ポリカーボネート樹脂自体に耐傷付き性を付与することが望まれている。
そこで、ポリカーボネート樹脂自体の耐傷付き性を改善するために、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパンなどの特定の構成単位を含有する共重合ポリカーボネート樹脂を用いることが開示されている(特許文献1)。しかし、これらのポリカーボネート樹脂は、一般的なビスフェノールAからなるポリカーボネート樹脂に比べて耐熱性が劣ることが課題である。
また、ポリカーボネート樹脂は、有機溶剤に対する耐薬品性が劣ることが課題である。既に、耐有機溶剤性の改善にはα、α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,3−ジイソプロピルベンゼンやフェノール末端のポリオルガノシロキサンなどを用いた共重合ポリカーボネート樹脂が開示されている(特許文献2,3)。しかし、これらのポリカーボネート樹脂は耐有機溶剤性に優れるが、一般的なポリカーボネート樹脂と比べて、耐傷付き性、耐熱性に劣ることが課題である。
ポリカーボネート樹脂の耐熱性を向上させるため1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンといった特定の構成単位を共重合させる方法もあるが(特許文献4,5)、これらのポリカーボネート樹脂は耐傷付き性、耐有機溶剤性が十分とは言えなかった。これらのポリカーボネート樹脂の中には、ポリカーボネート樹脂と同等の耐熱性を有し、耐アンモニア水溶液性を改善した先行例もあるが(特許文献6)、耐有機溶剤性に劣ることが課題であった。
一方で、ポリカーボネート樹脂に他樹脂を混合することにより、耐傷付き性や耐有機溶剤性を改善する方法が知られている。例えば、ポリエステル樹脂(特許文献7)やポリオレフィン樹脂(特許文献8)、アクリル樹脂(特許文献9)、ブロック共重合体(特許文献10)などが開示されている。しかしながら、異なる樹脂同士の混合においては相溶性が問題となり、相溶性が良好でない場合は透明性の低下や成形品の剥離などが課題として挙げられる。相溶性を改善する手法も種々知られているが、耐傷付き性、耐熱性、耐有機溶剤性を満足するポリカーボネート樹脂は、これまでにない。
特開2011−105931号公報 特開2003−192780号公報 特開2007−112845号公報 特開平2−88634号公報 特表2011−521024号公報 特表2012−520906号公報 特開2002−275369号公報 特開2007−291378号公報 特開平7−3104号公報 特開2009−215560号公報
本発明は、耐傷付き性、耐熱性、且つ耐有機溶剤性に優れたポリカーボネート樹脂を提供することにある。さらに本発明は、特定の繰り返し単位からなるポリカーボネート樹脂、およびポリカーボネート樹脂組成物から形成された、耐傷付き性、耐熱性、耐有機溶剤性が良好である成形品、フィルム、シートを提供するものことにある。
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、特定の繰り返し単位を特定の割合で有し、且つ特定範囲の分子量を有する共重合ポリカーボネート樹脂において、耐傷付き性、耐熱性が高く、耐有機溶剤性に優れることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、
1.下記式(1)で表される繰り返し単位を全繰り返し単位において35〜90モル%の割合で含有し、下記式(3)で表される繰り返し単位を全繰り返し単位において65〜10モル%の割合で含み、かつGPC法で測定された重量平均分子量が40,000〜80,000であり、ガラス転移温度が135℃〜200℃であり、さらにJIS K5600に則して測定した鉛筆硬度がF以上であるポリカーボネート樹脂。
Figure 0006523082
(式中、RおよびRは、各々独立して、炭素原子数1〜6のアルキル基を表す。RおよびRは、各々独立して、水素原子または炭素原子数1〜6のアルキル基を表す。)
Figure 0006523082
(式(3)中、Wは、下記式(4)
Figure 0006523082
または単結合からなる群より選択される少なくとも1種の二価の有機残基を表し、R 、R 、R およびR はそれぞれ独立して水素原子または炭素原子数1〜9の芳香族基を含んでもよいアルキル基または炭素原子数6〜10のアリール基、または炭素原子数1〜6のアルコキシ基を表す。R 、R 10 、R 11 、R 12 、R 13 およびR 14 はそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜10の炭化水素基、または芳香族基を表す。)
2.前記式(1)で表される繰り返し単位が下記式(2)で表される繰り返し単位であることを特徴とする前記1に記載のポリカーボネート樹脂。
Figure 0006523082
(式中、RおよびRは、前記式(1)と同義である。)
3.前記式(1)で表される繰り返し単位が1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンから誘導される繰り返し単位であることを特徴とする前記1に記載のポリカーボネート樹脂。
.前記式(3)で表される繰り返し単位が、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、α、α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,3−ジイソプロピルベンゼンのいずれかから誘導される繰り返し単位であることを特徴とする前記に記載のポリカーボネート樹脂。
.前記式(3)で表される繰り返し単位が2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパンから誘導される繰り返し単位であることを特徴とする前記に記載のポリカーボネート樹脂。
.前記1〜のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂を成形して得られる成形品。
.前記1〜のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂からなる自動車ランプレンズ、自動車内装部材、または自動車外装部材。
.前記1〜のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂からなる照明カバー、樹脂窓、または前面板。
.前記1〜のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂を成形して得られるなるフィルム又はシート。
本発明に係わるポリカーボネート樹脂は高い耐傷付き性を有し、耐熱性および耐有機溶剤性にも優れているため、成形品やシート、フィルムに極めて有用である。
<ポリカーボネート樹脂>
本発明のポリカーボネート樹脂は、下記式(1)で表される繰り返し単位を有するポリカーボネート樹脂である。
Figure 0006523082
(式中、RおよびRは、各々独立して、炭素原子数1〜6のアルキル基を表す。RおよびRは、各々独立して、水素原子または炭素原子数1〜6のアルキル基を表す。)
本発明のポリカーボネート樹脂中の共重合体成分上記(1)において、RおよびRは、好ましくは、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基であり、さらに好ましくは、メチル基である。上記以外の場合は、鉛筆硬度が低くなり耐傷つき性が劣るため好ましくない。RおよびRは、好ましくは、水素原子またはメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基であり、さらに好ましくは、水素原子である。上記以外の場合は、重合反応時の反応性が低下して十分な分子量の樹脂が得られないため好ましくない。
本発明のポリカーボネート樹脂は、上記式(1)で表される繰り返し単位を有するポリカーボネート樹脂であり、上記式(1)で表される繰り返し単位のモル分率が30〜100モル%であり、35〜90モル%であるとより好ましく、35〜80モル%であるとさらに好ましく、50〜80モル%であると最も好ましい。30モル%未満であると、耐熱性、耐有機溶剤性が低くなり、好ましくない。
本発明のポリカーボネート樹脂は、下記式(3)で表される繰り返し単位を有すると好ましい。
Figure 0006523082
(式(3)中、Wは、下記式(4)
Figure 0006523082
または単結合からなる群より選択される少なくとも1種の二価の有機残基を表し、R、R、RおよびRはそれぞれ独立して水素原子または炭素原子数1〜9の芳香族基を含んでもよいアルキル基または炭素原子数6〜10のアリール基、または炭素原子数1〜6のアルコキシ基を表す。R、R10、R11、R12、R13、R14、R15およびR16はそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜10の炭化水素基、または芳香族基を表す。nは4〜7の整数である。)
本発明のポリカーボネート樹脂中の共重合体成分上記(3)において、RおよびRは、好ましくは、水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基であり、さらに好ましくは、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基であり、最も好ましくはメチル基である。上記以外の場合は、耐傷付き性または耐有機溶剤性が劣るため好ましくない。RおよびRは、好ましくは、水素原子またはメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基であり、さらに好ましくは、水素原子である。上記以外の場合は、重合反応時の反応性が低下して十分な分子量の樹脂が得られないため好ましくない。
本発明のポリカーボネート樹脂では、上記式(3)で表される繰り返し単位のモル分率は70〜0モル%となり、65〜10モル%であるとより好ましく、65〜20モル%であるとさらに好ましく、50〜20モル%であると最も好ましい。70モル%を超えると、耐傷付き性が低くなる、もしくは耐熱性が低くなり、好ましくない。
<ポリカーボネート樹脂の製造方法>
本発明のポリカーボネート樹脂は、下記式(5)で表される二価フェノールを含む二価フェノールと、ホスゲン等の炭酸エステル形成性化合物と反応させることによって製造することができる。
(ビスフェノール成分(原料モノマー))
本発明のポリカーボネート樹脂に使用される原料モノマーは、下記式(5)で表される化合物を含む。
Figure 0006523082
(式中、RおよびRは、各々独立して、炭素原子数1〜6のアルキル基を表す。RおよびRは、各々独立して、水素原子または炭素原子数1〜6のアルキル基を表す。)
このような前記一般式(5)で表される特定のビスフェノール化合物としては、例えば、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン;1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−エチルフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン;1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−エチルフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン;1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−プロピルフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン;1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−ブチルフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン;1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−ペンチルフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン;1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−ヘキシルフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンなどのビス(ヒドロキシアリール)シクロアルカン類が挙げられる。中でも、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン(BisOC−TMCと省略することがある)が好適である。これらの二価フェノールは、それぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
前記式(5)で表されるビスフェノール類は、全使用ビスフェノール類の内30〜100%が好ましく、35〜90%であるとより好ましく、35〜80モル%であるとさらに好ましく、50〜80モル%があると最も好ましい。30モル%未満であると耐熱性や耐有機溶剤性が低下するため好ましくない。
本発明のポリカーボネート樹脂に使用される原料モノマーは、前記式(5)で表されるモノマーを含むが、さらに下記一般式(6)で表わされるモノマーを含むとより好ましい。
Figure 0006523082
(式(6)中、Wは、下記式(7)
Figure 0006523082
または単結合からなる群より選択される少なくとも1種の二価の有機残基を表し、R、R、RおよびRはそれぞれ独立して水素原子または炭素原子数1〜9の芳香族基を含んでもよいアルキル基または炭素原子数6〜10のアリール基、または炭素原子数1〜6のアルコキシ基を表す。R、R10、R11、R12、R13、R14、R15およびR16はそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜10の炭化水素基、または芳香族基を表す。nは4〜7の整数である。)
このような前記一般式(6)で表される特定のビスフェノール化合物としては、例えば、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン;2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン;2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−エチルフェニル)プロパン;2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−プロピルフェニル)プロパン;2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−ブチルフェニル)プロパン;ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン;1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン;2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン;2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタン;2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン;2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フェニルメタン;2,2−ビス(4−ヒドロキシ−1−メチルフェニル)プロパン;ビス(4−ヒドロキシフェニル)ナフチルメタン;1,1−ビス(4−ヒドロキシ−t−ブチルフェニル)プロパン;2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−ブロモフェニル)プロパン;2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−テトラメチルフェニル)プロパン;2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−クロロフェニル)プロパン;2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−テトラクロロフェニル)プロパン;2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−テトラブロモフェニル)プロパンなどのビス(ヒドロキシアリール)アルカン類、4,4’−ジヒドロキシフェニルエーテル;4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルフェニルエーテルなどのジヒドロキシアリールエーテル類、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド;4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルフィドなどのジヒドロキシジアリールスルフィド類、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド;4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルホキシドなどのジヒドロキシジアリールスルホキシド類、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン;4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルホンなどのジヒドロキシジアリールスルホン類、4,4’−ジヒロキシジフェニルなどのジヒドロキシジフェニル類、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン;9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレンなどのジヒドロキシジアリールフルオレン類、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルベンゾフェノン、4,4’−ビフェノール、3,3‘,5,5’−テトラメチル−4,4’−ビフェニルジオール、3,3‘−ジメチル−4,4’−ビフェニルジオール、α、α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,3−ジイソプロピルベンゼン、α、α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,4−ジイソプロピルベンゼンなどが挙げられる。中でも、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、またはα、α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,3−ジイソプロピルベンゼンが好適であり、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパンがさらに好適である。これらの二価フェノールは、それぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明のポリカーボネート樹脂は、本樹脂組成物の特性を損なわい程度に他のジオール成分を共重合してもよい。その他のジオール成分として、ヒドロキノン、レゾルシノール、オルシノール、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ノルボルネン、1,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)アダマンタン;2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)アダマンタン;1,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−5,7−ジメチルアダマンタン、10,10−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−9−アントロン、1,5−ビス(4−ヒドロキシフェニルチオ)−2,3−ジオキサペンタエンビスフェノキシエタノールフルオレン等が挙げられる。
(製造方法)
本発明のポリカーボネート樹脂の製造法においてはそれ自体公知の方法を採用でき、以下界面法を例にとって説明する。
界面法(ホスゲン法)のポリカーボネート製造法では、カーボネート原料として主にホスゲンが用いられる。界面法は、通常、ビスフェノールとホスゲンとをアルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物等の酸結合剤及び反応により生成したポリカーボネートを、溶媒である不活性有機溶媒の存在下で反応させるものであり、反応の際、必要に応じて縮合触媒や任意の連鎖停止剤を加えることができる。適当な連鎖停止剤としては、種々のモノフェノール、例えば、通常のフェノールのほか、クミルフェノール、イソオクチルフェノール、p−t−ブチルフェノール及びp−クレゾールのようなC1〜C14のアルキルフェノール類並びにp−クロロフェノール及び2,4,6−トリブロモフェノールのようなハロゲン化フェノール類が挙げられる。なかでも、フェノール、クミルフェノール、イソオクチルフェノール及びp−t−ブチルフェノールが、好適な連鎖停止剤である。連鎖停止剤の使用量は、目的とするポリカーボネートの分子量によっても異なるが、通常、水相中のジオールの量に対して、0.5〜10重量%の量で使用される。
本発明方法における有機相は、反応温度及び反応圧力において、ホスゲン及びカーボネート・オリゴマー(以下、単にオリゴマーと略称する)やポリカーボネート等の反応生成物は溶解するが、水と相溶性を有しない、つまり水と溶液を形成しない任意の不活性有機溶媒を含むことが必要である。代表的な不活性有機溶媒としては、ヘキサン及びn−ヘプタンのような脂肪族炭化水素、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、ジクロロエタン、トリクロロエタン、テトラクロロエタン、ジクロロプロパン及び1,2−ジクロロエチレンのような塩素化脂肪族炭化水素、ベンゼン、トルエン及びキシレンのような芳香族炭化水素、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン及びクロロトルエンのような塩素化芳香族炭化水素、その他ニトロベンゼン及びアセトフェノンのような置換芳香族炭化水素が挙げられる。これらの中でも、特に塩素化された炭化水素、例えば塩化メチレンまたはクロロベンゼンが好適に使用される。これらの不活性有機溶媒は、単独であるいは他の溶媒との混合物として、使用することができる。
本発明方法における水相は、水、ビスフェノール及びアルカリ金属水酸化物の少なくとも3成分を含むことが必要である。水相中で、ビスフェノールはアルカリ金属水酸化物、例えば水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムと反応して、水溶性のアルカリ金属塩を生じる。従って、原料調整槽では予め調整されたアルカリ金属の水溶液中にビスフェノール融体を徐々に仕込んでゆき、アルカリ金属塩を生成させる。水相中のジオールとアルカリ金属のモル比は、通常、1:1.8〜1:4.5が好ましく、更には1:2.0〜1:3.5が好ましい。このような水溶液を調製する際には、温度を20℃以上、好ましくは30〜40℃であるが、余り高いとビスフェノールの酸化が起きるので必要最低温度とし、かつ、不活性気体の雰囲気、好適には窒素で、適当な時間、好適には5〜30分間パージを行い、さらには、ハイドロサルファイト等の還元剤を少量添加することが好ましい。
本発明方法においては、ビスフェノールとホスゲンとの接触の後に縮合触媒を供給するが、場合により、縮合触媒の供給をホスゲンとの接触に先立って行ってもよい。縮合触媒としては、二相界面縮合法に使用されている、多くの縮重合触媒の中から任意に選択することができる。好適な縮重合触媒としては、例えば、トリアルキルアミン、N−エチルピロリドン、N−エチルピペリジン、N−エチルモルホリン、N−イソプロピルピペリジン及びN−イソプロピルモルフォリンが挙げられるが、特にトリエチルアミンが極めて好適である。
ホスゲンは、液状またはガス状で使用される。この原料ホスゲン中のCl濃度は10ppm以下、好ましくは5ppm以下、さらに好ましくは1ppm 以下である。原料ホスゲン中のClの除去方法は、活性炭等によるClの吸着除去や沸点差を利用した蒸留による分離除去等があり、いずれの方法で除去してもかまわない。但し、蒸留除去の場合は、除去オーダーが極めて低い数値である為相当の蒸留段数を要する点で不利であり、吸着除去の方が有利と言える。ホスゲンの好ましい使用量は、反応条件、特に反応温度及び水相中のビスフェノールのアルカリ金属塩の濃度によっても影響は受けるが、ビスフェノール1モルに対するホスゲンのモル数で、通常1〜2、好ましくは1.05〜1.5である。この比が大きすぎると、未反応ホスゲンが多くなり経済性が極端に悪化する。一方、小さすぎるとCO基が不足し、適切な分子量伸長が行われなくなり好ましくない。
オリゴマーを得る段階での、有機相中のオリゴマーの濃度は、得られるオリゴマーが可溶な範囲であればよく、具体的には、10〜40重量%程度である。また、有機相の割合は、ビスフェノールのアルカリ金属塩水溶液、即ち水相に対して0.2〜1.0(容積比)であることが好ましい。このような縮合条件下で得られるオリゴマーの比粘度(ηsp)は、好ましくは、0.10〜0.30程度、さらに好ましくは0.15〜0.25であるが、この比粘度に制限されない。
このようにして得られたオリゴマーは、常法に従い、重縮合条件下で高分子のポリカーボネートとする。高分子化の為の重縮合反応は、次のような実施態様で行うのが好ましい。まず、このオリゴマーの溶存する有機相を水相から分離し、必要に応じ、前述の不活性有機溶媒を追加して、該オリゴマーの濃度を調整する。すなわち、重縮合反応後に得られる有機相中のポリカーボネートの濃度が、5〜30重量%となるように、溶媒の量が調整される。しかる後、新たに水及びアルカリ金属水酸化物を含む水相を加え、さらに重縮合条件を整えるために、好ましくは前述の縮合触媒を添加して、二相界面縮合法に従い、所期の重縮合を完結させる。重縮合時の有機相と水相の割合は、容積比で、有機相:水相=1:0.2〜5程度が好ましい。
本発明のポリカーボネート樹脂は、高度に精製されたものが好ましい。本発明では、精製ポリカーボネート溶液を製造する方法において、界面重縮合法による重縮合反応が終了した粗製ポリカーボネート溶液を洗浄した後、洗浄水を含む粗製ポリカーボネート溶液を静置分離又は遠心分離により、水相とポリカーボネートを含む有機相とに分離する。一般に、洗浄水として、未反応モノマーの除去には水はたはアルカリ水が、触媒及びアルカリの除去には酸性水が、塩類およびアルカリの除去には純水が、それぞれ用いられる。その際、前記ポリカーボネートを含む有機相を孔径0.2〜50μmの濾過フィルターを用いて濾過することが好ましい。
<重量平均分子量>
本発明のポリカーボネート樹脂の重量平均分子量は40,000〜80,000であり、40,000〜70,000であると好ましく、40,000〜60,000であるとより好ましい。重量平均分子量が40,000未満では、該ポリカーボネート樹脂を用いた成形品またはフィルムの耐有機溶剤性および機械的強度が低くなり好ましくなく、80,000を超えると成形性が悪くなり好ましくない。
ポリカーボネート樹脂の分子量の評価には、ISO1628−1/−4に規定される相対溶液粘度なども用いられる。重量平均分子量が40,000〜80,000である本発明のポリカーボネート樹脂は、ポリカーボネート樹脂中のモノマー構成単位と組成比等により、凡そ相対溶液粘度1.35〜1.50の範囲の中に入る。
<ガラス転移温度>
本発明のポリカーボネート樹脂のガラス転移温度は135℃〜200℃であると好ましく、140℃〜200℃であるより好ましい。ガラス転移温度は昇温速度20℃/minにて測定する。ガラス転移温度が135℃未満では、該ポリカーボネート樹脂を用いた成形品またはフィルムの耐熱性が不十分となり、200℃を超えると成形性が悪くなり好ましくない。
<鉛筆硬度>
本発明のポリカーボネート樹脂を成形したプレートの厚み2mm部をJIS K5600に則して測定した鉛筆硬度がF以上であり、H以上であると好ましく、2H以上であるとより好ましい。鉛筆硬度がF未満であると、該ポリカーボネート樹脂を用いた成形品またはフィルムの表面が傷つきやすくなるため好ましくない。
<耐有機溶剤性>
本発明のポリカーボネート樹脂の耐有機溶剤性は、中性の有機溶媒に対する耐性を評価したものである。具体的には、得られたポリカーボネート樹脂の厚さ0.1mmのフィルムを作製し、アセトニトリル、キシレン、シクロヘキサノン、クロロベンゼン、メチルエチルケトン(以下、MEKと省略することがある)を各々1ml滴下させて24時間放置した後、溶剤をきれいに拭き取って、溶剤滴下前後における変化を目視で判定した。形状が若干変形する場合は、評価としては、好ましく、形状が全く変化なしの場合は、より好ましい。白化する場合は、耐有機溶剤性が不十分となるため、好ましくない。
<成形品、フィルム又はシート>
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂は、例えば射出成形法、圧縮成形法、射出圧縮成形法、溶融製膜法、キャスティング法など任意の方法により成形、加工され、照明カバー、看板、水槽、樹脂窓、前面板などの透明部材をはじめ、導光板、拡散板、ライドガイド、光学レンズ、光学フィルムなどの光学部品、保護フィルム、プラセル基板、前面板、表示装置用部材などの電気・電子部品、ランプレンズ、内装部材、外装部材などの自動車部品、さらにはOPCバインダー、筐体、トレーなど、耐傷付き性や耐熱性、耐有機溶剤性が要求される部材として使用することができる。特に、ランプレンズ、内装部材、外装材などの自動車部材、または照明カバー、樹脂窓、前面板などの透明部材として有用である。
<添加剤>
本発明のポリカーボネート樹脂には、本発明の目的を損なわない範囲で各種特性を付与するために、各種添加剤を含有させて樹脂組成物としてもよい。添加剤として、離型剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、ブルーイング剤、帯電防止剤、難燃剤、熱線遮蔽剤、蛍光染料(蛍光増白剤含む)、顔料、光拡散剤、強化充填剤、他の樹脂やエラストマー等を配合することができる。
離型剤としては、その90重量%以上がアルコールと脂肪酸のエステルからなるものが好ましい。アルコールと脂肪酸のエステルとしては、具体的には一価アルコールと脂肪酸のエステルや、多価アルコールと脂肪酸との部分エステルあるいは全エステルが挙げられる。具体的に一価アルコールと飽和脂肪酸とエステルとしては、ステアリルステアレート、パルミチルパルミテート、ブチルステアレート、メチルラウレート、イソプロピルパルミテート等が挙げられる。ステアリルステアレートが好ましい。多価アルコールと飽和脂肪酸との部分エステルまたは全エステルとしては、ステアリン酸モノグリセリド、ステアリン酸ジグリセリド、ステアリン酸トリグリセリド、ステアリン酸モノソルビテート、ベヘニン酸モノグリセリド、ペンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリスリトールテトラステアレート、ペンタエリスリトールテトラペラルゴネート、プロピレングリコールモノステアレート、ビフェニルビフェネ−ト、ソルビタンモノステアレート、2−エチルヘキシルステアレート、ジペンタエリスリトールヘキサステアレート等のジペンタエリスルトールの全エステルまたは部分エステル等が挙げられる。これらのエステルのなかでも、ステアリン酸モノグリセリド、ステアリン酸トリグリセリド、ペンタエリスリトールテトラステアレート、ステアリン酸トリグリセリドとステアリルステアレートの混合物が好ましく、ステアリン酸モノグリセリド、ペンタエリスリトールテトラステアレートがより好ましい。
熱安定剤としては、リン系熱安定剤、硫黄系熱安定剤およびヒンダードフェノール系熱安定剤が挙げられる。リン系熱安定剤としては、亜リン酸、リン酸、亜ホスホン酸、ホスホン酸およびこれらのエステル等が挙げられる。具体的には、ビス(2,4−ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、3−(3,5ージーtertーブチルー4ーヒドロキシフェニル)プロピオン酸ステアリル、[1,1ービフェニル]−4,4ージイルビス[ビス(2,4ージーtertーブチルフェノキシ)ホスフィン]、3,9ービス(2,6ージーtertーブチルー4ーメチルフェノキシ)−2,4,8,10−テトラオキサー3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカンが好ましく、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、3−(3,5ージーtertーブチルー4ーヒドロキシフェニル)プロピオン酸ステアリル、3,9ービス(2,6ージーtertーブチルー4ーメチルフェノキシ)−2,4,8,10−テトラオキサー3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカンがより好ましい。
以下に実施例を示すが、本発明の形態をさらに具体的に説明するものである。本発明は、その趣旨に反しない限り、以下に示した実施例に限定されるものではない。
なお、評価は下記の方法により行った。
(1)共重合組成比:得られたポリカーボネート樹脂10mgを重クロロホルム0.6mlに溶解し、日本電子社製JNM−AL400にてプロトンNMRスペクトルを測定した。各繰り返し単位に由来するスペクトルの積分比から、繰り返し単位の組成比(単位:mol%)を算出した。
(2)重量平均分子量:得られたポリカーボネート樹脂10mgをクロロホルム5mlに溶解し、下記条件としたGPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)装置を用いて重量平均分子量を測定した。
装置;東ソー(株)製GPCシステム(HLC8220)
検出器;CH−2(UV波長254nm)
カラム;Tsk−gel SuperHZ4000+3000+2000
標準物質;東ソー標準ポリスチレン
溶離液;クロロホルム、0.35ml/min
(3)相対溶液粘度:得られたポリカーボネート樹脂を100℃で12時間以上乾燥させた後、ISO1628−4に準拠して測定した。
(4)ガラス転移温度:得られたポリカーボネート樹脂15mgを用いて(株)島津製作所製DSC−60Aを使用して、窒素雰囲気下(窒素流量:50ml/min)、昇温速度:20℃/minの条件下でガラス転移温度を測定した。
(5)鉛筆硬度(耐傷付き性):得られたポリカーボネート樹脂の厚み2cmの成形品を、(株)日本製鋼所製J75EIII射出成形機を用いてシリンダー温度300℃で作製し、JIS K5600に則して鉛筆硬度を測定した。
(6)耐有機溶剤性:得られたポリカーボネート樹脂の厚さ0.1mmのフィルムを作製し、アセトニトリル、キシレン、シクロヘキサノン、クロロベンゼン、メチルエチルケトン(MEK)を各々1ml滴下させて24時間放置した後、溶剤をきれいに拭き取って、溶剤滴下前後における変化を目視で判定した。評価は、○:変化なし、▲:形状が変形、×:白化、とした。形状が若干変形する場合(▲)は、評価としては好ましく、形状が全く変化なしの場合(○)はより好ましい。白化する場合(×)は、耐有機溶剤性が不十分となるため好ましくない。
[実施例1]
温度計、撹拌機および還流冷却器の付いた反応器を、窒素置換により窒素雰囲気下にした後、48%水酸化ナトリウム水溶液592部およびイオン交換水2,909部を仕込み、これに1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン(以下、BisOC−TMCと省略することがある)486部、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(以下、Bis−Aと省略することがある)82部、およびハイドロサルファイト1.1部を溶解した後、塩化メチレン1,984部を加えた。続いてその反応容器を窒素で10分間パージした後、撹拌下、18〜21℃でホスゲン240部を約60分かけて吹き込んだ。ホスゲンの吹き込み終了後、48%水酸化ナトリウム水溶液74部およびp−tert−ブチルフェノール81部を加え、撹拌を再開、乳化後トリエチルアミン0.5部を加え、さらに20〜27℃で1時間撹拌して反応を終了した。反応終了後、室温にて生成物を塩化メチレンで希釈して水洗し、続いて塩酸酸性にして水洗した。水相の導電率がイオン交換水とほぼ同じになるまで純水にて水洗を繰り返し、ポリカーボネート樹脂の塩化メチレン溶液を得た。次いで、軸受け部に異物取出口を有する隔離室付きニーダー中の温水に滴下、塩化メチレンを留去しながらポリカーボネート樹脂をフレーク化し、引続き該含液フレークを粉砕・乾燥してパウダー状のポリカーボネート樹脂を得た。パウダー状のポリカーボネート樹脂は、120℃で4時間真空乾燥した後、得られる樹脂組成物の重量を基準としてトリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト0.050%を加えて、ベント付きφ30mm単軸押出機を用いてペレット化した。得られたポリカーボネート樹脂の重量平均分子量は56,700、相対溶液粘度では1.361、ガラス転移温度は188℃であった。重量平均分子量、ガラス転移温度、および該ポリカーボネート樹脂の成形品の特性は表1に示した。
[実施例2]
BisOC−TMCを426部、Bis−Aを123部とする以外は実施例1と同様に重合し、ペレット化までを実施した。得られたポリカーボネート樹脂の重量平均分子量は58,800、相対溶液粘度では1.381、ガラス転移温度は185℃であった。重量平均分子量、ガラス転移温度、および該ポリカーボネート樹脂の成形品の特性は表1に示した。
[実施例3]
BisOC−TMCを304部、Bis−Aを205部とする以外は実施例1と同様に重合し、ペレット化までを実施した。得られたポリカーボネート樹脂の重量平均分子量は44,700、相対溶液粘度では1.366、ガラス転移温度は173℃であった。重量平均分子量、ガラス転移温度、および該ポリカーボネート樹脂の成形品の特性は表1に示した。
[実施例4]
BisOC−TMCを213部、Bis−Aを267部とする以外は実施例1と同様に重合し、ペレット化までを実施した。得られたポリカーボネート樹脂の重量平均分子量は52,500、相対溶液粘度では1.361、ガラス転移温度は163℃であった。重量平均分子量、ガラス転移温度、および該ポリカーボネート樹脂の成形品の特性は表1に示した。
[実施例5]
Bis−Aを2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン(以下、Bis−Cと省略することがある)92部とする以外は実施例1と同様に重合し、ペレット化までを実施した。得られたポリカーボネート樹脂の重量平均分子量は56,600、相対溶液粘度では1.361、ガラス転移温度は181℃であった。重量平均分子量、ガラス転移温度、および該ポリカーボネート樹脂の成形品の特性は表1に示した。
[実施例6]
BisOC−TMCを304部、Bis−AをBis−C230部とする以外は実施例1と同様に重合し、ペレット化までを実施した。得られたポリカーボネート樹脂の重量平均分子量は49,500、相対溶液粘度では1.366、ガラス転移温度は156℃であった。重量平均分子量、ガラス転移温度、および該ポリカーボネート樹脂の成形品の特性は表1に示した。
[実施例7]
BisOC−TMCを213部、Bis−AをBis−C299部とする以外は実施例1と同様に重合し、ペレット化までを実施した。得られたポリカーボネート樹脂の重量平均分子量は47,200、相対溶液粘度では1.376、ガラス転移温度は146℃であった。重量平均分子量、ガラス転移温度、および該ポリカーボネート樹脂の成形品の特性は表1に示した。
[比較例1]
BisOC−TMCを122部、Bis−Aを328部とする以外は実施例1と同様に重合し、ペレット化までを実施した。得られたポリカーボネート樹脂の重量平均分子量は58,300、相対溶液粘度では1.450、ガラス転移温度は163℃であった。重量平均分子量、ガラス転移温度、および該ポリカーボネート樹脂の成形品の特性は表2に示した。
[比較例2]
BisOC−TMCを426部、Bis−Aを123部、p−tert−ブチルフェノール203部とする以外は実施例1と同様に重合し、ペレット化までを実施した。得られたポリカーボネート樹脂の重量平均分子量は25,500、相対溶液粘度では1.214、ガラス転移温度は181℃であった。重量平均分子量、ガラス転移温度、および該ポリカーボネート樹脂の成形品の特性は表2に示した。
[比較例3]
BisOC−TMCを213部、Bis−AをBis−C299部、p−tert−ブチルフェノール205部とする以外は実施例1と同様に重合し、ペレット化までを実施した。得られたポリカーボネート樹脂の重量平均分子量は21,200、相対溶液粘度では1.211、ガラス転移温度は142℃であった。重量平均分子量、ガラス転移温度、および該ポリカーボネート樹脂の成形品の特性は表2に示した。
[比較例4]
BisOC―TMCを1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン(以下、Bis−TMCと省略することがある)433部、Bis−Aを83部とする以外は実施例1と同様に重合し、ペレット化までを実施した。得られたポリカーボネート樹脂の重量平均分子量は52,300、相対溶液粘度では1.376、ガラス転移温度は223℃であった。重量平均分子量、ガラス転移温度、および該ポリカーボネート樹脂の成形品の特性は表2に示した。
[比較例5]
BisOC−TMCをBis−TMC433部、Bis−AをBis−C93部とする以外は実施例1と同様に重合し、ペレット化までを実施した。得られたポリカーボネート樹脂の重量平均分子量は48,000、相対溶液粘度では1.365、ガラス転移温度は218℃であった。重量平均分子量、ガラス転移温度、および該ポリカーボネート樹脂の成形品の特性は表2に示した。
[比較例6]
BisOC−TMCをBis−C459部とし、Bis−Aを0部とする以外は実施例1と同様に重合し、ペレット化までを実施した。得られたポリカーボネート樹脂の重量平均分子量は46,800、相対溶液粘度では1.357、ガラス転移温度は120℃であった。重量平均分子量、ガラス転移温度、および該ポリカーボネート樹脂の成形品の特性は表2に示した。
[比較例7]
BisOC−TMCを0部、Bis−Aを409部とする以外は実施例1と同様に重合し、ペレット化までを実施した。得られたポリカーボネート樹脂の重量平均分子量は45,300、相対溶液粘度では1.366、ガラス転移温度は145℃であった。重量平均分子量、ガラス転移温度、および該ポリカーボネート樹脂の成形品の特性は表2に示した。
Figure 0006523082
Figure 0006523082
表に示す実施例1〜7は、鉛筆硬度がHから3Hという高い耐傷付き性と、ガラス転移温度が135℃以上の耐熱性を有しており、さらに、代表例としてアセトニトリル、キシレン、シクロヘキサノン、クロロベンゼン、メチルエチルケトン(MEK)を示したが、耐有機溶剤性にも優れ、成形品やフィルムとして有用に利用できる。一方、比較例1は、ガラス転移温度135℃以上の耐熱性であり、鉛筆硬度はFであるが、耐有機溶剤性に劣る。比較例2および3は、高い耐傷付き性と耐熱性を有するが、耐有機溶剤性に劣る。比較例4は、非常に高い耐熱性は有するが、鉛筆硬度はBと耐傷付き性に劣り、耐有機溶剤性にも劣る。また、比較例5は、耐熱性を有するが、鉛筆硬度はHBと耐傷付き性は高くなく、耐有機溶剤性にも劣る。比較例6は、鉛筆硬度が2Hと高く、耐有機溶剤性も良好ではあるが、ガラス転移温度が低く耐熱性に劣る。比較例7はBis−Aを単位構造とする一般的なポリカーボネート樹脂であるが、耐傷付き性、耐有機溶剤性に劣る。
本発明のポリカーボネート樹脂は、高い耐傷付き性を有するとともに、耐熱性および耐有機溶剤性にも優れたポリカーボネート樹脂であるため、照明カバー、看板、水槽、樹脂窓、前面板などの透明部材をはじめ、導光板、拡散板、ライドガイド、光学レンズ、光学フィルムなどの光学部品、保護フィルム、プラセル基板、表示装置用部材などの電気・電子部品、ランプレンズ、内装部材、外装部材などの自動車部品、さらにはOPCバインダー、筐体、トレーなどとしても有用である。特に、ランプレンズ、内装部材、外装材などの自動車部材、または照明カバー、樹脂窓、前面板などの透明部材として有用である。

Claims (9)

  1. 下記式(1)で表される繰り返し単位を全繰り返し単位において35〜90モル%の割合で含有し、下記式(3)で表される繰り返し単位を全繰り返し単位において65〜10モル%の割合で含み、かつGPC法で測定された重量平均分子量が40,000〜80,000であり、ガラス転移温度が135℃〜200℃であり、さらにJIS K5600に則して測定した鉛筆硬度がF以上であるポリカーボネート樹脂。
    Figure 0006523082
    (式中、RおよびRは、各々独立して、炭素原子数1〜6のアルキル基を表す。RおよびRは、各々独立して、水素原子または炭素原子数1〜6のアルキル基を表す。)
    Figure 0006523082
    (式(3)中、Wは、下記式(4)
    Figure 0006523082
    または単結合からなる群より選択される少なくとも1種の二価の有機残基を表し、R 、R 、R およびR はそれぞれ独立して水素原子または炭素原子数1〜9の芳香族基を含んでもよいアルキル基または炭素原子数6〜10のアリール基、または炭素原子数1〜6のアルコキシ基を表す。R 、R 10 、R 11 、R 12 、R 13 およびR 14 はそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜10の炭化水素基、または芳香族基を表す。)
  2. 前記式(1)で表される繰り返し単位が下記式(2)で表される繰り返し単位であることを特徴とする請求項1に記載のポリカーボネート樹脂。
    Figure 0006523082
    (式中、RおよびRは、前記式(1)と同義である。)
  3. 前記式(1)で表される繰り返し単位が1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンから誘導される繰り返し単位であることを特徴とする請求項1に記載のポリカーボネート樹脂。
  4. 前記式(3)で表される繰り返し単位が、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、α、α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,3−ジイソプロピルベンゼンのいずれかから誘導される繰り返し単位であることを特徴とする請求項に記載のポリカーボネート樹脂。
  5. 前記式(3)で表される繰り返し単位が2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパンから誘導される繰り返し単位であることを特徴とする請求項に記載のポリカーボネート樹脂。
  6. 請求項1〜のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂を成形して得られる成形品。
  7. 請求項1〜のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂からなる自動車ランプレンズ、自動車内装部材、または自動車外装部材。
  8. 請求項1〜のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂からなる照明カバー、樹脂窓、または前面板。
  9. 請求項1〜のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂を成形して得られるフィルム又はシート。
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