JP6522922B2 - 階段の接合構造及び階段の施工方法 - Google Patents
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露出階段以外では、上下の踏板間に、蹴込板を用いるのが一般的である。蹴込板は、階段裏面を隠蔽する為に用いられ、厚さは5〜12ミリ程度であって階段の強度自体にはあまり寄与しない。その為、踏板や側板、ササラ桁といった階段の構造を受け持つ部材には、厚さ30〜40ミリ程度の厚く頑丈な材料が用いられ、ホゾ加工と釘接着剤併用で強固に接続されるのに対し、蹴込板は、通常は釘で簡単に固定される程度である(例えば、特許文献1,2参照)。
(a)図11に示すように、側板1に踏板2及び蹴込板3を取り付ける取付溝4を加工する。なお、この時、踏板2の取付溝4幅は、踏板2の厚さよりやや広く取る。又、踏板2の前部裏面には蹴込板3の上端部が挿入される溝5を加工しておく。
(b)側板12枚を建物の1階から2階に掛けて施工する。
(c)図12に示すように、階段裏面側(図12では右側)から、側板1に加工された取付溝4に合わせるように踏板2を施工する。
(d)階段裏面側から、踏板2と取付溝4との間に楔6を挿入し固定する(図13)。なお、楔6は抜けないように、小型釘等(図示せず)で側板1に固定する。これによって踏板2は強固に固定される。
(e)階段裏面側から、側板1に加工された取付溝4に合わせるように蹴込板3を施工する。蹴込板3は、踏板2の後端面に接するように立設する。
(f)階段裏面側から、蹴込板3を釘7で固定し、蹴込板3と踏板2とを接合させる。
(g)以後、(c)〜(f)を繰り返す。
なお、以上の手順の他に、(b)を省略し、階段が組上がった状態で、最後にクレーン等を用いて所定の位置に施工する事も一部で行われる。
(a)図14に示すように、ササラ桁8に踏板2及び蹴込板3の形状に合わせた鋸歯状の加工9を行う。
(b)ササラ桁8二枚を1階から2階に掛けて施工する。
(c)階段表面側の下段から、ササラ桁8の鋸歯状加工垂直面10に蹴込板3を設置する。
(d)階段表面側から、ササラ桁8の鋸歯状加工水平面11に踏板2を設置する(図15)。
(e)階段裏面側から、蹴込板3を釘7で固定する(図16)。
(f)以後、上段に向けて(c)〜(e)を繰り返す。
また、階段裏面側は壁が斜めに傾斜するので、居室に使われる例は稀であり、通常は便所や押入等の収納として利用される場合が多い。狭い場所でのこれらの作業は、脚立の搬入も困難で、しかも、不自然な姿勢を強制される事もあり、作業者には極めて苦痛である上に、脚立からの落下等の危険性もあった。
(A)踏板2の上面に蹴込板3を設置(図17参照)
踏板2の上面に蹴込板3を配置することで階段裏面から釘を打つ必要を無くした。これにより、施工は極めて容易で迅速に行うことが可能である。特に、施工の容易さから、雛壇階段で採用される場合が多いと言われている。
踏板2に切り欠き13を設け、踏板2の施工後に蹴込板3を施工し、釘7を打つ。この方法だと、階段の下段から踏板2、蹴込板3、踏板2、蹴込板3・・・の順に、下から無理なく施工可能である。
(C)踏板2上面に蹴込板3下端の入る溝14を形成(例えば特許文献3、図19参照)
踏板2に蹴込板3下端部が入る溝14を設け、その溝14に蹴込板3の下端を挿入する。この場合もBの場合と同じく、階段の下段から踏板2、蹴込板3、踏板2、蹴込板3・・・の順で、下から順番に施工可能である。しかも、階段裏面から施工の必要が無い。
(1)踏板2と蹴込板3との間に隙間12が発生してしまう(A,B,C)
踏板2と蹴込板3との接合部分は、ユーザーが階段を上がる時には常にユーザーの目の高さに位置するので、踏板2と蹴込板3との間に隙間12があるとよく目立ち、見苦しい。
施工時において、そのような隙間12を発生させないためには、施工に熟練した技術が必要であり、経験の少ない作業者では施工時間が長く掛かってしまう。
また、施工後において、箱型階段、雛壇階段ともに踏板2の奥側(後部)には支持部材が無いので、ユーザーが階段を昇降するとユーザーの重さで踏板2に一定量の撓みが生じ、蹴込板3との間に隙間12が発生する場合がある(図20及び図21(a)参照)。
図21(b)のように踏板2の裏面から細長い釘7で軽く固定する場合もあるが、手間の割に効果は少ない。
さらに、蹴込板3に対して後述する足の衝突があると、A,Bのように釘7を使用したものであっても釘7が緩んで浮き、隙間12が生じてしまう(図22及び図23参照)。
一方、Cのように釘7を使用していないと衝突の際に容易に踏板2の溝14の遊び分だけ蹴込板3が後方に移動してしまい、隙間12が生じる(図24参照)。
子供の悪戯や、大人でも階段を上がる時に誤って蹴込板3を蹴飛ばす場合がある。一般に蹴込板3が塗装済の状態で施工される場合、踏板2端部に蹴込板3の塗装面が接した状態となるので、ここに通常使用される安価な接着剤を塗布しても十分に接着できない。他方、塗装面でも接着可能なエチレン変性酢酸ビニル樹脂エマルジョン接着剤等は高価である。
また、通常は施工時間の短縮の為、蹴込板3を踏板2に対して釘7程度の簡単な固定手段で固定するだけなので、固定強度が低く、容易に釘7が抜けて外れてしまう場合が多い。釘7が抜けないまでも釘7が弛んでしまうと、隙間12が目立つ。
釘7に代えてビスを使用すると強固に固定可能で隙間12発生も抑制可能であるが、ビスは釘7よりも高価である上に、施工時間が数倍(専用機械を使用して釘7は1本1〜2秒、ビスは10〜20秒)に増えてしまうので、いずれも実用的ではない。
しかも、前記踏板(20)の第一摺動部(22)と前記蹴込板(30)の第二摺動部(31)とが、断面視において点で接するようにしたことを特徴とする。
また、本発明の請求項2に記載の階段の接合構造は、水平に配置される踏板(20)と、前記踏板(20)の後部に接し鉛直上方に延びる蹴込板(30)と、を接合してなる階段の接合構造において、前記踏板(20)は、前記踏板(20)の後部上面が切り欠かれてなる切欠部(21)と、前記切欠部(21)が形成されることで前記踏板の後方に設けられた第一摺動部(22)と、前記切欠部(21)と前記切欠部(21)の前側の前記踏板(20)の上面とによって形成された角度が90°以下であるエッジ部(23)と、を備えるとともに、前記蹴込板(30)は、前記蹴込板(30)の下部後端に設けられ前記踏板(20)の第一摺動部(22)と当接する第二摺動部(31)と、前記蹴込板(30)の下部前部が下方に突出し前記踏板(20)の切欠部(21)内に収容可能な突出部(32)と、を備え、前記踏板(20)の第一摺動部(22)及び前記蹴込板(30)の第二摺動部(31)のうち、前記蹴込板(30)の第二摺動部(31)が、後方から前方に向かって下方に傾斜し、前記エッジ部(23)に前記蹴込板(30)前面が当接してなるもので、
しかも、前記蹴込板(30)の突出部(32)の前面は前記突出部(32)の下端まで前記蹴込板(30)の本体の前面と面一であることを特徴とする。
また、請求項4に記載の階段の接合構造は、前記踏板(20)の第一摺動部(22)と前記蹴込板(30)の第二摺動部(31)とが、断面視において点で接することを特徴とする。
このように、経験の少ない作業者であっても精度良くしかも簡単に蹴込板を配置できるので、施工時間が短くて済む。
また、ユーザーが階段を昇降したときに生じる踏板の撓み量よりも蹴込板の突出部の長さを長く設定していれば、施工後でも隙間が生じ難い。
このように衝突に対して強いが、踏板及び蹴込板に切削加工するだけで済むので、施工時間が増えることもなく、しかもコストも抑えられる。
また、これまでの階段施工では常識的に行われていたような、施工中における階段の表側と裏側の行き来が必要ないので、作業効率が非常に高い。
さらに、踏板の切欠部の前面が鉛直となっている場合には、蹴込板の突出部の前面と踏板の切欠部の前面との当接面が広くなるので、固定(接合)状態が安定する。
また、蹴込板の第二摺動部と踏板の第一摺動部は、断面視において点で接するので、摩擦力がそれほど高くなく、スムーズに摺動し、適切に蹴込板が踏板に対して位置決めされる。
また、釘や接着剤で固定されていないので、これらの固定手段の劣化や破損、剥離を気にする必要も無い。
図1を参照して、本発明の第一実施形態に係る階段の接合構造及び階段の施工方法を説明する。
この階段は、踏板20と、蹴込板30と、を備えるものである。
切欠部21は、踏板20の後部上面が切り欠かれてなる。その切欠部21は断面視で矩形溝21aと三角溝21bが連通してなる。
切欠部21(三角溝21b)の後端は、切り欠く前の踏板20の上端かつ後端の部分を始点として、後方から前方に向かって下方に傾斜している。このように切欠部21が形成されることで踏板20の上部後端に、斜面部である第一摺動部22が設けられている。
また、三角溝21bの深さ(踏板20の厚さ方向)よりも矩形溝21aの深さがのほうが深い。
そして、切欠部21(矩形溝21a)と切欠部21(矩形溝21a)の前側の踏板20の上面によって形成された角度が90°となっており、それをエッジ部23と呼ぶ。
また、踏板20の後端面から切欠部21の前端までの距離は、蹴込板30の厚さよりも若干長い。
第二摺動部31は、蹴込板30の下部後端が矩形状に切削されてなり、踏板20の第一摺動部22と当接する。その切削された幅は蹴込板30の厚さの略半分である。
突出部32は、蹴込板30の上記切削によって蹴込板30の下部前部が下方に相対的に突出したものである。
突出部32の幅は、踏板20の矩形溝21aの幅と等しいかその幅よりも狭く、図1(b)に示すように突出部32は踏板20の切欠部21内に収容可能である。本図においては突出部32の幅が踏板20の矩形溝21aの幅と略等しいので、両者の間には遊びがほとんど存在していない。
このように第二摺動部31が踏板20の第一摺動部22に当接したときには、突出部32の下端は切欠部21(矩形溝21a)の底面からは離間している。すなわち、突出部32の下端が踏板20の切欠部21の底面に当接して第二摺動部31と第一摺動部22が当接しないという状況にはなり得ない。
また、突出部32の鉛直面部33から突出部32の下端までの長さは、ユーザーが階段を昇降したときに生じる踏板20の中央部分の撓み量(撓み最大量)よりも長い。
まず、切欠部21が形成された踏板20を水平に配置する。
そして、踏板20の切欠部21に対して蹴込板30の突出部32を上方から嵌め込むとともに、蹴込板30の第二摺動部31を踏板20の第一摺動部22に当接させる。
このように、経験の少ない作業者であっても精度良くしかも簡単に蹴込板30を配置できるので、施工時間が短くて済む。
また、ユーザーが階段を昇降したときに生じる踏板20の撓み量よりも蹴込板30の突出部32の長さを長く設定しているので、施工後でも隙間が生じ難い。
また、これまでの階段施工では常識的に行われていたような、施工中における階段の表側と裏側の行き来が必要ないので、作業効率が非常に高い。
さらに、蹴込板30の本体の後面は踏板20の後端面と略面一であるので、蹴込板30前方の踏板20の有効面積が広くなり、その有効面積に寄与しない踏板20の後端部分の材料の無駄が最小限に抑えられる。これは、蹴込板30の下部後端を切削して第二摺動部31を形成していることで、このように形成しない場合(蹴込板30の下端は切削されない矩形状のままの場合)に比べて、蹴込板30の後面をより後方に位置させることができることによる。
また、蹴込板30の突出部32の前面は突出部32の下端まで蹴込板30の本体の前面と面一であるので踏板20のエッジ部23が当接する許容範囲が広く、また、踏板20のエッジ部23の角度は90°であるので、踏板20と蹴込板30との隙間がより生じ難い。
また、踏板20の切欠部21aの前面が鉛直となっているので、蹴込板30の突出部32の前面と踏板20の切欠部21aの前面との当接面が広く、固定(接合)状態が安定する。
次に図2を参照して、本発明の第二実施形態に係る接合構造及び階段の施工方法を説明する。なお、第一実施形態と同一部分には同一符号を付した。
この突出部32の幅は、踏板20の矩形溝21aの幅よりも狭く、第一実施形態のものと比べて遊びが大きい。
この突出部32の長さが、本発明における突出部32の長さの上限である。なお、突出部32の長さの下限は、踏板20の撓み最大量と等しい長さである。
次に図3を参照して、本発明の第三実施形態に係る接合構造及び階段の施工方法を説明する。なお、第一実施形態と同一部分には同一符号を付した。
本実施形態の第一実施形態との違いは、踏板20の切欠部21の形状であり、その他の構成要素に関しては第一実施形態と同一である。
特に、踏板20のエッジ部23の角度は90°以下であるので、蹴込板30が最も前方に移動したときに蹴込板30の鉛直面部33に踏板20のエッジ部23がピンポイントで当接し、確実に隙間の発生を抑止できる。
また、第一、第二実施形態と同様の施工方法を行うことができる。
次に図4を参照して、本発明の第四実施形態に係る接合構造を説明する。なお、第一実施形態と同一部分には同一符号を付した。
本実施形態の第一実施形態との違いは、蹴込板30の第二摺動部31の形状であり、その他の構成要素に関しては第一実施形態と同一である。
また、第一摺動部22の傾斜角度と第二摺動部31の傾斜角度を等しくしたので、第二摺動部31と第一摺動部22は断面視において線で接する(現実には面で接する)。
また、蹴込板30の本体の後面が踏板20の後端面と略面一には、蹴込板30の本体の後面が踏板20の後端面よりも後方に位置するものも含まれる。また、略面一に限られるものではない。
2 踏板
3 蹴込板
4 取付溝
5 溝
6 楔
7 釘
8 ササラ桁
9 鋸歯状の加工
10 鋸歯状加工垂直面
11 鋸歯状加工水平面
12 隙間
13 切り欠き
14 溝
20 踏板
21 切欠部
21a 矩形溝
21b 三角溝
22 第一摺動部
23 エッジ部
30 蹴込板
31 第二摺動部
32 突出部
33 鉛直面部
Claims (6)
- 水平に配置される踏板と、前記踏板の後部に配置される蹴込板と、を接合してなる階段の接合構造において、
前記踏板は、
前記踏板の後部上面が切り欠かれてなる切欠部と、
前記切欠部が形成されることで前記踏板の後方に設けられた第一摺動部と、
を備えるとともに、
前記蹴込板は、
前記蹴込板の下部後端に設けられ前記踏板の第一摺動部と当接する第二摺動部と、
前記蹴込板の下部前部が下方に突出し前記踏板の切欠部内に収容可能な突出部と、
を備え、
前記踏板の第一摺動部及び前記蹴込板の第二摺動部のうち、前記蹴込板の第二摺動部のみが、後方から前方に向かって下方に傾斜したもので、
しかも、前記踏板の第一摺動部と前記蹴込板の第二摺動部とが、断面視において点で接するようにしたことを特徴とする階段の接合構造。 - 水平に配置される踏板と、前記踏板の後部に接し鉛直上方に延びる蹴込板と、を接合してなる階段の接合構造において、
前記踏板は、
前記踏板の後部上面が切り欠かれてなる切欠部と、
前記切欠部が形成されることで前記踏板の後方に設けられた第一摺動部と、
前記切欠部と前記切欠部の前側の前記踏板の上面とによって形成された角度が90°以下であるエッジ部と、を備えるとともに、
前記蹴込板は、
前記蹴込板の下部後端に設けられ前記踏板の第一摺動部と当接する第二摺動部と、
前記蹴込板の下部前部が下方に突出し前記踏板の切欠部内に収容可能な突出部と、
を備え、
前記踏板の第一摺動部及び前記蹴込板の第二摺動部のうち、前記蹴込板の第二摺動部が、後方から前方に向かって下方に傾斜し、前記エッジ部に前記蹴込板前面が当接してなるもので、
しかも、前記蹴込板の突出部の前面は前記突出部の下端まで前記蹴込板の本体の前面と面一であることを特徴とする階段の接合構造。 - 前記蹴込板の突出部の前面は前記突出部の下端まで前記蹴込板の本体の前面と面一であることを特徴とする請求項1に記載の階段の接合構造。
- 前記踏板の第一摺動部と前記蹴込板の第二摺動部とが、断面視において点で接することを特徴とする請求項2に記載の階段の接合構造。
- 後部上面が切り欠かれてなる切欠部と、前記切欠部が形成されることで後方に設けられた第一摺動部と、前記切欠部と前記切欠部の前側の上面によって形成された角度が90°以下であるエッジ部と、を有する踏板と、
下部後端に設けられ前記踏板の第一摺動部と当接する第二摺動部と、下部前部が下方に突出し前記踏板の切欠部内に収容可能な突出部と、を有する蹴込板と、を備え、前記踏板の第一摺動部及び前記蹴込板の第二摺動部のうち、前記蹴込板の第二摺動部が、後方から前方に向かって下方に傾斜した階段の施工方法であって、
水平に配置した前記踏板の切欠部に対して前記蹴込板の突出部を上方から嵌め込むとともに、前記蹴込板の第二摺動部を前記踏板の第一摺動部に当接させることで前記蹴込板を下方及び前方に摺動させて、前記蹴込板の前面を前記踏板のエッジ部に当接させることを特徴とする階段の施工方法。 - 前記蹴込板を前記踏板に対して直接固定しないことを特徴とする請求項5に記載の階段の施工方法。
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