上記特許文献2,3に示す安全施工階段において、下地段板の両側端部は、側板等によって下側から支持されるとともに、前端側は、下位のけこみ板によって下側から支持されている。しかしながら、下地段板の後端側は上位のけこみ板の下部前面に対向して配置されており、下側から支持されていない。このため例えば、下地段板に高荷重が加わった際等に、下地段板の後端側の中央部が沈み込むような有害なたわみ変形が生じるおそれがあった。
一方、下地段板をその板厚を厚くして強度を高めることによって、上記のたわみ変形を防止することはできるが、そうすると、板厚の増大に伴って、材料費が高騰してコストの増大を来すとともに、重量が増加して下地段板の取扱作業が困難になり、組立作業性の低下を来すという新たな課題が発生する。
この発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、仕上げ前の仮設状態で作業階段として利用できる上さらに、コストの削減および組立作業性の向上を図りつつ、下地段板の後端も下側から支持できて、下地段板に有害なたわみ変形が生じるのを防止することができる安全施工階段を提供することを目的とする。
上記課題を解決するため、本発明は、以下の手段を備えるものである。
[1]斜め方向に間隔をおいて配置される複数の下地段板を備え、隣り合う前記下地段板間に配置されるけこみ板の上端が上側の下地段板の前部下面に対応して配置されるとともに、当該けこみ板の前面下端部が下側の下地段板の後端に対応して配置された仮設状態に対し、前記下地段板の上面に化粧段板が貼り付けられて仕上げ状態となる安全施工階段であって、
前記けこみ板の前面下端部に、前記下地段板の後端に対応して段板挿入溝が形成されるとともに、その段板挿入溝に前記下地段板の後端が挿入された状態に配置されていることを特徴とする安全施工階段。
[2]前記段板挿入溝の下側が、前記下地段板を挿入する下地段板挿入部として構成され、
前記段板挿入溝における前記下地段板の上面と前記段板挿入溝の内周上側面との間の隙間が化粧段板挿入部として構成され、
仕上げ状態では前記化粧段板の後端が前記化粧段板挿入部に挿入された状態に配置されている前項1に記載の安全施工階段。
[3]前記化粧段板の上面後端が前記段板挿入溝の内周上側面に圧接した状態に配置されている前項2に記載の安全施工階段。
[4]前記化粧段板の厚さが前記化粧段板挿入部よりも厚く形成され、その化粧段板挿入部に前記化粧段板の後端が圧縮した状態に挿入されている前項2または3に記載の安全施工階段。
[5]前記下地段板および前記化粧段板間に介在された接着剤が膨張することによって、前記化粧段板の上面後端が前記段板挿入溝の内周上側面に圧接するように構成されている前項2〜4のいずれか1項に記載の安全施工階段。
[6]前記下地段板の上面後端に下地段板切欠凹部が形成されるとともに、
その下地段板切欠凹部の前端位置が上位のけこみ板の前面よりも前方に配置されている前項2〜5のいずれか1項に記載の安全施工階段。
[7]前記化粧段板の下面後端に化粧段板切欠凹部が形成されることにより、前記化粧段板の後端縁が薄く形成されている前項2〜6のいずれか1項に記載の安全施工階段。
[8]前記下地段板挿入部の奥行きが前記化粧段板挿入部の奥行きよりも深く形成されている前項2〜7のいずれか1項に記載の安全施工階段。
[9]前記下地段板の厚さが前記下地段板挿入部よりも厚く形成され、その下地段板挿入部に前記下地段板の後端が圧縮した状態に挿入されている前項2〜8のいずれか1項に記載の安全施工階段。
[10]前記下地段板の後端面下縁部に下地段板側面取り部が形成されている前項1〜9のいずれか1項に記載の安全施工階段。
[11]前記けこみ板における段板挿入溝の開口縁部下側にけこみ板側面取り部が形成されている前項1〜10のいずれか1項に記載の安全施工階段。
[12]仮設状態では前記けこみ板の前面に剥離可能な養生材が積層されるとともに、
仕上げ状態では前記養生材が前記けこみ板から取り外されている前項1〜11のいずれか1項に記載の安全施工階段。
[13]前記けこみ板の前面に貼り付け可能なけこみ板化粧材が設けられ、
仮設状態において前記けこみ板は前記けこみ板化粧材が取り外された状態であり、仕上げ状態では前記けこみ板にけこみ板化粧材が貼り付けられている前項1〜11のいずれか1項に記載の安全施工階段。
[14]前記下地段板および前記化粧段板の前端部を覆う段鼻が設けられている前項1〜13のいずれか1項に記載の安全施工階段。
[15]前記段鼻が前記化粧段板に一体に形成されている前項14に記載の安全施工階段。
[16]前記化粧段板の前端面に雄ざね部が形成されるとともに、前記段鼻の裏面側に雌ざね部が形成され、
前記雄ざね部が前記雌ざね部に嵌め込まれて、前記段鼻が前記化粧段板に取り付けられている前項14に記載の安全施工階段。
[17]前記段板挿入溝のうち、化粧段板を挿入するための化粧段板挿入部に化粧段板によって圧縮変形するクッション材を配置し、そのクッション材の復元力によって前記化粧段板が前方へ押し込まれて、前記化粧段板の前端が前記段鼻に圧接するように構成されている前項16に記載の安全施工階段。
[18]前記下地段板の側縁部および前記けこみ板の側縁部を支持する側板を備え、
前記側板の上端縁に、前記下地段板の両側下面を支持する水平な段板取付部と、前記けこみ板の両側下端を支持する垂直なけこみ板取付部とが交互に設けられ、
前記側板における前記段板取付部の後端に前記けこみ板の下端を挿入配置するためのけこみ板挿入用切欠部が形成されている前項1〜17のいずれか1項に記載の安全施工階段。
発明[1]の安全施工階段によれば、下地段板の後端を上位のけこみ板の段板挿入溝によって下側から支持することができるため、下地段板の後端が沈み込むような有害なたわみ変形が生じるのを確実に防止することができる。また下地段板として薄くて軽量のものを使用できるため、薄板化により材料費を削減できるとともに、軽量化により下地段板の取扱作業を容易に行えて、組立作業性を向上させることができる。さらに下地段板を段板挿入溝に挿入するだけで簡単に、下地段板の位置決めを図ることができるため、組立作業性を一層向上させることができる。
発明[2]の安全施工階段によれば、化粧段板の後端をけこみ板の段板挿入溝に挿入しているため、化粧段板の後端の収まり具合が良くなり、良好な美観を得ることができる。
発明[3]〜[5]の安全施工階段によれば、段板挿入溝の上側開口縁部に隙間が形成されるのを防止でき、良好な美観をより確実に得ることができる。
発明[6][7]の安全施工階段によれば、化粧段板挿入部の巾が狭くとも、その化粧段板挿入部に化粧段板を確実に差し込むことができる。
発明[8]の安全施工階段によれば、下地段板を下地段板挿入部に挿入した際に、下地段板の上方向の位置決めも図ることができるため、組立作業性をより向上させることができる。
発明[9]の安全施工階段によれば、下地段板を下地段板挿入部に強固にかつ安定状態に嵌め込むことができ、下地段板の位置ずれ等を確実に防止することができる。
発明[10][11]の安全施工階段によれば、下地段板を段板挿入溝に確実に差し込むことができる。
発明[12][13]の安全施工階段によれば、仕上げ状態でけこみ板に確実に化粧を施すことができる。
発明[14]〜[16]の安全施工階段によれば、下地段板および化粧段板の前端に段鼻を確実に取り付けることができる。
発明[17]の安全施工階段によれば、化粧段板を安定した状態に取り付けることができる。
発明[18]の安全施工階段によれば、けこみ板を側板のけこみ板挿入用切欠部内に挿入した際に、けこみ板の側板に対する位置決めを図ることができるため、けこみ板を所定の組付位置に精度良く簡単に配置できて組付作業性をより一層向上させることができる。
図1A〜図1Dはこの発明の実施形態である安全施工階段が適用されたひな壇階段の構成を説明するための斜視図である。なお本実施形態においては、階段を下りる際に使用者が向いている方向を「前側」とし、階段を上る際に使用者が向いている方向を「後側」として説明する。また図1A〜図1Dに示す階段は、下側が直階段によって構成され、上側が回り階段によって構成されているが、以下の説明においては発明の理解を容易にするため、直階段の部分に本発明を適用する場合を例に挙げて説明する。もっとも本発明は、直階段に限られず、回り階段にも適用することができる。
図1Aに示すように家屋構造材としての支柱9に、一対のひな壇用側板(両側板)1,1が固定されて、この両側板1,1が階段施工領域の両側に沿って斜めに配置される。言うまでもなく側板1は、支柱9だけに限られず、壁面等の他の構造材に支持するようにしても良い。
さらに図1Bに示すように両側板1,1に複数のけこみ板3が斜め方向に適宜間隔をおいて垂直配置に取り付けられる。後に説明するが、けこみ板3の表面(前面)には透明な養生フィルムが貼り付けられている。
また図1Cに示すように両側板1,1における隣り合うけこみ板2間に複数の下地段板21が斜め方向に適宜間隔をおいて水平配置に取り付けられる。この状態を本実施形態においては仮設状態と称し、隣り合う下地段板21間に配置されるけこみ板2の上端が上側の下地段板21の前部下面に対応して配置されるとともに、当該けこみ板2の前面下端部が下側の下地段板21の後端に対応して配置されている。そして本実施形態においてはこの仮設状態の階段(仮設階段)が建築作業用の作業階段として用いられる。例えばこの仮設階段を用いて内装工事等を行うものである。
そして最終的には図1Dに示すように仮組階段における下地段板21上に化粧段板25が貼り付けられるとともに、けこみ板3に貼り付けられていた養生フィルムが剥ぎ取られる。こうして仕上げ状態となり、この仕上げ状態の階段(仕上げ階段)が居住者用の通常の屋内階段として用いられる。
ここで本実施形態においては、所定の下地段板21の後端側(上側)および前端側(下側)に隣接する2つのけこみ板3のうち、後端側に隣接するけこみ板3を上位のけこみ板3と称し、前端側に隣接するけこみ板3を下位のけこみ板3と称することとする。また本実施形態において、単に段板と言う場合には、下地段板21および化粧段板25の双方を含む場合である。
なお上記図1A〜図1Dは必ずしも施工手順と一致するものではなく、上位のけこみ板3を取り付ける作業と、そのけこみ板3の下部前側に下地段板21を取り付ける作業とを階下から階上に向かって交互に行って、けこみ板3および下地段板21を組み付けるのが最も一般的な施工手順である。さらに下地段板21に上位のけこみ板3を取り付けて、そのけこみ板付きの下地段板を階下から階上に向かって順次側板1に組み付けるような施工手順も多く採用されている。もっとも本発明においては、階段の施工手順は限定されるものではなく、どのような手順で組み立てても良いが、階段を上から順次組み付けていく場合に比べて、階段を下から順次組み付けて行く方が効率良くスムーズに階段を組み立てることができる。
以下、本実施形態のひな壇階段の構成について詳細に説明する。
図1Aに示すようにひな壇階段の側板1は、所定の傾斜角度で斜め方向に延びるように配置されている。この側板1の上側縁部は階段状に切り欠かれることによって、水平な切り口と、垂直な切り口とが交互に並んで配置されるように形成されている。そして水平な切り口が段板取付用木口12として構成されるとともに、垂直な切り口がけこみ板取付用木口13として構成されている。
なお本実施形態においては、段板取付用木口12が段板取付部として構成されるとともに、けこみ板取付用木口13がけこみ板取付部として構成されている。
側板1における段板取付用木口12の後端には、けこみ板取付用木口13に対応して上方に向けて開口するけこみ板挿入用切欠部14が形成されている。
本実施形態において側板1は、例えば18mm厚の合板等の木質系材料によって構成されている。
図2および図3に示すようにけこみ板3は、前面(表面)側の下部に階段巾方向(けこみ板長さ方向)に沿って段板挿入溝30が形成されている。この段板挿入溝30の下側には、下地段板21の後端差込部23を挿入配置するための下地段板挿入部31が設けられるとともに、上側には、化粧段板25の後端縁を挿入配置するための化粧段板挿入部35が設けられる。なお下地段板挿入部31および化粧段板挿入部35については後に詳述する。
本実施形態においては、下地段板挿入部31の奥行き(深さ)が化粧段板挿入部35の奥行き(深さ)よりも深く形成されており、下地段板挿入部31の底面(後面)が化粧段板挿入部35の底面(後面)に対し後方に配置されるようになっている。
本実施形態においてけこみ板3の材料としては、木質系材料を用いることができ、例えば12mm〜30mm厚の合板等を好適に用いることができる。本実施形態のけこみ板3の材料としては21mm厚の合板が採用されている。
またけこみ板3の前面(表面)におけるその少なくとも段板挿入溝30よりも上方の部分は化粧が施されており、その化粧部分には養生材として透明な養生フィルム(図示省略)が貼り付けられている。
本実施形態においては、養生材として透明な養生フィルム(シート)を用いているが、それだけに限られず他の養生材を用いるようにしても良い。例えばフィルムやシートに限られることはなく、紙、テープ等によって構成された養生材を用いることもできる。さらに養生材としては、透明なものに限られることはなく、不透明ないし半透明で着色されたものも用いることができる。
図1Bおよび図2に示すようにこの養生フィルム付きのけこみ板3を一対の側板1に組み付けるには、両側板1の各けこみ板取付用木口13に、けこみ板3における背面側(後面側)の両側縁部を沿わせるようにして、けこみ板3の下端部を両側板1のけこみ板挿入用切欠部14内に挿入配置し、その状態でけこみ板3を糊釘併用で固定する。すなわちけこみ板3の裏面側両側縁部と側板1のけこみ板取付用木口13との間に介在されるように接着剤を塗布しておき、けこみ板3の両側縁部に表面側からフィニッシュネイル等の釘(図示省略)を打ち込んでけこみ板取付用木口13に固定する。こうしてけこみ板3を側板1に固定する。
ここで本実施形態においては、けこみ板3を側板1のけこみ板挿入用切欠部14内に挿入した際に、けこみ板3の側板1に対する位置決めを図ることができるため、けこみ板3を所定の組付位置に精度良く簡単に配置できて組付作業性を向上させることができる。
さらにけこみ板3をけこみ板挿入用切欠部14内に挿入配置した後は、けこみ板3はけこみ板挿入用切欠部14によって仮保持されて作業者が支持しなくとも取付姿勢を維持できるため、作業者は両手を自由に用いて釘打ち作業等のけこみ板3の固定作業を行うことができる。従ってけこみ板3の組付固定作業を簡単かつスムーズに行うことができ、組付作業性を一層向上させることができる。
なお、本実施形態においてけこみ板3が側板1に組み付けられた状態においては、けこみ板3の段板挿入溝30が側板1における段板取付用木口12の上方に対応して配置されている。
図3および図4に示すように下地段板21は、上面の後端縁に階段巾方向(段板長さ方向)に沿って連続し、かつ上方および後方に向けて開口する断面L字状の下地段板切欠凹段部22を有している。この下地段板切欠凹段部22の前端位置は、下地段板21を組み付けた状態においては、上位のけこみ板3の前面よりも前方に配置されるようになっている。後に詳述するが、この下地段板切欠凹段部22は、下地段板切欠凹部に相当するものであり、化粧段板25の化粧段板挿入部35への挿入操作を容易に行うためのものである。
図8に示すようにこの下地段板21における下地段板切欠凹段部22が形成される部分、つまり下地段板21の後端差込部23の厚さT1は、けこみ板3における下地段板挿入部31の巾寸法(隙間寸法)W1よりも少し大きく(厚く)形成されている。
また下地段板21の上面における下地段板切欠凹部22よりも少し前方には、階段巾方向(段板長さ方向)に沿って連続する断面V字状の釘打ち用溝24が形成されている。
本実施形態において下地段板21の材料としては、木質系材料を用いることができ、例えば12mm〜30mm厚の合板等を好適に用いることができる。本実施形態の下地段板21の材料としては18mm厚の合板が採用されている。
図1Cおよび図4に示すようにこの下地段板21を一対の側板1等に組み付けるには、後端側が下向きとなるように下地段板21を斜め姿勢に配置した状態で、その下地段板21の後端差込部23を上位のけこみ板3の下地段板挿入部31に対向させ、続いて下地段板21をその後端差込部23を化粧段板挿入部31に挿入しながら水平姿勢となるように回転させる。これにより下地段板21における両側縁部が両側板1の各段板取付用木口12に沿った状態で、下地段板21の後端差込部23が上位のけこみ板3の下地段板挿入部31内に嵌め込まれる。そしてその状態で下地段板21を側板1およびけこみ板3に糊釘併用で固定する。すなわち下地段板21の下面側における前縁部、後縁部および両側縁部の全周(周囲4辺)と、それに対応する、下位のけこみ板3の上端面、上位のけこみ板3の下地段板挿入部31、および両側板1の段板取付用木口12との間にそれぞれ介在されるように接着剤を塗布しておく。さらに図5に示すように下地段板21の両側縁部に上方からフィニッシュネイル等の釘51を打ち込んで側板1の段板取付用木口12に固定し、下地段板21の前縁部に上方からフィニッシュネイル等の釘51を下側に隣接する下位のけこみ板3の上端面に固定するとともに、下地段板21の後縁部における釘打ち込み用溝24に斜め前方からフィニッシュネイル等の釘51を打ち込んで上位のけこみ板3における下地段板挿入部31に固定する。こうして下地段板21を側板1およびけこみ板3に糊釘併用で固定する。
ここで本実施形態においては、下地段板21をけこみ板3の下地段板挿入部31に挿入した際に、下地段板21の側板1およびけこみ板3に対する位置決めを図ることができるため、下地段板21を所定の組付位置に精度良く簡単に配置できて組付作業性を向上させることができる。特に下地段板挿入部31の奥行きを化粧段板挿入部35の奥行きよりも深く形成しているため、下地段板21を下地段板挿入部31に挿入した際に上方向の位置決めも図ることができ、組付作業性を一層向上させることができる。
また本実施形態においては既述した通り、下地段板21の後端差込部23の厚さT1をけこみ板3の下地段板挿入部31の巾(隙間)W1よりも少し大きく形成しているため、下地段板21の後端差込部23が弾性圧縮変形しながら下地段板挿入部31内に挿入される。このため上記の圧縮変形に対する復元力によって下地段板21をけこみ板3の下地段板挿入部31に強固にかつ安定状態に嵌め込むことができ、下地段板21の位置ずれ等を確実に防止することができる。
また本実施形態においては、下地段板21の周囲4辺の全周を、側板1およびけこみ板3によって支持固定できるため、下地段板21に加わる荷重を周囲に均等に分散させて支持できて、下地段板21を安定した状態に確実に組み付けることができる。特に下地段板21の後端縁を上位のけこみ板3の下地段板挿入部31によって下側から支持できるため、下地段板21に高荷重が加わった際に下地段板21の後端部中央が沈み込むような有害なたわみ変形が生じるのを確実に防止することができる。
その結果、下地段板自体の強度を高くしなくとも上記のたわみ変形を有効に防止できるため、下地段板21として薄くて軽量のものを使用することができる。このため薄板化により材料費を削減できるとともに、軽量化により下地段板21の取扱作業を容易に行えて、ひいては組立作業性をより一層向上させることができる。
本実施形態においては、既述した通り下地段板21を組み付けた仮設状態の階段(仮設階段)を建築作業用の作業階段として利用し、例えば内装工事等を行うものである。
ここでけこみ板3に形成された段板挿入溝30の下地段板挿入部31および化粧段板挿入部35について詳細に説明する。本実施形態において、段板挿入溝30のうち下地段板挿入部31は、下地段板21を構成する部位が実際に挿入される部分、本実施形態においては下地段板21の後端差込部23に対応する部分である。従って本実施形態において、下地段板挿入部31の巾W1は、下地段板21の後端差込部23の厚さT1に基づいて設定されるものであり、下地段板挿入部31の巾W1は、下地段板21の主要部の厚さ(下地段板21における後端差込部23よりも前側の部分の厚さ)と関連性がない。なお後述の変形例で説明するように後端縁に切欠凹部等が形成されない下地段板21においては(図10参照)、下地段板21の主要部の厚さを基準に下地段板挿入部31の巾W1が設定されることになる。
また段板挿入溝30の化粧段板挿入部35は、下地段板21が挿入された状態において、段板挿入溝30内における下地段板21の上面よりも上側の部分によって構成されている。つまり本実施形態において、化粧段板挿入部35の巾W2は、下地段板21の上面と段板挿入溝30の内周上側面との間の隙間寸法に一致するものであり、化粧段板25の厚さに基づいて設定されるものである。なお後述の変形例で説明するように後端縁に切欠凹部26が形成された化粧段板25であっても(図10参照)、化粧段板挿入部35の巾W2は、化粧段板25の後端縁の厚さと関連性がなく、化粧段板25の主要部の厚さT2に基づいて設定されるものである。
一方図6および図7に示すように、仮設階段としての用途が終了した後に仮組状態の階段に取り付けられる化粧段板25は、下地段板21の上面を覆うように貼り付けられるものであり、前端縁に段鼻4が一体に形成されている。段鼻4は化粧段板25の前端縁から前方に延びてから下方に折り返されて、その下方折り返し部が下地段板21の前端縁を前方から覆うことができるようになっている。
図8に示すように化粧段板25の厚さT2は、既述したように下地段板21の上面とけこみ板3の化粧段板挿入部35との間の間隔に対応する化粧段板挿入部35の巾W2よりも少し大きく(厚く)形成されている。なお下地段板21における切欠凹段部22の前端位置は上位のけこみ板3の前面によりも前方に配置されているため、その前端位置と、けこみ板3における段板挿入溝30の上側開口縁部との間に形成された斜め向き隙間の間隔Lが、化粧段板25の厚さT2よりも大きく形成されている。
本実施形態において化粧段板25の材料としては、木質系材料を用いることができ、例えば6mm〜18mm厚のPB(パーティクルボード)やMDF(中密度繊維板)等を好適に用いることができる。本実施形態の化粧段板25の材料としては、12mm厚のPBまたは9mm厚のMDFが採用されている。
図1Dおよび図6に示すようにこの化粧段板25を一対の側板1等に組み付けるには、化粧段板25をその後端側が下向きになるような斜め姿勢に配置し、その斜め姿勢のままで化粧段板25の後端縁を、上記斜め向き隙間を介してけこみ板3における化粧段板挿入部35の前部に挿入し、続けて化粧段板25を後方に押し込みつつ水平姿勢になるまで回転させて、化粧段板25の後端縁を化粧段板挿入部35の奥まで差し込む。この差込状態においては、化粧段板25が下地段板21の上面を覆うように配置されるとともに、段鼻4が化粧段板25および下地段板21の前端面を覆うように配置されることにより、下地段板21が段鼻付きの化粧段板25によって化粧が施される。
ここで本実施形態においては、下地段板21の上面後端縁に下地段板切欠凹段部22を形成して、切欠凹段部22の前端と段板挿入溝30の上側開口縁部との間の斜め向き隙間の間隔Lを化粧段板25の厚さT2よりも広く形成しているため、その斜め向き隙間を介して斜め姿勢の化粧段板25の後端縁をけこみ板3の化粧段板挿入部35に支障なく挿入して奥まで嵌め込むことができる。すなわち化粧段板25の厚さT2は、下地段板21の上面および化粧段板挿入部35の上面(天井面)間の隙間寸法W2よりも厚く形成しているため、仮に下地段板21の上面後端部に切欠凹段部22が形成されていないような場合には、化粧段板25が斜め姿勢であっても水平姿勢であっても化粧段板25の後端縁をけこみ板3の化粧段板挿入部35内に挿入することが困難であり、化粧段板25の組付作業が困難になってしまう。
そこで本実施形態においては、下地段板21の切欠凹段部22の上方に形成される斜め向き隙間の間隔Lが化粧段板25の厚さT2よりも大きいため、その斜め向き隙間に斜め姿勢の化粧段板25の後端縁を確実に挿入できて、既述した通り化粧段板25を回転させつつ化粧段板挿入部35の奥まで確実に差し込むことができる。このように化粧段板25の後端縁を斜め下向きに配置して化粧段板挿入部35に挿入することによって、化粧段板25の後端縁を化粧段板挿入部35にスムーズに挿入できるとともに、化粧段板25を回転させつつ押し込むことによって化粧段板挿入部35の奥までスムーズに差し込むことができる。従って化粧段板25の挿入作業を効率良くスムーズに行うことができ、ひいては組立作業性を一層向上させることができる。
さらに本実施形態においては、化粧段板25を化粧段板挿入部35に挿入した際に、化粧段板25の下地段板21等に対する位置決めを図ることができるため、化粧段板25を所定の位置に精度良く簡単に配置できて組付作業性をより向上させることができる。
その上さらに本実施形態においては、化粧段板25の厚さT2を化粧段板挿入部35の巾W2よりも厚く形成しているため、化粧段板25、下地段板21およびけこみ板3が弾性圧縮変形しながら化粧段板25が化粧段板挿入部35内に挿入される。このため上記の圧縮変形に対する復元力によって化粧段板25の上面が段板挿入溝30の内周上側面に密着し、化粧段板25と段板挿入溝30の上側開口縁部との間に隙間が形成されるのを確実に防止できて、良好な美観を確保することができる。
なお本実施形態において、化粧段板25は下地段板21に糊釘併用で固定される。すなわち図7に示すように化粧段板25および下地段板21間に介在されるように接着剤を塗布しておき、その状態で化粧段板25の両側縁部および前縁部に上方からフィニッシュネイル等の釘55を打ち込んで下地段板21および側板1に固定する。
こうして化粧段板25を貼り付けて下地段板21に化粧を施すとともに、けこみ板3の前面に貼着された養生フィルム等の養生材を剥離して、けこみ板3の化粧面を露出させる。これにより本実施形態のひな壇階段が仕上げ状態となり階段組立作業が完了する。
以上のように本実施形態の安全施工階段によれば、下地段板21の後端縁をけこみ板3の下地段板挿入部31に挿入して固定しているため、下地段板21の後端縁21をけこみ板3の下地段板挿入部31によって下方側から支持固定することができる。従って下地段板21の後端縁中央部にたわみ変形が生じるのを防止することができる。さらに下地段板21のたわみ変形を防止できるため、下地段板21として薄くて軽量のものを使用でき、コストの削減および組立作業性を向上させることができる。
さらに本実施形態においては、けこみ板3の下地段板挿入部21の奥行きを化粧段板挿入部25の奥行きよりも深く形成しているため、下地段板21を下地段板挿入部21に差し込んだ際に、奥行き方向および下方向の位置決めに加えて上方向の位置決めも図ることができ、下地段板21を精度良く簡単に取り付けることができる。
また本実施形態の安全施工階段においては、けこみ板3、下地段板21、化粧段板25の組付作業はその釘打ち作業も含めて全て階段前面側からの作業で行うことができる。つまり階段裏面側からの作業が不要となり、組付作業性をより一層向上させることができる。
さらに化粧段板25の後端縁を上位のけこみ板3の段板挿入溝30に挿入しているため、化粧段板25の後端縁の収まり具合が良くなり、良好な美観をより確実に得ることができる。
また化粧段板25の厚さT2を、段板挿入溝30の上側に設けられた化粧段板挿入部35の巾W2よりも厚く形成して、化粧段板25を化粧段板挿入部35に圧縮状態に挿入しているため、化粧段板25の上面が段板挿入溝30の上側開口縁部に密着し隙間が形成されるのを防止でき、美観をより一層向上させることができる。
さらに下地段板21の上面後端縁に切欠凹段部22を形成して、その凹段部22を利用して化粧段板25を化粧段板挿入部35に挿入するようにしているため、化粧段板25の厚さが厚くとも、化粧段板挿入部35に確実に挿入することができる。
また化粧段板25に段鼻4を一体に形成しているため、化粧段板25の取付と同時に段鼻4を取り付けることができ、実質的に段鼻4の取付作業を省略できて、一段と組付作業性を向上させることができる。
なお上記実施形態においては、本発明を直階段に適用する場合を例に挙げて説明したが、それだけに限られず、本発明は、図1A〜図1Dに示すひな壇階段の上側を構成する回り階段(かね折れ階段も含む)にも上記と同様にして適用することができる。
また上記実施形態においては、けこみ板3における下地段板挿入部31の奥行きを化粧段板挿入部25の奥行きよりも深く形成しているが、それだけに限られず、本発明においては図9に示すように下地段板挿入部31の奥行きと化粧段板挿入部35の奥行きとを同じ深さに形成しても良いし、下地段板挿入部31の奥行きを化粧段板挿入部35の奥行きよりも浅く形成するようにしても良い。
また上記実施形態においては、化粧段板25の後端縁を化粧段板挿入部35にスムーズに挿入できるように、下地段板21の後端縁に切欠凹段部22を形成するようにしているが、それだけに限られず、本発明においては図10に示すように化粧段板25の下面後端縁に化粧段板切欠凹部26を形成するようにしても良い。この場合、化粧段板切欠部26が形成されることによって、化粧段板25の後端縁の厚さが薄くなり、その薄い化粧段板後端縁をけこみ板3の段板挿入溝30内における下地段板21の上方に確実に挿入できて、上記実施形態と同様に化粧段板25を回転操作しつつ押し込むことにより、化粧段板25を化粧段板挿入部35の奥まで確実に差し込むことができる。
さらに本発明においては、下地段板21の下面後端縁および化粧段板25の上面後端縁の双方に切欠凹部22,26をそれぞれ形成するようにしても良い。
また本発明においては、下地段板21や化粧段板25に切欠凹部等を形成しなくとも化粧段板25を化粧段板挿入部35に圧縮状態に挿入配置することができる。例えば図11に示すように化粧段板25の実質的な厚さ寸法を化粧段板挿入部35の巾寸法よりも薄く形成しておき、化粧段板25を下地段板21に接着するための接着剤6として、硬化時に発泡して膨張する発泡性接着剤を用いるようにすれば良い。この場合、接着剤6の硬化前に化粧段板25を化粧段板挿入溝35内に挿入すれば、その挿入作業を確実に行えるとともに、その後接着剤6が硬化して発泡することによって化粧段板25の上面後端縁を段板挿入溝30の内周上側面に圧接することができ、化粧段板25の上面と段板挿入溝30の上側開口縁部との間に隙間が形成されるのを確実に防止することができる。
同様に下地段板21の後端差込部23をけこみ板3の段板挿入溝30の内周下側面に固定する際に、発泡性接着剤によって接着するようにすれば、下地段板21の後端差込部23の厚さT1が下地段板挿入部31の巾W1よりも薄い場合であっても、下地段板21の後端差込部23を下地段板挿入部31に圧縮状態に嵌め込むことができる。
ここで発泡性接着剤としては、1液型ウレタン系接着剤を好適なものとして例示することができる。なお発泡に限られず、下地段板21や化粧段板25を挿入した後、膨張する(体積が増加する)接着剤であれば、上記の発泡性接着剤と同様に用いることができる。
また上記実施形態においては、化粧面に養生フィルム等の養生材が貼り付けられたけこみ板3を組み付けておき、最終的に養生フィルムを剥離して、けこみ板3の化粧面を露出させて仕上げ施工を行うようにしているが、それだけに限られず、本発明においては、化粧が施されていないけこみ板を組み付けておき、最終的にけこみ板の表面に化粧材を貼り付けて仕上げ施工を行うようにしても良い。
また上記実施形態においては、化粧段板25の後端縁をけこみ板3の段板挿入溝30に挿入するようにしているが、それだけに限られず、本発明においては、下地段板21だけをけこみ板3の段板挿入溝30に挿入し、化粧段板25の後端縁は段板挿入溝30に挿入せずにけこみ板3の前面に対向配置させるようにしても良い。
また上記実施形態においては、化粧段板25に段鼻4を一体に形成しているが、それだけに限られず、本発明においては図12に示すように段鼻4を化粧段板25に対し別体に形成するようにしても良い。この場合同図に示すように化粧段板25の前端面に雄ざね部27を形成するとともに、段鼻4の裏面側に雄ざね部27に対応して雌ざね部41を形成しておき、雄ざね部27を雌ざね部41に嵌め込んで段鼻4を化粧段板25等に固定することによって、段鼻4を所定位置に位置精度良く確実に固定することができる。言うまでもなく、段鼻取付用の雄ざね部を下地段板21の前端面に形成するようにしても良い。
また上記実施形態において例えば、化粧段板25と別体の段鼻4を下地段板21の前端面に固定するような場合、けこみ板3における化粧段板収容部35内に弾性復元力を有するクッション材を圧縮状態に挿入しておくことにより、そのクッション材の復元力によって化粧段板25を前方に押し付けて段鼻5に圧接することができ、化粧段板25を安定した状態に取り付けることができる。
また本発明においては図13Aに示すように、下地段板21における後端差込部23の後端面下縁部に面取り部(下地段板側面取り部)29を形成するようにしても良い。この場合には、後端差込部23の厚さT1が下地段板挿入部31の巾W1よりも厚い場合でも、下地段板21を容易に挿入することができる。また図13Bに示すように、けこみ板3における段板挿入溝30の開口縁部下側に面取り部(けこみ板側面取り部)39を形成しても、上記と同様に後端差込部23の厚さT1が下地段板挿入部31の巾W1よりも厚い場合でも、下地段板21を容易に挿入することができる。言うまでもなく本発明においては、図13Aに示す下地段板側面取り部29と、図13Bに示すけこみ板側面取り部39とを共に形成するようにしても良い。
また図13Bに示すように、けこみ板側面取り部39を形成する場合には、釘打ち角度にかかわらず下地段板21をけこみ板3に確実に固定することができる。すなわち図14Aに示すように、けこみ板側面取り部39が形成されていない場合、釘打ち角度が高いと(釘打ち方向が垂直に近いと)、釘打ち用溝24から打ち込んだ釘51が段板挿入溝30内に届かず、下地段板21の下方に抜け出してけこみ板3の前面における段板挿入溝30の下側で跳ね返されて折れ曲がってしまい、釘51をけこみ板3に固定できないおそれがある。
そこで図14Bに示すようにけこみ板側面取り部39を形成しておくと、釘打ち角度が高い場合であっても、釘打ち用溝24から打ち込んだ釘51が面取り部39に導かれるため、釘51をけこみ板3に確実に固定することができる。
参考までに図14Cに示すように釘打ち角度が低い場合には、けこみ板側面取り部が39が形成されていなくとも、釘打ち用溝24から打ち込んだ釘51は段板挿入溝30内に導かれるため、釘51をけこみ板3に確実に固定することができる。