JP6520622B2 - 二酸化バナジウム含有粒子の製造方法 - Google Patents

二酸化バナジウム含有粒子の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、二酸化バナジウム含有粒子の製造方法に関する。より詳しくは、サーモクロミック性や光透過性に優れた二酸化バナジウム含有粒子の製造方法に関する。
例えば、住宅やビル等の建物及び車両などの移動体等では、内部(例えば、室内、車両内。)と外部環境との間で大きな熱交換が生じるか所(例えば、窓ガラス)において、省エネルギー性と快適性とを両立するために、熱の遮断又は透過を制御可能なサーモクロミック性を有する材料(以下、「サーモクロミック材料」ともいう。)の適用が期待されている。
上記「サーモクロミック材料」とは、例えば透明状態/反射状態等の光学的な性質を、温度により制御することが可能な材料である。具体的には、例えば、温度が高い場合は反射状態となり、温度が低い場合は透明状態となる材料である。このようなサーモクロミック材料を、例えば、建物の窓ガラスに適用した場合には、夏には太陽光を反射させて熱を遮断でき、冬には太陽光を透過させて熱を利用できるため、この結果、省エネ性と快適性とを両立できる。
現在、最も着目されているサーモクロミック材料の一つに、二酸化バナジウム(VO)を含有する二酸化バナジウム含有粒子(以下、単に「VO含有粒子」ともいう。)がある。VO含有粒子は、室温付近での相転移の際に、サーモクロミック性(温度により、光透過性などの光学特性が可逆的に変化する性質)を示すことが知られている。したがって、この性質を利用することにより、環境の温度に依存するサーモクロミック性を得ることができる。
ここで、VOの結晶構造には、A相、B相、C相及びR相(いわゆる「ルチル型の結晶相」のこと。)など、いくつかの結晶相の多形が存在する。この中でも、前述のようなサーモクロミック性を示す主な結晶構造はR相である。このR相は、転移温度以下では、単斜晶系(monoclinic)の構造を有するため、M相とも呼ばれている。
このようなVO含有粒子において、実質的に優れたサーモクロミック性を発現させるためには、粒子中にサーモクロミック性を示さない金属や、二酸化バナジウムのM相以外の結晶相が存在しないことが望ましい。また、良好な光透過性(低ヘイズ)を得るためには、二酸化バナジウム含有粒子の粒径ができるだけ均一で、かつ小さい必要がある。このような粒子を作製する技術として、水熱合成法が報告されている(例えば、特許文献1及び2参照。)。
しかしながら、上記従来技術にあってはサーモクロミック性及び光透過性が不十分であり、更なる性能の向上が求められている。
例えば、特許文献1に示す水熱反応で得られるVO含有粒子は、二酸化チタン(TiO)粒子上にR相の二酸化バナジウムをエピタキシャル成長させることでサブミクロン以下の粒子が形成させるものの、不純物として二酸化チタンを含み、その結果、二酸化バナジウムの純度が低くなり、サーモクロミック性が低下するという問題がある。
一方、特許文献2に示す水熱反応で得られるVO含有粒子については、その実施例1に五酸化二バナジウム(V)を一度過酸化水素で溶解させた後に還元剤であるヒドラジン水和物(N・HO)を添加する記載があるが、五酸化バナジウムの溶解状態によって必要となるヒドラジン量が異なり、溶解状態によって還元剤量を調整しないと粗大粒子やA相などの副生成物ができやすく、サーモクロミック性や光透過性(ヘイズ)が低下してしまうという問題がある。
特開2010−031235号公報 特開2011−178825号公報
本発明は、上記問題・状況に鑑みてなされたものであり、その解決課題は、サーモクロミック性や光透過性に優れた二酸化バナジウム含有粒子の製造方法を提供することである。
本発明者は、上記課題を解決すべく、上記問題の原因等について検討する過程において、バナジウム(V)を含有する化合物が適切な溶解状態である反応液に、還元剤を添加すればサーモクロミック性や光透過性に優れた二酸化バナジウム含有粒子が得られることを見いだし本発明に至った。
すなわち、本発明に係る上記課題は、以下の手段により解決される。
1.サーモクロミック性を有する二酸化バナジウム(VO)を含有する二酸化バナジウム含有粒子の製造方法であって、
(A)水に、バナジウム(V)を含有する化合物を溶解し反応液とする工程と、
(B)前記反応液に還元剤を添加する工程と、
(C)前記反応液を水熱反応させる工程と、
を有し、
前記工程(B)においては、前記還元剤が添加される前記反応液の、波長700nmにおける吸光度(A700)と、波長750nmにおける吸光度(A750)との比の値(A700/A750)が0.87〜1.40の範囲内であり、かつ、
前記還元剤の添加量が、前記バナジウム(V)を含有する化合物1.0に対して、1.0〜1.4当量の範囲内であることを特徴とする二酸化バナジウム含有粒子の製造方法。
2.前記工程(B)においては、前記還元剤が添加される前記反応液の、前記波長700nmにおける吸光度(A700)と、前記波長750nmにおける吸光度(A750)との比の値(A700/A750)が1.00〜1.40の範囲内であることを特徴とする第1項に記載の二酸化バナジウム含有粒子の製造方法。
3.前記工程(A)では、前記反応液の液温が、10〜60℃の範囲内であることを特徴とする第1項又は第2項に記載の二酸化バナジウム含有粒子の製造方法。
4.前記工程(A)では、前記反応液を入れた反応容器を水浴槽中に入れることで、前記反応液の液温を調整することを特徴とする第1項から第3項までのいずれか一項に記載の二酸化バナジウム含有粒子の製造方法。
5.前記工程(A)では、前記バナジウム(V)を含有する化合物に対する溶解剤を使用し、前記反応液中の前記水に対する当該溶解剤の量が、1〜10質量%の範囲内であることを特徴とする第1項から第4項までのいずれか一項に記載の二酸化バナジウム含有粒子の製造方法。
6.前記工程(A)では、前記反応液中の前記バナジウム(V)を含有する化合物の濃度が、1〜30質量%の範囲内であることを特徴とする第1項から第5項までのいずれか一項に記載の二酸化バナジウム含有粒子の製造方法。
本発明の上記手段により、サーモクロミック性や光透過性に優れた二酸化バナジウム含有粒子の製造方法を提供することができる。
本発明の効果の発現機構ないし作用機構については、明確にはなっていないが、以下のように推察している。
本発明者は、還元剤を添加する際の反応液において、バナジウム(V)を含有する化合物の溶解状態が、製造される二酸化バナジウム含有粒子の形状や、結晶相に影響を及ぼすことを発見した。
鋭意検討の結果、本発明者は、反応液中のバナジウム(V)を含有する化合物の溶解状態を、波長700nmにおける吸光度(A700)と、波長750nmにおける吸光度(A750)との比の値(A700/A750)で評価できることを発見した。さらに、本発明者は、波長700nmにおける吸光度(A700)と、波長750nmにおける吸光度(A750)との比の値(A700/A750)が0.87〜1.40の範囲内に調整した状態の反応液に還元剤を添加することで、二酸化バナジウム粒子の前駆体を良好に形成することができ、均一な反応を進めることができることを発見した。これにより、A相などの副生成物の生成を抑制でき、製造される二酸化バナジウム含有粒子の純度が高くなり、この結果、調光幅が改善し、ひいては、良好なサーモクロミック性を実現できることを見いだした。さらに、本発明者は、上記範囲内に調整した状態の反応液に還元剤を添加すれば、均一に粒子形成反応が進むため、粒径分布が小さな粒子を製造できるため、粗大粒子が減少し、ひいては、光透過性(ヘイズ)が良好な二酸化バナジウム含有粒子を製造できることを見いだし本発明に至った。
本発明の二酸化バナジウム含有粒子の製造方法は、サーモクロミック性を有する二酸化バナジウム(VO)を含有する二酸化バナジウム含有粒子の製造方法であって、
(A)水に、バナジウム(V)を含有する化合物を溶解し反応液とする工程と、
(B)前記反応液に還元剤を添加する工程と、
(C)前記反応液を水熱反応させる工程と、
を有し、前記工程(B)においては、前記還元剤が添加される前記反応液の、波長700nmにおける吸光度(A700)と、波長750nmにおける吸光度(A750)との比の値(A700/A750)が0.87〜1.40の範囲内であり、かつ、前記還元剤の添加量が、前記バナジウム(V)を含有する化合物1.0に対して、1.0〜1.4当量の範囲内であることを特徴とする。この特徴は、請求項1から請求項6までの請求項に係る発明に共通又は対応する技術的特徴である。
本発明の実施態様としては、工程(B)において、前記還元剤が添加される前記反応液の、前記波長700nmにおける吸光度(A700)と、前記波長750nmにおける吸光度(A750)との比の値(A700/A750)が1.00〜1.40の範囲内であることが、光透過性が向上するため、好ましい。
本発明においては、工程(A)で、前記反応液の液温が10〜60℃の範囲内であることが、工程時間を短縮でき、かつ、サーモクロミック性及び光透過性がより良好となるため好ましい。
また、本発明においては、工程(A)で、前記反応液を入れた反応容器を水浴槽中に入れることで、前記反応液の液温を調整することが、製造時間を短縮でき、また、好適な平均粒径とすることができるため、好ましい。
さらに、本発明においては、工程(A)では、前記バナジウム(V)を含有する化合物に対する溶解剤を使用し、前記反応液中の前記水に対する当該溶解剤の量を、1〜10質量%の範囲内とすることが、サーモクロミック性がより良好となり、さらに、粒径分布のより狭い二酸化バナジウム含有粒子を製造できるため好ましい。
本発明においては、工程(A)では、前記反応液中の前記バナジウム(V)を含有する化合物の濃度が、1〜30質量%の範囲内であることが、サーモクロミック性がより良好となり、さらに、粒径分布のより狭い二酸化バナジウム含有粒子を製造できるため好ましい。
以下、本発明とその構成要素、及び本発明を実施するための形態・態様について詳細な説明をする。なお、本願において、「〜」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用する。
≪二酸化バナジウム含有粒子の製造方法の概要≫
本発明の二酸化バナジウム含有粒子の製造方法は、サーモクロミック性を有する二酸化バナジウム(VO)を含有する二酸化バナジウム含有粒子の製造方法であって、
(A)水に、バナジウム(V)を含有する化合物を溶解し反応液とする工程(以下、「工程(A)」ともいう。)と、
(B)前記反応液に還元剤を添加する工程(以下、「工程(B)」ともいう。)と、
(C)前記反応液を水熱反応させる工程(以下、「工程(C)」ともいう。)と、
を有し、
前記工程(B)においては、前記還元剤が添加される前記反応液の、波長700nmにおける吸光度(A700)と、波長750nmにおける吸光度(A750)との比の値(A700/A750)が0.87〜1.40の範囲内であり、かつ、
前記還元剤の添加量が、前記バナジウム(V)を含有する化合物1.0に対して、1.0〜1.4当量の範囲内であることを特徴とする。
以下に、本発明のサーモクロミック性を有する二酸化バナジウム(VO)を含有する粒子(以下、「VO含有粒子」ともいう。)の製造方法について詳細に説明する。
[(A)水に、バナジウム(V)を含有する化合物を溶解し反応液とする工程]
まず、水に、バナジウム(V)を含有する化合物(以下、「バナジウム化合物」ともいう。)を溶解し反応液を調製する。この反応液は、バナジウム化合物が水中に溶解した水溶液であっても良いし、バナジウム化合物が水中に分散した懸濁液であってもよい。
当該工程(A)では、反応液の液温が10〜60℃の範囲内であることが、工程時間を短縮でき、かつ、サーモクロミック性及び光透過性がより良好となるため好ましい。
なお、10℃以上であれば工程時間が工業的に不利になるほど長時間必要となることを回避でき、また、60℃以下であると工程が制御できないほど時間を短縮しなければならなくなることを回避できる。
また、上記液温の範囲とするためには、反応液を入れた反応容器を水浴槽中に入れることや、室温等で調整することで反応液の液温を調整することが挙げられる。中でも、反応液を入れた反応容器を水浴槽中に入れることが、伝熱がよく、溶解熱を逃がすことで反応液の温度上昇を抑えることができるため、前駆体を良好に形成することができ、ひいては、好適な平均粒径とすることができるため好ましい。
<バナジウム(V)を含有する化合物>
上記バナジウム(V)を含有する化合物は、少なくとも5価のバナジウム(V)を含有する化合物であれば、特に限定されず、例えば、五酸化二バナジウム(V)、バナジン酸アンモニウム(NHVO)、三塩化酸化バナジウム(VOCl)、メタバナジン酸ナトリウム(NaVO)が含まれる。
なお、バナジウム(V)を含有する化合物は、少なくとも5価のバナジウム(V)を含有する化合物を含有していれば、本発明の効果を阻害しない範囲で、他種の金属又は金属化合物等を含有していてもよい。
また、反応液中のバナジウム(V)を含有する化合物の濃度は、1〜30質量%の範囲内であることが、サーモクロミック性及び光透過性がより良好となるため好ましい。
上記濃度が1質量%以上であれば、粒子の核形成を好適におこすことができる。また、当該濃度が30質量%以下であれば粒子成長が促進され過ぎることを抑制でき、ひいては、不均一な粒子形成が起こることを回避できる。
なお、反応液中のバナジウム(V)を含有する化合物の濃度とは、バナジウムを含有する化合物のモル濃度を二酸化バナジウムに換算した場合の濃度である。
<水>
本発明に係る水は、特に限定されないが、不純物の少ない高純度のものが好ましく、具体的には、イオン交換水、蒸留水等の精製水を用いることができる。
<溶解剤>
工程(A)では、前記バナジウム(V)を含有する化合物に対する溶解剤を使用してもよい。バナジウム(V)を含有する化合物を溶解可能な溶解剤としては、酸化性又は還元性を有する物質が挙げられる。このような溶解剤には、例えば、過酸化水素(H)、アンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、硫酸、ヒドラジン等が含まれる。
なお、水に対する溶解剤の量は1〜10質量%の範囲内であることが好ましい。酸化性又は還元性を有する溶解剤をこの範囲内で添加することにより、反応液のpHを調整したり、バナジウム化合物を均一に溶解させたりすることができ、これにより、サーモクロミック性がより良好であり、かつ、粒径分布のより狭い二酸化バナジウム含有粒子を製造できる。
なお、過酸化水素としては、例えば、過酸化水素水(濃度35質量%、和光純薬社製、特級)を好適に用いることができる。
[(B)反応液に還元剤を添加する工程]
当該工程(B)では、上記工程(A)で調製された反応液に還元剤を添加する。
工程(B)において、還元剤が添加される反応液の、波長700nmにおける吸光度(A700)と、波長750nmにおける吸光度(A750)との比の値(A700/A750)は0.87〜1.40の範囲内である。
700/A750が0.87未満であると、溶解状態や懸濁状態が悪く、還元剤と不均一に反応してしまうと考えられる。また、1.40より大きいと反応液中のバナジウムイオン種が複数存在することとなり、還元剤と不均一に反応してしまうと考えられる。よって、A700/A750が上記範囲外であると、還元剤と不均一に反応してしまうことから、サーモクロミック性や光透過性に優れた二酸化バナジウム含有粒子を製造できないと推察する。
なお、還元剤が添加される反応液の、波長700nmにおける吸光度(A700)と、波長750nmにおける吸光度(A750)との比の値(A700/A750)が1.00〜1.40の範囲内であることが、光透過性が向上するため好ましい。
<吸光度の測定方法>
吸光度の測定は、分光光度計V−670(日本分光(株)製)に温調ユニット(日本分光(株)製)を取り付けて行うことができる。具体的には、純水でベースライン補正を行った後、1mmolバナジウムとなるように純水で希釈した液のフィルターろ液の吸光度を測定する。測定条件は下記で行い、波長700nmにおける吸光度(A700)と、波長750nmにおける吸光度を用いて(A700/A750)を算出することができる。
(吸光度の測定条件)
測定モード:Abs
レスポンス:Fast
バンド幅:2.0nm
操作速度:1000nm/min
開始波長:600〜800nm
データ取込間隔:1.0nm
近赤外バンド幅:8.0nm
走査モード:連続
積算回数:1
<還元剤>
本発明に係る還元剤は、水に容易に溶解する性質を有し、かつ、バナジウム(V)を含有する化合物の還元剤として機能すればよく、例えば、ヒドラジン(N)及びヒドラジン一水和物などのヒドラジンの水和物(N・nHO)の他、アセトアルデヒド、シュウ酸、ギ酸、乳酸などが挙げられる。
還元剤の添加量は、バナジウム(V)を含有する化合物1.0に対して、1.0〜1.4当量の範囲内である。この範囲外である場合、サーモクロミック性示す(M相の結晶相を有する)VOを含有する二酸化バナジウム含有粒子を選択的に得られず、ひいては、サーモクロミック性や光透過性に優れた二酸化バナジウム含有粒子を製造することができない。
なお、本発明に係る当量とは、電気化学当量を意味する。
[(C)水熱反応させる工程]
当該工程(C)では、工程(B)において還元剤が添加された反応液を水熱反応させる。
ここで、「水熱反応」とは、温度と圧力が、水の臨界点(374℃、22MPa)よりも低い熱水(亜臨界水)中において生じる化学反応を意味する。水熱反応処理は、例えば、オートクレーブ装置内で実施される。水熱反応処理により、二酸化バナジウム(VO)を含有するVO含有粒子が得られる。
水熱反応処理の条件(反応物の量、処理温度、処理圧力、処理時間)は、適宜設定されるが、水熱反応処理の液温は、例えば、250〜350℃(好ましくは、270〜350℃、更に好ましくは、300〜350℃。)である。水熱反応が、液温250〜350℃の範囲内で行われることが、常温に冷却するまでの温度幅が広がるため、VOと他金属化合物との析出を分離しやすくなり好ましい。
また、水熱反応処理の時間は、例えば1時間〜7日である。時間を長くすることにより、得られるVO含有粒子の平均粒径等を制御することができ、7日以内であると、エネルギー消費量が多くなりすぎるおそれを回避できる。
また、水熱反応は、撹拌されながら行われることが、VO含有粒子の粒径をより均一化できるため、好ましい。
なお、水熱反応処理は、バッチ式で実施してもよく、連続式に実施してもよい。
以上の工程により、サーモクロミック性を有する二酸化バナジウム(VO)を含有するVO含有粒子を含む反応液(懸濁液)が得られる。その後、反応液(懸濁液)から、ろ過、洗浄、乾燥などによって、本発明に係るVO含有粒子が得られる。
《二酸化バナジウム含有粒子(VO含有粒子)》
本発明のVO含有粒子の製造方法によって製造されたVO含有粒子は、二酸化バナジウム(VO)を含有し、かつ、サーモクロミック性を有する。これにより、サーモクロミック性や光透過性に優れた二酸化バナジウム含有粒子を提供できる。
当該VO含有粒子の平均粒径は、5〜100nmの範囲内であることが好ましく、さらに好ましくは、5〜50nmの範囲内である。
(サーモクロミック性及び光透過性)
本発明に係る二酸化バナジウム含有粒子は、サーモクロミック性と光透過性とを有している。
本発明に係る二酸化バナジウム含有粒子の可視光透過率は、高いほど好ましいが、70%以上であることが好ましい。
また、二酸化バナジウム含有粒子が有するサーモクロミック性としては、温度変化によって光透過率や光反射率等の光学特性が可逆的に変化すれば特に限定されるものではない。例えば、25℃/50%RH及び85℃/85%RHにおける光透過率の差が30%以上であることが好ましい。
二酸化バナジウム含有粒子の光透過率は、例えば、分光光度計V−670(日本分光(株)製)を用いて、波長2000nmにおける光透過率として測定することができる。
(平均粒径の測定方法)
粒子を走査型電子顕微鏡で撮影し、粒子の投影面積に等しい面積を有する円の直径を粒径と定義し、当該直径について算術平均値を求めることで、平均粒径とすることができる。
≪分散液≫
本発明のVO含有粒子の製造方法で製造されたVO含有粒子をアルコールのような有機溶媒又は水のような無機性の溶媒中に分散させた場合、二酸化バナジウム(VO)を含有し、かつ、サーモクロミック性を有するVO含有粒子を含有する分散液を提供することができる。本発明のVO含有粒子の製造方法で製造された、VO含有粒子を含有する分散液を塗布すれば、サーモクロミック性や光透過性に優れた二酸化バナジウム含有粒子を含有しているため、サーモクロミック性や光透過性に優れた光学フィルム等が提供可能であるため好ましい。
また、分散させるための溶媒は、特に限定されず、公知のものを使用できる。
なお、本発明を適用可能な実施形態は、上述した実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれにより限定されるものではない。なお、実施例において「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量%」を表す。
[VO含有粒子101の作製]
<工程(A)>
外部気温が25℃の環境下(反応液の液温に相当。)で、過酸化水素水(H(溶解剤)、濃度35質量%、和光純薬社製)を純水で十倍希釈し3.5質量%(表1に記載の「溶解剤量」)の液温25℃の水溶液30mLを調製し、バナジウム(V)を含有する化合物として五酸化二バナジウム(V、和光純薬社製、特級)0.9gを加え(固形分2.9質量%、表1の「V濃度」)、これを4時間(表1の「撹拌時間」)撹拌して澄んだ赤茶色のゾル(還元剤が添加される反応液)を得た。
<工程(B)>
得られたゾルを10μmのフィルターでろ過し、ろ液の吸光度(還元剤が添加される反応液の吸光度に相当。)を測定したところ、波長700nmにおける吸光度(A700)と、波長750nmにおける吸光度(A750)との比の値(A700/A750)は0.86であった。
得られたゾルに、還元剤としてヒドラジン一水和物(N・HO、和光純薬社製、特級)の5質量%水溶液を、五酸化二バナジウムに対するモル比の値が0.71(すなわち、五酸化二バナジウム1.0に対して、1.42当量(表1に記載の「還元剤量」))となる量をゆっくり滴下した。
<工程(C)>
滴下後、60分間撹拌した反応液を、市販の水熱反応処理用オートクレーブ(三愛科学社製、HU−50型)(SUS製本体に50mL容積のテフロン(登録商標)製内筒を備える。)内に入れ、270℃で48時間、水熱反応させた。
次に、得られた反応液をろ過し、残渣を水及びエタノールで洗浄した。さらに、この残渣を、定温乾燥機を用いて、60℃で10時間乾燥させ、VO含有粒子101を作製した。
(吸光度の測定方法)
吸光度の測定は、分光光度計V−670(日本分光(株)製)に温調ユニット(日本分光(株)製)を取り付けて行った。
具体的には、純水でベースライン補正を行った後、1mmolバナジウムとなるように純水で希釈した液のフィルターろ液の吸光度を測定した。測定条件は下記で行い、波長700nmにおける吸光度(A700)と、波長750nmにおける吸光度を用いて(A700/A750)を算出した。
(吸光度の測定条件)
測定モード:Abs
レスポンス:Fast
バンド幅:2.0nm
操作速度:1000nm/min
開始波長:600〜800nm
データ取込間隔:1.0nm
近赤外バンド幅:8.0nm
走査モード:連続
積算回数:1
[VO含有粒子102〜109の作製]
VO含有粒子101の作製において、撹拌時間、またヒドラジン一水和物の当量、溶解状態を表1に記載のとおりに変更した以外は同様にして、VO含有粒子102〜109を作製した。
[VO含有粒子110の作製]
VO含有粒子101の作製の工程(A)において、外部気温25℃環境下(表1に記載の調温方法「外部気温」)とするかわりに、25℃に保温された水浴槽中に、反応液を入れた反応容器を入れることで調温した(表1に記載の調温方法「水浴」。)。さらに、VO含有粒子101の作製において、撹拌時間、ヒドラジン一水和物の当量、溶解状態を表1に記載のとおりに変更した以外は同様にして、VO含有粒子107を作製した。
[VO含有粒子111〜119の作製]
VO含有粒子101の作製において、反応液の液温及び調温方法、溶解剤(過酸化水素)量、撹拌時間並びにヒドラジン一水和物の当量を表1に記載のとおりに変更した以外は同様にして、VO含有粒子111〜119を作製した。
[VO含有粒子120〜123の作製]
VO含有粒子101の作製において、V濃度、撹拌時間、ヒドラジン一水和物の当量を表1に記載のとおりに変更した以外は同様にして、VO含有粒子120〜123を作製した。
Figure 0006520622
[評価]
上述のようにして作製された二酸化バナジウム含有粒子を下記(1)〜(3)のようにして評価し、結果を表2に記載した。
(1)平均粒径
実施例において、VO含有粒子の平均粒径は、粒子を走査型電子顕微鏡で撮影し、粒子の投影面積と等しい面積を有する円の直径を粒径と定義し、100個のVO粒子について測定し、これらの算術平均値を求め、これを平均粒径とした。平均粒径を以下の基準に従って評価した。なお平均粒径は、150nm以下を合格とし、100nm以下が好ましい範囲であり、50nm以下をより好ましい範囲とした。
◎:50nm以下
○:50nmより大きく、100nm以下
△:100nmより大きく、150nm以下
×:150nmより大きい
(2)ヘイズ
作製した各二酸化バナジウム含有粒子の5質量%水分散液20gを、水90gに溶解したポリビニルアルコール10g中に混合した。この混合液をPETフィルム上に、乾燥後の膜厚が20μmになるようにワイヤーバーで塗布した後、60℃で24時間乾燥してフィルムを作製した。フィルム中の二酸化バナジウム含有粒子の濃度は1質量%であり、膜厚は20μmであった。
作製したフィルムについて、日本電色工業(株)製ヘーズメーターNDH7000を用いてヘイズ値の測定を行った。測定値を以下の基準に従って評価した。なお、ヘイズは、15%未満を合格とし、10%未満を好ましい範囲とし、5%未満をより好ましい範囲とした。
◎:5%未満
○:5%以上、10%未満
△:10%以上、15%未満
×:15%以上
(3)サーモクロミック性
作製した各二酸化バナジウム含有粒子の5質量%水分散液20gを、水90gに溶解したポリビニルアルコール10g中に混合した。この混合液をPETフィルム上に塗布し、乾燥後の膜厚が20μmになるようにワイヤーバーで塗布を行った後、60℃で24時間乾燥してフィルムを作製した。フィルム中の二酸化バナジウム含有粒子の濃度は1質量%であり、膜厚は20μmであった。
各測定用フィルムを用いて、25℃/50%RH及び85℃/50%RHの各条件における波長2000nmでのそれぞれの透過率を測定し、透過率差を算出した。透過率の測定は、分光光度計V−670(日本分光(株)製)に温調ユニット(日本分光(株)製)を取り付けて行った。算出した透過率差を以下の基準に従って評価した。なお、10%以上を合格とし、20%以上をより好ましい範囲とした。
◎:20%以上
○:10%以上、20%未満
×:10%未満
Figure 0006520622

Claims (6)

  1. サーモクロミック性を有する二酸化バナジウム(VO)を含有する二酸化バナジウム含有粒子の製造方法であって、
    (A)水に、バナジウム(V)を含有する化合物を溶解し反応液とする工程と、
    (B)前記反応液に還元剤を添加する工程と、
    (C)前記反応液を水熱反応させる工程と、
    を有し、
    前記工程(B)においては、前記還元剤が添加される前記反応液の、波長700nmにおける吸光度(A700)と、波長750nmにおける吸光度(A750)との比の値(A700/A750)が0.87〜1.40の範囲内であり、かつ、
    前記還元剤の添加量が、前記バナジウム(V)を含有する化合物1.0に対して、1.0〜1.4当量の範囲内であることを特徴とする二酸化バナジウム含有粒子の製造方法。
  2. 前記工程(B)においては、前記還元剤が添加される前記反応液の、前記波長700nmにおける吸光度(A700)と、前記波長750nmにおける吸光度(A750)との比の値(A700/A750)が1.00〜1.40の範囲内であることを特徴とする請求項1に記載の二酸化バナジウム含有粒子の製造方法。
  3. 前記工程(A)では、前記反応液の液温が、10〜60℃の範囲内であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の二酸化バナジウム含有粒子の製造方法。
  4. 前記工程(A)では、前記反応液を入れた反応容器を水浴槽中に入れることで、前記反応液の液温を調整することを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の二酸化バナジウム含有粒子の製造方法。
  5. 前記工程(A)では、前記バナジウム(V)を含有する化合物に対する溶解剤を使用し、前記反応液中の前記水に対する当該溶解剤の量が、1〜10質量%の範囲内であることを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の二酸化バナジウム含有粒子の製造方法。
  6. 前記工程(A)では、前記反応液中の前記バナジウム(V)を含有する化合物の濃度が、1〜30質量%の範囲内であることを特徴とする請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載の二酸化バナジウム含有粒子の製造方法。
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