JP6517000B2 - 低分子化ハチノコ含有食品組成物及びその製造方法 - Google Patents

低分子化ハチノコ含有食品組成物及びその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、低分子化ハチノコ含有食品組成物及びその製造方法に関する。
ハチノコを乾燥して粉砕させた粉末を原料とする健康食品が知られている。この健康食品は、ハチノコの有するタンパク質、アミノ酸、ビタミン及びミネラルを豊富に含有し、自律神経失調症、更年期障害等に対する改善作用が認められている。
このようにハチノコは、有用な天然素材であるが、一方でそれらに含まれるタンパク質に由来してアレルギー反応を引き起こす場合がある。このようなアレルギー性を低減するために、タンパク質分解酵素を使用した高分子タンパク質の分解が一般的に行われている(特許文献1及び2)。
特許文献1では、ハチノコ又はその加工物をタンパク質分解酵素により処理することにより、タンパク質を低分子化してアレルギー性を低減させることができることが記載されている。また、タンパク質分解酵素処理により、ハチノコ又はその加工物に含まれるタンパク質が分解されて低分子化され、水溶性となるので、飲料等に添加しても沈殿や懸濁を生じにくくすることができること、ざらつき感がなくなって舌触りが滑らかになり、食感を改善することができること、更に、腸内における吸収性が良好となり、生理活性を高めることが期待できるという効果も得られることが記載されている。
そして、特許文献1の実施例では、タンパク質分解酵素として、トリプシン、パパイン、Sternzym BP 5200、アクチナーゼAS及びプロタメックスが1種類ずつ使用されているのみである。
特許文献2には、ハチノコの脂肪を脂質分解酵素を添加して分解した後、タンパク質分解酵素を添加してハチノコのタンパク質を分解することで、酵素分解の過程においてタンパク質の周囲に形成された脂肪を分解し、タンパク質とタンパク質分解酵素を効率的に接触させて、ハチノコのタンパク質の分解をより効率的に行うことができること、それによりハチノコ加工飲食品の栄養的価値を高め且つアレルゲン性を効果的に改善することが可能となることが記載されている。
さらに、特許文献2では、タンパク質の分解工程の後に、β−マンノシダーゼ等の糖質分解酵素を添加してハチノコの糖質を分解すること、それによりオリゴ糖成分を効率的に得ることができ、栄養価の高いハチノコ加工飲食品とすることができることが記載されている。
そして、特許文献2の実施例では、タンパク質分解酵素として、中性プロテアーゼ、アルカリプロテアーゼ及び酸性プロテアーゼが1種類ずつ使用されているのみである。
特開2009-159997号公報 特許第4384249号公報
しかしながら、アレルギー性を低減することを目的として高分子タンパク質を十分に分解するためには、多量の酵素を添加することや反応時間を延長することが必要となるが、製造コストの増加、褐変及び腐敗などの品質劣化が問題となる。
また、本発明者らの長年の検討により、分子量12,000以上のタンパク質にハチノコアレルギーの原因物質が含まれる可能性が示唆されたが、特許文献1に記載の方法では分子量12,000以上の高分子タンパク質の分解が十分ではなく、特許文献2に記載の方法では脂質分解酵素で分解した後にタンパク質分解酵素で分解するという2段階の工程が必要であり、製造工程が長いという問題がある。
そこで、本発明は、効率的にアレルゲン量が低減されたハチノコ含有食品組成物及びその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記の目的を達成するために検討を重ねた結果、ハチノコ又はその加工物を特定の2種類のタンパク質分解酵素を併用して処理することにより、効率的に高分子タンパク質を分解することができ、アレルゲン量を低減できることを見出した。また、逆相クロマトグラフィー分析において、当該方法により得られたハチノコ分解物には、酵素処理を行っていないハチノコや従来の酵素処理の方法により得られたハチノコ分解物では見られない2つのピークが存在することを見出した。
本発明は、これら知見に基づき、更に検討を重ねて完成されたものであり、以下の低分子化ハチノコ含有食品組成物及びその製造方法を提供するものである。
(I-1) ハチノコ又はその加工物をタンパク質分解酵素処理することによって製造される低分子化ハチノコ含有食品組成物であって、製造された低分子化ハチノコのゲル濾過クロマトグラフィー分析において分子量12,000以上の高分子のピーク面積が全ピーク面積の1%以下であることを特徴とする、食品組成物。
(I-2) 前記ゲル濾過クロマトグラフィー分析が、以下の条件での高速液体クロマトグラフィー分析である、(I-1)に記載の食品組成物。
分析装置:島津promicence、検出波長:220 nm、分析カラム:Shodex PROTEIN KW-802.5 (5μm, 8.0 mm i.d.×300 mm, 昭和電工)、ガードカラム:Shodex PROTEIN KW-G (5μm, 8.0 mm i.d.×10 mm, 昭和電工)、カラム温度:30℃、移動相:50 mMリン酸ナトリウム/0.3 M塩化ナトリウム緩衝液(pH7.0)、移動相流量:0.5 mL/min、試料注入量:移動相で調製した1 mg/mL試料溶液を20μL導入
(I-3) 製造された低分子化ハチノコの逆相クロマトグラフィー分析において、タンパク質分解酵素処理を行っていないハチノコ又はその加工物には存在しないピークが2個以上存在することを特徴とする、(I-1)又は(I-2)に記載の食品組成物。
(I-4) 前記逆相クロマトグラフィー分析が、以下の条件での高速液体クロマトグラフィー分析であり、前記ピークが保持時間:3〜3.5分の成分A、及び保持時間:12〜14分の成分Bである、(I-3)に記載の食品組成物。
分析装置:島津promicence、検出波長:280 nm、分析カラム:Sunniest RP-AQUA (5μm, 4.6 mm i.d.×150 mm, クロマニックテクノロジーズ)、ガードカラム:Sunniest RP-AQUA (5μm, 4.0 mm i.d.×10 mm, クロマニックテクノロジーズ)、カラム温度:40℃、移動相:TFA/超純水=1/1000、移動相流量:1.0 mL/min、試料注入量:移動相で調製した1 mg/mL試料溶液を20μL導入
(II-1) ハチノコ又はその加工物を、酸性プロテアーゼと中性プロテアーゼで処理することを特徴とする、低分子化ハチノコ含有食品組成物の製造方法。
(II-2) 前記酸性プロテアーゼがリゾプス・ニベウス(Rhizopus niveus)由来のプロテアーゼである、(II-1)に記載の製造方法。
(II-3) (II-1)又は(II-2)に記載の方法によって製造される低分子化ハチノコ含有食品組成物。
本発明の製造方法によれば、ハチノコ又はその加工物に特定の2種類のタンパク質分解酵素を同時に添加するだけで、効率的に高分子タンパク質を分解することができる。その結果として、製造工程及び製造時間を短縮することが可能であり、製造コストや品質の劣化を抑えることができる。
また、本発明の製造方法によって得られる低分子化ハチノコ含有食品組成物は、アレルギーの原因となりえるタンパク質が低分子化される結果、アレルギー性が低減されていることが期待される。
実施例と比較例のゲル濾過カラムでのHPLCクロマトグラムを示す図である。 実施例と比較例のゲル濾過カラムでのHPLCクロマトグラムを示す図である。 実施例と比較例のOSDカラムでのHPLCクロマトグラムを示す図である。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の低分子化ハチノコ含有食品組成物は、ハチノコ又はその加工物をタンパク質分解酵素処理することによって製造されるものであって、製造された低分子化ハチノコのゲル濾過クロマトグラフィー分析において分子量12,000以上の高分子のピーク面積が全ピーク面積の0.3%以下であることを特徴とする。
なお、本発明において「低分子化ハチノコ」とは、ハチノコ又はその加工物をタンパク質分解酵素処理することによって製造されたものを意味し、食品としての各種加工が行われていないものである。
ここでハチノコとは、蜂の幼虫及びさなぎを意味する。蜂の種類は特に制限されず、在来種のミツバチ、西洋ミツバチ等の在来種以外のミツバチ、アフリカ蜂化ミツバチ、スズメバチ(クロスズメバチを含む)、アシナガバチ、マルハナバチ等、公知の蜂を広く用いることができる。好ましくは在来種又は在来種以外のミツバチであり、より好ましくは入手の容易性から西洋ミツバチである。なお、雄と雌の別は問わないが、好ましくは雄である。
幼虫及びさなぎは、卵から孵化したものであれば特に制限されないが、好ましくは孵化後16〜23日経過した蜂の幼虫及びさなぎ、より好ましくは孵化後18〜21日経過した蜂の幼虫及びさなぎが用いられる。
ハチノコは、体内に栄養素を蓄積している。特に、ミツバチの雄は古くから漢方の素材として使用されており、必須アミノ酸を含む各種アミノ酸をバランスよく含むほか、タンパク質、脂質、糖類、ビタミンB類や葉酸、ニコチン酸、パントテン酸等のビタミン類、亜鉛・セレン(セレニウム)等のミネラルを豊富に含んでいる。ハチノコの生理活性や薬理作用としては、抗菌作用、抗炎症作用、抗ウイルス作用、抗原虫作用、耳鳴り解消作用等が知られている。
本発明においてハチノコ及びハチノコの加工物が使用される。ハチノコの加工物として、具体的には、ハチノコ(生又は乾燥物)を粉砕したもの、ハチノコ(生又は粉砕物)を乾燥したもの、ハチノコ(生、乾燥物又は粉砕物)を加熱処理したもの、ハチノコを水、含水エタノール等により抽出したものが含まれる。好ましくは、ハチノコ(生)を乾燥した後、粉砕することによって調製されるハチノコの乾燥粉末を挙げることができる。
本発明でいう「ハチノコ」という用語には、特に言及しない限り、生のハチノコに加えて、当該ハチノコに乾燥、粉砕又は加熱の処理を施した加工物、及びハチノコ(生、乾燥物及び粉砕物を含む)を水、含水エタノール等により抽出したものが含まれる。
ハチノコを加熱する方法は、特に制限されないが、好ましくは70〜120℃で熱処理する方法を挙げることができる。簡便には沸騰した水中にハチノコ(生、乾燥物及び粉砕物を含む)を投入して加熱処理することもできるが、各種のビタミンやアミノ酸等の有効成分の溶出をできるだけ避けるためには、加熱処理としてハチノコを蒸気で蒸す方法が好適に使用される。
乾燥方法としては、通風乾燥や天日乾燥などの自然乾燥、電気などで加熱して乾燥させる強制乾燥、凍結乾燥など、一般食品加工で採用される公知の方法を使用することができる。好ましくは、凍結乾燥である。なお、乾燥時間は特に制限されないが、通風や天日乾燥などの自然乾燥の場合は、約3日程度、電気等で加熱して強制乾燥させる場合は、50℃程度で1〜3日程度を挙げることができる。通常、水分含量が10質量%以下、好ましくは5質量%以下になるように乾燥させることが好ましい。なお、通風や天日乾燥などの自然乾燥の場合のように水分含量を10質量%以下にすることが難しい場合は、その後、凍結乾燥機にかけて更に水分を下げる処理を行ってもよい。
粉砕処理(粉末化処理)は、粉砕器(ミル)を用いて粉砕する方法、石臼を用いてすりつぶす方法等、公知のいずれの方法を使用して行ってもよい。
抽出方法は、ハチノコ(生、乾燥物及び粉砕物を含む)に水、含水エタノール等を添加し、攪拌した後、遠心分離により上清を得る方法、ろ紙によるろ過を行い、ろ液を得る方法等が用いられる。
本発明が対象とする低分子化ハチノコ含有食品組成物は、ハチノコ及びその加工物をタンパク質分解酵素(ペプチダーゼ)で処理したものである。当該タンパク質分解酵素で処理されることによりハチノコ及びその加工物に含まれるタンパク質が低分子化され、当該タンパク質に起因するアレルギー反応が抑制されてなる酵素処理物(低アレルゲン化酵素処理物)が得られることが期待される。
ハチノコ及びその加工物を酵素処理するのに使用されるタンパク質分解酵素としては、ペプチダーゼを好適に挙げることができる。使用されるペプチダーゼは、エンドペプチダーゼ作用とエキソペプチダーゼ作用の少なくとも一方を有していればよい。
本発明で使用することができるエンドペプチダーゼとしては、少なくともエンドペプチダーゼ活性を有するタンパク質分解酵素であれば如何なるものであってもよい。例えば、動物由来(例えば、トリプシン、キモトリプシン等)、植物由来(例えば、パパイン等)、又は乳酸菌、酵母、カビ、枯草菌、放線菌等の微生物由来(例えば、ニューラーゼF等)のエンドペプチダーゼを広く例示することができる。
エキソペプチダーゼとしては、少なくともエキソペプチダーゼ活性を有するタンパク質分解酵素であれば如何なるものであってもよい。例えば、カルボキシペプチダーゼ、アミノペプチダーゼ、若しくは微生物由来(例えば、乳酸菌、アスペルギルス属菌、リゾプス属菌等)のエキソペプチダーゼ、又はエンドペプチダーゼ活性も併せて有するパンクレアチン、ペプシン等を例示することができる。
ところでペプチダーゼには、実質的にエキソペプチダーゼ作用のみを有するエキソペプチダーゼ、実質的にエンドペプチダーゼ作用のみを有するエンドペプチダーゼ、並びにエキソペプチダーゼ作用とエンドペプチダーゼ作用の両方を有するペプチダーゼが存在する。これらのうち、エキソペプチダーゼ作用とエンドペプチダーゼ作用の両方を有する酵素は、エンドペプチダーゼ作用が強力な場合には「エンドペプチダーゼ」として使用可能であり、エキソペプチダーゼ作用が強力な場合には「エキソペプチダーゼ」として使用可能であり、エキソペプチダーゼ作用とエンドペプチダーゼ作用が同等又はほぼ同等の場合には、エンドペプチダーゼ作用とエキソペプチダーゼ作用を同時に有するペプチダーゼとして使用可能である。
このようなペプチダーゼのうち、エキソペプチダーゼ作用を有する酵素の好ましい例としては、例えば、アスペルギルス・オリゼー(Aspergillus orizae)産生ペプチダーゼ(商品名:ウマミザイムG、Promod 192P、Promod 194P、スミチームFLAP)、アスペルギルス・ソーエ(Aspergillus sojae)産生ペプチダーゼ(商品名:Sternzym B15024)、アスペルギルス属産生ペプチダーゼ(商品名:コクラーゼP)、リゾプス・オリゼー(Rhizopus oryzae)産生ペプチダーゼ(商品名:ペプチダーゼR)等を挙げることができる。
また、エンドペプチダーゼ作用を有するペプチダーゼの好ましい例としては、例えば、バチルス・サブチリス(Bacillus subtilis)産生ペプチダーゼ(商品名:オリエンターゼ22BF、ヌクレイシン、Sternzym BP 5200)、バチルス・リシェニフォルミス(Bacillus licheniformis)産生ペプチダーゼ(商品名:アルカラーゼ)、バチルス・ステアロサーモフィラス(Bacillus stearothermophilus)産生ペプチダーゼ(商品名:プロテアーゼS)、バチルス・アミロリケファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)産生ペプチダーゼ(商品名:ニュートラーゼ)、バチルス属産生ペプチダーゼ(商品名:プロタメックス)等を挙げることができる。
さらに、エキソペプチダーゼ作用とエンドペプチダーゼ作用の両方を有するペプチダーゼとしては、例えば、ストレプトマイセス・グリセウス(Streptomyces griseus)産生ペプチダーゼ(商品名:アクチナーゼAS)、アスペルギルス・オリゼー(Aspergillus orizae)産生ペプチダーゼ(商品名:プロテアーゼA「アマノ」SD、フレーバーザイム)、アスペルギルス・メレウス(Aspergillus melleus)産生ペプチダーゼ(商品名:プロテアーゼP)等を挙げることができる。
本発明においてタンパク質分解酵素は、好適には2種以上を組み合わせて使用される。また、2種以上のタンパク質分解酵素が組み合わされて使用される場合は、これらの酵素により同時に処理されることが好ましい。
好適には、本発明の低分子化ハチノコ含有食品組成物は、ハチノコ又はその加工物を、酸性プロテアーゼと中性プロテアーゼで処理することにより製造される。
酸性プロテアーゼは、至適pHが酸性側にあるタンパク質分解酵素であり、酸性プロテアーゼの至適pHは通常2〜5、好ましくは3〜4である。
中性プロテアーゼは、至適pHが中性にあるタンパク質分解酵素であり、中性プロテアーゼの至適pHは通常6〜9、好ましくは7〜8である。
上記酸性プロテアーゼとしては、特に限定されないが、好ましくはリゾプス・ニベウス由来のプロテアーゼであり、より好ましくはニューラーゼF (天野エンザイム)である。
また、中性プロテアーゼとしては、特に限定されないが、ストレプトマイセス・グリセウス又はアスペルギルス・オリゼー由来のプロテアーゼであり、より好ましくはアクチナーゼAS (科研ファルマ)又はプロテアーゼA「アマノ」SD (天野エンザイム)である。
ハチノコ及びその加工物に対するタンパク質分解酵素の使用量は、使用するハチノコ及びその加工物の濃度、酵素力価、反応温度及び反応時間により異なるが、一般的には、ハチノコ及びその加工物に含まれるタンパク質1 g当り50〜10000作用単位の割合で各タンパク質分解酵素を用いることが好ましい。なお、このとき、タンパク質分解酵素のハチノコへ及びその加工物の添加は、一度に添加してもよく、少量ずつ分割して添加してもよい。
タンパク質分解酵素処理に際してハチノコ及びその加工物の溶液及び分散液のpHは、使用酵素の至適pHを考慮して、pH4〜10、好ましくはpH5〜9、より好ましくはpH6〜8の範囲から選択される。具体的には、前記ハチノコ及びその加工物の溶液及び分散液にタンパク質分解酵素を添加する前に、使用する酵素の種類によりpH4〜10、好ましくはpH5〜9、より好ましくはpH6〜8の範囲内になるように、酸、アルカリ剤、あるいは緩衝剤の添加により所望のpHに調整される。この場合、酸としては、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、酢酸等を;アルカリ剤としては水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム等を;また、緩衝剤としては、ホウ酸緩衝剤、リン酸緩衝剤、炭酸緩衝剤、クエン酸緩衝剤、酢酸緩衝剤等をそれぞれ例示することができる。
なお、ハチノコ及びその加工物は、そのまま、又は水に溶解若しくは分散させた状態でタンパク質分解酵素処理に供することができるが、これらが乾燥形態である場合は、水に溶解させた状態でタンパク質分解酵素処理に供することが好ましい。
タンパク質分解酵素処理の温度は、特に制限はなく、実用に供せられ得る範囲、即ち、通常20〜70℃の範囲から選択される。好ましくは40〜60℃の範囲である。
タンパク質分解酵素処理の停止は、タンパク質分解酵素を失活又は除去することにより行う。失活操作は、簡便には加熱処理(例えば、85℃で15分間等)により行うことができる。
なお、本発明における低分子化ハチノコ含有食品組成物は、少なくとも前述するタンパク質分解酵素処理を行うことによってタンパク質が低分子化されてなる上記特徴を有するハチノコ及びその加工物であればよく、本発明の効果を損なわないことを限りに、タンパク質分解酵素処理だけでなく、その他の酵素との組み合わせ処理、例えばタンパク質分解酵素処理と合わせて糖分解酵素処理したハチノコ及びその加工物も含まれる。
本発明において、ハチノコ又はその加工物をタンパク質分解酵素処理することによって製造された低分子化ハチノコは、ゲル濾過クロマトグラフィー分析において、分子量12,000以上の高分子のピーク面積が全ピーク面積の1%以下であり、好ましくは0.5%以下であり、より好ましくは0.2%以下である。分子量12,000以上の高分子のピーク面積は、分子量約12,000のチトクロームCより早く溶出されるピーク面積の合計から求めることができる。ここで、ゲル濾過クロマトグラフィーは、好ましくは高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により実施され、より好ましくは以下の条件にて実施される。
分析装置:島津promicence、検出波長:220 nm、分析カラム:Shodex PROTEIN KW-802.5 (5μm, 8.0 mm i.d.×300 mm, 昭和電工)、ガードカラム:Shodex PROTEIN KW-G (5μm, 8.0 mm i.d.×10 mm, 昭和電工)、カラム温度:30℃、移動相:50 mMリン酸ナトリウム/0.3 M塩化ナトリウム緩衝液(pH7.0)、移動相流量:0.5 mL/min、試料注入量:移動相で調製した1 mg/mL試料溶液を20μL導入
上記低分子化ハチノコは、更に、逆相クロマトグラフィー分析において、タンパク質分解酵素処理を行っていないハチノコ又はその加工物には存在しないピークが2個以上、好ましくは2〜10個、より好ましくは2個存在することが好ましい。上記未処理のハチノコ又はその加工物には存在しないピークとしては、好ましくは、保持時間:3〜3.5分の成分A、及び保持時間:12〜14分の成分Bである。ここで、逆相クロマトグラフィーは、好ましくはHPLCにより実施され、より好ましくは以下の条件にて実施される。
分析装置:島津promicence、検出波長:280 nm、分析カラム:Sunniest RP-AQUA (5μm, 4.6 mm i.d.×150 mm, クロマニックテクノロジーズ)、ガードカラム:Sunniest RP-AQUA (5μm, 4.0 mm i.d.×10 mm, クロマニックテクノロジーズ)、カラム温度:40℃、移動相:TFA/超純水=1/1000、移動相流量:1.0 mL/min、試料注入量:移動相で調製した1 mg/mL試料溶液を20μL導入
本発明の低分子化ハチノコ含有食品組成物は、低分子化ハチノコそれ自体のみでもよく、低分子化ハチノコをドリンク剤やシロップ剤などの液剤の形態に調製したものでもよいし、又は低分子化ハチノコを半液体形態又は固体形態に調製したものであってもよい。半液体形態としてはペースト状及びゼリー状の形態が、固体形態としては凍結乾燥物(例えば、凍結乾燥粉末)、錠剤(トローチ、チュアブル錠、糖衣錠等を含む)、カプセル、顆粒等の形態を挙げることができる。なお、凍結乾燥物は、低分子化ハチノコを、凍結乾燥処理に供することによって製造することができる。なお、凍結乾燥処理は定法に従って行うことができる。
なお、本明細書において、「含有する」とは、「からなる」という意味と、「実質的にからなる」という意味の両方をも包含する。
本発明の食品組成物には、必要に応じて、賦形剤、光沢剤、ミネラル類、ビタミン類、フラボノイド類、キノン類、ポリフェノール類、アミノ酸、核酸、必須脂肪酸、清涼剤、結合剤、甘味料、崩壊剤、滑沢剤、着色料、香料、安定化剤、防腐剤、徐放調整剤、界面活性剤、溶解剤、湿潤剤等を配合することができる。
以下、本発明を実施例により詳細に説明する。しかし、本発明はこれら実施例等になんら限定されるものではない。
<原料>
ハチノコ凍結乾燥粉末(シンギー社製)
<酵素>
・アクチナーゼAS (科研ファルマ社製)
力価:≧250,000 u/g (チロシン単位)
至適pH:7〜9
至適温度:40〜60℃
・ニューラーゼF (天野エンザイム社製)
力価:プロテアーゼ;≧40,000 u/g (フォリン法)、リパーゼ;≧30,000 u/g (天野法)
至適pH:プロテアーゼ;2.5〜4、リパーゼ;6〜7
至適温度:プロテアーゼ;40〜45℃、リパーゼ;30〜40℃
・プロテアーゼA「アマノ」SD (天野エンザイム社製)
力価:≧10,000 u/g (天野法)
至適pH:6〜8
至適温度:40〜50℃
・リパーゼA「アマノ」6 (天野エンザイム社製)
力価:≧60,000 u/g (天野法)
至適pH:4〜7
至適温度:30〜50℃
<ゲル濾過HPLC分析条件>
機器 :島津prominence
カラム :Shodex PROTEIN KW-802.5 (5μm, 8.0 mm i.d.×300 mm, 昭和電工社製)
ガードカラム :Shodex PROTEIN KW-G (5μm, 8.0 mm i.d.×10 mm, 昭和電工社製)
カラムオーブン :30℃
流速 :0.5 mL/min
移動相 :50 mMリン酸Na/0.3 M NaCl緩衝液 (pH7.0)
分析時間 :60 min
注入 :移動相で調製した1 mg/mL試料溶液を10μL注入
検出 :UV (220 nm)
<逆相HPLC分析条件>
機器 :島津prominence
カラム :Sunniest RP-AQUA (5μm, 4.6 mm i.d.×150 mm, クロマニックテクノロジーズ社製)
ガードカラム :Sunniest RP-AQUA (5μm, 4.0 mm i.d.×10 mm, クロマニックテクノロジーズ社製)
カラムオーブン :40℃
流速 :1.0 mL/min
移動相 :TFA/超純水=1/1000
溶出 :30 min
注入 :移動相で調製した1 mg/mL試料溶液を20μL注入
検出 :UV (280 nm)
実施例1
ハチノコ凍結乾燥粉末3.5 gをビーカーに量りとり、精製水21 gを加えて均一になるまで攪拌してハチノコ凍結乾燥粉末の水分散液を調製した。次にNaOHを用いてpHを7に調整した。これにアクチナーゼAS (科研ファルマ社製) 0.105 gとニューラーゼF (天野エンザイム社製) 0.105 gを加え、攪拌しながら混合した。この反応混合物を50℃の条件下で2時間反応させて酵素処理を行った。酵素処理後、温度を80℃に上げて30分間加熱し酵素を失活させた後、放冷した。酵素処理したハチノコ溶液を凍結乾燥し、酵素処理ハチノコ凍結乾燥粉末を得た。
実施例2
ハチノコ凍結乾燥粉末3.5 gをビーカーに量りとり、精製水21 gを加えて均一になるまで攪拌してハチノコ凍結乾燥粉末の水分散液を調製した。次にNaOHを用いてpHを7に調整した。これにプロテアーゼA「アマノ」SD (天野エンザイム社製) 0.105 gとニューラーゼF (天野エンザイム社製) 0.105 gを加え、攪拌しながら混合した。この反応混合物を50℃の条件下で2時間反応させて酵素処理を行った。酵素処理後、温度を80℃に上げて30分間加熱し酵素を失活させた後、放冷した。酵素処理したハチノコ溶液を凍結乾燥し、酵素処理ハチノコ凍結乾燥粉末を得た。
比較例1
ハチノコ凍結乾燥粉末3.5 gをビーカーに量りとり、精製水21 gを加えて均一になるまで攪拌してハチノコ凍結乾燥粉末の水分散液を調製した。次にNaOHを用いてpHを8.5に調整した。これにアクチナーゼAS (科研ファルマ社製) 0.105 gを加え、攪拌しながら混合した。この反応混合物を50℃の条件下で2時間反応させて酵素処理を行った。酵素処理後、温度を80℃に上げて30分間加熱し酵素を失活させた後、放冷した。酵素処理したハチノコ溶液を凍結乾燥し、酵素処理ハチノコ凍結乾燥粉末を得た。
比較例2
ハチノコ凍結乾燥粉末3.5 gをビーカーに量りとり、精製水21 gを加えて均一になるまで攪拌してハチノコ凍結乾燥粉末の水分散液を調製した。次にNaOHを用いてpHを7に調整した。これにリパーゼA6 (天野エンザイム社製) 0.105 gを加え、攪拌しながら混合した。この反応混合物を40℃の条件下で2時間反応させて酵素処理を行った。酵素処理後、温度を80℃に上げて30分間加熱し酵素を失活させた。更にアクチナーゼAS (科研ファルマ社製) 0.105 gを加え、攪拌しながら混合した。この反応混合物を50℃の条件下で2時間反応させて酵素処理を行った。酵素処理後、温度を80℃に上げて30分間加熱し酵素を失活させた後、放冷した。酵素処理したハチノコ溶液を凍結乾燥し、酵素処理ハチノコ凍結乾燥粉末を得た。
比較例3
ハチノコ凍結乾燥粉末3.5 gをビーカーに量りとり、精製水21 gを加えて均一になるまで攪拌してハチノコ凍結乾燥粉末の水分散液を調製した。次にNaOHを用いてpHを7に調整した。これにアクチナーゼAS (科研ファルマ社製) 0.105 gとプロテアーゼA「アマノ」SD (天野エンザイム社製) 0.105 gを加え、攪拌しながら混合した。この反応混合物を50℃の条件下で2時間反応させて酵素処理を行った。酵素処理後、温度を80℃に上げて30分間加熱し酵素を失活させた後、放冷した。酵素処理したハチノコ溶液を凍結乾燥し、酵素処理ハチノコ凍結乾燥粉末を得た。
結果
実施例1、2、比較例1〜3の酵素処理ハチノコ凍結乾燥粉末をゲル濾過カラムでHPLC分析した結果を図1に示す。図1から、実施例1、2では、分子量12,000以上の高分子のピーク面積が全ピーク面積の0.2%以下となっているのに対して、比較例1〜3では1.5%以上となっていることが分かる。
実施例1、比較例1の酵素処理ハチノコ凍結乾燥粉末をODSカラムでHPLC分析した結果を図2に示す。図2から、実施例1では、比較例1及びタンパク質分解酵素処理を行っていないハチノコには見られない2つのピーク(成分A:保持時間3〜3.5分、成分B:保持時間12〜14分)があることが分かる。
製造例
以下、本発明の食品組成物の製造例を示す。
1.食品製剤
上記実施例1で得られた酵素処理ハチノコ凍結乾燥粉末250 mgをハードカプセルに充填し、食品製剤を得た。
2.食品素材
上記実施例1で得られた酵素処理ハチノコ粉末200 mgにショ糖脂肪酸エステル3 mg、結晶セルロース60 mgを混合・打錠し、錠剤の食品素材を得た。

Claims (4)

  1. 低分子化ハチノコ含有食品組成物であって、低分子化ハチノコのゲル濾過クロマトグラフィー分析において、分子量12,000以上の高分子のピーク面積が全ピーク面積の1%以下であることを特徴とする、食品組成物。
  2. 低分子化ハチノコの逆相クロマトグラフィー分析において、タンパク質分解酵素処理を行っていないハチノコ又はその加工物には存在しないピークが2個以上存在することを特徴とする、請求項1に記載の食品組成物。
  3. ハチノコ又はその加工物を、酸性プロテアーゼと中性プロテアーゼで同時に処理することを特徴とする、低分子化ハチノコ含有食品組成物の製造方法。
  4. 前記酸性プロテアーゼがリゾプス・ニベウス(Rhizopus niveus)由来のプロテアーゼである、請求項3に記載の製造方法。
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