以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。各図面を通じて同一もしくは同等の部位や構成要素には、同一もしくは同等の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、現実のものとは異なることに留意すべきである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることはもちろんである。また、以下に示す実施の形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置等を例示するものであって、この発明の技術的思想は、各構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。この発明の技術的思想は、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。
(インクジェット印刷装置の全体構成)
本発明の一実施例であるインクジェット印刷装置100の全体構成について詳細に説明する。図1は、本実施形態に係るインクジェット印刷装置100の概略構成図である。図1に示すように、インクジェット印刷装置100は、搬送経路上を搬送される印刷媒体である用紙Pに対し画像データに応じたインクを吐出して、用紙上に画像を形成するインクジェット装置であって、給紙部1と、印刷部2と、演算処理部3と、メンテナンス部4と、反転部5と、排紙部6とを備えている。
給紙部1は、外部給紙台11と、外部給紙ローラ12と、内部給紙台13と、内部給紙ローラ14と、縦搬送ローラ15と、レジストローラ16とを備えている。外部給紙台11は、用紙Pが積層されるものである。外部給紙台11は、一部が筐体10の外部に露出して設置されている。外部給紙ローラ12は、外部給紙台11から最上位置の用紙Pを一枚ずつ取り出して給紙搬送路FR上へ搬送する。
各内部給紙台13は、用紙Pが積層されるものである。内部給紙ローラ14は、それぞれの内部給紙台13から最上位置の用紙Pを一枚ずつ取り出して給紙搬送路FR上へ搬送する。内部給紙ローラ14は、内部給紙台13の上側に配置されている。縦搬送ローラ15は、内部給紙台13から取り出された用紙をレジストローラ16に向けて搬送する。縦搬送ローラ15は、給紙搬送路FRに沿って配置されている。
レジストローラ16は、外部給紙台11、内部給紙台13、反転部5から搬送されてきた用紙を一旦止めた後、所定のタイミングで印刷部2へと送り出す。レジストローラ16は、給紙経路FRと反転経路SRとの合流地点近傍の循環搬送路CR上に配置されている。このように、レジストローラ16には、給紙部1から用紙Pが搬送され、さらに、後述する反転部5からも用紙Pが搬送される。そのため、搬送方向におけるレジストローラ16の手前には、給紙された用紙Pの搬送経路と、一方の面が印刷された用紙が循環して搬送されてくる搬送経路とが合流する合流地点が存在する。この合流地点を基準に、給紙機構側の経路を給紙搬送路FRと称し、それ以外の搬送経路を循環搬送路CRと称している。レジストローラ16のさらに搬送方向側には、印刷部2が設けられている。
なお、搬送方向におけるレジストローラ16の手前には、レジストセンサ(図示せず)が設けられており、搬送される用紙Pの先端又は後端を検出する。また、給紙部1には、外部給紙ローラ12、内部給紙ローラ14、縦搬送ローラ15を回転駆動させるモータ、及びレジストローラ16を回転駆動させる駆動モータ(図示せず)とを備える。
印刷部2は、インクを吐出するノズルを有するインクジェットヘッド21(21K、21C、21M、21Y)と、インクジェットヘッド21の対向面に設けられ、循環搬送路CRに沿って摺動する環状の搬送ベルト22とを備えており、レジストローラ16により給紙された用紙Pは、環状の搬送ベルト22内に、用紙の搬送路面の裏面に対応して設置され、搬送ベルト22上面に用紙Pを吸着させて搬送する吸引ファン(図示せず)によって搬送ベルト22上に吸引され、所定の搬送速度で搬送されながら、インクジェットヘッド21から吐出されたインクにより用紙Pに印刷される。
インクジェットヘッド21K、21C、21M、21Yには、搬送された用紙Pにインクを吐出する。インクジェットヘッド21K、21C、21M、21Yは、それぞれブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)のインクを吐出する。インクジェットヘッド21K、21C、21M、21Yは、下面にインクを吐出するための多数のノズルが設けられている。なお、インクジェットヘッド21K、21C、21M、21Yは、吐出するインクの色が異なる以外は、同様の構成を有する。このため、インクジェットヘッド21K、21C、21M、21Yの符号における色を示すアルファベットの添え字(K,C,M,Y)を省略して総括的に表記することがある。
搬送ベルト22は、図示しない昇降モータによって、図1に示す位置から下方に移動可能となっており、下方に位置した場合には、インクジェットヘッド21と搬送ベルト22との間に空間が形成され、その空間にメンテナンス部4が配置可能となっている。
さらに、印刷部2には、装置正面にインクカートリッジ24を取付けるカートリッジ取付機構23が設けられており、このカートリッジ取付機構23に対して各色のインクカートリッジ24(24K,24Y,24C,24M)が複数装填される。インクカートリッジ24は、インクジェット印刷装置100に対して着脱可能に設けられ、インクジェット印刷装置100に対して水平方向に着脱される細長の筐体であり、内部にインクが封入される液体収納容器と、液体収納容器が挿入される外装体とから概略構成されている。インクカートリッジ24のインクジェット印刷装置100側端面には、インクジェット印刷装置100側のカートリッジ取付機構23に係合される係合面が嵌め込まれている。この係合面は、樹脂又は金属などの硬質材料で形成され、インクジェット印刷装置100のカートリッジ取付機構23と嵌合される構造となっている。
また、この係合面には、インクジェット印刷装置100側に設けられた非接触通信インターフェース301と非接触通信を行う記憶(RFID)タグが貼り付けられている。記憶タグ24aは、非接触通信インターフェース301から受信される電波により内部電力を発生させ、その電力によりメモリに対するデータの読み出し及び書込みを行うとともに、非接触通信インターフェース301を通じて、データの送受信を行う通信機能を有する。また、記憶タグ24aのメモリには、カートリッジのインクの色や水性・油性の種別、着脱回数の他、粘度、体積弾性率、密度又は比重(単位体積当たりの重さ)、表面張力、濃度などインクの物理的性質に関する情報(以下、インクの物性に関する情報と称する。)等が記憶され、カートリッジ取付機構23に対するインクカートリッジ24の装填が検知されると、非接触通信インターフェース301との通信を開始し、自機が記憶するデータを送信する。なお、記憶タグ24a内の情報は、製造時又は出荷時において測定されたものである。
なお、インクカートリッジ24がインクジェット印刷装置100に取付けられた際には、インクジェット印刷装置100側に設けられた取付検知センサに検知されるようになっている。具体的には、取付検知センサは、受光センサであり、受光が遮断されることにより、その遮蔽物の存在を検知する。取付け時に受光センサに接近される凸部によって受光が遮断されることによりその取付けが検出される。
印刷部2により印刷された用紙Pは、循環搬送路CR上に配置された搬送ローラ等によって筐体内において循環搬送路CR上を搬送される。循環搬送路CR上には、循環搬送路CR上を搬送された用紙Pを排紙部6へ誘導するか、又は循環搬送路CR上を再循環させるかを切り替える切り替え機構63が備えられている。
搬送手段の一つである切り替え機構63は、用紙Pを、後述する排紙部6又は反転部5のいずれか1方へ誘導するために切り替える。排紙部6は、インクジェット印刷装置100の筐体から突出したトレイ形状をした排紙台61と、排紙台61に用紙Pを誘導する一対の排紙ローラ62とを有している。そして、切り替え機構63により排紙部6に誘導された用紙Pは、排紙ローラ62により排紙台61に搬送され、排紙台61に印刷面を下にして積載される。
搬送手段の一つである反転部5は、用紙Pを反転させる反転台51と、循環搬送路CRから反転台51へ用紙Pを搬送し、又は反転台51から循環搬送路CR上へ用紙Pを搬送する反転ローラ52とを備えている。
切り替え機構63により反転部5に誘導された用紙Pは、反転ローラ52により循環搬送路CRから反転経路SRを沿って反転台51に搬送され、所定時間経過後、反転台51から循環搬送路CRへ搬送されることにより、循環搬送路CRに対して表裏が反転する。そして、表裏が反転された用紙Pは、循環搬送路CR上に設けられた切替機構53及び複数の搬送ローラにより循環搬送路CR上を印刷部2へ向かって搬送される。このように、両面印刷時において、切り替え機構63により反転部5は、表面印刷が終了した用紙Pを、裏面印刷のために表裏を反転して循環搬送路CRに戻し、表面印刷に係る用紙Pに割り込ませる動作を行う。
また、インクジェット印刷装置100の全体を制御する演算処理部3を有している。この演算処理部3は、CPUやDSP(Digital Signal Processor)等のプロセッサ、メモリ、及びその他の電子回路等のハードウェア、或いはその機能を持ったプログラム等のソフトウェア、又はこれらの組み合わせなどによって構成された演算モジュールである。演算処理部3は、プログラムを適宜読み込んで実行することにより種々の機能モジュールを仮想的に構築し、構築された各機能モジュールによって、画像データに関する処理や、各部の動作制御、ユーザ操作に対する種々の処理を行う。具体的に、演算処理部3は、給紙部1と、印刷部2と、排紙部6と、反転部5と、メンテナンス部4とを制御することにより、印刷ジョブに基づいて印刷処理を実行する。また、演算処理部3では、インクカートリッジ24交換時においてインクジェットヘッド21の駆動波形制御、インク循環制御、及びメンテナンス制御を調整する。
メンテナンス部4は、インクジェットヘッド21の吐出面をクリーニングするものである。メンテナンス部4は、印刷時には、図1において実線で示す待機位置に配置される。一方、クリーニング時には、昇降モータにより、図1において破線で示すクリーニング位置に配置される。クリーニング位置は、インクジェットヘッド21と搬送ベルト22との間にある。
(メンテナンス部4)
次いで、メンテナンス部4の構成について説明する。図2は、本実施形態に係るメンテナンス部の平面図であり、図3は、メンテナンス部4及びインクジェットヘッド21の分解斜視図である。図4は、図2におけるA−A線に沿った断面図である。
先ず、インクジェットヘッド21の構成について説明する。本実施形態において、インクジェットヘッド21Cは、3×2の千鳥型のマトリックス状に配置された6個の単位ヘッド211Cから構成されている。インクジェットヘッド21K,21M,21Yも同様に、それぞれ6個の単位ヘッド211K,211M,211Yから構成されている。なお、色の区別が必要ない場合等に、符号における色を示すアルファベットの添え字(C,K,M,Y)を省略して、例えば、インクジェットヘッドの符号を「21」、単位ヘッドの符号を「211」のように表記することがある。インクジェットヘッド21の単位ヘッド211のインク吐出面(ノズル面)211aには、撥インク膜が形成されている。撥インク膜は、インクをはじく性質を有する材料からなり、例えば、アモルファスフッ素樹脂からなる。
一方、メンテナンス部4は、 図2〜図4に示すように、インク受け部材41と、駆動部42と、ワイピング部43とを備える。なお、図2〜図4は、メンテナンス部4がメンテナンス位置に配置された状態における図である。
インク受け部材41は、クリーニングよって除去されたインク等を受けるものである。インク受け部材41は、メンテナンス部4の各部材を保持する。インク受け部材41は、直方体形状に形成されている。インク受け部材41の中央部には、インク等を受けるための凹部41aが形成されている。凹部41aは、平面視にて、インクジェットヘッド21が配置されている領域よりも大きくなるように形成されている。インク受け部材41の上側は、開口されている。本実施形態では、インク受け部材41をインクジェットヘッド21の下方へ移動させた後、演算処理部3の制御によってパージング機構が駆動され、吐出口内のインクを吐出及び吸引により除去するパージング処理が行われる。なお、パージング機構は、後述するインク循環機構2aとメンテナンス部4とを含めた構成からなる。
その後、ワイピング部43をインクジェットヘッドのインク吐出口に当接させて吐出面211aを払拭するワイピング処理が行われる。ここで、パージング処理とは、インク循環経路内の圧力を変化させたり、インクジェットヘッド21に電圧を印加したりすることで、吐出口内のインクを吐出及び吸引する処理である。また、ワイピング処理とは、駆動部42を駆動させて、単位ヘッド211の吐出面211aを摺動させてインク等を除去する処理である。
駆動部42は、メンテナンス時にワイピング部43を前後方向に移動させるものである。駆動部42は、ワイパ駆動モータ421と、駆動ベルト422と、1対の駆動プーリ423a,423bと、1対のネジ歯車424a,424bとを備える。
ワイパ駆動モータ421は、回転駆動力を生じさせる。ワイパ駆動モータ421は、インク受け部材41の前面の外側に配置されている。ワイパ駆動モータ421は、出力ギヤ421aを有する。出力ギヤ421aは、駆動ベルト422にワイパ駆動モータ421の回転駆動力を伝達する。出力ギヤ421aは、駆動ベルト422の中央部に配置されている。駆動ベルト422は、ワイパ駆動モータ421から伝達された回転駆動力を駆動プーリ423a,423bへと伝達する。駆動ベルト422は、駆動プーリ423aと駆動プーリ423bとの間に掛け渡されている。
1対の駆動プーリ423a,423bは、駆動ベルト422から伝達された回転駆動力をネジ歯車424a,424bへと伝達する。駆動プーリ423aと駆動プーリ423bとは、左右方向に所定の間隔を開けて、同じ高さに配置されている。駆動プーリ423a,423bは、インク受け部材41の前面部に回転可能に支持されている。
ネジ歯車424a,424bは、ワイパ駆動モータ421から伝達された回転駆動力によってワイピング部43を前後方向に移動させる。ネジ歯車424a,424bは、凹部41aの前後方向の略全長にわたって設けられている。ネジ歯車424a,424bの前端部は、それぞれ駆動プーリ423a,423bの後端に固定されている。ネジ歯車424a,424bの後端部は、インク受け部材41の右壁に回転可能に支持されている。これにより、ネジ歯車424a,424bは、それぞれ駆動プーリ423a,423bとともに回転される。
ワイピング部43は、メンテナンス時において、インクジェットヘッド21の吐出口周辺に摺接され、該吐出口周辺に付着したインクを除去する駆動機構であり、取付台431と、8枚のワイパ432とを備える。
取付台431は、ワイパ432が取り付けられるものであり、左右方向に細長い角柱状の部材により構成されている。取付台431には、1対のネジ孔が形成されている。ネジ孔には、それぞれネジ歯車424a,424bが貫通され、かつ、螺合されている。これにより、ネジ歯車424a,424bが回転されると、取付台431は前後方向に移動する。
ワイパ432は、インクジェットヘッド21の単位ヘッド211の吐出面211aを摺動することによってインク等を除去する。ワイパ432は、弾性変形可能なゴム等の材料で構成されている。ワイパ432を構成する材料は、吐出面211aを破損させない程度の弾力を有する材料であることが好ましい。ワイパ432は、長方形の薄板状に形成されている。ワイパ432の下端部は、図示しない固定具によって取付台431の後面に固定されている。図2に示すように、8枚のワイパ432は、平面視にて、前後方向に配列された単位ヘッド211の各列の延長線上に配置されている。図2に示すように、ワイパ432の上端部は、取付台431の上面よりも高くなるように構成されている。ワイパ432の上端部は、メンテナンス位置において、単位ヘッド211の吐出面211aよりも高くなるように配置されている。これにより、ワイパ432は、前後方向に移動されて単位ヘッド211と接すると、弾性変形されて吐出面211aを摺動する。なお、図示していないが、メンテナンス部4には、メンテナンス部4を図1の実線で示した待機位置と、破線で示したクリーニング位置との間で移動させるモータ装置を備えている。
(インク循環機構に関する構成)
次いで、印刷部2のインク循環機構2aに関する構成について説明する。図5は、本実施形態に係る印刷部2のインク循環機構2aに関する構成を示す概略構成図である。なお、同図の例では、一つのインク色について説明するが、複数色のインクでカラー印刷を行うカラープリンタでは、インク色対応にインク循環機構関連の構成を設ければよい。図5に示すように、印刷部2のインク循環機構2aには、インクジェットヘッド21と、インク循環部220と、インク供給部230と、圧力調整部240とを備える。
インクジェットヘッド21は、インク循環部220により供給されるインクを吐出する。インクジェットヘッド21は、複数の単位ヘッド211からなる。単位ヘッド211は、ピエゾ式である。単位ヘッド211は、インクを貯留するインクチャンバと、インクを吐出する複数のノズル(いずれも図示せず)とを有する。インクチャンバ内には、ピエゾ素子(図示せず)が配置されている。ピエゾ素子の駆動により、ノズルからインクが吐出される。
インクジェットヘッドが正常にインク吐出を行うためには、インクジェットヘッド21のノズルにかかる圧力(ノズル圧)を適正な負圧に保つ必要がある。インク循環型のインクジェット印刷装置100では、加圧タンク及び負圧タンクの圧力を制御することで、ノズル圧を制御している。
インク循環部220は、インクを循環させつつインクジェットヘッド21にインクを供給する。インク循環部220は、加圧タンク221と、分配器222と、集合器223と、負圧タンク224と、インクポンプ225と、インク温度調整部290と、インク温度センサ291と、循環経路220a〜220cとを備える。
加圧タンク221は、インクジェット印刷装置100内に設けられ、インクジェットヘッド21に供給するインクを貯留する供給用タンクである。加圧タンク221のインクは、循環経路220a及び分配器222を介してインクジェットヘッド21に供給される。加圧タンク221内には、インクの液面上に空気層が形成されている。加圧タンク221は、後述の配管260を介して、後述の加圧共通気室251に連通されている。加圧タンク221は、インクジェットヘッド21より低い位置(下方)に配置されている。
加圧タンク221は、振動によりインクジェットヘッド21のノズルのメニスカスが破壊されて分配器222及び循環経路220aの内部のインクが加圧タンク221に流れ落ちても、それを受け入れるだけの容量を有する。ただし、加圧タンク221が大きすぎると装置の大型化を招く。このため、加圧タンク221は、分配器222及び循環経路220aの内部のインクがすべて加圧タンク221に流れ落ちたときに満杯になる程度の容量を有する。
加圧タンク221には、フロート部材226aと、加圧タンク液面センサ227aと、インクフィルタ228とが設けられている。フロート部材226aは、加圧タンク221内のインクの液面高さが基準高さに達するまで、液面高さに応じて回動するように、加圧タンク221内に支持軸(図示せず)により一端側が軸支されている。フロート部材226aの他端には、磁石(図示せず)が設けられている。
加圧タンク液面センサ227aは、加圧タンク221内のインクの液面高さが基準高さに達しているか否かを検出するためのものである。基準高さは、加圧タンク221の上端から所定距離だけ下の位置にある。インクフィルタ228は、インク内のゴミ等を除去する。
分配器222は、循環経路220aを介して加圧タンク221から供給されるインクを、インクジェットヘッド21の各単位ヘッド211に分配する。集合器223は、インクジェットヘッド21で消費されなかったインクを各単位ヘッド211から集める。集合器223により集められたインクは、循環経路220bを介して負圧タンク224へと流れる。
負圧タンク224は、インクジェット印刷装置100内に設けられ、インクジェットヘッド21で消費されなかったインクを集合器223から受け取って貯留するタンクであり、また、加圧タンク221を介してインクジェットヘッド21に供給するインクを貯留する供給用タンクとしても機能する。また、負圧タンク224は、後述するインク供給部230のインクカートリッジ24から供給されるインクを貯留する。負圧タンク224内には、インクの液面上に空気層が形成されている。負圧タンク224は、後述の配管261を介して、後述の負圧共通気室255に連通されている。負圧タンク224は、加圧タンク221と同じ高さに配置されている。
負圧タンク224は、振動によりインクジェットヘッド21のノズルのメニスカスが破壊されてインクジェットヘッド21、集合器223、及び循環経路220bの内部のインクが負圧タンク224に流れ落ちても、それを受け入れるだけの容量を有する。ただし、負圧タンク224が大きすぎると装置の大型化を招く。このため、負圧タンク224は、インクジェットヘッド21、集合器223及び循環経路220bの内部のインクがすべて負圧タンク224に流れ落ちたときに満杯になる程度の容量を有する。
負圧タンク224には、フロート部材226bと、負圧タンク液面センサ227bとが設けられている。フロート部材226b、負圧タンク液面センサ227bは、それぞれ加圧タンク221のフロート部材226a、加圧タンク液面センサ227aと同様のものである。基準高さは、負圧タンク224の上端から所定距離だけ下の位置にある。インクポンプ225は、負圧タンク224から加圧タンク221へインクを送る。インクポンプ225は、循環経路220cの途中に設けられている。
インク温度調整部290は、インク循環部220におけるインクの温度を調整する。インク温度調整部290は、循環経路220aの途中に設けられている。インク温度調整部290は、ヒータ292と、ヒータ温度センサ293と、ヒートシンク294と、冷却ファン295とを備える。
ヒータ292は、循環経路220a内のインクを加熱する。ヒータ温度センサ293は、ヒータ292の温度を検出する。ヒートシンク294は、循環経路220a内のインクを冷却する。冷却ファン295は、ヒートシンク294に冷却風を送る。インク温度センサ291は、インク循環部220におけるインクの温度を検出する。インク温度センサ291は、循環経路220aの途中に設けられている。
循環経路220a〜220cは、供給タンクとインクジェットヘッド21との間でインクを循環させる配管である。循環経路220aは、加圧タンク221と分配器222とを接続する。循環経路220aの一部は、ヒータ292を経由する部分とヒートシンク294を経由する部分とに分岐している。循環経路220aには、加圧タンク221から分配器222に向かってインクが流れる。循環経路220bは、集合器223と負圧タンク224とを接続する。循環経路220bには、集合器223から負圧タンク224に向かってインクが流れる。循環経路220cは、負圧タンク224と加圧タンク221とを接続する。循環経路220cには、負圧タンク224から加圧タンク221に向かってインクが流れる。
インク供給部230は、インク循環部220にインクを供給する。インク供給部230は、インクカートリッジ24と、配管231と、インク供給弁232とを備える。インクカートリッジ24は、印刷部2で印刷に用いるインクを収容している。インクカートリッジ24は、加圧タンク221及び負圧タンク224又は循環経路220a〜220cに対して充填される新規のインクを貯留する。インクカートリッジ24内のインクは、配管231を介して負圧タンク224に供給される。配管231は、インクカートリッジ24と負圧タンク224とを接続する。配管231には、インクカートリッジ24から負圧タンク224に向かってインクが流れる。インク供給弁232は、配管231内のインクの流路を開閉する。インクカートリッジ24から負圧タンク224へインクを供給する際、インク供給弁232が開かれる。
圧力調整部240は、各印刷部2の加圧タンク221及び負圧タンク224の圧力を調整する。圧力調整部240は、加圧共通気室251と、加圧側圧力調整弁252と、加圧側大気開放弁253と、加圧側圧力センサ254と、負圧共通気室255と、負圧側圧力調整弁256と、負圧側大気開放弁257と、負圧側圧力センサ258と、エアポンプ259と、4本の配管260と、4本の配管261と、配管262〜267と、エアフィルタ268と、オーバーフローパン269とを備える。
加圧共通気室251は、各印刷部2の加圧タンク221の圧力を等しくするための気室である。加圧共通気室251は、4本の配管260を介して4つの印刷部2それぞれに対応する加圧タンク221の空気層と連通されている。これにより、各印刷部2の加圧タンク221どうしが、加圧共通気室251及び配管260を介して連通されている。
加圧側圧力調整弁252は、加圧共通気室251を介して各印刷部2の加圧タンク221の圧力を調整するために、配管263内の空気の流路を開閉する。加圧側圧力調整弁252は、配管263の途中に設けられている。加圧側大気開放弁253は、加圧共通気室251を介して各印刷部2の加圧タンク221を密閉状態(大気から遮断した状態)と大気開放状態(大気に通じた状態)との間で切り替えるために、配管264内の空気の流路を開閉する。加圧側大気開放弁253は、配管264の途中に設けられている。
加圧側圧力センサ254は、加圧共通気室251内の圧力(加圧側圧力)を検出する。ここで、加圧共通気室251内の圧力は、各印刷部2の加圧タンク221内の圧力と等しい。加圧共通気室251と各印刷部2の加圧タンク221の空気層とが連通されているためである。
負圧共通気室255は、各印刷部2の負圧タンク224の圧力を等しくするための気室である。負圧共通気室255は、4本の配管261を介して4つの印刷部2それぞれに対応する負圧タンク224の空気層と連通されている。これにより、各印刷部2の負圧タンク224どうしが、負圧共通気室255及び配管261を介して連通されている。
負圧側圧力調整弁256は、負圧共通気室255を介して各印刷部2の負圧タンク224の圧力を調整するために、配管265内の空気の流路を開閉する。負圧側圧力調整弁256は、配管265の途中に設けられている。負圧側大気開放弁257は、負圧共通気室255を介して各印刷部2の負圧タンク224を密閉状態と大気開放状態との間で切り替えるために、配管266内の空気の流路を開閉する。負圧側大気開放弁257は、配管266の途中に設けられている。
負圧側圧力センサ258は、負圧共通気室255内の圧力(負圧側圧力)を検出する。ここで、負圧共通気室255内の圧力は、各印刷部2の負圧タンク224内の圧力と等しい。負圧共通気室255と各印刷部2の負圧タンク224の空気層とが連通されているためである。
エアポンプ259は、加圧共通気室251及び負圧共通気室255を介して各印刷部2の負圧タンク224から加圧タンク221へ空気を送る。エアポンプ259は、配管262の途中に設けられている。
4本の配管260は、加圧共通気室251と4つの印刷部2の加圧タンク221とを接続する。配管260は、一端が加圧共通気室251に接続され、他端が加圧タンク221の空気層に接続されている。4本の配管261は、負圧共通気室255と4つの印刷部2の負圧タンク224とを接続する。配管261は、一端が負圧共通気室255に接続され、他端が負圧タンク224の空気層に接続されている。
配管262は、エアポンプ259により負圧共通気室255から加圧共通気室251へ送られる空気の流路を形成する。配管262は、一端が負圧共通気室255に接続され、他端が加圧共通気室251に接続されている。配管263,264は、それぞれ一端が加圧共通気室251に接続され、他端が配管267に接続されている。配管265,266は、それぞれ一端が負圧共通気室255に接続され、他端が配管267に接続されている。配管267は、一端(上端)がエアフィルタ268を介して大気に通じ、他端がオーバーフローパン269に接続されている。
エアフィルタ268は、配管267の上端に設けられ、外部の空気中に含まれるゴミ等の進入を防止するものである。オーバーフローパン269は、例えばインク供給弁232の異常により加圧タンク221、負圧タンク224からインクが溢れ、さらに加圧共通気室251、負圧共通気室255からもインクが溢れ出た場合に、そのインクを受け取る。オーバーフローパン269には、フロート部材271と、オーバーフロー液面センサ272とが設けられている。フロート部材271、オーバーフロー液面センサ272は、それぞれ加圧タンク221のフロート部材226a、加圧タンク液面センサ227aと同様のものである。オーバーフローパン269は、廃液タンク(図示せず)に接続されており、オーバーフロー液面センサ272がオンになると、廃液タンクへインクを排出するようになっている。
なお、上述したインク循環機構2aは、印刷実行時はもちろん、メンテナンス時においてもインク循環部220内のインクを循環させており、メンテナンス処理のパージング機構の一部としても機能する。
(演算処理部3の機能構成)
以上の構成を有するインクジェット印刷装置100では、インク交換時における各駆動制御を調整する機能を有しており、この機能は演算処理部3によって印刷部2及びメンテナンス部4等の動作を制御することにより行われる。図6は、本実施形態に係る演算処理部3の駆動制御に係る機能モジュールを示すブロック図である。なお、説明中で用いられる「モジュール」とは、装置や機器等のハードウェア、或いはその機能を持ったソフトウェア、又はこれらの組み合わせなどによって構成され、所定の動作を達成するための機能単位を示す。
図6に示すように、演算処理部3には、主として、非接触通信インターフェース301と、カートリッジ情報取得部302と、記憶部303と、ジョブデータ受信部304と、画像処理部305と、駆動制御部310とを備えている。
非接触通信インターフェース301は、インクカートリッジ24がインクジェット印刷装置100に装填されたときに、記憶タグ24aに対して電波信号の送受信を行い、記憶タグ24aに記憶保持されたインクに関する情報を取得するモジュールである。
カートリッジ情報取得部302は、記憶タグ24aに記憶保持されたインクに関する情報を非接触通信インターフェース301を通じて受信し、データとして取得するモジュールである。本実施形態において、カートリッジ情報取得部302は、取付検知センサを通じてインクカートリッジ24がカートリッジ取付機構23に取り付けられたかを検知した際に、非接触通信インターフェース301に非接触通信の開始を指示する。
記憶部303は、予め各種プログラムやパラメータを格納しておくROM、作業領域として一時的にプログラムやデータを記憶するRAM、各種プログラムやパラメータを格納するために使用されるハードディスク等からなり、特に、本実施形態において記憶部303は、インクカートリッジが装填された際に当該インクカートリッジに保持されているインク情報を取得して記憶するインク情報記憶部としての役割を果たす。具体的に記憶部303は、インクカートリッジ24が新規に装填された際、当該インクカートリッジ24が装填される前にインク循環部220(加圧タンク221、負圧タンク224、及び各循環経路220a〜220c等)内に貯留されていた旧インクの物性に関する旧インク情報を蓄積する旧インク情報蓄積部303aと、新規に装填されたインクカートリッジ24内に貯留されている新規インクの物性に関する新インク情報を取得して記憶する新インク情報蓄積部303bとを有している。なお、記憶部303には、インクカートリッジ24からインク循環部220に補充されたインク量、インク循環部220内に貯留された総インク量の情報、及び印刷処理やメンテナンス処理において、インク循環部220内で使用されたインク量についても逐次記録される。
ジョブデータ受信部304は、一連の印刷処理単位であるジョブデータを受信する通信インターフェースであり、受信したジョブデータに含まれるデータを画像処理部305に受け渡すモジュールである。ここでの通信としては、例えば、10BASE−Tや100BASE−TX等によるイントラネット(企業内ネットワーク)や家庭内ネットワークなどのLANの他、赤外線通信等の近距離通信も含まれる。画像処理部305は、画像処理に特化したデジタル信号処理を行う演算処理装置であり、印刷に必要な画像データの変換等を行うモジュールであり、RGB印刷画像をCMYK印刷画像に変換など画像処理に特化したデジタル信号処理を実行する。
駆動制御部310は、印刷部2、給紙部1、排紙部6、反転部5等の各部の駆動を制御してインクジェット印刷装置100全体を制御するモジュールであり、例えば、各色のインクジェットヘッドの駆動や、搬送経路の駆動手段の動作、メンテナンス処理などを実行する。特に、本実施形態において、駆動制御部310には、吐出制御部312、インク循環制御部311、及びメンテナンス制御部313を有している。
吐出制御部312は、印刷ジョブに含まれた画像データ及び印刷条件に基づいて、印刷部2のインクジェットヘッド21を制御するモジュールであり、画像処理後の画像データに基づいてドット毎のインク吐出量を算出し、インクジェットヘッド21のドライバに出力する。ドライバは、取得した制御データに基づいて、所定の電圧値の駆動信号をピエゾ素子群に出力する。ピエゾ素子群が駆動信号に応じて変形することにより、各インクジェットヘッド21のノズルからインクが吐出される。このとき、吐出制御部312は、インクジェットヘッド21によりインクを吐出する際、旧インク情報及び新インク情報のインクの配合比率に応じた混合インクの物性情報を算出し、この算出された物性情報に従って、インクジェットヘッド21に供給する吐出波形の大きさ又は幅を変化させる。
詳述すると、本実施形態に係る吐出制御部312は、記憶部303に記憶されている、現在装填されているインクカートリッジ24が装填される前に加圧タンク221や、負圧タンク224、及び循環経路220a〜220cに貯留されていたインクの物性に関する旧インク情報と、新たに装填されたインクカートリッジ24内に貯留されているインクの物性に関する新インク情報とに基づいて、旧インク情報及び新インク情報のインクの配合比率に応じた混合インクの物性情報を算出し、算出された物性情報に従って吐出動作を制御する。具体的に吐出制御部312は、インクカートリッジ24からインクジェット印刷装置100内に新規インクが順次充填されていく過程において、インクカートリッジ24が装填された際に循環経路220a〜220cや加圧タンク221、負圧タンク224に貯留されていた旧インクの総量とインクカートリッジ24から供給された新規インクの総量との配合比率に応じた混合のインクの物性情報を算出するにあたり、インクカートリッジ24が装填された後にインクジェットヘッド21から吐出したインクの総量を旧インクの総量から減算する。
インク循環制御部311は、インク循環機構2a内の各部を制御するモジュールである。具体的にインク循環制御部311は、負圧側圧力調整弁256や加圧側圧力調整弁252を駆動制御して、加圧タンク221及び負圧タンク224の圧力を調整する。また、インク循環制御部311は、インクポンプ225を駆動制御して、インク循環機構2a内のインクを循環させつつ、インクジェットヘッド21にインクを供給する。また、インク循環制御部311は、インク供給弁232の開閉を制御して、インクカートリッジ24内から負圧タンク224に新規インクを供給してインク量を調整する。また、本実施形態においてインク循環制御部311は、インクカートリッジ24が交換された際に、旧インク情報及び新インク情報に基づいて、新旧のインクの配合比率に応じた混合インクの物性情報を算出し、この算出された物性情報に従って、インク循環の制御を行う。
メンテナンス制御部313は、インクジェットヘッド表面の乾燥インク等の不要物を除去してノズルの目詰まり防止や解消する目的でパージング処理やワイピング処理を行うモジュールである。メンテナンス制御部313は、パージング処理として、加圧側圧力調整弁252を駆動させてインク循環部220内を加圧したり、インクジェットヘッド21に電圧を印加したりすることで、インクジェットヘッド21から強制的にインクを排出させる。なお、インク循環部220内を加圧する場合には、加圧側圧力調整弁252等を駆動させることで行う。また、メンテナンス制御部313は、ワイピング処理として、駆動部42を駆動させて、単位ヘッド211の吐出面211aを摺動させてインク等を除去する。
特に、本実施形態において、駆動制御部310内の吐出制御部312、インク循環制御部311、及びメンテナンス制御部313では、インクカートリッジ24の交換を検知した場合に、旧インクの物性に関する旧インク情報及び新規インクの物性に関する新インク情報に基づいて、新旧のインクの配合比率に応じた混合インクの物性情報を算出し、この算出された物性情報に従って、メンテナンスに関するパラメータを変化させる。
ここで、インクの物性に関する情報とは、各インクの粘度、体積弾性率、表面張力、密度又は比重であり、新規インクカートリッジ及び旧インクカートリッジのそれぞれの記憶タグ24aに含まれる情報である。そして、各制御部は、各インクの物性に関する情報の少なくとも一つと、インク循環部220内に貯留された総インク量中に占める新旧のインクの比率とに基づいて、制御データを調整する。
例えば、体積弾性率κと密度ρは、音速をcとすると、これらは、次式の関係を有する。
c=(κ/ρ)1/2
例えば、上式によれば、密度ρが大きいときは、音速は遅くなることから波長は長くなり、密度ρが小さいときは音速が速くなり、波長は短くなる。一方、体積弾性率κが大きいときは、音速が速くなることから波長は短くなり、体積弾性率κが小さいときは、音速が遅くなることから波長は長くなる。これら体積弾性率や密度等のインクの物性に関する情報は、インクの種類毎や色毎、製造ロッド毎に異なることから、製造・出荷時に測定されてインクカートリッジに記録・保持される。
以下に、駆動制御部310の各部における駆動制御の調整について詳述する。図7(a)は、インク吐出制御における駆動電圧の波形を示す説明図であり、図7(b)は、本実施形態に係るメンテナンス制御におけるノズル圧力を示す説明図である。なお、以下の説明では、インクの物性に関する情報としてインクの粘度を用い、粘度に基づいて調整を行う場合を例に説明する。また、ここでは、交換された新規インクの粘度が旧インクの粘度よりも高い場合について説明する。
(1)吐出制御部の制御
先ず、吐出制御部の制御について詳細に説明する。吐出制御部312では、記憶部303に記憶されている旧インク情報及び新インク情報に基づいて、インクジェットヘッド21におけるインクの吐出動作を制御する。ここで、吐出動作の制御とは、インクジェットヘッド21のインク吐出動作のための駆動電圧及び電圧印加時間により形成される駆動波形を制御するものである。
一般的に、インクジェットヘッド21に対して駆動電圧が印加されることでインクジェットヘッド21の吐出口からインクが吐出されるが、インクの粘度に応じて吐出されるインク量は変動する。すなわち、インクの粘度が高い場合には吐出されるインク量が減少し、インクの粘度が低い場合には吐出されるインク量は増大する。そのため、図7(a)に示すように、新規インクに対して設定される駆動電圧は、旧インクに対して設定される駆動電圧よりも大きく設定されている。
したがって、新規インクの粘度が旧インクの粘度よりも高い場合において、従来のように、インク交換後、即時に新規インクに対する駆動電圧を印加すると、粘度が低い旧インクに対して高い駆動電圧を印加することとなり、吐出量が増えて画像の濃度が濃くなったり、転写汚れなどの吐出不良が生じる。
そこで、吐出制御部312は、インクカートリッジ24からインクジェット印刷装置100内に新規インクが順次充填されていく過程において、インク循環部220内における新規インクと旧インクとの配合比率に応じて、旧インク情報及び新インク情報に基づく現在のインクの物性情報を算出し、この算出された物性情報に従って印加する駆動電圧の波形を制御して吐出動作を制御する。なお、ここでは、新規インクの粘度に対して設定された駆動電圧を22.0Vとし、旧インクの粘度に対して設定された駆動電圧を20.0Vとするものとする。
駆動電圧の制御について詳述する。先ず、吐出制御部312は、インク循環部220内における新規インクと旧インクとの配合比率に応じて、新規インクの駆動波形割合と旧インクの駆動波形割合とを求める。具体的には以下の式より求める。
新規インクの駆動波形割合:旧インクの駆動波形割合=新規インクの補充量:インク循環部内のインク総量
ここで、インク循環部220内のインク総量は、加圧タンク221、負圧タンク224、インクジェットヘッド21、及び循環経路220a〜220cの容積などから予め設定された値が記憶部303に記憶されている。一方、新規インクの補充量は、インク供給弁232の弁の開閉などをカウントしたり、インクジェットヘッド21から吐出されたインク吐出量などから算出する。
ここで、例えば、インク循環部220内のインク総量を200mlとし、インク循環部220に新規インクを50ml補充した場合には、新規インクの駆動波形割合と旧インクの駆動波形割合は、
新規インクの駆動波形割合:旧インクの駆動波形割合=50ml:200ml=1:4
となる。
そして、吐出制御部312は、新規インクと旧インクの配合比率に応じたヘッド駆動電圧Vを以下の式により求める。
(新規インクの駆動電圧×新規インクの駆動波形割合+旧インクの駆動電圧×旧インクの新規インクの駆動波形割合)/2
具体的に、この場合の適切なヘッド駆動電圧Vは、
ヘッド駆動電圧V=22.0×(1/5)+20.0×(4/5)=20.4V
となる。
また、例えば、インク循環部220に新規インクを500ml補充した場合には、新規インクの駆動波形割合と旧インクの駆動波形割合は、
新規インクの駆動波形割合:旧インクの駆動波形割合=500ml:200ml=5:2
となる。
そして、この場合の適切なヘッド駆動電圧Vは、
ヘッド駆動電圧V=22.0×(5/7)+20.0×(2/7)=21.4V
となる。
以上のように、新規インクの補充量が少ない場合には、印加する駆動電圧が低くなり、インクの吐出量を抑えることができるため、吐出不良を防止して画像品質を維持することができる。さらに、新規インクの補充量が多くなっていくと、新規インクに対して設定された駆動電圧と近い駆動電圧が算出されるので、新規インクの補充量に最適な駆動電圧を印加することができ、この場合も吐出不良を防止して画像品質を維持することができる。
なお、ここでは、新規インクの粘度が旧インクの粘度よりも高い場合を例に説明したが、新規インクの粘度が旧インクの粘度よりも低い場合であっても同様に駆動電圧の値を調整することで適用可能である。この場合、従来では、粘度が高い旧インクに対して、粘度が低い新規インクの駆動電圧を印加してしまい、インク吐出量が減少して画像品質が低下するという問題が生じていた。
しかしながら、上記同様に、新規インクと旧インクとの配合比率に応じて、旧インク情報及び新インク情報に基づく現在のインクの物性情報を算出し、この算出された物性情報に従って駆動電圧を算出することにより、最適なインク吐出量を吐出できるため、吐出不良を防止して画像品質を維持することができる。
また、ここでは、インク吐出動作のための駆動波形制御のうち、駆動電圧を調整した場合を説明したが、電圧印加時間の長さを変化させてインク量を調整してもよい。さらに、ここでは、インクの粘度に基づいて設定された駆動電圧を調整したが、インク吐出制御においては、例えば、インクの体積弾性率、インクの密度又は比重(単位体積当たりの重さ)等に基づいて設定された駆動電圧を用いて、これらの駆動電圧又は電圧印加時間を新インク及び旧インクの配合比率で調整してもよい。
(2)メンテナンス制御部の制御
次いで、メンテナンス制御部313の制御について説明する。なお、ここでは、インク循環部220内を加圧することで、インクジェットヘッド21から強制的にインクを排出させるパージング処理について説明する。
メンテナンス制御部313では、記憶部303に記憶されている旧インク情報及び新インク情報に基づいて、新旧インクの配合比率に応じた混合のインクの物性情報を算出し、この算出された物性情報に従ってワイピング部又はパージング機構の動作に関するメンテナンス条件パラメータの制御を行う。ここで、メンテナンス条件パラメータの制御には、パージング機構のインク吐出又は吸引のための圧力又は時間の制御、又はワイピング部の動作頻度、動作速度、動作回数の少なくとも一つの調整が含まれる。
一般的に、パージング処理は、加圧側圧力調整弁252等を駆動させてインク循環部220内を加圧して所定の圧力(以下、パージ圧力と称する。)とすることで、吐出回復に必要なインクをノズルから強制的に排出させるが、インクの粘度に応じて吐出されるインク量は変動する。すなわち、パージ圧力が同じであっても、インクの粘度が高い場合にはノズルから出る廃液量は減少し、インクの粘度が低い場合にはノズルから出る廃液量は増加する。そのため、図7(b)に示すように、新規インクに対して設定されたパージ(ノズル)圧力は、旧インクに対して設定されたパージ(ノズル)圧力よりも大きく設定される。
したがって、新規インクの粘度が旧インクの粘度よりも高い場合において、従来のように、インク交換後、即時に新規インクに対して設定されたパージ圧力に調整すると、粘度が低い旧インクに対して高いパージ圧力をかけてしまい、廃液量が増えて不必要にインクを消費してしまう。さらに、その後のワイピング処理においても、吐出面211aにインクが多い状態でワイピングを行うため、吐出面211aにインクが残存して吐出不良が生じ、画像品質が低下する。
そこで、メンテナンス制御部313は、インクカートリッジ24からインクジェット印刷装置100内に新規インクが順次充填されていく過程において、加圧タンク221及び負圧タンク224内又は循環経路220a〜220c内における新規インクと旧インクとの配合比率に応じて、旧インク情報及び新インク情報に基づく現在のインクの物性情報を算出し、この算出された物性情報に従ってメンテナンス条件パラメータの制御の一つであるパージ圧力の制御を行う。なお、ここでは、新規インクの粘度に対して設定されたパージ圧力は2.2kPaとし、旧インクの粘度に対して設定されたパージ圧力は2.0kPaとする。
パージ圧力の駆動制御について詳述する。先ず、メンテナンス制御部313は、インク循環部220内における新規インクと旧インクとの配合比率に応じて、新規インクの圧力割合と旧インクの圧力割合を求める。具体的に以下の式より求める。
新規インクの圧力割合:旧インクの圧力割合=新規インクの補充量:インク循環部220内のインク総量
インク循環部220内のインク総量及び新規インクの補充量の算出は上記と同様である。ここで、例えば、インク循環部220に新規インクを50ml補充した場合には、新規インクのインク総量割合と旧インクのインク総量は、
新規インクのインク総量:旧インクのインク総量割合=50ml:200ml=1:4
となる。
そして、メンテナンス制御部313は、新規インクと旧インクの配合比率に応じたパージ圧力kPaを以下の式により求める。
(新規インクのパージ圧力×新規インク圧力割合+旧インクのパージ圧力×旧インクの新規インクの圧力割合)/2
具体的に、この場合の適切なパージ圧力kPaは、
パージ圧力kPa=2.2×(1/5)+2.0×(4/5)=2.04kPa
となる。
また、例えば、インク循環部220に新規インクを500ml補充した場合には、新規インクの圧力割合と旧インクの圧力割合は、
新規インクの圧力割合:旧インクの圧力割合=500ml:200ml=5:2
となる。
そして、この場合の適切なパージ圧力kPaは、
パージ圧力kPa=2.2×(5/7)+2.0×(2/7)=2.14kPa
となる。
以上のように、新規インクの補充量が少ない場合にはパージ圧力が低くなるため、インクの吐出量を抑えて吐出回復を行うことができるとともに、吐出面211aにインクが残存して吐出不良が生じることを防止することができる。さらに、新規インクの補充量が多くなっていくと、新規インクに対して設定されたパージ圧力と近いパージ圧力が算出されるので、新規インクの補充量に最適なパージ圧力をかけて吐出回復を行うことができる。
なお、ここでは、新規インクの粘度が旧インクの粘度よりも高い場合を例に説明したが、新規インクの粘度が旧インクの粘度よりも低い場合であっても同様にパージ圧力を制御することで適用可能である。この場合、従来では、粘度が高い旧インクに対して、粘度が低い新規インクのパージ圧力をかけてしまい、廃棄量が減少してノズル内の異物を押し出せず、吐出回復性が悪化したり、吐出面211aにインクが少ない状態でワイピングを行うことで、吐出面211aを傷つけてしまうことがあった。
しかしながら、上記同様、新規インクと旧インクとの配合比率に応じて、旧インク情報及び新インク情報に基づく現在のインクの物性情報を算出し、この算出された物性情報に従ってパージ圧力の制御を行うことにより、パージ圧力を上げて適量なインクを廃棄できるので、ノズル内の異物を適切に押し出すとともに、吐出面211aを傷つけてしまうことを防止できるので、吐出回復性を保つことができる。
また、ここでは、メンテナンス条件パラメータの制御として、パージ圧力を調整する制御について説明したが、他のメンテナンス条件パラメータを用いて制御してもよい。具体的には、パージング機構のインク吐出又は吸引のための圧力付加時間の制御を行ってもよく、また、ワイピング部の動作頻度、動作速度、動作回数のいずれかを制御してもよい。さらには、これらを組み合わせて調整してもよい。
例えば、圧力付加時間を制御する場合、新規インクの粘度が旧インクの粘度よりも高いときには、配合比率に応じて圧力付加時間を短くすることでノズルから出る廃液量を適量にする。一方、新規インクの粘度が旧インクの粘度よりも低いときには、配合比率に応じて圧力付加時間を長くすることでノズルから出る廃液量を適量にする。
さらに、ここではインクの粘度に基づいて設定されたメンテナンス条件パラメータを調整したが、メンテナンス制御においては、インクの表面張力等に基づいて設定されたメンテナンス条件パラメータを用い、これらのメンテナンス条件パラメータを新規インク及び旧インクの配合比率で調整してもよい。
例えば、インクの表面張力が高いと、パージ圧力をかけていくときのインクが出始めるタイミングが遅くなるため、吐出回復に必要なノズルから出る廃液量は減少する。一方、インクの表面張力が低い場合、パージ圧力をかけていくときのインクが出始めるタイミングが早くなるため、吐出回復に必要なノズルから出る廃液量は増加する。よって上記粘度が高い場合と同様な問題が生じる。しかしながら、上記同様、インクの表面張力に対するパージ圧力又はパージ時間を、新規インク及び旧インクの配合比率で調整することで適量となるように調整して、吐出回復性を保つことができる。
具体的に、新規インクの表面張力が旧インクの表面張力よりも高い場合には、表面張力が低い旧インクに対して、表面張力が高い新規インクのパージ圧力をかけてしまい、廃液量が増えて不必要にインクを消費してしまう問題があったが、新規インクと旧インクとの配合比率に応じて現在のインクの物性情報を算出し、この算出された物性情報に従ってパージ圧力の制御を行うことにより、パージ圧力を下げて適量なインクを廃棄できるので、吐出回復性を保つことができる。
一方、新規インクの表面張力が旧インクの表面張力よりも低い場合には、表面張力が高い旧インクに対して、粘度が低い新規インクのパージ圧力をかけてしまい、廃棄量が減少してノズル内の異物を押し出せず、吐出回復性が悪化してしまう問題があったが、新規インクと旧インクとの配合比率に応じて現在のインクの物性情報を算出し、この算出された物性情報に従ってパージ圧力の制御を行うことにより、パージ圧力を上げて適量なインクを廃棄できるので、吐出回復性を保つことができる。
(3)インク循環制御部の制御
次いで、インク循環部220内のインク循環制御について説明する。インク循環制御部311では、記憶部303に記憶されている旧インク情報及び新インク情報に基づいて、新旧インクの配合比率に応じた混合のインクの物性情報を算出し、この算出された物性情報に従ってインク循環部220内における循環条件パラメータの制御を行う。ここで、循環条件パラメータの制御には、加圧タンク221からインクジェットヘッド21にインクを送液し、インクジェットヘッド21から負圧タンク224にインクを環流させる際の圧力の制御、又は循環させるインクの流量の制御が含まれる。この制御は、エアポンプ259の駆動の他、圧力調整部240内の加圧側圧力調整弁252、負圧側圧力調整弁256等を駆動させるものである。
一般的に、インクジェットヘッド21から正常にインク吐出を行うためには、インク循環部220及び圧力調整部240を制御して、インクジェットヘッド21のノズルにかかる圧力(ノズル圧)を適正な圧力に保つ必要があるが、インクの粘度に応じて付与する圧力は変動する。
したがって、新規インクが旧インクよりも粘度が高い場合において、従来のように、インク交換後、新規インクに適切なノズル圧となるように加圧タンク221及び負圧タンク224の圧力を制御すると、インクジェットヘッド21のノズル圧は下がってしまい、ノズルから空気を吸い込んでしまい、吐出不良が生じる。
そこで、インク循環制御部311は、インクカートリッジ24からインクジェット印刷装置100内に新規インクが順次充填されていく過程において、加圧タンク221及び負圧タンク224内又は循環経路220a〜220c内における新規インクと旧インクとの配合比率に応じて、旧インク情報及び新インク情報に基づく現在のインクの物性情報を算出し、この算出された物性情報に従って循環条件パラメータである加圧タンク221及び負圧タンク224内の圧力の制御を行う。ここでは、他の制御と同様、新規インクの補充量が少ない場合は、旧インクに適切なノズル圧となるように加圧タンク221及び負圧タンク224内の圧力を上げ、新規インクの補充量が多くなるにしたがって、新規インクに適切なノズル圧となる設定値に近い値となるように加圧タンク221及び負圧タンク224内の圧力を下げていく。
以上のように、インク循環制御部311は、粘度の高い新規インクに交換された場合であっても、インク循環部220内に含まれる粘度の低いインクの配合比率に基づいて、加圧タンク221及び負圧タンク224内の圧力を調整しているので、ノズルから空気が吸い込まれてしまうことを防止でき、吐出不良を防止できる。
なお、ここでは、新規インクの粘度が旧インクの粘度よりも高い場合を例に説明したが、新規インクの粘度が旧インクの粘度よりも低い場合であっても同様に循環条件パラメータを調整して、加圧タンク221及び負圧タンク224内の圧力を制御することで適用可能である。この場合、従来では、新規インクに適切なノズル圧となるように加圧タンク221及び負圧タンク224の圧力を調整すると、粘度が高い旧インクが含まれたインクジェットヘッド21のノズル圧は上がってしまい、ノズルからインクが溢れてしまい、画像品質の低下が生じていた。
しかしながら、旧インクを含んだ状態に最適な設定圧力となる循環条件パラメータを調整することで、適切なノズル圧に調整できるため、ノズルからインクが溢れてしまうことを防止でき、吐出不良を防止することができる。
また、ここでは、循環条件パラメータとしてノズル圧を用い、ノズル圧を制御する例を説明したが、例えば、循環条件パラメータとして循環させるインクの流量を用い、循環させるインクの流量を制御することもできる。
(インク交換時における駆動制御の動作)
次に、インク交換時における駆動制御の動作について説明する。図8は、本実施形態に係るインク交換時における駆動制御の動作を示すフローチャートである。先ず、演算処理部3は、取付検知センサ等から新たなカートリッジ24が取り付けられたか否かを判断する(S101)。ここで、新たなカートリッジ24が取り付けられていない場合は(S101における“N”)、検知されるまで待機する。
新たなカートリッジ24が取り付けられた場合は(S101における“Y”)、カートリッジ情報取得部302は、非接触通信インターフェース301を介して、カートリッジ24の記憶タグ24aからインク特性情報等を読み取る(S102)。読み取ったインク特性情報は、新インク情報蓄積部303bに記録され、交換されたカートリッジ24の旧インクの物性に関する情報は、旧インク情報蓄積部303aに記録される。なお、旧インクの物性に関する情報は、前回の交換時に読み取られているものとする。また、カートリッジ情報取得部302は、インクが交換された情報を駆動制御部310内のいずれかの制御部311〜313に送信する。
その後、演算処理部3において、印刷処理やメンテナンス処理の実行命令を受信するものとする(S103)。ここで、印刷実行命令を受信すると、画像処理部305において画像処理に特化したデジタル信号処理が行われ、画像データが駆動制御部310に送信される。一方、メンテナンス命令を受信すると、その情報は、直接メンテナンス制御部313に入力される。
駆動制御部310では、各部に応じた駆動制御を調整する。具体的には、旧インク情報蓄積部303a及び新インク情報蓄積部303bから、それぞれのインクの物性に関する情報を読み出す(S104)。さらに、各制御部311〜313は、新規インクの補充量を算出する(S105)。
そして、制御部311〜313は、インクカートリッジ24からインクジェット印刷装置100内に新規インクが順次充填されていく過程において、インク循環部220内における新規インクと旧インクとの配合比率を算出し(S106)、配合比率に応じて旧インク情報及び新インク情報に基づく現在のインクの物性情報を算出し(S107)、この算出された物性情報に従って各部の制御を調整して駆動制御する(S108)。具体的に、吐出制御部312では、インクジェットヘッド21におけるインクの吐出動作を制御し、メンテナンス制御部313では、ワイピング部43又はパージング機構の動作に関するメンテナンス条件パラメータの制御を行い、インク循環制御部311では、循環条件パラメータの制御を行う。駆動制御された後には、使用されたインク量(インク循環部220内のインク量)などのインク使用履歴情報を記憶部303に記録する(S109)。
各制御部311〜313では、次の処理命令がある場合、新規インク及び旧インクの配合比率に応じた調整制御を行うか否かを判断する(S110)。この判断としては、例えば、更新されたインク使用履歴情報を参照して、インク循環部220内に含まれる旧インクの配合割合が0となったか否かを判断することなどができる。
新規インク及び旧インクの配合比率に応じた調整制御を終了しないと判断した場合には(S110における“N”)、次回以降の処理についても、新インク及び旧インクの配合比率に応じた現在のインクの物性情報を算出して、制御する(S106〜S110)。一方、新規インク及び旧インクの配合比率に応じた調整制御を終了しないと判断した場合には(S110における“Y”)、制御部311〜313による制御を終了して通常通りの制御に戻る。
(作用・効果)
以上のように本実施形態によれば、駆動制御部310内における各制御部311〜313は、インクカートリッジが新規に装填された際、供給用タンクに貯留されている旧インクの旧インク情報と新たに補充される新規インクの新インク情報とに基づいて、新旧のインクの配合比率に応じて混合インクの物性情報を算出し、この算出された物性情報に従って各部を制御している。
具体的に、各制御部311〜313は、インクカートリッジ24からインクジェット印刷装置内に新規インクが順次充填されていく過程において、新規インクと旧インクとの配合比率に応じて現在の混合インクの物性情報を算出し、この算出された物性情報に従ってインク交換時における吐出動作、メンテナンス条件パラメータの制御、及び循環条件パラメータを制御するので、例えば、新規インクが循環経路内に補充される前までは、旧インクの旧インク情報に基づいたインク循環を行い、新規インクが補充された後は、新インク情報及び旧インク情報を含んだ情報に基づいたインク循環を行うことができる。このように、本実施形態によれば、インク循環経路内における新旧の混合インクの物理的性質に応じて最適化することができるので、吐出不良や吐出回復性の低下を防止して画像品質を維持することができる。
また、本実施形態において、吐出動作の制御では、インクジェットヘッド21に供給する吐出波形の大きさ又は幅を制御しているので、現在の混合インクにおける物理的性質に応じた最適な吐出制御を実行でき、より吐出不良及び吐出回復性の低下を防止して画像品質を維持することができる。具体的には、インクジェットヘッド21によりインクを吐出する際、たとえば、インクジェットヘッド21のインク吐出動作のための駆動電圧及び電圧印加時間により形成される駆動波形(吐出波形)を制御するので、混合インクにおける物理的性質に応じた最適な吐出制御を実行することにより画像品質を維持することができる。
さらに、本実施形態において、メンテナンス条件パラメータの制御には、パージング機構のインク吐出又は吸引のための圧力又は時間の制御、又は、ワイピング部43の動作頻度、動作速度、動作回数の少なくとも一つの調整が含まれ、その際に、新規インク及び旧インクを含んだ現在の混合インクの物理的性質に応じた最適なメンテナンス条件パラメータを適宜選択して制御でき、より吐出不良及び吐出回復性の低下を防止して画像品質を維持することができる。
また、本実施形態において、循環条件パラメータの制御には、加圧タンク221からインクジェットヘッド21にインクを送液し、インクジェットヘッド21から負圧タンク224にインクを環流させる際の圧力の制御、又は循環させるインクの流量の制御が含まれているので、新規インク及び旧インクを含んだ現在の混合インクの物理的性質に応じた最適なインク循環パラメータを適宜選択して制御でき、より吐出不良及び吐出回復性の低下を防止して画像品質を維持することができる。
さらに、本実施形態において、インクの物性に関する情報には、各インクの粘度、体積弾性率、表面張力、密度又は比重の少なくとも一つが含まれているので、インクの物理的性質の影響が生じる各項目を適宜選択して、各制御部311〜313を制御でき、より吐出不良及び吐出回復性の低下を防止して画像品質を維持することができる。
なお、本実施の形態では、インクジェット方式の印刷装置100について説明したが、印刷媒体を搬送しつつ印刷を行う他の方式の印刷装置にも本発明は適用可能である。また、本発明は上記実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施の形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施の形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。