以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。各図面を通じて同一もしくは同等の部位や構成要素には、同一もしくは同等の符号を付している。
以下に示す実施の形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置等を例示するものであって、この発明の技術的思想は、各構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。この発明の技術的思想は、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。
図1は、本発明の実施の形態に係るインクジェット印刷装置の構成を示すブロック図である。図2は、図1に示すインクジェット印刷装置の給紙部、ベルトプラテン部、およびインクジェットヘッドの概略構成図である。図3は、インクジェットヘッドおよびベルトプラテン部の平面図である。図4は、インクジェットヘッドのヘッドモジュールの概略構成図である。図5は、図1に示すインクジェット印刷装置のインク循環部、インク補給部、および圧力生成部の概略構成図である。図6は、図1に示すインクジェット印刷装置のメンテナンス部の平面図である。図7は、メンテナンス部の部分拡大斜視図である。図8は、図6のA−A線に沿った断面図である。
以下の説明において、図2の紙面に直交する方向を前後方向とし、紙面表方向を前方とする。また、図2における紙面の上下左右を上下左右方向とする。また、図2において太線で示す経路が、印刷媒体である用紙Pが搬送される搬送経路Rである。以下の説明における上流、下流は、搬送経路Rにおける上流、下流を意味する。
図1に示すように、本実施の形態に係るインクジェット印刷装置1は、給紙部2と、ベルトプラテン部3と、インクジェットヘッド4A,4Bと、インク循環部5A〜5Dと、インク補給部6A〜6Dと、圧力生成部7と、メンテナンス部8と、制御部(請求項の制御手段に相当)9とを備える。なお、インクジェットヘッド4A,4B、インク循環部5A〜5D、インク補給部6A〜6Dの符号におけるアルファベットの添え字を省略して総括的に表記することがある。
給紙部2は、用紙Pをベルトプラテン部3に給紙する。給紙部2は、外部給紙台11と、外部給紙ローラ12と、複数の内部給紙台13と、複数対の内部給紙ローラ14と、複数対の内部給紙搬送ローラ15と、レジストローラ16とを備える。
外部給紙台11は、印刷に用いられる用紙Pが積載されるものである。外部給紙台11は、一部がインクジェット印刷装置1の筐体(図示せず)の外部に露出して設置されている。
外部給紙ローラ12は、外部給紙台11から用紙Pを1枚ずつ取り出し、搬送経路Rに沿ってレジストローラ16へ向けて搬送する。外部給紙ローラ12は、図示しないモータにより回転駆動される。
内部給紙台13は、印刷に用いられる用紙Pが積載されるものである。内部給紙台13は、インクジェット印刷装置1の筐体(図示せず)の内部に配置されている。
内部給紙ローラ14は、内部給紙台13から用紙Pを1枚ずつ取り出して搬送経路Rへ送り出す。内部給紙ローラ14は、図示しないモータにより回転駆動される。
内部給紙搬送ローラ15は、内部給紙台13から取り出された用紙Pをレジストローラ16に向けて搬送する。内部給紙搬送ローラ15は、内部給紙ローラ14とレジストローラ16との間の搬送経路Rに沿って配置されている。内部給紙搬送ローラ15は、図示しないモータにより回転駆動される。
レジストローラ16は、外部給紙ローラ12または内部給紙搬送ローラ15から搬送されてきた用紙Pを一旦止めた後、ベルトプラテン部3に向けて搬送する。レジストローラ16は、外部給紙ローラ12および内部給紙搬送ローラ15の下流側に配置されている。レジストローラ16は、図示しないモータにより回転駆動される。
ベルトプラテン部3は、給紙部2から給紙された用紙Pをベルト上に吸着保持して搬送する。ベルトプラテン部3は、レジストローラ16の下流側に配置されている。ベルトプラテン部3は、図示しない駆動モータにより駆動される。また、ベルトプラテン部3は、図示しない昇降モータにより昇降可能に構成されている。これにより、ベルトプラテン部3を、図2に示すベルトプラテン部3の位置である印刷位置、後述の待機位置(図10参照)、および後述のクリーニング位置(図16参照)に配置できるようになっている。
インクジェットヘッド4A,4Bは、ベルトプラテン部3により搬送される用紙Pにインクを吐出して画像を印刷する。インクジェットヘッド4A,4Bは、ベルトプラテン部3の上方に配置されている。インクジェットヘッド4A,4Bは、図3に示すように、それぞれ6個のヘッドモジュール17を有する。
インクジェットヘッド4において、ヘッドモジュール17は、用紙Pの搬送方向(左右方向)に直交する主走査方向(前後方向)に沿って千鳥状に配置されている。すなわち、インクジェットヘッド4において、前後方向に沿って配列された6個のヘッドモジュール17が、左右方向における位置を交互にずらして配置されている。
ヘッドモジュール17は、2色のインクを吐出する。ヘッドモジュール17は、図4に示すように、2つのインクチャンバ18U,18Dと、2列のノズル列19U,19Dとを有する。ここで、図4は、ヘッドモジュール17を下側から見た図である。なお、インクチャンバ18U,18D、ノズル列19U,19Dの符号におけるアルファベットの添え字を省略して総括的に表記することがある。
インクチャンバ18は、インクを貯留する。インクチャンバ18U,18Dは、用紙Pの搬送方向(左右方向)に並列して配置されている。インクチャンバ18には、インク循環部5によりインクが供給される。インクチャンバ18U,18Dには、互いに異なる色のインクが供給される。インクチャンバ18内には、ピエゾ素子(図示せず)が配置されている。ピエゾ素子の駆動により、後述するノズル20からインクが吐出される。
ノズル列19は、インクを吐出する複数のノズル20からなる。ノズル20は、ヘッドモジュール17の下面であるノズル面17aに開口している。上流側のノズル列19Uのノズル20は、上流側のインクチャンバ18Uのインクを吐出し、下流側のノズル列19Dのノズル20は、下流側のインクチャンバ18Dのインクを吐出する。各ノズル列19U,19Dにおいて、複数のノズル20は、前後方向に沿って所定のピッチで等間隔に配置されている。ノズル列19U,19Dは、用紙Pの搬送方向(左右方向)に並列して配置されている。また、ノズル列19Uのノズル20とノズル列19Dのノズル20とが、前後方向に半ピッチ分だけずれるように配置されている。
インク循環部5A〜5Dは、インクを循環しつつインクジェットヘッド4A,4Bにインクを供給する。インク循環部5A,5Bは、それぞれインクジェットヘッド4Aのインクチャンバ18U,18Dにインクを供給する。インク循環部5C,5Dは、それぞれインクジェットヘッド4Bのインクチャンバ18U,18Dにインクを供給する。図5に示すように、インク循環部5は、加圧タンク21と、分配器22と、集合器23と、負圧タンク24と、インクポンプ25と、インク温度調整部26と、インク温度センサ27と、インク循環管28〜30とを備える。
加圧タンク21は、インクジェットヘッド4に供給するインクを貯留する。加圧タンク21のインクは、インク循環管28および分配器22を介してインクジェットヘッド4に供給される。加圧タンク21内には、インクの液面上に空気層31が形成されている。加圧タンク21は、後述の加圧側連通管52を介して、後述の加圧共通気室51に連通されている。加圧タンク21は、インクジェットヘッド4より低い位置(下方)に配置されている。
加圧タンク21には、フロート部材32と、加圧タンク液面センサ33と、インクフィルタ34とが設けられている。
フロート部材32は、加圧タンク21内のインクの液面高さが基準高さに達するまで、液面高さに応じて回動するように、加圧タンク21内に支持軸(図示せず)により一端側が軸支されている。フロート部材32の他端には、磁石(図示せず)が設けられている。
加圧タンク液面センサ33は、加圧タンク21内のインクの液面高さが基準高さに達しているか否かを検出するためのものである。基準高さは、加圧タンク21の上端より下方にある。加圧タンク液面センサ33は、磁気センサからなり、液面高さが基準高さに達しているときのフロート部材32の磁石を検出する。加圧タンク液面センサ33は、フロート部材32の磁石を検出している場合、すなわち、加圧タンク21内の液面高さが基準高さ以上である場合、「オン」を示す信号を出力する。加圧タンク液面センサ33は、フロート部材32の磁石を検出していない場合、すなわち、加圧タンク21内の液面高さが基準高さ未満である場合、「オフ」を示す信号を出力する。
インクフィルタ34は、インク内のゴミ等を除去する。
分配器22は、インク循環管28を介して加圧タンク21から供給されるインクを、インクジェットヘッド4の各ヘッドモジュール17に分配する。
集合器23は、インクジェットヘッド4で消費されなかったインクを各ヘッドモジュール17から集める。集合器23により集められたインクは、インク循環管29を介して負圧タンク24へと流れる。
負圧タンク24は、インクジェットヘッド4で消費されなかったインクを集合器23から受け取って貯留する。また、負圧タンク24は、後述するインク補給部6のインクカートリッジ46から補給されるインクを貯留する。負圧タンク24内には、インクの液面上に空気層36が形成されている。負圧タンク24は、後述の負圧側連通管59を介して、後述の負圧共通気室58に連通されている。負圧タンク24は、加圧タンク21と同じ高さに配置されている。
負圧タンク24には、フロート部材37と、負圧タンク液面センサ38とが設けられている。
フロート部材37、負圧タンク液面センサ38は、それぞれ加圧タンク21のフロート部材32、加圧タンク液面センサ33と同様のものである。負圧タンク液面センサ38は、フロート部材37の磁石を検出している場合、すなわち、負圧タンク24内の液面高さが基準高さ以上である場合、「オン」を示す信号を出力する。負圧タンク液面センサ38は、フロート部材37の磁石を検出していない場合、すなわち、負圧タンク24内の液面高さが基準高さ未満である場合、「オフ」を示す信号を出力する。基準高さは、負圧タンク24の上端より下方にある。
インクポンプ25は、負圧タンク24から加圧タンク21へインクを送液する。インクポンプ25は、インク循環管30の途中に設けられている。
インク温度調整部26は、インク循環部5におけるインクの温度を調整する。インク温度調整部26は、インク循環管28の途中に設けられている。インク温度調整部26は、ヒータ41と、ヒータ温度センサ42と、ヒートシンク43と、冷却ファン44とを備える。
ヒータ41は、インク循環管28内のインクを加熱する。ヒータ温度センサ42は、ヒータ41の温度を検出する。ヒートシンク43は、放熱によりインク循環管28内のインクを冷却する。冷却ファン44は、ヒートシンク43に冷却風を送る。
インク温度センサ27は、インク循環部5におけるインクの温度を検出する。インク温度センサ27は、インク循環管28の途中に設けられている。
インク循環管28は、加圧タンク21と分配器22とを接続する。インク循環管28の一部は、ヒータ41を経由する部分とヒートシンク43を経由する部分とに分岐している。インク循環管28には、加圧タンク21から分配器22に向かってインクが流れる。インク循環管29は、集合器23と負圧タンク24とを接続する。インク循環管29には、集合器23から負圧タンク24に向かってインクが流れる。インク循環管30は、負圧タンク24と加圧タンク21とを接続する。インク循環管30には、負圧タンク24から加圧タンク21に向かってインクが流れる。インク循環管28〜30と分配器22と集合器23とにより、加圧タンク21とインクジェットヘッド4と負圧タンク24との間でインクを循環させる循環経路が構成される。
インク補給部6A〜6Dは、それぞれインク循環部5A〜5Dにインクを補給する。インク補給部6は、インクカートリッジ46と、インク補給弁47と、インク補給管48とを備える。
インクカートリッジ46は、インクジェットヘッド4による印刷に用いるインクを収容している。インクカートリッジ46内のインクは、インク補給管48を介してインク循環部5の負圧タンク24に供給される。
インク補給弁47は、インク補給管48内のインクの流路を開閉する。負圧タンク24へインクを補給する際、インク補給弁47が開かれる。
インク補給管48は、インクカートリッジ46と負圧タンク24とを接続する。インク補給管48には、インクカートリッジ46から負圧タンク24に向かってインクが流れる。
圧力生成部7は、各インク循環部5の加圧タンク21および負圧タンク24にインク循環のための圧力を生成する。圧力生成部7は、加圧共通気室51と、4本の加圧側連通管52と、加圧側大気開放弁53と、加圧側大気開放管54と、加圧側圧力調整弁55と、加圧側圧力調整管56と、加圧側圧力センサ57と、負圧共通気室58と、4本の負圧側連通管59と、負圧側大気開放弁60と、負圧側大気開放管61と、負圧側圧力調整弁62と、負圧側圧力調整管63と、負圧側圧力センサ64と、エアポンプ(請求項のパージ手段に相当)65と、エアポンプ用配管66と、合流管67と、エアフィルタ68と、オーバーフローパン69とを備える。
加圧共通気室51は、各インク循環部5の加圧タンク21の圧力を等しくするための気室である。加圧共通気室51は、4本の加圧側連通管52を介してインク循環部5A〜5Dの加圧タンク21の空気層31と連通されている。これにより、インク循環部5A〜5Dの加圧タンク21どうしが、加圧共通気室51および加圧側連通管52を介して連通されている。
加圧側連通管52は、加圧共通気室51と加圧タンク21の空気層31とを連通させる。4本の加圧側連通管52は、インク循環部5A〜5Dに1本ずつ対応して設けられている。加圧側連通管52は、一端が加圧共通気室51に接続され、他端が加圧タンク21の空気層31に接続されている。
加圧側大気開放弁53は、加圧共通気室51を介して加圧タンク21を密閉状態(大気から遮断した状態)と大気開放状態(大気に通じた状態)との間で切り替えるために、加圧側大気開放管54内の空気の流路を開閉する。加圧側大気開放弁53は、加圧側大気開放管54の途中に設けられている。
加圧側大気開放管54は、加圧共通気室51を介して加圧タンク21を大気開放するための空気の流路を形成する。加圧側大気開放管54は、一端が加圧共通気室51に接続され、他端が合流管67に接続されている。
加圧側圧力調整弁55は、加圧共通気室51および加圧タンク21の圧力を調整するために、加圧側圧力調整管56内の空気の流路を開閉する。加圧側圧力調整弁55は、加圧側圧力調整管56の途中に設けられている。
加圧側圧力調整管56は、加圧共通気室51および加圧タンク21の圧力調整のための空気の流路を形成する。加圧側圧力調整管56は、加圧側大気開放管54、負圧側大気開放管61、合流管67より流路抵抗が大きいパイプからなる。具体的には、加圧側圧力調整管56は、加圧側大気開放管54、負圧側大気開放管61、合流管67より細いパイプからなる。加圧側圧力調整管56は、一端が加圧共通気室51に接続され、他端が合流管67に接続されている。
加圧側圧力センサ57は、加圧共通気室51内の圧力を検出する。加圧共通気室51内の圧力は、インク循環部5A〜5Dの加圧タンク21内の圧力と等しい。加圧共通気室51とインク循環部5A〜5Dの加圧タンク21の空気層31とが連通されているためである。
負圧共通気室58は、各インク循環部5の負圧タンク24の圧力を等しくするための気室である。負圧共通気室58は、4本の負圧側連通管59を介してインク循環部5A〜5Dの負圧タンク24の空気層36と連通されている。これにより、インク循環部5A〜5Dの負圧タンク24どうしが、負圧共通気室58および負圧側連通管59を介して連通されている。
負圧側連通管59は、負圧共通気室58と負圧タンク24の空気層36とを連通させる。4本の負圧側連通管59は、インク循環部5A〜5Dに1本ずつ対応して設けられている。負圧側連通管59は、一端が負圧共通気室58に接続され、他端が負圧タンク24の空気層36に接続されている。
負圧側大気開放弁60は、負圧共通気室58を介して負圧タンク24を密閉状態と大気開放状態との間で切り替えるために、負圧側大気開放管61内の空気の流路を開閉する。負圧側大気開放弁60は、負圧側大気開放管61の途中に設けられている。
負圧側大気開放管61は、負圧共通気室58を介して負圧タンク24を大気開放するための空気の流路を形成する。負圧側大気開放管61は、一端が負圧共通気室58に接続され、他端が合流管67に接続されている。
負圧側圧力調整弁62は、負圧共通気室58および負圧タンク24の圧力を調整するために、負圧側圧力調整管63内の空気の流路を開閉する。負圧側圧力調整弁62は、負圧側圧力調整管63の途中に設けられている。
負圧側圧力調整管63は、負圧共通気室58および負圧タンク24の圧力調整のための空気の流路を形成する。負圧側圧力調整管63は、加圧側大気開放管54、負圧側大気開放管61、合流管67より流路抵抗が大きいパイプからなる。具体的には、負圧側圧力調整管63は、加圧側大気開放管54、負圧側大気開放管61、合流管67より細いパイプからなる。負圧側圧力調整管63は、一端が負圧共通気室58に接続され、他端が合流管67に接続されている。
負圧側圧力センサ64は、負圧共通気室58内の圧力を検出する。負圧共通気室58内の圧力は、インク循環部5A〜5Dの負圧タンク24内の圧力と等しい。負圧共通気室58とインク循環部5A〜5Dの負圧タンク24の空気層36とが連通されているためである。
エアポンプ65は、負圧共通気室58を介してインク循環部5A〜5Dの負圧タンク24から空気を吸引するとともに、加圧共通気室51を介してインク循環部5A〜5Dの加圧タンク21へ空気を送る。エアポンプ65は、エアポンプ用配管66の途中に設けられている。
エアポンプ用配管66は、エアポンプ65により負圧共通気室58から加圧共通気室51へ送られる空気の流路を形成する。エアポンプ用配管66は、一端が加圧共通気室51に接続され、他端が負圧共通気室58に接続されている。
合流管67は、一端がオーバーフローパン69に接続され、他端(上端)がエアフィルタ68を介して大気に通じている。合流管67のオーバーフローパン69側の端は、通常時は、後述のオーバーフローボール71により閉鎖されている。合流管67には、加圧側大気開放管54、加圧側圧力調整管56、負圧側大気開放管61、および負圧側圧力調整管63が接続されている。これにより、加圧側大気開放管54、加圧側圧力調整管56、負圧側大気開放管61、および負圧側圧力調整管63が大気に連通される。
エアフィルタ68は、合流管67への空気中のゴミ等の進入を防止する。エアフィルタ68は、合流管67の上端に設置されている。
オーバーフローパン69は、例えばインク補給弁47の異常により、加圧タンク21、負圧タンク24からインクが溢れ、さらに加圧共通気室51、負圧共通気室58からもインクが溢れ出た場合に、合流管67を流れてくるインクを受け取る。
オーバーフローパン69には、オーバーフローボール71が設けられている。オーバーフローボール71は、オーバーフローパン69にインクがない場合に、オーバーフローパン69の底面に開口する合流管67の端を閉鎖し、合流管67への外部の空気の流入を防ぐものである。合流管67からオーバーフローパン69へインクが流れてくると、オーバーフローボール71は浮き上がり、オーバーフローパン69にインクが流入できる。
また、オーバーフローパン69には、フロート部材72と、オーバーフロー液面センサ73とが設けられている。フロート部材72、オーバーフロー液面センサ73は、それぞれ加圧タンク21のフロート部材32、加圧タンク液面センサ33と同様のものである。
オーバーフローパン69は、廃液タンク(図示せず)に接続されており、オーバーフロー液面センサ73がオンになると、廃液タンクへインクが排出されるようになっている。
メンテナンス部8は、インクジェットヘッド4のクリーニングを行う。メンテナンス部8は、図示しないモータにより、図2に示すメンテナンス部8の位置である退避位置と、後述の待機位置(図10参照)との間で移動可能に構成されている。また、メンテナンス部8は、クリーニング時には、後述のクリーニング位置(図16参照)に配置される。
図6〜図8に示すように、メンテナンス部8は、インク受け部材76と、ワイパユニット77と、ワイパ駆動部78とを備える。なお、図6〜図8は、メンテナンス部8がクリーニング位置に配置されている状態における図である。
インク受け部材76は、クリーニングによりにヘッドモジュール17のノズル面17aから除去されて落下するインク等を受けるものである。インク受け部材76は、直方体形状に形成されている。インク受け部材76の中央部には、インク等を受けるための凹部76aが形成されている。凹部76aは、平面視にて、インクジェットヘッド4A,4Bのヘッドモジュール17が配置されている領域よりも大きくなるように形成されている。インク受け部材76の上側は、開口されている。
ワイパユニット77は、ヘッドモジュール17のノズル面17aをワイプして、ノズル面17a上のインク等を除去する。ワイパユニット77は、取付台79と、4枚のワイパ80とを備える。
取付台79は、ワイパ80が取り付けられるものである。取付台79は、直方体形状に形成されている。取付台79には、一対のネジ孔79a,79bが形成されている。ネジ孔79a,79bには、後述のネジ歯車84a,84bがそれぞれ貫通され、かつ螺合されている。ネジ歯車84a,84bの回転により、取付台79は、前後方向に移動する。
ワイパ80は、ヘッドモジュール17のノズル面17aをワイプする部材である。ワイパ80は、弾性変形可能なゴム等の材料からなり、矩形の板状に形成されている。ワイパ80の下端部は、図示しない固定具によって取付台79の前面に固定されている。図6に示すように、4枚のワイパ80は、メンテナンス部8がクリーニング位置に配置されている状態において、千鳥配置のヘッドモジュール17の前後方向に沿う各列の延長線上に位置するように配置されている。
メンテナンス部8がクリーニング位置に配置されている状態において、ワイパ80の上端が、ヘッドモジュール17のノズル面17aよりも高い位置にある。ワイパ80は、前後方向に移動されてヘッドモジュール17と接すると、弾性変形されて上端部がノズル面17aを摺動(ワイプ)する。
ワイパ駆動部78は、ワイパユニット77を前後方向に移動させる。ワイパ駆動部78は、ワイパモータ81と、駆動ベルト82と、1対の駆動プーリ83a,83bと、1対のネジ歯車84a,84bとを備える。
ワイパモータ81は、ワイパユニット77を移動させるための回転駆動力を発生する。ワイパモータ81は、インク受け部材76の後壁の外側に配置されている。ワイパモータ81は、出力ギア81aを有する。出力ギア81aは、駆動ベルト82にワイパモータ81の回転駆動力を伝達する。出力ギア81aは、駆動ベルト82の中央部に配置されている。
駆動ベルト82は、ワイパモータ81から伝達された回転駆動力を駆動プーリ83a,83bへと伝達する。駆動ベルト82は、駆動プーリ83aと駆動プーリ83bとに掛け渡されている。
1対の駆動プーリ83a,83bは、駆動ベルト82から伝達された回転駆動力をネジ歯車84a,84bへと伝達する。駆動プーリ83aと駆動プーリ83bとは、左右方向に所定の間隔を開けて、同じ高さに配置されている。駆動プーリ83a,83bは、インク受け部材76の後壁に回転可能に支持されている。
ネジ歯車84a,84bは、駆動プーリ83a,83bから伝達された回転駆動力によってワイパユニット77を前後方向に移動させる。ネジ歯車84a,84bは、前後方向における凹部76aの略全長にわたって延びている。ネジ歯車84a,84bの後端は、それぞれ駆動プーリ83a,83bに固定されている。ネジ歯車84a,84bの前端は、インク受け部材76の前壁に回転可能に支持されている。これにより、ネジ歯車84a,84bは、それぞれ駆動プーリ83a,83bとともに回転する。
制御部9は、インクジェット印刷装置1の各部の動作を制御する。制御部9は、CPU、RAM、ROM、ハードディスク等を備えて構成される。
制御部9は、規定印刷枚数ごとに、インクジェットヘッド4のヘッドモジュール17のノズル面17aをクリーニングするクリーニング動作を実行する。制御部9は、クリーニング動作間に行われた印刷動作で使用された用紙種類に基づき、クリーニング動作時のパージにおいてヘッドモジュール17のノズル20から排出させるインク量であるパージインク量を調整する。
次に、インクジェット印刷装置1の動作について説明する。
図9は、インクジェット印刷装置1の動作を説明するためのフローチャートである。図9のフローチャートの処理は、インクジェット印刷装置1に印刷ジョブが入力されることにより開始となる。
図9のステップS1において、制御部9は、メンテナンス部8を退避位置へ移動させるとともに、ベルトプラテン部3を印刷位置へ移動させる。
ここで、印刷動作を開始する前の待機状態では、ベルトプラテン部3およびメンテナンス部8は、それぞれ図10に示す待機位置に配置されている。ベルトプラテン部3の待機位置は、インクジェットヘッド4A,4Bの下方であって、図2に示すベルトプラテン部3の位置である印刷位置よりも上方にある。メンテナンス部8の待機位置は、待機位置にあるベルトプラテン部3上の位置である。
図10の状態から、まず、制御部9は、図11に示すように、メンテナンス部8を退避位置へ移動させる。次いで、制御部9は、図12に示すように、ベルトプラテン部3を上昇させて印刷位置へ移動させる。これにより、メンテナンス部8が退避位置へ退避し、ベルトプラテン部3が印刷位置に配置された状態となる。
図9に戻り、ステップS1に続いて、ステップS2において、制御部9は、液面維持制御を開始する。液面維持制御は、加圧タンク21および負圧タンク24の液面を基準高さに維持するための、加圧タンク21および負圧タンク24の液面高さに応じたインクポンプ25およびインク補給弁47の制御である。
具体的には、図13に示すように、加圧タンク液面センサ33および負圧タンク液面センサ38がともにオンの状態では、制御部9は、インクポンプ25をオフとし、インク補給弁47を閉鎖する。加圧タンク液面センサ33がオンで負圧タンク液面センサ38がオフの状態でも同様に、制御部9は、インクポンプ25をオフとし、インク補給弁47を閉鎖する。
加圧タンク液面センサ33がオフで負圧タンク液面センサ38がオンの状態では、制御部9は、インクポンプ25をオンとし、インク補給弁47を閉鎖する。
加圧タンク液面センサ33および負圧タンク液面センサ38がともにオフの状態では、制御部9は、インクポンプ25をオフとし、インク補給弁47を開放する。
図9に戻り、ステップS2に続いて、ステップS3において、制御部9は、加圧側大気開放弁53および負圧側大気開放弁60を閉鎖する。これにより、加圧共通気室51を介して加圧タンク21が密閉状態となるとともに、負圧共通気室58を介して負圧タンク24が密閉状態となる。
ここで、インクジェット印刷装置1の待機中は、加圧側大気開放弁53および負圧側大気開放弁60は開放され、加圧側圧力調整弁55および負圧側圧力調整弁62は閉鎖されている。なお、ステップS3の加圧側大気開放弁53および負圧側大気開放弁60の閉鎖後に液面維持制御開始としてもよい。
次いで、ステップS4において、制御部9は、圧力制御を開始する。圧力制御は、インク循環のために加圧タンク21および負圧タンク24にそれぞれの設定圧Pks,Pfsを生成し、それらを維持するための、エアポンプ65、加圧側圧力調整弁55、および負圧側圧力調整弁62の制御である。ここで、設定圧Pks,Pfsは、インクを所定の流量で循環させつつインクジェットヘッド4のノズル圧を適正値にするための圧力値として予め設定されたものである。加圧タンク21の設定圧Pksは正圧であり、負圧タンク24の設定圧Pfsは負圧である。
圧力制御におけるエアポンプ65、加圧側圧力調整弁55、および負圧側圧力調整弁62の制御は、加圧側圧力センサ57の検出値Pkおよび負圧側圧力センサ64の検出値Pfに応じて行われる。
具体的には、図14に示すように、Pk<Pksかつ|Pf|<|Pfs|の場合、制御部9は、加圧側圧力調整弁55および負圧側圧力調整弁62を閉鎖し、エアポンプ65をオンとする。これにより、ともに密閉状態の負圧タンク24から加圧タンク21へエアポンプ65により空気が送られることで、負圧タンク24の圧力が低下し、加圧タンク21の圧力が上昇する。
Pk≧Pksかつ|Pf|<|Pfs|の場合、制御部9は、加圧側圧力調整弁55を開放し、負圧側圧力調整弁62を閉鎖する。また、制御部9は、エアポンプ65をオンとする。これにより、加圧側圧力調整管56を介して加圧タンク21から空気が流出することで、加圧タンク21の圧力が低下する。また、密閉状態の負圧タンク24からエアポンプ65により空気が吸引されることで、負圧タンク24の圧力が低下する。
Pk<Pksかつ|Pf|≧|Pfs|の場合、制御部9は、加圧側圧力調整弁55を閉鎖し、負圧側圧力調整弁62を開放する。また、制御部9は、エアポンプ65をオンとする。これにより、密閉状態の加圧タンク21にエアポンプ65により空気が送られることで、加圧タンク21の圧力が上昇する。また、負圧側圧力調整管63を介して負圧タンク24に空気が流入することで、負圧タンク24の圧力が上昇する。
Pk≧Pksかつ|Pf|≧|Pfs|の場合、制御部9は、加圧側圧力調整弁55および負圧側圧力調整弁62を開放し、エアポンプ65をオフとする。これにより、加圧側圧力調整管56を介して加圧タンク21から空気が流出することで、加圧タンク21の圧力が低下する。また、負圧側圧力調整管63を介して負圧タンク24に空気が流入することで、負圧タンク24の圧力が上昇する。
ここで、圧力制御の開始時は、加圧タンク21および負圧タンク24の圧力は大気圧である。このため、Pk<Pksかつ|Pf|<|Pfs|になっている。したがって、制御部9は、圧力制御を開始すると、エアポンプ65の駆動を開始させる。エアポンプ65の駆動により、負圧共通気室58から加圧共通気室51へ空気が送られる。これにより、負圧共通気室58および負圧タンク24が減圧され、加圧共通気室51および加圧タンク21が加圧されることで、加圧タンク21からインクジェットヘッド4へ向けてインクが流れ始める。
圧力制御の開始後、図9のステップS5において、制御部9は、加圧側圧力センサ57の検出値Pkおよび負圧側圧力センサ64の検出値Pfに基づき、加圧タンク21および負圧タンク24に設定圧Pks,Pfsが生成されたか否かを判断する。加圧タンク21および負圧タンク24の少なくともいずれか一方に設定圧Pks,Pfsが生成されていないと判断した場合(ステップS5:NO)、制御部9は、ステップS5を繰り返す。
加圧タンク21および負圧タンク24に設定圧Pks,Pfsが生成されたと判断した場合(ステップS5:YES)、ステップS6において、制御部9は、印刷ジョブの実行を開始する。具体的には、制御部9は、印刷ジョブにおける印刷枚数分の用紙Pを給紙部2から順次給紙し、ベルトプラテン部3により用紙Pを搬送しつつ、インクジェットヘッド4からインクを吐出して用紙Pに画像を印刷するよう制御する。ここで、制御部9は、印刷ジョブにおいて設定された用紙種類の用紙Pを外部給紙台11および複数の内部給紙台13のいずれかから給紙するよう給紙部2を制御する。
印刷ジョブの実行中は、加圧タンク21からインクジェットヘッド4へインクが供給され、インクジェットヘッド4で消費されなかったインクが負圧タンク24に回収される。加圧タンク液面センサ33がオフで負圧タンク液面センサ38がオンの状態になると、液面維持制御により、インクポンプ25が負圧タンク24から加圧タンク21へインクを送る。このようにしてインクが循環されつつ、印刷が行われる。
また、制御部9は、インク温度センサ27の検出温度が適正温度範囲内を維持するように、インク温度調整部26を制御してインク温度の調整を行う。
印刷ジョブの実行開始後、ステップS7において、制御部9は、前回のクリーニング動作後の累積印刷枚数が規定印刷枚数に達したか否かを判断する。規定印刷枚数は、クリーニング動作間の印刷枚数として予め設定されたものである。
前回のクリーニング動作後の累積印刷枚数が規定印刷枚数に達したと判断した場合(ステップS7:YES)、ステップS8において、制御部9は、給紙部2、ベルトプラテン部3による新たな用紙Pの給紙、搬送を停止させる。
次いで、ステップS9において、制御部9は、圧力制御を終了する。ここで、エアポンプ65が駆動中の場合、制御部9は、それを停止させる。また、加圧側圧力調整弁55および負圧側圧力調整弁62の少なくともいずれかが開放されている場合、制御部9は、開放されているものを閉鎖する。
次いで、ステップS10において、制御部9は、加圧側大気開放弁53および負圧側大気開放弁60を開放する。これにより、加圧タンク21が加圧共通気室51を介して大気開放され、負圧タンク24が負圧共通気室58を介して大気開放される。
次いで、ステップS11において、制御部9は、液面維持制御を終了する。
次いで、ステップS12において、制御部9は、クリーニング動作を実行する。クリーニング動作の内容は後述する。
次いで、ステップS13において、制御部9は、印刷ジョブが終了しているか否かを判断する。ここで、制御部9は、前回のクリーニング動作後の累積印刷枚数が規定印刷枚数に達した時点で印刷ジョブにおける印刷枚数分の印刷が終了した場合、印刷ジョブが終了していると判断する。
印刷ジョブが終了していないと判断した場合(ステップS13:NO)、制御部9は、ステップS2に戻り、印刷ジョブを再開する。印刷ジョブが終了していると判断した場合(ステップS13:YES)、制御部9は、一連の動作を終了する。
ステップS7において、前回のクリーニング動作後の累積印刷枚数が規定印刷枚数に達していないと判断した場合(ステップS7:NO)、ステップS14において、制御部9は、印刷ジョブが終了したか否かを判断する。印刷ジョブが終了していないと判断した場合(ステップS14:NO)、制御部9は、ステップS7へ戻る。
印刷ジョブが終了したと判断した場合(ステップS14:YES)、ステップS15において、制御部9は、給紙部2およびベルトプラテン部3を停止させて用紙Pの給紙、搬送を終了させる。この後、制御部9は、ステップS16へ進む。ステップS16〜S18の処理は、上述したステップS9〜S11の処理と同様である。
ステップS18に続いて、ステップS19において、制御部9は、ベルトプラテン部3およびメンテナンス部8を待機位置へ移動させる。具体的には、制御部9は、まず、ベルトプラテン部3を下降させて印刷位置から待機位置へ移動させる。次いで、制御部9は、メンテナンス部8を退避位置から待機位置へ移動させる。これにより、一連の動作が終了し、インクジェット印刷装置1が待機状態となる。
次に、上述した図9のステップS12で行われるクリーニング動作について説明する。
クリーニング動作は、パージによりインクジェットヘッド4のノズル20からインクを強制的に排出させてノズル面17aにインクを付着させ、それに続いて、ワイパ80でノズル面17aをワイプする動作である。インクジェット印刷装置1では、ノーマルクリーニングとストロングクリーニングとを選択的に実行できる。ストロングクリーニングは、ノーマルクリーニングよりパージインク量を多くして行うクリーニングである。
図15は、クリーニング動作を説明するためのフローチャートである。
まず、図15のステップS21において、制御部9は、ベルトプラテン部3およびメンテナンス部8をクリーニング位置へ移動させる。
ここで、クリーニング動作を開始する前の状態では、図12に示すように、ベルトプラテン部3は印刷位置に配置され、メンテナンス部8は退避位置に配置されている。この状態から、制御部9は、図11に示すように、ベルトプラテン部3を下降させて待機位置へ移動させる。次いで、制御部9は、図10に示すように、メンテナンス部8を待機位置へ移動させる。そして、制御部9は、ベルトプラテン部3を上昇させて、ベルトプラテン部3およびメンテナンス部8を図16に示すクリーニング位置へ移動させる。ベルトプラテン部3のクリーニング位置は、待機位置の上方で、印刷位置の下方にある。メンテナンス部8のクリーニング位置は、クリーニング位置にあるベルトプラテン部3上の位置である。
図15に戻り、ステップS21に続いて、ステップS22において、制御部9は、加圧側大気開放弁53を閉鎖する。これにより、加圧共通気室51を介して加圧タンク21が密閉状態となる。ここで、負圧側大気開放弁60は開放されている。加圧側圧力調整弁55および負圧側圧力調整弁62は閉鎖されている。
次いで、ステップS23において、制御部9は、エアポンプ65を起動させる。これにより、加圧タンク21が加圧され始める。
次いで、ステップS24において、制御部9は、ノーマルクリーニングおよびストロングクリーニングのうち、実行するのはストロングクリーニングであるか否かを判断する。
ここで、制御部9は、前回のクリーニング動作以降の印刷動作において使用された用紙種類のなかに、ストロングクリーニングの対象となる用紙種類が含まれている場合、実行するのはストロングクリーニングであると判断する。ストロングクリーニングの対象となる用紙種類は、紙粉が発生しやすい用紙種類であるとして予め指定されたものである。例えば、ストロングクリーニングの対象となる用紙種類は、厚紙、ザラ紙等である。
実行するのはストロングクリーニングであると判断した場合(ステップS24:YES)、ステップS25において、制御部9は、加圧側圧力センサ57の検出値Pkに基づき、加圧タンク21内の圧力がストロングクリーニング用の加圧力Psに到達したか否かを判断する。
加圧タンク21内の圧力がストロングクリーニング用の加圧力Psに到達していないと判断した場合(ステップS25:NO)、制御部9は、ステップS25を繰り返す。加圧タンク21内の圧力がストロングクリーニング用の加圧力Psに到達したと判断した場合(ステップS25:YES)、制御部9は、ステップS27へ進む。
実行するのはノーマルクリーニングであると判断した場合(ステップS24:NO)、ステップS26において、制御部9は、負圧側圧力センサ64の検出値Pfに基づき、加圧タンク21内の圧力がノーマルクリーニング用の加圧力Pnに到達したか否かを判断する。ここで、ノーマルクリーニング用の加圧力Pnは、ストロングクリーニング用の加圧力Psよりも小さい。
加圧タンク21内の圧力がノーマルクリーニング用の加圧力Pnに到達していないと判断した場合(ステップS26:NO)、制御部9は、ステップS26を繰り返す。加圧タンク21内の圧力がノーマルクリーニング用の加圧力Pnに到達したと判断した場合(ステップS26:YES)、制御部9は、ステップS27へ進む。
ステップS27では、制御部9は、エアポンプ65を停止させる。これにより、加圧タンク21内の圧力上昇が停止する。
次いで、ステップS28において、制御部9は、エアポンプ65を停止させてから所定時間が経過したか否かを判断する。エアポンプ65を停止させてから所定時間は経過していないと判断した場合(ステップS28:NO)、制御部9は、ステップS28を繰り返す。
エアポンプ65を停止させてから所定時間が経過したと判断した場合(ステップS28:YES)、ステップS29において、制御部9は、加圧側大気開放弁53を開放する。これにより、加圧タンク21が大気開放される。
上述のステップS22〜S29の処理により、加圧タンク21が密閉状態でエアポンプ65により加圧されることで、インクジェットヘッド4のノズル20からインクが押し出される。すなわち、パージが行われる。ストロングクリーニング用の加圧力Psがノーマルクリーニング用の加圧力Pnよりも大きいため、ストロングクリーニングではノーマルクリーニングよりもパージインク量が多くなる。
パージにより、図17に示すように、ノズル20から押し出されたインク91がノズル面17aに付着した状態となる。ストロングクリーニングではノーマルクリーニングよりもパージインク量が多いため、ノズル面17aに付着するインク量が多くなる。
図15に戻り、ステップS29に続いて、ステップS30において、制御部9は、ワイパ80によるワイプ動作を実行する。具体的には、制御部9は、ワイパモータ81を駆動させて、ワイパユニット77の前方への移動を開始させる。ここで、メンテナンス部8がクリーニング位置へ移動したとき、ワイパユニット77は、最も後方のヘッドモジュール17より後方の初期位置にある。
ワイパユニット77が前方へ移動し、ワイパ80がヘッドモジュール17に接触すると、ワイパ80はヘッドモジュール17に押圧されて弾性変形する。この状態でさらにワイパユニット77が前方へ移動すると、図18に示すように、ワイパ80の上端部がノズル面17aを摺動(ワイプ)する。これにより、ノズル面17aに付着したインク91とともに、ノズル面17a上の紙粉等が除去される。ワイパ80が最も前方のヘッドモジュール17より前方まで移動すると、制御部9は、ワイパモータ81を停止させる。これにより、ワイパユニット77が停止する。これにより、ワイプ動作が終了となる。
ここで、ストロングクリーニングではノーマルクリーニングよりもノズル面17aに付着しているインク量が多いため、ワイプ動作時にワイパ80に付着する紙粉等がインクとともに流れ落ちやすくなる。
図15に戻り、ステップS30に続いて、ステップS31において、制御部9は、インクジェットヘッド4A,4Bにフラッシング動作を行わせる。具体的には、制御部9は、各ヘッドモジュール17のピエゾ素子を駆動させて各ノズル20からインクを吐出させる。これにより、ワイプ動作の際にノズル20内に、隣接するノズル列19のノズル20に対応する他色のインクが進入して混色が生じた場合でも、その混色を解消できる。
次いで、ステップS32において、制御部9は、クリーニング動作後に印刷ジョブを再開するか否かを判断する。
印刷ジョブを再開すると判断した場合(ステップS32:YES)、ステップS33において、制御部9は、メンテナンス部8を退避位置へ移動させるとともに、ベルトプラテン部3を印刷位置へ移動させる。具体的には、制御部9は、まず、ベルトプラテン部3を下降させて、ベルトプラテン部3およびメンテナンス部8をクリーニング位置から待機位置へ移動させる。また、制御部9は、ワイパモータ81を駆動させて、ワイパユニット77を初期位置へ移動させる。次いで、制御部9は、メンテナンス部8を待機位置から退避位置へ移動させる。そして、制御部9は、ベルトプラテン部3を上昇させて待機位置から印刷位置へ移動させる。これにより、クリーニング動作が終了となる。
印刷ジョブの再開はないと判断した場合(ステップS32:NO)、ステップS34において、制御部9は、ベルトプラテン部3を下降させて、ベルトプラテン部3およびメンテナンス部8をクリーニング位置から待機位置へ移動させる。また、制御部9は、ワイパモータ81を駆動させて、ワイパユニット77を初期位置へ移動させる。これにより、クリーニング動作が終了となる。
以上説明したように、インクジェット印刷装置1では、制御部9は、クリーニング動作間に行われた印刷動作で使用された用紙種類に基づき、クリーニング動作時のパージインク量を調整する。具体的には、制御部9は、前回のクリーニング動作以降の印刷動作において、使用された用紙種類のなかに、紙粉が発生しやすい用紙種類であるとして予め指定された用紙種類が含まれている場合、ストロングクリーニングを実行する。その他の場合、制御部9は、ノーマルクリーニングを実行する。
ストロングクリーニングはノーマルクリーニングよりもパージインク量が多く、ノズル面17aに付着するインク量が多いため、ワイプ動作時にワイパ80に付着する紙粉等がインクとともに流れ落ちやすくなる。このため、紙粉が発生しやすい用紙種類を用いた印刷動作によりノズル面17aに多くの紙粉が付着している場合のクリーニング動作後にワイパ80に残存する紙粉を低減できる。これにより、クリーニング動作時にワイパ80に残存している紙粉によるノズル面17aの損傷を低減できる。
なお、上述した実施の形態では、パージインク量を2段階で調整したが、印刷動作で使用された用紙種類に応じてパージインク量を3段階以上で調整するようにしてもよい。
また、印刷動作で使用された用紙種類ごとの印刷枚数に基づき、パージインク量を調整するようにしてもよい。
また、上述した実施の形態では、印刷媒体として用紙を用いたが、印刷媒体は用紙に限らない。用紙以外の印刷媒体でも、種類によって塵埃の発生度合いが異なるため、クリーニング動作間の印刷動作で使用された印刷媒体の種類に基づき、クリーニング動作時のパージインク量を調整するようにすればよい。
本発明は上記実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施の形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施の形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。