以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。各図面を通じて同一もしくは同等の部位や構成要素には、同一もしくは同等の符号を付している。
以下に示す実施の形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置等を例示するものであって、この発明の技術的思想は、各構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。この発明の技術的思想は、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。
図1は、本発明の実施の形態に係るインクジェット印刷装置の構成を示すブロック図である。図2は、図1に示すインクジェット印刷装置の搬送部およびインクジェットヘッドの概略構成図である。図3は、図1に示すインクジェット印刷装置の搬送部およびインクジェットヘッドの平面図である。図4は、図1に示すインクジェット印刷装置の印刷部および圧力生成部の概略構成図である。なお、以下の説明において、図2の紙面に直交する方向を前後方向とし、紙面表方向を前方とする。また、図2における紙面の上下左右を上下左右方向とする。
図1に示すように、本実施の形態に係るインクジェット印刷装置1は、搬送部2と、印刷部3A〜3Dと、圧力生成部4と、制御部5とを備える。なお、以下の説明において、印刷部3A〜3D等の符号におけるアルファベットの添え字を省略して総括的に表記することがある。
搬送部2は、印刷媒体である用紙Pを搬送する。図2に示すように、搬送部2は、搬送ベルト11と、駆動ローラ12と、従動ローラ13〜15と、搬送モータ16と、吸着ファン17とを備える。
搬送ベルト11は、図示しない給紙部から給紙された用紙Pを吸着保持して搬送する。搬送ベルト11は、駆動ローラ12および従動ローラ13〜15に掛け渡される環状のベルトである。搬送ベルト11には、エア吸引用の貫通穴である多数のベルト穴(図示せず)が形成されている。搬送ベルト11は、吸着ファン17の駆動によりベルト穴に発生する吸着力により用紙Pを吸着保持する。搬送ベルト11は、図2における時計回り方向に回転することで、吸着保持した用紙Pを左から右へ向かう搬送方向に搬送する。
駆動ローラ12は、搬送ベルト11を図2における時計回り方向に回転させる。
従動ローラ13〜15は、駆動ローラ12とともに搬送ベルト11を支持する。従動ローラ13〜15は、回転する搬送ベルト11に従動回転する。従動ローラ13は、駆動ローラ12と同じ高さで、駆動ローラ12の左方に配置されている。従動ローラ14,15は、駆動ローラ12および従動ローラ13の下方において、互いに左右方向に離間して、同じ高さに配置されている。
搬送モータ16は、駆動ローラ12を回転駆動させる。
吸着ファン17は、下方向への気流を生じさせる。これにより、吸着ファン17は、搬送ベルト11のベルト穴を介して空気を吸引してベルト穴に負圧を発生させ、用紙Pを搬送ベルト11上に吸着させる。吸着ファン17は、環状の搬送ベルト11に囲まれた領域に配置されている。
印刷部3A〜3Dは、インクを循環させつつ、搬送部2により搬送される用紙Pにインクを吐出して画像を印刷する。印刷部3A〜3Dは、それぞれ異なる種類(例えば、異なる色)のインクを吐出する。印刷部3A〜3Dは、吐出するインクが異なる以外は、同じ構成を有する。
図4に示すように、印刷部3は、インクジェットヘッド21と、インク循環部22と、温度調整部23と、循環インク温度検出部24と、ヘッドモジュール温度検出部25と、インク補給部26とを備える。
インクジェットヘッド21は、インク循環部22により供給されるインクを吐出する。印刷部3A〜3Dに1つずつ備えられた4つのインクジェットヘッド21は、図2、図3に示すように、搬送部2の上方において、用紙Pの搬送方向である副走査方向(左右方向)に並列して配置されている。
インクジェットヘッド21は、6個のヘッドモジュール27(ヘッドモジュール27A〜27F)を備える。ヘッドモジュール27A〜27Fは、インク循環部22において後述する循環経路31に沿って循環されるインクを用紙Pへ吐出して画像を印刷する。
図3に示すように、ヘッドモジュール27A〜27Fは、副走査方向に直交する主走査方向(前後方向)に沿って千鳥状に配置されている。すなわち、インクジェットヘッド21において、主走査方向に沿って配置されたヘッドモジュール27A〜27Fが、副走査方向における位置を交互にずらして配置されている。ヘッドモジュール27A〜27Fは、後述する循環経路31の分配器37および集合器38に接続されている。
ヘッドモジュール27は、主走査方向に沿って配置された複数のノズル(図示せず)を有し、ノズルからインクを吐出する。
ヘッドモジュール27は、シェアモード方式の吐出ヘッドである。ヘッドモジュール27は、インク循環部22により供給されるインクを貯留するインクチャンバ(図示せず)を有する。このインクチャンバ内には、各ノズルに連通する複数の圧力室(図示せず)が設けられている。この圧力室は、隣接する圧力室との間の隔壁が、分極方向が相反する2つの圧電部材(図示せず)により形成されている。圧力室間の隔壁には、電極(図示せず)が密着形成されている。この電極に駆動電圧が印加されることで、隔壁がせん断変形し、圧力室の容積および圧力室内の圧力が変化する。これにより、ノズルから圧力室内のインクが吐出される。
インク循環部22は、インクを循環させつつインクジェットヘッド21にインクを供給する。インク循環部22は、循環経路31と、インクポンプ32とを備える。
循環経路31は、インクジェットヘッド21による印刷に使用されるインクが循環される経路を形成する。循環経路31は、加圧タンク36と、分配器37と、集合器38と、負圧タンク39と、インク循環管40〜42とを備える。
加圧タンク36は、インクジェットヘッド21に供給するインクを貯留する。加圧タンク36のインクは、インク循環管40および分配器37を介してインクジェットヘッド21に供給される。加圧タンク36内には、インク液面上に空気層46が形成されている。加圧タンク36は、後述の加圧側連通管72を介して、後述の加圧共通気室71に連通されている。加圧タンク36は、インクジェットヘッド21より低い位置(下方)に配置されている。
加圧タンク36には、加圧タンク液面センサ47と、インクフィルタ48とが設けられている。
加圧タンク液面センサ47は、加圧タンク36内のインク液面の高さが所定の基準高さに達しているか否かを検出するためのものである。加圧タンク液面センサ47は、加圧タンク36内のインク液面の高さが基準高さ以上である場合、「オン」を示す信号を出力する。また、加圧タンク液面センサ47は、加圧タンク36内のインク液面の高さが基準高さ未満である場合、「オフ」を示す信号を出力する。
インクフィルタ48は、インク内のゴミ等を除去する。
分配器37は、インク循環管40を介して加圧タンク36から供給されるインクを、インクジェットヘッド21のヘッドモジュール27A〜27Fに分配する。
集合器38は、インクジェットヘッド21で消費されなかったインクをヘッドモジュール27A〜27Fから集める。集合器38により集められたインクは、インク循環管41を介して負圧タンク39へと流れる。
負圧タンク39は、インクジェットヘッド21で消費されなかったインクを集合器38から受け取って貯留する。また、負圧タンク39は、後述するインク補給部26により補給されるインクを貯留する。負圧タンク39内には、インク液面上に空気層51が形成されている。負圧タンク39は、後述の負圧側連通管79を介して、後述の負圧共通気室78に連通されている。負圧タンク39は、加圧タンク36と同じ高さに配置されている。
負圧タンク39には、負圧タンク液面センサ52が設けられている。負圧タンク液面センサ52は、負圧タンク39内のインク液面の高さが所定の基準高さに達しているか否かを検出するためのものである。負圧タンク液面センサ52は、負圧タンク39内のインク液面の高さが基準高さ以上である場合、「オン」を示す信号を出力する。また、負圧タンク液面センサ52は、負圧タンク39内のインク液面の高さが基準高さ未満である場合、「オフ」を示す信号を出力する。
インク循環管40は、加圧タンク36と分配器37とを接続する。インク循環管40の一部は、後述のヒータ56を経由する部分と後述のヒートシンク58を経由する部分とに分岐している。インク循環管40には、加圧タンク36から分配器37に向かってインクが流れる。インク循環管41は、集合器38と負圧タンク39とを接続する。インク循環管41には、集合器38から負圧タンク39に向かってインクが流れる。インク循環管42は、負圧タンク39と加圧タンク36とを接続する。インク循環管42には、負圧タンク39から加圧タンク36に向かってインクが流れる。
インクポンプ32は、インク循環部22におけるインク循環のために、負圧タンク39から加圧タンク36へインクを送液する。インクポンプ32は、インク循環管42の途中に設けられている。
温度調整部23は、循環経路31のインクの温度を調整する。温度調整部23は、インク循環管40に設置されている。温度調整部23は、ヒータ56と、ヒータ温度センサ57と、ヒートシンク58と、冷却ファン59とを備える。
ヒータ56は、インク循環管40内のインクを加熱する。ヒータ温度センサ57は、ヒータ56の温度を検出する。ヒートシンク58は、放熱によりインク循環管40内のインクを冷却する。冷却ファン59は、ヒートシンク58に冷却風を送る。
循環インク温度検出部24は、循環経路31のインクの温度を検出する。循環インク温度検出部24は、循環経路31のインクの循環方向における温度調整部23の下流側近傍において、インク循環管40に設置されている。すなわち、循環インク温度検出部24は、循環経路31において、温度調整部23の下流側であって、インクジェットヘッド21の上流側となる位置に配置されている。
ヘッドモジュール温度検出部25は、各ヘッドモジュール27内のインクの温度を検出する。ヘッドモジュール温度検出部25は、インク温度センサ61A〜61Fを備える。インク温度センサ61A〜61Fは、それぞれヘッドモジュール27A〜27Fに設けられ、それぞれヘッドモジュール27A〜27Fの内部のインクの温度を検出する。
インク補給部26は、インク循環部22にインクを補給する。インク補給部26は、インクカートリッジ66と、インク補給弁67と、インク補給管68とを備える。
インクカートリッジ66は、インクジェットヘッド21による印刷に用いるインクを収容している。インクカートリッジ66内のインクは、インク補給管68を介して循環経路31の負圧タンク39に供給される。
インク補給弁67は、インク補給管68内のインクの流路を開閉する。負圧タンク39へインクを補給する際、インク補給弁67が開かれる。
インク補給管68は、インクカートリッジ66と負圧タンク39とを接続する。インク補給管68には、インクカートリッジ66から負圧タンク39に向かってインクが流れる。
圧力生成部4は、各印刷部3の加圧タンク36および負圧タンク39に、インクジェットヘッド21へインクを送液するための圧力を生成する。
圧力生成部4は、加圧共通気室71と、4本の加圧側連通管72と、加圧側大気開放弁73と、加圧側大気開放管74と、加圧側圧力調整弁75と、加圧側圧力調整管76と、加圧側圧力センサ77と、負圧共通気室78と、4本の負圧側連通管79と、負圧側大気開放弁80と、負圧側大気開放管81と、負圧側圧力調整弁82と、負圧側圧力調整管83と、負圧側圧力センサ84と、エアポンプ85と、エアポンプ用配管86と、合流管87と、エアフィルタ88と、オーバーフローパン89とを備える。
加圧共通気室71は、各印刷部3の加圧タンク36の圧力を等しくするための気室である。加圧共通気室71は、4本の加圧側連通管72を介して4つの印刷部3の加圧タンク36の空気層46と連通されている。これにより、各印刷部3の加圧タンク36どうしが、加圧共通気室71および加圧側連通管72を介して連通されている。
加圧側連通管72は、加圧共通気室71と加圧タンク36の空気層46とを連通させる。4本の加圧側連通管72は、各印刷部3に1本ずつ対応して設けられている。加圧側連通管72は、一端が加圧共通気室71に接続され、他端が加圧タンク36の空気層46に接続されている。
加圧側大気開放弁73は、加圧共通気室71を介して加圧タンク36を密閉状態と大気開放状態との間で切り替えるために、加圧側大気開放管74内の空気の流路を開閉する。加圧側大気開放弁73は、加圧側大気開放管74の途中に設けられている。
加圧側大気開放管74は、加圧共通気室71を介して加圧タンク36を大気開放するための空気の流路を形成する。加圧側大気開放管74は、一端が加圧共通気室71に接続され、他端が合流管87に接続されている。
加圧側圧力調整弁75は、加圧共通気室71および加圧タンク36の圧力を調整するために、加圧側圧力調整管76内の空気の流路を開閉する。加圧側圧力調整弁75は、加圧側圧力調整管76の途中に設けられている。
加圧側圧力調整管76は、加圧共通気室71および加圧タンク36の圧力調整のための空気の流路を形成する。加圧側圧力調整管76は、加圧側大気開放管74、負圧側大気開放管81、および合流管87より流路抵抗が大きいパイプからなる。具体的には、加圧側圧力調整管76は、加圧側大気開放管74、負圧側大気開放管81、および合流管87より細いパイプからなる。加圧側圧力調整管76は、一端が加圧共通気室71に接続され、他端が合流管87に接続されている。
加圧側圧力センサ77は、加圧共通気室71内の圧力を検出する。加圧共通気室71内の圧力は、各印刷部3の加圧タンク36内の圧力と等しい。加圧共通気室71と各印刷部3の加圧タンク36の空気層46とが連通されているためである。
負圧共通気室78は、各印刷部3の負圧タンク39の圧力を等しくするための気室である。負圧共通気室78は、4本の負圧側連通管79を介して4つの印刷部3の負圧タンク39の空気層51と連通されている。これにより、各印刷部3の負圧タンク39どうしが、負圧共通気室78および負圧側連通管79を介して連通されている。
負圧側連通管79は、負圧共通気室78と負圧タンク39の空気層51とを連通させる。4本の負圧側連通管79は、各印刷部3に1本ずつ対応して設けられている。負圧側連通管79は、一端が負圧共通気室78に接続され、他端が負圧タンク39の空気層51に接続されている。
負圧側大気開放弁80は、負圧共通気室78を介して負圧タンク39を密閉状態と大気開放状態との間で切り替えるために、負圧側大気開放管81内の空気の流路を開閉する。負圧側大気開放弁80は、負圧側大気開放管81の途中に設けられている。
負圧側大気開放管81は、負圧共通気室78を介して負圧タンク39を大気開放するための空気の流路を形成する。負圧側大気開放管81は、一端が負圧共通気室78に接続され、他端が合流管87に接続されている。
負圧側圧力調整弁82は、負圧共通気室78および負圧タンク39の圧力を調整するために、負圧側圧力調整管83内の空気の流路を開閉する。負圧側圧力調整弁82は、負圧側圧力調整管83の途中に設けられている。
負圧側圧力調整管83は、負圧共通気室78および負圧タンク39の圧力調整のための空気の流路を形成する。負圧側圧力調整管83は、加圧側大気開放管74、負圧側大気開放管81、および合流管87より流路抵抗が大きいパイプからなる。具体的には、負圧側圧力調整管83は、加圧側大気開放管74、負圧側大気開放管81、および合流管87より細いパイプからなる。負圧側圧力調整管83は、一端が負圧共通気室78に接続され、他端が合流管87に接続されている。
負圧側圧力センサ84は、負圧共通気室78内の圧力を検出する。負圧共通気室78内の圧力は、各印刷部3の負圧タンク39内の圧力と等しい。負圧共通気室78と各印刷部3の負圧タンク39の空気層51とが連通されているためである。
エアポンプ85は、負圧共通気室78を介して各印刷部3の負圧タンク39から空気を吸引するとともに、加圧共通気室71を介して各印刷部3の加圧タンク36へ空気を送る。エアポンプ85は、エアポンプ用配管86の途中に設けられている。
エアポンプ用配管86は、エアポンプ85により負圧共通気室78から加圧共通気室71へ送られる空気の流路を形成する。エアポンプ用配管86は、一端が加圧共通気室71に接続され、他端が負圧共通気室78に接続されている。
合流管87は、一端がオーバーフローパン89に接続され、他端(上端)がエアフィルタ88を介して大気に通じている。合流管87のオーバーフローパン89側の端は、通常時は、後述のオーバーフローボール91により閉鎖されている。合流管87には、加圧側大気開放管74、加圧側圧力調整管76、負圧側大気開放管81、および負圧側圧力調整管83が接続されている。これにより、加圧側大気開放管74、加圧側圧力調整管76、負圧側大気開放管81、および負圧側圧力調整管83が大気に連通される。
エアフィルタ88は、合流管87への空気中のゴミ等の進入を防止する。エアフィルタ88は、合流管87の上端に設置されている。
オーバーフローパン89は、例えばインク補給弁67の異常により、加圧タンク36、負圧タンク39からインクが溢れ、さらに加圧共通気室71、負圧共通気室78からもインクが溢れ出た場合に、合流管87を流れてくるインクを受け取る。
オーバーフローパン89には、オーバーフローボール91が設けられている。オーバーフローボール91は、オーバーフローパン89にインクがない場合に、オーバーフローパン89の底面に開口する合流管87の端を閉鎖し、合流管87への外部の空気の流入を防ぐものである。合流管87からオーバーフローパン89へインクが流れてくると、オーバーフローボール91は浮き上がり、オーバーフローパン89にインクが流入できる。
また、オーバーフローパン89には、オーバーフロー液面センサ92が設けられている。オーバーフロー液面センサ92は、オーバーフローパン89内のインク液面の高さが所定高さに達しているか否かを検出するためのものである。
オーバーフローパン89は、廃液タンク(図示せず)に接続されており、オーバーフロー液面センサ92がオンになると、廃液タンクへインクが排出されるようになっている。
制御部5は、インクジェット印刷装置1の各部の動作を制御する。制御部5は、CPU、RAM、ROM、ハードディスク等を備えて構成される。
制御部5は、印刷時において、インク循環部22において循環経路31に沿ってインクを循環させつつ、インクジェットヘッド21から用紙Pへインクを吐出して画像を印刷するよう印刷部3および圧力生成部4を制御する。
制御部5は、印刷開始する際、印刷対象の画像データに基づく印刷に使用する印刷部3において、循環経路31のインクの温度および各ヘッドモジュール27内のインクの温度のうちの少なくともいずれかが適正温度範囲外である場合、当該印刷部3におけるウォームアップを開始させる。そして、制御部5は、印刷に使用する各印刷部3における循環経路31のインクの温度および使用ヘッドモジュール内のインクの温度が適正温度範囲内の状態になると、使用ヘッドモジュール以外のヘッドモジュール27内のインクの温度に関わらず、印刷に使用する各印刷部3の使用ヘッドモジュールによる印刷を開始させる。
ここで、ウォームアップは、インク循環部22において循環経路31に沿ってインクを循環させるとともに循環経路31のインクの温度および各ヘッドモジュール27内のインクの温度を適正温度範囲内とするための温度調整部23によるインクの温度の調整を行う動作である。
また、使用ヘッドモジュールは、印刷対象の画像データに基づく印刷においてインク吐出を行うヘッドモジュール27である。
また、インクの適正温度範囲は、インクが適度の粘度を有し、インクジェットヘッド21での正常なインク吐出が保障できる温度範囲として予め定められたものである。インクの適正温度範囲は、インクの物性等によって異なることがある。すなわち、インクの種類が異なると、適正温度範囲が異なることがある。したがって、印刷部3ごとに、インクの適正温度範囲が異なる場合がある。
次に、インクジェット印刷装置1の動作について説明する。
図5は、インクジェット印刷装置1の動作を説明するためのフローチャートである。図5のフローチャートの処理は、インクジェット印刷装置1が、パーソナルコンピュータ等の外部装置からの印刷ジョブを受信することで印刷開始指示を受けたことにより開始となる。
図5のステップS1において、制御部5は、ウォームアップなしで印刷開始可能であるか否かを判断する。
具体的には、制御部5は、印刷ジョブに含まれる圧縮された画像データを伸張する。これにより、印刷に使用するインクごとの、印刷対象の画像データが得られる。制御部5は、どのインクに対応する画像データが得られたかにより、印刷に使用する印刷部3を判断する。印刷対象の画像データは、画素ごとのインクのドロップ数を示すデータである。
次いで、制御部5は、印刷に使用する各印刷部3における循環経路31のインクの温度を循環インク温度検出部24から取得する。また、制御部5は、印刷に使用する各印刷部3におけるヘッドモジュール27A〜27F内のインクの温度をインク温度センサ61A〜61Fから取得する。
そして、制御部5は、印刷に使用するすべての印刷部3において、循環経路31のインクの温度が適正温度範囲内であり、かつ、すべてのヘッドモジュール27内のインクの温度が適正温度範囲内である場合、ウォームアップなしで印刷開始可能であると判断する。
ウォームアップなしで印刷開始可能であると判断した場合(ステップS1:YES)、ステップS2において、制御部5は、各印刷部3におけるインク循環を開始させる。
具体的には、まず、制御部5は、各印刷部3における液面維持制御を開始する。液面維持制御は、加圧タンク36および負圧タンク39の液面を基準高さ付近に維持するための、加圧タンク36および負圧タンク39の液面高さに応じたインクポンプ32およびインク補給弁67の制御である。
具体的には、図6に示すように、加圧タンク液面センサ47および負圧タンク液面センサ52がともにオンの状態では、制御部5は、インクポンプ32をオフとし、インク補給弁67を閉鎖する。加圧タンク液面センサ47がオンで負圧タンク液面センサ52がオフの状態でも同様に、制御部5は、インクポンプ32をオフとし、インク補給弁67を閉鎖する。
加圧タンク液面センサ47がオフで負圧タンク液面センサ52がオンの状態では、制御部5は、インクポンプ32をオンとし、インク補給弁67を閉鎖する。
加圧タンク液面センサ47および負圧タンク液面センサ52がともにオフの状態では、制御部5は、インクポンプ32をオフとし、インク補給弁67を開放する。
また、制御部5は、加圧側大気開放弁73および負圧側大気開放弁80を閉鎖する。これにより、各印刷部3の加圧タンク36が加圧共通気室71等を介して密閉状態となり、各印刷部3の負圧タンク39が負圧共通気室78等を介して密閉状態となる。
ここで、インクジェット印刷装置1に印刷ジョブが入力される前の待機中は、加圧側大気開放弁73および負圧側大気開放弁80は開放され、加圧側圧力調整弁75および負圧側圧力調整弁82は閉鎖されている。また、インク補給弁67は閉鎖されている。なお、加圧側大気開放弁73および負圧側大気開放弁80の閉鎖後に液面維持制御開始としてもよい。
次いで、制御部5は、圧力制御を開始する。圧力制御は、インク循環のために加圧タンク36および負圧タンク39にそれぞれの設定圧Pks,Pfsを生成し、それらを維持するための、エアポンプ85、加圧側圧力調整弁75、および負圧側圧力調整弁82の制御である。ここで、設定圧Pks,Pfsは、インクを所定の流量で循環させつつインクジェットヘッド21のノズル圧を適正値にするための圧力値として予め設定されたものである。加圧タンク36の設定圧Pksは正圧であり、負圧タンク39の設定圧Pfsは負圧である。
圧力制御におけるエアポンプ85、加圧側圧力調整弁75、および負圧側圧力調整弁82の制御は、加圧側圧力センサ77の検出値Pkおよび負圧側圧力センサ84の検出値Pfに応じて行われる。
具体的には、図7に示すように、Pk<Pksかつ|Pf|<|Pfs|の場合、制御部5は、加圧側圧力調整弁75および負圧側圧力調整弁82を閉鎖し、エアポンプ85をオンとする。これにより、ともに密閉状態の負圧タンク39から加圧タンク36へエアポンプ85により空気が送られることで、負圧タンク39の圧力が低下し、加圧タンク36の圧力が上昇する。
Pk≧Pksかつ|Pf|<|Pfs|の場合、制御部5は、加圧側圧力調整弁75を開放し、負圧側圧力調整弁82を閉鎖する。また、制御部5は、エアポンプ85をオンとする。これにより、加圧側圧力調整管76を介して加圧タンク36から空気が流出することで、加圧タンク36の圧力が低下する。また、密閉状態の負圧タンク39からエアポンプ85により空気が吸引されることで、負圧タンク39の圧力が低下する。
Pk<Pksかつ|Pf|≧|Pfs|の場合、制御部5は、加圧側圧力調整弁75を閉鎖し、負圧側圧力調整弁82を開放する。また、制御部5は、エアポンプ85をオンとする。これにより、密閉状態の加圧タンク36にエアポンプ85により空気が送られることで、加圧タンク36の圧力が上昇する。また、負圧側圧力調整管83を介して負圧タンク39に空気が流入することで、負圧タンク39の圧力が上昇する。
Pk≧Pksかつ|Pf|≧|Pfs|の場合、制御部5は、加圧側圧力調整弁75および負圧側圧力調整弁82を開放し、エアポンプ85をオフとする。これにより、加圧側圧力調整管76を介して加圧タンク36から空気が流出することで、加圧タンク36の圧力が低下する。また、負圧側圧力調整管83を介して負圧タンク39に空気が流入することで、負圧タンク39の圧力が上昇する。
ここで、圧力制御の開始時は、加圧タンク36および負圧タンク39の圧力は大気圧である。このため、Pk<Pksかつ|Pf|<|Pfs|になっている。したがって、制御部5は、圧力制御を開始すると、エアポンプ85の駆動を開始させる。エアポンプ85の駆動により、負圧共通気室78から加圧共通気室71へ空気が送られる。これにより、負圧共通気室78および負圧タンク39が減圧され、加圧共通気室71および加圧タンク36が加圧されることで、加圧タンク36からインクジェットヘッド21を介して負圧タンク39へインクが流れ始める。
圧力生成により加圧タンク36から負圧タンク39へインクが流れることで、加圧タンク液面センサ47がオフで負圧タンク液面センサ52がオンの状態になると、前述の液面維持制御により、インクポンプ32が負圧タンク39から加圧タンク36へインクを送る。このようにして、印刷部3において、循環経路31に沿ってインクが循環する。
インク循環開始後、加圧タンク36および負圧タンク39にそれぞれの設定圧Pks,Pfsが生成されると、図5のステップS3において、制御部5は、画像データに基づく印刷を開始させる。
具体的には、制御部5は、印刷対象の画像データに基づき、印刷に使用する各印刷部3のインクジェットヘッド21を制御して、搬送部2により搬送される用紙Pへインクを吐出させて画像を印刷させる。
なお、印刷に使用する印刷部3以外の印刷部3においては、インク循環は行われるが、インクジェットヘッド21からのインク吐出は行われない。
印刷中において、印刷部3では、加圧タンク液面センサ47および負圧タンク液面センサ52がともにオフになると、液面維持制御により、インク補給弁67が開放され、負圧タンク39にインクが補給される。
また、印刷中において、制御部5は、印刷に使用されている印刷部3の循環経路31のインクの温度および各ヘッドモジュール27内のインクの温度を適正温度範囲内に維持するように、温度調整部23を制御してインク温度の調整を行う。
印刷開始後、ステップS4において、制御部5は、画像データに基づく印刷が終了したか否かを判断する。印刷が終了していないと判断した場合(ステップS4:NO)、制御部5は、ステップS4を繰り返す。
画像データに基づく印刷が終了したと判断した場合(ステップS4:YES)、ステップS5において、制御部5は、各印刷部3におけるインク循環を終了させる。
具体的には、まず、制御部5は、圧力制御を終了する。ここで、エアポンプ85が駆動中の場合、制御部5は、それを停止させる。また、加圧側圧力調整弁75および負圧側圧力調整弁82の少なくともいずれかが開放されている場合、制御部5は、開放されているものを閉鎖する。
次いで、制御部5は、加圧側大気開放弁73および負圧側大気開放弁80を開放する。これにより、加圧タンク36が加圧共通気室71を介して大気開放され、負圧タンク39が負圧共通気室78を介して大気開放される。
そして、制御部5は、各印刷部3における液面維持制御を終了する。これにより、インク循環が終了し、一連の動作が終了となる。
ステップS1において、ウォームアップなしで印刷開始可能ではないと判断した場合(ステップS1:NO)、ステップS6において、制御部5は、ウォームアップ対象の印刷部3におけるウォームアップを開始させる。
ここで、制御部5は、印刷に使用する印刷部3のなかに、ウォームアップ対象の印刷部3が含まれている場合、ウォームアップなしで印刷開始可能ではないと判断する。ウォームアップ対象の印刷部3は、循環経路31のインクの温度および各ヘッドモジュール27内のインクの温度のうちの少なくともいずれかが適正温度範囲外である印刷部3である。
印刷部3のウォームアップについて、図8のフローチャートを参照して説明する。図8のフローチャートの処理は、ウォームアップ対象の各印刷部3を処理対象として、処理対象の印刷部3ごとに行われるものである。
図8のステップS11において、制御部5は、循環経路31に沿ったインク循環を開始させる。ここで、インク循環は、前述した図5のステップS2と同様の制御により開始される。前述のように、インク循環は、印刷に使用する印刷部3以外も含めたすべての印刷部3において行われる。
また、制御部5は、ステップS11において、インク循環の開始とともに、温度調整部23によるインクの温度調整を開始させる。例えば、循環経路31および各ヘッドモジュール27内のインクの温度が適正温度範囲の下限温度未満の場合、制御部5は、温度調整部23のヒータ56を駆動させてインクの温度を上昇させる調整を行う。また、例えば、循環経路31および各ヘッドモジュール27内のインクの温度が適正温度範囲の上限温度より高い場合、制御部5は、温度調整部23の冷却ファン59を駆動させてインクの温度を下降させる調整を行う。
次いで、ステップS12において、制御部5は、内部のインクの温度が適正温度範囲の下限温度未満の使用ヘッドモジュールがあるか否かを判断する。
具体的には、まず、制御部5は、処理対象の印刷部3に対応する印刷対象の画像データに基づき、当該印刷部3のインクジェットヘッド21においてインク吐出を行うヘッドモジュール27を、使用ヘッドモジュールとして特定する。
例えば、図9に示すように、印刷対象の画像データに基づく印刷画像Gが、ヘッドモジュール27C,27Dによる印刷対象領域内に収まる場合、印刷画像Gの印刷のためにインク吐出を行うのはヘッドモジュール27C,27Dのみである。このため、この場合、ヘッドモジュール27C,27Dが使用ヘッドモジュールとして特定される。
また、例えば、図10に示すように、印刷対象の画像データに基づく印刷画像Gが、ヘッドモジュール27Aによる印刷対象領域内に収まる場合、印刷画像Gの印刷のためにインク吐出を行うのはヘッドモジュール27Aのみである。このため、この場合、ヘッドモジュール27Aが使用ヘッドモジュールとして特定される。
なお、図9、図10では、説明の便宜のため1つのインクジェットヘッド21のみを示しており、図9、図10の印刷画像Gは、当該インクジェットヘッド21による印刷対象の画像データに基づく印刷画像を示すものである。
使用ヘッドモジュールを特定すると、制御部5は、各使用ヘッドモジュールに対応するインク温度センサ61から各使用ヘッドモジュール内のインクの温度を取得する。
そして、制御部5は、取得した各使用ヘッドモジュール内のインクの温度に基づき、内部のインクの温度が適正温度範囲の下限温度未満の使用ヘッドモジュールがあるか否かを判断する。
内部のインクの温度が適正温度範囲の下限温度未満の使用ヘッドモジュールがあると判断した場合(ステップS12:YES)、ステップS13において、制御部5は、当該使用ヘッドモジュールにおけるプリカーサ(非吐出駆動)を開始させる。
プリカーサは、インクを吐出しない程度にヘッドモジュール27内の圧力室間の隔壁を駆動させるものである。プリカーサでは、インクは吐出されないが、ヘッドモジュール27は発熱し、内部のインクが加温される。
ステップS13において、内部のインクの温度が適正温度範囲の下限温度未満の使用ヘッドモジュールにおけるプリカーサを開始した後、制御部5は、ステップS14に進む。また、ステップS12において、内部のインクの温度が適正温度範囲の下限温度未満の使用ヘッドモジュールはないと判断した場合(ステップS12:NO)、制御部5は、ステップS13を省略して、ステップS14に進む。
ステップS14では、制御部5は、循環経路31のインクの温度および各使用ヘッドモジュール内のインクの温度が適正温度範囲内であるか否かを判断する。循環経路31のインクの温度および各使用ヘッドモジュール内のインクの温度のうちの少なくともいずれかが適正温度範囲外であると判断した場合(ステップS14:NO)、制御部5は、ステップS14を繰り返す。
循環経路31のインクの温度および各使用ヘッドモジュール内のインクの温度が適正温度範囲内であると判断した場合(ステップS14:YES)、制御部5は、処理対象の印刷部3におけるウォームアップを終了させる。具体的には、制御部5は、温度調整部23を停止させる。また、プリカーサを行っている場合は、制御部5は、プリカーサを終了させる。なお、インク循環は継続される。
図5に戻り、ステップS6でウォームアップ対象の各印刷部3のウォームアップを開始した後、ステップS7において、制御部5は、ウォームアップ対象のすべての印刷部3のウォームアップが終了したか否かを判断する。ウォームアップが終了していない印刷部3があると判断した場合(ステップS7:NO)、制御部5は、ステップS7を繰り返す。
ウォームアップ対象のすべての印刷部3のウォームアップが終了したと判断した場合(ステップS7:YES)、制御部5は、ステップS3に進み、ウォームアップ対象外の印刷部3を含む、印刷に使用する各印刷部3による、画像データに基づく印刷を開始させる。
ここで、ヘッドモジュール27A〜27Fは、その位置によって、温度調整部23による温度調整のしやすさが異なる。
例えば、図11は、各印刷部3においてインクの温度が適正温度範囲内の温度Taとなるように温度調整部23のヒータ56により温めたときの、ヘッドモジュール27A〜27F内のインクの温度の検出値の一例を示す図である。図11から分かるように、ヘッドモジュール27Aからヘッドモジュール27Fへ向かうほど、内部のインクが温まりにくい傾向がある。
すなわち、循環経路31上において温度調整部23から下流側に遠い位置に接続されているヘッドモジュール27ほど、温度調整部23による温度調整に長時間を要する傾向がある。
このため、使用ヘッドモジュール以外のヘッドモジュール27のなかに、内部のインクの温度が適正温度範囲内に達してないものがあっても、各使用ヘッドモジュール内のインクの温度は適正温度範囲内に達している状態になる可能性がある。
例えば、図9の例において、ヘッドモジュール27E,27F内のインクの温度はまだ適正温度範囲内に達していなくても、使用ヘッドモジュールであるヘッドモジュール27C,27D内のインクの温度は適正温度範囲内に達している状態になる可能性がある。また、例えば、図10の例において、ヘッドモジュール27B〜27F内のインクの温度はまだ適正温度範囲内に達していなくても、使用ヘッドモジュールであるヘッドモジュール27A内のインクの温度は適正温度範囲内に達している状態になる可能性がある。
そこで、制御部5は、内部のインクの温度が適正温度範囲内に達していないヘッドモジュール27があっても、循環経路31のインクの温度および各使用ヘッドモジュール内のインクの温度が適正温度範囲内に達していれば、印刷を開始させる。換言すれば、制御部5は、循環経路31のインクの温度および各使用ヘッドモジュール内のインクの温度が適正温度範囲内の状態になると、ヘッドモジュール27内のインクの温度に関わらず、ウォームアップを終了して印刷を開始させる。これにより、ウォームアップ時間が短縮される。
ところで、インクジェット印刷装置1において、印刷ジョブの受信後、当該印刷ジョブに基づく印刷終了前に、次の印刷ジョブを受信することがある。
この場合、制御部5は、今回の印刷ジョブに基づく印刷開始前のウォームアップ時または印刷時において、次の印刷ジョブを処理して、当該印刷ジョブから得られる印刷対象の画像データに基づく印刷時の使用ヘッドモジュールを特定する。
次いで、制御部5は、今回の印刷ジョブにおいて使用している印刷部3の使用ヘッドモジュール以外のヘッドモジュール27であって、次の印刷ジョブによる印刷時の使用ヘッドモジュールであるヘッドモジュール27内のインクの温度を取得する。
そして、次の印刷ジョブによる印刷時の使用ヘッドモジュールに、内部のインクの温度が適正温度範囲の下限温度未満であるヘッドモジュール27がある場合、制御部5は、今回の印刷ジョブに基づく印刷開始前のウォームアップ時または印刷時において、当該ヘッドモジュール27でプリカーサを行って、その内部のインクに加温するよう制御する。
このように、次の印刷ジョブによる印刷時の使用ヘッドモジュールに対してプリカーサによる予備の加温を行っておくことで、次の印刷ジョブによる印刷を開始する際のウォームアップ時間を短縮またはウォームアップを省略できる可能性を高めることができる。
以上説明したように、インクジェット印刷装置1では、制御部5は、印刷に使用する各印刷部3においてウォームアップを開始させてから、印刷に使用する各印刷部3における循環経路31のインクの温度、および使用ヘッドモジュール内のインクの温度が適正温度範囲内の状態になると、他のヘッドモジュール27内のインクの温度に関わらず、使用ヘッドモジュールによる印刷を開始させる。これにより、使用ヘッドモジュール以外のヘッドモジュール27を含むすべてのヘッドモジュール27内のインクの温度が適正範囲内になるまで待つことなく印刷を開始することができる。このため、インクジェット印刷装置1によれば、印刷開始前のウォームアップ時間を短縮できる。
また、上述のように、印刷に使用する各印刷部3における循環経路31のインクの温度、および使用ヘッドモジュール内のインクの温度が適正温度範囲内の状態になると印刷を開始させるので、印刷に使用しない印刷部3のインクの温度に関わらず印刷を開始できる。このため、印刷開始前のウォームアップ時間をより短縮することが可能になる。
例えば、印刷部3A〜3Dのなかに、適正温度範囲が他の印刷部3のインクより高温の範囲のインクを用いる印刷部3が含まれている場合において、インクが低温になりやすい環境下では、当該印刷部3は他の印刷部3よりもウォームアップに長時間を要する可能性が高くなる。このような場合でも、当該印刷部3を印刷に使用しない場合には、上述のように、当該印刷部3のインクの温度に関わらず印刷を開始できるので、印刷開始前のウォームアップ時間を短縮することが可能になる。
また、例えば、各印刷部3のインクジェットヘッド21の周囲の部材の配置等の影響により、印刷部3ごとにインクの温度に差が生じる場合がある。例えば、図11の例では、印刷部3Dにおいて、ヘッドモジュール27内のインクの温度が、他の印刷部3に比べて低くなりやすい傾向がある。このため、印刷部3A〜3Dで使用するインクの適正温度範囲が同じでも、印刷部3A〜3Dのなかに、他の印刷部3よりウォームアップ時間が長くなりやすい印刷部3が含まれることがある。このような場合でも、ウォームアップ時間が長くなりやすい印刷部3を印刷に使用しない場合には、上述のように、当該印刷部3のインクの温度に関わらず印刷を開始できるので、印刷開始前のウォームアップ時間を短縮することが可能になる。
また、インクジェット印刷装置1では、制御部5は、印刷部3のウォームアップ時において、内部のインクの温度が適正温度範囲の下限温度未満である使用ヘッドモジュールがある場合、プリカーサにより当該使用ヘッドモジュール内のインクに加温するよう制御する。これにより、使用ヘッドモジュール内のインクの温度が適正温度範囲内に到達するまでの時間を短縮できる。この結果、印刷開始前のウォームアップ時間をより短縮できる。
また、インクジェット印刷装置1では、制御部5は、印刷部3におけるウォームアップ時または印刷時において、今回の印刷対象の画像データに基づく印刷においてインク吐出を行わず、次の印刷対象の画像データに基づく印刷においてインク吐出を行うヘッドモジュール27であって、内部のインクの温度が適正温度範囲の下限温度未満であるヘッドモジュール27を、プリカーサにより当該ヘッドモジュール内のインクに加温するよう制御する。これにより、次の印刷ジョブによる印刷時の使用ヘッドモジュールに対してプリカーサによる予備の加温を行っておくことで、次の印刷ジョブによる印刷を開始する際のウォームアップ時間を短縮またはウォームアップを省略できる可能性を高めることができる。
なお、上述した実施の形態では、印刷部3を4つ備える構成で説明したが、印刷部3の数はこれに限らない。印刷部3の数は1つでもよいし、4つ以外の複数でもよい。また、上述した実施の形態では、インクジェットヘッド21が6個のヘッドモジュール27を備える構成で説明したが、インクジェットヘッド21が備えるヘッドモジュール27の数はこれに限らず、複数であればよい。
また、印刷部3のウォームアップ時における使用ヘッドモジュールのプリカーサを省略してもよい。また、次の印刷ジョブによる印刷時の使用ヘッドモジュールに対するプリカーサによる予備の加温を省略してもよい。
また、上述した実施の形態では、印刷対象の画像データが、外部装置から受信した印刷ジョブから得られる画像データである場合について説明した。しかし、印刷対象の画像データはこれに限らず、例えば、インクジェット印刷装置1に登録されて制御部5に記憶された画像データであってもよい。
また、上述した実施の形態では、ヘッドモジュール27がシェアモード方式である場合で説明したが、静電方式や、膜沸騰インクジェット方式等でもよい。
本発明は上記実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施の形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施の形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。
[付記]
本出願は、以下の発明を開示する。
(付記1)
循環経路に沿ってインクを循環させるインク循環部、前記循環経路に沿って循環されるインクを印刷媒体へ吐出して画像を印刷する複数のヘッドモジュールを有するインクジェットヘッド、前記循環経路のインクの温度を調整する温度調整部、前記循環経路のインクの温度を検出する循環インク温度検出部、前記各ヘッドモジュール内のインクの温度を検出するヘッドモジュール温度検出部を備える印刷部と、
前記印刷部を制御する制御部とを備え、
前記制御部は、
印刷開始する際、前記循環経路のインクの温度および前記各ヘッドモジュール内のインクの温度のうちの少なくともいずれかが適正温度範囲外である場合、前記インク循環部において前記循環経路に沿ってインクを循環させるとともに前記循環経路のインクの温度および前記各ヘッドモジュール内のインクの温度を適正温度範囲内とするための前記温度調整部によるインクの温度の調整を行うウォームアップを開始させ、
前記循環経路のインクの温度、および印刷対象の画像データに基づく印刷においてインク吐出を行う前記ヘッドモジュールである使用ヘッドモジュール内のインクの温度が適正温度範囲内の状態になると、前記使用ヘッドモジュール以外のヘッドモジュール内のインクの温度に関わらず、前記使用ヘッドモジュールによる印刷を開始させることを特徴とするインクジェット印刷装置。
(付記2)
前記印刷部を複数備え、
前記制御部は、
印刷開始する際、印刷対象の画像データに基づく印刷に使用する前記印刷部において、前記循環経路のインクの温度および各ヘッドモジュール内のインクの温度のうちの少なくともいずれかが適正温度範囲外である場合、当該印刷部における前記ウォームアップを開始させ、
印刷に使用する前記各印刷部における前記循環経路のインクの温度、および前記使用ヘッドモジュール内のインクの温度が適正温度範囲内の状態になると、前記使用ヘッドモジュール以外のヘッドモジュール内のインクの温度に関わらず、印刷に使用する前記各印刷部の前記使用ヘッドモジュールによる印刷を開始させることを特徴とする付記1に記載のインクジェット印刷装置。
(付記3)
前記制御部は、前記印刷部の前記ウォームアップ時において、内部のインクの温度が適正温度範囲の下限温度未満である前記使用ヘッドモジュールがある場合、インクを吐出しない程度の駆動である非吐出駆動により当該使用ヘッドモジュール内のインクに加温するよう制御することを特徴とする付記1または2に記載のインクジェット印刷装置。
(付記4)
前記制御部は、前記印刷部における前記ウォームアップ時または印刷時において、今回の印刷対象の画像データに基づく印刷においてインク吐出を行わず、次の印刷対象の画像データに基づく印刷においてインク吐出を行う前記ヘッドモジュールであって、内部のインクの温度が適正温度範囲の下限温度未満である前記ヘッドモジュールを、インクを吐出しない程度の駆動である非吐出駆動させて当該ヘッドモジュール内のインクに加温するよう制御することを特徴とする付記1乃至3のいずれかに記載のインクジェット印刷装置。