JP6507710B2 - 画像形成方法、画像形成装置および滑剤固形物 - Google Patents

画像形成方法、画像形成装置および滑剤固形物 Download PDF

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Description

本発明は、電子写真方式の画像形成方法、画像形成装置および当該画像形成装置に用いる滑剤固形物に関する。
従来、電子写真方式の画像形成装置においては、長寿命および画質安定性が求められている。画像形成装置において重要な機能部材である感光体は、感光層の減耗の程度で寿命が決定される。また、微小傷や減耗ムラの発生によっても、画質劣化を引き起こし、感光体を含む画像形成ユニットの交換が必要となる。
近年、感光体表面に、架橋型硬化樹脂による保護層を積層させることにより、耐摩耗性、耐傷性および環境安定性を向上させ、長寿命化を可能としている。
また、近年、感光体の帯電方式として、高画質化および装置の小型化に有利で、スコロトロン・コロトロン帯電方式に比べ、オゾンやNOxなどの酸化性ガスの発生量を低減することができる近接帯電方式が採用されている。ここで、近接帯電方式とは、帯電ローラよりなる帯電部材を感光体表面に接触または近接させて帯電させる帯電方式をいう。
しかしながら、架橋型硬化樹脂による保護層を有する感光体に対して帯電ローラによる帯電が行われると、感光体表面が劣化し、高温高湿環境下において像流れが発生する、という問題がある。
この帯電ローラに起因する感光体表面の劣化は、感光体の使用に係る初期においては感光体の表面粗さが小さく抑制されているために促進されにくく、従って像流れも発生しにくい。然るに、長期間にわたって使用した耐久後期においては、感光体の表面粗さが大きくなるので表面の劣化の程度が大きくなり、その結果、像流れが発生しやすくなる。
一方、架橋型硬化樹脂による保護層を有する感光体に対して近接帯電方式の帯電を行うと、感光体表面の劣化の速さの程度が表面研磨の速さの程度より大きく、付着する放電生成物によりトルクが上昇し、クリーニングブレードのメクレやチッピングなどに伴うクリーニング不良やトナーフィルミングを引き起こす、という問題がある。
このような像流れの問題、および、クリーニング不良やトナーフィルミングなどのクリーニングの問題を解決するために、感光体の表面に滑剤を塗布して、当該感光体の表面上に滑剤の皮膜を形成する方法が知られている(例えば、特許文献1,2参照。)。
感光体の表面に形成された滑剤の皮膜によって、トナーの付着力が低減されてクリーニングブレードのトルクを低減することができ、クリーニング性が向上される。
また、感光体の表面に形成された滑剤の皮膜によって当該感光体の表面が放電劣化から保護される。
しかしながら、特許文献1,2に開示された方法によっても、長期間にわたって使用した場合の像流れの問題を十分に解決することはできない。
特開2009−282078号公報 特開2010−244037号公報
本発明は、以上のような事情を考慮してなされたものであって、その目的は、長期間にわたって高温高湿環境下における像流れの発生が抑制される画像形成方法および画像形成装置並びにこれに用いられる滑剤固形物を提供することにある。
本発明の画像形成方法は、回転する感光体の表面を近接帯電方式の帯電ローラによって帯電させる帯電工程と、帯電された感光体を露光することによって静電潜像を形成させる露光工程と、前記静電潜像をトナーによって現像してトナー像を形成する現像工程と、前記トナー像を転写材に転写する転写工程と、前記感光体の表面に滑剤を塗布して供給する滑剤供給工程と、前記感光体の表面に残存したトナーをクリーニングブレードにより除去するクリーニング工程とを有する画像形成方法において、
前記感光体として、重合性化合物を重合して得られる架橋型硬化樹脂による保護層を有するものを用い、
前記滑剤として脂肪酸金属塩と無機潤滑剤とよりなるものが用いられ、
前記滑剤供給工程において、前記感光体の帯電履歴回数の増加に伴って無機潤滑剤の供給量が増大されることを特徴とする。
本発明の画像形成装置は、回転する感光体と、前記感光体の表面を帯電させる近接帯電方式の帯電ローラよりなる帯電手段と、前記帯電手段により帯電された感光体を露光して静電潜像を形成する露光手段と、前記静電潜像が形成された感光体にトナーを供給してトナー像を形成する現像手段と、前記トナー像を転写材に転写する転写手段と、前記感光体の表面に滑剤を塗布して供給する滑剤供給手段と、前記感光体の表面に残存したトナーをクリーニングブレードにより除去するクリーニング手段とを備える画像形成装置であって、
前記感光体が、重合性化合物を重合して得られる架橋型硬化樹脂による保護層を有するものであり、
前記滑剤が脂肪酸金属塩と無機潤滑剤とよりなり、
前記滑剤供給手段が、前記感光体の帯電履歴回数の増加に伴って無機潤滑剤の供給量が増大するよう供給するものであることを特徴とする。
本発明の画像形成装置においては、前記無機潤滑剤が、窒化ホウ素、マイカ、二硫化タングステン、タルク、カオリン、モンモリロナイト、フッ化カルシウム、グラファイトのうちの1つ以上からなることが好ましい。
本発明の画像形成装置においては、前記滑剤供給手段の滑剤が、脂肪酸金属塩よりなるマトリクス部中に無機潤滑剤よりなるドメイン部が分散されてなる直方体形状の滑剤固形物からなり、
前記滑剤固形物の厚み方向に垂直な断面における当該ドメイン部の面積が、前記感光体に対向する表面から裏面に向かうに従って大きくなることが好ましい。
本発明の滑剤固形物は、脂肪酸金属塩よりなるマトリクス部中に無機潤滑剤よりなるドメイン部が分散されてなる直方体形状の滑剤固形物であって、
厚み方向に垂直な断面における当該ドメイン部の面積が、表面から裏面に向かうに従って大きくなることを特徴とする。
本発明の画像形成方法によれば、滑剤として脂肪酸金属塩および無機潤滑剤が共に供給され、しかも、感光体の帯電履歴回数の増加に伴って無機潤滑剤の供給量が大きくなるよう供給されるので、長期間にわたって高温高湿環境下における像流れの発生を抑制することができる。
本発明の画像形成装置の構成の一例を示す説明用断面図である。 本発明の画像形成装置の要部の構成の一例を示す説明用断面図である。 本発明の滑剤固形物の構成の一例を示す説明用断面図である。 本発明の画像形成装置における帯電手段の構成の一例を示す説明用断面図である。 本発明の滑剤固形物の構成の別の一例を示す説明用断面図である。 本発明の画像形成装置の要部の構成の別の一例を示す説明用断面図である。
以下、本発明について詳細に説明する。
〔画像形成装置〕
図1は、本発明の画像形成装置の構成の一例を示す説明用断面図、図2は、本発明の画像形成装置の要部の構成の一例を示す説明用断面図である。
この画像形成装置100は、タンデム型カラー画像形成装置と称せられるもので、4組の画像形成ユニット110Y、110M、110C、110Bkと、給紙搬送手段150と、定着手段170とを有する。画像形成装置100の本体の上部には、原稿画像読み取り装置SCが配置されている。
画像形成ユニット110Y、110M、110C、110Bkは、鉛直方向に並んで配置されている。画像形成ユニット110Y、110M、110C、110Bkは、回転されるドラム状の感光体111Y、111M、111C、111Bkと、この外面領域において感光体の回転方向に沿って順次配置された、帯電手段113Y、113M、113C、113Bkと、露光手段115Y、115M、115C、115Bkと、現像手段117Y、117M、117C、117Bkと、一次転写ローラ(一次転写手段)133Y、133M、133C、133Bkと、クリーニング手段119Y、119M、119C、119Bkとを有する。そして、感光体111Y、111M、111C、111Bk上に、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)およびブラック(Bk)のトナー画像がそれぞれ形成される構成とされている。画像形成ユニット110Y、110M、110C、110Bkは、感光体111Y、111M、111C、111Bkに形成するトナー画像の色が異なる以外は同様に構成されるため、以下、画像形成ユニット110Yの例で説明する。
本発明においては、感光体111Yの表面に滑剤を塗布して供給する滑剤供給手段116Yが、例えば一次転写ローラ(一次転写手段)133Yの下流側かつクリーニング手段119Yの上流側に設けられている。
〔滑剤供給手段〕
この例の滑剤供給手段116Yは、直方体形状を有する固形状の滑剤により構成された滑剤固形物22と、ブラシローラ21よりなる塗布部材とにより構成される。具体的には、滑剤供給手段116Yは、筐体20と、この筐体20内に収容された滑剤固形物22と、感光体111Y表面に当接し、滑剤固形物22の表面22aを摺擦することにより掻き取った滑剤を感光体111Y表面に塗布するブラシローラ21と、滑剤固形物22の裏面22bに接触して設けられた、滑剤固形物22をブラシローラ21に押圧する加圧バネ23と、ブラシローラ21を回転駆動させる駆動機構(図示せず)とにより構成される。ブラシローラ21は、ブラシの先端が感光体111Y表面に当接している。また、ブラシローラ21は、感光体111Yの回転方向とは逆回転で等速に回転駆動される。
この滑剤供給手段116Yは、帯電手段113Yによる感光体111Yの帯電履歴回数の増加に伴って滑剤を構成する無機潤滑剤の供給量が増大するよう供給される構成を有するものである。
帯電手段113Yによる感光体111Yの帯電履歴回数とは、感光体111Y上の任意の1点が帯電手段113Yによって帯電される回数の総計をいい、使用態様や帯電条件によっても異なるが、例えば感光体の帯電履歴回数が60万回〜500万回に達すると当該感光体の寿命とされる。
〔滑剤固形物〕
本発明の滑剤固形物22は、脂肪酸金属塩を主成分とする物質からなるマトリクス部中に、無機潤滑剤を含有する物質からなるドメイン部が分散されてなり、厚み方向に垂直な断面における当該ドメイン部の面積が、表面から裏面に向かうに従って大きくなるものである。
滑剤固形物22は、具体的には、図3に示されるように、外形が直方体形状のマトリクス部25に、表面22aから裏面22bに貫通する多数の穴22Hが形成されており、穴22Hの各々に、当該穴22Hに適合する形状を有するドメイン部27が嵌合されている。
ドメイン部27を嵌合させる穴22Hの形状は、厚み方向に垂直な断面における当該穴22Hの面積が、表面22aから裏面22bに向かうに従って大きくなる形状であればよく、例えば表面22aから裏面22bに向かうに従ってその径が大きくなる円錐台形や角錐台形とすることができる。
滑剤固形物22は、感光体111Yに対向する表面22aから消費される。従って、滑剤固形物22がこのような構成を有することにより、滑剤供給手段116Yにおいて帯電手段113Yによる感光体111Yの帯電履歴回数の増加に伴って次第に無機潤滑剤の供給量が増大される。
滑剤固形物22の寸法の一例を挙げると、例えば、外形が縦10mm、横325mm、高さ10mmの直方体形、ドメイン部27が頂部の半径が0.6mm、底部の半径が1mm、高さが10mmの円錐台形である。
〔マトリクス部〕
マトリクス部25は、脂肪酸金属塩を主成分とする物質からなる。なお、「脂肪酸金属塩を主成分とする」とは、脂肪酸金属塩の含有割合が90質量%以上であることをいい、不純物を除く全てが脂肪酸金属塩からなることが好ましい。
〔脂肪酸金属塩〕
脂肪酸金属塩は、クリーニング性に優れる物質である。
脂肪酸金属塩としては、例えば、オレイン酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウムなどを用いることができる。これらの中でも、滑性および延展性の観点から、ステアリン酸亜鉛を用いることが好ましい。
これらは1種単独で、または、2種以上を組み合わせて用いることができる。
〔ドメイン部〕
ドメイン部27は、無機潤滑剤を含有する物質からなり、脂肪酸金属塩を含有してもよい。
ドメイン部27における無機潤滑剤の含有割合は、50〜70質量%であることが好ましい。
ドメイン部27における無機潤滑剤の含有割合が50質量%以上であることによって、マトリクス部25と合わせた滑剤全体における無機潤滑剤の含有比率が適当なものとなって無機潤滑剤による感光体111Yの表面の放電劣化を抑制する効果を十分に得ることができる。一方、ドメイン部27における無機潤滑剤の含有割合が70質量%以下であることによって、ドメイン部27に十分な機械的強度を得ることができる。
〔無機潤滑剤〕
無機潤滑剤は、脂肪酸金属塩よりも電気絶縁性に優れる物質である。
無機潤滑剤としては、例えば、窒化ホウ素、マイカ、二硫化タングステン、タルク、カオリン、モンモリロナイト、フッ化カルシウム、グラファイトなどが挙げられる。これらの中でも窒化ホウ素を用いることが好ましい。
これらは1種単独で、または、2種以上を組み合わせて用いることができる。
使用時の滑剤固形物22からの無機潤滑剤の供給量は、滑剤固形物22の使用面(厚み方向に垂直な任意の面)における無機潤滑剤の含有割合yで表され、具体的には、使用面におけるマトリクス部25の面積をS1、ドメイン部27の面積をS2、ドメイン部27における無機潤滑剤の含有割合をxとしたとき、無機潤滑剤の含有割合y={S2×x/(S1+S2)}で表される。
本発明に係る滑剤固形物22は、表面22aにおける無機潤滑剤の含有割合yが0.1〜0.2、かつ、裏面22bにおける無機潤滑剤の含有割合yが0.25〜0.6であることが好ましい。
表面22aにおける無機潤滑剤の含有割合yが0.1以上であることによって、感光体111Yの表面の放電劣化を抑制することができる。
表面22aにおける無機潤滑剤の含有割合yが0.2以下であることによって、滑剤固形物22に十分な機械的強度を得ることができる。
裏面22bにおける無機潤滑剤の含有割合yが0.25以上であることによって、長期間にわたって使用した耐久後期においても感光体111Yの表面の放電劣化を抑制することができる。
裏面22bにおける無機潤滑剤の含有割合yが0.6以下であることによって、長期間にわたって使用した耐久後期にも十分なクリーニング性が得られ、また、滑剤固形物22に十分な機械的強度を得ることができる。
ブラシローラ21としては、例えば、基布に繊維の束をパイル糸として織り込んだパイル織り生地をリボン状生地にし、起毛した面を外側にして金属製シャフトの周囲に螺旋状に巻き付け、接着したものが挙げられる。この例のブラシローラ21は、例えばポリプロピレンなどの樹脂製のブラシ繊維が高密度に植設されてなる長尺の織布がローラ基体の周面に形成されてなるものである。
ブラシ毛は金属製シャフトに対し垂直方向に起毛させる、直毛タイプが塗布能力の観点から好ましい。ブラシ毛に用いる糸は、フィラメント糸が望ましく、材料としては、6−ナイロン、12−ナイロン、ポリエステル、アクリル、ビニロン等の合成樹脂が挙げられ、導電性を高める目的でカーボン、ニッケル等の金属を練り込んだものでもよい。ブラシ繊維の太さは例えば3〜7デニール、ブラシ繊維の毛長は2〜5mm、ブラシ繊維の電気抵抗率は1×1010Ω以下、ブラシ繊維のヤング率は4900〜9800N/mm2 、ブラシ繊維の植設密度(単位面積あたりのブラシ繊維数)は例えば5万〜20万本/平方インチ(50k〜200k本/inch2 )が好ましい。ブラシローラ21の感光体に対する食込み量は、0.5〜1.5mmであることが好ましい。ブラシローラの回転速度は例えば感光体の周速比で0.3〜1.5とされ、感光体の回転方向と同じ方向の回転であっても、逆の方向の回転であってもよい。
加圧バネ23は、ブラシローラ21の感光体111Yに対する押圧力が例えば0.5〜1.0Nとなるよう、滑剤固形物22を感光体111Yに近接する方向に押圧するものが用いられている。
滑剤供給手段116Yにおいては、感光体111Yの表面1cm2 当たりに対する塗布量が0.5×10-7〜1.5×10-7g/cm2 とされるよう、例えば滑剤固形物22のブラシローラ21に対する押圧力およびブラシローラ21の回転速度が調整される。
〔感光体〕
感光体111Yは、重合性化合物を重合して得られる架橋型硬化樹脂による保護層を表面層として有するドラム状のものであることが好ましい。この例の感光体111Yは、具体的には、導電性支持体上に、中間層を有し、この中間層上に、電荷発生物質を含有する電荷発生層および電荷輸送物質を含有する電荷輸送層がこの順に積層されてなる感光層が形成され、この感光層(電荷輸送層)上に表面層として保護層が形成された層構成を有している。なお、感光層は、電荷発生物質および電荷輸送物質を含有する単層構造の層構成を有するものであってもよい。
(重合性化合物)
保護層を構成する架橋重合体は、紫外線や電子線などの活性線の照射により、重合性官能基を2個以上有する重合性化合物を重合し、架橋反応による架橋結合を形成して硬化することにより得られる架橋型硬化樹脂である。重合性化合物としては、重合性官能基を2個以上有するものを用い、重合性官能基を1個有するものを併用することもできる。具体的には、重合性化合物としては、例えば、スチレン系モノマー、アクリル系モノマー、メタクリル系モノマー、ビニルトルエン系モノマー、酢酸ビニル系モノマー、N−ビニルピロリドン系モノマーなどが挙げられる。
重合性化合物としては、少ない光量あるいは短い時間での硬化が可能であることから、アクリロイル基(CH2 =CHCO−)またはメタクリロイル基(CH2 =CCH3 CO−)を2個以上有するアクリル系モノマーまたはこれらのオリゴマーであることが特に好ましい。
本発明においては、重合性化合物は1種を単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。また、これらの重合性化合物は、モノマーを用いてもよいが、オリゴマー化して用いてもよい。
以下、重合性化合物の具体例を示す。
Figure 0006507710
Figure 0006507710
ただし、上記の例示化合物M1〜M14を示す化学式において、Rはアクリロイル基(CH2 =CHCO−)を示し、R’はメタクリロイル基(CH2 =CCH3 CO−)を示す。
(金属酸化物微粒子)
保護層には、膜強度および導電性の観点から、金属酸化物微粒子が含有されていてもよい。また、この金属酸化物微粒子は、表面処理剤によって表面処理されたものであることが好ましい。
金属酸化物微粒子としては、例えば、シリカ(酸化ケイ素)、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化鉛、アルミナ(酸化アルミニウム)、酸化ジルコニウム、酸化錫、チタニア(酸化チタン)、酸化ニオブ、酸化モリブデン、酸化バナジウムなどを用いることができるが、なかでも、硬度、導電性、光透過性の観点から、酸化錫が好ましい。
金属酸化物微粒子の数平均一次粒径は、1〜300nmであることが好ましく、より好ましくは3〜100nmであり、さらに好ましくは5〜40nmである。
本発明において、金属酸化物微粒子の数平均一次粒径は、走査型電子顕微鏡(日本電子製)により10000倍の拡大写真を撮影し、ランダムに300個の粒子をスキャナーにより取り込んだ写真画像(凝集粒子は除いた)を自動画像処理解析装置「LUZEX AP(ソフトウエアバージョン Ver.1.32)」((株)ニレコ製)を使用して数平均一次粒径を算出した。
表面処理剤としては、金属酸化物微粒子の表面に存在するヒドロキシ基などと反応するものが好ましく、このような表面処理剤としては、例えば、シランカップリング剤、チタンカップリング剤などが挙げられる。
また、表面処理剤としては、ラジカル重合性反応基を有する表面処理剤が好ましい。ラジカル重合性反応基としては、例えば、ビニル基、アクリロイル基、メタクリロイル基などが挙げられる。このようなラジカル重合性反応基は、本発明に係る重合性化合物とも反応して強固な保護層を形成することができる。ラジカル重合性反応基を有する表面処理剤としては、ビニル基、アクリロイル基、メタクリロイル基などのラジカル重合性反応基を有するシランカップリング剤が好ましい。
以下、表面処理剤の具体例を示す。
S−1:CH2 =CHSi(CH3 )(OCH3 2
S−2:CH2 =CHSi(OCH3 3
S−3:CH2 =CHSiCl3
S−4:CH2 =CHCOO(CH2 2 Si(CH3 )(OCH3 2
S−5:CH2 =CHCOO(CH2 2 Si(OCH3 3
S−6:CH2 =CHCOO(CH2 2 Si(OC2 5 )(OCH3 2
S−7:CH2 =CHCOO(CH2 3 Si(OCH3 3
S−8:CH2 =CHCOO(CH2 2 Si(CH3 )Cl2
S−9:CH2 =CHCOO(CH2 2 SiCl3
S−10:CH2 =CHCOO(CH2 3 Si(CH3 )Cl2
S−11:CH2 =CHCOO(CH2 3 SiCl3
S−12:CH2 =C(CH3 )COO(CH2 2 Si(CH3 )(OCH3 2
S−13:CH2 =C(CH3 )COO(CH2 2 Si(OCH3 3
S−14:CH2 =C(CH3 )COO(CH2 3 Si(CH3 )(OCH3 2
S−15:CH2 =C(CH3 )COO(CH2 3 Si(OCH3 3
S−16:CH2 =C(CH3 )COO(CH2 2 Si(CH3 )Cl2
S−17:CH2 =C(CH3 )COO(CH2 2 SiCl3
S−18:CH2 =C(CH3 )COO(CH2 3 Si(CH3 )Cl2
S−19:CH2 =C(CH3 )COO(CH2 3 SiCl3
S−20:CH2 =CHSi(C2 5 )(OCH3 2
S−21:CH2 =C(CH3 )Si(OCH3 3
S−22:CH2 =C(CH3 )Si(OC2 5 3
S−23:CH2 =CHSi(OCH3 3
S−24:CH2 =C(CH3 )Si(CH3 )(OCH3 2
S−25:CH2 =CHSi(CH3 )Cl2
S−26:CH2 =CHCOOSi(OCH3 3
S−27:CH2 =CHCOOSi(OC2 5 3
S−28:CH2 =C(CH3 )COOSi(OCH3 3
S−29:CH2 =C(CH3 )COOSi(OC2 5 3
S−30:CH2 =C(CH3 )COO(CH2 3 Si(OC2 5 3
S−31:CH2 =CHCOO(CH2 2 Si(CH3 2 (OCH3
S−32:CH2 =CHCOO(CH2 2 Si(CH3 )(OCOCH3 2
S−33:CH2 =CHCOO(CH2 2 Si(CH3 )(ONHCH3 2
S−34:CH2 =CHCOO(CH2 2 Si(CH3 )(OC6 5 2
S−35:CH2 =CHCOO(CH2 2 Si(C1021)(OCH3 2
S−36:CH2 =CHCOO(CH2 2 Si(CH2 6 5 )(OCH3 2
表面処理剤は1種を単独でまたは2種以上を混合して用いてもよい。
表面処理剤の使用量は、未処理金属酸化物微粒子100質量部に対して0.1〜200質量部であることが好ましく、より好ましくは7〜70質量部である。
表面処理剤の未処理金属酸化物微粒子に対する処理方法としては、例えば、未処理金属酸化物微粒子と表面処理剤とを含むスラリー(固体粒子の懸濁液)を湿式解砕する方法が挙げられる。この方法により、未処理金属酸化物微粒子の再凝集を防止すると同時に未処理金属酸化物微粒子の表面処理が進行する。その後、溶媒を除去して粉体化する。
保護層中の金属酸化物微粒子の含有割合は、架橋重合体100質量部に対して20〜170質量部であることが好ましく、より好ましくは25〜130質量部である。
保護層には、架橋重合体や金属酸化物微粒子の他に他の成分が含有されていてもよく、例えば各種の酸化防止剤を含有させることができ、各種の滑剤粒子を加えることもできる。例えば、フッ素原子含有樹脂粒子を加えることができる。フッ素原子含有樹脂粒子としては、四フッ化エチレン樹脂、三フッ化塩化エチレン樹脂、六フッ化塩化エチレンプロピレン樹脂、フッ化ビニル樹脂、フッ化ビニリデン樹脂、二フッ化二塩化エチレン樹脂、およびこれらの共重合体の中から1種あるいは2種以上を適宜選択することが好ましいが、特に四フッ化エチレン樹脂、フッ化ビニリデン樹脂が好ましい。
保護層は、重合性化合物や金属酸化物微粒子、重合開始剤および必要に応じて他の成分を公知の溶媒に添加して塗布液を調製し、この塗布液を感光層(電荷輸送層)の外周面に塗布して塗膜を形成し、この塗膜を乾燥し、紫外線や電子線などの活性線を照射することによって塗膜中の重合性化合物成分を重合反応させ、硬化させることにより形成することができる。
以上のような保護層は、重合性化合物間の反応などが進行することにより、架橋型硬化樹脂として形成される。
保護層の形成に用いられる溶媒としては、重合性化合物および金属酸化物微粒子を溶解または分散させることができればいずれのものも使用でき、例えば、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、t−ブタノール、sec−ブタノール、ベンジルアルコール、トルエン、キシレン、メチレンクロライド、メチルエチルケトン、シクロヘキサン、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、テトラヒドロフラン、1−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、ピリジンおよびジエチルアミンなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
保層形成用の塗布液の塗布方法としては、例えば、浸漬コーティング法、スプレーコーティング法、スピンナーコーティング法、ビードコーティング法、ブレードコーティング法、ビームコーティング法、スライドホッパー法、円形スライドホッパー法などの公知の方法が挙げられる。
塗膜は、乾燥しないで硬化処理を行ってもよいが、自然乾燥または熱乾燥を行った後、硬化処理を行うことが好ましい。
乾燥の条件は、溶媒の種類、膜厚などによって適宜選択できる。乾燥温度は、好ましくは室温〜180℃であり、特に好ましくは80〜140℃である。乾燥時間は、好ましくは1分間〜200分間であり、特に好ましくは5分間〜100分間である。
重合性化合物を反応させる方法としては、電子線開裂で反応する方法、ラジカル重合開始剤を添加して、光、熱で反応する方法などが挙げられる。ラジカル重合開始剤は光重合開始剤、熱重合開始剤のいずれも使用することができる。また、光重合開始剤および熱重合開始剤を併用することもできる。
熱重合開始剤としては、例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルアゾビスバレロニリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)などのアゾ化合物;過酸化ベンゾイル(BPO)、ジ−tert−ブチルヒドロペルオキシド、tert−ブチルヒドロペルオキシド、過酸化クロロベンゾイル、過酸化ジクロロベンゾイル、過酸化ブロモメチルベンゾイル、過酸化ラウロイルなどの過酸化物などが挙げられる。
光重合開始剤としては、例えば、ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)ブタノン−1(「イルガキュアー369」:BASFジャパン社製)、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2−メチル−2−モルフォリノ(4−メチルチオフェニル)プロパン−1−オン、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシムなどのアセトフェノン系またはケタール系光重合開始剤;ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテルなどのベンゾインエーテル系光重合開始剤;ベンゾフェノン、4−ヒドロキシベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、2−ベンゾイルナフタレン、4−ベンゾイルビフェニル、4−ベンゾイルフェニールエーテル、アクリル化ベンゾフェノン、1,4−ベンゾイルベンゼンなどのベンゾフェノン系光重合開始剤;2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントンなどのチオキサントン系光重合開始剤などが挙げられる。
その他の光重合開始剤としては、例えば、エチルアントラキノン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルエトキシホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキサイド、メチルフェニルグリオキシエステル、9,10−フェナントレン、アクリジン系化合物、トリアジン系化合物、イミダゾール系化合物などが挙げられる。また、光重合促進効果を有する光重合促進剤を単独で、または上記光重合開始剤と併用して用いることもできる。光重合促進剤としては、例えば、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、安息香酸(2−ジメチルアミノ)エチル、4,4’−ジメチルアミノベンゾフェノンなどが挙げられる。
ラジカル重合開始剤としては、光重合開始剤が好ましく、中でも、アルキルフェノン系化合物、またはホスフィンオキサイド系化合物が好ましい。特に、α−アミノアルキルフェノン構造、または、アシルホスフィンオキサイド構造を有する化合物が好ましい。
重合開始剤は1種を単独でまたは2種以上を混合して用いてもよい。
重合開始剤の添加割合は、重合性化合物100質量部に対して0.1〜20質量部であることが好ましく、より好ましくは0.5〜10質量部である。
架橋重合体は、重合性化合物を含む塗膜に活性線を照射し、ラジカルを発生させて重合し、かつ分子間および分子内で架橋反応による架橋結合を形成して硬化することにより生成される。活性線としては紫外線や電子線がより好ましく、紫外線が使用しやすく特に好ましい。
紫外線光源としては、紫外線を発生する光源であれば制限なく使用できる。例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、フラッシュ(パルス)キセノンなどを用いることができる。
照射条件はそれぞれのランプによって異なるが、活性線の照射量は、通常5〜500mJ/cm2 、好ましくは5〜100mJ/cm2 である。
ランプの電力は、好ましくは0.1kW〜5kWであり、特に好ましくは、0.5kW〜3kWである。
電子線源としては、電子線照射装置に格別の制限はなく、一般にはこのような電子線照射用の電子線加速機として、比較的安価で大出力が得られるカーテンビーム方式のものが有効に用いられる。電子線照射の際の加速電圧は、100〜300kVであることが好ましい。吸収線量は、0.5〜10Mradであることが好ましい。
必要な活性線の照射量を得るための照射時間としては、0.1秒間〜10分間が好ましく、作業効率の観点から0.1秒間〜5分間がより好ましい。
保護層の形成の工程においては、活性線を照射する前後、および活性線を照射中に乾燥を行うことができ、乾燥を行うタイミングはこれらを組み合わせて適宜選択できる。
保護層のユニバーサル硬さは、例えば280N/mm2 以上600N/mm2 以下であることが好ましく、より好ましくは500N/mm2 以上600N/mm2 以下である。
本発明において、保護層のユニバーサル硬さは、超微小硬さ試験システム「フィッシャースコープH100」(フィッシャーインスツルメンツ社製)により測定される値である。
具体的には、「フィッシャースコープH100」により試験荷重下でダイヤモンド四角錐のビッカーズ圧子に荷重Fをかけて感光体表面を押し込んだときの、押し込み深さhおよび荷重Fから下記式(1)により求める。
式(1):HU(ユニバーサル硬さ)=F/(26.45×h2
なお、保護層のユニバーサル硬さは、保護層を形成する際の硬化処理条件(活性線の照射時間や活性線種)や重合性化合物の種類によって制御することができる。
保護層の層厚は、0.2〜10μmであることが好ましく、より好ましくは0.5〜6μmである。
本発明の感光体においては、保護層以外の層は公知の種々のものを採用することができる。
〔帯電手段〕
帯電手段113Yは、感光体111Y表面に対して帯電ローラにより帯電を行う手段である。この例の帯電手段113Yは、感光体111Yの表面に接触して配設された帯電ローラと、帯電ローラに電圧を印加する電源とからなる。
本発明において、帯電手段は、帯電ローラを感光体の表面に接触または近接した状態で帯電させる近接帯電方式による。
図4に示されるように、帯電ローラ11は、芯金11aの表面上に積層された、帯電音を低減させると共に弾性を付与して感光体111Yに対する均一な密着性を得るための弾性層11bの表面上に、必要に応じて帯電ローラ11が全体として高い均一性の電気抵抗を得るための抵抗制御層11cが積層され、当該抵抗制御層11c上に表面層11dが積層されたものが、押圧バネ11eによって感光体111Yの方向に付勢されて感光体111Yの表面に対して所定の押圧力で圧接されて帯電ニップ部が形成された状態とされる構成とされており、感光体111Yの回転に従動して回転される。
芯金11aは、例えば、鉄、銅、ステンレス、アルミニウムおよびニッケルなどの金属、あるいはこれらの金属の表面に、防錆性や耐付傷性を得るために導電性を損なわない範囲においてメッキ処理したものからなり、その外径は例えば3〜20mmとされる。
弾性層11bは、例えば、ゴムなどの弾性材料中にカーボンブラック、カーボングラファイトなどよりなる導電性微粒子やアルカリ金属塩、アンモニウム塩などよりなる導電性塩微粒子などが添加されたものからなる。弾性材料の具体例としては、例えば、天然ゴム、エチレンプロピレンジエンメチレンゴム(EPDM)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、シリコーンゴム、ウレタンゴム、エピクロルヒドリンゴム、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、ニトリル−ブタジエンゴム(NBR)およびクロロプレンゴム(CR)などの合成ゴムや、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂およびフッ素樹脂などの樹脂、あるいは発泡スポンジなどの発泡体などを挙げることができる。弾性の大きさは、プロセス油、可塑剤などを弾性材料中に添加することにより調整することができる。
弾性層11bは、その体積抵抗率が1×10〜1×1010Ω・cmの範囲であることが好ましい。また、その層厚は500〜5000μmであることが好ましく、より好ましくは500〜3000μmである。
弾性層11bの体積抵抗率は、JIS K 6911に準拠して測定された値である。
抵抗制御層11cは、帯電ローラ11を全体として均一な電気抵抗を有する目的などにより設けられるものであるが、なくてもよい。この抵抗制御層11cは、適度な導電性を有する材料を塗工すること、あるいは適度な導電性を有するチューブを被覆させることによって設けることができる。
この抵抗制御層11cを構成する具体的な材料としては、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、フッ素樹脂、シリコーン樹脂などの樹脂;エピクロルヒドリンゴム、ウレタンゴム、クロロプレンゴムおよびアクリロニトリル系ゴムなどのゴム類などの基礎材料中に、カーボンブラック、カーボングラファイトなどよりなる導電性微粒子;導電性酸化チタン、導電性酸化亜鉛、導電性酸化スズなどよりなる導電性金属酸化物微粒子;アルカリ金属塩、アンモニウム塩などよりなる導電性塩微粒子などの導電剤が添加されたものが挙げられる。
抵抗制御層11cは、その体積抵抗率が1×10-2〜1×1014Ω・cmの範囲であることが好ましく、より好ましくは1×101 〜1×1010Ω・cmである。また、その層厚は0.5〜100μmであることが好ましく、より好ましくは1〜50μm、さらに好ましくは1〜20μmである。
抵抗制御層11cの体積抵抗率は、JIS K 6911に準拠して測定された値である。
表面層11dは、弾性層11b中の可塑剤などの得られる帯電ローラの表面へのブリードアウトを防止する目的や帯電ローラの表面の滑り性や平滑性を得る目的、あるいは感光体111Y上にピンホールなどの欠陥があった場合にもリークの発生を防止する目的などにより設けられるものであって、適度な導電性を有する材料を塗工すること、あるいは適度な導電性を有するチューブを被覆させることによって設けられる。
表面層11dを材料の塗工により設ける場合は、具体的な材料としては、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、フッ素樹脂およびシリコーン樹脂などの樹脂、エピクロルヒドリンゴム、ウレタンゴム、クロロプレンゴムおよびアクリロニトリル系ゴムなどの基礎材料中に、カーボンブラック、カーボングラファイトなどよりなる導電性微粒子;導電性酸化チタン、導電性酸化亜鉛、導電性酸化スズなどよりなる導電性金属酸化物微粒子などの導電剤が添加されたものが挙げられる。塗工方法としては、浸漬塗工法、ロール塗工法およびスプレー塗工法などが挙げられる。
また、表面層11dをチューブの被覆により設ける場合は、具体的なチューブとしては、ナイロン12、4フッ化エチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合樹脂(PFA)、ポリフッ化ビニリデン、4フッ化エチレン−6フッ化プロピレン共重合樹脂(FEP);ポリスチレン系、ポリオレフィン系、ポリ塩化ビニル系、ポリウレタン系、ポリエステル系およびポリアミド系などの熱可塑性エラストマーなどに上記の導電剤が添加されたものがチューブ状に成形されたものが挙げられる。このチューブは熱収縮性のものでもよく、非熱収縮性のものでもよい。
表面層11dは、その体積抵抗率が1×101 〜1×108 Ω・cmの範囲であることが好ましく、より好ましくは1×101 〜1×105 Ω・cmである。また、その層厚は0.5〜100μmであることが好ましく、より好ましく1〜50μm、さらに好ましくは1〜20μmである。
表面層11dの体積抵抗率は、JIS K 6911に準拠して測定された値である。
また、表面層11dは、その表面粗さRzが1〜30μmのものが好ましく、より好ましくは2〜20μm、さらに好ましくは5〜10μmである。
以上のような帯電ローラ11においては、帯電ローラ11の芯金11aに電源S1より帯電バイアス電圧が印加されることにより、感光体111Yの表面が所定の極性の所定の電位に帯電される。ここに、帯電バイアス電圧は、例えば直流電圧のみとしてもよいが、帯電の均一性に優れることから、直流電圧に交流電圧が重畳された振動電圧とすることが好ましい。
帯電バイアス電圧は、例えば−2.5〜−1.5kV程度とすることができる。
図4に示した帯電ローラによる帯電条件の一例を示すと、帯電バイアス電圧を形成する直流電圧(Vdc)が−500V、交流電圧(Vac)が周波数1000Hz、ピーク間電圧1300Vの正弦波であり、この帯電バイアス電圧が印加されることにより、感光体111Yの表面が−500Vに一様に帯電される。
〔露光手段〕
露光手段115Yは、帯電手段113Yによって一様な電位を与えられた感光体111Y表面に、画像信号(イエローの画像信号)に基づいて露光を行い、イエローの画像に対応する静電潜像を形成する手段である。露光手段115Yは、感光体111Yの軸方向にアレイ状に発光素子が配列されたLEDと結像素子とから構成されるもの、あるいはレーザー光学系などが用いられる。
〔現像手段〕
現像手段117Yは、感光体111Y表面にトナーを供給し、感光体111Y表面に形成された静電潜像を現像し、トナー画像を形成する手段である。この例の現像手段117Yは、具体的には、マグネットを内蔵し現像剤を保持して回転する現像スリーブおよび感光体とこの現像スリーブとの間に直流および/または交流バイアス電圧を印加する電圧印加装置により構成される。
〔転写手段〕
転写手段を構成する一次転写ローラ133Yは、感光体111Y上に形成されたトナー画像を無端ベルト状の中間転写体131に転写する手段である。一次転写ローラ133Yは、中間転写体131と当接して配置されている。
この画像形成装置100においては、感光体111Y、111M、111C、111Bk上に形成されたトナー画像を一次転写ローラ(一次転写手段)133Y、133M、133C、133Bkによって中間転写体131に転写し、中間転写体131上に転写された各トナー画像を二次転写ローラ(二次転写手段)217によって転写材Pに転写する中間転写方式が採用されているが、感光体上に形成されたトナー画像を転写手段によって直接転写材に転写する直接転写方式が採用されてもよい。
〔クリーニング手段〕
クリーニング手段119Yは、感光体111Y表面に残存したトナーをクリーニングブレードにより除去する手段である。クリーニングブレードは、図2に示すように、支持部材31と、この支持部材31上に接着層(図示せず)を介して支持されたブレード部材30とにより構成される。ブレード部材30は、その先端が、感光体111Y表面との当接部分における当該感光体111Yの回転方向と反対方向(カウンター方向)に向く状態で配置されている。
支持部材31としては、特に限定されず、従来公知のものを使用することができ、例えば、剛体の金属、弾性を有する金属、プラスチック、セラミックなどから製造されたものが挙げられる。中でも、剛体の金属が好ましい。
ブレード部材30としては、例えば、ベース層とエッジ層とが積層されてなる多層構造のものを用いることができる。ベース層およびエッジ層は、それぞれポリウレタンにより構成されることが好ましい。ポリウレタンとしては、ポリオール、ポリイソシアネートおよび必要に応じて架橋剤を反応させて得られるものなどが挙げられる。
中間転写体131は、複数のローラ137A、137B、137C、137Dにより巻回され、回動可能に支持されている。
中間転写体131上には、当該中間転写体131上に残存したトナーを除去するクリーニング手段135が配置されている。
この画像形成装置100において、感光体111Y、現像手段117Y、クリーニング手段119Yおよび滑剤供給手段116Yなどは、一体的に結合され、装置本体に着脱自在に構成されたプロセスカートリッジ(画像形成ユニット)であってもよい。あるいは、帯電手段113Y、露光手段115Y、現像手段117Y、一次転写ローラ133Y、滑剤供給手段116Yおよびクリーニング手段119Yからなる群から選ばれる一以上の部材と、感光体111Yとが一体的に構成されたプロセスカートリッジ(画像形成ユニット)であってもよい。
プロセスカートリッジ200は、筐体201と、それに収容された感光体111Y、帯電手段113Y、現像手段117Y、滑剤供給手段116Yおよびクリーニング手段119Yと、一次転写ローラ133Yと、を有する。また、装置本体には、プロセスカートリッジ200を装置本体内にガイドする手段として支持レール203L、203Rが設けられている。それにより、プロセスカートリッジ200を装置本体に着脱可能となっている。これらのプロセスカートリッジ200は、装置本体に着脱自在に構成された単一の画像形成ユニットとなりうる。
給紙搬送手段150は、給紙カセット211内の転写材Pを、複数の中間ローラ213A、213B、213C、213Dおよびレジストローラ215を経て、二次転写ローラ217に搬送可能に設けられている。
定着手段170は、二次転写ローラ217により転写されたカラー画像を定着処理する。排紙ローラ219は、定着処理された転写材Pを挟持して、排紙トレイ221上に載置可能に設けられている。
以上、本発明の画像形成装置100は、滑剤として脂肪酸金属塩および無機潤滑剤が共に用いられ、しかも、感光体111Yの帯電履歴回数の増加に伴って無機潤滑剤の供給量が大きくなる滑剤供給手段が備えられている。
そして、脂肪酸金属塩よりも無機潤滑剤の方が電気絶縁性に優れるために感光体の表面の放電劣化を抑制する効果が大きく得られるので、感光体の表面粗さが大きくなった耐久後期において無機潤滑剤の供給量が増大されることによって、感光体の使用に係る初期から耐久後期までの全期間にわたって高温高湿環境下における像流れの発生を抑制することができる。
〔画像形成方法〕
本発明の画像形成方法は、上記の画像形成装置100を用いて画像形成を行う方法である。すなわち、具体的には、まず、近接帯電方式の帯電手段113Y、113M、113C、113Bkにより感光体111Y、111M、111C、111Bkの表面に放電して負に帯電させる。次いで、露光手段115Y、115M、115C、115Bkで、感光体111Y、111M、111C、111Bkの表面を画像信号に基づいて露光し、静電潜像を形成する。次いで、現像手段117Y、117M、117C、117Bkで、感光体111Y、111M、111C、111Bkの表面にトナーを付与して現像し、トナー画像を形成する。
次いで、一次転写ローラ(一次転写手段)133Y、133M、133C、133Bkを、回動する中間転写体131と当接させる。それにより、感光体111Y、111M、111C、111Bk上にそれぞれ形成した各色のトナー画像を、回動する中間転写体131上に逐次転写させて、カラー画像を転写する(一次転写する)。画像形成処理中、一次転写ローラ133Bkは、常時、感光体111Bkに当接する。一方、他の一次転写ローラ133Y、133M、133Cは、カラー画像形成時にのみ、それぞれ対応する感光体111Y、111M、111Cに当接する。
そして、一次転写ローラ133Y、133M、133C、133Bkと無端ベルト状中間転写体131とを分離させた後、滑剤供給手段により感光体111Y、111M、111C、111Bkの表面に滑剤を供給する。その後、感光体111Y、111M、111C、111Bkの表面に残存したトナーを、クリーニング手段119Y、119M、119C、119Bkで除去する。その後、次の画像形成プロセスに備えて、必要に応じて感光体111Y、111M、111C、111Bkの表面を除電手段(不図示)によって除電する。
このように、画像形成装置100においては、画像形成プロセス毎に、感光体111Y、111M、111C、111Bkの表面に滑剤が供給されるように構成されている。
一方、給紙カセット211内に収容された転写材P(例えば普通紙、透明シートなどの最終画像を担持する支持体)を、給紙搬送手段150で給紙し、複数の中間ローラ213A、213B、213C、213D、レジストローラ215を経て二次転写ローラ(二次転写手段)217に搬送する。そして、二次転写ローラ217を回動する無端ベルト状中間転写体131と当接させて、転写材P上にカラー画像を一括して転写する(二次転写する)。二次転写ローラ217は、転写材P上に二次転写を行うときのみ、無端ベルト状中間転写体131と当接する。その後、カラー画像が一括転写された転写材Pを、無端ベルト状中間転写体131の曲率が高い部位で分離する。
このようにしてカラー画像が一括して転写された転写材Pを、定着手段170で定着処理した後、排紙ローラ219で挟持して装置外の排紙トレイ221上に載置する。また、カラー画像が一括転写された転写材Pを中間転写体131から分離した後、クリーニング手段135で中間転写体131上の残存トナーを除去する。
以上、本発明の画像形成方法によれば、滑剤として脂肪酸金属塩および無機潤滑剤が共に供給され、しかも、感光体111Yの帯電履歴回数の増加に伴って無機潤滑剤の供給量が大きくなるよう供給される。
そして、脂肪酸金属塩よりも無機潤滑剤の方が電気絶縁性に優れるために感光体の表面の放電劣化を抑制する効果が大きく得られるので、感光体の表面粗さが大きくなった耐久後期において無機潤滑剤の供給量が増大されることによって、感光体の使用に係る初期から耐久後期までの全期間にわたって高温高湿環境下における像流れの発生を抑制することができる。
〔トナー〕
本発明の画像形成装置において使用されるトナーとしては、特に限定されないが、結着樹脂および着色剤が含有されるトナー粒子よりなり、当該トナー粒子には、所望により離型剤などの他の成分が含有されていてもよい。
トナーを構成するトナー粒子は、高画質化を企図する観点からすれば、その体積平均粒径が2〜8μmであることが好ましい。
上記のトナーを製造する方法としては、特に制約されないが、例えば、通常の粉砕法や、分散媒中で作成する湿式溶融球形化法や、懸濁重合、分散重合、乳化重合凝集法等の既知の重合法などが挙げられる。
また、トナー粒子には、外添剤として、平均粒径10〜300nm程度のシリカおよびチタニア等の無機微粒子、0.2〜3μm程度の研磨剤を適宜量、外部添加することができる。
トナーは、磁性または非磁性の一成分現像剤として使用することもできるが、キャリアと混合して二成分現像剤として使用してもよい。
トナーを二成分現像剤として使用する場合において、キャリアとしては、鉄などの強磁性金属、強磁性金属とアルミニウムおよび鉛などの合金、フェライトおよびマグネタイトなどの強磁性金属の化合物などの従来公知の材料からなる磁性粒子を用いることができ、特にフェライトが好ましい。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、種々の変更を加えることができる。
例えば滑剤固形物は、上記の構成のものに限定されず、滑剤による層が複数積層された直方体形状のものであって、感光体に対向する表面側の層から裏面側の層に向かうに従って無機潤滑剤の濃度が大きくなるよう積層された構成のものであってもよい。
具体的には、図5に示されるように、例えば3つの滑剤層29A,29B,29Cが積層された滑剤固形物であって、感光体に対向する表面22a側の滑剤層29Aの無機潤滑剤の濃度よりも、中間の滑剤層29Bの無機潤滑剤の濃度が大きく、当該中間の滑剤層29Bの無機潤滑剤の濃度よりも、裏面22b側の滑剤層29Cの無機潤滑剤の濃度が大きいものとされている。
滑剤固形物がこのような構成を有することにより、滑剤供給手段において帯電手段による感光体の帯電履歴回数の増加に伴って段階的に無機潤滑剤の供給量が増大される。
また例えば、画像形成装置は、滑剤を感光体の表面より除去する滑剤除去手段が設けられて構成されていてもよい。具体的には、図6に示されるように、例えば感光体111Yの回転方向においてクリーニング手段119Yの下流側かつ帯電手段113Yの上流側に滑剤供給手段116Yが設けられ、さらに当該滑剤供給手段116Yの下流側かつ帯電手段113Yの上流側に滑剤除去手段114Yが配置されて画像形成装置が構成される。
滑剤除去手段114Yは、除去部材が感光体111Y表面に接触し、機械的作用によって滑剤を除去する手段であることが好ましい。ここで、機械的作用によって滑剤を除去するとは、感光体の表面を機械的に擦過するなどによって滑剤を除去するこという。滑剤除去手段としては、ブラシローラや発泡ローラなどの除去部材を用いることができ、除去能力および耐久性の観点からブラシローラが好ましい。この例の滑剤除去手段114Yは、具体的には、感光体111Y表面に当接し、感光体111Yの回転方向とは逆回転で等速に回転駆動されるブラシローラよりなる除去部材と、駆動機構とにより構成される。
除去部材としてのブラシローラとしては、例えば、基布に繊維の束をパイル糸として織り込んだパイル織り生地をリボン状生地にし、起毛した面を外側にして金属製シャフトの周囲に螺旋状に巻き付け、接着したものが挙げられる。この例のブラシローラは、例えばポリエステルなどの樹脂製のブラシ繊維が高密度に植設されてなる長尺の織布が金属製シャフトの周面に形成されてなるものである。
ブラシ毛は金属製シャフトに対し垂直方向に起毛させる、直毛タイプが除去能力の観点から好ましい。ブラシ毛に用いる糸は、フィラメント糸が望ましく、材料としては、6−ナイロン、12−ナイロン、ポリエステル、アクリル、ビニロン等の合成樹脂が挙げられ、導電性を高める目的でカーボン、ニッケル等の金属を練り込んだものでもよい。ブラシ繊維の太さは3〜15デニールが好ましく、ブラシ繊維の毛長は2〜5mmが好ましい。また、ブラシ繊維の植設密度を4万〜50万本/平方インチ(40k〜500kF/inch2 )の範囲で設定することで、除去に必要な剛性を確保すると共に、ブラシ毛に疎な部分を作らず滑剤の除去ムラを引き起こさないようにすることができる。ブラシ繊維の電気抵抗率は1×107 Ω以下であることが好ましく、ブラシ繊維のヤング率は1500〜9800N/mm2 であることが好ましい。ブラシローラの感光体に対する食込み量は、0.5〜1.5mmであることが好ましい。ブラシローラの回転速度は例えば感光体速度比で0.3〜1.5とされ、感光体の回転方向と同じ方向の回転であっても、逆の方向の回転であってもよい。
なお、図6に示す構成においては、滑剤供給手段116Yの下流側かつ帯電手段113Yの上流側に、滑剤供給手段116Yによって感光体111Y表面に供給された滑剤を均一に塗布する均しブレード118Yが設けられている。
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の実施例のみに限定されるものではない。なお、下記中「部」とは「質量部」を示す。
〔感光体の作製例1〕
直径60mmのアルミニウム製の円筒体の表面を切削加工し、表面を細かく粗面にした導電性支持体〔1〕を用意した。
(中間層の形成)
下記組成の分散液を下記溶媒と同じ溶媒にて二倍に希釈し、一夜静置後に濾過(フィルター;日本ポール社製リジメッシュ5μmフィルター使用)し、中間層形成用塗布液〔1〕を調製した。
バインダー樹脂:ポリアミド樹脂「CM8000」(東レ社製) 1部
金属酸化物粒子:酸化チタン「SMT500SAS」(テイカ社製) 3部
溶媒:メタノール 10部
分散機としてサンドミルを用いて、バッチ式で10時間の分散を行った。
中間層形成用塗布液〔1〕を用いて導電性支持体〔1〕上に、浸漬コーティング法で塗布し、乾燥膜厚2μmの中間層〔1〕を形成した。
(電荷発生層の形成)
電荷発生物質:下記顔料(CG−1)20部、バインダー樹脂:ポリビニルブチラール樹脂「#6000−C」(電気化学工業社製)10部、溶媒:酢酸t−ブチル700部、溶媒:4−メトキシ−4−メチル−2−ペンタノン300部を混合し、サンドミルを用いて10時間分散し、電荷発生層形成用塗布液〔1〕を調製した。この電荷発生層形成塗布液〔1〕を中間層〔1〕上に浸漬コーティング法で塗布し、乾燥膜厚0.3μmの電荷発生層〔1〕を形成した。
<顔料(CG−1)の合成>
(1)無定形チタニルフタロシアニンの合成
1,3−ジイミノイソインドリン;29.2部をo−ジクロロベンゼン200部に分散し、チタニウムテトラ−n−ブトキシド;20.4部を加えて窒素雰囲気下に150〜160℃で5時間加熱した。放冷後、析出した結晶を濾過し、クロロホルムで洗浄、2%塩酸水溶液で洗浄、水洗メタノール洗浄して、乾燥後、26.2部(収率91%)の粗チタニルフタロシアニンを得た。
次いで、粗チタニルフタロシアニンを5℃以下において濃硫酸250部中で1時間攪拌して溶解し、これを20℃の水5000部に注いだ。析出した結晶をろ過し、充分に水洗してウエットペースト品225部を得た。
このウエットペースト品を冷凍庫にて凍結し、再度解凍した後、ろ過、乾燥して無定形チタニルフタロシアニン24.8部(収率86%)を得た。
(2)(2R,3R)−2,3−ブタンジオール付加体チタニルフタロシアニン(CG−1)の合成
上記無定形チタニルフタロシアニン10.0部と(2R,3R)−2,3−ブタンジオール0.94部(0.6当量比)(当量比はチタニルフタロシアニンに対する当量比、以後同じ)をオルトクロロベンゼン(ODB)200部中に混合し60〜70℃で6.0時間加熱撹拌した。一夜放置後、該反応液にメタノールを加えて生じた結晶を濾過し、濾過後の結晶をメタノールで洗って((2R,3R)−2,3−ブタンジオール付加体チタニルフタロシアニンを含有する顔料)CG−1:10.3部を得た。顔料(CG−1)のX線回折スペクトルでは、8.3°、24.7°、25.1°、26.5°に明確なピークがある。マススペクトルにおいて576と648にピークがあり、IRスペクトルでは970cm-1付近のTi=O、630cm-1付近にO−Ti−Oの両吸収が現れる。また熱分析(TG)では390〜410℃に約7%の質量減少があることから、チタニルフタロシアニンと(2R,3R)−2,3−ブタンジオールの1:1付加体と非付加体(付加していない)チタニルフタロシアニンの混合物と推定される。
得られた顔料(CG−1)のBET比表面積を流動式比表面積自動測定装置(マイクロメトリックス・フローソープ型:島津製作所)で測定したところ、31.2m2 /gであった。
(電荷輸送層の形成)
電荷輸送物質:下記化合物A225部、バインダー樹脂:ポリカーボネート樹脂「Z300」(三菱ガス化学社製)300部、酸化防止剤:「Irganox1010」(日本チバガイギー社製)6部、溶媒:THF(テトラヒドロフラン)1600部、溶媒:トルエン400部、シリコーンオイル「KF−50」(信越化学社製)1部を混合し、溶解して電荷輸送層形成用塗布液〔1〕を調製した。
この電荷輸送層形成用塗布液〔1〕を電荷発生層〔1〕の上に円形スライドホッパー塗布装置を用いて塗布し、乾燥膜厚20μmの電荷輸送層〔1〕を形成した。
Figure 0006507710
(保護層の形成)
(1)金属酸化物微粒子の作製
酸化錫(CIKナノテック社製、数平均一次粒径:20nm)100部、表面処理剤として上記例示化合物(S−13)30部、トルエン/イソプロピルアルコール=1/1(質量比)の混合溶媒300部の混合液を、ジルコニアビーズとともにサンドミルに入れ約40℃で、回転速度1500rpmで撹拌し、さらに、上記処理混合物を取り出し、ヘンシェルミキサーに投入して回転速度1500rpmで15分間撹拌した後、120℃で3時間乾燥することによって、ラジカル重合性官能基を有する化合物による酸化錫の表面処理を終了し、表面処理済み酸化錫を得た。これを金属酸化物微粒子〔1〕とする。上記のラジカル重合性官能基を有する化合物による表面処理により、酸化錫の粒子表面は上記例示化合物(S−13)により被覆されていた。
(2)保護層の形成
金属酸化物微粒子〔1〕100部、重合性化合物:上記例示化合物(M1)100部、溶媒:sec−ブタノール320部、溶媒:THF(テトラヒドロフラン)80部を遮光下で混合し、分散機としてサンドミルを用いて5時間分散した後、重合開始剤:「イルガキュアー」(BASFジャパン社製)10部を加え、遮光下で撹拌して溶解させ、保護層形成用塗布液〔1〕を調製した。この保護層形成用塗布液〔1〕を電荷輸送層〔1〕上に円形スライドホッパー塗布装置を用いて塗布して塗膜を形成した。その後、この塗膜を室温で15分間乾燥し、キセノンランプを用いて窒素気流下において、光源と塗膜との間の離間距離を10mmとして、ランプ出力1kWで紫外線を1分間照射して、乾燥膜厚3.0μmの保護層〔1〕を形成し感光体〔1〕を作製した。この感光体〔1〕における保護層のユニバーサル硬さは200N/mm2 であった。
〔滑剤固形物の作製例1〕
まず、図3のような形状のマトリクス部を形成することができる金型を用意した。具体的には、縦10mm×横325mm×厚み10mmの直方体容器の底から、底部の半径が1mm、頂部の半径が0.6mm、高さが10mmである円錐台形の柱が、底部間距離が0.3mmとなるよう、縦横に多数並ぶ状態に形成された金型を用意した。
この金型に、ステアリン酸亜鉛100質量部を加熱して溶融したものを流し込み、その後、冷却して固形化させ、金型を外すことによって、多数の円錐台形の穴を有する、マトリクス部を供する固形物〔a〕を得た。次いで、固形物〔a〕の円錐台形の穴に、ドメイン部を供するべきステアリン酸亜鉛50質量部および窒化ホウ素50質量部を100℃に加熱して溶融・混合したものを、充填して冷却することにより、滑剤固形物〔1〕を作製した。
〔滑剤固形物の作製例2〜6〕
滑剤固形物の作製例1において、ドメイン部を構成する滑剤として表1に示されるものを用いたことの他は同様にして、滑剤固形物〔2〕〜〔6〕を作製した。
〔滑剤固形物の作製例7〕
滑剤としてステアリン酸亜鉛80質量部および窒化ホウ素20質量部を加熱して溶融、混合し、四角柱の型に充填して冷却することにより比較用の滑剤固形物〔7〕を作製した。
<実施例1>
画像形成装置「bizhub C353」(コニカミノルタ社製)に感光体〔1〕を搭載し、画像形成ユニットを帯電ローラによる帯電が行われるように改造した。また、転写手段の下流側かつクリーニング手段の上流側に下記仕様の滑剤供給手段を配置した。この評価機を用いて下記の像流れの評価を行った。結果を表1に示す。
−滑剤供給手段の仕様−
滑剤供給手段には、図2に示すような、滑剤固形物と直毛タイプのブラシローラよりなる塗布部材とにより構成された装置を使用した。
滑剤固形物として、上記の滑剤固形物〔1〕を用いた。
ブラシローラは、フィラメント糸として炭素含有ナイロン繊維「SA−7」(東レ社製)を用い、ブラシ繊維の太さ3デニール、ブラシ繊維の植設密度120kF/inch2 、ブラシ繊維の毛長3.0mmのリボン状生地を外径6mmの金属製シャフト(SUM22)に螺旋状に巻き付け形成したものである。また、ブラシローラは感光体に対し、食込み量1mmとなるよう設置し、感光体の回転方向とは逆方向に周速比0.6で回転させた。また、ブラシローラは金属製シャフトを介して接地させた。
滑剤固形物のブラシローラに対する押圧力は2N/mとした。
〔像流れの評価〕
高温高湿環境(温度30℃、湿度85%RH)で、印字率5%相当の文字チャートを2000枚連続で印字した後に電源を切り、8時間放置した後に電源を入れ、A3ハーフトーン画像を25枚連続で印字した。これを初期のハーフトーン画像とする。
次いで、高温高湿環境(温度30℃、湿度85%RH)で、印字率6%の文字チャートを100万枚連続で印字する耐久試験を実施した。
さらに、高温高湿環境(温度30℃、湿度85%RH)で、印字率5%相当の文字チャートを2000枚連続で印字した後に電源を切り、8時間放置した後に電源を入れ、A3ハーフトーン画像を25枚連続で印字した。これを耐久後のハーフトーン画像とする。
初期および耐久後の像流れは、それぞれのハーフトーン画像が放置前のレベルに回復したときの枚数によって評価した。1枚目または2枚目に回復した場合を「A」、7枚目以内に回復した場合を「B」、20枚目以内に回復した場合を「C」、21枚目以降に回復した場合を「D」と評価した。
本発明においては、耐久後において20枚目以内に回復したもの(A,BまたはC)を合格とする。
<実施例2〜6、比較例1>
実施例1において、滑剤供給手段における滑剤固形物〔1〕の代わりに、滑剤固形物〔2〕〜〔7〕をそれぞれ用いたことの他は同様にして、上記の評価を行った。結果を表1に示す。
Figure 0006507710
11 帯電ローラ
11a 芯金
11b 弾性層
11c 抵抗制御層
11d 表面層
11e 押圧バネ
20 筐体
21 ブラシローラ
22 滑剤固形物
22a 表面
22b 裏面
22H 穴
23 加圧バネ
25 マトリクス部
27 ドメイン部
29A〜29C 滑剤層
30 ブレード部材
31 支持部材
100 画像形成装置
110Y、110M、110C、110Bk 画像形成ユニット
111Y、111M、111C、111Bk 感光体
113Y、113M、113C、113Bk 帯電手段
114Y 滑剤除去手段
115Y、115M、115C、115Bk 露光手段
116Y 滑剤供給手段
117Y、117M、117C、117Bk 現像手段
118Y 均しブレード
119Y、119M、119C、119Bk クリーニング手段
131 中間転写体
133Y、133M、133C、133Bk 一次転写ローラ(転写手段)
135 クリーニング手段
137A、137B、137C、137D ローラ
150 給紙搬送手段
170 定着手段
200 プロセスカートリッジ
201 筐体
203R、203L 支持レール
211 給紙カセット
213A、213B、213C、213D 中間ローラ
215 レジストローラ
217 二次転写ローラ(転写手段)
219 排紙ローラ
221 排紙トレイ
P 転写材
SC 原稿画像読み取り装置
S1 電源

Claims (5)

  1. 回転する感光体の表面を近接帯電方式の帯電ローラによって帯電させる帯電工程と、帯電された感光体を露光することによって静電潜像を形成させる露光工程と、前記静電潜像をトナーによって現像してトナー像を形成する現像工程と、前記トナー像を転写材に転写する転写工程と、前記感光体の表面に滑剤を塗布して供給する滑剤供給工程と、前記感光体の表面に残存したトナーをクリーニングブレードにより除去するクリーニング工程とを有する画像形成方法において、
    前記感光体として、重合性化合物を重合して得られる架橋型硬化樹脂による保護層を有するものを用い、
    前記滑剤として脂肪酸金属塩と無機潤滑剤とよりなるものが用いられ、
    前記滑剤供給工程において、前記感光体の帯電履歴回数の増加に伴って無機潤滑剤の供給量が増大されることを特徴とする画像形成方法。
  2. 回転する感光体と、前記感光体の表面を帯電させる近接帯電方式の帯電ローラよりなる帯電手段と、前記帯電手段により帯電された感光体を露光して静電潜像を形成する露光手段と、前記静電潜像が形成された感光体にトナーを供給してトナー像を形成する現像手段と、前記トナー像を転写材に転写する転写手段と、前記感光体の表面に滑剤を塗布して供給する滑剤供給手段と、前記感光体の表面に残存したトナーをクリーニングブレードにより除去するクリーニング手段とを備える画像形成装置であって、
    前記感光体が、重合性化合物を重合して得られる架橋型硬化樹脂による保護層を有するものであり、
    前記滑剤が脂肪酸金属塩と無機潤滑剤とよりなり、
    前記滑剤供給手段が、前記感光体の帯電履歴回数の増加に伴って無機潤滑剤の供給量が増大するよう供給するものであることを特徴とする画像形成装置。
  3. 前記無機潤滑剤が、窒化ホウ素、マイカ、二硫化タングステン、タルク、カオリン、モンモリロナイト、フッ化カルシウム、グラファイトのうちの1つ以上からなることを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
  4. 前記滑剤供給手段の滑剤が、脂肪酸金属塩よりなるマトリクス部中に無機潤滑剤よりなるドメイン部が分散されてなる直方体形状の滑剤固形物からなり、
    前記滑剤固形物の厚み方向に垂直な断面における当該ドメイン部の面積が、前記感光体に対向する表面から裏面に向かうに従って大きくなることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の画像形成装置。
  5. 脂肪酸金属塩よりなるマトリクス部中に無機潤滑剤よりなるドメイン部が分散されてなる直方体形状の滑剤固形物であって、
    厚み方向に垂直な断面における当該ドメイン部の面積が、表面から裏面に向かうに従って大きくなることを特徴とする滑剤固形物。
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