JP6504953B2 - パイル編地及びその製造方法並びにそれを用いた洗浄具又は清掃具 - Google Patents

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Description

本発明は、カットパイルが硬いパイル編地及びその製造方法に係り、更に、そのパイル編地を用いた洗浄具又は清掃具に関する。
従来、洗浄具としては、いわゆるタワシと呼ばれるものが多く使用されてきたが、タワシの立毛部(パイルともいう)は一般的に、太くて粗いため、細かな汚れが落ちにくいことが問題となっていた。
一方、デリケートなものに対しての洗浄には、スポンジが多く使用されている。スポンジは、陶器やガラス製品には適しているが、フライパンや鍋裏の焦げ付きなど、硬く張り付いた汚れ落としには適していない。また、その柔軟性がゆえに劣化も早い。そこで、このスポンジに、合成繊維等からなるループパイルやカットパイルを有する布帛を貼り付けたものなどが提案されており、上記パイルが前述のタワシの立毛部のように作用し、焦げ付きなどを落とすとされている(特許文献1及び2等参照)。
実開平5−48859号公報 特開2007−244598号公報
しかし、これまで提案されている合成繊維からなるパイルでは、剛性が小さく、洗浄効果が十分でないなどの問題が生じたり、繰り返しの使用により、洗浄具自体の劣化などが生じたりしている。これは、例えば、パイルにかかる圧力がパイルの剛性よりも大きい場合には、パイルが「く」の字に折れ曲がってしまい、洗浄力が低下することになり、また、劣化を促すことになる。
本発明は、このような事情に鑑みなされたものであって、その目的をするところは、カットパイルの剛性が大きく、洗浄具として用いたときには洗浄力に優れ、清掃具として用いたときには、清掃性に優れたパイル編地を提供するものであり、更には、そのようなパイル編地を製造するための方法を提供することにある。また、上記パイル編地を用いた洗浄具又は清掃具を提供することにある。
上記の目的は、地組織とカットパイルとからなるパイル編地であって、前記カットパイルが、単糸繊度5〜40dtexの、イソフタル酸共重合ポリエチレンテレフタレートを鞘部に、ホモポリエチレンテレフタレートを芯部に用いた熱融着マルチフィラメントからなり、パイル編地の平方インチ当たりのカットパイルの総本数が5,000〜54,000本であり、更に、パイル編地のKES測定での圧縮かたさ(LC)が0.40以上、回復性(RC)が50%以上であることを特徴とするパイル編地によって達成される。
また、本発明の目的は、2枚の地組織が、上記熱融着フィラメントからなる連結糸で連結された二重経編地を、該熱融着フィラメントの融点もしくは軟化点未満の温度で熱セットし、その後、連結糸中央を切断することにより2枚のパイル編地とし、該パイル編地を、該熱融着フィラメントの融点もしくは軟化点以上の温度で加熱することを特徴とするパイル編地の製造方法によって達成される。
更に、本発明の目的は、上記パイル編地を有してなる洗浄具又は清掃具によって達成される。
本発明によれば、洗浄力に優れたパイル編地を得ることができる。すなわち、単糸繊度の細いカットパイルを高密度に有し、そのカットパイルの剛性が大きいことから、フライパンや鍋裏の焦げ付き、魚焼き網やバーベキューの網の焦げ付きなど、硬く張り付いた汚れ落としに好適である。また、本発明のパイル編地は、タイル等の目地の隙間の汚れの除去、排水溝のネットの汚れの除去、カーペット等の毛髪、動物の毛、埃、毛綿等の除去等の清掃にも好適に使用できる。
また、本発明のパイル編地の製造方法によれば、剛性が大きいパイル編地を好適に製造することができる。
また、上記パイル編地だけでも、洗浄具や清掃具として用いることが可能であるが、パイル編地をスポンジ等と組合せて洗浄具や清掃具としてもよく、組合せた場合には、洗浄・清掃効果に加えて、把持し易くなり、また、組み合わせるスポンジの硬さに応じて、種々のものを好適に洗浄・清掃できる。
本発明のパイル編地の一実施形態の断面一部拡大部分を示す顕微鏡写真である。 KES測定により得られるグラフの模式図を示す説明図である。 本発明のパイル編地を用いた洗浄具の一実施形態を示す説明図である。
本発明のパイル編地は、地組織とカットパイルとを有するパイル編地であって、このカットパイルが、単糸繊度5〜40dtexの熱融着フィラメントからなり、パイル編地の平方インチ当たりのカットパイルの総本数が5,000〜54,000本であり、更に、KES測定におけるパイル編地の圧縮かたさ(LC)が0.40以上、回復性(RC)が50%以上であることを特徴としている。
本発明において、熱融着フィラメントを使用すると、剛性の大きいカットパイルを有するパイル編地とすることができる。また、編物としたとき、交差する繊維同士を熱融着させることができるので、パイル編地の保型性を良好とすることができる。また、接する繊維同士を熱接着させることもできるので、一部のカットパイル同士が熱接着して、カットパイル先端部の凹凸を保持したまま一体となり、目的に応じた洗浄・清掃効果が期待できる。
本発明で使用する熱融着フィラメントは、芯部樹脂融点と鞘部樹脂融点との差が30℃以上ある芯鞘構造繊維であることが好適である。ここで、芯部又は鞘部に非晶性樹脂を使用する場合は、融点ではなく軟化点を採用する。
尚、融点とは結晶性を有する熱可塑性樹脂のDSC測定における結晶融解温度を意味し、軟化点とは繊維を構成する樹脂が軟化し始める温度を意味する。
本発明において、融点は、示差走査型熱量計(パーキンエルマー社製DSC7)を用い、昇温速度20℃/分で測定するものである。一方、軟化点は、JIS K7196法の「熱可塑性プラスチックフィルム及びシートの熱機械分析による軟化温度試験方法」に従って測定するものである。
本発明で使用する熱融着フィラメントは、例えば、芯部樹脂が260℃以上の融点を有する樹脂、例えば、ホモポリエチレンテレフタレート、鞘部樹脂が230℃以下の融点を有する樹脂、例えば、低融点ポリエステルからなるものが好適である。低融点ポリエステルとしては、例えば、イソフタル酸を共重合した共重合ポリエチレンテレフタレートを使用する。また、ポリエチレンテレフタレートにイソフタル酸を15〜40モル%共重合した共重合ポリエステルは非晶性となり、そのため軟化点は130〜230℃となる。
また、芯部樹脂はホモポリエチレンテレフタレートではなく、10モル%以下のイソフタル酸を共重合したポリエチレンテレフタレートを用いてもよい。
また、上記芯鞘構造繊維の芯鞘部樹脂の複合比(容積比)は、6:4〜2:8であることが好ましく、特に5:5〜3:7であることが好ましい。鞘部樹脂が40%未満となると、パイル編地の成形性が悪くなるか、また、編物として用いて熱融着を行う際の融着性が低下することがあり、また、鞘部樹脂が80%を超えると芯部樹脂が少なくなるため編物の強力が低下することがある。
本発明で使用する芯鞘構造繊維は、通常の紡糸装置で製造すればよい。
また、本発明で使用する芯鞘構造繊維は、偏心していないことが好ましく、また、芯部が2つ以上あってもよいし、本発明の目的を阻害しない範囲で芯部の一部が繊維表面に露出していてもよい。
カットパイルの単糸繊度は5〜40dtexであることが必要である。5dtexより小さいと、カットパイル自体が柔らかすぎて、熱処理後も剛性が大きくならず、洗浄・清掃時においてカットパイルが倒れて洗浄・清掃性が低くなり、また、使用後の回復性も小さい。一方、単糸繊度が10dtexを超えると、単糸密度を増やすことが難しくなり、細かい汚れ等を洗浄・清掃することができなくなる。また、単糸繊度は、10〜30dtexであることが好ましい。
本発明において、カットパイルは、地組織を構成する糸に係止され、立毛している。
本発明のパイル編地は、2枚の地組織が連結糸で連結された二重編地の連結糸中央を、ナイフ等にて切り開いて得られるものが好適に使用される。
中でも、ダブルラッシェル編などの二重経編地をセンターカットしたものであることが、カットパイルの立毛性や、カットパイルの先端の断面形状の点で好ましい。
連結糸には、マルチフィラメントを用いることが好適である。洗浄・清掃面、つまりカットパイル先端部において、見かけの断面積が広がることにより、効率よく洗浄することができる。また、パイル編地自体の劣化も低減できる。
この場合、マルチフィラメントの総繊度は30〜350dtexが好ましい。30dtex未満であると強度が低くなる傾向にあり、350dtexを超えると成形性が悪くなる傾向にある。より好ましくは50〜300dtexである。
パイル編地において、カットパイルは、平方インチ当たり5,000〜54,000本配置されていることが必要である。単糸が5000本より少ないと、洗浄性・清掃性及び耐久性が低下する傾向にあり、54,000本を超えると、地組織が重たくなったり、カットパイル本数も多くなるため、カットパイルが動けなくなり、洗浄・清掃効果が得られにくくなったりする。特に、7,000〜48,000本であることが好ましい。
なお、連結糸には、本発明の目的を達成する範囲で、非熱融着フィラメント等を使用してもよい。単糸繊度、樹脂の種類の異なる糸を使用することで、異なる洗浄・清掃効果が期待できる。
前記地組織の素材は、連結糸に使用するものと同種類の樹脂からなる糸を使用することが好適ある。すなわち、熱融着フィラメントがポリエステル系であれば、ポリエステル系の糸を使用することが好ましい。
また、地組織を構成する編糸の繊度は、30〜660dtexであることが好ましい。30dtexより小さいと、カットパイルの根元を強く締め付けることができずにカットパイルが倒れやすくなったり、カットパイルの抜けが生じたりする傾向にある。また、引き裂き強度が低下する傾向にある。660dtexを超えると、カットパイルを係止する糸が太くなるということであり、カットパイル根元付近の間隔が広くなり、結果としてカットパイル全体の密度が低下して、洗浄・清掃性が低下する傾向にある。特に、50〜400dtexであることが好ましい。
本発明のパイル編地の厚さは、用途に応じて適宜設定すればよいが、1.5〜8mmであることが好ましい。1.5mmより薄いと、カットパイル自体が短いため、被洗浄物の隅や隙間などにカットパイルが届かず、洗浄性が低下する傾向にある。また、8mmを超えると、カットパイルが倒れ易くなって、カットパイルの先端部分が被洗浄物に当たりにくくなって、洗浄性が低下することがある。特に、2〜5mmであることが好ましい。
また、本発明のパイル編地は、KES測定での圧縮かたさ(LC)が0.40以上であることが必要であり、好ましくは0.45〜0.60である。また、回復性(RC)が50%以上であることが必要であり、好ましくは60%以上である。
これらは、ハンディー圧縮試験機(カトーテック株式会社、KES−G5)を用いて測定することにより得られる。測定により、図2に示すようなグラフが得られるところ、圧縮かたさ(LC)及び回復性(RC)は下記式により算出される。
圧縮かたさ(LC)=a+bの面積/△ABCの面積
回復性(RC)=bの面積/a+bの面積
圧縮かたさ(LC)は、値が1に近づくほど圧縮がかたいことを示し、回復性(RC)は、値が100%に近づくほど、回復性があることを示す。
本発明のパイル編地は、従来の合成繊維のパイルよりも剛性を有するものであり、上記単糸繊度及び単糸密度との組み合せにより、洗浄性、清掃性に優れたものである。
本発明のパイル編地は、上記のように、2枚の地組織が連結糸で連結された二重編地の連結糸中央を、カッター等にて切り開くことにより製造することができるが、具体的には、例えば、次のようにして行う。
すなわち、ダブルラッセル編機を使用し、地組織となる糸と熱融着フィラメントからなる連結糸となる糸をそれぞれの筬に供給し、2枚の地組織が、連結糸で連結された二重経編地を編成する。得られた二重経編地を、熱融着フィラメントの融点もしくは軟化点未満の温度で熱処理し、その後、連結糸中央をカッター等で切断することにより2枚のパイル編地とする。次いで、得られたパイル編地を、熱融着フィラメントの融点もしくは軟化点以上の温度で熱処理することにより、上記条件を満たす剛性の大きいパイル編地が得られる。
このようにして得られるパイル編地は、例えば、図1に示すようなものである。図1は、本発明のパイル編地の一実施形態の断面一部拡大部分を示す顕微鏡写真である。図1に示すように、カットパイル部分は、繊維の形状を保ったまま硬くなっており、一部のカットパイル同士が熱融着している。
本発明のパイル編地は、洗浄力・清掃力に優れたものである。すなわち、単糸繊度の小さいカットパイルを高密度に有し、そのカットパイルの剛性が大きいことから、フライパンや鍋裏の焦げ付き、魚焼き網やバーベキューの網の焦げ付きなどの汚れ落としに好適である。また、フローリング、タイル等の目地の隙間の汚れの除去、排水溝のネットの汚れの除去、カーペット等の毛髪、動物の毛、埃、毛綿等の除去等の清掃にも好適に使用できる。
本発明のパイル編地は、それ自体で洗浄具または清掃具として使用することができるが、ウレタンやスポンジ、発泡スチロールなどに接着するなどして使用することもできる。
柔らかいスポンジと組合せると、フライパンなど曲面を有するものを、良好に洗浄でき、一方、弾力性の少ない硬いスポンジと組合せると、バーベキューの網、フローリング、タイル等の平面の清掃に好適となるので、目的に応じて、適宜組合せると良い。
洗浄具・清掃具の一例として、例えば、図3に示すものが挙げられる。パイル編地1とスポンジ2とを、接着剤により貼り合せたものであり、洗浄具3として、または清掃具としても使用できる。
以下、実施例を挙げて、本発明を具体的に説明する。
なお、評価は、下記のようにして行った。
1)繊維の破断強度、破断伸度
JIS L1013(2010)の標準時試験に準じ、測定した。
2)洗浄性及び清掃性
フライパンの焦げ、バーベキューの網の焦げ、カーペットの毛髪の取れ具合を目視にて確認し、良好に取れたものを○、取れなかったものを×とした。
3)パイル編地の汚れ落ち性
上記洗浄性又は清掃性の評価をした後、パイル編地に付着した汚れを落とし、その落ち具合を目視にて確認し、良好に落ちたものを○、落ちなかったものを×とした。
(実施例1)
ダブルラッシェル機RD6DPLM−77E−14G(マイヤー社製)を使用して、筬L1、L2は表面の地組織(167dtex/72f、ポリエステルマルチフィラメント)を、筬L5、L6は裏面の地組織(167dtex/72f、ポリエステルマルチフィラメント)を編成し、筬L3、L4は表裏地組織を連結して、二重経編地を編成した。連結糸として、筬L3及び4に、イソフタル酸共重合ポリエチレンテレフタレート(イソフタル酸比率20モル%)(軟化点185℃)を鞘部に、ホモポリエチレンテレフタレート(融点260℃)を芯部に用いた芯鞘の複合比が1:1である熱融着マルチフィラメント(280dtex/16f、単糸繊度17.5dtex、強度4.3cN/dtex、伸度38%)を使用した。
連結糸は2針間にアンダーラップして編成した。
編成後、170℃、12m/分で熱セットを行い、得られた二重経編地の連結糸の中央部をナイフで2枚に切り開き、パイル編地2枚を得た。
得られた二重経編地の経緯の密度は、33コース/22ウエルであり、パイル編地の平方インチ当たりのカットパイルの総本数は、11,616本であった。
次いで、得られたパイル編地を、190℃、15m/分で熱セットを行った。
得られたパイル編地のKES測定での圧縮かたさ(LC)は0.45、回復性(RC)は69.7%であった。
また、得られたパイル編地に厚さ4cmのスポンジを接着剤で接着し 洗浄性・清掃性の評価に行った。
評価結果を、表1に併せて示す。
(実施例2)
筬L3及び4に、イソフタル酸共重合ポリエチレンテレフタレート(イソフタル酸比率20モル%)(軟化点185℃)を鞘部に、ホモポリエチレンテレフタレート(融点260℃)を芯部に用いた芯鞘の複合比が1:1である熱融着マルチフィラメント(280dtex/48f、単糸繊度5.8dtex、強度5.2cN/dtex、伸度26%)を使用し、二重経編地の経緯の密度を、33コース/21ウエルとし、パイル編地の平方インチ当たりのカットパイルの総本数は、33,264本とした他は、実施例1と同様にして、パイル編地を作成し、評価を行った。
得られたパイル編地のKES測定での圧縮かたさ(LC)は0.5、回復性(RC)は70.2%であった。
評価結果を、表1に併せて示す。
(比較例1)
二重経編地の経緯の密度を、24コース/12ウエルとし、パイル編地の平方インチ当たりのカットパイルの総本数は、4,608本とした他は、実施例1と同様にして、パイル編地を作成し、評価を行った。
得られたパイル編地のKES測定での圧縮かたさ(LC)は0.36、回復性(RC)は51.4%であった。
評価結果を、表1に併せて示す。
(比較例2)
二重経編地の経緯の密度を、38コース/30ウエルとし、パイル編地の平方インチ当たりのカットパイルの総本数は、54,720本とした他は、実施例1と同様にして、パイル編地を作成し、評価を行った。
得られたパイル編地のKES測定での圧縮かたさ(LC)は0.47、回復性(RC)は69.5%であった。
評価結果を、表1に併せて示す。
Figure 0006504953
1 パイル編地
2 スポンジ
3 洗浄具

Claims (4)

  1. 地組織とカットパイルとからなるパイル編地であって、前記カットパイルが、単糸繊度5〜40dtexの、イソフタル酸共重合ポリエチレンテレフタレートを鞘部に、ホモポリエチレンテレフタレートを芯部に用いた熱融着マルチフィラメントからなり、パイル編地の平方インチ当たりのカットパイルの総本数が5,000〜54,000本であり、更に、KES測定におけるパイル編地の圧縮かたさ(LC)が0.40以上、回復性(RC)が50%以上であることを特徴とするパイル編地。
  2. 2枚の地組織が、熱融着フィラメントからなる連結糸で連結された二重経編地を、該熱融着フィラメントの融点もしくは軟化点未満の温度で熱処理し、その後、連結糸中央を切断することによりパイル編地とし、該パイル編地を、該熱融着フィラメントの融点もしくは軟化点以上の温度で熱処理することを特徴とする請求項1記載のパイル編地の製造方法。
  3. 請求項1に記載のパイル編地を有してなる洗浄具。
  4. 請求項1に記載のパイル編地を有してなる清掃具。
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