JP6504933B2 - 光学素子成形方法 - Google Patents

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Description

本発明は、光学素子成形方法に関する。
従来、レンズなどの光学素子の製造方法として、成形型によってガラス材料をプレス成形することが知られている。ガラスのプレス成形に用いられる成形型は、ガラスと密着する型面に離型膜を有する。
ガラスのプレス成形において、成形型とガラス材料との間に離型剤を介在させることも知られている。例えば、特許文献1には、ガラスゴブを成形型に滴下する前に、ガラスゴブに離型剤である炭素系ススを吹き付けるガラス光学素子の成形方法が記載されている。
特許文献1では、炭素系ススとして、アセチレンガスの燃焼炎中のススを用いる。特許文献1には、他の炭素系ススとして、例えば、メタン、ブタン、プロパン等の炭化水素ガス、あるいは炭素原子を含むアルコール系ガスの燃焼炎中のススが記載されている。
さらに特許文献1には、離型剤が液状炭素系有機物をミスト化して得られる微粉末でもよいことが記載されている。
特開平6−305740号公報
しかしながら、従来技術の光学素子成形方法には、以下のような問題がある。
光学素子のように高精度な成形面が必要な場合、成形型の離型膜が金属膜のみでは、十分な離型性が得られない場合がある。離型膜が金属膜の成形型では、離型剤が併用される。
離型剤は有機化合物を利用している。有機化合物は、C(炭素原子)、H(水素原子)、O(酸素原子)、N(窒素原子)、S(イオウ原子)などを含む。離型剤は、有機化合物の加熱分解物がガラスおよび型面に付着することによって、離型性を向上する。
しかし、有機化合物が加熱分解される際には、例えば、水、炭酸ガス、分子の断片成分等の低分子量の物質も発生する。これらの低分子量の物質は、成形時の加熱によって容易に気化する。しかし、気化した物質は、ガラスと成形型との間に閉じ込められる。
この結果、気化した物質が、軟化するガラスを変形させる場合がある。例えば、気化した物質が、ガラス表面に微細な穴を形成すると、光学素子の曇りが生じる。
さらに、有機化合物が加熱分解される際に発生する分子の断片成分には、未結合の電子が存在する。未結合の電子を有する分子の断片成分がガラスと反応すると、ガラス表面の着色、泡、融着などを発生させる原因にもなる。
離型膜が炭素膜からなる成形型は、離型剤を用いなくても良好な離型性が得られる。しかし、成形を繰り返すことによって炭素膜自体が消耗する。このため、炭素膜は寿命が短いという問題がある。
特許文献1に記載の技術では、成形を行うごとに炭素系ススからなる離型剤を供給する。このため、一定の離型性能を持続することができる。
しかし、炭素系ススは、炭化水素、アルコールなどの有機化合物の燃焼炎中に形成されるため、有機物分解生成物として活性成分を有する。さらに、炭素系ススは、微小な1次粒子が凝集した2次粒子からなる。例えば、1次粒子の径は、数十nm〜数百nmである。これに対して、2次粒子の径は、最小でも数μmであり、最大では、10μmを超える大きさである。
このような粒径の炭素系ススは、成形後のガラス表面に残留しやすい。残留した炭素系ススは、有機物分解生成物としての活性成分がガラスと反応して成形品の外観不良が生じやすい。
一方、炭素系ススをガラス表面から除去したとしても、除去後のガラス表面には、炭素ススの粒子サイズに応じた窪みが生じる。この窪みは、成形品のクモリの原因となるという問題がある。
本発明は、上記のような問題に鑑みてなされたものであり、不良の発生を抑制できるとともに、成形型の寿命を延ばすことができる光学素子成形方法を提供することを目的とする。
上記の課題を解決するために、本発明の第1の態様の光学素子成形方法は、金属膜からなる離型膜を表面に有する成形型によって、加熱されたガラス材料をプレス成形して光学素子を形成する光学素子成形方法であって、前記離型膜の表面および前記ガラス材料の表面の少なくとも一方に、微細化されたグラファイトを含む離型剤を配置することと、前記離型剤を配置した後、前記ガラス材料を加熱して、前記成形型によってプレス成形することと、プレス成形された前記ガラス材料を酸化雰囲気中で加熱して、前記微細化されたグラファイトを、前記ガラス材料の表面から除去することと、を含み、前記微細化されたグラファイトが液体に分散された塗布液を、前記離型膜の表面および前記ガラス材料の表面の少なくとも一方に塗布することと、塗布された前記塗布液を乾燥させることと、によって、前記離型膜の表面および前記ガラス材料の表面の少なくとも一方に、前記離型剤を配置する
上記光学素子成形方法においては、プレス成形された前記ガラス材料をアニール処理する際に、酸化雰囲気中で加熱して、前記微細化されたグラファイトを、前記ガラス材料の表面から除去してもよい。
上記光学素子成形方法においては、前記微細化されたグラファイトは、厚さが30nm以下であってもよい。
本発明の光学素子成形方法によれば、不良の発生を抑制できるとともに、成形型の寿命を延ばすことができるという効果を奏する。
本発明の実施形態の光学素子成形方法によって製造した光学素子の一例を示す模式的な正面図および平面図である。 本発明の実施形態の成形型および成形型組立体の模式的な断面図である。 本発明の実施形態の成形型の模式的な断面図である。 本発明の実施形態の成形用ガラス材料の模式的な断面図である。 本発明の実施形態の光学素子成形方法のフローを示すフローチャートである。 本発明の実施形態の光学素子成形方法の離型剤塗布工程の模式的な工程説明図である。 本発明の実施形態の光学素子成形方法の離型剤塗布工程の模式的な工程説明図である。 本発明の実施形態の光学素子成形方法の成形工程のフローを示すフローチャートである。 本発明の実施形態の光学素子成形方法に用いる成形装置の構成例を示す模式的な断面図である。 本発明の実施形態の光学素子成形方法の成形工程の模式的な工程説明図である。 本発明の実施形態の光学素子成形方法の成形工程の模式的な工程説明図である。 本発明の実施形態の光学素子成形方法に用いる離型剤の作用を説明する模式図である。 本発明の実施形態の光学素子成形方法の成形品加熱工程の模式的な工程説明図である。
以下では、本発明の実施形態について添付図面を参照して説明する。
まず、本発明の実施形態の光学素子成形方法によって成形される光学素子と、成形に用いる成形型と、について説明する。
図1(a)、(b)は、本発明の実施形態の光学素子成形方法によって成形した光学素子の一例を示す模式的な正面図および平面図である。図2は、本発明の実施形態の成形型および成形型組立体の模式的な断面図である。図3は、本発明の実施形態の成形型の模式的な断面図である。図4は、本発明の実施形態の成形用ガラス材料の模式的な断面図である。
各図面は、模式図のため、寸法や形状は誇張されている(他の図面も同様)。
本実施形態の光学素子成形方法で成形される光学素子は、ガラス材料をプレス成形して外形を形成する光学素子であれば、特に限定されない。例えば、レンズ、プリズム、ミラー、フィルタ、基板などの適宜の種類の光学素子を採用することができ、光学有効領域の表面は曲率を有していてもよいし、曲率を有しない平面であってもよい。また、曲率を有する場合には凸面でも凹面でもよい。
以下では、本実施形態の光学素子成形方法で成形される光学素子の一例として、図1(a)、(b)に示すレンズ1(光学素子)を成形する場合の例で説明する。
レンズ1は、ガラスによって成形された単玉の両凸レンズであり、凸レンズ面1aと、凸レンズ面1bとを備える。レンズ1は、凸レンズ面1a、1bの外周に、外形が円形のフランジ部1cを有している。
凸レンズ面1a、1bは、レンズ1の設計仕様に基づく面形状、面精度に加工されている。また、凸レンズ面1a、1bには、必要に応じて、例えば、反射防止膜コートや保護膜コートなどの膜コートを施すことが可能である。
レンズ1は、図2に示すような成形型2およびガラスプリフォーム6(成形用ガラス材料)を用いた本実施形態の光学素子成形方法によって成形される。
成形型2は、下型3、上型4、および胴型5を備え、これらのそれぞれの中心軸線が、中心軸線Pと同軸となるように配置されている。以下では、成形型2を構成する各部材の中心軸線をいずれも中心軸線Pと称する。
下型3は、レンズ1の外径よりもわずかに大きな外径を有する円筒面状の側面3dを備えた略円柱状部材からなる。下型3は、その中心軸線Pに沿う軸方向の一方の端部(図2における上側の端部)に、レンズ面成形面3a(型面)と、平面部成形面3b(型面)とが形成される。
レンズ面成形面3aは、凸レンズ面1bの形状を転写する凹面の成形面である。
平面部成形面3bは、凸レンズ面1bに隣接するフランジ部1cの形状を転写する平面の成形面である。
下型3の軸方向の他方の端部には、フランジ部3eが形成される。フランジ部3eは、下型3の側面3dから、中心軸線Pに直交する径方向の外側に延びる。フランジ部3eの軸方向の他方側の端面(図2の下側の端面)は中心軸線Pに直交する下面3fを構成している。
下型3の母材は、例えば、タングステンカーバイト(WC)を主成分とする超硬合金、炭化ケイ素、炭素などの、高硬度で耐熱性が良好な材料から構成されている。
レンズ面成形面3aおよび平面部成形面3bは、このような母材を、それぞれ凸レンズ面1bの形状や、平面形状に加工した後、離型膜として貴金属を含む薄膜を成膜することにより形成される。
レンズ面成形面3aおよび平面部成形面3bに用いる離型膜は、成形時にガラスと接触する最表面の離型性が良好となるように、ガラスの成分と成形中に化学反応を起こしにくい貴金属元素を含む金属膜である。以下では、レンズ面成形面3aおよび平面部成形面3bを合わせて、離型膜部3m(離型膜)と称する場合がある。
離型膜部3mに含まれる貴金属元素としては、適宜の貴金属元素を採用することができる。例えば、離型膜部3mとして、白金(Pt)、金(Au)、イリジウム(Ir)、レニウム(Re)、銀(Ag)、オスミウム(Os)、タンタル(Ta)、およびパラジウム(Pd)から選択される少なくとも1種類の元素、もしくはこれら元素を1種以上含む構成を用いてもよい。
離型膜部3mの成膜方法としては、例えば、RFスパッタやマグネトロンスパッタ、イオンビームスパッタなどを挙げることができる。
本実施形態では、図3に示すように、成形を開始するまでに、離型膜部3mの表面に、離型剤9を配置する。
離型剤9は、微細化されたグラファイトを含む。
本実施形態では、離型剤9は、微細化されたグラファイトを液体中に分散させた塗布液を離型膜部3mの表面に塗布、乾燥することによって離型膜部3mに配置される。
グラファイトは、炭素が共有結合した六員環で形成された原子1層を単位とする層状体が積層する六方晶系の結晶である。グラファイトの各層状体は、ファンデルワールス力で結合している。グラファイトを構成する原子1層分の層状体が剥離した物質はグラフェン(graphene)と呼ばれる。
グラファイトは、このような結晶構造を有するため、層状体の間での滑りを起こしやすい。
離型剤9に用いるグラファイトは、プレス成形時にガラスプリフォーム6に押しつけられて、ガラスプリフォーム6上に窪みを形成しても、レンズ1の外観不良あるいは光学特性の不良を生じない大きさに微細化する。本実施形態では、後述するように、離型剤9をスプレー塗布するため、離型剤9に用いるグラファイトは、スプレー塗布可能な大きさに微細化されている必要がある。
本実施形態では、離型剤9におけるグラファイトの層状体の積層方向における厚さは、30nm以下とする。
グラファイトの層状体を積層方向に見た場合の層状体の大きさは、10μm×10μm以下程度にすればよい。層状体の大きさは、5μm×5μm以下としてもよいし、1μm×1μm以下としてもよい。
グラファイトがこのような薄片状であると、離型膜部3mに対する安定した付着姿勢は、離型膜部3mの法線方向と、層状体の積層方向とが略一致する姿勢である。この結果、離型膜部3mからの突出量も、微細化されたグラファイトの厚さ程度になる。
グラファイトの層状体は、より薄くてもよい。例えば、グラファイトの層状体の層厚は、10nm以下としてもよく、5nm以下としてもよい。
グラフェンは、炭素原子1層分の厚さしか有しないため、離型剤9に用いる微細化されたグラファイトは、グラフェンを含んでもよい。さらに、離型剤9に用いる微細化されたグラファイトはグラフェンのみから構成されてもよい。
酸化グラフェン(graphene oxide)は、グラフェンの一部が酸化されることによって、グラフェンの一部が酸素を含む官能基に置換された化合物である。酸化グラフェンの主要部は、炭素の六員環である。酸化グラフェンは、全体としては、グラフェンと略同様の2次元的な層状体からなる。酸化グラフェンは、結晶構造を取らないため、グラフェンと同様、極めて薄層の層状体である。
酸化グラフェンは、酸素を含む官能基を有するため、親水性を有する。このため、酸化グラフェンは、液体に分散しやすい。
離型剤9は、酸化グラフェンを含んでもよい。
図2に示すように、上型4は、下型3の側面3dと同じ外径を有する円筒面状の側面4dを備えた略円柱状部材からなる。上型4は、その中心軸線Pに沿う軸方向の一方の端部(図2における下側の端部)に、レンズ面成形面4a(型面)と、平面部成形面4b(型面)とが形成される。
レンズ面成形面4aは、凸レンズ面1aの形状を転写する凹面の成形面である。
平面部成形面4bは、凸レンズ面1aに隣接するフランジ部1cの形状を転写する平面の成形面である。
上型4の軸方向の他方の端部には、フランジ部4eが形成される。フランジ部4eは、上型4の側面4dから、中心軸線Pに直交する径方向の外側に延びる。フランジ部4eの軸方向の他方側の端面(図2の上側の端面)は中心軸線Pに直交する上面4fを構成している。
上型4は、下型3の母材と同様な材料で外形を形成した後、下型3と同様の離型膜を成膜することによりレンズ面成形面4aおよび平面部成形面4bを形成している。以下では、レンズ面成形面4aおよび平面部成形面4bを合わせて、離型膜部4m(離型膜)と称する場合がある。
本実施形態では、図3に示すように、成形を開始するまでに、離型膜部4mに、離型剤9を配置する。離型剤9は、下型3の離型膜部3mと同様にして、離型膜部4mに配置することができる。
図2に示すように、胴型5は、下型3の側面3d、および上型4の側面4dを摺動可能に外嵌する内周面5aを有する円筒状部材である。胴型5の軸方向の両端部である下面5bおよび上面5cは、内周面5aの中心軸線Pと直交する平面からなる。
胴型5の軸方向の長さ(下面5bから上面5cまでの距離)は、後述する成形型2の組立状態におけるフランジ部3e、4e間の距離よりも短い。
このような構成により、胴型5は、ガラスの成形を行う間、下型3、および上型4を同軸の位置関係に保持するとともに、上型4を中心軸線Pに沿って移動可能に案内できる。
本実施形態では、胴型5は、フランジ部1cの側面を成形する成形面ではないため、成形温度に対する耐熱性を有する適宜の金属材料やセラミックスで構成することができる。本実施形態では、一例として、高硬度で耐熱性が良好な超硬合金を採用している。
成形型2は、下型3の側面3dに胴型5を外嵌させて、レンズ面成形面3a上に成形に必要な質量に秤量されたガラスプリフォーム6(成形用ガラス材料)を配置し、胴型5の上方から上型4を挿入して、組み立てられる。成形型2にガラスプリフォーム6を組み立てた構成を成形型組立体7と称する。
成形型組立体7では、ガラスプリフォーム6は、レンズ面成形面3a、4a、平面部成形面3b、4b、および胴型5で囲まれた成形空間Sの内部に収容されている。
成形空間Sは、下型3および上型4と胴型5との間の隙間や、場合によっては胴型5に設けられた図示しない貫通孔などを通して、外部と連通している。
成形型組立体7は、後述する成形装置内に配置されて、レンズ1の成形に用いられる。
図4に示すように、ガラスプリフォーム6は、ガラス成形体6Aと、ガラス成形体6Aの表面6aに塗布された離型剤6Bとからなる。
ガラス成形体6Aは、レンズ1に用いるガラス材料を適宜の形状に成形した塊状の部材である。ガラス成形体6Aの成形手段は、モールド成形でもよいし、切削、研磨等の機械加工でもよい。
ガラス成形体6Aの形状は、図4では、一例として、球形に描かれている。ただし、ガラス成形体6Aの形状は、成形型2によってプレス成形可能な形状であれば、球形には限定されない。ガラス成形体6Aの形状は、球形の他にも、例えば、円板状、回転楕円体状、レンズ1に対する相似形状などの形状でもよい。
離型剤6Bは、離型剤9と同様、微細化されたグラファイトを含む。本実施形態では、離型剤6Bは、微細化されたグラファイトを液体中に分散させた塗布液をガラス成形体6Aの表面6aに塗布、乾燥することによって形成される。
離型剤6Bの構成は、離型剤9と異なっていてもよいが、例えば、本実施形態では、一例として、離型剤9と同一の構成である。
次に、本実施形態の光学素子成形方法について説明する。
図5は、本発明の実施形態の光学素子成形方法のフローを示すフローチャートである。図6、7は、本発明の実施形態の光学素子成形方法の離型剤塗布工程の模式的な工程説明図である。図8は、本発明の実施形態の光学素子成形方法の成形工程のフローを示すフローチャートである。図9は、本発明の実施形態の光学素子成形方法に用いる成形装置の構成例を示す模式的な断面図である。図10は、本発明の実施形態の光学素子成形方法の成形工程の模式的な工程説明図である。図11は、本発明の実施形態の光学素子成形方法の成形工程の模式的な工程説明図である。図12は、本発明の実施形態の光学素子成形方法に用いる離型剤の作用を説明する模式図である。図13は、本発明の実施形態の光学素子成形方法の成形品加熱工程の模式的な工程説明図である。
本実施形態の光学素子成形方法は、図5に示すステップS1〜S5を図5に示すフローにしたがって実行する方法である。
ステップS1、S2では、離型剤塗布工程および乾燥工程を行う。ステップS1、2は、離型膜の表面およびガラス材料の表面の少なくとも一方に、微細化されたグラファイトを含む離型剤を配置することを含む工程である。
本実施形態における離型剤塗布工程では、離型剤の成分を液体に分散させた離型剤分散液L(塗布液)を調製して、離型剤分散液Lを、下型3、上型4の離型膜部3m、4mと、ガラス成形体6Aの表面6aとに塗布する。離型剤分散液Lは、ステップS1よりも前に調整しておく。
本実施形態における乾燥工程では、それぞれ塗布された離型剤分散液Lを乾燥させる。
ステップS1、S2は、それぞれの対象物である下型3、上型4、およびガラス成形体6Aに対して、同時に実行してもよいし、対象物ごとに実行してもよい。
ステップS1、S2を対象物ごとに実行する場合、実行タイミングは異なっていてもよい。
離型剤分散液Lを製造するには、まず、離型剤9(6B)を構成するグラファイトの微細化物およびグラフェンの少なくとも一方を形成する。
グラファイトの微細化物は、微細化物の層厚が30nm以下になるようにグラファイトを機械的に微細化して形成する。グラファイトの微細化物の層厚方向に見た場合の大きさは、10μm×10μm以下になるようにすればよい。
微細化物の厚さ方向から見た大きさは、5μm×5μm以下としてもよく、1μm×1μm以下としてもよい。
このようにして製造されるグラファイトの微細化物には、グラフェン単体が含まれていてもよい。
グラフェンの場合、層厚は原子1個分であるため、5nm以下は満たされている。グラフェンの厚さ方向から見た大きさは、グラファイトの微細化物と同様の大きさとしてもよい。例えば、10μm×10μmを越える場合に、適宜破砕して、10μm×10μm以下、5μm×5μm以下、あるいは1μm×1μm以下としてもよい。
次に、形成されたグラファイトの微細化物およびグラフェンの少なくとも一方を純水に混入し、超音波振動を印加して微細化物を純水中に分散させる。微細化物が分散したら、沈殿物を除く液を離型剤分散液Lとして取り分ける。
離型剤分散液L中の離型剤9(6B)の濃度は、塗布面に付着する離型剤9(6B)の量が過剰にならない濃度にする。離型剤9(6B)の量が少なすぎると、離型性が低下する。離型剤9(6B)の量が多すぎると、塗布面に付着する離型剤9(6B)の重なり合いが生じて、成形時に離型剤9(6B)がガラス材料に表面に許容できない深さの窪みを発生させる可能性がある。窪みの許容量の例としては、30nm以下を挙げることができる。
例えば、塗布面に付着する離型剤9(6B)の量が過剰にならない離型剤分散液L中の離型剤9(6B)の濃度は、0.001%以上、0.1%以下とすればよい。
まず、離型膜部3m(4m)を対象としたステップS1、S2について説明する。
ステップS1において、離型剤分散液Lを離型膜部3m(4m)に塗布する手段としては、例えば、スプレー法、インクジェット法、ディップ法、スピンコート法などを挙げることができる。
本実施形態では、一例としてスプレー法を採用している。
スプレー法によって、離型剤分散液Lの塗布を行うには、図6に示すように、離型剤分散液Lを加圧して、スプレーノズル8から離型膜部3m(4m)に向けて噴射させる。スプレーノズル8から噴射された離型剤分散液Lは、微細な液滴となって離型膜部3m(4m)に付着する。
離型剤分散液Lが、離型膜部3m(4m)の全体に塗布できたら、離型剤分散液Lの噴射を停止する。
例えば、離型膜部3m(4m)の直径が15mmの場合、離型剤分散液Lにおける離型剤の濃度を0.001%とし、0.1mL〜0.3mL程度塗布することが好適である。
以上で、ステップS1が終了する。
ステップS2では、離型膜部3m(4m)に塗布された離型剤分散液Lを乾燥させる。
乾燥方法としては、例えば、塗布部に温風を当てる方法、下型3(上型4)を加熱する方法などを挙げることができる。
離型剤分散液L中の液体が蒸発すると、離型膜部3m(4m)上に離型剤9が残る。
このようにして、図3に模式的に示すように、離型膜部3m(4m)上に、離型剤9を層状に配置することができる。
以上で、ステップS2が終了する。
次に、ガラス成形体6Aの表面6aを対象としたステップS1、S2について説明する。
ステップS1において、離型剤分散液Lをガラス成形体6Aに塗布する手段としては、例えば、スプレー法、インクジェット法、ディップ法、スピンコート法などを挙げることができる。
本実施形態では、一例としてスプレー法を採用している。
スプレー法によって、離型剤分散液Lの塗布を行うには、図7に示すように、離型剤分散液Lを加圧して、スプレーノズル8からガラス成形体6Aに向けて噴射させる。スプレーノズル8から噴射された離型剤分散液Lは、微細な液滴となって表面6aに付着する。
離型剤分散液Lが、表面6aの全体に塗布できたら、離型剤分散液Lの噴射を停止する。
以上で、ステップS1が終了する。
ステップS2では、表面6aに塗布された離型剤分散液Lを乾燥させる。
乾燥方法としては、例えば、塗布部に温風を当てる方法、ガラス成形体6Aを加熱する方法などを挙げることができる。
離型剤分散液L中の液体が蒸発すると、表面6a上に離型剤6Bが残る。
このようにして、図4に模式的に示すように、離型膜部3m(4m)上に、離型剤6Bを層状に配置することができる。
以上で、ステップS2が終了する。
上述の各ステップS2が終了したら、図5に示すステップS3を行う。
ステップS3は、離型剤を配置した後、ガラス材料を加熱して、成形型によってプレス成形することを含む成形工程である。
本実施形態では、ステップS3は、図8に示すステップS11〜S15を図8に示すフローに沿って実行する。
ステップS11では、図1示す成形型組立体7を形成する。
まず、ガラスプリフォーム6を下型3の離型膜部3m上に配置し、胴型5を下型3の側面3dに外嵌して取り付ける。その後、胴型5の内周面5aに上型4の側面4dを内周面5aに挿入して、ガラスプリフォーム6をレンズ面成形面3a、4aの間に挟む。
以上で、ステップS11が終了する。
ステップS12〜S14は、図9に示す成形装置100を用いて行われる。
ステップS12〜S14を説明する前に、成形装置100の構成について説明する。
図9に示すように、成形装置100は、成形型2の内部に配置された図示略のガラスプリフォーム6を加熱、加圧、冷却して、成形型2内の成形面の形状を転写する装置である。
成形装置100は、図9に示すように、成形型2を搬入する開口部17aと成形型2を搬出する開口部17bとを側部に備える成形室チャンバー17と、成形室チャンバー17の内部に設けられた、加熱ステージ10A、プレスステージ10B、および冷却ステージ10Cとを備える。
開口部17a、17bには、それぞれ、シャッター18a、18bが設置され、これにより開閉可能とされている。シャッター18a、18bを閉止すると、成形室チャンバー17は密閉状態になる。
成形室チャンバー17には、成形室チャンバー17内の真空引きを行う真空引き用管路15と、成形室チャンバー17内に不活性ガスGを供給する不活性ガス流入路16とが設けられている。
真空引き用管路15の成形室チャンバー17と反対側の端部(図示略)は、図示略の真空ポンプに接続されている。
また、不活性ガス流入路16の成形室チャンバー17と反対側の端部(図示略)は、図示略の不活性ガス供給源に接続されている。
不活性ガスGとしては、成形時の最高温度以下の温度において、酸化されずかつ成形型2およびガラスプリフォーム6と化学反応を起こさないガス、例えば、窒素ガスやアルゴンガスなどのガスを採用することができる。本実施形態では、不活性ガスGは、一例として、窒素ガスを採用している。
本実施形態では、成形室チャンバー17は、シャッター18a、18bを閉じた状態では密閉状態となる。このため、この密閉状態で真空引き用管路15を通して真空引き行った後に、不活性ガス流入路16から不活性ガスGを流入させることで成形室チャンバー17の内部に、不活性ガスGを充填し、非酸化性雰囲気に置換することができる。
ただし、成形室チャンバー17は、半密閉構造とすることも可能である。この場合、不活性ガスGを成形室チャンバー17内に、常時供給して成形室チャンバー17内を陽圧に保つことにより、外部の空気の流入を抑制し、内部の不活性ガス雰囲気を維持することができる。この場合には、真空引き用管路15や図示略の真空ポンプは省略することも可能である。
成形室チャンバー17の内部には、開口部17aから開口部17bに向かう経路上に、加熱ステージ10A、プレスステージ10B、および冷却ステージ10Cがこの順に近接して配置されている。
加熱ステージ10Aは、成形型2および成形型2内のガラスプリフォーム6を加熱する装置部分である。
プレスステージ10Bは、加熱ステージ10Aによって加熱されたガラスプリフォーム6を成形可能な温度まで加熱してからプレス成形する装置部分である。
冷却ステージ10Cは、プレス成形によりレンズ1の形状が付与されたガラスプリフォーム6を冷却する装置部分である。
本実施形態では、加熱ステージ10A、プレスステージ10B、冷却ステージ10Cの装置構成は共通であり、それぞれプレスプレート11、12、エアーシリンダー13を備える。
プレスプレート11は、成形型2の下型3を下方から支持して、下型3を加熱する円板状部材である。プレスプレート11にはヒーターが内蔵されている。
プレスプレート12は、プレスプレート11の上方に対向して配置され、上型4に上方から当接して上型4を加熱する円板状部材である。プレスプレート12にはヒーターが内蔵されている。
エアーシリンダー13は、プレスプレート12を昇降させて、降下時に成形型2を上方から加圧する装置部分である。エアーシリンダー13は、成形室チャンバー17の内部において進退するように、成形室チャンバー17の上部に取り付けられている。
以下、これらのプレスプレート11、12、エアーシリンダー13が、加熱ステージ10A、プレスステージ10B、冷却ステージ10Cのいずれに属する部材か区別する必要がある場合には、各ステージの符号に添字A、B、Cを付して区別する。例えば、加熱ステージ10Aのプレスプレート11、12、エアーシリンダー13は、それぞれプレスプレート11A、12A、エアーシリンダー13Aのように表す。
各プレスプレート11、12の温度は、独立に制御することが可能である。
各プレスプレート11の上面は水平方向に整列されており、成形型2を水平方向に摺動移動させることが可能である。
各エアーシリンダー13の昇降動作や、加圧力は、それぞれ独立に制御することが可能である。
また、成形室チャンバー17の内部には、成形型2を、開口部17aから開口部17bに向かって、加熱ステージ10A、プレスステージ10B、冷却ステージ10Cの各プレスプレート11上を移動する図示略の搬送手段が設けられている。
搬送手段としては、例えば、ロボットアームなどを採用することができる。
ステップS12では、成形装置100によって成形型組立体7を加熱する。
まず、成形型組立体7の搬入に先立って、成形装置100の成形室チャンバー17内の雰囲気を不活性ガスGで置換する。
具体的には、シャッター18a、18bによって、それぞれ開口部17a、17bを閉じた状態で、真空引き用管路15から真空引きを行って、100Pa以下程度に減圧する。その後、不活性ガス流入路16から不活性ガスGを導入して、成形室チャンバー17を大気圧に比べてわずかに陽圧となる非酸化雰囲気を形成しておく。本実施形態の非酸化雰囲気としては、例えば、酸素濃度が10ppm以下であればよい。
この状態で、シャッター18aを開けて、開口部17aから成形型組立体7を搬入する。成形装置100内に成形型組立体7を搬入したら、図示略の搬送手段によって、成形型組立体7を加熱ステージ10Aのプレスプレート11A上に移動する。その後、シャッター18aを閉じる。
成形型組立体7がプレスプレート11A上に移動したら、図10に示すように、エアーシリンダー13Aを駆動し、プレスプレート11A、12Aによって成形型組立体7を中心軸線Pに沿う方向に挟持する。
プレスプレート11A、12Aは、予め、ヒーターで加熱され、ガラスプリフォーム6が軟化する温度に昇温される。
成形型組立体7がプレスプレート11A、12Aによって挟持されると、プレスプレート11A、12Aからの熱伝導によって下型3、上型4が加熱される。この結果、下型3および上型4に挟まれたガラスプリフォーム6も昇温される。加熱ステージ10Aでは、ガラスプリフォーム6を、成形温度の近傍まで昇温する。
以上で、ステップS12が終了する。
次に、ステップS13を行う。本ステップでは、成形装置100によって成形型組立体7を加熱下で加圧する。
ガラスプリフォーム6が、成形温度よりもわずかに低い温度まで昇温されたら、エアーシリンダー13Aを上昇して、成形型組立体7の挟持を解除し、図示略の搬送手段によって、成形型組立体7をプレスステージ10Bに移動する。
プレスステージ10Bでは、予め、プレスプレート11B、12Bが成形温度になるように加熱されている。
ガラスプリフォーム6の成形温度として、特に好ましい温度は、屈伏点と軟化点との間の中間付近の温度である。成形温度は、ガラスプリフォーム6のガラス成形体6Aの種類に応じて設定する。ガラス成形体6Aに用いることができるガラス材料の成形温度は、例えば、490℃以上810℃以下程度である。
成形型組立体7がプレスプレート11B上に移動したら、図10に示すように、エアーシリンダー13Bを駆動し、プレスプレート11B、12Bよって成形型組立体7を中心軸線Pに沿う方向に挟持する。
この状態で、ガラスプリフォーム6の温度が成形温度になるまで、成形型2およびガラスプリフォーム6を加熱する。
ガラスプリフォーム6が成形温度になるまで加熱したら、図11に示すように、エアーシリンダー13Bを駆動して、プレスプレート12Bを降下する。プレスプレート12Bは、成形型2を上方から加圧して、上型4を押し下げる。
成形空間S内のガラスプリフォーム6は、レンズ面成形面3aおよび平面部成形面3bと、レンズ面成形面4aおよび平面部成形面4bとに挟まれて加圧される。ガラスプリフォーム6は、レンズ面成形面3aおよび平面部成形面3bと、レンズ面成形面4aおよび平面部成形面4bとの形状に沿って変形する。
レンズ面成形面3a、4bの間隔がレンズ1のレンズ面間隔になるまで、プレスプレート12Bを押し下げたら、エアーシリンダー13Bを停止する。
この結果、変形したガラスプリフォーム6がレンズ面成形面3aおよび平面部成形面3bと、レンズ面成形面4aおよび平面部成形面4bとに密着する。レンズ面成形面3aおよび平面部成形面3bと、レンズ面成形面4aおよび平面部成形面4bとの各形状は、変形したガラスプリフォーム6の表面に転写される。ガラスプリフォーム6は、レンズ1の形状に成形される。
ガラスプリフォーム6の形状が安定したら、エアーシリンダー13Bを上昇して、成形型組立体7の加圧および挟持を解除し、図示略の搬送手段によって、成形型組立体7を、冷却ステージ10Cに移動する。
以上で、ステップS13が終了する。
ステップS13における離型剤6B、9の作用について説明する。
ステップS12、13において、成形室チャンバー17の内部は、酸素が不活性ガスGに置換されて非酸化雰囲気になっている。このため、ステップS12、S13で加熱が行われても、ガラス成形体6A上の離型剤6Bおよび離型膜部3m、4m上の離型剤9は酸化されない。この結果、図12(a)に示すように、成形型組立体7の加圧開始前において、ガラス成形体6Aと離型膜部3m(4m)は、離型剤6B、9を挟んで対向している。
成形型組立体7の加圧が進むと、図12(b)に示すように、ガラス成形体6Aと離型膜部3m(4m)との間に離型剤6B、9が挟まれる。ガラス成形体6Aは、加熱を受けて軟化するため、加圧力に応じて、離型膜部3m(4m)の表面に沿って、離型膜部3m(4m)に対して相対移動する。
このため、離型剤6B、9は、離型膜部3m(4m)の表面に沿う方向にせん断を受ける。
離型剤6B、9は、薄片状の層状体である微細化されたグラファイトを含む。このため、図12(a)、(b)に模式的に示すように、離型剤6B、9の個々の層状体は、層厚方向が、ガラス成形体6A、離型膜部3m(4m)の表面の法線方向と揃う姿勢で、ガラス成形体6A、離型膜部3m(4m)の表面に配置されている。
この結果、ガラス成形体6Aと離型膜部3m(4m)とに挟まれる離型剤6B、9の各層状体は、ガラス成形体6Aと離型膜部3m(4m)の表面の法線方向に押圧される。互いに対向する離型剤6B、9は、それぞれの層厚方向において積層する。
このように、加圧される離型剤6B、9は、全体として、層厚方向および積層方向が揃った積層体を構成する。
このような積層体は、積層方向に直交する方向にせん断を受けると、せん断力の方向に滑りが生じる。このため、離型剤6B、9は、ガラス成形体6Aと離型膜部3m(4m)との間で潤滑剤として作用する。
したがって、ガラス成形体6Aと離型膜部3m(4m)との間の摩擦力が低下し、相対移動が円滑に行われる。このため、ガラス成形体6Aの変形時の歪みも抑制される。
さらに、離型剤6B、9による積層体も全体としてせん断変形するため、対向する層状体同士が密着しても、せん断変形が進むと、積層体としての層厚が均される。すなわち、離型剤6B、9同士が凝集して粒状になることがないため、軟化したガラス成形体6Aに向かって突出することもない。
離型剤分散液Lの塗布バラツキなどによって、孤立した層状体がガラス成形体6Aに食い込んだとしても、層状体自体が薄層であるため、ガラス成形体6Aには、レンズ1として強要できないような凹部が転写されることはない。
さらに、層状体に共通する炭素原子の六員環構造によって、離型剤6B、9は熱伝導率に優れる。このため、離型剤6B、9が離型膜部3m(4m)とガラス成形体6Aとの間に介在することによって、熱伝導が促進される。
離型剤6B、9は、ステップS13における加熱および加圧下において、化学的に安定である。
このため、加熱分解される有機化合物を含む離型剤を用いる場合のように、気化する物質、あるいは加熱分解の際に発生する分子の断片成分が発生して、ガラスの表面に欠陥を生じさせることもない。
また、加熱分解される有機化合物を含む離型剤を用いる場合のように、有機化合物と離型膜部3m、4m、ガラス成形体6Aとの反応生成物が表面に固着して、焼き付きなどを起こすこともない。
ステップS13の後は、ステップS14を行う。本ステップでは、成形装置100によって成形型組立体7を冷却する。
成形型組立体7がプレスプレート11C上に移動したら、図11に示すように、エアーシリンダー13Cを駆動して、プレスプレート12Cを降下する。プレスプレート12Cが上型4の上面4fと密着したら、プレスプレート12Cの降下を停止する。プレスプレート11C、12Cは、成形型組立体7を中心軸線Pに沿う方向に挟持する。
これにより、より高温の成形型組立体7から、より低温のプレスプレート11C、12Cに熱伝導が起こる。この結果、成形型2およびガラス成形体6Aの冷却が進む。
ガラス成形体6Aが歪点以下に冷却され、固化したら、エアーシリンダー13Cを駆動して、プレスプレート12Cを上昇させる。成形型組立体7の挟持が解除される。
成形型2の内部には、固化した状態の成形品26が形成される。
そして、シャッター18bを開放して、図示略の搬送手段によって、成形型組立体7を開口部17bから成形室チャンバー17の外部に搬出し、シャッター18bを閉じる。
以上で、ステップS14が終了する。
以上、1つの成形型組立体7に注目して、ステップS12〜S14における成形装置100の動作について説明した。成形装置100では、例えば、搬送タクトを設けることによって、順次、複数の成形型組立体7を投入することが可能である。
この場合、成形室チャンバー17内の加熱ステージ10A、プレスステージ10B、冷却ステージ10Cにおいて、上記の動作を搬送タクトごとに繰り返すことにより、複数の成形型組立体7に対して上記の各工程を並行して行うことができる。これにより、複数の成形型組立体7を用いて、成形品26を連続的に製造することができる。
次に、ステップS15を行う。本ステップでは、成形品26を取り出す。
成形室チャンバー17の外部に成形型組立体7を搬出したら、上型4および下型3の少なくとも一方を胴型5から引き抜いて成形品26を離型する。
このとき、図12(c)に模式的に示すように、成形品26と離型膜部3m(4m)との間には、各表面の法線方向におよび法線に直交する方向において、それぞれプレス成形時とは逆方向の相対移動が起こる。
離型剤6B、9による積層体は、積層方向に直交する方向のせん断力と、積層方向に引き離す引っ張り力とを受けて、成形品26上の離型剤6B’と、離型膜部3m(4m)上の離型剤9’とに分離する。離型剤6B’、9’は、それぞれ分離前の離型剤6B、9の成分および層厚とは異なることを表す。離型剤6B’には離型剤9の一部が、離型剤9’には離型剤6Bの一部が、それぞれ混じる。
このように成形品26を離型する際の相対移動においても、成形品26の表面と離型膜部3m、4mとの間に、離型剤6B、9が介在している。このため、離型剤6B、9を配置しない場合のように、離型時に成形品26の表面の全体と、離型膜部3m、4mとが、直接接触して摺動することはない。成形品26の表面と、離型膜部3m、4mとが、直接接触している部位があるとしても、全表面に対する面積比は離型剤6B、9の量に応じて減少する。このため、本実施形態によれば、成形品26の表面が、離型膜部3m、4mに固着することがなく、成形品26を円滑に離型することができる。
また、成形品26の表面に付着する離型剤6B’は、化学的に安定であるため、離型剤6B’は成形品26のガラス成分と化学反応を起こさない。このため、成形品26の表面が変質したり、反応生成物が成形品26の表面に固着したりすることもない。
成形品26を成形型2から取り出したら、ステップS15が終了する。
以上で、図5に示すステップS3が終了する。
ステップS15が終了した成形型2は、他のガラスプリフォーム6を用いて成形を行うために再使用することができる。その際、離型剤9’の残存量によっては、ステップS1における離型剤9の塗布は省略してもよい。あるいは、離型剤9’の残存量によっては、ステップS1における離型剤9の塗布量を低減してもよい。
図5に示すように、ステップS3が終了したら、ステップS4を行う。本ステップは、成形品26を加熱して、酸化雰囲気中で加熱して、離型剤6B’を成形品26の表面から除去することを含む成形品加熱工程である。
本実施形態では、ステップS4における加熱は、アニール処理の加熱も兼ねる。
本実施形態では、成形型2から取り出した成形品26を、例えば、電気炉などからなる加熱炉110に搬入する。
加熱炉110は、チャンバー20の内部に、成形品26を載置する載置台22と、加熱を行うヒーター21を備える。
チャンバー20には、チャンバー20内に空気を供給する管路23が設けられる。
載置台22上に成形品26を載置した後、ヒーター21による加熱を開始する。チャンバー20内の温度(加熱温度)は、離型剤6B’が酸化可能な温度であって、成形品26のアニール温度を超えない温度とする。炭素は、400℃以上で酸化が進むため、微細化されたグラファイトを除去するための加熱温度としては、400℃以上とすればよい。
例えば、ガラス成形体6Aの屈伏点が550℃のようなガラス材料であれば、加熱温度は400℃にすることができる。加熱時間は、成形品26の表面に残留する離型剤6B’をすべて酸化できる時間を実験などによって予め求めておく。加熱時間は、例えば、2時間とすることができる。
加熱中、チャンバー20の内部が酸化性雰囲気を保つため、管路23からは、必要に応じて酸素の供給と、酸化ガスの排気とを行う。
このような加熱を行うことによって、成形品26の表面に残存する離型剤6B’は、酸化される。酸化物は二酸化炭素等のガスであるため、成形品26の表面に残ることはない。このようにして、離型剤6B’は、成形品26の表面から除去される。
予め設定した加熱時間が経過したら、ステップS4が終了する。
ステップS4の後、ステップS5を行う。本ステップは、成形品26の歪み除去を行うために、成形品26を徐冷する成形品徐冷工程である。
本ステップでは、チャンバー20内の成形品26の温度が、アニール処理に必要な冷却曲線に沿って降下するように、ヒーター21の温度を制御する。
目標の冷却温度まで、冷却できたら、ヒーター21の加熱を停止して、成形品26をチャンバー20の外部に搬出する。
以上で、ステップS5が終了し、本実施形態の光学素子成形方法が終了する。
加熱炉110から取り出した成形品26は、必要に応じて、レンズ外周部を切削する等の加工を施して外径を整えたり、芯出ししたりする後加工を行う。さらに、必要に応じて、反射防止膜コート等の表面処理を行う。
このようにして、レンズ1が製造される。
本実施形態の光学素子成形方法によれば、ガラス成形体6Aの表面6aに離型剤6Bを配置し、かつ下型3の離型膜部3mと上型4の離型膜部4mとに離型剤9を配置して、ガラス成形体6Aを非酸化雰囲気でプレス成形する。
その際、離型剤6B、9は、微細化されたグラファイトを含むため、ガラス成形体6Aと、離型膜部3m、4mとの間の摩擦が低減される。このため、プレス成形時の加圧および成形品26の離型を円滑に行うことができる。この結果、プレス成形時および離型時の不良の発生を抑制できる。
さらに、離型剤6B、9は、プレス成形時に、化学反応を起こして、ガスを発生したり、ガラス成形体6Aおよび離型膜部3m、4mに反応生成物を付着させたりしない。このため、成形品26の表面における着色、泡、融着などの不良の発生を抑制できる。また、離型膜部3m、4mの成形による劣化を防止できる。
本実施形態では、特に、離型剤6B、9を構成する層状体の層厚を30nm以下にしている。このため、層状体が、成形品26に食い込んで成形された場合にも、成形品26に生じる窪みが30nm以下の微小な窪みになるため、窪みが原因となるレンズ1の外観不良や光学特性の劣化を防止できる。
成形後、成形品26の表面に付着する離型剤6B’は、炭素を主成分とするため、大気雰囲気等の酸化性雰囲気中で加熱するのみで容易に除去できる。本実施形態では、離型剤6B’を除去するために成形品26に薬剤を塗布したりする必要がない。このため薬剤との反応物などが成形品26の表面に付着することを防止できる。
本実施形態では、離型剤6B’は、成形品26のアニール処理を行う際の加熱によって除去される。このため、離型剤6B’の除去するための専用の工程が不要になり、迅速にレンズ1を製造することができる。
以上説明したように、本実施形態の光学素子成形方法によれば、不良の発生を抑制できるとともに、成形型の寿命を延ばすことができる。
なお、上記の実施形態の説明では、離型剤6B、9をガラス成形体6A、離型膜部3m、4mに配置する際に、離型剤6B、9を液体に分散させた離型剤分散液Lを、ガラス成形体6A、離型膜部3m、4mに塗布する例で説明した。しかし、離型剤6B、9をガラス成形体6A、離型膜部3m、4mに配置する手段は、離型剤分散液Lの塗布には限定されない。例えば、離型剤6B、9は、粉体として、ガラス成形体6A、離型膜部3m、4mに直接噴射たり、静電吸着させたりして配置してもよい。
上記実施形態の説明では、離型剤を、離型膜の表面およびガラス材料の表面に配置した場合の例で説明した。しかし、離型剤は、プレス成形時に、離型膜とガラス材料との間に介在していればよい。このため、離型剤は、離型膜の表面およびガラス材料の表面のいずれか一方に配置するだけでもよい。
上記実施形態の説明では、アニール処理における加熱時に離型剤の除去を行うようした例で説明した。しかし、アニール処理における加熱と、離型剤を除去するための加熱とは、異なるタイミングで行うようにしてもよい。
この場合、上記実施形態におけるステップS4の加熱は、離型剤を除去するためだけに行われる。この場合、ステップS5は、成形品を加熱炉から取り出す温度の冷却できれば、アニール処理に必要な冷却曲線に沿って徐冷する必要はない。
以上、本発明の好ましい実施形態を説明したが、本発明はこれら実施形態及びその変形例に限定されることはない。本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、構成の付加、省略、置換、およびその他の変更が可能である。
また、本発明は前述した説明によって限定されることはなく、添付の特許請求の範囲によってのみ限定される。
1 レンズ(光学素子)
2 成形型
3 下型
3a、4a レンズ面成形面(型面)
3b、4b 平面部成形面(型面)
3m、4m 離型膜部(離型膜)
4 上型
5 胴型
6 ガラスプリフォーム(成形用ガラス材料)
6A ガラス成形体
6B、6B’、9、9’ 離型剤
7 成形型組立体
26 成形品
100 成形装置
110 加熱炉
L 離型剤分散液(塗布液)

Claims (3)

  1. 金属膜からなる離型膜を表面に有する成形型によって、加熱されたガラス材料をプレス成形して光学素子を形成する光学素子成形方法であって、
    前記離型膜の表面および前記ガラス材料の表面の少なくとも一方に、微細化されたグラファイトを含む離型剤を配置することと、
    前記離型剤を配置した後、前記ガラス材料を加熱して、前記成形型によってプレス成形することと、
    プレス成形された前記ガラス材料を酸化雰囲気中で加熱して、前記微細化されたグラファイトを、前記ガラス材料の表面から除去することと、
    を含み、
    前記微細化されたグラファイトが液体に分散された塗布液を、前記離型膜の表面および前記ガラス材料の表面の少なくとも一方に塗布することと、
    塗布された前記塗布液を乾燥させることと、
    によって、
    前記離型膜の表面および前記ガラス材料の表面の少なくとも一方に、前記離型剤を配置する
    光学素子成形方法。
  2. プレス成形された前記ガラス材料をアニール処理する際に、酸化雰囲気中で加熱して、前記微細化されたグラファイトを、前記ガラス材料の表面から除去する、
    請求項1に記載の光学素子成形方法。
  3. 前記微細化されたグラファイトは、
    厚さが30nm以下である、
    請求項1または2に記載の光学素子成形方法。
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