JP6501374B1 - ドリル - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明に係るドリルは、回転軸対称に形成された2つの切刃を有し、各切刃が、ドリル先端からドリル外周側に向けて形成され、曲線を含む形状となる主切刃を有するドリルであって、前記主切刃よりドリル先端側に形成され、曲線を含む形状となるシンニング切刃と、前記シンニング切刃よりドリル外周側に形成され、曲線を含む形状となるU字形切刃とを有する。
【選択図】図1
Description
しかし、ハンドドリルやボール盤等の穴あけ時に作業者の力が必要な装置に使用されるドリルについては、積極的な研究開発が行われることがなく、数十年に亘って同じ様な形状のドリルが用いられているのが現状である。
しかし、このようなドリルについては、ドリル自体の強度や剛性を確保することが先決であると考えられており、加えてドリルを購入した作業者が自分の好みにドリルを研磨して使用していたという実状もあって、ドリルメーカーにおいて切削抵抗を低減させるための研究は殆どなされていなかった。
このドリルは、回転軸対称に2枚の切刃を有し、先端部にシンニングが施されているドリルであって、チゼル幅が0.05mm〜0.3mmであり且つシンニングがドリル先端側から見た場合において両切刃の刃先を結んだ直線に対して1°〜4°傾いた角度で施されているものである。
しかしながら、このドリルは、高硬度の鋼板に対応するためにシンニングにより形成されるすくい角を90°より大きく設定している。
そのため、中心部の切削力が弱く、ハンドドリルでの穴あけ作業時においてワークが中心から外周刃にかかるまでの間はかなりの力が必要となる。
また、チゼル幅が非常に狭いために、使用時に先端が欠けてしまう虞があり、特に粉末高速度鋼を材料とするドリルでは、脆くなるために一層先端が欠け易くなる。
このドリルは、回転軸対称に2枚の切刃を有し、先端部にシンニングが施されているドリルであって、主切刃により形成されたすくい角θ1と、シンニング切刃により形成されたすくい角θ2とがチゼルの直下を除いて、θ1>θ2>0°を満たすものである。
この結果、ドリル貫通の際に、薄い板やアクリル等の被削材では、穿孔している被削材の孔内周部から亀裂が発生したり、被削材が変形したりすることがしばしば起こるという問題があった。
上記問題は、ドリルの捩れ角(=すくい角/外周部)が30°前後の一般的なドリルでは起こり得ることである。
この現象は、ドリルの捩れ角を緩やかにすることで解消されるものの、切屑の排出等の別の問題が発生し、ドリル自体の切れ味が低下する虞もあり、単に捩れ角を緩やかにするだけではこれらの問題を解決することはできない。
本発明は、上記したような従来技術の問題点を解決すべくなされたものであって、ドリル貫通の際に、穿孔している被削材の孔内周部から亀裂が発生したり、被削材が変形したりする虞が少なく、且つデラミネーションが生じる虞の少ないドリルを提供するものである。
各切刃が、ドリル先端からドリル外周側に向けて形成され、ドリル先端側から見たとき曲線を含む形状となる主切刃を有するドリルであって、
前記主切刃よりドリル先端側に形成され、ドリル先端側から見たとき曲線を含む形状となるシンニング切刃と、
前記シンニング切刃よりドリル外周側に形成され、ドリル先端側から見たとき曲線を含む形状となるU字形切刃と、
回転軸対称に形成された2つの逃げ面とを有し、
前記逃げ面には、ドリル先端側から見たとき曲線を含む形状となる背溝が形成されることで、第一マージン部、及び、当該第一マージン部のヒール側となる第二マージン部が形成されており、
前記第二マージン部には、第二マージン部切刃が形成されており、
前記主切刃の外周及び前記第二マージン部切刃の外周には、複数の外周溝が形成されており、
前記複数の外周溝の各溝は、前記主切刃の外周に設けられた溝と前記第二マージン部切刃の外周に設けられた溝が前記ドリルの長手方向において交互になるように配置されていることを特徴とするドリルに関する。
すなわち、ドリル貫通の際に、穿孔している被削材の孔内周部から亀裂が発生したり、薄板が変形したりする虞がなく、且つデラミネーションを誘引する虞のないドリルとすることができる。
また、請求項1に係る発明によれば、回転軸対称に形成された2つの逃げ面を有し、逃げ面には、ドリル先端側から見たとき曲線を含む形状となる背溝が形成されることで、第一マージン部、及び、第一マージン部のヒール側となる第二マージン部を有することにより、ドリル貫通の際に、穿孔している被削材の孔内周部からの亀裂の発生や、薄板の変形をより容易に防止でき、且つデラミネーションをより容易に防止できる。
加えて、請求項1に係る発明によれば、第二マージン部には、第二マージン部切刃が形成されているため、切削時の僅かな弾性変形によって切除し難い部分を切除することができ、より容易にデラミネーションを防止できる。
さらに、請求項1に係る発明によれば、主切刃の外周及び第二マージン部切刃の外周には、複数の外周溝が形成されているため、切削時の発熱を抑えることができ、切削時の発熱による加工穴の変形や被削物の材質の変性を防止することができる。
図1は、第一実施形態に係るドリルの上面図(ドリルを先端側から見た図)、図2は、第一実施形態に係るドリルの正面図(側面図)である。
ドリル(1)の材質としては、例えばJIS・SKH40(粉末ハイス鋼)や超硬合金等が挙げられ、ドリル(1)の硬度は、JIS・SKH40の場合はHRC66〜68であることが好ましく、超硬合金の場合はHRA90程度であることが好ましい。
ドリル(1)の上半部は、回転軸対称に形成された2つの切刃を有し、先端部に2つの略U字状のシンニングが施されている。
尚、シンニングとは、ドリルの心厚部に切れ刃を形成する研磨のことを指す。シンニングによりチゼルの心厚だけを少し落とし、負のすくい角として切れ刃を形成することができる。
ドリル(1)の上半部には、切削孔が曲がって形成されないように案内の役割を担うマージン部(M)が形成されていることが望ましい。
マージン部(M)が形成されることにより、曲線を含む形状となる背溝(BC)が形成される。
ドリル(1)の下半部は、ハンドドリルやボール盤等に取付け取外し可能となるように形成されている。
なお、図示例において、主切刃(4)は、U字形切刃(5)の端部(5E)からドリル外周部(O)(すなわち、ドリル径(6))まで直線状に延びているが、曲線状に延びていてもよいし、直線状部分と曲線状部分とを含む線状に延びていてもよい。これは本発明の全ての実施形態に共通する。
また、主切刃(4)は鉛直方向に対してすくい角θ1を有するように形成されている。
尚、図1および図2中の符号(7)は、逃げ面を指す。
具体的には、ドリル直径φの10%以下に設定されていることが好ましい。
例えば、ドリル直径φが2mm〜13mmの場合、チゼル幅(2W)はドリル直径の増減に応じて0.1mm〜1.3mmの範囲で増減させて設定される。
捩れ角δが10°未満、あるいは30°を超えるように設定すると、切屑を排出し難くなり、ドリルの切れ味が低下するため好ましくない。
捩れ角を10°〜30°を満たすように設定すると、切屑の排出を容易にでき且つドリルの切れ味を向上させることができる。
それゆえに、捩れ角δは18°前後に設定することが好ましい。
ドリル先端部に施されたシンニング面(3S)は、略U字状となっており、シンニング面(3S)が鉛直方向に対して傾斜角3γを有し、δ≦3γを満たし、さらにシンニング面(3S)の傾斜角3γは、15°〜40°の範囲(例えば25°)に設定されていることが好ましい。
また、シンニング切刃(3)は鉛直方向に対してすくい角θ2を有するように形成されている。
第一実施形態に係るドリル(1)において、U字形切刃(5)はシンニング切刃(3)に接した状態で設けられる。
先端部に施されたU字形切刃の面(5S)は、略U字状となっており、U字形切刃の面(5S)が鉛直方向に対して傾斜角5γを有し、δ≦5γを満たし、さらにU字形切刃の面(5S)の傾斜角5γは、15°〜40°の範囲(例えば25°)に設定されていることが好ましい。
また、U字形切刃(5)は鉛直方向に対してすくい角θ3を有するように形成されている。
U字形切刃(5)をシンニング切刃(3)に接した状態で設けることにより、切削時に生じる急激なすくい角の増加を防ぐことができる。
すなわち、これらのすくい角の関係は、θ1>θ3≧θ2>0°となる。
但し、チゼル(2)の直下のみでθ2≒0°(ほぼ0°に近いθ2<0°)となる。
また、主切刃(4)により形成された刃先角α1と、シンニング切刃(3)により形成された刃先角α2とは、α1≦α2<90°を満たすことが望ましい。
主切刃(4)はドリル外周寄りに残っているため、主切刃(4)のすくい角θ1は捩れ角δとほぼ同等となり、被削材が比較的厚い場合、例えば金属等の場合、第一実施形態に係るドリル(1)は特に好結果を得ることができる。
また、切削抵抗が低減されることで、穴あけ精度が向上し、穴あけ時間が短縮するため作業効率が向上する。さらにドリルの寿命を大幅に延ばすことも可能となる。
図3は、第二実施形態に係るドリルの上面図(ドリルを先端側から見た図)、図4は、第二実施形態に係るドリルの正面図(側面図)である。
なお、図3及び図4において、図1及び図2に示すドリルと同じ構成要素については同じ符号を付している。
U字形切刃(5)は外周切刃(CE)に繋がっており、U字形切刃(5)を設けたことにより外周切刃(CE)は鋭くなるが、すくい角はU字形切刃(5)から残された部分(RP)以外は緩やかになる。
U字形切刃(5)をドリル外周部(O)に接した状態で設けることにより、被削材の穿孔時に、ドリル外周に進むにつれて急激に増加するすくい角の増加を防ぐことができる。
すなわち、これらのすくい角の関係は、θ1>θ3≧θ2>0°となる。
第二実施形態に係るドリル(11)は上記構成を備えることにより、特にCFRPの加工時により好ましい結果を得ることができる。
より具体的には、上記形状により、ドリル外周部(O)で炭素繊維を切り除く作用が生まれること、及びドリル外周部(O)を除く切刃のすくい角が緩やかになること等により、ドリル(11)の切削力が大幅に向上すると共に、被削材の孔貫通部付近に於いて炭素繊維の毛羽立ち、デラミネーション等のCFRP等の被削材の穿孔時の問題が解消される。
U字形切刃の面(5S)の傾斜角5γは外周切刃に干渉しない様、δ>5γに設定する。
また、切削抵抗が低減されることで、穴あけ精度が向上し、穴あけ時間が短縮するため作業効率が向上する。さらにドリルの寿命を大幅に延ばすことも可能となる。
図5は、第三実施形態に係るドリルの上面図(ドリルを先端側から見た図)、図6は、第三実施形態に係るドリルの正面図(側面図)である。
なお、図5及び図6において、図1及び図2に示すドリルと同じ構成要素については同じ符号を付している。
U字形切刃(5)は外周切刃(CE)とシンニング切刃(3)に接しており、外周切刃(CE)は鋭くなるが、主切刃(4)と入れ替わったU字形切刃(5)のすくい角θ3は緩やかになる。
U字形切刃(5)を主切刃(4)全体に設けることにより、すくい角の急激な増加を防ぐことができる。
すなわち、これらのすくい角の関係は、θ1>θ3≧θ2>0°となる。
第三実施形態に係るドリル(21)は上記構成を備えることにより、特にCFRPの加工時により好ましい結果を得ることができる。
より具体的には、上記形状により、ドリル外周部(O)で炭素繊維を切り除く作用が生まれること、及び、ドリル外周部(O)を除く切刃のすくい角が緩やかになること等により、ドリル(21)の切削力が大幅に向上すると共に、孔貫通部付近に於いて炭素繊維の毛羽立ち、デラミネーション等のCFRP等の被削材の穿孔時の問題が解消される。
また、切削抵抗が低減されることで、穴あけ精度が向上し、穴あけ時間が短縮するため作業効率が向上する。さらにドリルの寿命を大幅に延ばすことも可能となる。
図7は、第四実施形態に係るドリルの上面図(ドリルを先端側から見た図)、図8は、第四実施形態に係るドリルの正面図(側面図)である。
なお、図7及び図8において、図1及び図2に示すドリルと同じ構成要素については同じ符号を付している。
第四実施形態に係るドリル(31)は、回転軸対称に形成された2つの逃げ面(7)を有し、2つの逃げ面(7)にはそれぞれ曲線を含む形状となる背溝(BC)が形成されている。
これにより、ドリル外周部(O)をダブルマージン形状(すなわち、第一マージン部(M1)と第二マージン部(M2)が設けられている)とし、ヒール側に配した第二マージン部(M2)にも切刃(第二マージン部切刃(M2C))を設け、実質4枚刃形状とすることで、CFRP等の被削物の穿孔時におけるデラミネーションの発生をより容易に防止することができる。
なお、図7〜図8に示す如く、第一マージン部(M1)および第二マージン部(M2)には、被削物との不必要な摩擦を避けるために、第一マージン逃げ部(M17)および第二マージン逃げ部(M27)が設けられていることが望ましい。
また、切削抵抗が低減されることで、穴あけ精度が向上し、穴あけ時間が短縮するため作業効率が向上する。さらにドリルの寿命を大幅に延ばすことも可能となる。
図9は、第五実施形態に係るドリルの上面図(ドリルを先端側から見た図)、図10は、第五実施形態に係るドリルの正面図(側面図)である。
なお、図9及び図10において、図7及び図8に示すドリルと同じ構成要素については同じ符号を付している。
U字形切刃(5)は外周切刃(CE)に繋がっており、U字形切刃(5)を設けたことにより外周切刃(CE)は鋭くなるが、すくい角はU字形切刃(5)から残された部分(RP)以外は緩やかになる。
U字形切刃(5)をドリル外周部(O)に接した状態で設けることにより、被削材の穿孔時に、ドリル外周に進むにつれて急激に増加するすくい角の増加を防ぐことができる。
第五実施形態に係るドリル(41)では、ドリル外周部(O)をダブルマージン形状(すなわち、第一マージン部(M1)と第二マージン部(M2)が設けられている)とし、ヒール側に配した第二マージン部(M2)にも切刃(第二マージン部切刃(M2C))を設け、実質4枚刃形状とすることで、CFRP等の被削物の穿孔時におけるデラミネーションの発生をより容易に防止することができる。
なお、図9〜図10に示す如く、第一マージン部(M1)および第二マージン部(M2)には、被削物との不必要な摩擦を避けるために、第一マージン逃げ部(M17)および第二マージン逃げ部(M27)が設けられていることが望ましい。
すなわち、これらのすくい角の関係は、θ1>θ3≧θ2>0°となる。
U字形切刃の面(5S)の傾斜角5γは外周切刃に干渉しない様、δ>5γに設定する。
第五実施形態に係るドリル(41)は上記構成を備えることにより、特にCFRPの加工時により好ましい結果を得ることができる。
より具体的には、上記形状により、ドリル外周部(O)で炭素繊維を切り除く作用が生まれること、及びドリル外周部(O)を除く切刃のすくい角が緩やかになること等により、ドリル(41)の切削力が大幅に向上すると共に、被削材の孔貫通部付近に於いて炭素繊維の毛羽立ち、デラミネーション等のCFRP等の被削材の穿孔時の問題が解消される。
また、切削抵抗が低減されることで、穴あけ精度が向上し、穴あけ時間が短縮するため作業効率が向上する。さらにドリルの寿命を大幅に延ばすことも可能となる。
図11は、第六実施形態に係るドリルの上面図(ドリルを先端側から見た図)、図12は、第六実施形態に係るドリルの正面図(側面図)である。
なお、図11及び図12において、図7及び図8に示すドリルと同じ構成要素については同じ符号を付している。
第六実施形態に係るドリル(51)では、ドリル外周部(O)をダブルマージン形状(すなわち、第一マージン部(M1)と第二マージン部(M2)が設けられている)とし、ヒール側に配した第二マージン部(M2)にも切刃(第二マージン部切刃(M2C))を設け、実質4枚刃形状とすることで、CFRP等の被削物の穿孔時におけるデラミネーションの発生をより容易に防止することができる。
なお、図11〜図12に示す如く、第一マージン部(M1)および第二マージン部(M2)には、被削物との不必要な摩擦を避けるために、第一マージン逃げ部(M17)および第二マージン逃げ部(M27)が設けられていることが望ましい。
また、切削抵抗が低減されることで、穴あけ精度が向上し、穴あけ時間が短縮するため作業効率が向上する。さらにドリルの寿命を大幅に延ばすことも可能となる。
図13は、第七実施形態に係るドリルの上面図(ドリルを先端側から見た図)、図14は、第七実施形態に係るドリルの正面図(側面図)、図15は、第七実施形態に係るドリルの正面図(側面図)の要部拡大図である。
なお、図13〜図15において、図7及び図8に示すドリルと同じ構成要素については同じ符号を付している。
第七実施形態に係るドリル(61)では、ドリル外周部をダブルマージン形状(すなわち、第一マージン部(M1)と第二マージン部(M2)が設けられている)とし、ヒール側に配した第二マージン部(M2)にも切刃(第二マージン部切刃(M2C))を設け、実質4枚刃形状とすることで、CFRP等の被削物の穿孔時におけるデラミネーションの発生をより容易に防止することができる。
なお、図13〜図14に示す如く、第一マージン部(M1)および第二マージン部(M2)には、被削物との不必要な摩擦を避けるために、第一マージン逃げ部(M17)および第二マージン逃げ部(M27)が設けられていることが望ましい。
外周溝(9)は、外周切刃(CE)と第二マージン部切刃(M2C)の両方あるいは片方に設けられ、外周溝(9)の各溝の位置は外周切刃(CE)に設けられた溝と第二マージン部切刃(M2C)に設けられた溝がドリル長手方向において交互になるように配置されることが望ましい。
外周切刃(CE)と第二マージン部切刃(M2C)の両方あるいは片方に外周溝(9)を設けることにより、被削材の穿孔時の発熱を抑えることが可能となり、穿孔時の発熱による加工孔の変形やCFRP等の被削物の材質の変化などの問題を解消することができる。
特に外周切刃(CE)と第二マージン部切刃(M2C)の両方に設けた場合に効力を発揮し、効果が顕著に現れる。結果として長寿命とデラミネーションの発生を抑えることが可能となる。
外周溝(9)を設けた部分によって凡その切削が為された後に外周溝を設けない外周切刃(CE)と第二マージン部切刃(M2C)が追随して穴を仕上げる形となり、外周溝(9)による発熱抑制効果と外周溝を設けない外周切刃(CE)と第二マージン部切刃(M2C)の鋭利な切刃による仕上げ効果により、長寿命の実現とデラミネーションの発生を抑えることとなる。
傾斜の好適な例として、ドリルの長手方向を垂直とした場合に水平より30°〜40°程度とする。
但しこの傾斜は外周溝(9)により外周切刃(CE)の強度が不足するため、折損防止を目的として設定したものであり、水平としても良い。
溝底部のコーナー(9C)に適切な円弧(R)を設けることで、ドリルの折損を防止することができる。
外周溝(9)の深さは凡そドリル径の5%〜10%とし、ドリル径に応じて調整する(例えば比較的大きいサイズドリル径の場合は小さめに、ドリル径が小径の場合は大きめに設定などに調整する)。
なお、外周溝(9)の範囲を前述のようにドリル径相当の長さ乃至ドリル径の1/2としたものの、穿孔する深さが深い場合にはドリル径相当の長さ以上とすることで発熱を抑えることができる。
第七実施形態に係るドリル(61)についてはCFRPに対する切削性能及び、ドリル穿孔に係る寿命延伸のため、ドリルの先端部から外周切刃部に掛けてダイヤモンドコーティングを施すことにより、穿孔穴品質(デラミネーション防止)と穿孔寿命が大幅に改善される。
さらに、本実施形態において、U字形切刃(5)の形状は特に限定されず、上記した第一実施例〜第六実施例に係るドリルが備えるU字形切刃(5)の形状であればいかなる形状であっても良い。
また、切削抵抗が低減されることで、穴あけ精度が向上し、穴あけ時間が短縮するため作業効率が向上する。さらにドリルの寿命を大幅に延ばすことも可能となる。
実施例1〜6および比較例1を用いてアクリル板の切削試験を実施した。
被削材は、アクリル板・厚さ5mm×100mm×100mmを用いた。
実施例1〜6および比較例1には以下のドリルを用いた。
実施例1:第一実施形態のドリル、ドリル径8mm、材質SKH55相当
実施例2:第二実施形態のドリル、ドリル径8mm、材質SKH55相当
実施例3:第三実施形態のドリル、ドリル径8mm、材質SKH55相当
実施例4:第四実施形態のドリル、ドリル径8mm、材質SKH55相当
実施例5:第五実施形態のドリル、ドリル径8mm、材質SKH55相当
実施例6:第六実施形態のドリル、ドリル径8mm、材質SKH55相当
比較例1:図17の従来型ドリル、ドリル径8mm、材質SKH55相当
ケーティーエス社製、ATM−12型エアードリル・無負荷回転数1,200RPMを使用して、万力で垂直方向に固定したアクリル板に対し、作業者が略直角方向に切削・穿孔した。
切削・穿孔試験の結果を表1および表2に示す。
一方、比較例1のドリルは、穿孔した穴周辺に割れが発生してアクリル板に破損が生じ、アクリル板を穿孔することができなかった。
また、表2より、本発明に係る実施例1〜6のドリルは、穿孔した穴の面粗度が良いことがわかる。特に、U字形切刃を外周切刃に接する様に設けた場合(実施例2、3、5、6)、より安定した切削が可能になり、穿孔した穴の面粗度をさらに向上できることがわかった。
一方、比較例1のドリルは、穿孔した穴周辺に割れが発生してアクリル板に破損が生じたため、アクリル板を穿孔することができなかった。
実施例7および比較例2を用いて航空機グレードのCFRP(厚さ約10mm)の切削試験を実施した。
被削材は、航空機グレードのCFRP(厚さ実測10.5mm)を用いた。
実施例7および比較例2には以下のドリルを用いた。
実施例7:第七実施形態のドリル、超硬合金+ダイヤモンドコーティング、ドリル径8.0mm
比較例2:マコトロイ製コーティングRドリル、超硬合金+ダイヤモンドコーティング、ドリル径5.6mm
大鳥機構製、NCフライスにて6,000RPM、送り0.03mm/rev.条件を使用してCFRPを切削・穿孔した。
一方、比較例2を用いた場合、1,000穴貫通後、ドリルの外周部切刃の摩耗が激しく、目視によるデラミネーションは確認できなかったが、穿孔を中止した。
これらの結果より、本発明に係る実施例7のドリルは、航空機グレードのCFRPに対して、デラミネーションを一切発生させずに安定した切削が可能であることがわかった。
一般的にドリル径が大きいドリルはデラミネーションを起こしやすいが、この試験においては、比較例よりもドリル径の大きい実施例7を用いてもデラミネーションは起こらなかった。
2 チゼル
2E チゼルエッジ
2W チゼル幅
3 シンニング切刃
3E シンニング切刃の端部
3S シンニング面
4 主切刃
5 U字形切刃
5E U字形切刃の端部
5S U字形切刃の面
6 ドリル径
7 逃げ面
8 切屑排出溝
9 外周溝
CE 外周切刃
M1 第一マージン部
M2 第二マージン部
O ドリル外周部
RP U字形切刃から残された部分
Claims (3)
- 回転軸対称に形成された2つの切刃を有し、
各切刃が、ドリル先端からドリル外周側に向けて形成され、ドリル先端側から見たとき曲線を含む形状となる主切刃を有するドリルであって、
前記主切刃よりドリル先端側に形成され、ドリル先端側から見たとき曲線を含む形状となるシンニング切刃と、
前記シンニング切刃よりドリル外周側に形成され、ドリル先端側から見たとき曲線を含む形状となるU字形切刃と、
回転軸対称に形成された2つの逃げ面とを有し、
前記逃げ面には、ドリル先端側から見たとき曲線を含む形状となる背溝が形成されることで、第一マージン部、及び、当該第一マージン部のヒール側となる第二マージン部が形成されており、
前記第二マージン部には、第二マージン部切刃が形成されており、
前記主切刃の外周及び前記第二マージン部切刃の外周には、複数の外周溝が形成されており、
前記複数の外周溝の各溝は、前記主切刃の外周に設けられた溝と前記第二マージン部切刃の外周に設けられた溝が前記ドリルの長手方向において交互になるように配置されていることを特徴とするドリル。 - 前記U字形切刃は、ドリル外周部に接して形成されていることを特徴とする請求項1に記載のドリル。
- 前記U字形切刃は、前記シンニング切刃と隣接するとともに半径方向外周側に並ぶように形成されていることを特徴とする請求項1に記載のドリル。
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