JP6428406B2 - ドリル - Google Patents

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Description

本発明は、特に手持ちの電動工具や卓上ボール盤などに取り付けて穴あけ加工を行うのに好適なドリルに関するものである。
このような電動工具や卓上ボール盤に取り付けて作業者の力により穴あけ加工を行うドリルでは、マシニングセンタのような機械的な駆動力によって穴あけ加工を行う工作機械に取り付けられるドリルに比べ、スラスト荷重や切削抵抗を低減してより小さい押し込み力で穴あけが可能であることが求められる。
ここで、ドリルの切刃の軸方向すくい角は、一般的に切刃の外周端で正角側に最大であって内周側に向かうに従い小さくなり、内周端に至る途中で負角になって切れ味が鈍くなる。特に、ドリル本体先端中心部において2つの切刃の先端逃げ面同士が交差するチゼル付近では軸方向すくい角は極端な負角となり、周速が殆ど0であるために切削速度が確保できず、切削を行うと言うよりは被削材を押し潰すような形態となってスラスト荷重および切削抵抗が大きくなり、押し込み力の増大の要因となる。
このようなドリル本体先端中心部におけるスラスト荷重や切削抵抗の低減のためには、一つにドリル本体の心厚を小さくすることが考えられるが、ドリル本体の強度の低下を招くために限界がある。
そこで、例えば特許文献1には、特に薄板の穴あけ加工用のドリルとして、ドリル本体先端の一対の切刃が径方向内側の先端内刃と外側の先端外刃に区分けされ、先端内刃が先端外刃に対してチゼルに向かうに従いドリル先端方向に突出する、いわゆるローソクタイプのドリルにおいて、ドリル本体先端中心部にシンニングを施すことにより、チゼルの幅寸法を切刃の直径Dの3%〜20%に設定することが記載されている。
また、特許文献2にも、作業者の腕の力を利用して穴あけを行うハンドドリルやボール盤等に使用されるドリルとして、切刃が、ドリル先端側から見たときにチゼルから外周側に向けて曲線を含む形状に延びるシンニング刃と、このシンニング刃からドリル外周端まで直線状に延びる主切刃とからなり、主切刃の延びる方向においてシンニング刃の長さを主切刃の長さ以上とするとともに、シンニング刃のすくい角を主切刃のすくい角よりも小さい正角としたドリルが提案されている。
特公平7−8447号公報 特許第4834183号公報
これら特許文献1、2に記載されたドリルでは、このようにドリル本体先端中心部にシンニングを施すことにより、チゼル自体の幅を小さくしてスラスト荷重や切削抵抗の低減を図っている。ところが、このようにシンニングを施すことによってチゼルの幅を小さくしても、シンニングにより先端逃げ面との交差稜線部に形成されるシンニング刃の切れ味が鈍ければ、十分な切削抵抗の低減を図ることはできない。
しかるに、この点、特許文献2に記載されたドリルでは、上述のようにシンニング刃のすくい角を正角として切れ味を鋭くすることにより切削抵抗の低減を図っているが、2つの切刃のシンニングが軸線方向先端側から見てドリル回転方向に隣接する先端逃げ面に大きく切り込まれており、この先端逃げ面に交差するシンニング刃のすくい角が正角であることも相俟って、ドリル本体先端中心部にはこれらのシンニングの間に肉厚の薄い部分が形成されることになって強度が低下し、欠損が生じ易くなる。
また、この特許文献2に記載されたドリルでは、軸線方向先端側から見てシンニング刃が凹曲線をなして主切刃と交差しており、シンニング刃と主切刃との交差角が小さくなるために、これらシンニング刃と主切刃との交点周辺においても欠損が生じ易くなるという問題がある。
本発明は、このような背景の下になされたもので、ドリル本体先端中心部にシンニングを施すことによって切削抵抗やスラスト荷重の低減を図りつつも、ドリル本体に欠損が生じるのは防ぐことができる、電動工具や卓上ボール盤などに取り付けて穴あけ加工を行うのに好適なドリルを提供することを目的としている。
上記課題を解決して、このような目的を達成するために、本発明は、軸線回りに回転されるドリル本体の先端部外周に、このドリル本体の先端逃げ面から後端側に向けて延びる2つの切屑排出溝が形成され、これらの切屑排出溝のドリル回転方向を向く壁面と上記先端逃げ面との交差稜線部には、上記軸線に関して対称に切刃が形成されており、これらの切刃における外周側には、上記軸線方向先端側から見て直線状に延びる主切刃が形成されるとともに、上記切屑排出溝の先端部内周には上記ドリル本体の内周側に向かうに従い上記軸線側に向けて断面V字状に凹むシンニングが施されて、上記切刃の内周側には、このシンニングのドリル回転方向を向くシンニング第1壁面と上記先端逃げ面との交差稜線部にシンニング刃が形成されており、2つのこれらシンニング刃の間には、該シンニング刃に連なる上記先端逃げ面同士が交差したチゼルが形成されていて、上記シンニング刃は上記ドリル本体の外周側から上記チゼルとの交点を越えて延び、上記シンニング刃の軸すくい角は+5°〜+15°の範囲内とされるとともに、上記軸線方向先端側から見て上記主切刃が延びる方向における上記切刃の長さに占める上記シンニング刃の長さの割合が20%〜50%の範囲内とされ、さらに、2つのシンニングのドリル回転方向とは反対側を向くシンニング第2壁面と上記先端逃げ面との上記シンニング刃に連なる交差稜線同士は、上記軸線方向先端側から見て、該交差稜線に直交する方向に間隔をあけ、または上記軸線を通る1つの直径線上に位置し、あるいは上記交差稜線に平行で上記軸線を通る1つの直径線を越えて該交差稜線に直交する方向に上記切刃の直径Dに対して0.03×D以下の行き違い量で互いに行き違うように配置されていることを特徴とする。
このように構成されたドリルでは、まずシンニング刃の軸方向すくい角が+5°〜+15°の範囲内の正角とされており、鋭い切れ味を確保して切削抵抗の低減を図ることができる。しかも、このシンニング刃の主切刃が延びる方向における切刃の長さに占める割合は20%〜50%の範囲内とされているので、上述のように切刃の軸方向すくい角が正角側に最大となる外周端に連なる主切刃の長さが必要以上に短くなることもなく、従って切刃の全長で切れ味を鋭くして切削抵抗を低減することができる。また、シンニング刃がドリル本体の外周側からチゼルとの交点を越えて内周側に延びているので、チゼルの幅も十分に短くしてスラスト荷重の低減を図ることができ、押し込み力を小さく抑えることが可能となる。
そして、このようにチゼルの幅を短くしつつも、2つのシンニングのドリル回転方向とは反対側を向くシンニング第2壁面と先端逃げ面とのシンニング刃に連なる交差稜線同士は、軸線方向先端側から見て、これらの該交差稜線に直交する方向に間隔をあけて配置されているか、または上記軸線を通る1つの直径線上に位置するように配置されているか、あるいは上記交差稜線に平行で上記軸線を通る1つの直径線を越えて該交差稜線に直交する方向に上記切刃の直径Dに対して0.03×D以下の極小さな行き違い量で互いに行き違うように配置されているので、特許文献2に記載されたドリルのように切刃のシンニングがドリル回転方向に隣接する先端逃げ面に大きく切り込まれることがない。
このため、特許文献2に記載されたドリルのようにドリル本体先端中心部の2つのシンニングの間に肉厚の薄い部分が形成されるのを避けることができ、このような部分から欠損が生じるのを防ぐことができて、長寿命のドリルを提供することができる。しかも、シンニングはドリル本体の内周側に向かうに従い軸線側に向けて断面V字状に凹むように形成されているので、シンニングの深さが同じであれば特許文献2に記載されたドリルと比べてシンニング刃と主切刃との交差角を大きく確保することができ、これらシンニング刃と主切刃との交点における欠損も防止することができる。
ここで、シンニング刃の軸方向すくい角が+5°未満であると切削抵抗の低減効果が小さくて押し込み力を十分に小さく抑えることができなくなり、逆にシンニング刃の軸方向すくい角が+15°を上回るとシンニング刃の刃物角が小さくなって強度が低下し、シンニング刃自体に欠損が生じるおそれがある。また、主切刃が延びる方向における切刃の長さに占めるシンニング刃の長さの割合が20%を下回ると軸方向すくい角が負角となる部分を十分に除去することができず、このシンニング刃の占める割合が50%を上回ると軸方向すくい角の大きな主切刃が短くなり、いずれも切削抵抗の低減効果を損なうおそれがある。
さらに、上記シンニング第2壁面と先端逃げ面とのシンニング刃に連なる交差稜線同士が、軸線方向先端側から見てこれらの交差稜線に平行で軸線を通る1つの直径線を越えて互いに行き違うように配置されている場合に、その該交差稜線に直交する方向の行き違い量が切刃の直径Dに対して0.03×Dよりも大きくなると、ドリル本体先端中心部の2つのシンニングの間に肉厚の薄い部分が大きく形成されることになり、欠損の発生を確実に防止することができなくなるおそれがある。
なお、切刃を、ドリル本体の内周部における先端角が外周部における先端角よりも小さくなるように形成すれば、特許文献1に記載されたドリルと同様に切刃の食い付き性を向上させることができ、特に手持ちの電動工具に取り付けて穴あけ加工を行う場合に安定した加工を行うことができる。
以上説明したように、本発明によれば、シンニング刃の切れ味を向上させて切削抵抗の低減を図ることができる一方で、シンニングの行き違いを抑えてドリル本体先端中心部に肉厚の薄い部分が大きく形成されるのを防ぐとともに、シンニング刃と主切刃との交差角も大きく確保してドリル本体の欠損を防止することができる。
本発明の一実施形態を示す側面図である。 図1に示す実施形態の拡大正面図である。 図2における矢線X方向(シンニング第1壁面に沿った方向)視の拡大側面図である。 図2に示す実施形態のドリル本体先端中心部をさらに拡大した正面図である。
図1ないし図4は、本発明の一実施形態を示すものである。本実施形態において、ドリル本体1は、高速度工具鋼や超硬合金等の硬質材料により軸線Oを中心とした外形略円柱状に形成され、その後端部(図1において右側部分)は円柱状のままのシャンク部2とされるとともに、先端部(図1において左側部分)は切刃部3とされる。本実施形態のドリルは、上記シャンク部2が手持ちの電動工具や卓上ボール盤等の回転軸に取り付けられ、軸線O回りにドリル回転方向Tに回転されつつ作業者の腕力により該軸線O方向先端側に送り出されることにより、上記切刃部3によって被削材に穴加工を行うのに専ら適している。
切刃部3の外周には、ドリル本体1の先端面である先端逃げ面4に開口する断面略U字状の2つの切屑排出溝5が、軸線Oに関して180°回転対称に、ドリル本体1の後端側に向かうに従い軸線O回りにドリル回転方向Tの反対側に向けて捩れるように形成されており、これらの切屑排出溝5のドリル回転方向Tを向く壁面5Aと上記先端逃げ面4との交差稜線部に、やはり軸線Oに関して180°回転対称に切刃6が形成されている。すなわち、本実施形態のドリルは2枚刃のツイストドリルである。また、先端逃げ面4は、切刃6からドリル回転方向Tの反対側に向かうに従いドリル本体1の後端側に向かうとともに、軸線Oからドリル本体1の外周側に向けても後端側に向かうように傾斜しており、これによって切刃6には逃げ角と180°未満の先端角が与えられる。
切刃6の外周側には、切屑排出溝5の断面U字の直線状をなす上記壁面5Aがそのまま先端逃げ面4と交差することにより、軸線O方向先端側から見て図2に示すように直線状に延びる主切刃6Aが形成されている。これに対して、切屑排出溝5の先端部内周には、ドリル本体1の内周側に向かうに従い軸線O側に向けて断面V字状に凹むシンニング7が施されていて、切刃6の内周側には、このシンニング7のドリル回転方向Tを向くシンニング第1壁面7Aと先端逃げ面4との交差稜線部にシンニング刃6Bが形成されている。従って、このシンニング刃6Bも軸線O方向先端側から見て直線状に延び、主切刃6Aと鈍角に交差している。
このシンニング刃6Bの軸方向すくい角αは+5°〜+15°の範囲内の正角(ポジティブ)とされ、すなわち図3に示すように上記シンニング第1壁面7Aに沿って軸線に垂直な方向から見たときにシンニング第1壁面7Aは、軸線Oに対して5°〜15°の範囲内の傾斜角(軸方向すくい角α)でドリル本体1の後端側に向かうに従いドリル回転方向Tとは反対側に向けて傾斜している。また、主切刃6Aの軸方向すくい角は、シンニング刃6Bとの交点から外周側に向かいに従い漸次正角側に大きくなり、その外周端において最大となる。さらに、軸線O方向先端側から見て直線状の主切刃6Aが延びる方向における切刃6全体の長さAに占めるシンニング刃6Bの長さBの割合は、20%〜50%の範囲内とされている。
さらにまた、切刃部3の外周面には、切屑排出溝5の上記壁面5Aのドリル回転方向Tとは反対側に連なり、切刃6の直径(主切刃6Aの外周端が軸線O回りになす円の直径)Dと等しい直径の軸線Oを中心とした円筒面上に外周面が位置するように形成されたマージン部8Aと、このマージン部8Aのドリル回転方向Tの反対側に連なり、上記直径Dよりも僅かに小さな直径の軸線Oを中心とした円筒面上に位置する外周二番面8Bとが形成されている。さらに、シンニング7のドリル回転方向Tとは反対側を向くシンニング第2壁面7Bは、本実施形態では切刃部3の外周面にまで延びて、上記外周二番面8Bに交差している。
また、ドリル本体1の先端中心部には、2つのシンニング刃6Bの間に、切刃6(シンニング刃6B)に交差する先端逃げ面4同士が交差することにより、軸線Oに直交するチゼル9が形成されており、図4に示すようにシンニング刃6Bはドリル本体1の外周側から、このチゼル9との交点Pを越えて内周側(軸線O側)に延びている。そして、2つのシンニング7の上記シンニング第2壁面7Bと先端逃げ面4とのシンニング刃6Bに連なる交差稜線L同士は、軸線O方向先端側から見て図4に示すように、本実施形態では該交差稜線Lに直交する方向に間隔Qをあけて配置されている。
なお、これらの交差稜線L同士は、軸線O方向先端側から見て図4に破線で示すように軸線Oを通る1つの直径線M上に位置するように配置されていて、間隔Qが0であってもよい。また、同じく軸線O方向先端側から見て、図4に鎖線で示すように、これらの交差稜線Lに平行で軸線Oを通る1つの直径線Mを越えて2つの交差稜線L同士が互いに行き違うように配置されていて、間隔Qが負の値となっていてもよいが、この場合の交差稜線Lに直交する方向の該交差稜線L同士の間隔である行き違い量Nは、切刃6の直径Dに対して0.03×D以下とされる。
一方、本実施形態において先端逃げ面4は、上記チゼル9からシンニング刃6Bを含む内周部4Aがドリル本体1の外周側に向かうに従い、これよりも外周側の外周部4Bよりも急勾配でドリル本体1の後端側に向かうように傾斜して、内周部4Aが外周部4Bから突出するように形成されており、これにより切刃6は、図1に示すようにドリル本体1の内周部における先端角が外周部における先端角よりも小さくなるように形成される。なお、先端逃げ面4の内外周部4A、4Bの交線はドリル回転方向T側において切刃6の主切刃6Aに交差しており、従って主切刃6Aは内周側に向かう途中で先端角が小さくなってからシンニング刃6Bに交差することになる。
このように構成されたドリルでは、まずシンニング刃6Bの軸方向すくい角αが+5°〜+15°の範囲内で正角とされているので、切刃強度を確保しつつシンニング刃6Bに鋭い切れ味を確保して切削抵抗の低減を図ることができる。すなわち、シンニング刃6Bの軸方向すくい角αが+5°未満であると切れ味が鈍くなって切削抵抗を十分に低減することができない一方、軸方向すくい角αが+15°よりも大きいとシンニング刃6Bの刃物角が小さくなって強度が不足し、欠損を生じ易くなる。
また、上記構成のドリルでは、シンニング刃6Bがドリル本体1の外周側からチゼル9との交点Pを越えて内周側に延びている。このため、2つの先端逃げ面4同士の交線であって軸方向すくい角が極端な負角となり、周速が殆ど0であるために被削材を押し潰すような形態となるチゼル9の幅を短くすることができ、スラスト荷重や切削抵抗の低減を図ることができる。
さらに、このシンニング刃6Bの主切刃6Aが延びる方向における長さBが切刃6全体の長さAに占める割合が20%〜50%の範囲内とされているので、上述のようにシンニング刃6Bを形成することによってドリル本体1先端中心部における切削抵抗の低減を図りつつ、切刃6全体としての切削抵抗が増大するのを避けることができる。すなわち、この切刃6の長さAに占めるシンニング刃6Bの長さBの割合(B/A)が20%を下回ると、軸方向すくい角が負角となる部分を十分に除去することができずに切削抵抗の低減効果が小さく、逆に上記割合が50%を上回ってシンニング刃6Bが主切刃6Aよりも切刃6に占める割合が大きくなっても、シンニング刃6Bよりも軸方向すくい角が大きい主切刃6Aが短くなってドリル全体としての切削抵抗の増大を招くおそれがある。
そして、さらに上記構成のドリルでは、2つのシンニングの上記シンニング第2壁面7Bと先端逃げ面4とのシンニング刃6Bに連なる交差稜線L同士は、軸線O方向先端側から見て、本実施形態のように該交差稜線Lに直交する方向に間隔をあけて配置されているか、または図4に破線で示すように軸線Oを通る1つの直径線M上に位置するように配置されているか、あるいは同図4に鎖線で示すように交差稜線Lに平行で軸線Oを通るこのような1つの直径線Mを越えて交差稜線Lに直交する方向に0.03×D以下の極小さな行き違い量Nで行き違うように配置されている。
このため、ドリル本体1の先端中心部において2つのシンニング7の間に肉厚の薄い部分が大きく形成されるのを防ぐことができ、このような薄肉部分に欠損が生じるのを防ぐことができる。すなわち、上記交差稜線L同士が上記行き違い量Nを越えて互いに大きく行き違うようにシンニング第2壁面7Bが形成されていると、2つのシンニング7のシンニング第1壁面7A間に形成される肉厚の薄い部分が大きくなり、シンニング刃6Bの軸方向すくい角αが正角でシンニング第1壁面7Aがドリル本体1の後端側に向かうに従いドリル回転方向Tとは反対側に傾斜していることとも相俟って、ドリル本体1の先端中心部の強度が損なわれ、欠損が生じ易くなるおそれがある。
なお、図4に実線で示したように交差稜線Lが該交差稜線Lに平行で軸線Oを通る1つの直径線Mを間にして間隔をあけている場合の交差稜線Lに直交する方向の該間隔Qの上限は、切刃6の長さAに占めるシンニング刃6Bの長さBの上記割合(B/A)の上限に基づいて自ずと決定する。
さらにまた、シンニング7は断面V字状であるため、シンニング刃6Bは直線状に延びて主切刃6Aに交差することになる。従って、シンニング7の深さが同じであれば、特許文献2に記載されたドリルのようにシンニング刃が凹曲線をなして主切刃と交差している場合と比べ、主切刃6Aとシンニング刃6Bとの交差角を大きく確保することができる。このため、これら主切刃6Aとシンニング刃6Bとの交点における切刃強度も十分に確保することができて欠損も防止することができる。
従って、このように構成されたドリルによれば、シンニング刃6Bの切れ味を向上させるとともに、主切刃6Aを含めた切刃6全体の切れ味が損なわれるのは防いで切削抵抗やスラスト荷重の低減を図ることができ、手持ちの電動工具や卓上ボール盤に取り付けて使用する場合でも、被削材への押し込み力を軽減して円滑な穴あけ加工を行うことが可能となる。その一方で、シンニング7の行き違いを少なくしてドリル本体1の先端中心部に肉厚の薄い部分が大きく形成されるのを防ぐことができ、またシンニング刃6Bと主切刃6Aとの交差角も大きく確保することができるので、ドリル本体1に欠損が生じるのを防止することができる。
なお、本実施形態では、先端逃げ面4の内周部4Aが外周部4Bよりも急勾配でドリル本体1の外周側に向かうに従い後端側に向かうように傾斜して、外周部4Bから突出するように形成されており、これにより内周部4Aにおける切刃6の先端角が外周部4Bよりも小さくなるように形成されている。このため、この内周部4Aから切刃6が被削材に食い付く際の食い付き性を向上させることができるので、特に手持ちの電動工具に取り付けて手作業に被削材に穴あけ加工を行う場合に安定した加工を行うことができる。
次に、本発明の実施例を挙げて、本発明の効果について実証する。本実施例では、まず第1実施例として、上記実施形態に基づくドリル(実施例1)と、特許文献1、2に基づくドリル(比較例1、2)とを卓上のボール盤に取り付け、厚さ2mmのSUS304製の板材に一定の荷重で押し込むことにより貫通穴を形成する穴あけ加工をそれぞれ5回ずつ行い、その際のドリルが被削材に食い付いてから貫通するまでの穴あけ時間を測定して平均値を算出した。
なお、卓上ボール盤はハンドルの回転軸に半径75mmの滑車を同軸に取り付け、この滑車の外周に一端を固定したワイヤロープを他の滑車に巻回してぶら下げた他端に3kgの重りを付けることにより一定荷重の押し込み力が与えられるようにした。また、ドリルの回転数は1060min−1であった。
さらに、各ドリルは、切刃の直径が6.0mmの高速度工具鋼製のものであり、実施例1のドリルは、シンニング刃の軸すくい角αが+10°、切刃外周端における主切刃の軸方向すくい角は32°、軸線方向先端側から見た主切刃が延びる方向における切刃の長さに占めるシンニング刃の長さの割合が30%、2つのシンニングのシンニング第2壁面と先端逃げ面とのシンニング刃に連なる交差稜線同士が上記軸線方向先端側から見て該交差稜線に直交する方向に0.1mmの間隔Qをあけたものである。また、先端逃げ面の内周部の先端角は110°、外周部の先端角は170°で、逃げ角は12°であった。
一方、比較例1のドリルは、シンニング刃の軸方向すくい角が0°、切刃外周端における主切刃の軸方向すくい角は32°、軸線方向先端側から見た主切刃が延びる方向における切刃の長さに占めるシンニング刃の長さの割合が25%、2つのシンニングのシンニング第2壁面と先端逃げ面とのシンニング刃に連なる交差稜線同士が上記軸線方向先端側から見て該交差稜線に直交する方向に0.26mmの間隔Qをあけたもので、先端逃げ面の内周部の先端角は110°、外周部の先端角は170°、逃げ角は12°であった。
さらに、比較例2のドリルは、シンニング刃の軸方向すくい角が+25°、切刃外周端における主切刃の軸方向すくい角は32°、軸線方向先端側から見た主切刃が延びる方向における切刃の長さに占めるシンニング刃の長さの割合が52%、2つのシンニングのシンニング第2壁面と先端逃げ面とのシンニング刃に連なる交差稜線同士が上記軸線方向先端側から見て該交差稜線に直交する方向に1.33mm(切刃の直径Dに対して0.22×D)の行き違い量Nで行き違ったもので、先端逃げ面は内周部が突出しておらず、先端角が118°、逃げ角は13°であった。
この結果、比較例1のドリルでは平均の穴あけ時間が15.29秒であったのに対し、比較例2のドリルでは9.32秒であり、実施例1のドリルでは8.95秒であり、この順に切削抵抗やスラスト荷重が小さくて、言い換えれば比較的軽い荷重すなわち少ない押し込み力で円滑に穴あけ加工が可能であることが分かった。一方、加工後の貫通穴を観察すると、実施例1および比較例1のドリルでは穴の入口側では振れ回りが小さくて、出口側(貫通側)でも真円度は良好でバリの発生も認められなかったのに対し、比較例2のドリルでは入口側の振れ回りが大きく、出口側では穴が三角形状に歪むとともに大きなバリが発生していた。
次に、第2実施例として、穴あけ時間が短かった上記実施例1と比較例2のドリルの耐欠損性を比較するために、これらのドリルをマシニングセンタに取り付けて厚さ6mmのS50C製の板材に貫通穴を形成してゆき、欠損で穴あけ加工不能になるまでの加工穴数を測定した。なお、加工条件は、ドリル回転数1060min−1(切削速度20m/min)、送り量0.15mm/rev(送り速度159mm/min)で湿式切削であった。その結果、比較例2のドリルでは加工穴数100穴に至る前にドリル本体先端中心部の2つのシンニングの間に欠損が生じて加工不能となったのに対し、実施例1のドリルでは300穴を加工しても欠損は生じていなかった。
さらに、第3実施例として、実施例1のドリルを基準に、シンニング刃の軸方向すくい角αを0°、+5°、+15°、+20°としたもの(順に、比較例11、実施例11、実施例12、比較例12とする。)、2つのシンニングの上記交差稜線L同士の行き違い量Nを0mm(切刃の直径Dに対して0×D)、0.18mm(同じく0.03×D)、0.4mm(同じく約0.067×D)としたもの(順に、実施例21、実施例22、比較例21とする。)、軸線方向先端側から見て主切刃が延びる方向における切刃の長さに占めるシンニング刃の長さの割合を10%、20%、40%、50%、および60%としたもの(順に、比較例31、実施例31、実施例32、実施例33、比較例32とする。)を製造した。
そして、これらのドリルにより、第1実施例と同じ被削材、条件で穴あけ加工を行い、貫通穴があくまでの穴あけ時間の平均値を測定するとともに、穴あけ加工後のドリルの欠損の有無についても調査した。その結果、平均穴あけ時間は、比較例11では14.52秒、比較例31では14.65秒、比較例32では12.02秒と、実施例1(8.95秒)に比べて多くの時間がかかったのに対し、実施例12は8.28秒、比較例12は7.92秒、実施例21は9.21秒、実施例22は8.95秒、比較例21は8.26秒、実施例32は9.01秒で、いずれも実施例1と殆ど差がないか、もしくは実施例1よりも速く(軽く)穴あけが可能であり、また実施例11も10.58秒、実施例31は10.51秒、実施例33は10.16秒で、実施例1よりは時間がかかったものの、それ程大きな差はなかった。
ただし、比較例12と比較例21では、穴あけ加工後のドリル本体先端中心部に欠損が認められた。従って、このような欠損を防ぎつつ、押し込み力の低減を図るには、上述した範囲が好適であることが分かる。また、シンニング刃の軸方向すくい角については実施例1、12の+10°〜+15°の範囲が特に望ましく、さらに軸線方向先端側から見て主切刃が延びる方向における切刃の長さに占めるシンニング刃の長さの割合については、実施例1、32の30%〜40%の範囲が特に望ましいことが分かる。
1 ドリル本体
2 シャンク部
3 切刃部
4 先端逃げ面
4A 先端逃げ面4の内周部
4B 先端逃げ面4の外周部
5 切屑排出溝
5A 切屑排出溝5のドリル回転方向Tを向く壁面
6 切刃
6A 主切刃
6B シンニング刃
7 シンニング
7A シンニング第1壁面
7B シンニング第2壁面
8A マージン部
8B 外周二番面
9 チゼル
O ドリル本体1の軸線
T ドリル回転方向
L シンニング第2壁面7Bと先端逃げ面4とのシンニング刃6Bに連なる交差稜線
P シンニング刃6Bとチゼル9との交点
A 軸線O方向先端側から見て主切刃6Aが延びる方向における切刃6の長さ
B 軸線O方向先端側から見て主切刃6Aが延びる方向におけるシンニング刃6Bの長さ
D 切刃6の直径
Q 2つのシンニング7の交差稜線L同士が間隔をあけている場合の交差稜線Lに直交する方向における間隔
M 2つのシンニング7の交差稜線L同士が軸線を通る1つの直径線上に位置しているときの該直径線
N 2つのシンニング7の交差稜線L同士が軸線を通る1つの直径線Mを越えて行き違っている場合の交差稜線Lに直交する方向の行き違い量
α シンニング刃6Bの軸方向すくい角

Claims (2)

  1. 軸線回りに回転されるドリル本体の先端部外周に、このドリル本体の先端逃げ面から後端側に向けて延びる2つの切屑排出溝が形成され、これらの切屑排出溝のドリル回転方向を向く壁面と上記先端逃げ面との交差稜線部には、上記軸線に関して対称に切刃が形成されており、
    これらの切刃における外周側には、上記軸線方向先端側から見て直線状に延びる主切刃が形成されるとともに、上記切屑排出溝の先端部内周には上記ドリル本体の内周側に向かうに従い上記軸線側に向けて断面V字状に凹むシンニングが施されて、上記切刃の内周側には、このシンニングのドリル回転方向を向くシンニング第1壁面と上記先端逃げ面との交差稜線部にシンニング刃が形成されており、
    2つのこれらシンニング刃の間には、該シンニング刃に連なる上記先端逃げ面同士が交差したチゼルが形成されていて、上記シンニング刃は上記ドリル本体の外周側から上記チゼルとの交点を越えて延び、
    上記シンニング刃の軸すくい角は+5°〜+15°の範囲内とされるとともに、
    上記軸線方向先端側から見て上記主切刃が延びる方向における上記切刃の長さに占める上記シンニング刃の長さの割合が20%〜50%の範囲内とされ、
    さらに、2つのシンニングのドリル回転方向とは反対側を向くシンニング第2壁面と上記先端逃げ面との上記シンニング刃に連なる交差稜線同士は、上記軸線方向先端側から見て、該交差稜線に直交する方向に間隔をあけ、または上記軸線を通る1つの直径線上に位置し、あるいは上記交差稜線に平行で上記軸線を通る1つの直径線を越えて該交差稜線に直交する方向に上記切刃の直径Dに対して0.03×D以下の行き違い量で互いに行き違うように配置されていることを特徴とするドリル。
  2. 上記切刃は、上記ドリル本体の内周部における先端角が外周部における先端角よりも小さくなるように形成されていることを特徴とする請求項1に記載のドリル。
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