JP6797873B2 - 炭素繊維複合材用ドリル - Google Patents
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Description
しかし、ハンドドリルやボール盤等の孔あけ時に作業者の力が必要な装置に使用されるドリルについては、積極的な研究開発が行われることがなく、数十年に亘って同じ様な形状のドリルが用いられているのが現状である。
しかし、このようなドリルについては、ドリル自体の強度や剛性を確保することが先決であると考えられており、加えてドリルを購入した作業者が自分の好みにドリルを研磨して使用していたという実状もあって、ドリルメーカーにおいて切削抵抗を低減させるための研究は殆どなされていなかった。
このドリルは、回転軸対称に2枚の切刃を有し、先端部にシンニングが施されているドリルであって、チゼル幅が0.05mm〜0.3mmであり且つシンニングがドリル先端側から見た場合において両切刃の刃先を結んだ直線に対して1°〜4°傾いた角度で施されているものである。
しかしながら、このドリルは、高硬度の鋼板に対応するためにシンニングにより形成されるすくい角を90°より大きく設定している。
そのため、中心部の切削力が弱く、ハンドドリルでの孔あけ作業時においてワークが中心から外周刃にかかるまでの間はかなりの力が必要となる。
また、チゼル幅が非常に狭いために、使用時に先端が欠けてしまう虞があり、特に粉末高速度鋼を材料とするドリルでは、脆くなるために一層先端が欠け易くなる。
このドリルは、回転軸対称に2枚の切刃を有し、先端部にシンニングが施されているドリルであって、主切刃により形成されたすくい角θ1と、シンニング切刃により形成されたすくい角θ2とがチゼルの直下を除いて、θ1>θ2>0°を満たすものである。
この結果、ドリル貫通の際に、炭素繊維複合材等の被削材では、穿孔している被削材の孔内周部から亀裂が発生したり、被削材が変形したりすることがしばしば起こるという問題があった。
上記問題は、ドリルの捩れ角(=すくい角/外周部)が30°前後の一般的なドリルでは起こり得ることである。
この現象は、ドリルの捩れ角を緩やかにすることで解消されるものの、切屑の排出等の別の問題が発生し、ドリル自体の切れ味が低下する虞もあり、単に捩れ角を緩やかにするだけではこれらの問題を解決することはできない。
本発明は、上記したような従来技術の問題点を解決すべくなされたものであって、穿孔後にバリ、デラミネーション(層間剥離)、炭素繊維の切れ残りや孔周囲の盛上り等、炭素繊維複合材に対する不具合が生じる虞の少ない炭素繊維複合材用ドリルに関するものである。
前記2つの切刃の各々は、ドリル先端からドリル外周側に向けて形成された主切刃と、前記主切刃よりドリル先端側に形成されたシンニング切刃とを有する炭素繊維複合材用ドリルであって、前記炭素繊維複合材用ドリルは、
回転軸対称に形成された2つの逃げ面を有し、
前記逃げ面よりドリル外周にかけて背溝が形成されることで、第一マージン部および前記第一マージン部のヒール側となる第二マージン部が形成されており、
前記第一マージン部は、第一マージン部切刃と、ドリル先端側からドリル末端側に向けて形成された先端小径部とを有し、
前記先端小径部は、逃げ面を有し、
前記第二マージン部は、第二マージン部切刃と、ドリル先端側からドリル末端側に向けて傾斜が設けられた食付き部とを有し、
前記食付き部は、逃げ面と、食付き部切刃とを有することを特徴とする、炭素繊維複合材用ドリルに関する。
この一連の動作により、穿孔後の孔はバリ、デラミネーション(層間剥離)、炭素繊維の切れ残りや孔周囲の盛上り等の炭素繊維複合材に対する不具合が解消される。
さらに、ステンレス等の鋼系材料の切削は元より、薄板や軟らかい材質や炭素繊維複合材に対する切削においても、切削抵抗を大幅に低減することができ、ハンドドリルや手動のボール盤等を使用して孔あけ作業を容易に行うことが可能なドリルを提供することができる。また、切削抵抗が低減されることで、孔あけ精度が向上し、孔あけ時間が短縮するため作業効率が向上する。さらにドリルの寿命を大幅に延ばすことも可能となる。
図1のAは、第一実施形態に係る炭素繊維複合材用ドリルの平面図(ドリルを先端側から見た図)であり、図1のBは、第一実施形態に係る炭素繊維複合材用ドリルの平面図であって、各部位の径の違いを示すためにAの一部の線を削除した説明図である。図2のAは、第一実施形態に係る炭素繊維複合材用ドリルの正面図であり、図2のBは第一実施形態に係る炭素繊維複合材用ドリルの(やや切屑排出溝よりから見た)側面図である。図3のAは、第一実施形態に係る炭素繊維複合材用ドリルの回転軌跡を示す説明図であり、図3のBは第一実施形態に係る炭素繊維複合材用ドリルのドリル末端側の形状を示す説明図である。
図1のAに示す如く、ドリル(1)の上半部(ドリル先端側)は、回転軸対称に形成された2つの切刃を有し、ドリル先端側から見たとき略U字状となる2つのシンニングがドリル先端部に施されている。
尚、シンニングとは、ドリルの心厚部に切れ刃を形成する研磨のことを指す。シンニングによりチゼルの心厚だけを少し落とし、負のすくい角として切れ刃を形成することができる。
ドリル(1)の下半部(ドリル末端側)は、ハンドドリルやボール盤等に取付け取外し可能となるように形成されている。
また、航空機製造用に使用されるポジティブフィードドリル(D)(図11参照)に装着できるようにネジ加工を施すなど、使用用途により形状を決定する。
図11は、本発明に係る炭素繊維複合材用ドリルが装着される、航空機製造用に使用されるポジティブフィードドリル(D)の一例を示す図であって、Aはポジティブフィードドリル(D)の側面図と装着部(D1)の拡大図であり、Bはポジティブフィードドリル(D)に装着するドリルのシャンク部(12)の拡大図である。なお、図11のAに示す通り、ポジティブフィードドリル(D)の装着部(D1)には、雌ネジ(D2)が設けられている。
ドリル(1)の先端角は、凡そ100°〜140°の範囲で設定されている。
なお、図示例において、主切刃(4)はドリル外周方向に直線状に延びているが、曲線状に延びていてもよいし、直線状部分と曲線状部分とを含む線状に延びていてもよい。これは本発明の全ての実施形態に共通する。
また、主切刃(4)は鉛直方向に対してすくい角θ1を有するように形成されている。
尚、図1のA中の符号(5)は、主切刃の逃げ面を指す。
具体的には、ドリル直径φの5〜10%程度に設定されていることが好ましい。
例えば、ドリル直径φが2mm〜13mmの場合、チゼル幅(2W)はドリル直径の増減に応じて0.05mm〜1.3mmの範囲で増減させて設定する。
捩れ角δが10°未満、あるいは45°を超えるように設定すると、切屑を排出し難くなり、ドリルの切れ味が低下するため好ましくない。
捩れ角を10°〜45°を満たすように設定すると、切屑の排出を容易にでき且つドリルの切れ味を向上させることができる。
それゆえに、捩れ角δは30°前後に設定することが好ましい。
ドリル先端部に施されたシンニング面(3S)は、ドリル先端側から見たとき略U字状となっており、シンニング面(3S)が鉛直方向に対して傾斜角3γを有し、δ≦3γを満たし、さらにシンニング面(3S)の傾斜角3γは、15°〜50°の範囲(例えば35°)に設定されていることが好ましい。
また、シンニング切刃(3)は鉛直方向に対してすくい角θ2を有するように形成されている。
すなわち、これらのすくい角の関係は、θ1>θ2>0°となる。
但し、チゼル(2)の直下のみでθ2≒0°(ほぼ0°に近いθ2<0°)となる。
また、主切刃(4)により形成された刃先角α1と、シンニング切刃(3)により形成された刃先角α2とは、α1≦α2<90°を満たすことが望ましい。
これにより、ドリル外周部(O)をダブルマージン形状(すなわち、第一マージン部(M1)と第二マージン部(M2)を備える形状)とし、第一マージン部(M1)とヒール側に配した第二マージン部(M2)にも切刃(第一マージン部切刃(M1C)と第二マージン部切刃(M2C))を設け、実質4枚刃形状とすることで、炭素繊維複合材の穿孔時におけるデラミネーションの発生を防止することができる。
すなわち、主切刃(4)から繋がる先端小径部(8)にはエンドミルの外周刃の様な逃げを設け、先端小径部(8)以外の第一マージン部(M1)は、一般的なドリルと同様に、外周に沿った形状となっている。
ドリル径(7)よりも径を細くした第一マージン部(M1)の部分を先端小径部(8)と称する。
尚、先端小径部(8)よりもドリル末端側のドリル径(7)を有する部分をドリル外周部(O)と称する。
また、第一マージン部切刃(M1C)は、先端小径部(8)に位置する部分を先端小径部切刃(8C)と、ドリル外周部(O)に位置する部分を外周切刃(OC)とに分けられる。
先端小径部(8)は、ドリル径(7)より0.1mmから0.4mm程度細くすることが望ましい。
たとえば、ドリル径(7)が3mmの場合は先端小径部(8)を2.9mm、ドリル径(7)が6mmの場合は先端小径部(8)を5.8mm、ドリル径(7)が15mmの場合は先端小径部(8)を14.6mmとすることが望ましい。
先端小径部(8)の径を上記範囲に設定することにより、穿孔時に、先端小径部(8)による切削から後述する食付き部(9)による切削に円滑に移行することができ、穿孔後の孔のバリ、デラミネーション(層間剥離)、炭素繊維の切れ残りや孔周囲の盛上り等の炭素繊維複合材に対する不具合をより容易に防止することができる。
以下、第二マージン部(M2)の傾斜を設けた部分を食付き部(9)と称する。
食付き部(9)には食付き部逃げ面(95)が設けられており、これにより食付き部切刃(9C)が形成されている。
第二マージン部切刃(M2C)は、食付き部(9)のドリル末端側の端部からドリル末端方向に延びるように設けられている(図2のA参照)。
また、第二マージン部(M2)は、食付き部(9)のドリル末端側の端部からドリル末端方向に延びるように、ヒール側に面取り部(M21)を有する。
面取り部(M21)を有することで、第二マージン部の強度とマージン幅を調節する事が容易に行なわれる。例えば、強度が必要な場合は第二マージン部全体の幅を大きく取り、面取り部の寸法によってマージン幅の大小を調整する。これにより、適正な強度とマージン幅を備えることができる。
具体的な長さは、炭素繊維複合材の炭素繊維の編み方や積層方向等によって設定する。
図2のAおよび図2のBでは、食付き部(9)の長さ(9L)をドリル径(7)の凡そ80%としているが、食付き部(9)の傾斜角(円錐台の角度)や先端径によって長さは定まるので、穿孔材料の変化により、長さを決定する。
先端小径部(8)の長さ(8L)は食付き部(9)の長さ(9L)以上とすれば良いが、食付き部(9)の長さ(9L)に近い場合は、いきなり4枚刃による切削に移行するため、先端小径部(8)の長さ(8L)はドリル径(7)の1〜2倍程度に定めることが望ましい。
また、先端小径部(8)の逃げ角(β8)および食付き部(9)の逃げ角(β9)は、0°より大きく10°以下の設定(すなわち、0°<β8≦10°および0°<β9≦10°)とすることが望ましい。先端小径部(8)の逃げ角(β8)は、6.5°〜7°、食付き部(9)の逃げ角(β9)は、8°に設定することがより望ましい。
先端小径部(8)の逃げ角(β8)および食付き部(9)の逃げ角(β9)を、0°より大きく10°以下の設定にすることで、切屑の排出を容易にでき且つドリルの切れ味を向上させることができる。
図1のBに示す如く、食付き部(9)の先端径(97)の径が最も小さく、次にドリルの先端小径部(8)の径(87)が小さく、ドリル径(7)の径が最も大きくなっている。
これにより、第一実施形態に係るドリル(1)を用いて炭素繊維複合材を切削した際、穿孔は、チゼル(2)からシンニング切刃(3)、主切刃(4)を経て、先端小径部(8)に達すると、先端小径部(8)外周の切削が開始される。その後切削は先端小径部(8)から徐々に食付き部(9)に達し、食付き部(9)ではコーン状の孔が成形され、ドリル径(7)に到達すると、暫くは第二マージン部切刃(M2C)によって凡その所定サイズ径の孔が成形され、第一マージン部切刃(M1C)に到達した直後より、ダブルマージンで、すくい角を持った計4枚の切刃(すなわち、2枚の第一マージン部切刃(M1C)と2枚の第二マージン部切刃(M2C))によるドリル外周部(O)によって、所定サイズの径(ドリル径(7))の孔の穿孔が完了する。
炭素繊維複合材の穿孔に於いては、0.25インチの穿孔に対し、0.251インチ径のドリルを使用するなど、穿孔直後の孔の収縮が起きるため、ダブルマージン4枚刃による穿孔が孔の形成にとって有効に作用する。
すなわち、先端小径部(8)は、ドリル径(7)部分の回転軌跡よりも小さい回転軌跡を有し、先端小径部(8)よりもドリル末端側の食付き部(9)が設けられている部分では、食付き部(9)の傾斜に由来してコーン状の回転軌跡を有し、食付き部(9)よりもドリル末端側はドリル径(7)の回転軌跡(すなわち、2枚の第一マージン部切刃(M1C)と2枚の第二マージン部切刃(M2C)の計4枚の外周切刃で切削する部分)を有する。
図3のAよりもドリル末端側ではドリル径(7)の回転軌跡で穿孔が進む。
捩れ角は、ドリルの先端側とドリルの末端側を同一の角度としても良いが、各々の角度を異なる角度に設定し、各部位の役割に適した角度に設定しても良い。
より具体的には、ドリルの先端側では比較的角度が緩く、ドリルの末端側では角度が大きい方がデラミネーション等の発生が少ないので好ましく、先端小径部(8)とドリル外周部(O)の境界を起点に各々異なる捩れ角としても良い。
例えば、小径側を10°〜30°、外周側を25°〜45°としても良い。
すなわち、ドリル径(7)よりもドリル先端部の切刃外周部を若干細くし、所謂下孔を形成した後、食付き部(9)による傾斜により、徐々に孔径を拡大しながらドリル径(7)による孔を形成し、最終的にはダブルマージン4枚刃による安定した切削で穿孔が終了する。
この一連の動作により、穿孔後の孔はバリ、デラミネーション(層間剥離)、炭素繊維の切れ残りや孔周囲の盛上り等の炭素繊維複合材に対する不具合が解消される。
ドリル(1)は、ダイヤモンドコーティングを行う事で、炭素繊維複合材に特化した、高送りが可能で、孔品質が向上する、長寿命のドリルとなる。
図4は、第二実施形態に係る炭素繊維複合材用ドリルの平面図(ドリルを先端側から見た図)である。図5のAは、第二実施形態に係る炭素繊維複合材用ドリルの正面図であり、図5のBは、第二実施形態に係る炭素繊維複合材用ドリルの側面図である。図6は、第二実施形態に係る炭素繊維複合材用ドリルの外周溝の説明図である。
外周溝(11)は、先端小径部(8)を含む第一マージン部(M1)と食付き部(9)を含む第二マージン部(M2)の両方あるいは片方に設けられている。
第一マージン部(M1)と第二マージン部(M2)の両方あるいは片方に外周溝(11)を設けることにより、炭素繊維複合材の穿孔時の発熱を抑えることが可能となり、穿孔時の発熱による加工孔の変形や炭素繊維複合材の材質の変化などの問題を解消することができる。
尚、第二実施形態に係るドリル(21)は、外周溝(11)が設けられている以外の特徴は第一実施形態に係るドリル(1)と同様の特徴を備えている。
外周溝(11)の数は、ドリル径(7)の範囲内で溝数4を基準とし、穿孔深さにより数の多寡を決めれば良く、例えば、ドリル径(7)を下回る場合は溝数2〜4、ドリル径(7)の1.5倍を超える場合は溝数4〜6と云うように定めればよい。
特に先端小径部(8)を含む第一マージン部(M1)と食付き部(9)を含む第二マージン部(M2)の両方に外周溝(11)を設けた場合に効力を発揮し、効果が顕著に現れる。結果として長寿命とデラミネーションの発生を抑えることが可能となる。
外周溝(11)を設けた部分によって凡その切削が為された後に外周溝(11)が設けられていない第一マージン部切刃(M1C)と第二マージン部切刃(M2C)の計4枚の切刃が追随して孔を仕上げる形となり、外周溝(11)による発熱抑制効果と外周溝を設けない第一マージン部切刃(M1C)と第二マージン部切刃(M2C)の鋭利な切刃による仕上げ効果により、長寿命の実現とデラミネーションの発生を抑えることとなる。
傾斜の好適な例として、ドリルの長手方向を垂直とした場合に水平より30°〜40°程度とする。
但しこの傾斜は外周溝(11)により第一マージン部切刃(M1C)と第二マージン部切刃(M2C)の強度が不足するため、折損防止を目的として設定したものであり、水平としても良い。
溝底部のコーナー(11C)に適切な円弧(R)を設けることで、ドリルの折損を防止することができる。
外周溝(11)の深さは凡そドリル径(7)の5%〜10%とし、ドリル径(7)に応じて調整する(例えば比較的大きいサイズのドリル径の場合は小さめに、ドリル径が小径の場合は大きめに設定などに調整する)。また、外周溝(11)の深さは背溝(BC)に干渉しない深さに設定し、ドリル径(7)や穿孔深さなどに応じて、外周溝(11)と背溝(BC)各々の深さを設定すれば良い。
なお、外周溝(11)の範囲を前述のようにドリル径(7)相当の長さ乃至ドリル径の1/2としたものの、穿孔する深さが深い場合にはドリル径(7)相当の長さ以上とすることで発熱を抑えることができる。
図7は、第三実施形態に係る炭素繊維複合材用ドリルの平面図(ドリルを先端側から見た図)である。図8は、第三実施形態に係る炭素繊維複合材用ドリルの正面図である。
第2背溝(BC2)が設けられることにより、最終切刃である第二マージン部切刃(M2C)のすくいを強化(すなわち、すくいを広く取る)することができ、ドリルの抜け際に生じる、炭素繊維の強さによるアンカット(繊維を完全に切断できず、引き千切れた状態で貫通孔抜けの際、円周に繊維が残る現象)を防止することができる。
また、アンカットの防止効果を奏するために、先端小径部(8)の径を第一〜第二実施形態に係るドリルよりも少し細く設定することが望ましい(例えば、図5のAに示したドリルの場合は、外径6.35mmに対して、6.15mmとしていたものを、第三実施形態に係るドリル(31)では5.95mmと云う様に細く設定する)。
また、第二マージン部(M2)の外周溝(11)を食付き部(9)以外の箇所にのみ形成する場合、溝間のピッチを小さくして外周溝(11)を集中して形成することが望ましい。
このように、第二マージン部(M2)の外周溝(11)を、食付き部(9)を通過した以降の第二マージン部(M2)に集中させることにより、アンカットの発生を防止することができる。
これは、切刃が断続的に炭素繊維に当たることで、炭素繊維が切刃に引きずられことなく切断されると云う効果によるものであり、炭素繊維自体が強力な強度を有する場合や繊炭素維の径が細い場合等に、炭素繊維切断時に切刃が繊維を引きずってしまうことを防止することができる。
それゆえに、ドリル外径に大きめのバックテーパーを設けてすくい戻り現象を解消することが望ましい。
通常のドリルではドリル先端からドリル末端にかけて0.04/100(mm)程度のバックテーパーを設けているが、これを通常の10倍に相当する0.4/100(mm)(つまり、バックテーパー開始点からドリル末端方向に100mm毎にドリル径が0.4mmずつ小さくなる)とし、バックテーパーを外径部の起点より設けることですくい戻り現象を解消することができる。
また、アンカットを防止する効果は、第2背溝(BC2)および第二マージン部(M2)の外周溝(11)のいずれかの構成を備えることで奏することができる。
すくい戻り現象を解決するために、ドリル外径に大きめのバックテーパーを設けることは、第一実施形態及び第二実施形態にも効果があり、第三実施形態を含めた何れにも効果が確認されている。
以下の実施例1を用いて航空機グレードの炭素繊維複合材(厚さ10.5mm、炭素繊維の太さ3μm)の穿孔試験を実施した。
実施例1:
先端角:120°
主切刃逃げ角:10°
捩れ角:30°
小径部外径:6.15mm
小径部長さ:10mm
小径部逃げ角:6.5°
食付き部傾斜角度:5°
食付き逃げ角8°
食付き部長さ:5mm
外周溝数:4(先端小径部と食付き部を含む第二マージン部に夫々4つ)
外周溝ピッチ:1.5mm
ドリル径:6.35mm
材質:超硬合金
ダイヤモンドコーティング有
大鳥機構製、NCフライスにて6,000RPM、送り456mm/min条件を使用して炭素繊維複合材を穿孔した。
貫通孔数3000まで実施した。
それゆえに、本発明に係るドリルは、航空機グレードの炭素繊維複合材に対して、バリ、デラミネーション(層間剥離)、炭素繊維の切れ残りや孔周囲の盛上り等、炭素繊維複合材に対する不具合を一切生じさせずに安定した切削および穿孔が可能であることがわかった。
上記実施例1および以下の実施例2のドリルを用いて航空機に使用される炭素繊維複合材(厚さ6.0mm、炭素繊維の太さ2μm)の穿孔試験を実施した。
実施例2:
先端角:120°
主切刃逃げ角:10°
捩れ角:30°
小径部外径:5.95mm
小径部長さ:10mm
小径部逃げ角:6.5°
食付き部傾斜角度:5°
食付き逃げ角8°
食付き部長さ:5mm
外周溝数:4(先端小径部と第二マージン部に夫々4つ)
外周溝ピッチ:1.5mm(先端小径部)
外周溝ピッチ:1.0mm(第二マージン部)
ドリル径:6.35mm
材質:超硬合金
ダイヤモンドコーティング有
大鳥機構製、NCフライスにて6,000RPM、送り456mm/min条件を使用して炭素繊維複合材を穿孔した。
図10に示す如く、実施例1および実施例2のドリルを用いて炭素繊維複合材を穿孔した結果、バリ、デラミネーション(層間剥離)、炭素繊維の切れ残りや孔周囲の盛上り等、炭素繊維複合材に対する不具合は一切生じていなかった(目視により確認)。
とりわけ、実施例2のドリルは、実施例1のドリルと比較して、形成された孔がよりきれいな状態であった。
それゆえに、本発明に係るドリルは、航空機に使用される炭素繊維複合材に対して、バリ、デラミネーション(層間剥離)、炭素繊維の切れ残りや孔周囲の盛上り等、炭素繊維複合材に対する不具合を一切生じさせずに安定した切削および穿孔が可能であることがわかった。
21 ドリル(第二実施形態)
31 ドリル(第三実施形態)
2 チゼル
3 シンニング切刃
4 主切刃
5 逃げ面
6 切屑排出溝
7 ドリル径
8 先端小径部
9 食付き部
10 回転軌跡
11 外周溝
BC 背溝
M1 第一マージン部
M1C 第一マージン部切刃
M2 第二マージン部
M21 面取り部
M2C 第二マージン部切刃
O ドリル外周部
Claims (8)
- 回転軸対称に形成された2つの切刃を有し、
前記2つの切刃の各々は、ドリル先端からドリル外周側に向けて形成された主切刃と、前記主切刃よりドリル先端側に形成されたシンニング切刃とを有する炭素繊維複合材用ドリルであって、前記炭素繊維複合材用ドリルは、
回転軸対称に形成された2つの逃げ面を有し、
前記逃げ面よりドリル外周にかけて背溝が形成されることで、第一マージン部および前記第一マージン部のヒール側となる第二マージン部が形成されており、
前記第一マージン部は、第一マージン部切刃と、ドリル先端側からドリル末端側に向けて形成された先端小径部とを有し、
前記先端小径部は、逃げ面を有し、
前記第二マージン部は、第二マージン部切刃と、ドリル先端側からドリル末端側に向けて傾斜が設けられた食付き部とを有し、
前記食付き部は、逃げ面と、食付き部切刃とを有し、
前記背溝は、前記第二マージン部側から前記第一マージン部側に延びるように、前記第二マージン部側の背溝の溝深さが前記第一マージン部側(M1)の背溝(BC)よりも深くなっており、
当該第二マージン部(M2)側の背溝(BC)の深さは、前記炭素繊維複合材用ドリルの回転軸に沿ってドリル先端側から見た際において当該ドリルの回転軸からドリル外周(O)までの距離と、前記ドリルの回転軸から第2背溝(BC2)までの距離との差である、
ことを特徴とする、炭素繊維複合材用ドリル。 - 前記先端小径部のドリル長手方向の長さは、前記食付き部のドリル長手方向の長さ以上であることを特徴とする、請求項1に記載の炭素繊維複合材用ドリル。
- 前記先端小径部の捩れ角と、前記先端小径部よりもドリル末端側のドリル外周部の捩れ角とが異なる角度であることを特徴とする、請求項1または2に記載の炭素繊維複合材用ドリル。
- 前記第一マージン部および/または前記第二マージン部には、1以上の外周溝が形成されていることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の炭素繊維複合材用ドリル。
- 前記第一マージン部の外周溝は、前記先端小径部にのみ形成されていることを特徴とする、請求項4に記載の炭素繊維複合材用ドリル。
- 前記第二マージン部の外周溝は、前記食付き部以外の箇所にのみ形成されていることを特徴とする請求項4または5に記載の炭素繊維複合材用ドリル。
- ドリル外周部には、バックテーパーが設けられていることを特徴とする、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の炭素繊維複合材用ドリル。
- 前記炭素繊維複合材用ドリルにはダイヤモンドコーティングが施されていることを特徴とする、請求項1乃至7のいずれか1項に記載の炭素繊維複合材用ドリル。
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