JP4919527B1 - ドリル - Google Patents
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Abstract
【解決手段】先端側に刃部12を備え後端側にシャンク部30を備えるドリル10には、ねじれ半月状の一条の切屑排出溝16が形成されている。刃部12の外周面は全体がマージン14とされており、マージン14にはドリル10の回転軸回りを周回するように切屑排出溝16とは逆向きにねじれて刃部12にクーラントを供給する副溝20が形成されている。そして、副溝20が切屑排出溝16により分割されて切屑排出溝に開口している。そして、副溝20の側面とマージン14の交差部分に形成されるエッジ部22には目立て処理がなされておらず切刃が形成されていない。
【選択図】図1
Description
また、自動車の塗装ラインでは、塗料の流路を備えた樹脂部品が使用されており、塗装ラインに流れてくる車に指定されている色に自動で色替えをして塗装を行っている。ここで、塗料の流路となる穴内壁の面粗度が悪いと、色替えのための流路の洗浄に手間がかかり、洗浄用の溶剤の使用量も多くなる。そのため、塗装ラインで使用される樹脂部品に対して、穴内壁の面粗度が良い穴明け加工が要求されている。
このように、樹脂材に対する高精度の深穴加工についてのニーズは高まってきているが、市場規模が小さいため、市販品には樹脂用のドリルは見あたらない。そこで、ガンドリルやツイストドリル等の金属用のドリルの転用により、樹脂材への深穴加工がなされてきた。
ガンドリルは樹脂材に対する高精度の深穴加工に転用することができるが、ガンドリルを用いた深穴加工では、クーラントを供給するための高圧ポンプを必要とする。そのため、高圧ポンプを備えていない一般の工作機械では、ガンドリルを用いた深穴加工を実施することはできず、ガンドリルを用いた深穴加工は汎用性に欠ける。また、ガンドリルによる深穴加工では、切削速度が遅いという問題がある。
ツイストドリルは、ドリルの外周面が被削材に接触するマージンの幅を狭くして、ドリルと被削材の接触抵抗を減らしている。ツイストドリルのマージンの幅は外周面の10%前後である。金属材の場合は剛性が高いので、マージンが穴の内壁面に接触する幅が狭くても、形成される穴の直進性に問題が生じることは少ない。しかし、被削材が樹脂の場合、樹脂材は金属材に比べて柔らかいため、マージンの幅が狭いとドリルの外周面が穴の内壁面に接触する幅が狭くなり、ビビリやむしれが発生して切削面に荒れが生じ、形成される穴の直進性や穴の内壁面の面粗度に問題が生じる。
また、金属材では切屑が剪断されるため、切屑の穴からの排出が比較的容易であるが、樹脂は金属に比べて粘りが強いため、樹脂材では切屑が柔らかくて粘りがあり剪断されずに帯状となるので、切屑の穴からの排出性が悪い。
また、樹脂は金属に比べてより低温で柔らかくなるので、穴明け加工時には加工熱によって樹脂材が柔らかくなり、穴の内壁面が傷つきやすい。金属材の場合には400°C位までは許容できるが、樹脂の場合は130°C位で傷つきやすくなる。
そして、樹脂材の加工では、ドライ切削を行うと静電気の発生により面粗度の低下、刃部の劣化が生じるので、刃部へのクーラントの供給は必須であると考えられる。
しかしながら、樹脂材に対する穴空け加工では、前述の通り切屑が柔らかくて粘りがあり帯状となるので穴からの排出性が悪い。そのため、特許文献1に記載のドリルでは、切屑が仕上げ刃に引っかかって穴の内壁面を傷つけて、かえって面粗度を低下させてしまうと考えられる。
また、樹脂材は、前述の通り穴明け加工時に発生する熱により柔らかくなって傷つきやすくなる。そして、特許文献1に記載のドリルではマージンの幅を広く取ることにより摩擦熱が増大するので、穴の内壁面がさらに傷つきやすくなると考えられる。
また、樹脂材に対する加工では、前述の通り静電気の発生による面粗度の低下、刃部の劣化を防ぐため、刃部へのクーラントの供給は必須であると考えられるが、特許文献1にはクーラントに関する記載はない。
よって、特許文献1に記載のドリルを樹脂材への高精度な深穴加工に用いることは、困難であると考えられる。
まず、本発明の第1の発明は、先端側に刃部を備え後端側にシャンク部を備えるドリルであって、
前記刃部の先端から前記シャンク部側に向けてドリルの回転軸回りにねじれる一条の切屑排出溝が形成され、該切屑排出溝は、前記シャンク部側から前記刃部の先端に向けて、ドリルの正回転方向にねじれており、該切屑排出溝のドリルの回転方向を向く側面と該刃部の外周面との交差稜線部分には切刃が形成されており、
前記刃部のドリルの回転軸に直交する断面の形状は半月状とされており、
前記刃部の切屑排出溝を除く外周面は全体がマージンとされ、該マージンには前記シャンク部側から該刃部の先端側に向けてドリルの回転軸回りに前記切屑排出溝とは逆向きにねじれて該刃部にクーラントを供給する副溝が形成されており、
前記副溝は前記マージン上に点在して形成されており、該副溝の側面が該マージン上で閉じている、樹脂材への穴明け加工に用いられるドリルである。
そして、副溝はドリルの正回転方向とは逆方向にねじれており、穴内壁に食いつきにくい構成とされているので、副溝のエッジ部によって穴の内壁面を傷つけるのを防ぐことができる。
そして、穴加工の進行に伴って刃部が穴に入っていく時、外部から刃部に供給されるクーラントがマージンに形成された副溝から穴の中に入り、クーラントをドリルの刃部と穴の内壁面の間に供給し、摩擦を低減させ、刃部と穴内壁を冷却して、穴内壁の荒れを防ぎ面粗度の低下を防ぐことができる。
そして、クーラントが刃部と穴の内壁面の間に供給されるため、静電気に対する放電効果があり、静電気による穴内壁の面粗度の低下および刃部の劣化を防止することができる。
そして、マージン上に点在して形成された副溝にクーラントを保持して、クーラントをドリルの刃部と穴の内壁面の間に供給し、摩擦を低減させ穴内壁を冷却し、穴内壁の荒れを防ぎ面粗度の低下を防ぐことができる。また、穴内壁に付着した切屑が副溝に保持されたクーラントにより洗い落とされて副溝に留まるので、穴内壁に付着した切屑により穴内壁が傷つけられるのを防ぐことができる。また、加工中にびびり等が発生した場合には、副溝に保持されたクーラントよりドリルの穴内壁面への衝突が抑制されて、穴内壁が保護される。
よって、この第1の発明により、樹脂材への高精度の深穴加工に用いられるドリルを提供することができる。
この第2の発明によれば、切屑排出溝のシャンク部側の端部に設けられた切屑排出面は、シャンク部の後方に傾斜する半月状の面とされている。よって、ドリルの正回転により切屑排出溝に沿ってシャンク部側の端部に達した切屑が、遠心力により切屑排出面で横滑りしてドリルの径方向の外側へ飛ばされるので、切屑の排出効率がよい。
刃部の断面積が外周円の面積の50%以上あれば、樹脂材への穴明加工に必要な強度を確保できる。また、刃部の断面積が外周円の面積の60%以下であれば、切屑排出溝の断面積が十分に確保されるので、切屑の効果的な排出が可能となる。
ドリルの溝長Lが刃部の外径Dの3倍以上であれば、ステップ加工で確実に切屑を排出して深穴加工を行うことができる。また、ドリルの溝長Lが刃部の外径Dの10倍以下であれば、ドリルの剛性が保たれる。
まず、上述の第1の発明によれば、マージンの幅が広いため、穴の直進性の向上が図られる。そして、切屑排出溝がねじれ半月状となるので、切屑排出溝の割合が大きいので大量の切屑を排出することができ、切削効率を高めることができる。また、切屑排出溝に狭まった部分がないので切屑が詰まりにくく、ねじれていることにより切屑を送り出す効果があり、切屑を効率よく排出することができる。そして、副溝はドリルの正回転方向とは逆方向にねじれており、穴内壁に食いつきにくい構成とされているので、副溝のエッジ部によって穴の内壁面を傷つけるのを防ぐことができる。そして、マージンに形成された副溝により、クーラントをドリルの刃部と穴の内壁面の間に供給し、摩擦を低減させ穴内壁を冷却して、穴内壁の荒れを防ぎ面粗度の低下を防ぐことができる。そして、クーラントによる静電気に対する放電効果により、静電気による穴内壁の面粗度の低下および刃部の劣化を防止することができる。そして、マージン上に点在して形成された副溝にクーラントを保持して、クーラントをドリルの刃部と穴の内壁面の間に供給し、摩擦を低減させ穴内壁を冷却し、穴内壁の荒れを防ぎ面粗度の低下を防ぐことができる。また、穴内壁に付着した切屑が副溝に保持されたクーラントにより洗い落とされるので、穴内壁が傷つけられるのを防ぐことができる。また、加工中にびびり等が発生した場合には、副溝に保持されたクーラントよりドリルの穴内壁面への衝突が抑制される。よって、この第1の発明により、樹脂材への高精度の深穴加工に用いられるドリルを提供することができる。
次に上述の第2の発明によれば、切屑排出溝のシャンク部側の端部に設けられた切屑排出面は、シャンク部の後方に傾斜する半月状の面とされている。よって、ドリルの正回転により切屑排出溝に沿ってシャンク部側の端部に達した切屑が、遠心力により切屑排出面で横滑りしてドリルの径方向の外側へ飛ばされるので、切屑の排出効率がよい。
次に上述の第4の発明によれば、ドリルの溝長Lが刃部の外径Dの3倍以上であれば、ステップ加工で確実に切屑を排出して深穴加工を行うことができる。また、ドリルの溝長Lが刃部の外径Dの10倍以下であれば、ドリルの剛性が保たれる。
図1に本発明の実施例1におけるドリル10の側面図を、図2に図1のA−A位置におけるドリル10の断面図を示す。図2の下方の矢印はドリル10の正回転方向を示す。
ドリル10は先端側に刃部12を備え、後端側にシャンク部30を備えた樹脂材の深穴加工に用いるドリルである。ドリル10には、刃部12の先端からシャンク部30に向けて、ドリル10の回転軸回りにねじれる一条の切屑排出溝16が形成されている。切屑排出溝16は、シャンク部30側から刃部12の先端に向けてドリル10の正回転方向に一周以上ねじれており、ドリル10の回転軸に対するねじれ角は35度である。そして、図2に示すとおり、切屑排出溝16のドリル10の正回転方向を向く側面と刃部12の外周面との交差稜線部分には切刃18が形成されている。そして、図1に示すとおり、切屑排出溝16のシャンク部30側の端部には、シャンク部30の後方に傾斜する半月状の平面からなる切屑排出面32が形成されている。
副溝20は、刃部12の先端の少し手前から切屑排出面32の少し後方までの範囲で、刃部12の軸方向のほぼ全長にわたって、切屑排出溝16とは逆向きにねじれて刃部12の外周面をほぼ7回周回するように形成されている。図1にθで示した副溝20のねじれ角は約60度である。そして、副溝20は切屑排出溝16により分割されて切屑排出溝16に開口している。そして、副溝20の側面とマージン14の交差部分に形成されるエッジ部22に目立て処理はされておらず、エッジ部22には切刃は形成されていない。
図3に、図1のB方向からみた、切刃18と副溝20が交差する部位の矢視図を示す。図3に示すとおり、副溝20のエッジ部22が切刃18と交差する部位においては、エッジ部22に丸め処理がなされており、切刃18が副溝20のエッジ部22と交差する部位には角ばった所がない。
この実施例1のドリル10によれば、刃部12の切屑排出溝16を除く外周面は全体がマージン14とされているのでマージン14の幅が広いため深穴加工における穴の直進性の向上が図られる。そして、刃部12が一条のねじれ半月状とされており、切屑排出溝16もねじれ半月状となる。よって、切屑排出溝16の割合が大きいので大量の切屑を排出することができるため切削効率を高めることができる。また、切屑排出溝16に狭まった部分がないので切屑が詰まりにくい。さらに、切屑排出溝16がねじれていることにより、ドリル10の正回転により切屑を送り出す効果があり、切屑を効率よく排出することができる。
そして、ドリル10では、切屑排出溝16のシャンク部30側の端部に設けられた切屑排出面32は、シャンク部30の後方に傾斜する半月状の平面なので、切屑排出溝16のシャンク部30側の端部に達した切屑が、切屑排出面32で横滑りしてドリル10の径方向の外側へ飛ばされるので、切屑の排出効率がよい。
そして、図3に示したとおり、刃部12に形成された切刃18が副溝20のエッジ部22と交差する部位では、エッジ部22に丸め処理がなされているので、エッジ部22と交差する部位の切刃18による穴内壁の傷つけや、当該部位の切刃18に切屑が引っかかることによる穴内壁の傷つけを防止することができる。
よって、ドリル10は、樹脂材への高精度の深穴加工に用いることができる。
そして、ドリル10による樹脂材への深穴加工では、クーラントを供給する高圧ポンプを必要としないので、ドリル10により、一般の工作機械で、樹脂材への高精度の深穴加工を実施することができる。
そして、実施例1では、刃部12の断面積dsの刃部12の外周円の面積Sに対する割合ds/Sは、約55%としているが、ds/Sは、50%以上かつ60%以下であることが好ましい。刃部12の断面積が外周円の面積の50%以上あれば、樹脂材への穴空け加工に必要な強度を確保できる。また、刃部12の断面積が外周円の面積の60%以下であれば、切屑排出溝16の断面積が十分に確保されるので、切屑の効果的な排出が可能となる。
また、実施例1では、ドリル10の回転軸に対する副溝20のねじれ角θは約60度としているが、θは45度以上かつ80度以下とすることが望ましい。ドリル10の回転軸に対する副溝20のねじれ角θを45度以上とすると、副溝20のエッジ部22に切屑がさらに引っかかりにくくなる。また、ねじれ角θを80度以下とすれば、遠心力によりクーラントは副溝20をドリル10の先端部へ流れ易くなる。
図4に本発明の実施例2におけるドリル10aの側面図を、図5に図4のC−C位置におけるドリル10aの断面図を示す。実施例2のドリル10aと、実施例1のドリル10とでは、副溝の形成される範囲が少し異なる点、及びドリル10aにはシャンク部にクーラント誘導溝36が形成されている点に違いがあるが、他の構成はドリル10と共通するので、ドリル10と共通する部分は同一符号を付して説明を省略する。
実施例2のドリル10aでは、副溝20aは切屑排出溝16とは逆向きにねじれて、刃部12のシャンク部30側の端部の切屑排出面32の後方から刃部12の先端近くまでの範囲でドリル10aの外周面を7回余り周回するように形成されている。そして、副溝20aは切屑排出溝16により分割されて切屑排出溝16に開口している。そして、副溝20aの側面と、シャンク部30の外周面及び刃部12のマージン14との交差部分に形成されるエッジ部22aには目立て処理がなされておらず、切刃は形成されていない。
そして、シャンク部30の外周面には、ドリル10aのシャンク部30側の端部から刃部12に向けてドリル10aの回転軸と平行にクーラント誘導溝36が形成されており、クーラント誘導溝36は副溝20aおよび切屑排出面32に交差して、副溝20aおよび切屑排出面32に開口している。なお、クーラント誘導36はシャンク部30の途中から副溝20aに達するまでの範囲で形成しても良い。また、クーラント誘導溝36は副溝20aと同じ向きにねじれた構成としても良い。
この実施例2のドリル10aによれば、ドリル10aが正回転して刃部12に形成された切刃18により穴加工が進行するとき、刃部12に外部から供給されるクーラントがマージン14と穴の入り口の間で開口する副溝20から穴の中に入る。すると、副溝20aに入ったクーラントには遠心力が働き、クーラントは切屑排出溝16の表面部を経て副溝20aを伝いドリル10aの先端部へ流れていく。また、刃部12の全体が穴の中り、副溝20aの全体が穴の中に入った後も、シャンク部30に供給されるクーラントをシャンク部30と穴の入り口の間で開口するクーラント誘導溝36から刃部12へ誘導して副溝20aへ流すことができる。そして、クーラントをドリル10aの刃部12と穴の内壁面および穴の先端部へ供給できる。
よって、クーラントにより摩擦が低減し穴内壁および穴の先端部が冷却されるので、穴内壁の荒れを防ぎ面粗度の低下を防ぐことができる。また、クーラントによる静電気に対する放電効果により、静電気による穴の内壁面の面粗度の低下、刃部12および刃先の劣化を防止することができる。そして、エッジ部22aには目立て処理がされておらず切刃は形成されていないので、エッジ部22aと交差する部位の切刃18が穴内壁を傷つけたり、切屑を引っかけたりすることがない。
そして、ドリル10と共通の構成のマージン14により穴の直進性の向上が図られ、切屑排出溝16および切屑排出面32により切屑を効率よく排出することができる。
よって、ドリル10aは、樹脂材への高精度の深穴加工に用いることができる。
図6に本発明の実施例3におけるドリル10bの側面図を示す。実施例3のドリル10bは、実施例1のドリル10とは、副溝の構造が異なる点に違いがあるが、他の構成はドリル10と共通するので、ドリル10と共通する部分は同一符号を付して説明を省略する。
実施例3のドリル10bでは、図6に示すとおり、副溝20bは切屑排出溝16とは逆向きにねじれて、刃部12のシャンク部30側の端部から刃部12の先端近くまでの範囲で、マージン14上で位相を変えて点在するように形成されている。そして、副溝20bは切屑排出溝16とは交差せず、副溝20bの側面はマージン14上で閉じている。そして、副溝20bの側面と刃部12のマージン14との交差部分に形成されるエッジ部22bには、目立て処理がなされていない。
この実施例3のドリル10bによれば、副溝20bがマージン14上に点在して形成され、副溝20bの側面はマージン14上で閉じている。そこで、穴加工が進行してドリル10bの刃部12が穴の中に入っていくとき、刃部12は外部から供給されるクーラントを副溝20bに保持して穴の中に入っていく。そして、副溝20bからドリル10bの刃部12と穴の内壁面の間にクーラントが供給される。よって、クーラントにより摩擦が低減し穴内壁および穴の先端部が冷却されるので、穴内壁の荒れを防ぎ面粗度の低下を防ぐことができる。また、クーラントによる静電気に対する放電効果により、静電気による穴の内壁面の面粗度の低下、刃部12の劣化を防止することができる。そして、エッジ部22bには目立て処理がされていないので、エッジ部22bが穴内壁を傷つけたり、切屑を引っかけたりすることがない。
また、穴内壁に付着した微細な切屑が、副溝20b内に保持されているクーラントにより洗い落とされて副溝20b内に留まるため、穴内壁に付着した微細な切屑により穴内壁が傷つけられるのを防ぐことができる。また、加工中にびびり等が発生した場合には、副溝20b内に保持されたクーラントの圧力上昇と穴内壁面への飛散により、ドリル10bの穴内壁面への衝突が抑制されて、穴内壁面が保護される。
そして、ドリル10と共通の構成のマージン14により穴の直進性の向上が図られ、切屑排出溝16および切屑排出面32により切屑を効率よく排出することができる。
よって、ドリル10bは、樹脂材への高精度の深穴加工に用いることができる。
上述の各実施例では、切屑排出溝16のシャンク部30側の端部にねじれ半月状の溝に続いて半月状の切屑排出面32が形成される構成としているが、ねじれ半月状の溝と切屑排出面32の間に、断面が半月状でねじれのないストレート溝34が形成された構成としても良い。図7に、ストレート溝34が形成されたドリル10cを示す。ドリル10cでは、副溝20cは切屑排出溝16とは逆向きにねじれて、刃部12のシャンク部30側の端部の切屑排出面32の側方から刃部12の先端近くまでの範囲でドリル10cの外周面を約8回周回するように形成されている。そして、副溝20cは切屑排出溝16により分割されて切屑排出溝16開口している。そして、副溝20cの側面と、シャンク部30の外周面及び刃部12のマージン14との交差部分に形成されるエッジ部22cには、目立て処理がなされていない。ドリル10cの他の部分の構成は実施例1のドリル10とほぼ同様である。なお、ストレート溝34の部分では、溝がねじれている部分に比べて切屑の排出時の抵抗が少なくなる。
そして、上述の各実施例では切屑排出面32を傾斜が一定の平面としているが、ドリルの中心側の底辺部で傾斜が緩く、ドリルの外周側の上端部で傾斜が急となる曲面としても良い。また、切屑排出面32は必須ではなく、切屑排出溝16のシャンク部30側の端部がねじれたまま溝の深さが浅くなっていく構成としても良い。この構成では、切屑は切屑排出溝16のシャンク部30部側の端部で、ドリルの径方向外方へ押し出される。
また、上述の実施例1では、副溝のエッジ部が刃部に形成された切刃と交差する部位においては、エッジ部に丸め処理をしているが、当該エッジ部に面取り処理をする構成としても良い。また、エッジ部全体について面取り処理または丸め処理をしても良い。
また、上述の各実施例ではシャンク部の径を刃部の径と同一としているが、シャンク部の径はこれに限定されない。シャンク部の径を刃部の径より小さくすれば、シャンク部が穴内壁面と接触することを防ぎ、シャンク部の周囲から穴の内部へクーラントを供給することができる。また、ドリルのシャンク部側の端部で径を他の部分よりも大きくすることにより、ドリルの剛性を高めることができる。
その他、本発明に係るドリルはその発明の思想の範囲で、各種の形態で実施できるものである。
12 刃部
14 マージン
16 切屑排出溝
18 切刃
20、20a、20b 20c 副溝
22、22a、22b 22c エッジ部
30 シャンク部
32 切屑排出面
34 ストレート溝
36 クーラント誘導溝
D 外径
L 溝長
ds 断面積
S 面積
θ 副溝のねじれ角
Claims (4)
- 先端側に刃部を備え後端側にシャンク部を備えるドリルであって、
前記刃部の先端から前記シャンク部側に向けてドリルの回転軸回りにねじれる一条の切屑排出溝が形成され、該切屑排出溝は、前記シャンク部側から前記刃部の先端に向けて、ドリルの正回転方向にねじれており、該切屑排出溝のドリルの回転方向を向く側面と該刃部の外周面との交差稜線部分には切刃が形成されており、
前記刃部のドリルの回転軸に直交する断面の形状は半月状とされており、
前記刃部の切屑排出溝を除く外周面は全体がマージンとされ、該マージンには前記シャンク部側から該刃部の先端側に向けてドリルの回転軸回りに前記切屑排出溝とは逆向きにねじれて該刃部にクーラントを供給する副溝が形成されており、
前記副溝は前記マージン上に点在して形成されており、該副溝の側面が該マージン上で閉じている、樹脂材への穴明け加工に用いられるドリル。 - 請求項1に記載のドリルであって、
前記切屑排出溝の前記シャンク部側の端部には該シャンク部の後方に傾斜する半月状の面からなる切屑排出面が形成されていることを特徴とするドリル。 - 請求項1または請求項2に記載のドリルであって、
前記刃部の断面積dsの該刃部の外周円の面積Sに対する割合ds/Sが50%以上かつ60%以下とされていることを特徴とするドリル。 - 請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のドリルであって、
前記ドリルの溝長Lが前記刃部の外径Dの3倍以上かつ10倍以下であることを特徴とするドリル。
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