JP2010017817A - 繊維強化プラスチック用ドリル - Google Patents
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Abstract
【課題】簡易構造かつ低コストであり、高精度の穴加工が実現できる繊維強化プラスチック用ドリルを提供する。
【解決手段】切削排出用の溝1および2が設けられている繊維強化プラスチック用ドリル20において、繊維強化プラスチック用ドリル20の先端角である第1の先端角を有する第1の切れ刃4と、第1の切れ刃4に連続して形成されており、かつ第1の先端角よりも小さい第2の先端角を有する第2の切れ刃8と、第2の切れ刃8に連続して形成されており、かつ繊維強化プラスチック用ドリル20のマージンに逃げ角を設けた第3の切れ刃11とから構成する繊維強化プラスチック用ドリルとする。また、第1の先端角は60°〜150°の範囲として、第2の先端角は10°〜90°の範囲とする。さらに、逃げ角は5°〜20°の範囲とする。
【選択図】図1
【解決手段】切削排出用の溝1および2が設けられている繊維強化プラスチック用ドリル20において、繊維強化プラスチック用ドリル20の先端角である第1の先端角を有する第1の切れ刃4と、第1の切れ刃4に連続して形成されており、かつ第1の先端角よりも小さい第2の先端角を有する第2の切れ刃8と、第2の切れ刃8に連続して形成されており、かつ繊維強化プラスチック用ドリル20のマージンに逃げ角を設けた第3の切れ刃11とから構成する繊維強化プラスチック用ドリルとする。また、第1の先端角は60°〜150°の範囲として、第2の先端角は10°〜90°の範囲とする。さらに、逃げ角は5°〜20°の範囲とする。
【選択図】図1
Description
本発明は、繊維強化プラスチックの穿孔に用いるドリルに関する。
近年、燃費向上などを目的として自動車部品や航空機部品の軽量化が求められており、炭素繊維やガラス繊維による繊維強化プラスチック(FRP)が鉄系合金やアルミニウム合金の代替材料として注目を集めている。
しかし、繊維強化プラスチックを各種部品に適用するには、リベット止めやねじ止め用の穴加工を施す必要があり、金属材料用のドリルで穿孔を行うと、炭素繊維やガラス繊維などの繊維材料に起因したバリなどが発生していた。そのようなバリなどを除去するには、従来まで穴貫通後に再度リーマやエンドミルなどの別工具で再加工をしてバリなどを除去していたが、工具の段取り替え時間が煩雑であった。
そこで、特許文献1では2種類の異なる先端角を有するドリルを繊維強化プラスチックの穿孔に用いることで、炭素繊維やガラス繊維などの繊維材料の剥離を防止できる旨が開示されている。
また、特許文献2では特許文献1と同様に2種類の異なる先端角を有するドリルであり、かつドリル外周に切れ刃を有することで、繊維強化プラスチックの穿孔後に発生するバリなどを抑制できる旨が開示されている。
しかしながら、特許文献1のドリルでは、穿孔後に炭素繊維やガラス繊維などの繊維材料に起因したバリなどが発生するという問題があった
また、特許文献2に示すドリルでは、穿孔後のバリなどの発生を抑制できるが、ドリル外周部分に正のすくい角を設けるという複雑な構造であるため、コストアップにつながっていた。さらに、外周切れ刃(第3の切れ刃)にマージンが存在しているため、ドリルと繊維強化プラスチックとの摩擦熱により穿孔部が融着して高精度の穴加工が実現できないという問題もあった。ここで「マージン」とは、ランド上の二番取りをしていない円筒面部分をいう。
そこで、本発明においては、簡易構造かつ低コストであり、高精度の穴加工が実現できる繊維強化プラスチック用ドリルを提供することを課題とする。
本発明者は、前述した課題を解決するために、様々な調査を行った結果、穿孔部は穿孔に用いたドリル径よりも小さく収縮する性質があるため、ドリルによる穿孔後に、切れ刃を有していないドリルのマージンと穿孔部とが互いに摺動、摩擦することで摩擦熱が発生して、繊維強化プラスチック中のプラスチックが融着するので、高精度の穴加工が困難であることを知得した。
この知得により、本発明においては、切削排出用の溝を有する繊維強化プラスチック用ドリルにおいて、ドリルの先端角である第1の先端角を有する第1の切れ刃と、第1の切れ刃に連続して形成されており、かつ第1の先端角よりも小さい第2の先端角を有する第2の切れ刃と、第2の切れ刃に連続して形成されており、かつドリルのマージンに逃げ角を設けた第3の切れ刃と、から構成されており、第1の先端角は60°〜150°の範囲であり、第2の先端角は10°〜90°の範囲である繊維強化プラスチック用ドリルとした。
このような構成の繊維強化プラスチック用ドリルを提供することで、第1の切れ刃によって繊維強化プラスチックに対する食付き性が向上して、ドリルの歩行現象が低減する。また、第2の切れ刃によってバリ発生を抑制する。さらに、逃げ角を設けた第3の切れ刃を備えることで穿孔部に発生する摩擦熱を低減する。ここで、「ドリルの歩行現象(ウォーキング)」とは、穿孔時にドリルがぶれる現象を言い、穴加工の精度を判断する指標の1つである。つまり、被削材(繊維強化プラスチック)への食付き性が良好であるほど、ドリルに歩行現象は見られないので、その後のドリルにかかる切削抵抗が小さくなる。
以下、本発明に係るドリルの第1の切れ刃、第2の切れ刃および第3の切れ刃について説明する。
第1の切れ刃は、被削材(繊維強化プラスチック)に対して最初に食付きを行い、切削加工を行う切れ刃である。また、その先端角(第1の先端角)を60°〜150°の範囲とすることでドリルの食付き性が向上して、歩行現象が低減する。
次に、第2の切れ刃は、第1の切れ刃に連続して形成されており、第1の切れ刃による穿孔部を拡径する切れ刃である。また、その先端角(第2の先端角)を10°〜90°の範囲とすることでバリ発生を抑制する。
最後に、第3の切れ刃は、第2の切れ刃に連続して形成されており、通常のドリルのマージンに逃げ角を設けた切れ刃である。そのため、穿孔部がドリル径よりも小さく収縮する場合においても、第3の切れ刃にはマージンが存在しないので、穿孔部に発生する摩擦熱を低減して繊維強化プラスチック中のプラスチックに起因した融着の発生を防止できる。
請求項2に記載の発明においては、第2の先端角を40°〜90°未満の範囲として、第3の切れ刃の逃げ角を5°〜20°の範囲とした繊維強化プラスチック用ドリルとすることで、高精度の穴加工が短時間で実現できる。
第3の切れ刃の逃げ角の範囲を限定した理由は、逃げ角が5°未満では、ドリルの送り量が大きくなった時に逃げ面の後方にて繊維強化プラスチックと擦り合う恐れがあり、20°を超えるとドリル強度が低下する恐れがあるからである。
なお、溝のねじれ角を16°〜45°の範囲に設定することで繊維材料を含んだ切り屑を速やかに排出できる。またドリルの溝幅比を0.7〜1.4の範囲とし、かつドリルの心厚をドリル径の10%〜50%の範囲に設定することでドリル自体の剛性を高めることができる。
以上述べたように、本発明においては、第1および第2の切れ刃を有するドリルのマージンに逃げ角を設けた第3の切れ刃を備えたドリルとすることによって、穿孔部の融着の発生を防止できるので、高精度の穴加工が実現できる繊維強化プラスチック用ドリルとなった。また、引用文献1に示すドリルのように刃長を長く設ける必要も無く、引用文献2に示すドリルのように正のすくい角を設ける必要もないため、簡易構造かつ低コストの繊維強化プラスチック用ドリルとなった。
本発明の実施の形態について、本発明を二つのねじれ溝を有するツイストドリルに適用した場合について図面を参照して説明する。図1は本発明の実施の形態の一例である繊維強化プラスチック用ドリルの正面図、図2は図1の繊維強化プラスチック用ドリルの先端部3を拡大して示した部分拡大図、図3は図1のX−X線矢視の断面図、図4は図1の繊維強化プラスチック用ドリルの左側面図である。
図1および図2に示すように、溝1および2を有する繊維強化プラスチック用ドリル20の先端部3には、第1の切れ刃4を形成している刃先の稜線5および6とで第1の先端角αが形成されている。先端角αは60°〜150°の範囲である。また、第1の切れ刃4から繊維強化プラスチック用ドリル20のシャンク部7側に連続して形成されている第2の切れ刃8には、その刃先の稜線9および10とで第2の先端角βが形成されている。先端角βは10°〜90°の範囲である。また、図1に示すように、溝1および2は本発明に係るドリルの中心軸に対してねじれ角γを形成しており、16°〜45°の範囲である。
また、本発明に係るドリルには、図3に示すように通常のドリルのランド上で二番取りをしていない円筒面部分、いわゆるマージンに5°〜20°の範囲で逃げ角ηが設けられており、ドリルの外周縁が切れ刃となる第3の切れ刃11を備えている。そのため、本発明に係るドリルの第3の切れ刃にはマージンは存在しない。
さらに、図4に示すように本発明に係るドリルの溝幅比は、ランド角θ1に対する溝角θ2の比(θ2/θ1)が0.7〜1.4の範囲となるように設定されている。また、ドリルの心厚tがドリル径dの10%〜50%の範囲となるように設定されている。
なお、本発明に係るドリルの第3の切れ刃には、少なくとも加工穴深さ以上の長さにおいてマージンが存在しなければ良いので、第3の切れ刃上の一部分においてマージンが存在しても、本発明に係るドリルと同様の効果を得ることができる。
第1の先端角の変化による被削材(繊維強化プラスチック)への食付き性について、本発明に係るドリルおよび本発明外のドリルを用いて切削試験を行った。その結果を表1および図5に示す。
本切削試験には、本発明に係るドリルが4種類、および本発明外の比較ドリルが3種類の計7種類のドリルを使用した。本発明に係るドリルは、ドリル径6.0mm、ドリル長さ115mm、溝長さ85mm、シャンク径6.0mm、ねじれ角20°、溝幅比1.0、心厚をドリル径の35%、第2の先端角45°、第3の切れ刃の逃げ角10°を共通仕様として、第1の先端角をαとすると、α=60°(ドリルA)、α=90°(ドリルB)、α=120°(ドリルC)およびα=150°であるドリル(ドリルD)の計4種類を使用した。一方、本発明外の比較ドリルは、ねじれ角、溝幅比、ドリル径に対する心厚および第2の先端角を本発明に係るドリルと同様の仕様として、α=55°(ドリルE)およびα=155°であるドリル(ドリルF)、片刃クラウンタイプドリル(ドリルG)の計3種類を使用した。
本切削試験は、以下の条件で行い、加工穴が1mm深さに到達するまでにドリルにかかる切削抵抗を動力計により測定しながら、繊維強化プラスチックの切削加工を行った。
・切削速度:50m/min
・ドリルの送り量:0.12mm/rev
・ドリルの送り速度:320mm/min
・被削材:炭素繊維強化プラスチック(CFRP)
・切削油:不使用
・ドリル加工機:ファナック社製縦型MC(型番:BT30)
・切削抵抗測定機器:キスラー社製動力計(型式:9273)
・切削速度:50m/min
・ドリルの送り量:0.12mm/rev
・ドリルの送り速度:320mm/min
・被削材:炭素繊維強化プラスチック(CFRP)
・切削油:不使用
・ドリル加工機:ファナック社製縦型MC(型番:BT30)
・切削抵抗測定機器:キスラー社製動力計(型式:9273)
表1は、本発明に係るドリル(4種類)および本発明外の比較ドリル(3種類)を使用した切削試験後の被削材(繊維強化プラスチック)に対する食付き性能結果を示す。図5(a)は本発明に係るドリル(ドリルA〜D)を用いた切削試験時のXY方向におけるドリルの切削抵抗の変化を示し、図5(b)は、本発明外の比較ドリル(ドリルF)を用いた切削試験時のXY方向におけるドリルの切削抵抗の変化を示す。
表1および図5(a)に示すように、第1の先端角αが60°〜150°(ドリルA〜D)の範囲である本発明に係る各ドリルを用いて行った切削試験時のドリルにかかる切削抵抗は、XY方向のいずれにおいても10N以下であった。このことから、ドリルA〜Dには歩行現象が見られず、被削材に対して良好な食付き性を示し、高精度の穴加工が施されていることがわかった。
一方、表1に示すように本発明外のドリルである第1の先端角が55°であるドリル(ドリルE)および片刃クラウンタイプドリル(ドリルG)は、被削材への食付き時に刃先で欠けが発生したので、切削試験を行うことができなかった。また、表1および図5(b)に示すように、本発明外の比較ドリルである第1の先端角が155°であるドリル(ドリルF)を用いた切削試験時のドリルにかかる切削抵抗は、X方向に約100Nの抵抗がかかり、Y方向にも約200Nの抵抗がかかっていた。このことから、本発明外の比較ドリルである第1の先端角が155°であるドリル(ドリルF)には切削時にドリルの歩行現象が見られるため、被削材に対する食付き性が悪いことがわかった。
以上の結果より、第1の先端角が60°〜150°の範囲であるドリル(ドリルA〜D)は、第1の先端角が60°未満であるドリル(ドリルE)や150°を超えるドリル(ドリルF)と比較して、穿孔時の切削抵抗を抑制し、優れた食付き性能を示すことがわかった。
次に、第2の先端角の変化による被削材(炭素繊維強化プラスチック)の加工穴付近のバリ等の有無について、本発明に係るドリルおよび本発明外のドリルを用いて切削試験を行った。その結果を表2および図6に示す。
本切削試験には、本発明に係るドリルが3種類、および本発明外の比較ドリルが3種類の計6種類のドリルを使用した。本発明に係るドリルは、ドリル径6.0mm、ドリル長さ115mm、溝長さ85mm、シャンク径6.0mm、ねじれ角20°、溝幅比1.0、心厚をドリル径の35%、第1の先端角140°、第3の切れ刃の逃げ角10°を共通仕様として、第2の先端角をβとすると、β=10°(ドリルH)、β=45°(ドリルI)およびβ=90°であるドリル(ドリルJ)の計3種類を使用した。一方、本発明外の比較ドリルは、ねじれ角、溝幅比、ドリル径に対する心厚および第1の先端角を本発明に係るドリルと同様の仕様として、β=5°(ドリルK)およびβ=95°であるドリル(ドリルL)および実施例1で用いた片刃クラウンタイプドリル(ドリルG)の計3種類を使用した。
本切削試験は、以下の条件で行い、加工穴が貫通するまで切削加工して、切削加工完了後に加工穴付近のバリ等の有無を確認した。また、切削加工に要した時間も測定した。
・切削速度:50m/min
・ドリルの送り量:0.12mm/rev
・ドリルの送り速度:320mm/min
・被削材:炭素繊維強化プラスチック(CFRP)
・切削油:不使用
・ドリル加工機:ファナック社製縦型MC(型番:BT30)
・切削速度:50m/min
・ドリルの送り量:0.12mm/rev
・ドリルの送り速度:320mm/min
・被削材:炭素繊維強化プラスチック(CFRP)
・切削油:不使用
・ドリル加工機:ファナック社製縦型MC(型番:BT30)
表2は、本発明に係るドリル(ドリルH、I、J)および本発明外の比較ドリル(ドリルK、L、G)を使用した切削試験後における被削材(CFRP)の加工穴付近のバリ発生の有無および一穴当たりの加工時間を示す。図6(a)は本発明に係るドリルH、IおよびJを用いた切削試験後における被削材(CFRP)の加工穴付近の拡大写真であり、図6(b)は本発明外の比較ドリルとしてドリルKを用いた切削試験後における被削材(CFRP)の加工穴付近の拡大写真を示す。
表2および図6(a)に示すように、第2の先端角βが10°(ドリルH)、45°(ドリルI)および90°(ドリルJ)である本発明に係る各ドリルを用いて行った切削試験後の加工穴の状態は、被削材であるCFRPの繊維によるバリの発生が見られないことから良好な穴加工が施されたことを示すものとなった。
一方、表2および図6(b)に示すように、本発明外の比較ドリルであるドリルKを用いて行った切削試験後の加工穴の状態は、CFRPの繊維に起因したバリが発生している。これは、ドリルKの第2の切れ刃によるバリの切削が不十分であったことを示している。片刃クラウンタイプドリル(ドリルG)においては、実施例1の結果と同様に被削材への食付き時に刃先でチッピング(欠け)が発生したので、切削試験を行うことができなかった。
また、表2に示すように、一穴当たりの加工時間を比較すると、第2の先端角βが10°(ドリルH)、45°(ドリルI)および90°(ドリルJ)である本発明に係る各ドリルの場合は全て5秒以内であった。一方、本発明外のドリルである第2の先端角βが5°であるドリルKを用いた場合には、7.7秒を要しており、本発明に係るドリルは加工時間の短縮にも効果を示すことがわかった。特に、第2の先端角βが45°(ドリルI)および90°(ドリルJ)の場合には全て2秒以内であり、加工時間の更なる短縮を図ることができた。
これは、第2の先端角βが10°未満になると第2の切れ刃の全長が長くなる結果、外周コーナ(ドリルの外周と切れ刃とが交わる点)が貫通するまでの加工時間が長くなったことに起因する。また、そのようなドリルを用いると、被削材裏側のドリルの可動空間(逃げ)も大きく確保する必要があるため、実用上にも種々の問題が残る。
以上の結果より、第2の先端角βが10°〜90°の範囲に設定されたドリルは、第2の先端角が10°未満であるドリル(ドリルK)や90°を超えるドリル(ドリルL)と比較して、穿孔完了後の被削材によるバリ等の発生を抑制し、高精度の穴加工が短時間で実現できるものとなった。
次に、第3の切れ刃の逃げ角の変化による被削材(炭素繊維強化プラスチック)のバリ等の有無について、本発明に係るドリルおよび本発明外のドリルを用いて切削試験を行った。その結果を表3および図7に示す。
本切削試験には、本発明に係るドリルが4種類、および本発明外の比較ドリルが2種類の計6種類のドリルを使用した。本発明に係るドリルは、ドリル径6.0mm、ドリル長さ115mm、溝長さ85mm、シャンク径6.0mm、ねじれ角20°、溝幅比1.0、心厚をドリル径の35%、第1の先端角90°、第2の先端角45°を共通仕様として、第3の切れ刃の逃げ角をηとすると、η=5°(ドリルN)、η=10°(ドリルO)η=15°(ドリルP)およびη=20°であるドリル(ドリルQ)の計4種類を使用した。一方、本発明外の比較ドリルは、ねじれ角、溝幅比、ドリル径に対する心厚、第1および第2の先端角を本発明に係るドリルと同様の仕様として、η=3°(ドリルR)およびη=25°であるドリル(ドリルS)の計2種類を使用した。切削試験は以下の条件で行い、加工穴が貫通するまで切削して、加工穴付近のバリ等の有無を確認した。
・切削速度:50m/min
・ドリルの送り量:0.12mm/rev
・ドリルの送り速度:320mm/min
・被削材:炭素繊維強化プラスチック(CFRP)
・切削油:不使用
・ドリル加工機:ファナック社製縦型MC(型番:BT30)
・切削速度:50m/min
・ドリルの送り量:0.12mm/rev
・ドリルの送り速度:320mm/min
・被削材:炭素繊維強化プラスチック(CFRP)
・切削油:不使用
・ドリル加工機:ファナック社製縦型MC(型番:BT30)
表3は、本発明に係るドリルN、O、PおよびQの計4種類のドリルおよび本発明外の比較ドリルRおよびSの2種類のドリルをそれぞれ使用した切削試験後における被削材(CFRP)のバリ発生の有無を示す。図7(a)は本発明に係るドリルN、O、PおよびQの計4種類のドリルを用いた切削試験後における被削材(CFRP)の加工穴付近の拡大写真であり、図7(b)は本発明外の比較ドリルとしてドリルRを用いた切削試験後における被削材(CFRP)の加工穴付近の拡大写真を示す。本発明外の比較ドリルとしてドリルSを用いた切削試験は、実施例2の結果と同様に被削材への食付き時に刃先でチッピング(欠け)が発生したので、切削試験を行うことができなかった。
表3および図7(a)に示す様に、第3の切れ刃の逃げ角ηが5°(ドリルN)、10°(ドリルO)、15°(ドリルP)および20°(ドリルQ)である本発明に係る各ドリルを用いて行った切削試験後の加工穴の状態は、被削材である炭素繊維強化プラスチックの繊維材料によるバリの発生が見られないことから高精度な穴加工が施されたことを示すものとなった。
一方、表3および図7(b)に示す様に、本発明外の比較ドリルであるドリルRを用いて行った切削試験後の加工穴の状態は、実施例2の結果と同様に炭素繊維強化プラスチック中の炭素繊維に起因したバリの発生が見られた。これは、第1の切れ刃および第2の切れ刃で穿孔された穴において、本発明に係るドリルがドリル径より収縮した被削材を第3の切れ刃により切削することを意図しているが、ドリルRの逃げ角ηが5°未満と小さいため、切れ刃としての作用が十分に発揮できずにバリが残存したと考えられる。また、本発明外の比較ドリルSを用いて行った切削試験では、被削材への食付き時に刃先でチッピング(欠け)が発生したが、これは逃げ角ηが20°を超えると、ドリルの刃先強度が不足したためと考えられる。
以上の結果より、第3の切れ刃の逃げ角ηが5°〜20°の範囲であるドリル(ドリルN、O、PおよびQ)により、バリ等の発生を抑制した高精度の穴加工が実現した。また、当該ドリルは、正のすくい角を設けて外周を切れ刃としたドリルよりも簡易構造かつ低コストのドリルとなった。
したがって、第1の切れ刃と、第2の切れ刃と、ドリルのマージンに5°〜20°の範囲の逃げ角を設けた第3の切れ刃と、から構成する繊維強化プラスチック用ドリルを用いることにより、繊維強化プラスチックへの食付き性能を向上させて、繊維材料に起因するバリ等の発生を抑制するため、簡易構造かつ低コストであり、高精度の穴加工を実現するドリルとなった。
1、2 溝
4 第1の切れ刃
8 第2の切れ刃
11 第3の切れ刃
20 繊維強化プラスチック用ドリル
α 第1の先端角
β 第2の先端角
η 逃げ角
4 第1の切れ刃
8 第2の切れ刃
11 第3の切れ刃
20 繊維強化プラスチック用ドリル
α 第1の先端角
β 第2の先端角
η 逃げ角
Claims (2)
- 切削排出用の溝が設けられている繊維強化プラスチック用ドリルにおいて、前記ドリルの先端角である第1の先端角を有する第1の切れ刃と、前記第1の切れ刃に連続して形成されており、かつ前記第1の先端角よりも小さい第2の先端角を有する第2の切れ刃と、前記第2の切れ刃に連続して形成されており、かつ前記ドリルのマージンに逃げ角を設けた第3の切れ刃と、から構成されており、前記第1の先端角は60°〜150°の範囲であり、前記第2の先端角は10°〜90°の範囲であることを特徴とする繊維強化プラスチック用ドリル。
- 前記第2の先端角は40°〜90°未満の範囲であり、かつ前記逃げ角は5°〜20°の範囲であることを特徴とする請求項1に記載の繊維強化プラスチック用ドリル。
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Legal Events
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