JP5940208B1 - ドリル - Google Patents
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Abstract
Description
例えば特許文献1に記載されたドリルは、先端部の一対の切刃が180度の先端角を備えたフラットドリルであり、先端面に形成した逃げ面と切屑排出溝に形成したシンニング面とが交差する稜線が切刃とされている。
また、特許文献2に記載されたドリルでは、2つのシンニング間の距離が15%〜35%に設定されているためドリルの剛性を確保できるが、工具径に対してシンニング間の心厚が大きいので、特許文献1と同様に振れ回りを起こしてしまい、高い切れ味で高精度な加工を行うことは困難であった。
そのため、心厚は小さくすることが望ましいが、小さくすることで回転中心部分の剛性を著しく低下させてしまい加工中に欠損して加工不能になる恐れがあった。一方、加工精度を向上させるためには切れ味を良くする必要がありシンニングすくい角を正角にすることが望ましいが、剛性が低下して欠損し易くなる。
本発明によるドリルでは、チゼル心厚を形成する第二シンニング切刃のすくい面のすくい角を負角としたため、チゼル心厚の厚みが小さくても中心部分の剛性と強度を高めることができる上に、チゼル心厚の厚みを小さくしたことで被削材の加工面が斜面であっても刃先部の食い付きが良く振れ回りを抑制して、高い加工精度と工具寿命を得られる。
第二シンニング切刃の回転方向前方に形成したシンニング面のシンニング通し角を20°〜40°と小さく設定したことで、主切刃と第一シンニング切刃と第二シンニング切刃で生じる切屑の走行性がスムーズで切屑の排出を良好に行える。
また、ドリル本体の先端面において、外周刃を設けた外周面に回転方向後方側に向けて突出形成した第一マージンと、第一マージンの回転方向後方側に間隔を開けて突出形成した第二マージンとを備えていてもよい。
図1に示すように、本実施形態によるドリル1は、例えば工具鋼や超硬合金等の硬質材料からなり、中心軸線Oを中心として回転可能で略円柱状に形成されたドリル本体2を備えている。ドリル本体2の後端側(図1における左側)の部分が工作機械の回転軸に把持されるシャンク部3とされる一方、先端側(図1で右側)が被削材に加工を施す刃先部4とされている。
このドリル1は例えば精密機械部品や精密加工部品等に穴加工するのに適したものであり、被削材として例えば非鉄金属、一般鋼材、耐熱合金等を用いる。本実施形態によるドリル1において、刃先部4側を先端側、シャンク部3側を後端側というものとする。
図2及び図3において、主切刃7における切屑排出溝6のドリル回転方向Tを向く壁面の先端領域がすくい面8とされている。ドリル本体2の先端面2aには主切刃7の回転方向後方に逃げ面10が設けられている。また、一方の主切刃7とその回転方向に形成された他方の主切刃7の逃げ面10との間に、外周面を凹部状に切除して切屑排出溝6を含むシンニング溝がシンニング部12として形成されている。シンニング部12は各主切刃7の回転方向前方にそれぞれ形成されている。
そして、図2から図4に示すように、一対の主切刃7の中心軸線O側部分は第一シンニング部12aで切除した第一シンニング面20の先端側領域をなすすくい面16と二番逃げ面10aをなす先端面2aとによって第一シンニング切刃13がそれぞれ形成されている。第一シンニング切刃13は主切刃7との接続部から主切刃7の回転方向前方に突出する凸部13aを形成し、他端部は中心軸線Oの近傍まで延びている。
本実施形態で示す例では、主切刃7と第一シンニング切刃13及び第二シンニング切刃14からなる切刃は中心軸線Oを中心に180度回転対称に一対形成されている。
図4の拡大図に示すように一対の第二シンニング切刃14同士は中心軸線Oを挟む両側の領域で所定の微小間隔tの厚さで重なっており、この厚み部分が中心軸線Oを挟むチゼル心厚15とされている。チゼル心厚15において中心軸線Oを通過して斜めに交差する二番逃げ面10a同士の交差稜線はチゼル刃17とされている。チゼル刃17はドリル本体2の周速の最も小さい中心軸線Oを含む切刃であり被削材を低速で切削加工できる。
そして、中心軸線Oを通過して外周刃11同士を結ぶ仮想線である中心線Lに対して、主切刃7は例えば中心線L上にあり、第一シンニング切刃13の凸部13aをその回転方向に多角形状や円弧状または凸曲線状に突出させている。この凸部13aの中心線Lに対する最大突出量Pを外径Dの1.5%〜5%の範囲に設定した。凸部13aによって第一シンニング切刃13とチゼル心厚15の剛性を高めることができてチゼル心厚15の厚みtを小さくしても切削時の欠損が発生しなくなり、ドリル1の寿命を向上できる。一方、突出量Pが1.5%に満たないと第一シンニング切刃13とチゼル心厚15の剛性向上に効果がなく、5%を超えるとそのすくい面16が切屑排出溝6を狭めて第二シンニング切刃14で生成する切屑の排出性を低下させる。
また、第一シンニング切刃13のすくい角と逃げ角は適宜の正角に設定できる。第一シンニング切刃13に凸部13aを形成したことで、図5に示すように、切屑排出溝6に形成した第一シンニング切刃13のすくい面16のすくい角θを5°〜20°の範囲の正角に設定できる。これによって、主切刃7と同等なすくい角に近づけることができて刃先部4の切れ味を高めることができる。第一シンニング切刃13のすくい角θが5°より小さいと刃先強度は高いが切れ味が低下し、20°を超えると切れ味は高くなるが刃先が欠損し易くなる。
また、第二シンニング切刃14のすくい角β(図示せず)は−10°〜0°の範囲の負角に設定した。このすくい角βによってチゼル心厚15の剛性を高めることができて工具寿命と加工精度を高めて両立することができる。
一対のシンニング部12の先端凹部によって所定幅tのチゼル心厚15を形成するようにシンニング深さを形成している。図3、図4に示す例では、シンニング部12の他方の逃げ面10側の先端凹部の形状は例えば多角形形状に形成されている。
しかも、図2に示すように第二シンニング切刃14のすくい面18を正面に見て、シンニング部12において第一シンニング切刃13で生成された切屑を排出するための第一シンニング面20の中心軸線Oに対する角度であるシンニング通し角α1を35°〜55°の範囲に設定した。また、第三シンニング部12cで形成された第三シンニング面23の中心軸線Oに対する角度であるシンニング通し角α2を20°〜40°の範囲に設定した。
これによって、第一シンニング面20の強度低下を抑制しつつ第二シンニング切刃14による切屑の排出性をすくい面18と第三シンニング面23で向上できる。
一方、シンニング通し角α2が20°より小さいと切屑排出性は一層高くなるが、第三シンニング面23の強度が低下する欠点が生じる。シンニング通し角αが40°より大きいと第三シンニング面23の強度は大きくなるが第二シンニング切刃14による切屑の排出性が低下する。
第二マージン25の幅が外径Dの2%に満たないとドリル1のガイド性が弱く、工具の振れ回りを抑制できずに穴径を広げてしまう欠点があり、8%を超えると被削材の加工穴の加工面に接触する面積が多くなり、切削抵抗が増えることによって摩擦熱が上がり、第二マージン25の外面に被削材や切屑が溶着することによって穴径を拡大させたり、加工面を著しく粗すという欠点が生じる。
これらの負の現象を解決する手段として、刃先部4の外周面に第一マージン22のみを形成して第二マージン25を設置しないようにすることが好ましい。しかも、ドリル1の工具径が2.5mm以下であると第二マージン25を形成することが技術的に困難であり、また第二マージン25を形成しても切削抵抗になってしまい、折損の原因になる。この場合には第一マージン22のみを刃先部4の外周面に形成することで小径工具であっても加工能率を下げないで穴加工できる。
ドリル1の特性として、工具先端部が主切刃7となっているため、その部分のみに有効なコーティング膜の硬さ、耐摩耗性、耐熱性を必要としているが、それ以降の切屑排出溝6の部分にコーティングが施されていると、コーティング表面の凹凸(ドロップレット)が切屑を排出する際の抵抗となり切屑を排出しずらい欠点を生じる。そのため、上述したようにドリル1の先端からドリル1の外径D以下の長さまでコーティングすることによって、それ以降の切屑排出溝6にドロップレットの凹凸がないことで切屑の滑りが良く切屑排出溝6からスムーズに切屑が排出される。
なお、本実施形態によるドリル1は切屑排出溝6の長さに応じて刃先部4の最大外径Dの2倍程度までノンステップで穴加工が行える。
また、第一シンニング切刃13の凸部13aを中心線Lに対して回転方向に外径Dの1.5%〜5%の範囲に亘って突出させて第一シンニング切刃13と第二シンニング切刃14の剛性を高めることができる。第一シンニング切刃13の凸部に加えて第二シンニング切刃14のすくい角βを−10°〜0°の負角に設定したことで、チゼル心厚15を小幅tに設定しても剛性を高めることができるため欠損を生じ難い。
また、第三シンニング部12cにおけるシンニング通し角α2を20°〜40°の範囲に設定したため切屑ポケットが広がり切屑詰まりをなくして切屑排出性が向上する。
更に、第二マージン25のすくい面25aのすくい角を負角の20°〜70°に設定することで、穴加工時における第二マージン25の加工面への食い付きを防止して加工面の粗さを悪化することを防止できる。
次に本発明の変形例について説明するが、上述した実施形態の部分や部品と同一または同様なものについては同一の符号を用いて説明を行うものとする。
また、上述した実施形態や変形例では、ドリル1、1Aを一対の主切刃7、第一シンニング切刃13及び第二シンニング切刃14を備えた二枚刃で形成したが、三枚刃や四枚刃で構成してもよい。また、上述した実施形態ではドリル1の主切刃7、第一シンニング切刃13及び第二シンニング切刃14を等刃に設定したが不等刃でもよい。
2 ドリル本体
2a 先端面
4 刃先部
6 切屑排出溝
7 主切刃
8、16 すくい面
10 逃げ面
11 外周刃
12、30 シンニング部
13 第一シンニング切刃
13a 凸部
14 第二シンニング切刃
15 チゼル心厚
20 第一シンニング面
23、31 第三シンニング面
Claims (4)
- ドリル本体の先端面から後端側に延びる切屑排出溝が先端側外周面に形成され、該切屑排出溝の回転方向を向く面と前記先端面との交差稜線部に主切刃が形成され、該主切刃から前記ドリル本体の中心軸線側に向けてシンニング部が形成されたドリルであって、
前記主切刃から中心軸線方向に形成した第一シンニング切刃と、
前記第一シンニング切刃から中心軸線を越えて延びる第二シンニング切刃とを備え、
前記第二シンニング切刃によってチゼル心厚をドリル本体の先端部の最大外径Dの0.3〜3%の厚さに形成すると共に、前記第二シンニング切刃のすくい角は負角に設定され、
前記第一シンニング切刃は前記主切刃と心厚より回転方向前方に突出する凸部を有していて、すくい角が正角であることを特徴とするドリル。 - 前記シンニング部における第二シンニング切刃の回転方向前方側の第三シンニング面のシンニング通し角は20°〜40°の範囲に設定されている請求項1に記載されたドリル。
- 前記主切刃の回転方向に設けていて前記先端側外周面から中心軸線を超える領域まで延びて前記チゼル心厚を形成する凹部形状をなすシンニング部を備えており、該シンニング部の先端の凹部形状は断面略多角形状または略円弧状に形成されている請求項1または2に記載されたドリル。
- 前記ドリル本体の先端面において、前記外周刃を設けた外周面に回転方向後方側に向けて突出形成した第一マージンと、前記第一マージンの回転方向後方側に間隔を開けて突出形成した第二マージンとを備えている請求項1から3のいずれか1項に記載されたドリル。
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