JP2010158762A - タービン翼接続用溝の切削加工方法およびそれに用いるクリスマスカッタ - Google Patents
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Abstract
【解決手段】クリスマスツリー状であるタービン翼接続用溝の凹状溝と凸状溝を切削加工する方法であって、この切削加工は、大荒加工を行う大荒加工工程と、荒加工を行う荒加工工程と、仕上加工を行う仕上加工工程を備えている。そして、この荒加工においては、最小幅の凸状溝を含む1つ以上の凸状溝が非切削となるように、ソリッド工具からなる荒加工用クリスマスカッタを用いて切削加工する切削加工方法である。また、荒加工において切削加工を行うためのソリッド工具からなる荒加工用クリスマスカッタは、カッタの凸状部と凹状部を繰り返してなる荒加工用クリスマスカッタであって、カッタの外周部に切れ刃を有する凸状部と、カッタの外周部に切れ刃の無い非切削部が少なくともこれら凹状部のうちの最小径の凹状部に設けられている。
【選択図】 図6
Description
タービン翼接続用溝は、便宜上その溝深さ方向の深さによって大型と小型のツリー状溝に分類される。大型のツリー状の溝を加工する場合には、切削量が多いので、大荒加工を1回以上行い、荒加工、仕上加工を含む複数回の工程で切削するのが通常の切削加工方法である。小型のツリー状溝を加工する場合には、通常は1回の荒加工および仕上加工の工程の組合せが多い。
また、断面クリスマスツリー状溝の最終形状を予備形状からほぼ1回の工具通過で、短時間でフライス加工できる利点がある。」との記載やFig2に記載の形状から理解されるように、特許文献2に記載の加工方法には図示はされていない仕上加工を必要としている。特許文献2に記載のフライス加工方法は切れ刃の負担の多い総形ソリッド工具の使用を避けて、大荒加工の工程は増えるものの負担の少ない切削チップで大荒加工時間を短縮させようとする技術である。
図3、図4に示すクリスマスカッタは、刃部11に凸状部7a、7b、7cと凹状部8a、8b、8cを有している。そして、これらカッタの凸状部7a、7b、7cは図1に示すタービン翼接続用溝Hの凹状溝2a、2b、2cの大荒加工及び荒加工に対応し、凹状部8a、8b、8cはタービン翼接続用溝Hの凸状溝1a、1b、1cの大荒加工及び荒加工に対応する。また、カッタの軸心O2と直交する方向の径が最小となる最小径の凹状部8aは、タービン翼接続用溝Hの最小の溝幅を有する凸状溝1aの大荒加工及び荒加工に対応する。なお、図3および図4において、ハッチング部分はカッタの心厚の断面を示し、9はカッタのシャンク部、10は刃部11に設けられているクリスマスカッタの溝を示す。
図1乃至図4から分かるように、タービン翼接続用溝Hの最小の溝幅を有する凸状溝1aは、それを加工する大荒加工用クリスマスカッタが最もくびれた部分(図3ではカッタの最小径の凹状部8a)で加工する必要があった。よって、カッタの最小径の凹状部8aの径は、大荒加工形状溝5の加工を行うときが最も細く、次いで荒加工形状溝6、溝Hの仕上加工形状溝4の加工を行う順に太くなることが図2から分かる。
大荒加工を行う大荒加工工程と、荒加工を行う荒加工工程と、仕上加工を行う仕上加工工程とを有し、
前記荒加工においては、前記タービン翼接続用溝の深さ方向と直交する方向の幅が最小となる最小幅の前記凸状溝を含む1つ以上の前記凸状溝が非切削となる、少なくとも刃部がソリッド工具からなる荒加工用クリスマスカッタを用いて切削加工することを特徴としている。なお、請求項1に係る発明を、以下の説明において「本発明の第1の発明」と記載する場合がある。
前記荒加工は、前記最小幅の凸状溝を含む1つ以上の前記凸状溝が非切削となるソリッド工具からなる荒加工用クリスマスカッタを用いて切削加工することを特徴としている。
なお、請求項3に係る発明を、以下の説明において「本発明の第3の発明」と記載する場合がある。
前記荒加工においては、少なくとも前記最小幅の凸状溝は非切削とするソリッド工具からなる荒加工用クリスマスカッタを用いて切削加工することを特徴としている。すなわち、請求項4に記載の発明においては、前記凸状溝のうち少なくとも前記最小幅の凸状溝については、大荒加工の終了段階で仕上加工での取り代を残して加工が完了していることになる。
なお、請求項4に係る発明を、以下の説明において「本発明の第4の発明」と記載する場合がある。
前記荒加工は、すべての前記凸状溝を非切削とするソリッド工具からなる荒加工用クリスマスカッタを用いて切削加工することを特徴としている。
なお、請求項5に係る発明を、以下の説明において「本発明の第5の発明」と記載する場合がある。
前記タービン翼接続用溝の深さ方向と直交する方向の前記凸状溝の径の差が、前記大荒加工の最終工程後と前記仕上加工前と比べて、半径分で3.0mm以下の範囲とすることを特徴としている。
なお、請求項6に係る発明を、以下の説明において「本発明の第6の発明」と記載する場合がある。
前記荒加工用クリスマスカッタは、
前記荒加工用クリスマスカッタの先端からシャンク部側へ向かった該カッタの外周部に切れ刃を有する前記凸状部と、
前記外周部に切れ刃の無い非切削部が、少なくとも軸心方向と直交する方向の径が最小となる最小径の前記凹状部に設けられていることを特徴としている。
なお、請求項7に係る発明を、以下の説明において「本発明の第7の発明」と記載する場合がある。
前記荒加工用クリスマスカッタは、
前記荒加工用クリスマスカッタの先端からシャンク側へ向かった該カッタの外周部に切れ刃を有する前記凸状部と、該カッタ外周部に切れ刃の無い非切削部を有する前記凹状部が1つ以上設けられ、
前記非切削部を有する前記凹状部のうち、前記荒加工用クリスマスカッタの先端側の凹状部であって、軸心方向と直交する方向の径が最小となる部分には、溝を有しないことを特徴としている。
なお、請求項8に係る発明を、以下の説明において「本発明の第8の発明」と記載する場合がある。
本発明の切削加工方法においては、荒加工の工程において1回のみの荒加工ではクリスマスカッタへの加工負荷が大きいため、荒加工の前に行う大荒加工と、荒加工と、最後に仕上寸法に仕上げる仕上加工の工程から構成するようにしている。また本発明では、刃部11が1つの母材で構成されているものをソリッド工具と言う。
本発明の切削加工方法において、仕上加工とは、本発明の前記荒加工の後に、最終目的とする形状寸法に仕上げるために行う加工を示す。本発明は、前記したタービン翼接続用溝の切削加工工程のうち、大荒加工と荒加工の切削加工方法、およびこれらの切削加工に用いるクリスマスカッタに特徴がある発明である。本発明は、タービン翼接続用溝の凹凸形状の切削加工を行うときに、その切削加工の能率を上げるために、タービン翼接続用溝の最終目的とする形状寸法にできるだけ沿ったソリッド工具を使用することを前提にしている。
図12に示すように、カッタの軸心O2方向に対する各非切削部14aの範囲の設け方は、クリスマスカッタの非切削部14aの最も細い径15と隣接する先端側の凸状部の頂点16との先端側高さ18の1/2以上、最も細い径15と隣接するシャンク側の凸状部の頂点17とのシャンク側高さ19の1/2以下、の範囲になるように設けるのが望ましい。
また、非切削部14aを設けることにより、切削量が少なくなり切削抵抗も低減されるため、切れ刃にねじれ角を設けなくても良い。切れ刃にねじれ角を設けないことから、カッタの長手方向(軸心方向O2)の切れ刃が同時に切削を行うこととなり偶数刃との相乗効果で、タービン翼接続用溝の加工精度がより一層向上することになる。なお、切れ刃の刃先を波形状にしたラフィング切れ刃が大変有効である。
以下、本発明を実施例に基き具体的に説明する。
タービン翼接続用溝の切削加工方法について、本発明の切削加工方法と従来方法との比較を行うために、図15に示す仕様からなる大荒加工用クリスマスと荒加工用クリスマスカッタ、仕上げ加工用クリスマスカッタを製作して、被削材への切削加工試験(切削試験)を行った。
なお、図15は、タービン翼接続用溝の切削加工の工程(t1)ごとに、本発明の切削加工方法と従来方法との比較を行うために製作した各クリスマスカッタ(以下、単に「カッタ」と記載する)の凸状部の最大刃径(t2)と、同じく凹状部の特徴(t3)と、大荒加工と荒加工を実施したときの加工方法(t4)を、本発明例1〜3と従来例ごとに記載している。また、製作した各クリスマスカッタ(以下、単に「カッタ」と記載する)の母材はいずれも高速度鋼(ハイスピードスチール)の粉末を用いて製作し、被削材はJISにより規定されているSUS420(Crを約13重量%含むステンレス鋼)とした。
これらのカッタを用い、本発明例1の加工方法として、大荒加工用カッタの第1凹状部でタービン翼接続用溝の第1凸状溝を仕上加工前寸法まで切削加工し、荒加工では、タービン翼接続用溝の第1凸状溝のみを非切削とした本発明に係る切削加工方法を採用した。
また、従来例4におい使用した荒加工用カッタは、図15に示すように、カッタ先端よりカッタの第1凸状部の最大刃径が27mm、カッタの第2凸状部の最大刃径が38mm、カッタの第3凸状部の最大刃径が49mmとした。また、このカッタの各凹状部の径寸法を被削材の仕上寸法に対して直径分で1.0mm小さくしたものを製作した。加工方法は従来の方法を採用し、大荒加工ではタービン翼接続用溝の各凸状溝と凹状溝にそれぞれ荒加工時の取り代を残した加工を行い、荒加工でこの取り代を徐々に切削加工してタービン翼接続用溝を拡幅する加工方法とした。
本発明例1および本発明例2の大荒加工と荒加工ではともに、カッタの回転数を160回/min、送り速度を10mm/minとした。また、本発明例3の切削条件は、1回目の大荒加工用テーパーラフィングエンドミルの回転数を180回/min、送り速度を10mm/minとした。さらに、本発明例3の2回目の大荒加工と荒加工とは、共にカッタの回転数を160回/min、送り速度を10mm/minとした。
なお、仕上加工において、仕上加工用クリスマスカッタで切削加工するときの切削条件は、本発明例および従来例ともに、カッタの回転数を180回/min、送り速度を10mm/minとした。実施例1の切削試験で使用した切削液は、水溶性切削液を用いた。
さらに、加工後の刃先状態の観察では、本発明例に使用した大荒加工用カッタ、荒加工用カッタ、仕上加工用カッタのいずれも、刃先のチッピングや欠損もなく良好な刃先状態であった。
また、従来例4の荒加工で機械ロード値が大きくなっている要因としては、大荒加工時のビビリ跡の影響やカッタの第1凹状部でも切削を行うことにより大きくなったと考えられ、荒加工後の加工面にもビビリ跡が見られた。
さらに、仕上加工後の第1凸状溝の面粗さは、本発明例1〜3と比較して、従来例4の面粗さが若干悪くなっている。これは荒加工面のビビリ跡の影響を受けているのではないかと推測される。
次に、本発明に係る切削加工方法について、他の切削試験とその結果について説明する。実施例2において使用した大荒加工用カッタの各凸状部の刃径は、前記した本発明例1と同じ仕様とし、さらに大荒加工用カッタの各凹状部は仕上寸法に対しての取り代を変化させた8種のカッタを製作した。
また、荒加工用カッタは、荒加工用カッタの各凸状部の刃径は前記した本発明例1と同じ仕様とし、さらに荒加工用カッタの各凹状部は大荒加工用カッタの各凹状部の仕上寸法に対しての取り代を変化させたものに対応する非切削部としたものを製作した。
そして、8種の大荒加工用カッタごとに切削試験(本発明例5〜本発明例12)を行った。また、大荒加工はタービン翼接続用溝を大荒加工用カッタの各凹状部で仕上加工前の寸法まで行い、荒加工では、タービン翼接続用溝の各凸状溝を非切削としたとした本発明に係る切削加工方法を行った。なお、被削材、各カッタの母材、切削条件および評価方法は、実施例1と同様とした。その切削試験の結果を表2に示す。
荒加工用カッタの送り速度を速くした時の折損に対する安定性について、本発明例と従来例のカッタについて比較するために切削試験を行った。この切削試験において、本発明例(以下、「本発明例13」という)に使用したカッタは、前記した本発明例1と同じ仕様とし、従来例(以下、「従来例14」という)に使用したカッタは、前記した従来例4と同じ仕様とし、それぞれ10本のカッタを製作した。また、各カッタの母材、切削加工方法及び切削条件は、大荒加工は前記した実施例1と同様とし、荒加工用カッタの送り速度は前記した実施例1の2倍である20mm/minとした。切削試験結果の評価方法としては、荒加工用カッタ1本当りの切削長さを4000mmと設定し、各10回繰り返した時の折損の有無を確認した。その結果を表3に示す。
また、従来例14は、荒加工用カッタの第1凹状部に溝を設けているために、剛性が劣り、かつ、この第1凹状部で切削も行うことから送り速度を20mm/minと速くすると、表3に示すように荒加工用カッタの6本が折損し、安定した切削加工ができなかった。
2a、2b、2c:凹状溝
3 :被削材
4 :仕上加工形状溝
5 :大荒加工形状溝
6 :荒加工形状溝
7a、7b、7c:凸状部
8a、8b、8c:凹状部
9 :シャンク部
10 :クリスマスカッタの溝
11 :刃部
12 :1回目の大荒加工形状溝
13 :2回目の大荒加工形状溝
14a:非切削部
14a1、14a2:軸心O2への距離が最も短い部分
15 :非切削部の最も細い径
16 :凸状部のうち先端側の頂点
17 :凸状部のうちシャンク側の頂点
18 :凸状部のうち先端側の高さ
19 :凸状部のうちシャンク側の高さ
20 :仕上加工前の取り代
21 :大荒加工用のV字型カッタ
H :タービン翼接続用溝
O1:溝中心軸
O2:カッタの軸心
t1:切削加工工程
t2:カッタの凸状部の最大刃径
t3:カッタの凹状部の特徴
t4:加工方法
Claims (8)
- 溝の深さ方向の溝中心軸に対して複数の凹状溝と凸状溝が交互に連続して繰り返されたクリスマスツリー状であるタービン翼接続用溝を切削加工する切削加工方法であって、前記切削加工方法は、
大荒加工を行う大荒加工工程と、荒加工を行う荒加工工程と、仕上加工を行う仕上加工工程とを有し、
前記荒加工においては、前記タービン翼接続用溝の深さ方向と直交する方向の幅が最小となる最小幅の前記凸状溝を含む1つ以上の前記凸状溝が非切削となる、少なくとも刃部がソリッド工具からなる荒加工用クリスマスカッタを用いて切削加工することを特徴とするタービン翼接続用溝の切削加工方法。 - 前記荒加工は、前記最小幅の前記凸状溝に対応する荒加工用クリスマスカッタの先端側の凹状部における径の最も細い部分には、溝を有しないソリッド工具からなる前記荒加工用クリスマスカッタを用いて切削加工することを特徴とする請求項1に記載のタービン翼接続用溝の切削加工方法。
- 前記大荒加工は、少なくとも複数回の大荒加工を行う工程を有し、
前記荒加工は、前記最小幅の凸状溝を含む1つ以上の前記凸状溝が非切削となるソリッド工具からなる荒加工用クリスマスカッタを用いて切削加工することを請求項1または請求項2に記載のタービン翼接続用溝の切削加工方法。 - 前記大荒加工の最終工程は、前記凸状溝のうち少なくとも前記最小幅の凸状溝を前記仕上加工前の寸法まで加工し、
前記荒加工においては、少なくとも前記最小幅の凸状溝は非切削とするソリッド工具からなる荒加工用クリスマスカッタを用いて切削加工することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載のタービン翼接続用溝の切削加工方法。 - 前記大荒加工の最終工程は、すべての前記凸状溝を仕上加工前の寸法まで加工し、
前記荒加工は、すべての前記凸状溝を非切削とするソリッド工具からなる荒加工用クリスマスカッタを用いて切削加工することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載のタービン翼接続用溝の切削加工方法。 - 前記凸状溝を仕上加工前の寸法まで加工する程度は、
前記タービン翼接続用溝の深さ方向と直交する方向の前記凸状溝の径の差が、前記大荒加工の最終工程後と前記仕上加工前と比べて、半径分で3.0mm以下の範囲とすることを特徴とする請求項4または請求項5に記載のタービン翼接続用溝の切削加工方法。 - 請求項1乃至請求項6のいずれかに記載のタービン翼接続用溝の切削加工方法の前記荒加工に用いられ、軸心方向に凸状部と凹状部が交互に繰り返して形成されたソリッド工具からなる荒加工用クリスマスカッタであって、
前記荒加工用クリスマスカッタは、
前記荒加工用クリスマスカッタの先端からシャンク部側へ向かった該カッタの外周部に切れ刃を有する前記凸状部と、
前記外周部に切れ刃の無い非切削部が、少なくとも軸心方向と直交する方向の径が最小となる最小径の前記凹状部に設けられていることを特徴とする荒加工用クリスマスカッタ。 - 請求項1乃至請求項6のいずれかに記載のタービン翼接続用溝の切削加工方法の前記荒加工に用いられ、軸心方向に凸状部と凹状部が交互に繰り返して形成されたソリッド工具からなる荒加工用クリスマスカッタであって、
前記荒加工用クリスマスカッタは、
前記荒加工用クリスマスカッタの先端からシャンク側へ向かった該カッタの外周部に切れ刃を有する前記凸状部と、該カッタ外周部に切れ刃の無い非切削部を有する前記凹状部が1つ以上設けられ、
前記非切削部を有する前記凹状部のうち、前記荒加工用クリスマスカッタの先端側の凹状部であって、軸心方向と直交する方向の径が最小となる部分には、溝を有しないことを特徴とする荒加工用クリスマスカッタ。
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