JP6494743B2 - 防汚塗料組成物、及びそれによって被覆された物品 - Google Patents

防汚塗料組成物、及びそれによって被覆された物品 Download PDF

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Description

本発明は、防汚塗料組成物、及びそれによって被覆された物品に関し、さらに詳しくは、優れた防汚性を長期間維持することが可能な防汚塗膜を形成し得る防汚塗料組成物、及びそれによって被覆された物品に関する。
近年、海洋汚染が懸念される有機錫含有共重合体に替わる防汚塗料用樹脂として、海水中で加水分解性を有する樹脂が各種検討されてきた。このような加水分解性を有する樹脂を含む防汚塗料組成物(以下、「加水分解型防汚塗料組成物」ということがある。)を用いて船舶等の海水と接触する構造物の表面に形成された塗膜は、海水に接触すると、前記樹脂が徐々に加水分解して海水中に塗膜が溶解していき、塗膜表面が更新され続けることによって、その防汚性能を維持することが可能となる。海水中で加水分解性を有する樹脂として、金属カルボキシレート構造を有する樹脂を含む加水分解型防汚塗料組成物がこれまで多く提案されているものの、このような金属カルボキシレート構造を有する樹脂は、加水分解速度が金属の種類や樹脂構造等によって異なるため、防汚性能を長期間維持するための防汚塗料組成物の設計が困難となることがあった。
そこで、金属カルボキシレート構造を有する樹脂とロジン又はロジン誘導体とを併用した加水分解型防汚塗料組成物によって塗膜の溶解速度を制御する方法が検討されている(特許文献1〜3)。このように金属カルボキシレート構造を有する樹脂とロジン又はロジン誘導体とを併用することにより、塗膜の溶解速度の制御がある程度可能となるものの、ロジン又はロジン誘導体の使用量が少ないと、海水中における塗膜の溶解性が十分に得られず、塗膜の防汚性能が持続しにくいという問題があった。一方、ロジン又はロジン誘導体の使用量が多いと、海水中への塗膜溶解速度が大きくなり過ぎてしまい、防汚性能は向上するが、塗膜の物性や密着性が低下してしまうため、防汚性能の長期間の維持が困難となり、塗膜剥離、ブリスター、クラックなどの塗膜欠陥が発生しやすい傾向があった。
特開2011−32489号公報 国際公開第2011/046087号 特開平9−286933号公報
本発明の目的は、長期間に亘って優れた防汚性を維持することができ、塗膜剥離、ブリスター、クラックなどの塗膜欠陥が発生しにくい防汚塗膜を形成できる防汚塗料組成物、及び該防汚塗料組成物によって漁網、船舶、海洋や湾岸の構造物等の基材の表面が被覆された物品を提供することである。
本発明者らは、前記目的を達成するべく鋭意検討を行い、ポリエステル樹脂と、金属カルボキシレート構造を有する樹脂とを含む防汚塗料組成物により得られた塗膜は、海洋中への塗膜溶解速度を制御することが可能であるとともに、長期間に亘って優れた防汚性を維持することができ、更には塗膜の物性にも優れるため、上述の防汚塗料組成物を船舶の船底部に塗装した場合に、航行又は停泊中に塗膜剥離、ブリスター、クラックなどの塗膜欠陥が発生しにくくなることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて完成されたものである。
本発明は、以下の各項に記載の防汚塗料組成物、及び、該防汚塗料組成物によって基材の表面が被覆された物品を提供するものである。
(項1) ポリエステル樹脂(A)、金属カルボキシレート構造を有する樹脂(B)及び防汚剤(C)を含む防汚塗料組成物であって、前記金属カルボキシレート構造を有する樹脂(B)が、2価の金属原子を、前記樹脂(B)の固形分質量を基準として0.04〜3.50モル/Kgの範囲内の濃度で含み、前記ポリエステル樹脂(A)と前記金属カルボキシレート構造を有する樹脂(B)との質量比が3/97〜80/20の範囲内であり、かつ、前記防汚剤(C)の含有量が前記ポリエステル樹脂(A)と前記金属カルボキシレート構造を有する樹脂(B)との合計質量を基準として50〜500質量%の範囲内であることを特徴とする、前記防汚塗料組成物。
(項2) 前記ポリエステル樹脂(A)の酸価が0〜120KOHmg/gの範囲内である、項1に記載の防汚塗料組成物。
(項3) 前記ポリエステル樹脂(A)の重量平均分子量が190〜15000の範囲内である、項1又は2に記載の防汚塗料組成物。
(項4) 前記ポリエステル樹脂(A)と前記金属カルボキシレート構造を有する樹脂(B)との質量比が、7/93〜60/40の範囲内である、項1〜3のいずれか一項に記載の防汚塗料組成物。
(項5) 前記ポリエステル樹脂(A)が金属カルボキシレート構造を有しないものである、項1〜4のいずれか一項に記載の防汚塗料組成物。
(項6) 前記金属カルボキシレート構造を有する樹脂(B)が、下記一般式(1)で表される金属カルボキシレート構造を有する特性基を含むものである、項1〜5のいずれか一項に記載の防汚塗料組成物。
Figure 0006494743
(式中、Mは、2価の金属原子を表し、Xは、水酸基、有機酸残基及びアルコール残基からなる群より選ばれる少なくとも1種の基を表す。)
(項7) 前記金属カルボキシレート構造を有する樹脂(B)に含まれる前記2価の金属原子が、亜鉛、銅、マグネシウム、カルシウム、鉄及びテルルからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属原子である、項1〜6のいずれか一項に記載の防汚塗料組成物。
(項8) 項1〜7のいずれか一項に記載の防汚塗料組成物によって基材の表面が被覆されている、物品。
本発明の防汚塗料組成物は、長期間に亘って優れた防汚性を維持することが可能であり、かつ、塗膜剥離、ブリスター、クラックなどの塗膜欠陥が発生しにくい塗膜を形成することができる。
本発明の防汚塗料組成物は、ポリエステル樹脂(A)、金属カルボキシレート構造を有する樹脂(B)及び防汚剤(C)を含む防汚塗料組成物であって、前記金属カルボキシレート構造を有する樹脂(B)が、2価の金属原子を、前記樹脂(B)の固形分質量を基準として0.04〜3.50モル/Kgの範囲内の濃度で含み、前記ポリエステル樹脂(A)と前記金属カルボキシレート構造を有する樹脂(B)との質量比が3/97〜80/20の範囲内であり、かつ、前記防汚剤(C)の含有量が前記ポリエステル樹脂(A)と前記金属カルボキシレート構造を有する樹脂(B)との合計質量を基準として50〜500質量%の範囲内であることを特徴とする。以下、本発明の防汚塗料組成物について詳細に説明する。
[ポリエステル樹脂(A)]
本発明の防汚塗料組成物に用いられるポリエステル樹脂(A)は、酸成分(a1)とアルコール成分(a2)とを主要成分として用い、これら各成分のエステル化反応及び/又はエステル交換反応によって製造することができる。
酸成分(a1)
本発明において、酸成分(a1)は、ポリエステル樹脂の製造に通常使用される酸成分を使用することができる。そのような酸成分としては、例えば、脂環族多塩基酸、脂肪族多塩基酸、芳香族多塩基酸、芳香族モノカルボン酸、脂肪族モノカルボン酸、脂環族モノカルボン酸、並びにこれらの酸のエステル化物、無水物及びハロゲン化物が挙げられる。
脂環族多塩基酸は、一般に、1分子中に1個以上の脂環式構造(主として4〜6員環)と2個以上のカルボキシル基とを有する化合物、並びに該化合物の酸無水物、エステル化物及びハロゲン化物等である。脂環族多塩基酸としては、例えば、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、2−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、テトラヒドロメチルフタル酸類、3−メチル−1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、4−メチル−1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸、1,3,5−シクロヘキサントリカルボン酸等の脂環族多価カルボン酸;これら脂環族多価カルボン酸の無水物;これら脂環族多価カルボン酸の低級アルキルエステル化物などが挙げられ、これらは、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
脂肪族多塩基酸は、一般に、1分子中に2個以上のカルボキシル基を有する脂肪族化合物、該脂肪族化合物の酸無水物、該脂肪族化合物のハロゲン化物である。脂肪族多塩基酸としては、例えば、コハク酸、マロン酸、マレイン酸、フマル酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、ブラシル酸、オクタデカン二酸、クエン酸等の脂肪族多価カルボン酸;これら脂肪族多価カルボン酸の無水物;これら脂肪族多価カルボン酸のハロゲン化物などが挙げられ、これらは、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
芳香族多塩基酸は、一般に、1分子中に2個以上のカルボキシル基を有する芳香族化合物、並びに該芳香族化合物の酸無水物、該芳香族化合物のエステル化物及び芳香族化合物のハロゲン化物である。
1分子中に2個のカルボキシル基を有する芳香族多塩基酸としては、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸等の芳香族多価カルボン酸;これら芳香族多価カルボン酸の無水物などが挙げられる。
1分子中に3個以上のカルボキシル基を有する芳香族多塩基酸としては、例えば、3価の芳香族多価カルボン酸、4価の芳香族多価カルボン酸などが挙げられる。3価の芳香族多価カルボン酸としては、例えば、トリメリット酸、無水トリメリット酸、トリメリット酸アルキルエステル、トリメリット酸ハロゲン化物等のトリメリット酸類;ヘミメリット酸、無水ヘミメリット酸、ヘミメリット酸アルキルエステル、ヘミメリット酸ハロゲン化物等のヘミメリット酸類;トリメシン酸、トリメシン酸アルキルエステル、トリメシン酸ハロゲン化物等のトリメシン酸類;カルボキシル基の芳香環への結合位置が異なる各種ナフタレントリカルボン酸及びその無水物;カルボキシル基の芳香環への結合位置が異なる各種アントラセントリカルボン酸及びその無水物;カルボキシル基の芳香環への結合位置が異なる各種ビフェニルトリカルボン酸及びその無水物;カルボキシル基の芳香環への結合位置が異なる各種ベンゾフェノントリカルボン酸及びその無水物;エチレンビストリメリット酸及びその無水物などが挙げられる。また、4価の芳香族多価カルボン酸としては、例えば、ピロメリット酸、ピロメリット酸二無水物、ピロメリット酸アルキルエステル、ピロメリット酸ハロゲン化物等のピロメリット酸類;メロファン酸、メロファン酸二無水物、メロファン酸アルキルエステル、メロファン酸ハロゲン化物等のメロファン酸類;プレーニト酸(prehnitic acid)、プレーニト酸無水物、プレーニト酸アルキルエステル、プレーニト酸ハロゲン化物等のプレーニト酸類などが挙げられる。上記芳香族多塩基酸は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
本発明において、ポリエステル樹脂(A)の製造に用いられる酸成分(a1)は、芳香族モノカルボン酸、脂肪族モノカルボン酸、脂環族モノカルボン酸などのモノカルボン酸を使用してもよい。上記芳香族モノカルボン酸としては、例えば、安息香酸、メチル安息香酸、エチル安息香酸、p−t−ブチル安息香酸、ナフタレンカルボン酸、サリチル酸、4−メチル安息香酸、3−メチル安息香酸、フェノキシ酢酸、ビフェニルカルボン酸などが挙げられる。また、上記脂肪族モノカルボン酸としては、例えば、酢酸、乳酸、プロピオン酸、酪酸、オクタン酸、デカン酸、ドデカン酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、エライジン酸、ブラシジン酸、リノール酸、リノレン酸、ロジン酸、ヤシ油脂肪酸、綿実油脂肪酸、麻実油脂肪酸、米ぬか油脂肪酸、魚油脂肪酸、トール油脂肪酸、大豆油脂肪酸、アマニ油脂肪酸、桐油脂肪酸、ナタネ油脂肪酸、ヒマシ油脂肪酸、脱水ヒマシ油脂肪酸、サフラワー油脂肪酸等の飽和又は不飽和の脂肪族モノカルボン酸が挙げられ、これらは、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
上記脂環族モノカルボン酸としては、例えば、シクロヘキサンカルボン酸、シクロペンタンカルボン酸、シクロヘプタンカルボン酸、4−エチルシクロヘキサンカルボン酸、4−へキシルシクロヘキサンカルボン酸、4−ラウリルシクロヘキサンカルボン酸などが挙げられ、これらは、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
本発明において、ポリエステル樹脂(A)の製造に用いられる酸成分(a1)は、上記モノカルボン酸のグリセリンエステル等のエステル化物を含んでいてもよい。モノカルボン酸のグリセリンエステルとしては、例えば、ヤシ油、綿実油、麻実油、米ぬか油、魚油、トール油、大豆油、アマニ油、桐油、ナタネ油、ヒマシ油、脱水ヒマシ油、サフラワー油などが挙げられる。
また、本発明において、ポリエステル樹脂(A)の製造に用いられる酸成分(a1)は、防汚性の長期間維持の観点から、芳香族多塩基酸を含むことが好ましく、その含有量は、酸成分(a1)の合計モル数を基準として、30モル%以上、好ましくは50モル%以上、更に好ましくは70モル%以上である。
アルコール成分(a2)
本発明において、アルコール成分(a2)は、ポリエステル樹脂の製造に通常使用されるアルコール成分を使用することができる。そのようなアルコール成分としては、脂環族ジオール、脂肪族ジオール、芳香族ジオールなどの2価アルコール及び/又は3価以上の多価アルコールを含むものが好ましく、例えば、エチレングリコ−ル、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ペンタエチレングリコール、1,2−プロピレングリコ−ル、ジ−1,2−プロピレングリコール、トリ−1,2−プロピレングリコール、1,2−ブチレングリコ−ル、2,3−ブチレングリコ−ル、1,2−ヘキサンジオール、1,2−ジヒドロキシシクロヘキサン、3−エトキシプロパン−1,2−ジオール、3−フェノキシプロパン−1,2−ジオール、ネオペンチルグリコール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、3−メチル−1,3−ブタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2−フェノキシプロパン−1,3−ジオール、2−メチル−2−フェニルプロパン−1,3−ジオール、1,3−プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、2−エチル−1,3―オクタンジオール、1,3−ジヒドロキシシクロヘキサン、1,4−ブタンジオール、1,4−ジヒドロキシシクロヘキサン、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,5−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,4−ジメチロ−ルシクロヘキサン、トリシクロデカンジメタノール、2,2−ジメチル−3−ヒドロキシプロピル−2,2−ジメチル−3−ヒドロキシプロピオネート(ヒドロキシピバリン酸とネオペンチルグリコールとのエステル化物)、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物、ビス(4−ヒドロキシヘキシル)−2,2−プロパン、ビス(4−ヒドロキシヘキシル)メタン、3,9−ビス(1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、ビス(ヒドロキシエチル)テレフタレート等のエステルジオール化合物、グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、1,2,6−ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ソルビトール、マンニット、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、これらの多価アルコールにε−カプロラクトン等のラクトン化合物を付加させたポリラクトンポリオール化合物などが挙げられ、これらは、それぞれ単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
また、必要に応じて、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、n−ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、n−ヘキサノール、n−オクタノール、ラウリルアルコール、2−エチルヘキサノール、デカノール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール、ステアリルアルコール、2−フェノキシエタノール、ドデシルアルコール等のモノアルコール;エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、合成高分岐飽和脂肪酸のグリシジルエステル(商品名「カージュラE10」、HEXION Specialty Chemicals社製)等のモノエポキシ化合物とプロトン酸を有する化合物とを反応させて得られたアルコール化合物;乳酸亜鉛等の金属カルボキシレート構造を有する金属含有アルコール化合物なども、ポリエステル樹脂(A)を製造する際の副原料として使用することができる。
本発明において、ポリエステル樹脂(A)の製造方法は、特に限定されるものではなく、通常の方法を採用することができる。ポリエステル樹脂(A)は、例えば、1種又は2種以上の前記酸成分(a1)と、1種又は2種以上の前記アルコール成分(a2)とを、窒素気流中、150℃〜250℃の温度で2〜10時間反応させてエステル化反応及び/又はエステル交換反応を行うことにより、製造することができる。上記エステル化反応及び/又はエステル交換反応では、上記酸成分(a1)及びアルコール成分(a2)を一度に添加してもよいし、複数回に分けて添加してもよい。上記反応は、公知の有機溶剤の存在下で行ってもよい。
また、ポリエステル樹脂(A)は、初めにカルボキシル基含有ポリエステル樹脂を合成した後、上記アルコール成分(a2)を用いて、前記カルボキシル基含有ポリエステル樹脂中のカルボキシル基の一部をエステル化しても得ることができる。さらに、ポリエステル樹脂(A)は、初めに水酸基含有ポリエステル樹脂を合成した後、該水酸基含有ポリエステル樹脂と、前記酸無水物とを反応させても得ることができる。
また、前記エステル化反応及び/又はエステル交換反応は、反応を促進させるために触媒を用いて行ってもよい。そのような触媒としては、例えば、ジブチル錫オキサイド、三酸化アンチモン、酢酸鉄、酢酸亜鉛、酢酸マンガン、酢酸コバルト、酢酸カルシウム、酢酸鉛、テトラブチルチタネート、テトライソプロピルチタネート、ホウ酸亜鉛、塩化亜鉛、硫酸亜鉛、ナフテン酸亜鉛、酸化亜鉛、ホウ酸鉛、酢酸鉛、酢酸マンガン、酢酸アルミニウム、塩化アルミニウム等の既知の触媒を挙げることができる。
本発明において、前記ポリエステル樹脂(A)は、酸成分(a1)とアルコール成分(a2)とを主要成分として、これら各成分のエステル化反応及び/又はエステル交換反応により製造されるが、必要に応じて、前記酸成分(a1)及び前記アルコール成分(a2)以外の、公知の有機及び/又は無機化合物を構成成分として含んでいてもよく、アミド化反応、ウレタン化反応、イミド化反応、カーボネート化反応、ウレア化反応等の公知の化学反応を伴って製造されてもよい。例えば、ポリエステル樹脂(A)は、エステル化反応及び/又はエステル交換反応の反応中又は反応後に、反応中間体又は反応生成物を、有機酸亜鉛、有機酸銅、塩化亜鉛、塩化銅、水酸化亜鉛、水酸化銅、酸化亜鉛、酸化銅等の金属化合物、脂肪酸、油脂、モノ又はポリイソシアネート化合物、水素原子が結合した窒素を有するモノ又はポリアミン化合物、エポキシ化合物、アクリル樹脂、ビニルエステル樹脂等と反応させることによって得られる、変性ポリエステル樹脂であってもよい。
なお、本発明におけるポリエステル樹脂(A)は、金属カルボキシレート構造を有していてもよいが、その場合、上記金属カルボキシレート構造に含まれる金属原子の、前記ポリエステル樹脂(A)の固形分質量を基準とした濃度は、後述する金属カルボキシレート構造を有する樹脂(B)に含まれる金属原子の濃度よりも低く、0.04モル/Kg未満であることが好ましく、さらに、前記ポリエステル樹脂(A)は、上述の金属カルボキシレート構造を実質的に有していないことが、より好ましい。ポリエステル樹脂(A)が金属カルボキシレート構造を有する場合、該樹脂を用いた防汚塗料組成物の製造コストが高くなることがある。
また、本発明の防汚塗料組成物が、顔料成分や防汚剤成分等の、金属化合物を含む成分を更に含む場合、防汚塗料組成物の製造時又は貯蔵時において、金属カルボキシレート構造を実質的に有していない上記ポリエステル樹脂(A)と上記金属化合物を含む成分とが反応して、経時的に金属カルボキシレート構造を生成することがある。このようにして生成される金属カルボキシレート構造に含まれる金属原子の濃度は、防汚塗料組成物の貯蔵安定性の観点から、上記ポリエステル樹脂(A)の固形分質量を基準として1.5モル/Kg未満であり、好ましくは0.04モル/Kg未満である。
ポリエステル樹脂(A)は、前記酸成分(a1)及び前記アルコール成分(a2)に由来する構成成分が、該樹脂の全構成成分の80モル%以上であることが好ましく、90モル%以上であることがより好ましい。
また、ポリエステル樹脂(A)の酸価は、得られる塗膜の防汚性を長期間に亘って維持する点から、0〜120mgKOH/gの範囲内であることが好ましく、0〜95mgKOH/gの範囲内であることがより好ましく、0〜45mgKOH/gの範囲内であることが特に好ましい。
さらに、ポリエステル樹脂(A)の重量平均分子量は、得られる塗膜の防汚性の点及び防汚性を長期間維持する点から、190〜15000の範囲内であることが好ましく、340〜13000の範囲内であることがより好ましく、600〜8000の範囲内であることが特に好ましい。
本明細書において重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(東ソー株式会社製、「HLC8120GPC」)で測定した重量平均分子量を、ポリスチレンの重量平均分子量を基準にして換算した値である。重量平均分子量の測定は、4本のカラム(商品名:「TSKgel G−4000H×L」、「TSKgel G−3000H×L」、「TSKgel G−2500H×L」及び「TSKgel G−2000H×L」(いずれも東ソー株式会社社製))を用いて、移動相;テトラヒドロフラン、測定温度;40℃、流速;1ml/分、検出器;RIの条件で行うことができる。
[金属カルボキシレート構造を有する樹脂(B)]
本発明の防汚塗料組成物は、上記ポリエステル樹脂(A)のほかに、金属カルボキシレート構造を有する樹脂(B)(本明細書においては、この「金属カルボキシレート構造を有する樹脂(B)」を、単に「樹脂(B)」と記すことがある。)を更に含む。前記樹脂(B)は、金属カルボキシレート構造を有する樹脂であれば、樹脂の種類及び組成等に制限されることなく、公知のものを用いることができる。
前記樹脂(B)としては、例えば、下記一般式(1)で表される金属カルボキシレート構造を有する特性基を含むものが挙げられる。
Figure 0006494743
(式中、Mは、2価の金属原子を表し、Xは、水酸基、有機酸残基及びアルコール残基からなる群より選ばれる少なくとも1種の基を表す。)
前記一般式(1)における2価の金属原子Mとしては、例えば、亜鉛、銅、マグネシウム、カルシウム、鉄及びテルル等を挙げることができ、好ましくは亜鉛又は銅である。
前記一般式(1)におけるXが水酸基である金属カルボキシレート構造を有する特性基(b1)を含む樹脂(B)は、例えば、カルボキシル基を有する公知の樹脂と、該樹脂中のカルボキシル基1モルに対して0.1〜1.0モルの範囲内の量の、2価の金属の酸化物又は水酸化物等とを、水の存在下で反応させることにより得ることができる。この反応に使用される水の量は、上記カルボキシル基1モルに対して0.1〜10.0モルの範囲内であることが好ましい。上記水の量が0.1モル未満であると、構造粘性が大きくなってしまい、生成した金属カルボキシレート構造を有する樹脂(B)の取り扱いが困難になることがある。一方、上記水の量が10.0モルを越えると、過剰となる水の分離作業が必要になることがある。
前記特性基(b1)を含む前記樹脂(B)の具体的な製造方法としては、例えば、カルボキシル基を有する樹脂と、水と、2価の金属化合物とを反応容器に入れて、50℃〜150℃の温度で1〜20時間反応させる方法などが挙げられる。該反応は、上記反応容器に適当な有機溶剤を添加して行ってもよい。このような有機溶剤としては、例えば、アルコ−ル系、ケトン系、エステル系、エ−テル系溶剤などが挙げられ、これらは1種類又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
前記特性基(b1)を含む前記樹脂(B)の製造に用いられる、前記2価の金属化合物は、特に制限なく公知のものを使用することができるが、コスト、毒性、反応性等の点から、銅、亜鉛、カルシウム、マグネシウム、鉄及びテルルからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属の酸化物、塩又は水酸化物が好ましく、亜鉛若しくは銅の酸化物、塩又は水酸化物が更に好ましい。
また、前記特性基(b1)を含む前記樹脂(B)の製造に用いられる、前記カルボキシル基を有する樹脂は、例えば、ビニル重合体、ポリエステル、ポリウレタン、天然樹脂等の樹脂を使用することができるが、組成変更の自由度が大きいという点で、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等のカルボキシル基含有不飽和単量体と、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、スチレン等の他の不飽和単量体とを共重合して得られる、ビニル重合体を好適に使用することができる。
また、上記一般式(1)におけるXが有機酸残基である金属カルボキシレート構造を有する特性基(b2)を含む樹脂(B)としては、例えば、特性基(b2)を含む不飽和単量体(b2m)の重合体若しくは2種以上の共重合体、特性基(b2)を含む不飽和単量体(b2m)の1種若しくは2種以上と前記不飽和単量体(b2m)以外の不飽和単量体(m1)の1種若しくは2種以上との共重合体、又は、これらの重合体若しくは共重合体を構成単位として含む任意の樹脂が挙げられる。
ここで、前記不飽和単量体(b2m)としては、例えば、下記一般式(2)又は(3)で表されるものが挙げられる。
Figure 0006494743
Figure 0006494743
(上記一般式(2)又は(3)中、R及びRは、水素原子又はメチル基を表し、Aは、有機酸残基を表し、Mは、2価の金属原子を表す。)
前記不飽和単量体(b2m)のうち、上記一般式(2)で表される不飽和単量体(b2m−1)の製造方法としては、例えば、(メタ)アクリル酸等の重合性不飽和有機酸と、2価の金属の酸化物、水酸化物、塩等の金属化合物と、有機酸残基を形成し得る一塩基有機酸とを反応させる方法、重合性不飽和有機酸と一塩基有機酸の金属塩とを反応させる方法などが挙げられる。これらの反応は、必要に応じて、有機溶剤及び/又は水の存在下で行ってもよい。
前記不飽和単量体(b2m)のうち、上記一般式(3)で表される不飽和単量体(b2m−2)の製造方法としては、例えば、(メタ)アクリル酸等の重合性不飽和有機酸と、2価の金属の酸化物、水酸化物、塩等の金属化合物とを反応させる方法などが挙げられる。該反応は、必要に応じて、有機溶剤及び/又は水の存在下で行ってもよい。
上記一般式(1)におけるXが有機酸残基の場合、該有機酸残基としては、例えば、酢酸、モノクロル酢酸、モノフルオロ酢酸、ナフテン酸、プロピオン酸、カプロン酸、カプリル酸、2−エチルヘキシル酸、カプリン酸、バーサチック酸、イソステアリン酸、パルミチン酸、クレソチン酸、オレイン酸、エライジン酸、リノール酸、リノレン酸、ステアロール酸、リシノール酸、リシノエライジン酸、ブラシジン酸、エルカ酸、α−ナフトエ酸、β−ナフトエ酸、安息香酸、2,4,5−トリクロロフェノキシ酢酸、2,4−ジクロロフェノキシ酢酸、キノリンカルボン酸、ニトロ安息香酸、ニトロナフタレンカルボン酸、プルビン酸、アビエチン酸、ネオアビエチン酸、デヒドロアビエチン酸、水添アビエチン酸、パラストリン酸、ピマル酸、イソピマル酸、レボピマル酸、デキストロピマル酸、サンダラコピマル酸、樹脂酸、アビエタン、ピマラン、イソピマラン、ラブダン骨格を有する化合物等の有機酸から誘導されるものを挙げることができる。また、上記一般式(2)におけるAで表される有機酸残基についても、上記有機酸から誘導されるものを挙げることができる。
前記不飽和単量体(b2m−1)の具体例としては、例えば、酢酸マグネシウム(メタ)アクリレート、酢酸亜鉛(メタ)アクリレート、ナフテン酸亜鉛(メタ)アクリレート、酢酸銅(メタ)アクリレート、ナフテン酸銅(メタ)アクリレート、モノクロル酢酸マグネシウム(メタ)アクリレート、モノクロル酢酸亜鉛(メタ)アクリレート、モノクロル酢酸銅(メタ)アクリレート、モノフルオロ酢酸マグネシウム(メタ)アクリレート、モノフルオロ酢酸亜鉛(メタ)アクリレート、モノフルオロ酢酸銅(メタ)アクリレート、プロピオン酸マグネシウム(メタ)アクリレート、プロピオン酸亜鉛(メタ)アクリレート、プロピオン酸銅(メタ)アクリレート、カプロン酸マグネシウム(メタ)アクリレート、カプロン酸亜鉛(メタ)アクリレート、カプロン酸銅(メタ)アクリレート、カプリル酸マグネシウム(メタ)アクリレート、カプリル酸亜鉛(メタ)アクリレート、カプリル酸銅(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル酸マグネシウム(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル酸亜鉛(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル酸銅(メタ)アクリレート、カプリン酸マグネシウム(メタ)アクリレート、カプリン酸亜鉛(メタ)アクリレート、カプリン酸銅(メタ)アクリレート、バーサチック酸マグネシウム(メタ)アクリレート、バーサチック酸亜鉛(メタ)アクリレート、バーサチック酸銅(メタ)アクリレート、イソステアリン酸マグネシウム(メタ)アクリレート、イソステアリン酸亜鉛(メタ)アクリレート、イソステアリン酸銅(メタ)アクリレート、パルミチン酸マグネシウム(メタ)アクリレート、パルミチン酸亜鉛(メタ)アクリレート、パルミチン酸銅(メタ)アクリレート、クレソチン酸マグネシウム(メタ)アクリレート、クレソチン酸亜鉛(メタ)アクリレート、クレソチン酸銅(メタ)アクリレート、オレイン酸マグネシウム(メタ)アクリレート、オレイン酸亜鉛(メタ)アクリレート、オレイン酸銅(メタ)アクリレート、エライジン酸マグネシウム(メタ)アクリレート、エライジン酸亜鉛(メタ)アクリレート、エライジン酸銅(メタ)アクリレート、リノール酸マグネシウム(メタ)アクリレート、リノール酸亜鉛(メタ)アクリレート、リノール酸銅(メタ)アクリレート、リノレン酸マグネシウム(メタ)アクリレート、リノレン酸亜鉛(メタ)アクリレート、リノレン酸銅(メタ)アクリレート、ステアロールマグネシウム(メタ)アクリレート、ステアロール酸亜鉛(メタ)アクリレート、ステアロール酸銅(メタ)アクリレート、リシノール酸マグネシウム(メタ)アクリレート、リシノール酸亜鉛(メタ)アクリレート、リシノール酸銅(メタ)アクリレート、リシノエライジン酸マグネシウム(メタ)アクリレート、リシノエライジン酸亜鉛(メタ)アクリレート、リシノエライジン酸銅(メタ)アクリレート、ブラシジン酸マグネシウム(メタ)アクリレート、ブラシジン酸亜鉛(メタ)アクリレート、ブラシジン酸銅(メタ)アクリレート、エルカ酸マグネシウム(メタ)アクリレート、エルカ酸亜鉛(メタ)アクリレート、エルカ酸銅(メタ)アクリレート、α−ナフトエ酸マグネシウム(メタ)アクリレート、α−ナフトエ酸亜鉛(メタ)アクリレート、α−ナフトエ酸銅(メタ)アクリレート、β−ナフトエ酸マグネシウム(メタ)アクリレート、β−ナフトエ酸亜鉛(メタ)アクリレート、β−ナフトエ酸銅(メタ)アクリレート、安息香酸マグネシウム(メタ)アクリレート、安息香酸亜鉛(メタ)アクリレート、安息香酸銅(メタ)アクリレート、2,4,5−トリクロロフェノキシ酢酸マグネシウム(メタ)アクリレート、2,4,5−トリクロロフェノキシ酢酸亜鉛(メタ)アクリレート、2,4,5−トリクロロフェノキシ酢酸銅(メタ)アクリレート、2,4−ジクロロフェノキシ酢酸マグネシウム(メタ)アクリレート、2,4−ジクロロフェノキシ酢酸亜鉛(メタ)アクリレート、2,4−ジクロロフェノキシ酢酸銅(メタ)アクリレート、キノリンカルボン酸マグネシウム(メタ)アクリレート、キノリンカルボン酸亜鉛(メタ)アクリレート、キノリンカルボン酸銅(メタ)アクリレート、ニトロ安息香酸マグネシウム(メタ)アクリレート、ニトロ安息香酸亜鉛(メタ)アクリレート、ニトロ安息香酸銅(メタ)アクリレート、ニトロナフタレンカルボン酸マグネシウム(メタ)アクリレート、ニトロナフタレンカルボン酸亜鉛(メタ)アクリレート、ニトロナフタレンカルボン酸銅(メタ)アクリレート、プルビン酸マグネシウム(メタ)アクリレート、プルビン酸亜鉛(メタ)アクリレート、プルビン酸銅(メタ)アクリレート等を挙げることができる。これらの不飽和単量体は、1種又は2種以上を必要に応じて適宜選択して使用することができる。
上記一般式(3)で表される不飽和単量体(b2m−2)としては、例えば、アクリル酸マグネシウム((CH=CHCOO)Mg)、メタクリル酸マグネシウム((CH=C(CH)COO)Mg)、アクリル酸亜鉛((CH=CHCOO)Zn)、メタクリル酸亜鉛((CH=C(CH)COO)Zn)、アクリル酸銅((CH=CHCOO)Cu)、メタクリル酸銅((CH=C(CH)COO)Cu)等を挙げることができる。これらの不飽和単量体は、1種又は2種以上を必要に応じて適宜選択して用いることができるが、これらの不飽和単量体の中でも、得られる塗膜の防汚性を長期間維持する観点から、(メタ)アクリル酸亜鉛を用いることが好ましい。
上記一般式(1)におけるXがアルコール残基である金属カルボキシレート構造を有する特性基(b3)を含む樹脂(B)は、例えば、特性基(b3)を含む不飽和単量体(b3m)の重合体若しくは2種以上の共重合体、特性基(b3)を含む不飽和単量体(b3m)の1種若しくは2種以上と前記不飽和単量体(b3m)以外の不飽和単量体(m2)の1種若しくは2種以上との共重合体、又は、これらの重合体若しくは共重合体を構成単位として含む任意の樹脂が挙げられる。
前記不飽和単量体(b3m)の製造方法としては、例えば、(メタ)アクリル酸等の重合性不飽和有機酸と、2価の金属の酸化物、水酸化物、塩等の金属化合物と、アルコール残基を形成し得るアルコール類とを反応させる方法、重合性不飽和有機酸と金属アルコキシド化合物とを反応させる方法などが挙げられる。これらの反応は、必要に応じて、有機溶剤及び/又は水の存在下で行ってもよい。
前記特性基(b2)を含む樹脂(B)を得るのに用いられる前記不飽和単量体(b2m−1)の量は、得られる塗膜の防汚性を長期間維持する観点から、前記樹脂(B)の固形分質量を基準として、0.5〜30.0質量%の範囲内であることが好ましく、より好ましくは1.0〜20.0質量%の範囲内である。
また、前記特性基(b2)を含む樹脂(B)を得るのに用いられる前記不飽和単量体(b2m−2)の量は、得られる塗膜の防汚性を長期間維持する観点から、前記樹脂(B)の固形分質量を基準として、0.5〜50.0質量%の範囲内であることが好ましく、より好ましくは1.0〜30.0質量%の範囲内である。
また、前記樹脂(B)は、前記不飽和単量体(b2m−1)、(b2m−2)及び(b3m)からなる群より選ばれる少なくとも1種の不飽和単量体と、必要に応じてこれら以外の不飽和単量体(m3)の1種又は2種以上とを、任意の割合で共重合させることによっても得ることができる。
前記不飽和単量体(m1)、(m2)及び(m3)は、それぞれ同一であっても、異なっていてもよい。前記不飽和単量体(m1)、(m2)及び(m3)としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレ−ト、メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレ−ト、t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレ−ト、シクロドデシル(メタ)アクリレ−ト等のアルキル又はシクロアルキル(メタ)アクリレート;イソボルニル(メタ)アクリレート等のイソボルニル基を有するモノマー;アダマンチル(メタ)アクリレート等のアダマンチル基を有するモノマー;スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等のビニル芳香族化合物;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン等のアルコキシシリル基を有するモノマー;パーフルオロブチルエチル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレート等のパーフルオロアルキル(メタ)アクリレート;フルオロオレフィン等のフッ素化アルキル基を有するモノマー;N置換マレイミド類;N−ビニルピロリドン、エチレン、ブタジエン、クロロプレン、プロピオン酸ビニル、酢酸ビニル等のビニル化合物;(メタ)アクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、無水イタコン酸、クロトン酸、β−カルボキシエチル(メタ)アクリレート等のカルボキシル基含有モノマー;(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルホリン、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−アルコキシメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、グリシジル(メタ)アクリレートとアミン類との付加物等の窒素含有モノマー;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレ−ト、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレ−ト、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸と炭素数2〜8の2価アルコールとのモノエステル化物、(メタ)アクリル酸と炭素数2〜8の2価アルコールとのモノエステル化物のε−カプロラクトン変性体、アリルアルコ−ル、分子末端が水酸基であるポリオキシエチレン鎖を有する(メタ)アクリレート等の水酸基含有モノマー;グリシジル(メタ)アクリレート、β−メチルグリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルエチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルプロピル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル等のエポキシ基含有モノマー;分子末端がアルコキシ基であるポリオキシエチレン鎖を有する(メタ)アクリレート;2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、アリルスルホン酸、スチレンスルホン酸、スルホエチル(メタ)アクリレート及びこれらのナトリウム塩又はアンモニウム塩等のスルホン酸基含有モノマー;2−(メタ)アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート等のリン酸基を有するモノマー;アクロレイン、ダイアセトン(メタ)アクリルアミド、アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート、4〜7個の炭素原子を有するビニルアルキルケトン(例えば、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルブチルケトン)等のカルボニル基含有モノマー;アリル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、グリセロールアリロキシジ(メタ)アクリレート、1,1,1−トリス(ヒドロキシメチル)エタンジ(メタ)アクリレート、1,1,1−トリス(ヒドロキシメチル)エタントリ(メタ)アクリレート、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルトリメリテート、ジアリルテレフタレート、ジアリルフタレート、ジアリルイソフタレート、ペンタエリスリトルジアリルエ−テル、ジビニルベンゼン、メチレンビス(メタ)アクリルアミド、エチレンビス(メタ)アクリルアミド等の重合性不飽和基を1分子中に2個以上有する重合性不飽和モノマー;及びこれらの2種類以上の組み合わせなどを挙げることができる。
なお、本明細書において、「(メタ)アクリレート」は、アクリレート又はメタクリレートを意味し、「(メタ)アクリル酸」は、アクリル酸又はメタクリル酸を意味する。また、「(メタ)アクリロイル」は、アクリロイル又はメタクリロイルを意味し、「(メタ)アクリルアミド」は、アクリルアミド又はメタクリルアミドを意味する。
また、前記樹脂(B)は、例えば、カルボキシル基を有する公知の樹脂と、該樹脂中のカルボキシル基1モルに対して0.1〜1.0モルの範囲内の量の、2価の金属の酸化物又は水酸化物等と、必要に応じて、有機酸、アルコール化合物又は水等とを、50〜200℃の温度で1〜20時間反応させることにより製造してもよい。この反応により生成される樹脂(B)に含まれる、前記一般式(1)で表される金属カルボキシレート構造を有する特性基におけるXは、水酸基、有機酸残基及びアルコール残基からなる群より選ばれる少なくとも1種の基であればよく、その構成比率は特に限定されない。
また、この反応は、適当な有機溶剤の存在下で行ってもよい。このような有機溶剤としては、例えば、アルコ−ル系、ケトン系、エステル系、エ−テル系溶剤などが挙げられ、これらは1種類又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
また、前記樹脂(B)の製造に用いられる、上記2価の金属化合物は、特に制限なく公知のものを使用することができるが、コスト、毒性、反応性等の点から亜鉛、銅、マグネシウム、カルシウム、鉄及びテルルからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属の酸化物、塩又は水酸化物が好ましく、亜鉛又は銅の酸化物、塩又は水酸化物が更に好ましい。
上記カルボキシル基を有する樹脂は、例えば、ビニル重合体、ポリエステル、ポリウレタン、天然樹脂等の樹脂を使用することができるが、組成変更の自由度が大きいという点で、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等のカルボキシル基含有不飽和単量体と、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、スチレン等の他の不飽和単量体とを共重合してなるビニル重合体を、好適に使用することができる。
また、前記特性基(b2)を含む樹脂(B)は、カルボキシル基を有する公知の樹脂と、一塩基有機酸の2価の金属塩とを反応させることによって製造してもよい。
本発明において、金属カルボキシレート構造を有する樹脂(B)に含まれる、前記一般式(1)で表される金属カルボキシレート構造を有する特性基におけるXは、水酸基、有機酸残基及びアルコール残基からなる群より選ばれる少なくとも1種の基であればよく、さらに、前記金属カルボキシレート構造に含まれる金属原子の濃度は、前記樹脂(B)の固形分質量を基準として0.04〜3.50モル/Kgの範囲内であり、好ましくは0.07〜3.00モル/Kgの範囲内、より好ましくは0.10〜2.50モル/Kgの範囲内である。上記金属原子の濃度が3.50モル/Kgよりも多いと、得られる塗膜の防汚性の維持できる期間が短くなることがあり、0.04モル/Kgよりも少ないと、得られる塗膜の防汚性が低下する傾向がある。
前記金属カルボキシレート構造を有する樹脂(B)の上記以外の製造方法としては、例えば、1分子中にカルボキシル基を2個以上有する化合物と金属化合物との縮合反応、金属カルボキシレート構造を有するポリオール化合物を用いた重付加反応又は縮合反応などが挙げられる。
[防汚剤(C)]
本発明の防汚塗料組成物は、前記ポリエステル樹脂(A)及び前記金属カルボキシレート構造を有する樹脂(B)のほかに、防汚剤(C)を更に含む。かかる防汚剤(C)としては、従来より公知のものを用いることができ、例えば、無機化合物、金属を含む有機化合物及び金属を含まない有機化合物などが挙げられる。
上記無機化合物としては、例えば、亜酸化銅、銅粉、チオシアン酸銅、炭酸銅、塩化銅、硫酸銅等の銅化合物、硫酸亜鉛、酸化亜鉛等の亜鉛化合物、硫酸ニッケル、銅−ニッケル合金等のニッケル化合物などが挙げられる。
上記金属を含む有機化合物としては、例えば、有機銅系化合物、有機ニッケル系化合物、有機亜鉛系化合物などを用いることができ、その他、マンネブ、マンセブ、プロピネブなども用いることができる。さらに、前記有機銅系化合物としては、例えば、オキシン銅、銅ピリチオン、ノニルフェノールスルホン酸銅、カッパービス(エチレンジアミン)−ビス(ドデシルベンゼンスルホネート)、酢酸銅、ナフテン酸銅、ビス(ペンタクロロフェノール酸)銅等が挙げられる。また、前記有機ニッケル系化合物としては、例えば、酢酸ニッケル、ジメチルジチオカルバミン酸ニッケル等が挙げられる。そして、前記有機亜鉛系化合物としては、酢酸亜鉛、カルバミン酸亜鉛、ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジンクピリチオン、エチレンビスジチオカルバミン酸亜鉛等が挙げられる。
上記金属を含まない有機化合物としては、例えば、N−トリハロメチルチオフタルイミド、ジチオカルバミン酸、N−アリールマレイミド、3−置換化アミノ−1,3−チアゾリジン−2,4−ジオン、ジチオシアノ系化合物、トリアジン系化合物等が挙げられる。
上記N−トリハロメチルチオフタルイミドとしては、例えば、N−トリクロロメチルチオフタルイミド、N−フルオロジクロロメチルチオフタルイミド等が挙げられる。
上記ジチオカルバミン酸としては、例えば、ビス(ジメチルチオカルバモイル)ジスルフィド、N−メチルジチオカルバミン酸アンモニウム、エチレンビス(ジチオカルバミン酸)アンモニウム、ミルネブ等が挙げられる。
上記N−アリールマレイミドとしては、例えば、N−(2,4,6−トリクロロフェニル)マレイミド、N−4−トリルマレイミド、N−3−クロロフェニルマレイミド、N−(4−n−ブチルフェニル)マレイミド、N−(アニリノフェニル)マレイミド、N−(2,3−キシリル)マレイミド、2,3−ジクロロ−N−(2’,6’−ジエチルフェニル)マレイミド、2,3−ジクロロ−N−(2’−エチル−6’−メチルフェニル)マレイミド等が挙げられる。
上記3−置換化アミノ−1,3−チアゾリジン−2,4−ジオンとしては、例えば、3−ベンジリデンアミノ−1,3−チアゾリジン−2,4−ジオン、3−(4−メチルベンジリデンアミノ)−1,3−チアゾリジン−2,4−ジオン、3−(2−ヒドロキシベンジリデンアミノ)−1,3−チアゾリジン−2,4−ジオン、3−(4−ジメチルアミノベンジリデンアミノ)−1,3−チアゾリン−2,4−ジオン、3−(2,4−ジクロロベンジリデンアミノ)−1,3−チアゾリジン−2,4−ジオン等が挙げられる。
上記ジチオシアノ系化合物としては、例えば、ジチオシアノメタン、ジチオシアノエタン、2,5−ジチオシアノチオフエン等が挙げられる。
上記トリアジン系化合物としては、例えば、2−メチルチオ−4−t−ブチルアミノ−6−シクロプロピルアミノ−s−トリアジン等が挙げられる。
また、上記の金属を含まない有機化合物としては、上記に例示した有機化合物のほか、例えば、2,4,5,6−テトラクロロイソフタロニトリル、N,N−ジメチルジクロロフェニル尿素、4,5−ジクロロ−2−N−オクチル−3−(2H)イソチアゾロン、N,N−ジメチル−N’−フェニル−(N−フルオロジクロロメチルチオ)スルファミド、テトラメチルチウラムジスルフィド、3−ヨード−2−プロピニルブチルカルバメート、2−(メトキシカルボニルアミノ)ベンズイミダゾール、2,3,5,6−テトラクロロ−4−(メチルスルホニル)ピリジン、ジヨードメチルパラトリルスルホン、ビスジメチルジチオカルバモイルジンクエチレンビスジチオカーバメート、フェニル(ビスピリジン)ビスマスジクロライド、2−(4−チアゾリル)ベンズイミダゾール、トリフェニルボロンピリジン・アミン錯体、メデトミジン(体系名:(±)4−[1−(2,3−ジメチルフェニル)エチル]−1H−イミダゾール)、ジクロロ−N−((ジメチルアミノ)スルフォニル)フルオロ−N−(p−トリル)メタンスルフェンアミド、2−(p−クロロフェニル)−3−シアノ−4−ブロモ−5−トリフルオロメチルピロール、クロロメチル−n−オクチルジスルフィド等が挙げられる。
前記防汚剤(C)は、上記に例示した各化合物を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。また、前記防汚剤(C)は、上記に例示した各化合物の中でも、安定した防汚性能を発揮するという観点から、亜酸化銅を用いることが好ましく、特に亜酸化銅と銅ピリチオンを併用することが好ましい。
[防汚塗料組成物及びそれによって基材の表面が被覆された物品]
上記したとおり、本発明の防汚塗料組成物は、ポリエステル樹脂(A)、金属カルボキシレート構造を有する樹脂(B)及び防汚剤(C)を含む防汚塗料組成物であって、前記金属カルボキシレート構造を有する樹脂(B)が、2価の金属原子を、前記樹脂(B)の固形分質量を基準として0.04〜3.50モル/Kgの範囲内の濃度で含み、前記ポリエステル樹脂(A)と前記金属カルボキシレート構造を有する樹脂(B)との質量比が3/97〜80/20の範囲内であり、かつ、前記防汚剤(C)の含有量が前記ポリエステル樹脂(A)と前記金属カルボキシレート構造を有する樹脂(B)との合計質量を基準として50〜500質量%の範囲内であることを特徴とするものである。
前記ポリエステル樹脂(A)と前記金属カルボキシレート構造を有する樹脂(B)との質量比は、3/97〜80/20の範囲内であるが、好ましくは7/93〜60/40の範囲内であり、より好ましくは、10/90〜50/50の範囲内である。前記ポリエステル樹脂(A)と前記金属カルボキシレート構造を有する樹脂(B)との質量比が、3/97〜80/20の範囲内であると、得られる防汚塗膜の優れた防汚性能を長期間維持することができ、また、前記防汚塗膜において、塗膜剥離、ブリスター、クラックなどの塗膜欠陥が発生しにくくなる。前記ポリエステル樹脂(A)と前記金属カルボキシレート構造を有する樹脂(B)との質量比が3/97よりも小さい場合又は80/20よりも大きい場合は、得られる塗膜の防汚性能を長期間維持することが困難になることがある。
本発明の防汚塗料組成物において、前記防汚剤(C)の含有量は、前記ポリエステル樹脂(A)と前記金属カルボキシレート構造を有する樹脂(B)との合計質量を基準として50〜500質量%の範囲内であるが、好ましくは250〜400質量%の範囲内である。防汚剤(C)の含有量が50質量%よりも少ないと、得られる塗膜の防汚性能を長期間維持することが困難になることがあり、また、前記防汚剤(C)の含有量が500質量%よりも多いと、得られる塗膜の物性が低下して、剥離やフクレ等の不具合が発生することがある。
本発明の防汚塗料組成物は、上記のポリエステル樹脂(A)、金属カルボキシレート構造を有する樹脂(B)及び防汚剤(C)のほかに、顔料、染料、脱水剤、可塑剤、搖変剤(タレ止剤)、消泡剤、酸化防止剤、前記ポリエステル樹脂(A)又は前記金属カルボキシレート構造を有する樹脂(B)以外の樹脂、有機酸、溶剤等の、一般的な塗料組成物に用いられている各種成分を、必要に応じて配合することができる。これらの成分は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記顔料としては、例えば、ベンガラ、タルク、酸化チタン、黄色酸化鉄、シリカ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化カルシウム、カーボンブラック、ナフトールレッド、フタロシアニンブルー等の着色顔料、タルク、シリカ、マイカ、クレー、炭酸カルシウム、カオリン、アルミナホワイト、水酸化アルミニウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸バリウム、硫化亜鉛等の体質顔料が挙げられる。
本発明の防汚塗料組成物中の前記顔料の含有量は、ポリエステル樹脂(A)と金属カルボキシレート構造を有する樹脂(B)との合計質量を基準として0.05〜1000質量%の範囲内であることが好ましく、1〜500質量%の範囲内であることがより好ましい。
上記脱水剤は、防汚塗料組成物の貯蔵安定性の向上に寄与する成分である。そのような脱水剤としては、例えば、無機系では、無水石膏、半水石膏(焼石膏)、合成ゼオライト系吸着剤(例えば、「モレキュラーシーブ」(商品名))等が挙げられ、その他、オルソエステル類(例えば、オルソギ酸メチル、オルソ酢酸メチル、オルソホウ酸エステル等)、シリケート類、イソシアネート類等が挙げられる。これらの中でも、無機系の脱水剤である無水石膏、半水石膏(焼石膏)が好ましい。また、これらの脱水剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なお、防汚塗料組成物中の脱水剤の含有量は、適宜調整することができるが、ポリエステル樹脂(A)と金属カルボキシレート構造を有する樹脂(B)との合計質量を基準として0〜100質量%の範囲内であることが好ましく、0.5〜25質量%の範囲内であることがより好ましい。
上記可塑剤は、得られる防汚塗膜の耐クラック性や耐水性の向上などに寄与する成分である。そのような可塑剤としては、例えば、トリクレジルフォスフェート、ジオクチルフタレート、塩素化パラフィン、流動パラフィン、n−パラフィン、塩素化パラフィン、ポリブテン、テルペンフェノール、トリクレジルフォスフェート(TCP)、ポリビニルエチルエーテル等が挙げられる。これらの可塑剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なお、本発明の防汚塗料組成物に可塑剤を配合する場合、前記防汚塗料組成物中の可塑剤の含有量は、ポリエステル樹脂(A)と金属カルボキシレート構造を有する樹脂(B)との合計質量を基準として0.5〜10質量%の範囲内であることが好ましく、1〜5質量%の範囲内であることがより好ましい。
上記酸化防止剤としては、例えば、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール等を挙げることができる。
上記搖変剤としては、例えば、有機系ワックス(例えば、ポリエチレンワックス、酸化ポリエチレンワックス、ポリアマイドワックス、アマイドワックス、水添ヒマシ油ワックス等)、有機粘土系化合物(例えば、Al、Ca、Znのアミン塩、ステアレート塩、レシチン塩、アルキルスルホン酸塩等)、ベントナイト、合成微粉シリカ等が挙げられる。これらの搖変剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。本発明の防汚塗料組成物に搖変剤を配合する場合、前記防汚塗料組成物中の搖変剤の含有量は、適宜調整することができるが、例えば、ポリエステル樹脂(A)と金属カルボキシレート構造を有する樹脂(B)との合計質量を基準として0.25〜50質量%の範囲内である。
本発明の防汚塗料組成物は、前述のようなポリエステル樹脂(A)及び金属カルボキシレート構造を有する樹脂(B)以外にも、必要に応じて1種又は2種以上のその他の樹脂類を含有していてもよい。そのような樹脂類としては、例えば、防汚塗料用の基体樹脂として広く使用されているシリルエステル基含有樹脂、アクリル樹脂、アクリルシリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フッ素樹脂、ポリブテン樹脂、シリコーンゴム、ウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、塩化ビニル系共重合樹脂、塩化ゴム、塩素化オレフィン樹脂、スチレン・ブタジエン共重合樹脂、ケトン樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、塩化ビニル樹脂、アルキッド樹脂、クマロン樹脂、テルペンフェノール樹脂、石油樹脂等が挙げられる。
また、本発明の防汚塗料組成物は、公知のロジン系化合物を含んでいてもよい。そのようなロジン系化合物としては、例えば、ロジン、ロジン誘導体、ロジン金属塩等が挙げられる。さらに、前記ロジンとしては、例えば、トールロジン、ガムロジン、ウッドロジン等が挙げられる。また、前記ロジン誘導体としては、例えば、水添ロジン、ロジンと無水マレイン酸を反応させたマレイン化ロジン、ホルミル化ロジン、重合ロジン等が挙げられる。そして、前記ロジン金属塩としては、例えば、ジンクロジネート、カルシウムロジネート、カッパーロジネート、マグネシウムロジネート、その他、金属化合物とロジンとの反応物等が挙げられる。これらロジン系化合物は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
本発明の防汚塗料組成物にロジン系化合物を配合する場合、前記防汚塗料組成物中のロジン系化合物の含有量は、特に限定されるものではないが、例えば、ポリエステル樹脂(A)と金属カルボキシレート構造を有する樹脂(B)との合計質量を基準として50質量%以下が好ましく、30質量%以下が更に好ましい。
本発明の防汚塗料組成物は、脂肪族溶剤、芳香族溶剤(例えば、キシレン、トルエン等)、ケトン溶剤(例えば、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等)、エステル溶剤、エーテル溶剤(例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等)、アルコール溶剤(例えば、イソプロピルアルコール等)などの防汚塗料用の溶剤として一般的に用いられている有機溶剤を配合することができる。なお、有機溶剤の配合量は、適宜調整することができるが、例えば、防汚塗料組成物の全固形分率が20〜90質量%の範囲内となるような配合量であり、塗装時に作業性等に応じて更に添加してもよい。
本発明の防汚塗料組成物は、公知の防汚塗料組成物と同様の方法により調製することができる。例えば、ポリエステル樹脂(A)と、金属カルボキシレート構造を有する樹脂(B)と、防汚剤(C)と、必要に応じて前記有機溶剤や添加剤等とを、攪拌槽に一度に又は順次添加して、撹拌、混合することにより、製造することができる。
また、本発明の物品は、本発明の防汚塗料組成物によって基材の表面が被覆されてなる物品である。前記物品は、基材の表面に、上記防汚塗料組成物を1回〜複数回塗布あるいは含浸させる工程と、該塗布あるいは含浸させた上記防汚塗料組成物を乾燥させる工程とを含む方法によって、得ることができる。
上記基材としては、例えば、海水又は真水と(例えば、常時又は断続的に)接触する基材、具体的には、水中構造物;船舶外板又は船底;発電所の導水管や冷却管;養殖用又は定置用の漁網、漁具又はこれらに用いられる浮き子;ロープ等の漁網付属具などが挙げられる。なお、本発明の防汚塗料組成物から得られる塗膜の膜厚は、塗膜の消耗速度(溶解速度)等を考慮して適宜調整することができるが、例えば、塗装1回当たりの膜厚(μm)として30〜250μm/回、好ましくは75〜150μm/回程度とすればよく、必要に応じて2回以上塗り重ねてもよい。
上記物品を得るに当たっては、前記基材の表面にプライマー、防食塗料、及び必要に応じてバインダー塗料を塗装した後、該塗装した表面に、刷毛塗り、吹付け塗り、ローラー塗り、浸漬等の手段によって本発明の防汚塗料組成物を塗装してもよい。また、本発明の防汚塗料組成物は、既存の防汚塗膜表面に重ね塗りしてもよい。塗膜の乾燥は、室温で行うことができるが、必要に応じて約100℃までの温度で加熱乾燥を行ってもよい。
以下、実施例及び比較例を挙げて、本発明を更に具体的に説明するが、本発明は実施例のみに限定されるものではない。なお、下記実施例中の「部」及び「%」は、それぞれ「質量部」及び「質量%」を意味する。
ポリエステル樹脂(A)の製造
(製造例1) ポリエステル樹脂(A1)の製造
温度計、攪拌機及び精留塔を具備した2Lの反応装置に、PAを527.2部、NPGを267.2部、DEGを269.7部仕込み、反応装置の内容物温度を160℃まで昇温した。次いで、反応装置の内容物温度を160℃から230℃まで3時間で昇温し、230℃で2時間、内容物温度を保持した後、精留塔を水分離器と置換し、反応装置にキシレンを約50.0部仕込み、水とキシレンとを共沸させて縮合水を除去しながら重縮合を進めた。生成したポリエステル樹脂の酸価が1.0mgKOH/g以下であることを確認した後、加熱を停止して冷却を開始し、キシレンを添加して希釈することにより、固形分70%のポリエステル樹脂(A1)溶液を得た。なお、上述の樹脂の酸価は、トルエンとイソプロパノールとの混合液(質量比1/1)を溶媒として測定試料を溶解し、1/10規定の水酸化カリウムのアルコール系溶液の滴定によって測定した。
ここで、本明細書におけるポリエステル原料の略号と相当する化合物の関係を以下に示す。
PA;無水フタル酸、iPA;イソフタル酸、AD;アジピン酸、HHPA;ヘキサヒドロ無水フタル酸、EG;エチレングリコール、PG;プロピレングリコール、NPG;ネオペンチルグリコール、1,6−HD;1,6−ヘキサンジオール、BEPG;2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、CHDM;1,4−シクロヘキサンジメタノール、DEG;ジエチレングリコール、TEG;トリエチレングリコール、テトラEG;テトラエチレングリコール、DPG;ジプロピレングリコール、TMP;トリメチロールプロパン、G;グリセリン、PE;ペンタエリスリトール
(製造例2〜12、16、17) ポリエステル樹脂(A2)〜(A12)、(A16)、(A17)の製造
製造例1における酸成分とアルコール成分とを表1に示す配合としたこと以外は、製造例1と同様にして固形分70%の各ポリエステル樹脂(A2)〜(A12)、(A16)、(A17)の樹脂溶液を得た。なお、製造例17においては、生成するポリエステル樹脂の酸価を1.0mgKOH/g以下にすることが困難であったため、やや高めの酸価で反応を終了した。
(製造例13) ポリエステル樹脂(A13)の製造
温度計、攪拌機及び精留塔を具備した2Lの反応装置に、iPAを377.8部、BEPGを364.2部、TEGを227.6部仕込み、反応装置の内容物温度を160℃まで昇温した。次いで、反応装置の内容物温度を160℃から230℃まで3時間で昇温し、230℃で2時間、内容物温度を保持した後、精留塔を水分離器と置換し、反応装置にキシレンを約45部仕込み、水とキシレンとを共沸させて縮合水を除去しながら重縮合を進めた。生成したポリエステル樹脂の酸価が1.0mgKOH/g以下であることを確認した後、内容物温度を160℃まで冷却した。さらに、PAを112.3部添加し、160℃で1時間保持して付加反応(ハーフエステル化)した後、冷却を開始した。130℃まで冷却した後、キシレンを添加して希釈することにより、固形分70%のポリエステル樹脂(A13)の樹脂溶液を得た。
(製造例14) ポリエステル樹脂(A14)の製造
製造例13における酸成分とアルコール成分とを表1に示す配合としたこと以外は、製造例13と同様にして固形分70%のポリエステル樹脂(A14)の樹脂溶液を得た。
(製造例15) ポリエステル樹脂(A15)の製造
温度計、攪拌機及び水分離機を具備した2Lの反応装置に、PAを237.5部、EGを29.3部、PEを198.2部、大豆油脂肪酸を602.6部、キシレンを50.0部仕込み、反応装置の内容物温度を160℃まで昇温し、1時間保持した。次いで、反応装置の内容物温度を160℃から240℃まで4時間で昇温し、240℃のまま、生成した縮合水を除去しながら重縮合を進めた。生成したポリエステル樹脂の酸価が約3.0mgKOH/gであることを確認した後、加熱を停止して冷却を開始し、キシレンを添加して希釈することにより、固形分70%のポリエステル樹脂(A15)の樹脂溶液を得た。
上述の各製造例にて得られたポリエステル樹脂(A1)〜(A17)の酸価及び重量平均分子量を、各製造例の配合量と併せて表1に示す。
Figure 0006494743
金属カルボキシレート構造を有する樹脂(B)の製造
(製造例18) 金属カルボキシレート構造を有する樹脂(B1)の製造
温度計、サーモスタット、撹拌機、還流冷却器及び滴下ポンプを具備した反応容器に、キシレンを241.7部、酢酸ブチルを197.5部、n−ブタノールを241.7部仕込み、反応容器内の内容物を撹拌しながら該内容物の温度を105℃まで昇温した。その後、メタクリル酸を104.2部、アクリル酸エチルを304.4部、アクリル酸メトキシエチルを272.4部、2,2−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)を54.5部含む混合溶液を、105℃に保持され且つ均一に撹拌している反応容器内に、滴下ポンプを利用して一定速度で4時間掛けて滴下した。前記混合溶液の滴下終了後、引き続き1時間、反応容器内の内容物の温度を105℃に保つことにより、アクリル樹脂溶液を得た。
さらに、得られた樹脂溶液に、酸化亜鉛を49.7部、脱イオン水を34.0部加え、100℃で20時間撹拌を続けることにより、不揮発分約52%の金属カルボキシレート構造を有する樹脂(B1)の樹脂溶液を得た。
(製造例19〜20) 金属カルボキシレート構造を有する樹脂(B2)、(B3)の製造
製造例18における不飽和単量体を表2に示す配合としたこと以外は、製造例18と同様の反応条件で合成を行うことにより、固形分50%の金属カルボキシレート構造を有する樹脂(B2)、(B3)の樹脂溶液を得た。
(製造例21) 金属カルボキシレート構造を有する樹脂(B4)の製造
温度計、サーモスタット、撹拌機、還流冷却器及び滴下ポンプを具備した反応容器に、キシレンを563.0部、n−ブタノールを140.7部仕込み、反応容器内の内容物(溶液)の温度を110℃から120℃の間に保ちながら、この溶液中に、アクリル酸エチルを281.5部、アクリル酸2−エチルヘキシルを117.3部、アクリル酸を70.4部、2,2−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)を37.5部含む混合溶液を、一定速度で3時間掛けて滴下した。前記混合溶液の滴下終了後、引き続き2時間、反応容器内の内容物の温度を110℃から120℃の間に保持することによりアクリル樹脂溶液を得た。
さらに、得られた樹脂溶液に、ナフテン酸を236.4部、水酸化銅を82.8部加えた後、120℃に昇温し、この状態を、生成する水を除去しながら(脱水量約30部)2時間保持することにより、不揮発分約50%の金属カルボキシレート構造を有する樹脂(B4)の樹脂溶液を得た。
(製造例22〜23) 金属カルボキシレート構造を有する樹脂(B5)、(B6)の製造
製造例21における不飽和単量体を表2に示す配合としたこと以外は、製造例21と同様の反応条件で合成を行うことにより、金属カルボキシレート構造を有する樹脂(B5)、(B6)の樹脂溶液を得た。
(製造例24) 金属カルボキシレート構造を有する樹脂(B7)の製造
温度計、サーモスタット、撹拌機、還流冷却器及び滴下ポンプを具備した反応容器に、キシレンを255.2部、酢酸ブチルを208.4部、n−ブタノールを255.2部仕込み、反応容器内の内容物を撹拌しながら該内容物の温度を105℃まで昇温した。その後、亜鉛のジアクリレート塩(日本油脂製)を115.0部、アクリル酸エチルを321.3部、アクリル酸メトキシエチルを287.5部、2,2−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)を57.5部含む混合溶液を、一定速度で4時間掛けて反応容器内に滴下した。前記混合溶液の滴下終了後、引き続き3時間、反応容器内の内容物の温度を105℃に保持することにより、不揮発分約52%の金属カルボキシレート構造を有する樹脂(B7)の樹脂溶液を得た。
(製造例25) 金属カルボキシレート構造を有する樹脂(B8)の製造
撹拌機、水分離器及び温度計を具備した反応容器に、エチレングリコールを177.7部、ヘキサヒドロ無水フタル酸を441.4部、無水トリメリット酸を121.1部仕込み、反応容器内の内容物を180℃まで徐々に昇温した。次いで、反応容器内の内容物を、生成する縮合水を除去しながら、180℃から200℃まで2時間掛けて昇温した。その後、200℃で4時間反応を行い、樹脂の酸価が150mgKOH/gであるポリエステルを得た。得られたポリエステルを冷却し、キシレンを233.6部、酢酸ブチルを233.6部、n−ブタノールを233.6部、脱イオン水を34.1部、酸化亜鉛を76.6部加えた後、100℃で8時間反応を行うことにより、金属カルボキシレート構造を有する樹脂(B8)を得た。この樹脂(B8)に含まれる金属含有量は、1.26mol/Kgであった。
なお、上記樹脂中の亜鉛、銅等の金属含有量は、蛍光X線法により定量した。
Figure 0006494743
防汚塗料組成物の調製と各種試験
(実施例1〜27)及び(比較例1〜5)
評価
ポリエステル樹脂(A1)〜(A17)の樹脂溶液、金属カルボキシレート構造を有する樹脂(B1)〜(B8)の樹脂溶液、防汚剤、顔料等を、表3及び表4に示す配合組成にて配合し、ホモミキサーを用いて約2,000rpmの攪拌速度により混合分散した。分散後、ディスパロンA630−20XN(楠本化成社製、タレ止剤)及び溶剤を添加し、ディスパー撹拌して塗料組成物(E1)〜(E32)を調製した。調製した塗料組成物を、下記の防汚性能試験、密着性試験、及び耐クラック性試験に供した。これらの各試験の結果も、表3及び表4に示す。
<防汚性能試験>
サンドブラスト処理鋼板(100mm×300mm×2mm)の両面に、エポキシ系防錆塗料を200μmの乾燥膜厚となるようにスプレー塗装し、さらに、エポキシ系バインダーコートを、乾燥膜厚が100μmとなるように塗装した。この塗装板の両面に、各塗料組成物を、乾燥膜厚が片面480μmとなるようにスプレー塗装により4回塗装し、温度20℃、湿度75%の恒温恒湿室にて1週間乾燥させて、試験片を作製した。この試験片を用いて、三重県尾鷲湾にて48ケ月の海水浸漬を行い、試験塗膜上の付着生物の占有面積の割合(付着面積)を経時的に測定した。
◎:(合格)付着生物が観察されなかった
○:(合格)付着生物の占有面積が5%未満
△:(不合格)付着生物の占有面積が5%以上、30%未満
×:(不合格)付着生物の占有面積が30%以上
<密着性試験>
円筒形のドラム(直径500mm×高さ240mm)に装着可能なように湾曲性を持たせた、サンドブラスト処理鋼板(120mm×120mm×1mm)に、エポキシ系防錆塗料を200μmの乾燥膜厚となるようにスプレー塗装し、さらに、エポキシ系バインダーコートを乾燥膜厚が100μmとなるように塗装した。この塗装後の鋼板の片面に、各塗料組成物を、乾燥膜厚が片面480μmとなるようにスプレー塗装により4回塗装し、温度20℃、湿度75%の恒温恒湿室にて1週間乾燥させて、試験片を作製した。この試験片を上記の円筒形ドラムに装着し、該円筒形ドラムを兵庫県由良湾の海面下500mmにて16ノットで24ヶ月間回転させた。海中から試験片を経時的に回収し、5mm間隔のゴバン目試験を実施した。評価はISO 2409:1992に準拠するものとした。
◎:(合格)Table1 Classification 0・1
○:(合格)Table1 Classification 2
△:(不合格)Table1 Classification 3
×:(不合格)Table1 Classification 4・5
<耐クラック性試験>
上記密着性試験に供した試験片にて、その塗膜を目視観察し、クラックの発生の有無を調べた。
◎:(合格)クラックが観察されなかった
○:(合格)微細なクラックが塗膜表面の一部の範囲で観察された
△:(不合格)微細又は明確なクラックが塗膜表面の広い範囲で観察された
×:(不合格)下地に至るクラックが観察された
Figure 0006494743
Figure 0006494743

Claims (10)

  1. ポリオルトエステルを除くポリエステル樹脂(A)、金属カルボキシレート構造を有する樹脂(B)及び防汚剤(C)を含む防汚塗料組成物であって、
    前記ポリエステル樹脂(A)の酸価が0〜2.3mgKOH/gの範囲内であり、
    前記金属カルボキシレート構造を有する樹脂(B)が、2価の金属原子を、前記樹脂(B)の固形分質量を基準として0.04〜3.50モル/Kgの範囲内の濃度で含み、
    前記ポリエステル樹脂(A)と前記金属カルボキシレート構造を有する樹脂(B)との質量比が3/97〜80/20の範囲内であり、かつ、前記防汚剤(C)の含有量が前記ポリエステル樹脂(A)と前記金属カルボキシレート構造を有する樹脂(B)との合計質量を基準として50〜500質量%の範囲内であることを特徴とする、前記防汚塗料組成物。
  2. 前記ポリエステル樹脂(A)の重量平均分子量が190〜15000の範囲内である、請求項1に記載の防汚塗料組成物。
  3. 前記ポリエステル樹脂(A)と前記金属カルボキシレート構造を有する樹脂(B)との質量比が7/93〜60/40の範囲内である、請求項1又は2に記載の防汚塗料組成物。
  4. 前記ポリエステル樹脂(A)が金属カルボキシレート構造を有しないものである、請求項1〜のいずれか一項に記載の防汚塗料組成物。
  5. 前記金属カルボキシレート構造を有する樹脂(B)が、下記一般式(1)で表される金属カルボキシレート構造を有する特性基を含むものである、請求項1〜のいずれか一項に記載の防汚塗料組成物。
    Figure 0006494743
    (式中、Mは、2価の金属原子を表し、Xは、水酸基、有機酸残基及びアルコール残基からなる群より選ばれる少なくとも1種の基を表す。)
  6. 前記金属カルボキシレート構造を有する樹脂(B)に含まれる前記2価の金属原子が、亜鉛、銅、マグネシウム、カルシウム、鉄及びテルルからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属原子である、請求項1〜のいずれか一項に記載の防汚塗料組成物。
  7. 前記ポリエステル樹脂(A)は、1分子中に2個のカルボキシル基を有する芳香族多塩基酸を30モル%以上含む酸成分(a1)と、2価以上の多価アルコールを含むアルコール成分(a2)とのエステル化反応物及びエステル交換反応物の少なくとも一方の反応物であり、850〜6500の範囲内の重量平均分子量を有し、かつ、酸価が0.1〜2.3mgKOH/gの範囲内である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の防汚塗料組成物。
  8. 前記金属カルボキシレート構造を有する樹脂(B)は、カルボキシル基含有不飽和単量体とその他の不飽和単量体とを共重合してなるビニル重合体と、2価の金属の酸化物又は水酸化物との反応物であり、2価の金属原子を、前記樹脂(B)の固形分質量を基準として0.10〜3.50モル/Kgの範囲内の濃度で含む、請求項1〜7のいずれか一項に記載の防汚塗料組成物。
  9. 前記ポリエステル樹脂(A)と前記金属カルボキシレート構造を有する樹脂(B)との質量比(A)/(B)が10/90〜50/50の範囲内である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の防汚塗料組成物。
  10. 請求項1〜のいずれか一項に記載の防汚塗料組成物によって基材の表面が被覆されている、物品。
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